鉛蓄電池の圧迫度の診断方法及びその診断装置
【課題】 電解液の成層化が起こりにくい、長寿命、高信頼性の密閉形鉛蓄電池を提供するために、極板群の圧迫度を非破壊的に診断する方法並びに、その診断装置を提供する。
【解決手段】 鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧した状態における、鉛蓄電池の側面間の厚みを測定し、その測定された厚みが、鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め規定された圧迫度の判定値より大きい場合に圧迫不足であると診断することを特徴とするものである。
【解決手段】 鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧した状態における、鉛蓄電池の側面間の厚みを測定し、その測定された厚みが、鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め規定された圧迫度の判定値より大きい場合に圧迫不足であると診断することを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の電解液の成層化を防止して、鉛蓄電池の長寿命化を図る技術に関するもので、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を非破壊的に診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、充放電中に電解液を構成する硫酸が沈降して電解液の比重が、極板の下部ほど高くなる成層化現象が起きることがある。この成層化現象では、極板下部の電解液比重が高くなるため、その充電効率が低下し、正負両極でサルフェーション(粗大硫酸鉛結晶粒の生成)が進行するとともに、濃淡電池を形成して自己放電が急速に進行する。その結果、電池寿命の著しい低下を招いてしまう。
そこで、鉛蓄電池の長寿命化には電解液の成層化現象を防止することが重要であり、そのため密閉形鉛蓄電池における極板群に対して、電解液を注入する前の乾燥状態において、適度な圧力で極板群を圧迫する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3など参照)。
【0003】
特許文献1では、平均孔径10〜100μmを有し、特定の高圧力で加圧した時と、低圧力で加圧した時の厚みの比が特定の値を示すフェルト状セパレータを用い、そのセパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度10〜25kPaで挿入した高い電池容量が維持でき、かつ長寿命な鉛蓄電池が提案されている。
【0004】
特許文献2には、密閉形鉛蓄電池において、極板群隔離材として平均繊維径6μm以上のガラス繊維を主体としたリテーナを用い、耐酸性で硫酸電解液を保持できる無機粉体を最大で2%添加し、正極板、負極板とともに構成した極板群に対し、電解液を注入する前の乾燥状態において10〜50kg/dm2の圧力で極板群を圧迫することによって、極板とリテーナとの間の隙間を生じにくくして、その成層化を防止することが提案されている。
さらに、極板群の圧迫力、極板群総空孔体積に対する電解液の充填率を特定の範囲のものとすることにより電解液の成層化を起こりにくくし、長寿命、高信頼性を備える密閉形鉛蓄電池が特許文献3に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−156080号公報
【特許文献2】特開平7−94206号公報
【特許文献3】特開2005−100794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1から3で明らかなように、圧迫不足の鉛蓄電池は、圧迫不足でない同型の鉛蓄電池に比べ使用期間(寿命)が低減するため、早期に発見する必要がある。特に電解液を充填した後の極板群の圧迫不足は、著しく寿命を縮めることとなり、使用機器に対して大きな影響を与える。
さらに、使用中において生じる極板群の圧迫不足は、寿命に影響すると共に、信頼性の大きな低下を与えてしまう結果となる。
【0007】
しかしながら、従来、電池を破壊せずに、極板群の圧迫状態を測定して、その圧迫不足を発見する手段はなかった。
そこで、本発明は、電解液の成層化が起こりにくい、長寿命、高信頼性の密閉形鉛蓄電池を提供するために、極板群の圧迫度を非破壊的に診断する方法並びに、その診断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況に鑑み本発明は成されたもので、本発明の第1の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧した状態における、鉛蓄電池の側面間の厚みを測定し、その測定された厚みが、鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値より大きい場合に圧迫不足であると診断することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の発明は、第1の発明における鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量による補正を施された判定値であることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法である。
【0010】
本発明の第3の発明は、第1の発明における鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法である。
【0011】
本発明の第4の発明は、第1の発明における鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法である。
【0012】
本発明の第5の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある鉛蓄電池側面の一方側にピックアップ端子を接触配置して設け、他方側に物理的衝撃を付加し、そのピックアップ端子により測定した物理的衝撃の時間変化による伝播波形のパターンと、予め、圧迫度の測定に供した鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における記憶された既知の極板群の圧迫度に対応した伝播波形のパターンとの比較によって、圧迫度の測定に供した鉛蓄電池における極板群の圧迫度を診断することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第6の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第1の発明に対応する装置であって、既定の圧力に内圧を調整した前記鉛蓄電池の側面の厚みを測定する手段と、既定された圧迫度の判定値を備え、測定した鉛蓄電池の厚みと規定された圧迫度の判定値とを比較することによって、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段と、鉛蓄電池の内圧を規定の圧力に調整する減圧手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第7の発明は、第6の発明における既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量の関数として鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第2の発明に対応する装置である。
【0015】
本発明の第8の発明は、第6の発明における既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗の関数として鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第3の発明に対応する装置である。
【0016】
本発明の第9の発明は、第6の発明における既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗の関数として鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第4の発明に対応する装置である。
【0017】
本発明の第10の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置であって、鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある鉛蓄電池側面の一方側に接触配置されて、衝撃波の時間変化による伝播波形を測定するピックアップ端子と、そのピックアップ端子が配置された鉛蓄電池側面と相対する側面に物理的衝撃を付加する手段と、極板群の圧迫度を測定する鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における極板群の圧迫度と伝播波形のパターンの関係を記憶する手段と、ピックアップ端子で測定された伝播波形のパターンと、記憶されている既知の圧迫度における伝播波形パターンとを比較して、測定した鉛蓄電池の極板群の圧迫度の良否を判定する手段とを備えることを特徴とする、前記第5の発明に対応するものである
【発明の効果】
【0018】
圧迫不足の鉛蓄電池は、圧迫不足でない同型の鉛蓄電池に比べ、使用期間(すなわち寿命)が低減するため、早期に発見する必要があり、本発明によれば、鉛蓄電池を破壊せずに圧迫不足を容易に発見することができ、鉛蓄電池の長寿命化に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の鉛蓄電池の側面間厚みによる鉛蓄電池圧迫度診断装置の一例である。
【図2】本発明の鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図である。
【図3】本発明の鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図である。
【図4】本発明の鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図である。
【図5】鉛蓄電池の「側面間の厚み」と極板群の「圧迫度」の関係を示す模式図である。
【図6】鉛蓄電池の重量で分類した「側面間の厚み」と、極板群の「圧迫度」の関係を示す模式図である。
【図7】鉛蓄電池の重量による補正を加えた「重量補正厚み判定値」の説明図である。
【図8】極板群の要求圧迫度p0における鉛蓄電池の重量wiと、その重量毎の重量補正厚み判定値twi0との関係を示す図である。
【図9】鉛蓄電池の内部抵抗Rによる補正を加えた「内部抵抗補正厚み判定値」の説明図である。
【図10】本発明の衝撃の伝播波形パターンによる鉛蓄電池圧迫度診断装置の一例である。
【図11】周波数fnに対する周波数応答α1(fn)の関係を示す図である。
【図12】鉛蓄電池の圧迫度(圧迫力)と第3固有周波数との関係を示す図である。
【図13】周波数fnに対する周波数応答α2(fn)の関係を示す図である。
【図14】鉛蓄電池における第1固有周波数と、予め設定した鉛蓄電池の圧迫状態を圧迫度の大小とした基準周波数f10との比較を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は鉛蓄電池の極板群の圧迫度を非破壊的に診断するもので、第1の発明では(a)鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧し、その状態で鉛蓄電池の側面間の厚みを測定、その測定値が予め規定した判定値(必要とする圧迫度に対応した鉛蓄電池の側面間の厚み)と比較して、大きい場合に極板群は圧迫不足と診断する。
診断に際しては、図1に示すような診断装置1aを用いるもので、先ず鉛蓄電池10の内圧を減圧装置3を用いて、規定圧力へ減圧し、規定圧力に到達した時点で、電池側面厚み測定装置2により側面11間の厚みを測定、記憶し、判定装置(図示せず、例えばパーソナルコンピュータのような演算機)で圧迫度の診断を行うものである。
【0021】
さらに本発明では、予め規定する判定値の設定法に特徴を有するもので、前記(a)に示す方法の他に、一つは、(b)判定値に圧迫度を診断する被鉛蓄電池の重量による補正を加える方法(第2の発明)、さらに一つは、(c)圧迫度を診断する被鉛蓄電池の内部抵抗による補正を加える方法(第3の発明)、もう一つは、(d)圧迫度を診断する被鉛蓄電池の重量および内部抵抗による補正を加える方法(第4の発明)である。
図2から図4に、鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図を示す。図2から図4中の(a)〜(d)の記号は、後述する段落[0022]から段落[0037]中の(a)から(d)に示す判定値の設定法と対応している。
【0022】
[判定値の設定法]
(a)「鉛蓄電池の側面間の厚み」のみから求めた判定値(第1の発明)
図5の模式図に、鉛蓄電池の側面間の厚みtと極板群の圧迫度pの関係を示す。前記厚みtが図2における「Ln:厚み測定値」である。
図5において、p0は要求圧迫度を示し、その要求圧迫度p0に対応した側面間の厚み、すなわち判定値をt0としている。この判定値t0が図2における「C:厚み判定値」であり、厚みtがt0であるかどうかを以って被測定鉛蓄電池(圧迫度が不明な鉛蓄電池)の圧迫度を診断するものである。
【0023】
さらに、この側面間の厚みtと圧迫度pとの関係に関しては、図5中の「破線」で示すような変動が生じることが考えられる。変動が生じた場合、判定値t0は、t−〜t+の範囲で変動する結果となる。したがって、測定値tが判定値t0を満足した場合においても、圧迫度不足である場合も存在する。この割合を少なくするために、以下の判定値の設定法を用いる。
【0024】
(b)「鉛蓄電池の重量」による補正を加えた判定値[重量補正厚み判定値](第2の発明)
この重量補正厚み判定値を用いた診断方法は、図3の(b)経路で示されるものである。
図6の模式図に、鉛蓄電池の重量で分類した際の側面間の厚みtと、極板群の圧迫度pの関係を示す。図6に示すように、鉛蓄電池の重量wi(i=0,1,2,3,・・・)によって、t−p曲線は変位し、その影響で判定値twi0(i=0,1,2,3,・・・)も変化する。すなわち、鉛蓄電池の重量によって、圧迫度の診断精度が大きく左右されることになる。
【0025】
そこで、厚みの判定値に鉛蓄電池の重量による補正を加えるが、その一つの方法として、図7に示すような要求圧迫度p0に対する鉛蓄電池の重量w0(=A)と、重量w0を境界として、w0<wの場合の鉛蓄電池の側面間の厚みtwU0(「aaa」)、およびw≦w0の場合の鉛蓄電池の側面間の厚みtwL0(「bbb」)の値を予め把握して、「要求される圧迫度p0以上」に対する重量判定値A(=w0)と重量測定値wnの関係から、その関係状態における側面間の厚みの重量補正厚み判定値CWを下記式(1)のように設定する。
【0026】
【数1】
【0027】
他の方法の一つは、図6に示す結果から、要求される極板群の圧迫度p0における鉛蓄電池の重量wiと、その重量毎の重量補正厚み判定値twi0との関係(図8参照)を予め把握しておくことによって、測定した鉛蓄電池の重量を以って、重量補正を行った判定値、すなわち重量補正厚み判定値tw0を設定する。この重量補正厚み判定値を用いることで、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」で囲まれた範囲)にも対応した圧迫度診断が可能となる。
【0028】
又は、図8に示す結果から、鉛蓄電池の重量を区分し、その区分内における要求圧迫度p0を満たす鉛蓄電池の厚みである重量補正厚み判定値tw0を求め、区分けされた重量と重量補正厚み判定値からなる参照テーブル(表1に、その例の参照テーブルを示す)を作成することによって、圧迫度診断を行っても良い。
【0029】
【表1】
【0030】
(c)「鉛蓄電池の内部抵抗R」による補正を加えた判定値[内部抵抗補正厚み判定値](第3の発明)
(b)に示した重量補正の場合と同様に鉛蓄電池の内部抵抗Riと内部抵抗補正厚み判定値tRi0との関係を予め把握しておくことによって、先ず鉛蓄電池の内部抵抗Rnを測定して内部抵抗補正を行った判定値tR0を設定することが可能となり、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」)に対応した圧迫度診断が可能となる。
この内部抵抗補正厚み判定値を用いた診断方法は、図3の(c)経路で示されるものである。
【0031】
そこで、厚みの判定値に鉛蓄電池の内部抵抗による補正を加えるが、先の重量補正の場合と同様に、その一つの方法として、図9に示すような要求圧迫度p0に対する鉛蓄電池の内部抵抗R0(=B)と、内部抵抗R0を境界とし、R0<Rの場合の、鉛蓄電池の側面間の厚みtRU0(「ccc」)、およびR≦R0の場合の、厚みtRL0(「ddd」)の値を予め把握して、「要求される圧迫度p0以上」に対する内部抵抗判定値B(=R0)と内部抵抗測定値Rnの関係から、その関係状態における内部抵抗補正による側面間厚み判定値CRを下記式(2)のように設定する。
【0032】
【数2】
【0033】
他の方法の一つは、極板群に要求される圧迫度p0における鉛蓄電池の内部抵抗Riと、その内部抵抗毎の内部抵抗補正厚み判定値tRi0との関係を予め把握しておくことによって、測定した鉛蓄電池の内部抵抗Rnにより、補正を行った内部抵抗補正厚み判定値tR0を設定することが可能となり、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」で囲まれた範囲)に対応した圧迫度診断が可能となる。
【0034】
又は、表1に示した重量補正厚み判定値の場合と同様の方法を用いて、鉛蓄電池の内部抵抗を区分し、その区分内における要求圧迫度p0を満たす鉛蓄電池の厚みである内部抵抗補正厚み判定値tR0を求め、区分けされた内部抵抗と内部抵抗補正厚み判定値からなる参照テーブル(表2に、その例の参照テーブルを示す)を作成することによって、圧迫度診断を行っても良い。
【0035】
【表2】
【0036】
(d)鉛蓄電池の重量及び内部抵抗による補正を加えた判定値(第4の発明)
要求圧迫度p0に対する鉛蓄電池の重量wiと内部抵抗Riの両者と判定値tiとの関係式を、予め把握しておくことによって、圧迫度を診断したい鉛蓄電池の重量wiと内部抵抗Riを順に測定して、先に求めた関係式から重量・内部抵抗補正を行った判定値twR0を設定することが可能となり、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」)に対応した圧迫度診断が可能となる。
この重量、内部抵抗補正厚み判定値を用いた診断方法は、図4の(d)経路で示されるものである。
【0037】
また、図4の(d)経路に示すように、重量判定値w0(=A)、および内部抵抗判定値R0(=B)を求めて、上記(1)式、(2)式を設定し、測定した鉛蓄電池の重量wn、内部抵抗Rnを順に(1)式、(2)式で表される関係と比較し、表3に示す重量・内部抵抗補正による厚み判定値CwRを用いて診断を下す。
すなわち、その両者の関係を満足する場合、その鉛蓄電池の極板群の圧迫度は、要求圧迫度p0を満たしていると診断する方法を用いても良い。
【0038】
【表3】
【0039】
[衝撃の伝播波形パターンによる診断方法](第5の発明)
本発明の第5の発明は、図10に示すような診断装置1bを用いるもので、鉛蓄電池10の極板群と平行な位置にある鉛蓄電池側面11の一方側にピックアップ端子6を接触配置して設け、他方側に衝撃発生機5を配し、その衝撃発生機5を用いて物理的衝撃を付加し、伝播してくる衝撃波をピックアップ端子6により測定し、その測定した物理的衝撃の時間変化による伝播波形のパターンと、予め、圧迫度の測定に供した鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における既知の極板群の圧迫度に対応した伝播波形のパターンとを衝撃測定装置4、若しくはパーソナルコンピュータのような演算機(図示せず)を用いて比較することによって、測定に供した鉛蓄電池における極板群の圧迫度を診断する診断方法である。
【0040】
この第5の発明では、圧迫度の診断に際して、その診断方法には、伝播波形の第3固有周波数を用いた診断方法と、第1固有周波数を用いた診断方法の2種類の診断方法を用いることを特徴とする。
【0041】
1.第3固有周波数を用いた診断方法
先ず、衝撃発生機を用いて鉛蓄電池側面に衝撃(入射力)を与え、ピックアップ端子にて、その衝撃に対応する伝播波(検出力)を検出する。
次いで、周波数成分を持つ入射力のx軸方向の力をFix(f)、検出力のx軸方向の力をFox(f)とし、下記(3)、(4)式にそれぞれ表す。
ある周波数fnに対する周波数応答α1(fn)を下記(5)式とする。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
この周波数fnに対する周波数応答α1(fn)をプロットすると図11に示す周波数応答と周波数の関係が得られる。
この図11の関係を、極板群の圧迫力を変えた複数の鉛蓄電池について、測定して求め、それぞれの鉛蓄電池における第3固有周波数を明らかにし、その鉛蓄電池の圧迫度(圧迫力)と第3固有周波数との関係を求める。例えば、図12のような関係を得る。
【0045】
次に、その蓄電池機種に必要な圧迫力(規定値)に対する第3固有周波数を、その電池機種の判定値f30として設定する。
その判定値f30に対して、測定したある蓄電池機種の蓄電池の第3固有周波数が高いものを判定「OK」、低いものを判定「NG」と診断する(図12参照)。
【0046】
2.第1固有周波数を用いた診断方法
この診断方法では、圧迫度の診断に際して以下の手順で診断を行う。
打撃装置によって周波数成分を持つ打撃振動波形Fi(f)、検出装置によって検出振動波形Fo(f)をそれぞれ測定する。次に、測定した打撃振動波形Fi(f)、検出振動波形Fo(f)を演算装置によって、下記(6)、(7)のようにフーリエ解析して、周波数fnにおける周波数応答α2(fn)を下記(8)式によって演算する。なお、α2(fn)の値のピークの周波数を、その低周波数側から順に第1固有周波数、第2固有周波数、第3固有周波数として演算する。
【0047】
【数5】
【0048】
この周波数fnに対する周波数応答α2(fn)をプロットすると図13に示す周波数応答と周波数の関係が得られる。
この図13の関係を、極板群の圧迫力を変えた複数の鉛蓄電池について、測定して求め、それぞれの鉛蓄電池における第1固有周波数を明らかにし、予め設定した鉛蓄電池の圧迫状態を圧迫度の大小とした基準周波数f10と比較する。
その比較の状態を模式的に図14に表す。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。
[側面間厚みの測定]
供試材の鉛蓄電池の側面間厚みの測定は、鉛蓄電池の極板に面する鉛蓄電池電槽の両側面の中央部分の垂直方向に基準点を設定し、鉛蓄電池が無い場合の両側の基準点間の距離を基準Xとして測定し、両側の基準点から両側面の各中央部分までの距離をX1、X2として測定し、両側面の各中央部分間の距離をX−(X1+X2)として算出し、その距離を当該鉛蓄電池の厚みとする。
その距離の測定には、接触方式では比較測定具(ゲージ)などを用いてもよく、非接触方式では2つの変位センサーを用いてレーザーなどの無線信号の伝達速度と応答時間によって測定しても良い。
【実施例1】
【0050】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:厚み判定値のみを用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、電槽化成した後、鉛蓄電池側面間の厚みを測定して、厚みと圧迫度の関係を把握して要求圧迫度p0に対する厚み判定値t0(=C)を求めた。
【0051】
次に、圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みti(i=1〜50)を測定した。測定した厚みtiと判定値t0を比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は20%であった。
【実施例2】
【0052】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:重量補正厚み判定値を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に液量を変えて電解液を注入し、重量の異なる鉛蓄電池を電槽化成した後、鉛蓄電池の重量および側面間の厚みを測定して、鉛蓄電池の重量と要求圧迫度p0に対する判定値の関係を把握し、要求圧迫度p0に対する重量補正厚み判定値Cw:tWU0(=aaa)、およびtWL0(=bbb)を求めた。
【0053】
次に、圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みtBi(i=1〜50)を測定した。測定した厚みtBiと重量補正厚み判定値CWを比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は40%であった。
【実施例3】
【0054】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:内部抵抗補正厚み判定値を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、化成条件を変えて電槽化成した後、鉛蓄電池の内部抵抗および側面間の厚みを測定して、鉛蓄電池の内部抵抗と要求圧迫度p0に対する判定値の関係を把握し、要求圧迫度p0に対する内部抵抗補正厚み判定値CR:tRU0(=ccc)、およびtRL0(=ddd)を求めた。
【0055】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みtBi(i=1〜50)と内部抵抗補正厚み判定値CRを比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は70%であった。
【実施例4】
【0056】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:重量・内部抵抗補正厚み判定値を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池の半数に所定量の電解液を注入し、化成条件を変えて電槽化成した後、鉛蓄電池の重量、内部抵抗および側面間の厚みを測定した。さらに残り半数の鉛蓄電池に液量を変えて電解液を注入し、重量の異なる鉛蓄電池を電槽化成した後、鉛蓄電池の重量、内部抵抗および側面間の厚みを測定した。
測定した鉛蓄電池の重量、内部抵抗及び側面間の厚みから鉛蓄電池の重量および内部抵抗と要求圧迫度p0に対する判定値の関係を把握し、要求圧迫度p0に対する重量・内部抵抗補正厚み判定値CWR:twR0を表3に示す形で求めた。
【0057】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みtBi(i=1〜50)と重量・内部抵抗補正厚み判定値CWRを比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は80%であった。
【実施例5】
【0058】
[衝撃の伝播波形パターンによる診断方法:第3固有周波数を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、電槽化成した後、図10に示す測定方法で衝撃に対する伝播波形を測定して、図11に示すような周波数−周波数応答関係を求め、各鉛蓄電池の圧迫力と第3固有周波数との関係から要求される圧迫力に対する判定値f30を求めた。
【0059】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の周波数f−周波数応答α1i(i=1〜50)を測定し、第3固有周波数f3iを求めた。測定したf3iと判定値f30を比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。
その抽出率は60%であった。
【実施例6】
【0060】
[衝撃の伝播波形パターンによる診断方法:第1固有周波数を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、電槽化成した後、図10に示す測定方法で衝撃に対する伝播波形を測定して、図13に示すような周波数−周波数応答関係を求めて、各鉛蓄電池の圧迫力と第1固有周波数との関係から要求される圧迫力に対する判定値f10を求めた。
【0061】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の周波数f−周波数応答α2i(i=1〜50)を測定し、第3固有周波数f1iを求めた。測定したf1iと判定値f30を比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。
その抽出率は80%であった。
【0062】
なお、極板群の圧迫度は、実施例の測定後、鉛蓄電池を解体して極板群の厚みを測定して実測圧迫度を求めた。この実測圧迫度を用いた場合でも要求圧迫度を満足する鉛蓄電池の抽出率は、変わらないことを確認している。
【符号の説明】
【0063】
1a、1b 診断装置
2 電池側面厚み測定装置
3 減圧装置
4 衝撃測定装置
5 衝撃発生機
6 ピックアップ端子
10 鉛蓄電池
11 (鉛蓄電池)側面
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の電解液の成層化を防止して、鉛蓄電池の長寿命化を図る技術に関するもので、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を非破壊的に診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、充放電中に電解液を構成する硫酸が沈降して電解液の比重が、極板の下部ほど高くなる成層化現象が起きることがある。この成層化現象では、極板下部の電解液比重が高くなるため、その充電効率が低下し、正負両極でサルフェーション(粗大硫酸鉛結晶粒の生成)が進行するとともに、濃淡電池を形成して自己放電が急速に進行する。その結果、電池寿命の著しい低下を招いてしまう。
そこで、鉛蓄電池の長寿命化には電解液の成層化現象を防止することが重要であり、そのため密閉形鉛蓄電池における極板群に対して、電解液を注入する前の乾燥状態において、適度な圧力で極板群を圧迫する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3など参照)。
【0003】
特許文献1では、平均孔径10〜100μmを有し、特定の高圧力で加圧した時と、低圧力で加圧した時の厚みの比が特定の値を示すフェルト状セパレータを用い、そのセパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度10〜25kPaで挿入した高い電池容量が維持でき、かつ長寿命な鉛蓄電池が提案されている。
【0004】
特許文献2には、密閉形鉛蓄電池において、極板群隔離材として平均繊維径6μm以上のガラス繊維を主体としたリテーナを用い、耐酸性で硫酸電解液を保持できる無機粉体を最大で2%添加し、正極板、負極板とともに構成した極板群に対し、電解液を注入する前の乾燥状態において10〜50kg/dm2の圧力で極板群を圧迫することによって、極板とリテーナとの間の隙間を生じにくくして、その成層化を防止することが提案されている。
さらに、極板群の圧迫力、極板群総空孔体積に対する電解液の充填率を特定の範囲のものとすることにより電解液の成層化を起こりにくくし、長寿命、高信頼性を備える密閉形鉛蓄電池が特許文献3に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−156080号公報
【特許文献2】特開平7−94206号公報
【特許文献3】特開2005−100794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1から3で明らかなように、圧迫不足の鉛蓄電池は、圧迫不足でない同型の鉛蓄電池に比べ使用期間(寿命)が低減するため、早期に発見する必要がある。特に電解液を充填した後の極板群の圧迫不足は、著しく寿命を縮めることとなり、使用機器に対して大きな影響を与える。
さらに、使用中において生じる極板群の圧迫不足は、寿命に影響すると共に、信頼性の大きな低下を与えてしまう結果となる。
【0007】
しかしながら、従来、電池を破壊せずに、極板群の圧迫状態を測定して、その圧迫不足を発見する手段はなかった。
そこで、本発明は、電解液の成層化が起こりにくい、長寿命、高信頼性の密閉形鉛蓄電池を提供するために、極板群の圧迫度を非破壊的に診断する方法並びに、その診断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況に鑑み本発明は成されたもので、本発明の第1の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧した状態における、鉛蓄電池の側面間の厚みを測定し、その測定された厚みが、鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値より大きい場合に圧迫不足であると診断することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の発明は、第1の発明における鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量による補正を施された判定値であることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法である。
【0010】
本発明の第3の発明は、第1の発明における鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法である。
【0011】
本発明の第4の発明は、第1の発明における鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法である。
【0012】
本発明の第5の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある鉛蓄電池側面の一方側にピックアップ端子を接触配置して設け、他方側に物理的衝撃を付加し、そのピックアップ端子により測定した物理的衝撃の時間変化による伝播波形のパターンと、予め、圧迫度の測定に供した鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における記憶された既知の極板群の圧迫度に対応した伝播波形のパターンとの比較によって、圧迫度の測定に供した鉛蓄電池における極板群の圧迫度を診断することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第6の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第1の発明に対応する装置であって、既定の圧力に内圧を調整した前記鉛蓄電池の側面の厚みを測定する手段と、既定された圧迫度の判定値を備え、測定した鉛蓄電池の厚みと規定された圧迫度の判定値とを比較することによって、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段と、鉛蓄電池の内圧を規定の圧力に調整する減圧手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第7の発明は、第6の発明における既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量の関数として鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第2の発明に対応する装置である。
【0015】
本発明の第8の発明は、第6の発明における既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗の関数として鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第3の発明に対応する装置である。
【0016】
本発明の第9の発明は、第6の発明における既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗の関数として鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する、前記第4の発明に対応する装置である。
【0017】
本発明の第10の発明は、鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置であって、鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある鉛蓄電池側面の一方側に接触配置されて、衝撃波の時間変化による伝播波形を測定するピックアップ端子と、そのピックアップ端子が配置された鉛蓄電池側面と相対する側面に物理的衝撃を付加する手段と、極板群の圧迫度を測定する鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における極板群の圧迫度と伝播波形のパターンの関係を記憶する手段と、ピックアップ端子で測定された伝播波形のパターンと、記憶されている既知の圧迫度における伝播波形パターンとを比較して、測定した鉛蓄電池の極板群の圧迫度の良否を判定する手段とを備えることを特徴とする、前記第5の発明に対応するものである
【発明の効果】
【0018】
圧迫不足の鉛蓄電池は、圧迫不足でない同型の鉛蓄電池に比べ、使用期間(すなわち寿命)が低減するため、早期に発見する必要があり、本発明によれば、鉛蓄電池を破壊せずに圧迫不足を容易に発見することができ、鉛蓄電池の長寿命化に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の鉛蓄電池の側面間厚みによる鉛蓄電池圧迫度診断装置の一例である。
【図2】本発明の鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図である。
【図3】本発明の鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図である。
【図4】本発明の鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図である。
【図5】鉛蓄電池の「側面間の厚み」と極板群の「圧迫度」の関係を示す模式図である。
【図6】鉛蓄電池の重量で分類した「側面間の厚み」と、極板群の「圧迫度」の関係を示す模式図である。
【図7】鉛蓄電池の重量による補正を加えた「重量補正厚み判定値」の説明図である。
【図8】極板群の要求圧迫度p0における鉛蓄電池の重量wiと、その重量毎の重量補正厚み判定値twi0との関係を示す図である。
【図9】鉛蓄電池の内部抵抗Rによる補正を加えた「内部抵抗補正厚み判定値」の説明図である。
【図10】本発明の衝撃の伝播波形パターンによる鉛蓄電池圧迫度診断装置の一例である。
【図11】周波数fnに対する周波数応答α1(fn)の関係を示す図である。
【図12】鉛蓄電池の圧迫度(圧迫力)と第3固有周波数との関係を示す図である。
【図13】周波数fnに対する周波数応答α2(fn)の関係を示す図である。
【図14】鉛蓄電池における第1固有周波数と、予め設定した鉛蓄電池の圧迫状態を圧迫度の大小とした基準周波数f10との比較を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は鉛蓄電池の極板群の圧迫度を非破壊的に診断するもので、第1の発明では(a)鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧し、その状態で鉛蓄電池の側面間の厚みを測定、その測定値が予め規定した判定値(必要とする圧迫度に対応した鉛蓄電池の側面間の厚み)と比較して、大きい場合に極板群は圧迫不足と診断する。
診断に際しては、図1に示すような診断装置1aを用いるもので、先ず鉛蓄電池10の内圧を減圧装置3を用いて、規定圧力へ減圧し、規定圧力に到達した時点で、電池側面厚み測定装置2により側面11間の厚みを測定、記憶し、判定装置(図示せず、例えばパーソナルコンピュータのような演算機)で圧迫度の診断を行うものである。
【0021】
さらに本発明では、予め規定する判定値の設定法に特徴を有するもので、前記(a)に示す方法の他に、一つは、(b)判定値に圧迫度を診断する被鉛蓄電池の重量による補正を加える方法(第2の発明)、さらに一つは、(c)圧迫度を診断する被鉛蓄電池の内部抵抗による補正を加える方法(第3の発明)、もう一つは、(d)圧迫度を診断する被鉛蓄電池の重量および内部抵抗による補正を加える方法(第4の発明)である。
図2から図4に、鉛蓄電池の側面間の厚みを用いた診断方法のフロー図を示す。図2から図4中の(a)〜(d)の記号は、後述する段落[0022]から段落[0037]中の(a)から(d)に示す判定値の設定法と対応している。
【0022】
[判定値の設定法]
(a)「鉛蓄電池の側面間の厚み」のみから求めた判定値(第1の発明)
図5の模式図に、鉛蓄電池の側面間の厚みtと極板群の圧迫度pの関係を示す。前記厚みtが図2における「Ln:厚み測定値」である。
図5において、p0は要求圧迫度を示し、その要求圧迫度p0に対応した側面間の厚み、すなわち判定値をt0としている。この判定値t0が図2における「C:厚み判定値」であり、厚みtがt0であるかどうかを以って被測定鉛蓄電池(圧迫度が不明な鉛蓄電池)の圧迫度を診断するものである。
【0023】
さらに、この側面間の厚みtと圧迫度pとの関係に関しては、図5中の「破線」で示すような変動が生じることが考えられる。変動が生じた場合、判定値t0は、t−〜t+の範囲で変動する結果となる。したがって、測定値tが判定値t0を満足した場合においても、圧迫度不足である場合も存在する。この割合を少なくするために、以下の判定値の設定法を用いる。
【0024】
(b)「鉛蓄電池の重量」による補正を加えた判定値[重量補正厚み判定値](第2の発明)
この重量補正厚み判定値を用いた診断方法は、図3の(b)経路で示されるものである。
図6の模式図に、鉛蓄電池の重量で分類した際の側面間の厚みtと、極板群の圧迫度pの関係を示す。図6に示すように、鉛蓄電池の重量wi(i=0,1,2,3,・・・)によって、t−p曲線は変位し、その影響で判定値twi0(i=0,1,2,3,・・・)も変化する。すなわち、鉛蓄電池の重量によって、圧迫度の診断精度が大きく左右されることになる。
【0025】
そこで、厚みの判定値に鉛蓄電池の重量による補正を加えるが、その一つの方法として、図7に示すような要求圧迫度p0に対する鉛蓄電池の重量w0(=A)と、重量w0を境界として、w0<wの場合の鉛蓄電池の側面間の厚みtwU0(「aaa」)、およびw≦w0の場合の鉛蓄電池の側面間の厚みtwL0(「bbb」)の値を予め把握して、「要求される圧迫度p0以上」に対する重量判定値A(=w0)と重量測定値wnの関係から、その関係状態における側面間の厚みの重量補正厚み判定値CWを下記式(1)のように設定する。
【0026】
【数1】
【0027】
他の方法の一つは、図6に示す結果から、要求される極板群の圧迫度p0における鉛蓄電池の重量wiと、その重量毎の重量補正厚み判定値twi0との関係(図8参照)を予め把握しておくことによって、測定した鉛蓄電池の重量を以って、重量補正を行った判定値、すなわち重量補正厚み判定値tw0を設定する。この重量補正厚み判定値を用いることで、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」で囲まれた範囲)にも対応した圧迫度診断が可能となる。
【0028】
又は、図8に示す結果から、鉛蓄電池の重量を区分し、その区分内における要求圧迫度p0を満たす鉛蓄電池の厚みである重量補正厚み判定値tw0を求め、区分けされた重量と重量補正厚み判定値からなる参照テーブル(表1に、その例の参照テーブルを示す)を作成することによって、圧迫度診断を行っても良い。
【0029】
【表1】
【0030】
(c)「鉛蓄電池の内部抵抗R」による補正を加えた判定値[内部抵抗補正厚み判定値](第3の発明)
(b)に示した重量補正の場合と同様に鉛蓄電池の内部抵抗Riと内部抵抗補正厚み判定値tRi0との関係を予め把握しておくことによって、先ず鉛蓄電池の内部抵抗Rnを測定して内部抵抗補正を行った判定値tR0を設定することが可能となり、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」)に対応した圧迫度診断が可能となる。
この内部抵抗補正厚み判定値を用いた診断方法は、図3の(c)経路で示されるものである。
【0031】
そこで、厚みの判定値に鉛蓄電池の内部抵抗による補正を加えるが、先の重量補正の場合と同様に、その一つの方法として、図9に示すような要求圧迫度p0に対する鉛蓄電池の内部抵抗R0(=B)と、内部抵抗R0を境界とし、R0<Rの場合の、鉛蓄電池の側面間の厚みtRU0(「ccc」)、およびR≦R0の場合の、厚みtRL0(「ddd」)の値を予め把握して、「要求される圧迫度p0以上」に対する内部抵抗判定値B(=R0)と内部抵抗測定値Rnの関係から、その関係状態における内部抵抗補正による側面間厚み判定値CRを下記式(2)のように設定する。
【0032】
【数2】
【0033】
他の方法の一つは、極板群に要求される圧迫度p0における鉛蓄電池の内部抵抗Riと、その内部抵抗毎の内部抵抗補正厚み判定値tRi0との関係を予め把握しておくことによって、測定した鉛蓄電池の内部抵抗Rnにより、補正を行った内部抵抗補正厚み判定値tR0を設定することが可能となり、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」で囲まれた範囲)に対応した圧迫度診断が可能となる。
【0034】
又は、表1に示した重量補正厚み判定値の場合と同様の方法を用いて、鉛蓄電池の内部抵抗を区分し、その区分内における要求圧迫度p0を満たす鉛蓄電池の厚みである内部抵抗補正厚み判定値tR0を求め、区分けされた内部抵抗と内部抵抗補正厚み判定値からなる参照テーブル(表2に、その例の参照テーブルを示す)を作成することによって、圧迫度診断を行っても良い。
【0035】
【表2】
【0036】
(d)鉛蓄電池の重量及び内部抵抗による補正を加えた判定値(第4の発明)
要求圧迫度p0に対する鉛蓄電池の重量wiと内部抵抗Riの両者と判定値tiとの関係式を、予め把握しておくことによって、圧迫度を診断したい鉛蓄電池の重量wiと内部抵抗Riを順に測定して、先に求めた関係式から重量・内部抵抗補正を行った判定値twR0を設定することが可能となり、図5の「t−p曲線」の変動幅(図5「破線」)に対応した圧迫度診断が可能となる。
この重量、内部抵抗補正厚み判定値を用いた診断方法は、図4の(d)経路で示されるものである。
【0037】
また、図4の(d)経路に示すように、重量判定値w0(=A)、および内部抵抗判定値R0(=B)を求めて、上記(1)式、(2)式を設定し、測定した鉛蓄電池の重量wn、内部抵抗Rnを順に(1)式、(2)式で表される関係と比較し、表3に示す重量・内部抵抗補正による厚み判定値CwRを用いて診断を下す。
すなわち、その両者の関係を満足する場合、その鉛蓄電池の極板群の圧迫度は、要求圧迫度p0を満たしていると診断する方法を用いても良い。
【0038】
【表3】
【0039】
[衝撃の伝播波形パターンによる診断方法](第5の発明)
本発明の第5の発明は、図10に示すような診断装置1bを用いるもので、鉛蓄電池10の極板群と平行な位置にある鉛蓄電池側面11の一方側にピックアップ端子6を接触配置して設け、他方側に衝撃発生機5を配し、その衝撃発生機5を用いて物理的衝撃を付加し、伝播してくる衝撃波をピックアップ端子6により測定し、その測定した物理的衝撃の時間変化による伝播波形のパターンと、予め、圧迫度の測定に供した鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における既知の極板群の圧迫度に対応した伝播波形のパターンとを衝撃測定装置4、若しくはパーソナルコンピュータのような演算機(図示せず)を用いて比較することによって、測定に供した鉛蓄電池における極板群の圧迫度を診断する診断方法である。
【0040】
この第5の発明では、圧迫度の診断に際して、その診断方法には、伝播波形の第3固有周波数を用いた診断方法と、第1固有周波数を用いた診断方法の2種類の診断方法を用いることを特徴とする。
【0041】
1.第3固有周波数を用いた診断方法
先ず、衝撃発生機を用いて鉛蓄電池側面に衝撃(入射力)を与え、ピックアップ端子にて、その衝撃に対応する伝播波(検出力)を検出する。
次いで、周波数成分を持つ入射力のx軸方向の力をFix(f)、検出力のx軸方向の力をFox(f)とし、下記(3)、(4)式にそれぞれ表す。
ある周波数fnに対する周波数応答α1(fn)を下記(5)式とする。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
この周波数fnに対する周波数応答α1(fn)をプロットすると図11に示す周波数応答と周波数の関係が得られる。
この図11の関係を、極板群の圧迫力を変えた複数の鉛蓄電池について、測定して求め、それぞれの鉛蓄電池における第3固有周波数を明らかにし、その鉛蓄電池の圧迫度(圧迫力)と第3固有周波数との関係を求める。例えば、図12のような関係を得る。
【0045】
次に、その蓄電池機種に必要な圧迫力(規定値)に対する第3固有周波数を、その電池機種の判定値f30として設定する。
その判定値f30に対して、測定したある蓄電池機種の蓄電池の第3固有周波数が高いものを判定「OK」、低いものを判定「NG」と診断する(図12参照)。
【0046】
2.第1固有周波数を用いた診断方法
この診断方法では、圧迫度の診断に際して以下の手順で診断を行う。
打撃装置によって周波数成分を持つ打撃振動波形Fi(f)、検出装置によって検出振動波形Fo(f)をそれぞれ測定する。次に、測定した打撃振動波形Fi(f)、検出振動波形Fo(f)を演算装置によって、下記(6)、(7)のようにフーリエ解析して、周波数fnにおける周波数応答α2(fn)を下記(8)式によって演算する。なお、α2(fn)の値のピークの周波数を、その低周波数側から順に第1固有周波数、第2固有周波数、第3固有周波数として演算する。
【0047】
【数5】
【0048】
この周波数fnに対する周波数応答α2(fn)をプロットすると図13に示す周波数応答と周波数の関係が得られる。
この図13の関係を、極板群の圧迫力を変えた複数の鉛蓄電池について、測定して求め、それぞれの鉛蓄電池における第1固有周波数を明らかにし、予め設定した鉛蓄電池の圧迫状態を圧迫度の大小とした基準周波数f10と比較する。
その比較の状態を模式的に図14に表す。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。
[側面間厚みの測定]
供試材の鉛蓄電池の側面間厚みの測定は、鉛蓄電池の極板に面する鉛蓄電池電槽の両側面の中央部分の垂直方向に基準点を設定し、鉛蓄電池が無い場合の両側の基準点間の距離を基準Xとして測定し、両側の基準点から両側面の各中央部分までの距離をX1、X2として測定し、両側面の各中央部分間の距離をX−(X1+X2)として算出し、その距離を当該鉛蓄電池の厚みとする。
その距離の測定には、接触方式では比較測定具(ゲージ)などを用いてもよく、非接触方式では2つの変位センサーを用いてレーザーなどの無線信号の伝達速度と応答時間によって測定しても良い。
【実施例1】
【0050】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:厚み判定値のみを用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、電槽化成した後、鉛蓄電池側面間の厚みを測定して、厚みと圧迫度の関係を把握して要求圧迫度p0に対する厚み判定値t0(=C)を求めた。
【0051】
次に、圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みti(i=1〜50)を測定した。測定した厚みtiと判定値t0を比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は20%であった。
【実施例2】
【0052】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:重量補正厚み判定値を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に液量を変えて電解液を注入し、重量の異なる鉛蓄電池を電槽化成した後、鉛蓄電池の重量および側面間の厚みを測定して、鉛蓄電池の重量と要求圧迫度p0に対する判定値の関係を把握し、要求圧迫度p0に対する重量補正厚み判定値Cw:tWU0(=aaa)、およびtWL0(=bbb)を求めた。
【0053】
次に、圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みtBi(i=1〜50)を測定した。測定した厚みtBiと重量補正厚み判定値CWを比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は40%であった。
【実施例3】
【0054】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:内部抵抗補正厚み判定値を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、化成条件を変えて電槽化成した後、鉛蓄電池の内部抵抗および側面間の厚みを測定して、鉛蓄電池の内部抵抗と要求圧迫度p0に対する判定値の関係を把握し、要求圧迫度p0に対する内部抵抗補正厚み判定値CR:tRU0(=ccc)、およびtRL0(=ddd)を求めた。
【0055】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みtBi(i=1〜50)と内部抵抗補正厚み判定値CRを比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は70%であった。
【実施例4】
【0056】
[鉛蓄電池の側面間の厚みによる診断方法:重量・内部抵抗補正厚み判定値を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池の半数に所定量の電解液を注入し、化成条件を変えて電槽化成した後、鉛蓄電池の重量、内部抵抗および側面間の厚みを測定した。さらに残り半数の鉛蓄電池に液量を変えて電解液を注入し、重量の異なる鉛蓄電池を電槽化成した後、鉛蓄電池の重量、内部抵抗および側面間の厚みを測定した。
測定した鉛蓄電池の重量、内部抵抗及び側面間の厚みから鉛蓄電池の重量および内部抵抗と要求圧迫度p0に対する判定値の関係を把握し、要求圧迫度p0に対する重量・内部抵抗補正厚み判定値CWR:twR0を表3に示す形で求めた。
【0057】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の側面間の厚みtBi(i=1〜50)と重量・内部抵抗補正厚み判定値CWRを比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。その抽出率は80%であった。
【実施例5】
【0058】
[衝撃の伝播波形パターンによる診断方法:第3固有周波数を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、電槽化成した後、図10に示す測定方法で衝撃に対する伝播波形を測定して、図11に示すような周波数−周波数応答関係を求め、各鉛蓄電池の圧迫力と第3固有周波数との関係から要求される圧迫力に対する判定値f30を求めた。
【0059】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の周波数f−周波数応答α1i(i=1〜50)を測定し、第3固有周波数f3iを求めた。測定したf3iと判定値f30を比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。
その抽出率は60%であった。
【実施例6】
【0060】
[衝撃の伝播波形パターンによる診断方法:第1固有周波数を用いた方法]
圧迫度を診断する鉛蓄電池と同規格の鉛蓄電池を、セパレータと正負極板で構成される極板群を電槽内に圧迫度を変えて挿入して作製した。その鉛蓄電池に所定量の電解液を注入し、電槽化成した後、図10に示す測定方法で衝撃に対する伝播波形を測定して、図13に示すような周波数−周波数応答関係を求めて、各鉛蓄電池の圧迫力と第1固有周波数との関係から要求される圧迫力に対する判定値f10を求めた。
【0061】
次に、実施例1で得られた圧迫度を診断する鉛蓄電池B1〜B50の50個の周波数f−周波数応答α2i(i=1〜50)を測定し、第3固有周波数f1iを求めた。測定したf1iと判定値f30を比較して要求圧迫度p0を満足する鉛蓄電池を抽出した。
その抽出率は80%であった。
【0062】
なお、極板群の圧迫度は、実施例の測定後、鉛蓄電池を解体して極板群の厚みを測定して実測圧迫度を求めた。この実測圧迫度を用いた場合でも要求圧迫度を満足する鉛蓄電池の抽出率は、変わらないことを確認している。
【符号の説明】
【0063】
1a、1b 診断装置
2 電池側面厚み測定装置
3 減圧装置
4 衝撃測定装置
5 衝撃発生機
6 ピックアップ端子
10 鉛蓄電池
11 (鉛蓄電池)側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、
前記鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧した状態における、前記鉛蓄電池の側面間の厚みを測定し、前記測定された厚みが、鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値より大きい場合に圧迫不足であると診断することを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項2】
前記鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量による補正を施された判定値であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項3】
前記鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項4】
前記鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項5】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、
前記鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある前記鉛蓄電池側面の一方側にピックアップ端子を接触配置して設け、
他方側に物理的衝撃を付加し、
前記ピックアップ端子により測定した前記物理的衝撃の時間変化による伝播波形のパターンと、
予め、前記圧迫度の測定に供した鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における記憶された既知の極板群の圧迫度に対応した伝播波形のパターン、
との比較によって、前記圧迫度の測定に供した鉛蓄電池における極板群の圧迫度を診断することを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項6】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置であって、
既定の圧力に内圧を調整した前記鉛蓄電池の側面の厚みを測定する手段と、
既定された圧迫度の判定値を備え、測定した前記鉛蓄電池の厚みと、前記規定された圧迫度の判定値とを比較することによって、前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段と、
前記鉛蓄電池の内圧を規定の圧力に調整する減圧手段と、
を備えることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項7】
前記既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量の関数として前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている請求項6記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項8】
前記既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗の関数として前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている請求項6記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項9】
前記既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗の関数として前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている請求項6記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項10】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置であって、
前記鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある前記鉛蓄電池側面の一方側に接触配置されて、衝撃波の時間変化による伝播波形を測定するピックアップ端子と、
前記ピックアップ端子が配置された鉛蓄電池側面と相対する側面に物理的衝撃を付加する手段と、
極板群の圧迫度を測定する鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における極板群の圧迫度と伝播波形のパターンの関係を記憶する手段と、
前記ピックアップ端子で測定された伝播波形のパターンと、前記記憶されている既知の圧迫度における伝播波形パターンとを比較して、測定した鉛蓄電池の極板群の圧迫度の良否を判定する手段と、
を備えることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項1】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、
前記鉛蓄電池の内圧を規定圧力に減圧した状態における、前記鉛蓄電池の側面間の厚みを測定し、前記測定された厚みが、鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値より大きい場合に圧迫不足であると診断することを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項2】
前記鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量による補正を施された判定値であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項3】
前記鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項4】
前記鉛蓄電池の側面間の厚みの関数として予め既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗による補正を施された判定値であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項5】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法であって、
前記鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある前記鉛蓄電池側面の一方側にピックアップ端子を接触配置して設け、
他方側に物理的衝撃を付加し、
前記ピックアップ端子により測定した前記物理的衝撃の時間変化による伝播波形のパターンと、
予め、前記圧迫度の測定に供した鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における記憶された既知の極板群の圧迫度に対応した伝播波形のパターン、
との比較によって、前記圧迫度の測定に供した鉛蓄電池における極板群の圧迫度を診断することを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する方法。
【請求項6】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置であって、
既定の圧力に内圧を調整した前記鉛蓄電池の側面の厚みを測定する手段と、
既定された圧迫度の判定値を備え、測定した前記鉛蓄電池の厚みと、前記規定された圧迫度の判定値とを比較することによって、前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段と、
前記鉛蓄電池の内圧を規定の圧力に調整する減圧手段と、
を備えることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項7】
前記既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量の関数として前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている請求項6記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項8】
前記既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の内部抵抗の関数として前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている請求項6記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項9】
前記既定された圧迫度の判定値が、圧迫度を診断される被鉛蓄電池の重量および内部抵抗の関数として前記鉛蓄電池の極板群の圧迫度を判定する手段に備えられている請求項6記載の鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【請求項10】
鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置であって、
前記鉛蓄電池の極板群と平行な位置にある前記鉛蓄電池側面の一方側に接触配置されて、衝撃波の時間変化による伝播波形を測定するピックアップ端子と、
前記ピックアップ端子が配置された鉛蓄電池側面と相対する側面に物理的衝撃を付加する手段と、
極板群の圧迫度を測定する鉛蓄電池と同種の鉛蓄電池における極板群の圧迫度と伝播波形のパターンの関係を記憶する手段と、
前記ピックアップ端子で測定された伝播波形のパターンと、前記記憶されている既知の圧迫度における伝播波形パターンとを比較して、測定した鉛蓄電池の極板群の圧迫度の良否を判定する手段と、
を備えることを特徴とする鉛蓄電池の極板群の圧迫度を診断する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−73703(P2013−73703A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210126(P2011−210126)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】
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