鉛蓄電池用格子板、極板及びこの極板を備えた鉛蓄電池
【課題】活物質保持機能を長期間維持すると共に、格子骨の表面に不動態膜が形成されるのを防いで、電池の長寿命化を図ることを可能にした鉛蓄電池用格子板を提供する。
【解決手段】枠部と、枠部の内側に格子を形成する縦格子骨及び横格子骨とを備えた鉛蓄電池用格子板において、縦格子骨及び横格子骨を、枠部よりも厚さが小さい太骨と、太骨よりも幅及び厚さが小さい細骨とにより構成し、太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨及び細骨を配置して、太骨の側方に活物質の流動を容易にするためのスペースを確保する。太骨の厚さ方向の両端を枠部の厚さ方向の両端面よりも内側に配置し、細骨の厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側に偏った位置に配置することにより、格子板の裏面側への活物質の充填を容易に行わせる。
【解決手段】枠部と、枠部の内側に格子を形成する縦格子骨及び横格子骨とを備えた鉛蓄電池用格子板において、縦格子骨及び横格子骨を、枠部よりも厚さが小さい太骨と、太骨よりも幅及び厚さが小さい細骨とにより構成し、太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨及び細骨を配置して、太骨の側方に活物質の流動を容易にするためのスペースを確保する。太骨の厚さ方向の両端を枠部の厚さ方向の両端面よりも内側に配置し、細骨の厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側に偏った位置に配置することにより、格子板の裏面側への活物質の充填を容易に行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用格子板、極板及びこの極板を備えた鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は、マンガン、水銀、アルカリ等に代表される一次電池と、ニッケル−カドミウム、リチウムイオン、ニッケル−水素等に代表される充電可能な二次電池とに大別される。
【0003】
また現在は、携帯電話等に多く使用される次世代の二次電池として、リチウムイオン電池や、ニッケル水素電池等の小型且つ高性能な電池の開発が進んでいる。しかしながら、リチウムイオン電池及びニッケル−水素電池は、価格の面で不利であり、特にリチウムイオン電池は、安全性の面で十分な配慮が必要であるため、停電時に備えてオフィスビルや病院等に設置するバックアップ電源に用いる電池や、瞬時電圧低下対策用の産業用電池、或いは自動車用電池等としては、制御弁式の鉛蓄電池が多く用いられている。また最近は、太陽電池を用いた発電設備や風力発電機を用いた発電設備のように、自然エネルギを用いた発電設備が盛んに建設されるようになっているが、このような発電設備においては、電力の平準化を図るために、発電設備に二次電池を用いた蓄電設備を付属させることが検討されている。このような蓄電設備においては、多量の電池を必要とするため、電池としては、鉛蓄電池を用いるのが有利である。
【0004】
図16は、制御弁式鉛蓄電池の構造の一例を示す分解斜視図である。同図において1及び2はそれぞれ正極板及び負極板、3はセパレータで、正極板1及び負極板2がセパレータを介して交互に積層されることにより極板群4が構成される。
【0005】
図16においては、構造をわかりやすくするために、正極板1,1,…と、負極板2,2,…と、セパレータ3,3,…とを、位置をずらして示しているが、実際には、正極板1及び負極板2がそれぞれの位置を合わせてセパレータ3を介して交互に積層される。
【0006】
5は複数の正極板1,1,…に設けられた耳部同士を接続する正極ストラップ、6は複数の負極板2,2,…に設けられた耳部同士を接続する負極ストラップで、正極ストラップ5及び負極ストラップ6にはそれぞれ正極柱5a及び負極柱6aが設けられている。
【0007】
極板群4は、電解液と共に電槽7のセル室7a内に収容される。電槽7の上端の開口部は、蓋8により閉じられ、蓋8に鋳込まれた正極端子金具9及び負極端子金具10にそれぞれ設けられた孔を通して正極柱5a及び負極柱6aが外部に導出される。蓋8には、電槽内の圧力が規定値を超えたときに開いて電槽内の圧力を開放する排気栓11が取り付けられている。
【0008】
なお図16に示した例は単電池であるため、電槽7に一つのセル室のみが設けられているが、電池の定格電圧が2Vを超える場合には、電槽7に複数のセル室が設けられて、各セル室内に極板群が挿入され、隣接するセル室内に挿入された極板群の所定の極性のストラップの間がセル室間の隔壁を貫通して設けられたセル間接続部を介して相互に接続されることにより、複数のセル室内にそれぞれ構成された電池が直列又は並列に接続されて、所定の定格電圧と定格容量とを有する鉛蓄電池が構成される。
【0009】
鉛蓄電池の極板としては、クラッド式、ペースト式、チュードル式等、種々の構造を有するものが知られているが、これらのうち、大電流放電が可能であるペースト式の極板が多く用いられている。
【0010】
ペースト式の正極板及び負極板はそれぞれ集電体を構成する格子板に正極活物質及び負極活物質を充填して保持させた構造を有する。集電体を構成する格子板としては、鋳造により製造されるものと、鉛または鉛合金の板にエキスパンド加工を施すことにより製造されるものとがあるが、本発明では、鋳造により製造される格子板を対象とする。
【0011】
鋳造により製造される格子板は、例えば特許文献1に示されているように、ほぼ四角形(長方形または正方形)の輪郭形状を有して、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨と、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、この枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とにより構成される。
【0012】
図16に示された例では、正極板1及び負極板2の集電体を構成する格子板が、符号20で示されている。図示の格子板20は、長方形の輪郭形状を有して、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨21a,21aと、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨21b,21bとを有する枠部21と、この枠部の内側に格子22を形成する複数の横格子骨23及び複数の縦格子骨24と、枠部21の一方の横枠骨21aに一体に形成された集電用耳部25と、他方の横枠骨21aに一体に形成された足部26とより構成される。
【0013】
本明細書では、格子板の耳部が設けられた部分を格子板の上部とし、縦枠骨21bが伸びる方向(縦枠骨の長手方向)を格子板の縦方向としている。また横枠骨21aが伸びる方向を格子板の横方向とし、格子板の縦方向及び横方向の双方に対して直角な方向を格子板の厚さ方向としている。極板の縦方向、横方向及び厚さ方向はそれぞれ、格子板の縦方向、横方向及び厚さ方向に沿う方向とする。また各枠骨及び各格子骨については、格子板の厚さ方向に沿う方向を厚さ方向とし、それぞれの長手方向と厚さ方向との双方に対して直角な方向を幅方向とする。
【0014】
この種の格子板を用いて鉛蓄電池用極板を製造する際には、鋳造された格子板20の厚さ方向を上下方向に向けた状態で、該格子板を搬送ベルトなどの搬送手段の上に載せて搬送する過程で、上方に配置したペースト充填機から格子板20にペースト状の活物質を供給して、該活物質を格子板に塗着し、塗着した活物質を、格子板の厚さ方向の一端側(上端側)から他端側(下端側)に押し込んで格子の目を通して流動させることにより、格子全体にペーストを充填する。
【0015】
図16においては、格子板20の各部が目視し得る状態で図示されているが、格子板20に活物質を充填した状態では、格子板20の少なくとも横格子骨23及び縦格子骨24の部分は活物質中に埋設される。
【0016】
鉛蓄電池は、使用に伴って各部の劣化が進むとやがて寿命に至る。鉛蓄電池が寿命に至る主な原因として、格子板(主に正極板の格子板)の腐食(酸化によるPbO2の生成)が挙げられる。PbO2は導電性を有するが、脆弱であるため、正極の格子骨の腐食が進むと、格子骨23(または24)が破断したり、格子骨の形が崩れて活物質27を保持する機能が失われたりするようになり、やがて電池が寿命に達する。
【0017】
図12は、従来の格子板を用いた極板の横格子骨23または縦格子骨24と活物質27とを、格子骨の軸線と直角な面に沿って断面して示した断面図である。図示の格子骨23(または24)は、極板の厚さ方向(図12において上下方向)に細長い六角形の横断面形状を有している。格子の集電性を高め、極板の各部で活物質の電気化学的反応を活発に行わせるためには、格子骨相互間の間隔をある程度狭くしておく必要がある。しかし、格子骨相互間の間隔が狭くなり過ぎると、ペースト状の活物質を格子板に充填する際に格子骨相互間の隙間を通して活物質が流動し難くなり、格子骨全体を活物質中に埋設することができなくなって、格子骨の一部が露出した状態になるおそれが生じる。また格子骨の数が多すぎると、所定の電池容量を得るために必要な量の活物質を格子板に充填することができなくなってしまう。
【0018】
図12に示した従来の格子板では、格子骨として同じ太さのものを用いて、隣り合う格子骨相互間に、ペースト状活物質27の流動を支障なく行わせるために必要な隙間を確保するとともに、所定の集電性能を得るために必要な密度で格子骨を配置することを可能にし、かつ格子板に所定量の活物質を保持することを可能にするように、格子骨の幅wと、格子骨相互間の間隔dとを設定していた。また電池の所望の耐用年数に応じて、格子骨の断面積を設定していた。
【0019】
図12に示すように、すべての格子骨の太さを同じにした場合には、格子骨の腐食が進んで寿命に近づいたときに、格子全体の機械的強度が低下して、格子骨が破断したり、枠部の内側の格子がその本来の形を維持することができなくなって活物質が脱落したりするため、所期の寿命が得られないおそれがあった。
【0020】
そこで、鉛蓄電池の長寿命化を図るために、図13に示すように、格子板の格子骨23(または24)として、断面積が大きい太い骨を用いて、格子骨が腐食に耐える期間を長くすることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0021】
また特許文献2に示されているように、格子骨を細骨と太骨とにより構成して、太骨の部分で機械的強度を持たせるようにした格子板も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2001−332268号公報
【0023】
【特許文献2】特開平4−171666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
最近、鉛蓄電池の長寿命化を図ることの必要性が高まっている。特に、自然エネルギを利用した発電設備に付帯設備として設ける蓄電設備においては、鉛蓄電池の寿命を、風力発電機や太陽電池等の発電手段の耐用年数と同等の長さ(例えば17年以上)とすることが望まれている。そこで、鉛蓄電池の長寿命化を図るための一つの方策として、図13に示すように、格子板の格子骨23及び24を、使用年数が寿命年数に達するまでの間、腐食に耐え、活物質を保持する機能を維持するために十分な機械的強度を保持し得る程度に十分に太くしておくことが考えられる。
【0025】
しかしながら、17年もの長い期間に亘って腐食に耐えるように、すべての格子骨を太くすると、格子骨相互間の隙間dが著しく狭くなるため、格子板を、その厚さ方向を上下方向に向けて寝かせた状態で該格子板に上方からペースト状の活物質を充填する際に、活物質を格子骨の間を通して円滑に流動させることが難しくなる。そのため、すべての格子骨の断面積を大きくした場合には、活物質を充填する際に下向きになっている格子骨23,24の端面の下方に活物質を回り込ませることが困難になり、図13に示されているように、格子骨23及び(または)24に活物質27から露出した部分が生じて、格子骨を視認できる状態になってしまう。
【0026】
このように活物質の充填が不完全な状態にある極板をそのまま電池に使用すると、格子骨と電解液である硫酸とが直に接触して、格子骨の表面に不動態である硫酸鉛の膜が生成する。この不動態膜は充電しても元に戻らない。格子骨に活物質から露出している面があると、該格子骨と活物質との間の界面に電解液が侵入することにより格子骨の周面全体に不動態膜が生成する。格子骨の周面全体に不動態膜が生成すると、その格子骨と活物質との間の導通が阻害されるため、充電を行うことができなくなって、電池の早期容量低下(PCL:Premature Capacity Loss)を招き、電池の寿命を長くするとの要請に応えることができなくなる。
【0027】
また、すべての格子骨を太くすると、格子板に充填し得る活物質の量が減少するため、電池の容量の低下を招く。
【0028】
太い格子骨を、相互間の間隔dを広げて配置することも考えられるが、格子骨の間隔を広げ過ぎると、格子の集電性が低下して格子と活物質との間の電子の流れが十分に行われなくなり、活物質の充放電反応が起り難くなるため、電池の充放電特性が低下するのを避けられない。
【0029】
特許文献2に示されているように、格子骨を太骨と細骨とにより構成すると、太骨の部分に機械的強度を持たせることができる。しかしながら格子骨を太骨と細骨とにより構成した従来の格子板では、太骨の厚さ(極板の厚さ方向に測った寸法)を枠部の厚さと同じにしていたため、格子板に活物質を充填した際に太骨の厚さ方向の両端が活物質で覆われずに露出するのを避けられなかった。このように格子板の太骨の厚さ方向の両端が露出した状態にある正極板を用いると、太骨の露出した端部が電解液に直に接触するだけでなく、太骨と活物質との界面を通して電解液が侵入して太骨の外周全体に不動態膜が生成するため、電池の早期容量低下が生じるのを避けられない。
【0030】
本発明の目的は、格子を長期間腐食に耐えさせて活物質を保持する機能を維持させることができるだけでなく、格子骨の一部が活物質から露出して格子骨の表面に不動態膜が形成されることにより早期に容量が低下するのを防いで、鉛蓄電池の長寿命化を図ることができるようにした鉛蓄電池用格子板を提供することにある。
【0031】
本発明の他の目的は、上記格子板を用いた鉛蓄電池用極板を提供することにある。
【0032】
本発明の更に他の目的は、上記の極板を用いて長寿命化を図ることができるようにした鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本願においては、上記の目的を達成するために、少なくとも以下に示す第1乃至第13の発明が開示される。
【0034】
第1の発明は、横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備えた鉛蓄電池用格子板を対象とする。
【0035】
本発明においては、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方が、鉛蓄電池の所期の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨と前記細骨よりも断面積が大きい複数の太骨とを有して、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とが配列される。複数の太骨は、枠部の厚さよりも小さい厚さを有して、それぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を同一平面上に位置させた状態で配置される。また細骨の幅及び厚さはそれぞれ太骨の幅及び厚さよりも小さく設定され、複数の細骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面の位置を越えない範囲で該複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられている。また縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を構成する複数の細骨は、太さが異なる複数種類の細骨を有している。
【0036】
上記のように、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を太骨と細骨とにより構成すると、細骨の部分の腐食が進んでその機械的強度が低下した場合でも、より長期間の腐食に耐える太骨の部分に機械的強度を持たせて格子の形状を維持することができるため、すべての格子骨を細骨により形成した場合よりも更に長期間に亘って格子の活物質保持機能を維持することができる。
【0037】
また上記のように、各太骨に隣接する格子骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列しておくと、太骨の側方にペースト状活物質を流動させるための広いスペースを確保することができるため、格子板の一方の面側から活物質を充填する際に、活物質を格子板の他方の面側に円滑に流動させることができる。
【0038】
更に上記のように、複数の太骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させた状態で設けると、格子板に活物質を充填する際に、太骨の下方に活物質を流入させるスペースを形成することができるため、活物質を充填する際に下向きになっている太骨の端面が活物質で覆われることなく露出するのを防ぐことができる。また上記のように、複数の細骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けておくと、格子板に活物質を充填する際に各細骨の下方に広いスペースを確保して、各細骨の下方に流れ込んだ活物質が太骨の下方に流れ込むのを容易にすることができるため、太骨及び細骨を活物質中に確実に埋設することができ、格子骨の一部が露出した状態になるおそれを無くすことができる。特に格子板に活物質を充填する際に、枠骨の厚さ以上まで活物質を充填するようにすると、格子骨の活物質中への埋設を更に確実に行わせることができる。従って、格子骨の表面に不動態膜である硫酸鉛の膜が生成されて早期に容量が低下するのを防ぐことができる。
【0039】
上記のように、本発明によれば、格子部分に、所望の寿命期間の間腐食に耐える断面積を有する細骨の外に、該細骨よりも断面積が大きい太骨を設けたので、長期間に亘って格子の形状を保持してその活物質保持機能を維持させることができ、また格子骨の一部が活物質から露出した状態が生じて格子骨の表面に不動態膜が生成されるのを防ぐことができる。従って、本発明の格子体を用いて鉛蓄電池用極板(特に正極板)を構成することにより、鉛蓄電池の寿命を従来より大幅に延ばすことができる。
【0040】
本願に開示された第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、縦格子骨が、前記太骨である太縦骨と、前記細骨である細縦骨とを有し、横格子骨は、前記太骨である太横骨と、前記細骨である細横骨とを有している。
【0041】
上記のように、縦格子骨を太縦骨と細縦骨とにより構成し、横格子骨を太横骨と細縦骨とにより構成すると、長期間腐食に耐える格子骨の数を増やして長期間に亘って活物質保持機能を維持することができる。また細縦骨及び細横骨の存在により、ペースト状活物質の充填時にその流動を容易にすることができるため、活物質を充填する際に下向きになっている太縦骨及び太横骨の端面を活物質で確実に覆うことができ、格子骨の一部が活物質から露出した状態になるのを防ぐことができる。従って鉛蓄電池の少なくとも正極板に本発明に係わる格子板を用いることにより、鉛蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0042】
第3の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、複数の細縦骨及び複数の細横骨が、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。
【0043】
第4の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、一方の横枠骨(前記耳部を備えた横枠骨)に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている。すなわち他方の横枠骨寄りの領域で太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0044】
第5の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、縦格子骨を構成する太縦骨及び細縦骨が、横枠骨の長手方向に太縦骨と細縦骨とが交互に並ぶように設けられている。本発明においてはまた、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ第1の領域及び第2の領域が設定され、一方の横枠骨及び他方の横枠骨を共に太横骨と見なしたときに、第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数よりも多くなるように、第1の領域及び第2の領域における細横骨の数が設定されている。すなわち第2領域においては、太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0045】
第6の発明は、第5の発明に適用されるもので、本発明においては、第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が4であり、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数は3である。
【0046】
上記第4の発明ないし第6の発明のように、耳部に近い領域で太横骨の本数に対する細横骨の本数の割合を多くし、耳部から遠い領域では、太横骨の本数に対する細横骨の本数の割合を少なくするように横格子骨を構成する太横骨及び細横骨を設けると、耳部から離れるに従って格子骨の電気抵抗の平均値を小さくすることができるため、集電抵抗の低減を図ることができ、耳部から離れた格子骨の部分での電圧降下が大きくなるのを防ぐことができる。
【0047】
また上記のように、耳部に近い第1の領域で太横骨の間に設ける細横骨の本数を多くし、耳部から遠い第2の領域では、太横骨の間に設ける細横骨の本数を少なくするように太横骨及び細横骨を設ける場合に、横枠骨の長手方向に太縦骨と細縦骨とが交互に並ぶように太縦骨と細縦骨とを設けると、太縦骨の側方により広いスペースを確保することができるため、活物質を充填する際の活物質の流動を容易にして、格子骨の下方への活物質の充填を円滑に行わせることができ、格子骨の一部が活物質で覆われることなく露出した状態になるのを確実に防ぐことができる。
【0048】
特に、第6の発明のように、太横骨及び細横骨を、耳部に近い第1の領域では隣り合う太横骨の間に4本の細横骨が並び、耳部から離れた第2の領域では、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が並ぶように設けた場合には、耳部から離れた領域での集電抵抗の低減を図って、耳部から離れた格子骨の部分で電圧降下が大きくなるのを防ぐことができるだけでなく、活物質の充填を容易にして、格子骨の一部が露出した状態になるのを防ぐ効果を特に高くすることができることが実験により確認されている。
【0049】
第7の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、太縦骨の幅を細縦骨の幅で除した値、太縦骨の厚さを細縦骨の厚さで除した値、太横骨の幅を細横骨の幅で除した値及び太横骨の厚さを細横骨の厚さで除した値が1.1〜1.5の範囲に設定される。
【0050】
本発明者が行った実験の結果、太骨の太さと細骨の太さとの関係を上記のように設定しておくと、太骨の幅及び厚さ並びに細骨の幅及び厚さを適正な大きさとして、活物質を充填する際の活物質の流動を円滑に行わせて格子骨全体を活物質中に確実に埋設することができ、格子板への活物質の保持を確実に行わせることができるため、極板の長寿命化を図ることができることが確認された。
【0051】
第8の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、横格子骨が、前記太骨である太横骨と前記細骨である細横骨とを有するが、縦格子骨は前記太骨である太縦骨のみからなる。
【0052】
このように、横格子骨のみを太骨と細骨とにより構成した場合も、すべての格子骨を太骨により構成する場合に比べると、太骨の側方に形成されるスペースを広くとることができるため、活物質の流動を容易にして、格子板への活物質の充填を円滑に行わせることができ、格子骨の一部が露出した状態にある極板が製造される確率を少なくすることができる。またこの場合、縦格子骨を太縦骨と細縦骨とにより構成する場合に比べて、長期の腐食に耐える太縦骨の数を多くすることができるため、長期間に亘って格子の形状を維持することができ、格子の活物質保持機能を長期間に亘って保持することができる。
【0053】
第9の発明は第8の発明に適用されるもので、本発明においては、複数の細横骨が、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。
【0054】
第10の発明は、第8の発明に適用されるもので、本発明においては、一方の横枠骨(前記耳部を備えた横枠骨)に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている。すなわち他方の横枠骨寄りの領域で太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0055】
第11の発明は、第8の発明に適用されるもので、本発明においては、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を前記第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域が設定される。すなわち第2領域においては、太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0056】
このように構成すると、第4の発明と同様に、耳部から離れるに従って格子骨の電気抵抗の平均値を小さくすることができるため、集電抵抗の低減を図ることができ、耳部から離れた格子骨の部分での電圧降下が大きくなるのを防ぐことができる。
【0057】
第12の発明は、本発明に係わる格子板を用いた鉛蓄電池用極板に係わるもので、本発明においては、第1ないし第11の発明のいずれかに係わる格子板に活物質を充填することにより鉛蓄電池用極板が構成される。
【0058】
第13の発明は、本発明に係わる格子板を用いた鉛蓄電池に係わるもので、本発明においては、少なくとも正極板が、第1ないし第11の発明の何れかに係わる格子板に正極活物質を充填した構成を有する。負極板も第1ないし第11の発明の何れかに係わる格子板に負極活物質を充填した構成を有していてもよいが、負極板の構成は第1ないし第11の発明の何れかに係わる格子板を用いる場合に限定されない。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を太骨と細骨とにより構成するので、細骨の部分の腐食が進んでその機械的強度が低下した状態でも、より長期間の腐食に耐える太骨の部分に機械的強度を持たせて格子の形状を維持することができ、すべての格子骨を細骨により形成した場合よりも更に長期間に亘って格子の活物質保持機能を維持することができる。
【0060】
本発明によればまた、各太骨に隣接する格子骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列しておくので、太骨の側方にペースト状活物質を流動させるための広いスペースを確保することができ、格子板の一方の面側から活物質を充填する際に、活物質を格子板の他方の面側に円滑に流動させることができる。
【0061】
特に本発明によれば、複数の太骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させた状態で設けるので、格子板に活物質を充填した際に、太骨の厚さ方向の両端を活物質中に埋設することができる。本発明においてはまた、複数の細骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けるので、格子板に活物質を充填する際に各細骨の下方に広いスペースを確保して、各細骨の下方に流れ込んだ活物質が太骨の下方に流れ込むのを容易にすることができる。従って本発明によれば、太骨及び細骨を活物質中に確実に埋設することができ、格子骨の一部が露出した状態が生じるおそれを無くすことができる。
【0062】
上記のように、本発明によれば、格子を細骨と太骨とにより構成して格子の機械的強度を高めるとともに、細骨及び太骨の双方が活物質中に確実に埋設される構造としたので、長期間腐食に耐えさせて格子の活物質保持機能を維持させることができる。また細骨の厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させることにより、活物質を充填する際に下方を向いた状態にされる太骨の厚さ方向の端部側に活物質が流動するのを容易にしたので、活物質を充填する際に格子骨の一部が活物質から露出した状態が生じるのを確実に防ぐことができ、格子骨の全体が活物質で完全に覆われた極板を歩留まりよく製造することができる。本発明に係わる格子体を用いて鉛蓄電池用極板(特に正極板)を構成することにより、電池の寿命を従来より大幅に延ばすことができ、従来技術では実現できなかった、風力発電機や太陽電池などの自然エネルギを利用した発電手段の寿命と同程度の寿命を有する長寿命の鉛蓄電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係わる鉛蓄電池用格子板の正面図である。
【図2】図2は、図1の格子板に活物質を充填して構成した極板を図1のII−II線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図3】図3は、図1の格子板に活物質を充填して構成した極板を図1のIII−III線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の格子板に活物質を充填して構成した極板を図1のIV−IV線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の変形例を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の他の変形例を示した断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の他の変形例を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の更に他の変形例を示した断面図である。
【図9】図9は、本発明が対象とする格子板を用いた極板の参考構成例の一部の断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施例に係わる格子板を用いた極板の活物質の充填状態の一例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例に係わる格子板を用いた極板の活物質の充填状態の他の例を示す断面図である。
【図12】図12は、従来の格子板に活物質を充填して構成した極板の活物質の充填状態を示す断面図である。
【図13】図13は、太骨のみにより格子を構成した場合の活物質の充填状態の一例を示した断面図である。
【図14】図14は、本発明の種々の実施例に係わる格子体を用いた正極板について行った寿命加速試験において測定された格子の腐食量を、試験における経過時間を実際の使用年数に換算して求めた換算年数に対して示したグラフである。
【図15】図15は、本発明の実施例について行った変動抑制試験の結果を示すグラフである。
【図16】図16は、鉛蓄電池の構成の一例を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明に係わる鉛蓄電池用格子板の具体的な構成例について説明するのに先立って、先ず本発明に係わる鉛蓄電池用格子板、該格子板を用いた極板及び該極板を用いた鉛蓄電池に関する基本的な事項について説明する。
[格子板の材料]
本発明に係わる格子板は、主原料を鉛として、これにスズ、カルシウム、アンチモン、ナトリウム等の合金素材を添加した合金材料により形成することができる。主原料に添加する合金素材としては、特にスズ及びカルシウムの両方を用いるのが好ましい。カルシウムを添加すると、自己放電の割合を減少させることができる。主原料(鉛)にカルシウムを添加すると、骨の腐食が起り易いという問題が生じるが、骨の腐食は、スズの添加により抑制することができる。
【0065】
格子板は、枠部と、枠部の内側に設けられる格子と、枠部に設けられる集電用耳部とにより構成される。枠部は、縦方向に相対する一対の横枠骨と、横方向に相対する一対の縦枠骨とにより構成され、一方の横枠骨に集電用耳部が設けられる。枠部の内側に設けられる格子は、横枠骨と平行に伸びる横格子骨と、縦枠骨と平行に伸びる縦格子骨とにより構成される。
【0066】
[枠部]
上記横枠骨及び縦枠骨からなる枠部は、格子板の外形形状を画定するものである。枠部の形状は、特定の形状に限定されるものではないが、最終的に使用される鉛蓄電池の電槽(外装ケース)の内部形状に適合させた形状とすることが好ましい。立方体または直方体状の電槽を用いる場合には、枠部の輪郭形状を正方形又は長方形とすることができる。
【0067】
枠部の輪郭形状を長方形とする場合、長辺の寸法を370〜390mm、短辺の寸法を130〜150mmとすることができる。このような寸法を採用すると、大きな極板を作製することができ、この極板を多数枚用いることで放電容量の大きな鉛蓄電池を作製することができる。また、上記の寸法は、汎用されている産業用鉛蓄電池の極板と同程度の寸法であり、上記の寸法の格子体を用いて構成した極板を収容する電槽及び該電槽を閉じる蓋としては、汎用されているものをそのまま用いることができる。
【0068】
横枠骨及び縦枠骨の断面形状は特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状とするのが好ましい。横枠骨及び縦枠骨の断面形状は、より具体的には、格子板の厚さ方向に長い菱形や六角形の断面形状とすることができる。
【0069】
横枠骨及び縦枠骨の厚さは特に限定されるものではないが、5mm以上であることが好ましい。本発明では、枠部の内側に格子を構成する内骨(格子骨)の厚さを、枠骨の厚さ未満とすることが重要である。横枠骨及び縦枠骨の厚さを5mm以上の寸法で標準化しておけば、格子板を長期間に亘って腐食に耐えさせるために内骨を太くしたり、格子に活物質を充填する際に格子の一部を露出させないようにするために内骨を細くしたりする設計が容易になる。
【0070】
[耳部]
格子板の枠部に集電用の耳部を設ける。この耳部は、極板群の同極性の極板同士を接続するストラップを接続するために用いられる。耳部の形状、個数、厚さ、材質等は、特に限定されるものではないが、電槽及びその蓋の形状と極板の形状とに合わせて、適宜の形状及び大きさに形成することが好ましい。耳部の個数は1個であるのが好ましく、その厚さは枠骨の厚さと同等程度であることが好ましい。製造を容易にするため、耳部は枠部及び格子部と同じ材料により形成するのが好ましい。
【0071】
[縦格子骨及び横格子骨]
縦格子骨及び横格子骨は、枠部の外形形状を維持すると共に、活物質を保持し、活物質の充放電反応を行わせるために必要である。縦格子骨及び横格子骨の本数は特に限定されるものではないが、本数を増やしすぎると活物質を充填する際に格子骨相互間の隙間が狭くなりすぎ、活物質充填時に下方を向いている格子の裏面側に活物質が回り込みにくくなってしまう。逆に格子骨の数が少なすぎると、充填した活物質を保持することが難しくなるだけでなく、活物質の充放電反応を活発に行わせることができなくなる。そのため、縦格子骨及び横格子骨の本数は、活物質の充填が容易であり、活物質を確実に保持することができ、活物質の充放電反応に支障を来すことがなく、且つ使用される鉛蓄電池の放電容量に必要な活物質量の確保に適合するように、適宜の本数に設定することが好ましい。
【0072】
縦格子骨及び横格子骨の断面形状は特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、活物質を確実に保持することができ、且つ活物質の充填を容易に行わせることができる形状とすることが好ましい。縦格子骨及び横格子骨の断面形状は、具体的には、格子板の厚さ方向(極板の厚さ方向)に長い菱形や六角形とすることができる。
【0073】
縦格子骨及び横格子骨の材質は、先に述べた横枠骨及び縦枠骨と同じものであっても、異なるものであっても良いが、横枠骨、縦枠骨、横格子骨及び縦格子骨を、一括して一体成形することを容易に行うことができるようにするために、縦格子骨及び横格子骨を構成する材料は、横枠骨及び縦枠骨を構成する材料と同じものであることが好ましい。
【0074】
本発明で用いる複数の縦格子骨及び(又は)横格子骨は、その全てを同じ太さとするのではなく、所望の寿命期間の間腐食に耐え得るようにある程度の余裕を持たせて設定された断面積を有する細骨と、この細骨よりも断面積が大きい太骨とにより構成し、各太骨に隣接する骨が必ず細骨となるように太骨と細骨とを配列する。細骨の断面積は、実験データに基づいて決定することができる。太骨の断面積は、設定した寿命期間が近づいて格子骨の腐食が進み、細骨の機械的強度が低下した段階でも格子の形状を初期の形状に維持するために必要な強度を太骨に持たせるために必要な大きさに設定する。この太骨の断面積も、実験データに基づいて決定することができる。
【0075】
横格子骨及び縦格子骨の少なくとも一方に設ける複数の太骨は、枠部の厚さよりも小さい厚さを有するように形成されて、それぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を同一平面上に位置させた状態で配置される。
【0076】
横格子骨及び縦格子骨の少なくとも一方に設ける細骨は、太骨の幅よりも小さい幅と、太骨の厚さよりも小さい厚さとを有するように構成し、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方は、太骨が連続して配置されることがないように、太骨の隣に必ず細骨が配置されるように構成する。複数の細骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に配置した状態で設ける。このように構成すると、格子体に活物質を充填する際に下向きになる格子板の裏側(厚さ方向の他端側)の形状を、太骨が下方に突出し、細骨が凹んだ状態で配置された形状として、各細骨の下方に広いスペースを形成することができるため、太骨の下方に活物質を流れ込み易くすることができ、格子の一部が活物質で覆われていない状態が生じるのを防ぐことができる。
【0077】
本発明の好ましい態様では、複数の細骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を、複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設ける。
【0078】
本発明において、太骨の厚さ方向の両端を枠部の厚さ方向の両端よりも内側に位置させて配置することは極めて重要である。太骨の厚さを枠部の厚さと同一として、太骨の厚さ方向の一端を枠部の厚さ方向の一端と同一の平面上に位置させ、太骨の厚さ方向の他端を枠部の厚さ方向の他端と同一の平面上に位置させるように太骨を設けた場合には、活物質を充填する際に太骨の厚さ方向の端部が露出した状態になるのを避けられない。活物質を充填する際に上向きにある太骨の端部は、活物質を多めに供給することにより活物質中に埋めることができるが、活物質を充填する際に下向きにある太骨の端部を活物質で覆うことは困難である。太骨の端部が活物質で覆われることなく露出した状態にある正極板を用いて鉛蓄電池を構成すると、露出している太骨の端部が直接電解液に接触するだけでなく、太骨と活物質との界面を通して電解液が侵入して電解液が太骨の表面に直に接触するため、太骨の表面に不動態膜(硫酸鉛)が生成する。太骨の表面に不動態膜が生成すると、太骨と活物質との間で電流が流れなくなり、太骨の部分では活物質の充放電反応が行われなくなるため、早期の容量低下を招き、電池寿命を短くしてしまう。これに対し、本発明のように、太骨の厚さを枠部の厚さよりも薄くして、細骨の厚さ方向の両端だけでなく、太骨の厚さ方向の両端をも枠部の厚さ方向の両端よりも内側に位置させておけば、太骨及び細骨を完全に活物質で覆うことができるため、格子体に活物質を充填して得た極板を用いて鉛蓄電池を構成した場合に、格子骨に電解液が直に接触して格子骨の表面に不動態膜が形成されるのを防ぐことができ、電池の早期の容量低下を防いで、電池の寿命を延ばすことができる。
【0079】
本発明においては、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列するが、横格子骨及び縦格子骨を構成する細骨の太さ(幅及び厚さ)は必ずしも1種類である必要はなく、幅及び厚さが異なる複数種類の細骨を設けることができる。また枠骨と太骨との間及び太骨と太骨との間に配置する細骨は、1本でも複数本でもよい。
【0080】
縦格子骨及び横格子骨はその何れか一方のみに太骨と細骨とを設け、他方を全て同じ太さの骨により構成することもできるが、格子骨の耐腐食性を向上させ、格子骨の一部が活物質で覆われない状態が生じるのを防ぐという本発明の目的を達成するためには、縦格子骨及び横格子骨の双方を太骨と細骨とにより構成することが好ましい。
【0081】
横格子骨及び縦格子骨のそれぞれを構成する太骨及び細骨の断面形状は、特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状であることが好ましい。横格子骨及び縦格子骨のそれぞれを構成する太骨及び細骨の断面形状は、より具体的には、厚さ方向に長い菱形や六角形等とすることができる。
【0082】
縦格子骨及び横格子骨の双方を太骨と細骨とにより構成する場合の構成の説明を容易にするため、本明細書では、縦格子骨を構成する細骨及び太骨をそれぞれ細縦骨及び太縦骨と呼び、横格子骨を構成する細骨及び太骨をそれぞれ細横骨及び太縦骨と呼ぶことにより、縦格子骨を構成する細骨及び太骨と、横格子骨を構成する細骨及び太骨とを区別する。
【0083】
活物質の脱落を防止し、活物質の保持を確実に行わせるためには、複数の縦格子骨を、細縦骨と太縦骨とにより構成して、細縦骨と太縦骨とを交互に配置するのが好ましい。
【0084】
また格子は、耳部から遠ざかるに従って電気抵抗が大きくなり、耳部から遠ざかるに従って格子骨で生じる電圧降下が大きくなっていく。そのため、耳部から遠い箇所で格子骨と活物質との間に流れる電流が制限され、耳部から離れた箇所で活物質の充放電反応が活発に行われにくくなる。このような状態が生じるのを防ぐため、耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、耳部から離れた他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなるように格子骨を配置するのが好ましい。そのため、本発明の好ましい態様では、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域が設定される。
【0085】
第1の領域及び第2の領域における細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合は、特に限定されるものではないが、第1の領域では、1本の太横骨の隣に4本の細横骨が並び、第2の領域では、1本の太横骨の隣に3本の細横骨が並ぶように、太横骨の本数と細横骨の本数との割合を設定するのが好ましい。このような割合で太横骨と細横骨とを設けると、耳部から遠ざかるに従って格子の電気抵抗(電圧降下)が大きくなるのを抑制しつつ、ペースト状活物質の充填を容易に行わせることができる。
【0086】
[細骨の太さと太骨の太さとの関係]
太横骨及び太縦骨の太さ(断面積)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。格子板の鋳造性を考慮して、太横骨の太さと太縦骨の太さとを異ならせることができる。例えば、太横骨の太さを縦太骨の太さよりも太くしておくと、格子板を鋳造する鋳型の横格子骨を鋳造するキャビティを鉛直方向に向けた状態で、重力鋳造方式により格子板を鋳造する場合に、太横骨を鋳造する断面積が大きいキャビティ(鉛直方向に伸びるキャビティ)内を通して、大量の溶融鉛を円滑に流すことができるため、縦格子骨を鋳造するキャビティ内への溶湯の流れを円滑にして、鋳造を容易にすることができる。
【0087】
また太骨の太さと細骨の太さとの関係は、活物質の充填の容易さ、極板の寿命などを考慮して適宜に設定する。本発明の好ましい態様では、後記する実施例を検証した結果から、太骨の幅を細骨の幅で除した値及び太骨の厚さを細骨の厚さで除した値をそれぞれ太骨の幅及び厚さの細骨の幅及び厚さの評価値として、これらの評価値が共に1.1〜1.5の範囲に収まるように、太骨の太さと細骨の太さとの関係を設定する。
【0088】
即ち、太縦骨の幅を細縦骨の幅で除した値、太縦骨の厚さを細縦骨の厚さで除した値、太横骨の幅を細横骨の幅で除した値及び太横骨の厚さを細横骨の厚さで除した値が1.1〜1.5の範囲に収まるように太骨の太さと細骨の太さとの関係を設定する。
【0089】
例えば太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の厚さを変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.1未満になると、細骨の厚さが厚くなって幅が狭くなり、格子板の厚さ方向の一端側を上にして格子板に活物質を充填する際に格子板の下面(裏面)側で、各細骨の下方に形成されるスペースが狭くなるため、各太骨の下方に活物質が流れ込み難くなって、太骨の一部が活物質で覆われない状態が生じることがある。またこの場合、細骨の幅が狭くなりすぎるため、充填した活物質を確実に保持することが難しくなり、活物質を充填する工程に続いて活物質を熟成・乾燥する工程に移行するために極板を起立させた際に、活物質が格子板から脱落し易くなる。
【0090】
また太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.1未満になると、細骨の厚さは小さくなるが、幅が広くなり過ぎて、細骨と太骨との間の間隔が狭くなり、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0091】
更に、細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の厚さを変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.1未満になると、太骨の厚さが大きくなり過ぎ、太骨の厚さを枠部の厚さ未満に設定することができなくなる。
【0092】
また細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.1未満になると、太骨の幅が広くなり過ぎて、細骨と太骨との間の間隔が狭くなり、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0093】
更に、太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の厚さ幅を変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.5を超えると、細骨の幅が広くなり過ぎ、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0094】
また太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.5を超えると、細骨の厚さが厚くなりすぎて、活物質を充填する際に細骨の下方に形成されるスペースが不足し、太骨の下方に活物質を回り込ませることができなくなって、太骨の端面が露出した状態になるおそれが生じる。
【0095】
更に、細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の厚さを変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.5を超えると、太骨の厚さが厚くなり過ぎ、太骨の厚さを枠部の厚さ未満にすることができなくなる。
【0096】
また細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.5を超えると、太骨の幅が広くなり過ぎて、太骨と細骨との間の隙間が狭くなるため、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0097】
上記太骨の幅の評価値及び厚さの評価値が共に1.1〜1.5の範囲に入るようにすれば、太骨の幅及び厚さ並びに細骨の幅及び厚さを適正な大きさとして、活物質を充填する際の活物質の流動を円滑に行わせて格子の一部が露出するのを防ぐとともに、格子板への活物質の保持を確実に行わせることができるため、電池の長寿命化を図ることができる。
【0098】
[活物質]
鉛蓄電池用の極板を構成する際には、格子板にペースト状に調製した活物質が充填される。この活物質は特に限定されるものでないが、一酸化鉛を含んだ鉛粉、水、硫酸等を混練(正極、負極の特性に合わせてカットファイバ、炭素粉末、リグニン、硫酸バリウム、鉛丹等の添加物を加える場合もある)して作製するのが好ましい。また活物質の充填量は、枠骨の内側に形成される骨(細骨及び太骨)が完全に隠れれば問題はないが、枠骨の厚さ以上まで充填するのが望ましい。
【0099】
[格子板の製造方法]
格子板の製造方法としては、重力鋳造方式(GDC:Gravity Die Casting)、連続鋳造方式、エキスパンド方式、打ち抜き方式等があるが、本発明に係わる格子板の製造には重力鋳造方式を用いることが好ましい。重力鋳造方式は、格子板の原材料金属(合金)を溶融し、この溶融金属(合金)を、該溶融金属の温度に耐え得る材料からなる金型内に重力により流し込み、鋳造する方法である。重力鋳造方式を用いることが好ましい理由は、重力鋳造方式では、鋳造可能な格子の太さに理論上限界がなく、且つ太格子骨と細格子骨とを合わせ持つ格子の製造が容易であり、得られた格子板の集電特性及び耐食性が優れていることにある。
【0100】
[極板]
本発明に係わる極板は、上述のペースト状活物質をペースト充填機によって格子板に充填し、熟成・乾燥することにより作製される。熟成・乾燥の時間や温度は特に限定されるものではないが、格子板の厚さや活物質の物性によって適した値に調整することが好ましい。
【0101】
[鉛蓄電池]
本発明に係わる鉛蓄電池の構成は、少なくとも正極板に本発明に係わる格子板を用いる点を除き、特に限定されるものではない。前述のように、鉛蓄電池は、正極板、負極板、電解液としての希硫酸、セパレータ(ガラス繊維製のリテーナ等)、電槽、蓋等の部材から作製される。例えば図16に示すように、正極板1と負極板2との間にセパレータを介在させながら、正極板1と負極板2とを1枚ずつ交互に積層して、同極板の耳部同士をストラップ5及び6で連結させ、極板群4を構成する。この極板群4を電槽7の中に入れて蓋をし、希硫酸を注液した後に化成を行って鉛蓄電池を完成する。
【0102】
[具体的実施形態の構成]
次に図面を参照して本発明の具体的実施形態の構成を説明する。
図1は、本発明に係わる格子板20の一実施形態を示したものである。図示の格子板20は、長方形の輪郭形状を有する枠部21と、枠部21の内側に形成された格子22とを備えている。枠部21は、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨21a,21aと、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨21b,21bとを有し、枠部21の一方の横枠骨21aには、図示しないストラップを接続するための集電用耳部25が一体に形成されている。枠部21の他方の横枠骨21aには、極板群が電槽のセル室内に挿入された際にセル室の底面に当接して、枠部21の下端をセル室の底壁よりも浮かした状態に保持する一対の足部26,26が形成されている。
【0103】
格子22は、横枠骨21aと平行に伸びるように設けられて、縦枠骨21bの長手方向に一定の間隔を持って並べて配置された複数(図示の例では26本)の横格子骨23,23,…と、縦枠骨21bと平行に伸びるように設けられて、横枠骨21aの長手方向に一定の間隔を持って並べて配置された複数(図示の例では9本)の縦格子骨24,24,…とからなり、横格子骨23,23,…と縦格子骨24,24,…とが直角に交差することにより、格子22を構成している。
【0104】
横格子骨23は、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数(図示の例では21本)の細骨23aと、細骨23aよりも断面積が大きい複数(図示の例では5本)の太骨23bとを有して、各太骨23bに隣接する骨が細骨23aとなるように太骨23bと細骨23aとが配列されている。
【0105】
同様に、縦格子骨24は、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数(図示の例では5本)の細骨24aと、細骨24aよりも断面積が大きい複数(図示の例では4本)の太骨24bとを有し、各太骨24bに隣接する骨が細骨24aとなるように太骨24bと細骨24aとが配列されている。
【0106】
本明細書では、横格子骨23を構成する細骨23a及び太骨23bと、縦格子骨24を構成する細骨24a及び太骨24bとを区別するため、横格子骨23を構成する細骨23a及び太骨23bをそれぞれ細横骨及び太横骨と呼び、縦格子骨24を構成する細骨24a及び太骨24bをそれぞれ細縦骨及び太縦骨と呼んでいる。
【0107】
本実施形態では、図2ないし図4に示したように、枠部21を構成する横枠骨21a(図3参照)及び縦枠骨21b(図2参照)が縦長の六角形の断面形状を有するように形成されている。また格子22を構成する細横骨23a(図3参照)及び細縦骨24a(図2参照)は、縦長の六角形の断面形状を有し、太横骨23b(図3参照)及び太縦骨24b(図2参照)はほぼ正六角形の断面形状を有している。
【0108】
複数の太横骨23b及び太縦骨24bは、図2ないし図4に示したように、所定の幅Wと、枠部21の厚さよりも小さい厚さTとを有して、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23b1,24b1及び他端側の端部23b2,24b2をそれぞれ枠部21の厚さ方向の一端側の端面21A及び他端側の端面21Bよりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部23b1,24b1を同一平面上に位置させた状態で配置されている。
【0109】
また複数の細横骨23a及び細縦骨24aは、太横骨23b及び太縦骨24bの幅W及び厚さTよりも小さい幅w及び厚さtを有するように形成されている。複数の細横骨23a及び細縦骨24aは、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23a1及び24a1を複数の太横骨23b及び太縦骨24bの厚さ方向の一端側の端部23b1及び24b1が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。
【0110】
なお本発明において、複数の細横骨23a及び細縦骨24aは、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23a1及び24a1を複数の太横骨23b及び太縦骨24bの厚さ方向の一端側の端部23b1及び24b1が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられていればよく、必ずしも、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23a1及び24a1と複数の太横骨23b及び太縦骨24bの厚さ方向の一端側の端部23b1及び24b1とを厳密に同一の平面上に位置させる必要はない。例えば、図5に示したように、複数の細横骨23a及び細縦骨24aの一端側の端部23a1及び24a1を、太横骨23b及び太縦骨24bの一端側の端部23b1及び24b1よりも僅かに厚さ方向の内側に位置させてもよい。
【0111】
本実施形態では、図1及び図2示されているように、横枠骨21aの長手方向に太縦骨24bと細縦骨24aとが交互に並ぶように、縦格子骨24を構成する細縦骨24a及び太縦骨24bが設けられている。
【0112】
また、本実施形態では、格子板の主面(最も面積が広い面)に、耳部25が設けられた一方の横枠骨21a側に位置する第1の領域A1と、耳部25から離れた位置にある他方の横枠骨21a側に位置する第2の領域A2とが設定されて、格子板の主面が、縦方向に並ぶ第1の領域A1と第2の領域A2とに2分されている。そして、第1の領域で一定の面積当りに存在する細横骨23aの本数の太横骨23bの本数に対する割合を第1の割合とし、第2の領域A2で一定の面積当たりに存在する細横骨23aの本数の太横骨23bの本数に対する割合を第2の割合としたときに、第2の割合が第1の割合よりも少なくなるように、第1の領域及び第2の領域にそれぞれ設ける細骨の数を異ならせている。図示の例では、横枠骨21a,21aを太骨と見なしたときに、第1の領域A1では、図1及び図3に示したように、隣り合う太横骨23b,23bの間に4本の細横骨23aが並び、第2の領域A2では、図1及び図4に示されているように、隣り合う太横骨23b,23bの間に3本の細横骨23aが並ぶように、横格子骨23を構成する太横骨23b及び細横骨23aが設けられている。すなわち第2の領域における太横骨23b同士の間隔が、第1の領域A1における太横骨23b同士の間隔よりも狭くなっている。
【0113】
格子板を用いて鉛蓄電池用極板を製造する際には、鋳造された格子板20の厚さ方向を上下方向に向けた状態で、該格子板を搬送ベルトなどの搬送手段の上に載せて搬送する過程で、上方に配置したペースト充填機から格子板20にペースト状の活物質を供給して該活物質を格子板に塗着し、塗着した活物質を、格子板の厚さ方向の一端側(上端側)から他端側(下端側)に押し込んで格子の目を通して流動させることにより、格子全体にペースト状活物質を充填する。
【0114】
本発明においては、太横骨及び太縦骨の部分に、電池の寿命期間に亘って格子の形状を所定の形状に維持する機能を持たせる。従って本発明の格子板を製作するに当たって、太横骨及び太縦骨の本数は、所望の寿命期間の間格子の形状を維持するために必要な本数に設定されるが、格子板に充填し得る活物質量を減少させることがないようにするために、太横骨及び太縦骨の本数は多すぎないように設定する。同様に、太横骨及び太縦骨の断面積は、格子板に充填し得る活物質量を減少させることがなく、かつ所望の寿命期間に亘って格子体の形を保持するために必要最小限の太さに(太すぎないように)設定する。
【0115】
一方細横骨及び細縦骨の断面積は、太横骨及び太縦骨の力を借りることを前提にして、所望の寿命期間の間所定の形状を保持し、活物質を保持する機能を維持するのに適した大きさ(太横骨及び太縦骨の断面積よりは小さい大きさ)に設定する。また細横骨及び細縦骨の幅は、太横骨及び太縦骨との間にペースト状活物質の流動を容易にするためのスペースを確保することができる大きさに設定される。細横骨及び細縦骨の幅が大きすぎると、活物質を充填する際にその流動を容易にして活物質の充填の容易性を向上させ、格子体の一部が活物質で覆われない状態が生じるのを防ぐという、本発明の効果を得ることができなくなるだけでなく、格子板に充填し得る活物質量が減少してしまう。また細横骨及び細縦骨の断面積が小さすぎると、細横骨及び細縦骨の腐食が早期に深部に達してその機械的強度が低下するため、太横骨及び太縦骨の助けを借りても細横骨及び細縦骨の形を維持することができなくなって、活物質保持機能が低下してしまう。
【0116】
枠部の厚さが薄すぎると、枠部の厚さ未満に設定される太骨の厚さが薄くなり過ぎて、格子骨の腐食が限界に達するまでの期間が短くなり、極板の寿命が短くなる傾向がある。また枠部の厚さが薄くなり過ぎると、細骨の厚さが薄くなり過ぎるため、活物質の保持能力が低下するおそれがある。枠部の厚さを5mm以上として、格子骨を構成する太横骨及び細横骨の厚さと太縦骨及び細縦骨の厚さとを5mm未満の範囲で適当な値に設定することができるようにしておくと、極板の寿命を長くする要求と、活物質の保持能力を低下させることなく活物質の充填の容易性を高める要求との双方に応えることができる。
【0117】
枠部は、現用の産業用鉛蓄電池で用いられている格子板の枠部と同じ程度の大きさの長方形、例えば、長辺の寸法が370〜390mm、短辺の寸法が130〜150mmの長方形の形に形成されることが好ましい。
【0118】
格子板の枠部の寸法を上記の値に設定すると、比較的大形の極板を作製することができ、この極板を多数用いることにより、放電容量が大きい電池を作製することができる。また上記の格子板の寸法は、産業用の鉛蓄電池で用いられている格子板の寸法と同程度であるため、従来の産業用鉛蓄電池の電槽や蓋等を変更することなくそのまま用いて放電容量が大きく、寿命が長い鉛蓄電池を得ることができる。
【0119】
図1に示した例では、太縦骨と細縦骨とが横枠骨21a,21bの長手方向に沿って交互に並ぶように縦格子骨を設けているが、本発明は、図1に示したように縦格子骨を構成する場合に限定されるものではなく、例えば図7に示したように、太縦骨24bの隣に2本の細縦骨24aが並ぶように縦格子骨を構成しても良い。
【0120】
上記の実施形態では、横格子骨及び縦格子骨の双方を細骨と太骨とにより構成したが、本発明においては、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨と細骨よりも断面積が大きい複数の太骨とを有して、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とが配列された構成を有していればよく、上記実施形態のように縦格子骨及び横格子骨を構成する場合に限定されない。例えば、横格子骨のみを太横骨と細横骨とにより構成し、縦格子骨は太縦骨のみにより構成しても良い。
【0121】
横格子骨のみを太横骨と細横骨とにより構成し、縦格子骨は太縦骨のみにより構成する場合にも、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域を設定して、耳部から離れるに従って格子部の電気抵抗が増大する傾向になるのを防ぐようにするのが好ましい。
【0122】
上記の実施形態では、格子板の主面を、耳部が設けられた一方の横枠骨側に位置する第1の領域A1と、耳部から離れた側の他方の横枠骨側に位置する第2の領域A2とを設けて、格子板の主面を縦方向(上下)に2分し、一方の横枠骨及び他方の横枠骨を太横骨と見なしたときに、第1の領域A1で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が、第2の領域A2で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数よりも多くなるように、第1の領域及び第2の領域における細横骨の数を設定するようにしたが、本発明において、格子板の主面を複数の領域に分けて、領域毎に細横骨の数の太横骨の数に対する割合を異ならせる場合、耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっているようにすればよく、格子板の主面を複数の領域に分ける分け方は上記の例に限定されない。例えば、第1の領域A1と第2の領域A2との間に更に一つ以上の領域を設けて、格子板の主面を縦方向に3以上の領域に分け、耳部が設けられた一方の横枠骨側に設けられた領域から他方の横枠骨側に設けられた領域にいくに従って、一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合が段階的に少なくなっていくように(すなわち、太横格子同士の間隔が段階的に狭くなっていくように)、各領域における細横骨の数と太横骨の数とを設定してもよい。
【実施例】
【0123】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
[格子板の作製]
鉛に、スズ:1.0〜1.8質量%、カルシウム:0.05〜0.1質量%を添加して作製した鉛合金を溶融し、異なる5種類の型を用いて重力鋳造方式により正極用の格子板A、格子板B、格子板C、格子板D、格子板Eを作製した。これらの格子板のうち、格子板A及びBは比較例であり、格子板CないしEは本発明の実施例である。
【0124】
<格子板A:比較例1>
格子板Aは図12に示したものに相当する。格子板Aにおいては、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを3.6mm、幅を3.2mmとした。枠部の内側に、厚さが幅よりも大きい六角形の断面形状を有する縦格子骨及び横格子骨を等間隔で形成し、図12に示すように、縦格子骨及び横格子骨の全てを同一の太さの骨(リブ)により形成した。縦格子骨及び横格子骨の本数はそれぞれ9本及び29本とした。縦格子骨及び横格子骨を構成する骨の厚さTは3.2mm、幅wは2.4mmとした。これは、従来から用いられている格子板である。縦格子骨及び横格子骨はそれぞれ骨の中心線間の間隔を等間隔としている(以下の例においても同様)。
【0125】
<格子板B:比較例2>
格子板Bは、図13に示す格子板に相当する。格子板Bにおいては、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとした。また枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨の断面形状は、厚さが幅よりも大きい六角形とし、縦格子骨及び横格子骨の全てを、厚さTが5.4mm、幅Wが4.3mmの骨により構成した。縦格子骨及び横格子骨の本数はそれぞれ9本及び26本とした。
【0126】
<格子板C:実施例1>
格子板Cにおいては、枠部の内側に図1に示したパターンで縦格子骨と横格子骨とを設けた。格子板Bと同様に、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとし、枠部の内側に、図1に示すように太骨と細骨とを備えた縦格子骨及び横格子骨を形成した。太縦骨24b及び太横骨23bの断面形状は、厚さが幅よりも大きい六角形とし、厚さを5.4mm、幅を4.3mmとした。また細縦骨24a及び細横骨24aの断面形状も厚さが幅よりも大きい六角形とし、その厚さを3.6mm、幅を2.8mmとした。格子板Cにおいては、図2ないし図4に示したように、活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細縦骨24a及び細横骨23aの厚さ方向の一端側の端部24a1及び23a1を、太縦骨24b及び太横骨23bの厚さ方向の一端側の端面24b1及び23b1と同一の平面上に位置させた。
【0127】
<格子板D:実施例2>
格子板Dにおいては、格子板Bと同様に、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとした。また枠部の内側に形成される骨のうち、横格子骨の断面形状を、格子板Aと同様(図12)に厚さが幅よりも大きい六角形とし、全ての横格子骨として、厚さが3.2mm、幅が2.4mmの骨を用いた。横格子骨の本数は26である。一方、縦格子骨には太縦骨と細縦骨とを設け、太縦骨及び細縦骨の断面形状は、格子板Cと同様に厚さが幅よりも大きい六角形とした。この場合、太縦骨の厚さを5.4mm、幅を4.3mmとし、細縦骨の厚さを3.6mm、幅を2.8mmとした。活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細縦骨24a及び細横骨23aの厚さ方向の一端側の端部24a1及び23a1は、太縦骨24b及び太横骨23bの厚さ方向の一端側の端面24b1及び23b1と同一の平面上に位置させた。縦格子骨の配列パターンは図1に示したものと同様に、太縦骨と細縦骨とを交互に配置するパターンとした。
【0128】
<格子板E:実施例3>
格子板Eにおいては、格子板Bと同様に、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとした。また枠部の内側に形成される格子骨のうち、縦格子骨は、格子板Aと同様に、厚さが3.2mm、幅が2.4mmの六角形の断面形状を有する同一形状の骨により構成した。一方、横格子骨には、格子板Cと同様に、厚さが5.4mm、幅が4.3mmの六角形の断面形状を有する太横骨と、厚さが3.6mm、幅が2.8mmの六角形の断面形状を有する細横骨とを設けた。この場合も、活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細縦骨24a及び細横骨23aの厚さ方向の一端側の端部24a1及び23a1は、太縦骨24b及び太横骨23bの厚さ方向の一端側の端面24b1及び23b1と同一の平面上に位置させた。
【0129】
[活物質の充填状態の確認]
前述した格子板A,B,C,D及びEに対して、充填機によりペースト状の活物質を充填する活物質充填実験を実施し、その後、熟成・乾燥をして未化成の正極板を作製した。
【0130】
活物質充填実験に用いたペースト状の正極用活物質は、一酸化鉛を主成分とする鉛粉の質量に対して、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合した後、水を12質量%、希硫酸を16質量%加えて再び混練をして作製した。この正極用活物質の作製方法は、従来から行われている方法と同様である。
【0131】
[充填結果]
格子板A,B,C,D及びEにペースト状活物質を充填し、活物質充填時に下方に向いていた格子板の裏側への活物質の充填状態を視認した結果、及び活物質を充填した後、乾燥・熟成工程を経て製造した極板を断面して目視により確認した結果を以下に示す。
【0132】
[格子板裏側での充填状態]
格子板Aにおいては、図12に示すように、すべての格子骨が活物質中に綺麗に埋まっており、格子板の裏側への活物質の充填状態は良好であった。
【0133】
格子板Bにおいては、図13に示したように、格子板の裏側への活物質の充填がうまく行われず、格子骨の露出した部分が観察され、活物質には亀裂が発生していることが観察された。
【0134】
格子板Cにおいては、図12に示すように細格子骨3及び太格子骨4の双方が活物質中に埋まっており、格子板Aと同様に、格子板の裏側への活物質の充填状態は良好であった。
【0135】
格子板D及びEにおいても、格子板Cと同様に、格子板の裏側への活物質の充填状態が良好であることが観察された。
【0136】
以上の結果より、本発明の実施例1ないし3に係わる格子板C,D及びEについては、図12に示された従来の格子板と同様に、活物質の充填が良好に行われることが確認された。
【0137】
[鉛蓄電池の作製]
前述した格子板A,C,D及びEを用いた4種類の鉛蓄電池の作製方法を、以下に示す。
【0138】
正極板としては、上述の方法で作製した正極用活物質を格子板A,C,D,Eに充填して、熟成・乾燥したものを用いた。格子板Bにおいては、活物質充填時に下向きにあった格子板の裏面側への活物質の充填が十分に行われず、図13に示したように格子板の裏側で格子が露出した部分が観察され、これを用いた電池は早期に容量低下を起こす可能性が高いことが明らかであったため、格子板Bを用いた正極板を採用した鉛蓄電池は作製しなかった。
【0139】
また負極用の格子板としては、以下に示す方法で作製したものを用いた。
鉛にスズ1.8〜2.2質量%、カルシウム0.08〜0.12質量%を添加して作製した鉛合金を溶融し、重力鋳造方式によって枠部の縦寸法が385mm、横寸法が140mm、厚さが3.0mmの負極用格子板を作製した。枠部の内側の横枠骨及び縦枠骨はすべて、厚さが2.6mm、幅が1.8mmの六角形の断面形状を有する骨により形成した。
【0140】
また負極活物質を次のようにして作製した。先ず一酸化鉛を主成分とする鉛粉の質量に対して、リグニンを0.2質量%、硫酸バリウムを0.1質量%、一般に市販されている黒鉛等のカーボン粉末を0.2質量%、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合し、次に、水を12質量%加えて混練をした後、更に希硫酸を13質量%加えて再び混練をしてペースト状活物質を作製した。この負極活物質の作製方法は従来から行われている方法と同様である。このようにして得られた負極活物質を上記格子板に充填した後、熟成・乾燥を行って負極板を作製した。
【0141】
上記の正極板と負極板とを、間にセパレータを介在させながら1枚ずつ交互に積層し、同極性の極板の耳部同士をストラップで連結して極板群を作製した。この極板群を電槽の中に入れた後、希硫酸を注液し、化成を行って縦90mm、横172mm、高さ495mmの2V系鉛蓄電池とした。格子板A,C,D及びEをそれぞれ用いた電池A,C,D及びEをそれぞれ3個ずつ作製してトリクル充電による寿命加速試験を行った。
【0142】
[鉛蓄電池の寿命試験]
作製した上記の各電池に対して、60℃の恒温槽中で充電電圧を2.23Vとしてトリクル充電による寿命加速試験を行った。なお電池に負担をかけないようにするため、充電電流を0.05CA以下に制限した。気温60℃の雰囲気中に置かれた鉛蓄電池のトリクル寿命が1ヶ月であることは、気温25℃の雰囲気中に置かれた場合に1年間のトリクル寿命を有することを意味する。試験に供した各電池が換算年数において1年が経過した時点、5年が経過した時点及び10年が経過した時点でそれぞれ1個ずつ電池を取り出して、電池の解体調査を行った。
【0143】
[寿命試験結果]
解体した電池から格子板A,C,D,Eをサンプリングし、格子の腐食量を測定した。その比較結果を図14に示す。図14において曲線a,c,d,eはそれぞれ電池A,C,D,Eについての測定結果示す。腐食量の測定方法としては、格子板を強アルカリ溶液に浸して腐食部分を溶解させ、溶解前後の重量差から算出する方法を用いた。
【0144】
換算年数1年が経過した時点では、各電池の腐食量にさほど差はないものの、5年が経過した時点、10年経過時点と換算年数が長くなっていくに従って差が大きくなっていく。格子板の腐食量が40%に達した時点を電池寿命が尽きる時点として設定して、寿命判定線を引き、1〜10年までの傾きから延長線を引いて該延長線が寿命判定線と交わった点を電池寿命とすると、電池寿命はそれぞれ、電池Aでは約12.5年、電池Cでは約19年、電池Dでは約16年、電池Eでは約15年と予測することができ、格子板A,E,D,Cの順に長期間腐食に耐えられるという結果が得られた。
【0145】
以上の試験結果より、本発明の格子板を用いることで、従来の鉛電池に比べて大幅に長寿命な電池を作製することが可能であると判断することができる。また、格子板D,Eについての試験結果より、縦格子骨及び横格子骨の何れか一方のみを太骨と細骨とにより構成し、他方を格子板Aと同様に全て細骨で構成した場合にも、寿命を延ばす効果が得られることが確認された。しかし、格子板D,Eを用いた場合には、格子板Cを用いた場合ほどには寿命が延びなかったことから、縦格子骨及び横格骨の双方を太骨と細骨との組合せにより構成した場合(実施例1)に、より長寿命の電池が得られることが明らかになった。
【0146】
[変動抑制試験]
次に、前記電池A,Cをそれぞれ3個ずつ作製し、これを、風力発電設備において、風力発電装置に充電器を介して鉛蓄電池を接続して、発電機の出力による鉛蓄電池の充電と、該鉛蓄電池から系統への放電とを行わせることにより、発電装置の発電量の変動を補償して、発電装置から系統に供給される電力の平準化を図る運用を想定して、低い充電状態で、かつ短い間隔で充放電を繰り返す変動抑制試験を行った。
【0147】
この変動抑制試験では、25℃の環境温度において、充電状態(SOC)を60%、充電電流を0.2CA、放電電流を0.2CAとして、1秒間の放電と1秒間の充電とを休止期間をおかずに繰り返し、電池電圧を、1.80V〜2.42V/セルの範囲に保つように制御して、24ヶ月(2年)の試験を行った。試験の期間を通じて、SOCを60%に維持した。また、1カ月毎に25℃環境下にて0.1CA放電容量で定電流放電を実施し、電池電圧が放電終止電圧1.80V/セルになった時点で試験を終了して、その放電時間からAhを計算して放電容量とした。このようにして測定した放電容量の推移を確認した。尚、電池が寿命に到るまで劣化が進んだか否かを判断する目安として、初期の電池容量の70%の容量を寿命判定容量とし、電池容量が初期の容量に対し70%以下となった状態を寿命に達した状態として、劣化の進行度合いを判定した。
【0148】
この変動抑制試験では、風力発電設備で5000サイクル/日(約17秒に1回)の充放電を繰り返すと想定して、充放電サイクルをこれよりも十分に短く設定することにより、加速寿命試験を行っている。すなわち、上記変動抑制試験では、2秒に1回の割合で充放電を繰り返しているので、1日当り43200サイクルの充放電となり、43200/5000=8.6倍の加速寿命試験を行なっていることになる。
【0149】
[変動抑制試験結果]
上記の変動抑制試験の結果を図15に示す。図15の縦軸の0.1CA容量比は、各月における0.1CA容量の試験開始時の0.1C容量(初期容量)に対する比である。図15から、電池Cは24ヶ月(2年)後も初期容量を維持していることが理解できる。この試験結果から、電池Cは、2×8.6=17.2年以上の寿命を維持することが推定される。一方、電池Aは、24ヶ月経過後に初期容量の85%まで容量が低下しており、曲線の傾きから、この後、急激に容量低下が起こることが予測される。
【0150】
[太横骨間の細横骨の本数の差異による影響を調べる実験]
次に、枠部を構成する各縦枠骨及び横枠骨をそれぞれ太縦骨及び太横骨と見なして、縦格子骨において隣り合う太縦骨間に設ける細縦骨の本数及び横格子骨において太横骨間に設ける細横骨の本数を種々変えた正極用格子板を実施例4ないし実施例11として作成し、縦格子骨において太縦骨の間に設ける細縦骨の本数を1とし、横格子骨において太横骨間に設ける細横骨の本数を耳部に近い側と耳部から遠い側とで種々異ならせた正極用格子板を実施例12ないし33として作成して、これらの構成の差異により活物質の充填状態や格子部の電気抵抗がどのような影響を受けるかを調べる実験を行った。
【0151】
[正極用格子板の作製]
鉛に、スズ:1.8質量%、カルシウム:0.08質量%を添加して100質量%とした鉛合金を溶融し、異なる型を用いて重力鋳造方式により、縦格子骨において隣り合う太縦骨の間(枠縦骨も太縦骨と見なす。)に設ける細縦骨の数を異ならせた正極用格子板を実施例4ないし6として作成し、横格子骨において、隣り合う太横骨の間(枠横骨も太横骨と見なす。)に設ける細横骨の数を種々異ならせた正極用格子板を実施例7ないし11として作製した。
【0152】
また、格子板を耳部が設けられた横枠骨側(耳側)に位置する第1の領域と、足部が設けられた横枠骨側(足側)に位置する第2の領域とに2分し、耳側の第1の領域と足側の第2の領域とで隣り合う太横骨の間に設ける細横骨の数を種々異ならせた正極用格子板を実施例12ないし21として作製した。
【0153】
更に、耳部側の第1の領域で隣り合う太横骨の間に設ける細横骨の数を4とし、足部側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に設ける細横骨の数を3として、太骨(太横骨及び太縦骨)の厚さと幅とを種々異ならせた正極用格子板を実施例22ないし27として作成し、細骨(細横骨及び細縦骨)の厚さ及び幅を種々異ならせた正極用格子板を実施例28ないし33として作製した。
【0154】
実施例4ないし33において、格子板の枠部の大きさをすべて同一とし、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mmとした。以下実施例4ないし33の構成について更に詳細に説明する。実施例4ないし33においては、複数の細縦骨及び複数の細横骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた。
【0155】
<実施例4>
実施例4の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、図2に示すように隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を設けた構成とし、横格子骨は、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を設けた構成としている。縦骨の断面形状は、厚さが幅よりも大きい六角形とし、太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さTを5.4mm、幅Wを4.2mmとした断面六角形の骨により構成した。また細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さtが3.6mm、幅wが3.4mmの断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨の厚さTを細骨の厚さtで除した値、即ち、太縦骨24bの厚さTを細縦骨24aの厚さtで除した値及び太横骨23bの厚さTを細横骨23aの厚さtで除した値を1.50、太骨の幅Wを細骨の幅wで除した値、即ち、太縦骨24bの幅Wを細縦骨24aの幅wで除した値及び太横骨23bの幅Wを細横骨23aの幅wで除した値を1.24とした。
【0156】
<実施例5>
実施例5の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、図7に示すように隣り合う太縦骨24b,24bの間に2本の細縦骨24aを配置する構成とし、横格子骨は図4に示すように、隣り合う太横骨23b,23bの間に3本の細横骨23aを配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さTを5.4mm、幅Wを4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さtを3.6mm、幅wを3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0157】
<実施例6>
実施例6の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に3本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さTを5.4mm、幅Wを4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さtを3.6mm、幅wを3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0158】
<実施例7>
実施例7の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は図6に示すように隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に1本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0159】
<実施例8>
実施例8の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に2本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0160】
<実施例9>
実施例9の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図4に示すように隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0161】
<実施例10>
実施例10の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図3に示すように隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に4本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0162】
<実施例11>
実施例11の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図8に示すように、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0163】
上記実施例4ないし11の格子板の構成を下記に表1にまとめて示した。
【表1】
【0164】
<実施例12>
実施例12の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は、耳側に設定した第1の領域で、図8に示すように、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0165】
<実施例13>
実施例13の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は耳側に設定した第1の領域で、図8に示すように、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0166】
<実施例14>
実施例14の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に、5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0167】
<実施例15>
実施例15の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に、図8に示すように5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に図3に示すように4本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0168】
<実施例16>
実施例16の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に、4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0169】
<実施例17>
実施例17の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0170】
<実施例18>
実施例18の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0171】
<実施例19>
実施例19の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0172】
<実施例20>
実施例20の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0173】
<実施例21>
実施例21の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0174】
<実施例22>
実施例22の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.8mm、幅を3.6mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.61、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.06である。
【0175】
<実施例23>
実施例23の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0176】
<実施例24>
実施例24の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.0mm、幅を4.5mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.39、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.32である。
【0177】
<実施例25>
実施例25の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを4.6mm、幅を4.9mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.28、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.44である。
【0178】
<実施例26>
実施例26の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを4.2mm、幅を5.4mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.17、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.59である。
【0179】
<実施例27>
実施例27の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを3.8mm、幅を6.0mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.06、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.76である。
【0180】
<実施例28>
実施例28の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが5.2mm、幅が2.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.04、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.75である。
【0181】
<実施例29>
実施例29の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが5.0mm、幅が2.5mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.08、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.68である。
【0182】
<実施例30>
実施例30の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが4.4mm、幅が2.8mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.23、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.50である。
【0183】
<実施例31>
実施例31の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが4.0mm、幅が3.1mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.35、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.35である。
【0184】
<実施例32>
実施例32の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0185】
<実施例33>
実施例33の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.2mm、幅が3.9mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.69、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.08である。
【0186】
上記実施例12ないし33の構成をまとめて下記の表2に示した。
【表2】
【0187】
[活物質の充填状態の確認]
実施例5ないし33の格子板に対し、ペースト充填機により同一条件でペースト状の正極用活物質を充填する活物質充填実験を実施し、その後、熟成・乾燥をして未化成の正極板を作製した。
【0188】
実験に使用した活物質は、以下に示す従来から使用されている工程により調製した。先ず一酸化鉛を主成分とする鉛粉に、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合し、次に水を12質量%、希硫酸を16質量%加えて100質量%とし、再び混練をして正極用のペースト状活物質を作製した。
【0189】
[充填結果]
実施例5ないし実施例33の格子板にペースト状活物質を充填した後、活物質充填時に下方を向いていた格子板の裏面側での活物質の充填状態を視認した。次いで、乾燥・熟成工程を経て製造した極板を断面して、活物質の充填状態を観察した。これらの結果を下記の表3に示す。
【表3】
【0190】
格子板の裏面側への充填状態を視認した結果、各格子板とも、太骨及び細骨が活物質中に埋まっていることが確認された。しかし極板を断面して観察した結果では、実施例7,8,12,13,16,17,19〜21,26,27及び33において、図11に示すように裏側の活物質の厚さが薄く、格子板の裏面側への活物質の充填が十分に行われない傾向が見られた。
【0191】
なお、実施例7,8は、隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の本数が1本または2本の場合であり、実施例12,13,16,17,19〜21は、横骨が耳から遠い側に設定された第2の領域において、隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数が1本または2本の場合である。また、実施例26,27は、太骨の幅を細骨の幅で除した値が1.5より大きい場合であり、実施例33の格子板は、太骨の幅を細骨の幅で除した値が1.1未満の場合である。
【0192】
また、実施例5,6,10,11,14,15においては太骨の本数が少なく、実施例22、28及び29においては、骨の断面形状が著しく縦長である(極板の厚さ方向に長く、幅が狭すぎる)ため、活物質の保持がし難く、運搬時等の振動程度でも容易に活物質の脱落する現象が観察された。
【0193】
更に、実施例28及び29においては、ペースト状の活物質を流動させるための隙間が少ないため、断面の観察において問題があるとは言えないまでも、活物質の充填が十分に行われていない箇所が見受けられた。
【0194】
なお、実施例5,6は、縦格子骨において隣り合う太縦骨の間に配置する細縦骨の数を2本以上とした場合(太縦骨と細縦骨とを交互に配置していない場合)であり、実施例11は、横格子骨において隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を5以上とした場合である。また実施例14及び15は、耳に近い側に設定した第1の領域において、隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を5とした場合である。また、実施例22は、太骨の厚さを細骨の厚さで除した数値が、1.5より大きい場合であり、実施例28及び29は、太骨の厚さを細骨の厚さにより除した数値が、1.1未満の場合である。
【0195】
また、実施例10のように、隣り合う耳部側に設定された第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数及び耳から離れた側に設定された第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を共に4とした場合には、耳部から離れるに従って格子の電気抵抗が大きくなっていき、耳部から離れるに従って格子骨で生じる電圧降下が大きくなっていくことが確認された。これに対し、実施例4,9,18,23〜25,30〜32のように、第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を4とし、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を3とした場合には、第2の領域で格子骨に生じる電圧降下が抑制されることが確認された。
【0196】
以上の結果から、実施例4,9,18,23〜25,30〜32のように、縦格子骨を太縦骨と細縦骨とが交互に配置される構成とし、横格子骨は、耳部に近い側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨が配置され、耳部から離れた側に設定された第2の領域で隣り合う太骨の間に3本の細横骨が配置される構成とし、かつ太骨の厚さを細骨の厚さで除した値及び太骨の幅を細骨の幅で除した値を1.1〜1.5の範囲に収めるように太骨及び細骨の寸法を設定することにより、図10に示すように格子板の裏側への活物質の充填が良好に行われて格子骨が露出することがなく、かつ長期間に亘って腐食に耐えて格子板に活物質を保持する機能を維持することができる格子板を得ることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明によれば、腐食に長期間耐えることができ、しかも活物質の充填が容易な鉛蓄電池用の格子板を得ることができる。またこの格子板に活物質を充填して正極板を構成することにより、従来より長寿命な制御弁式鉛蓄電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0198】
20 格子板
21 枠部
21a 横枠骨
21b 縦枠骨
22 格子
23 横格子骨
24 縦格子骨
25 集電用耳部
26 足部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用格子板、極板及びこの極板を備えた鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は、マンガン、水銀、アルカリ等に代表される一次電池と、ニッケル−カドミウム、リチウムイオン、ニッケル−水素等に代表される充電可能な二次電池とに大別される。
【0003】
また現在は、携帯電話等に多く使用される次世代の二次電池として、リチウムイオン電池や、ニッケル水素電池等の小型且つ高性能な電池の開発が進んでいる。しかしながら、リチウムイオン電池及びニッケル−水素電池は、価格の面で不利であり、特にリチウムイオン電池は、安全性の面で十分な配慮が必要であるため、停電時に備えてオフィスビルや病院等に設置するバックアップ電源に用いる電池や、瞬時電圧低下対策用の産業用電池、或いは自動車用電池等としては、制御弁式の鉛蓄電池が多く用いられている。また最近は、太陽電池を用いた発電設備や風力発電機を用いた発電設備のように、自然エネルギを用いた発電設備が盛んに建設されるようになっているが、このような発電設備においては、電力の平準化を図るために、発電設備に二次電池を用いた蓄電設備を付属させることが検討されている。このような蓄電設備においては、多量の電池を必要とするため、電池としては、鉛蓄電池を用いるのが有利である。
【0004】
図16は、制御弁式鉛蓄電池の構造の一例を示す分解斜視図である。同図において1及び2はそれぞれ正極板及び負極板、3はセパレータで、正極板1及び負極板2がセパレータを介して交互に積層されることにより極板群4が構成される。
【0005】
図16においては、構造をわかりやすくするために、正極板1,1,…と、負極板2,2,…と、セパレータ3,3,…とを、位置をずらして示しているが、実際には、正極板1及び負極板2がそれぞれの位置を合わせてセパレータ3を介して交互に積層される。
【0006】
5は複数の正極板1,1,…に設けられた耳部同士を接続する正極ストラップ、6は複数の負極板2,2,…に設けられた耳部同士を接続する負極ストラップで、正極ストラップ5及び負極ストラップ6にはそれぞれ正極柱5a及び負極柱6aが設けられている。
【0007】
極板群4は、電解液と共に電槽7のセル室7a内に収容される。電槽7の上端の開口部は、蓋8により閉じられ、蓋8に鋳込まれた正極端子金具9及び負極端子金具10にそれぞれ設けられた孔を通して正極柱5a及び負極柱6aが外部に導出される。蓋8には、電槽内の圧力が規定値を超えたときに開いて電槽内の圧力を開放する排気栓11が取り付けられている。
【0008】
なお図16に示した例は単電池であるため、電槽7に一つのセル室のみが設けられているが、電池の定格電圧が2Vを超える場合には、電槽7に複数のセル室が設けられて、各セル室内に極板群が挿入され、隣接するセル室内に挿入された極板群の所定の極性のストラップの間がセル室間の隔壁を貫通して設けられたセル間接続部を介して相互に接続されることにより、複数のセル室内にそれぞれ構成された電池が直列又は並列に接続されて、所定の定格電圧と定格容量とを有する鉛蓄電池が構成される。
【0009】
鉛蓄電池の極板としては、クラッド式、ペースト式、チュードル式等、種々の構造を有するものが知られているが、これらのうち、大電流放電が可能であるペースト式の極板が多く用いられている。
【0010】
ペースト式の正極板及び負極板はそれぞれ集電体を構成する格子板に正極活物質及び負極活物質を充填して保持させた構造を有する。集電体を構成する格子板としては、鋳造により製造されるものと、鉛または鉛合金の板にエキスパンド加工を施すことにより製造されるものとがあるが、本発明では、鋳造により製造される格子板を対象とする。
【0011】
鋳造により製造される格子板は、例えば特許文献1に示されているように、ほぼ四角形(長方形または正方形)の輪郭形状を有して、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨と、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、この枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とにより構成される。
【0012】
図16に示された例では、正極板1及び負極板2の集電体を構成する格子板が、符号20で示されている。図示の格子板20は、長方形の輪郭形状を有して、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨21a,21aと、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨21b,21bとを有する枠部21と、この枠部の内側に格子22を形成する複数の横格子骨23及び複数の縦格子骨24と、枠部21の一方の横枠骨21aに一体に形成された集電用耳部25と、他方の横枠骨21aに一体に形成された足部26とより構成される。
【0013】
本明細書では、格子板の耳部が設けられた部分を格子板の上部とし、縦枠骨21bが伸びる方向(縦枠骨の長手方向)を格子板の縦方向としている。また横枠骨21aが伸びる方向を格子板の横方向とし、格子板の縦方向及び横方向の双方に対して直角な方向を格子板の厚さ方向としている。極板の縦方向、横方向及び厚さ方向はそれぞれ、格子板の縦方向、横方向及び厚さ方向に沿う方向とする。また各枠骨及び各格子骨については、格子板の厚さ方向に沿う方向を厚さ方向とし、それぞれの長手方向と厚さ方向との双方に対して直角な方向を幅方向とする。
【0014】
この種の格子板を用いて鉛蓄電池用極板を製造する際には、鋳造された格子板20の厚さ方向を上下方向に向けた状態で、該格子板を搬送ベルトなどの搬送手段の上に載せて搬送する過程で、上方に配置したペースト充填機から格子板20にペースト状の活物質を供給して、該活物質を格子板に塗着し、塗着した活物質を、格子板の厚さ方向の一端側(上端側)から他端側(下端側)に押し込んで格子の目を通して流動させることにより、格子全体にペーストを充填する。
【0015】
図16においては、格子板20の各部が目視し得る状態で図示されているが、格子板20に活物質を充填した状態では、格子板20の少なくとも横格子骨23及び縦格子骨24の部分は活物質中に埋設される。
【0016】
鉛蓄電池は、使用に伴って各部の劣化が進むとやがて寿命に至る。鉛蓄電池が寿命に至る主な原因として、格子板(主に正極板の格子板)の腐食(酸化によるPbO2の生成)が挙げられる。PbO2は導電性を有するが、脆弱であるため、正極の格子骨の腐食が進むと、格子骨23(または24)が破断したり、格子骨の形が崩れて活物質27を保持する機能が失われたりするようになり、やがて電池が寿命に達する。
【0017】
図12は、従来の格子板を用いた極板の横格子骨23または縦格子骨24と活物質27とを、格子骨の軸線と直角な面に沿って断面して示した断面図である。図示の格子骨23(または24)は、極板の厚さ方向(図12において上下方向)に細長い六角形の横断面形状を有している。格子の集電性を高め、極板の各部で活物質の電気化学的反応を活発に行わせるためには、格子骨相互間の間隔をある程度狭くしておく必要がある。しかし、格子骨相互間の間隔が狭くなり過ぎると、ペースト状の活物質を格子板に充填する際に格子骨相互間の隙間を通して活物質が流動し難くなり、格子骨全体を活物質中に埋設することができなくなって、格子骨の一部が露出した状態になるおそれが生じる。また格子骨の数が多すぎると、所定の電池容量を得るために必要な量の活物質を格子板に充填することができなくなってしまう。
【0018】
図12に示した従来の格子板では、格子骨として同じ太さのものを用いて、隣り合う格子骨相互間に、ペースト状活物質27の流動を支障なく行わせるために必要な隙間を確保するとともに、所定の集電性能を得るために必要な密度で格子骨を配置することを可能にし、かつ格子板に所定量の活物質を保持することを可能にするように、格子骨の幅wと、格子骨相互間の間隔dとを設定していた。また電池の所望の耐用年数に応じて、格子骨の断面積を設定していた。
【0019】
図12に示すように、すべての格子骨の太さを同じにした場合には、格子骨の腐食が進んで寿命に近づいたときに、格子全体の機械的強度が低下して、格子骨が破断したり、枠部の内側の格子がその本来の形を維持することができなくなって活物質が脱落したりするため、所期の寿命が得られないおそれがあった。
【0020】
そこで、鉛蓄電池の長寿命化を図るために、図13に示すように、格子板の格子骨23(または24)として、断面積が大きい太い骨を用いて、格子骨が腐食に耐える期間を長くすることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0021】
また特許文献2に示されているように、格子骨を細骨と太骨とにより構成して、太骨の部分で機械的強度を持たせるようにした格子板も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2001−332268号公報
【0023】
【特許文献2】特開平4−171666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
最近、鉛蓄電池の長寿命化を図ることの必要性が高まっている。特に、自然エネルギを利用した発電設備に付帯設備として設ける蓄電設備においては、鉛蓄電池の寿命を、風力発電機や太陽電池等の発電手段の耐用年数と同等の長さ(例えば17年以上)とすることが望まれている。そこで、鉛蓄電池の長寿命化を図るための一つの方策として、図13に示すように、格子板の格子骨23及び24を、使用年数が寿命年数に達するまでの間、腐食に耐え、活物質を保持する機能を維持するために十分な機械的強度を保持し得る程度に十分に太くしておくことが考えられる。
【0025】
しかしながら、17年もの長い期間に亘って腐食に耐えるように、すべての格子骨を太くすると、格子骨相互間の隙間dが著しく狭くなるため、格子板を、その厚さ方向を上下方向に向けて寝かせた状態で該格子板に上方からペースト状の活物質を充填する際に、活物質を格子骨の間を通して円滑に流動させることが難しくなる。そのため、すべての格子骨の断面積を大きくした場合には、活物質を充填する際に下向きになっている格子骨23,24の端面の下方に活物質を回り込ませることが困難になり、図13に示されているように、格子骨23及び(または)24に活物質27から露出した部分が生じて、格子骨を視認できる状態になってしまう。
【0026】
このように活物質の充填が不完全な状態にある極板をそのまま電池に使用すると、格子骨と電解液である硫酸とが直に接触して、格子骨の表面に不動態である硫酸鉛の膜が生成する。この不動態膜は充電しても元に戻らない。格子骨に活物質から露出している面があると、該格子骨と活物質との間の界面に電解液が侵入することにより格子骨の周面全体に不動態膜が生成する。格子骨の周面全体に不動態膜が生成すると、その格子骨と活物質との間の導通が阻害されるため、充電を行うことができなくなって、電池の早期容量低下(PCL:Premature Capacity Loss)を招き、電池の寿命を長くするとの要請に応えることができなくなる。
【0027】
また、すべての格子骨を太くすると、格子板に充填し得る活物質の量が減少するため、電池の容量の低下を招く。
【0028】
太い格子骨を、相互間の間隔dを広げて配置することも考えられるが、格子骨の間隔を広げ過ぎると、格子の集電性が低下して格子と活物質との間の電子の流れが十分に行われなくなり、活物質の充放電反応が起り難くなるため、電池の充放電特性が低下するのを避けられない。
【0029】
特許文献2に示されているように、格子骨を太骨と細骨とにより構成すると、太骨の部分に機械的強度を持たせることができる。しかしながら格子骨を太骨と細骨とにより構成した従来の格子板では、太骨の厚さ(極板の厚さ方向に測った寸法)を枠部の厚さと同じにしていたため、格子板に活物質を充填した際に太骨の厚さ方向の両端が活物質で覆われずに露出するのを避けられなかった。このように格子板の太骨の厚さ方向の両端が露出した状態にある正極板を用いると、太骨の露出した端部が電解液に直に接触するだけでなく、太骨と活物質との界面を通して電解液が侵入して太骨の外周全体に不動態膜が生成するため、電池の早期容量低下が生じるのを避けられない。
【0030】
本発明の目的は、格子を長期間腐食に耐えさせて活物質を保持する機能を維持させることができるだけでなく、格子骨の一部が活物質から露出して格子骨の表面に不動態膜が形成されることにより早期に容量が低下するのを防いで、鉛蓄電池の長寿命化を図ることができるようにした鉛蓄電池用格子板を提供することにある。
【0031】
本発明の他の目的は、上記格子板を用いた鉛蓄電池用極板を提供することにある。
【0032】
本発明の更に他の目的は、上記の極板を用いて長寿命化を図ることができるようにした鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本願においては、上記の目的を達成するために、少なくとも以下に示す第1乃至第13の発明が開示される。
【0034】
第1の発明は、横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備えた鉛蓄電池用格子板を対象とする。
【0035】
本発明においては、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方が、鉛蓄電池の所期の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨と前記細骨よりも断面積が大きい複数の太骨とを有して、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とが配列される。複数の太骨は、枠部の厚さよりも小さい厚さを有して、それぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を同一平面上に位置させた状態で配置される。また細骨の幅及び厚さはそれぞれ太骨の幅及び厚さよりも小さく設定され、複数の細骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面の位置を越えない範囲で該複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられている。また縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を構成する複数の細骨は、太さが異なる複数種類の細骨を有している。
【0036】
上記のように、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を太骨と細骨とにより構成すると、細骨の部分の腐食が進んでその機械的強度が低下した場合でも、より長期間の腐食に耐える太骨の部分に機械的強度を持たせて格子の形状を維持することができるため、すべての格子骨を細骨により形成した場合よりも更に長期間に亘って格子の活物質保持機能を維持することができる。
【0037】
また上記のように、各太骨に隣接する格子骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列しておくと、太骨の側方にペースト状活物質を流動させるための広いスペースを確保することができるため、格子板の一方の面側から活物質を充填する際に、活物質を格子板の他方の面側に円滑に流動させることができる。
【0038】
更に上記のように、複数の太骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させた状態で設けると、格子板に活物質を充填する際に、太骨の下方に活物質を流入させるスペースを形成することができるため、活物質を充填する際に下向きになっている太骨の端面が活物質で覆われることなく露出するのを防ぐことができる。また上記のように、複数の細骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けておくと、格子板に活物質を充填する際に各細骨の下方に広いスペースを確保して、各細骨の下方に流れ込んだ活物質が太骨の下方に流れ込むのを容易にすることができるため、太骨及び細骨を活物質中に確実に埋設することができ、格子骨の一部が露出した状態になるおそれを無くすことができる。特に格子板に活物質を充填する際に、枠骨の厚さ以上まで活物質を充填するようにすると、格子骨の活物質中への埋設を更に確実に行わせることができる。従って、格子骨の表面に不動態膜である硫酸鉛の膜が生成されて早期に容量が低下するのを防ぐことができる。
【0039】
上記のように、本発明によれば、格子部分に、所望の寿命期間の間腐食に耐える断面積を有する細骨の外に、該細骨よりも断面積が大きい太骨を設けたので、長期間に亘って格子の形状を保持してその活物質保持機能を維持させることができ、また格子骨の一部が活物質から露出した状態が生じて格子骨の表面に不動態膜が生成されるのを防ぐことができる。従って、本発明の格子体を用いて鉛蓄電池用極板(特に正極板)を構成することにより、鉛蓄電池の寿命を従来より大幅に延ばすことができる。
【0040】
本願に開示された第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、縦格子骨が、前記太骨である太縦骨と、前記細骨である細縦骨とを有し、横格子骨は、前記太骨である太横骨と、前記細骨である細横骨とを有している。
【0041】
上記のように、縦格子骨を太縦骨と細縦骨とにより構成し、横格子骨を太横骨と細縦骨とにより構成すると、長期間腐食に耐える格子骨の数を増やして長期間に亘って活物質保持機能を維持することができる。また細縦骨及び細横骨の存在により、ペースト状活物質の充填時にその流動を容易にすることができるため、活物質を充填する際に下向きになっている太縦骨及び太横骨の端面を活物質で確実に覆うことができ、格子骨の一部が活物質から露出した状態になるのを防ぐことができる。従って鉛蓄電池の少なくとも正極板に本発明に係わる格子板を用いることにより、鉛蓄電池の寿命を延ばすことができる。
【0042】
第3の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、複数の細縦骨及び複数の細横骨が、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。
【0043】
第4の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、一方の横枠骨(前記耳部を備えた横枠骨)に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている。すなわち他方の横枠骨寄りの領域で太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0044】
第5の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、縦格子骨を構成する太縦骨及び細縦骨が、横枠骨の長手方向に太縦骨と細縦骨とが交互に並ぶように設けられている。本発明においてはまた、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ第1の領域及び第2の領域が設定され、一方の横枠骨及び他方の横枠骨を共に太横骨と見なしたときに、第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数よりも多くなるように、第1の領域及び第2の領域における細横骨の数が設定されている。すなわち第2領域においては、太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0045】
第6の発明は、第5の発明に適用されるもので、本発明においては、第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が4であり、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数は3である。
【0046】
上記第4の発明ないし第6の発明のように、耳部に近い領域で太横骨の本数に対する細横骨の本数の割合を多くし、耳部から遠い領域では、太横骨の本数に対する細横骨の本数の割合を少なくするように横格子骨を構成する太横骨及び細横骨を設けると、耳部から離れるに従って格子骨の電気抵抗の平均値を小さくすることができるため、集電抵抗の低減を図ることができ、耳部から離れた格子骨の部分での電圧降下が大きくなるのを防ぐことができる。
【0047】
また上記のように、耳部に近い第1の領域で太横骨の間に設ける細横骨の本数を多くし、耳部から遠い第2の領域では、太横骨の間に設ける細横骨の本数を少なくするように太横骨及び細横骨を設ける場合に、横枠骨の長手方向に太縦骨と細縦骨とが交互に並ぶように太縦骨と細縦骨とを設けると、太縦骨の側方により広いスペースを確保することができるため、活物質を充填する際の活物質の流動を容易にして、格子骨の下方への活物質の充填を円滑に行わせることができ、格子骨の一部が活物質で覆われることなく露出した状態になるのを確実に防ぐことができる。
【0048】
特に、第6の発明のように、太横骨及び細横骨を、耳部に近い第1の領域では隣り合う太横骨の間に4本の細横骨が並び、耳部から離れた第2の領域では、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が並ぶように設けた場合には、耳部から離れた領域での集電抵抗の低減を図って、耳部から離れた格子骨の部分で電圧降下が大きくなるのを防ぐことができるだけでなく、活物質の充填を容易にして、格子骨の一部が露出した状態になるのを防ぐ効果を特に高くすることができることが実験により確認されている。
【0049】
第7の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、太縦骨の幅を細縦骨の幅で除した値、太縦骨の厚さを細縦骨の厚さで除した値、太横骨の幅を細横骨の幅で除した値及び太横骨の厚さを細横骨の厚さで除した値が1.1〜1.5の範囲に設定される。
【0050】
本発明者が行った実験の結果、太骨の太さと細骨の太さとの関係を上記のように設定しておくと、太骨の幅及び厚さ並びに細骨の幅及び厚さを適正な大きさとして、活物質を充填する際の活物質の流動を円滑に行わせて格子骨全体を活物質中に確実に埋設することができ、格子板への活物質の保持を確実に行わせることができるため、極板の長寿命化を図ることができることが確認された。
【0051】
第8の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、横格子骨が、前記太骨である太横骨と前記細骨である細横骨とを有するが、縦格子骨は前記太骨である太縦骨のみからなる。
【0052】
このように、横格子骨のみを太骨と細骨とにより構成した場合も、すべての格子骨を太骨により構成する場合に比べると、太骨の側方に形成されるスペースを広くとることができるため、活物質の流動を容易にして、格子板への活物質の充填を円滑に行わせることができ、格子骨の一部が露出した状態にある極板が製造される確率を少なくすることができる。またこの場合、縦格子骨を太縦骨と細縦骨とにより構成する場合に比べて、長期の腐食に耐える太縦骨の数を多くすることができるため、長期間に亘って格子の形状を維持することができ、格子の活物質保持機能を長期間に亘って保持することができる。
【0053】
第9の発明は第8の発明に適用されるもので、本発明においては、複数の細横骨が、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。
【0054】
第10の発明は、第8の発明に適用されるもので、本発明においては、一方の横枠骨(前記耳部を備えた横枠骨)に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている。すなわち他方の横枠骨寄りの領域で太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0055】
第11の発明は、第8の発明に適用されるもので、本発明においては、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を前記第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域が設定される。すなわち第2領域においては、太横骨が配置される間隔が狭くなっている。
【0056】
このように構成すると、第4の発明と同様に、耳部から離れるに従って格子骨の電気抵抗の平均値を小さくすることができるため、集電抵抗の低減を図ることができ、耳部から離れた格子骨の部分での電圧降下が大きくなるのを防ぐことができる。
【0057】
第12の発明は、本発明に係わる格子板を用いた鉛蓄電池用極板に係わるもので、本発明においては、第1ないし第11の発明のいずれかに係わる格子板に活物質を充填することにより鉛蓄電池用極板が構成される。
【0058】
第13の発明は、本発明に係わる格子板を用いた鉛蓄電池に係わるもので、本発明においては、少なくとも正極板が、第1ないし第11の発明の何れかに係わる格子板に正極活物質を充填した構成を有する。負極板も第1ないし第11の発明の何れかに係わる格子板に負極活物質を充填した構成を有していてもよいが、負極板の構成は第1ないし第11の発明の何れかに係わる格子板を用いる場合に限定されない。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を太骨と細骨とにより構成するので、細骨の部分の腐食が進んでその機械的強度が低下した状態でも、より長期間の腐食に耐える太骨の部分に機械的強度を持たせて格子の形状を維持することができ、すべての格子骨を細骨により形成した場合よりも更に長期間に亘って格子の活物質保持機能を維持することができる。
【0060】
本発明によればまた、各太骨に隣接する格子骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列しておくので、太骨の側方にペースト状活物質を流動させるための広いスペースを確保することができ、格子板の一方の面側から活物質を充填する際に、活物質を格子板の他方の面側に円滑に流動させることができる。
【0061】
特に本発明によれば、複数の太骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させた状態で設けるので、格子板に活物質を充填した際に、太骨の厚さ方向の両端を活物質中に埋設することができる。本発明においてはまた、複数の細骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けるので、格子板に活物質を充填する際に各細骨の下方に広いスペースを確保して、各細骨の下方に流れ込んだ活物質が太骨の下方に流れ込むのを容易にすることができる。従って本発明によれば、太骨及び細骨を活物質中に確実に埋設することができ、格子骨の一部が露出した状態が生じるおそれを無くすことができる。
【0062】
上記のように、本発明によれば、格子を細骨と太骨とにより構成して格子の機械的強度を高めるとともに、細骨及び太骨の双方が活物質中に確実に埋設される構造としたので、長期間腐食に耐えさせて格子の活物質保持機能を維持させることができる。また細骨の厚さ方向の一端側の端部を太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させることにより、活物質を充填する際に下方を向いた状態にされる太骨の厚さ方向の端部側に活物質が流動するのを容易にしたので、活物質を充填する際に格子骨の一部が活物質から露出した状態が生じるのを確実に防ぐことができ、格子骨の全体が活物質で完全に覆われた極板を歩留まりよく製造することができる。本発明に係わる格子体を用いて鉛蓄電池用極板(特に正極板)を構成することにより、電池の寿命を従来より大幅に延ばすことができ、従来技術では実現できなかった、風力発電機や太陽電池などの自然エネルギを利用した発電手段の寿命と同程度の寿命を有する長寿命の鉛蓄電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係わる鉛蓄電池用格子板の正面図である。
【図2】図2は、図1の格子板に活物質を充填して構成した極板を図1のII−II線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図3】図3は、図1の格子板に活物質を充填して構成した極板を図1のIII−III線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の格子板に活物質を充填して構成した極板を図1のIV−IV線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の変形例を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の他の変形例を示した断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の他の変形例を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態における格子骨の設け方の更に他の変形例を示した断面図である。
【図9】図9は、本発明が対象とする格子板を用いた極板の参考構成例の一部の断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施例に係わる格子板を用いた極板の活物質の充填状態の一例を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例に係わる格子板を用いた極板の活物質の充填状態の他の例を示す断面図である。
【図12】図12は、従来の格子板に活物質を充填して構成した極板の活物質の充填状態を示す断面図である。
【図13】図13は、太骨のみにより格子を構成した場合の活物質の充填状態の一例を示した断面図である。
【図14】図14は、本発明の種々の実施例に係わる格子体を用いた正極板について行った寿命加速試験において測定された格子の腐食量を、試験における経過時間を実際の使用年数に換算して求めた換算年数に対して示したグラフである。
【図15】図15は、本発明の実施例について行った変動抑制試験の結果を示すグラフである。
【図16】図16は、鉛蓄電池の構成の一例を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明に係わる鉛蓄電池用格子板の具体的な構成例について説明するのに先立って、先ず本発明に係わる鉛蓄電池用格子板、該格子板を用いた極板及び該極板を用いた鉛蓄電池に関する基本的な事項について説明する。
[格子板の材料]
本発明に係わる格子板は、主原料を鉛として、これにスズ、カルシウム、アンチモン、ナトリウム等の合金素材を添加した合金材料により形成することができる。主原料に添加する合金素材としては、特にスズ及びカルシウムの両方を用いるのが好ましい。カルシウムを添加すると、自己放電の割合を減少させることができる。主原料(鉛)にカルシウムを添加すると、骨の腐食が起り易いという問題が生じるが、骨の腐食は、スズの添加により抑制することができる。
【0065】
格子板は、枠部と、枠部の内側に設けられる格子と、枠部に設けられる集電用耳部とにより構成される。枠部は、縦方向に相対する一対の横枠骨と、横方向に相対する一対の縦枠骨とにより構成され、一方の横枠骨に集電用耳部が設けられる。枠部の内側に設けられる格子は、横枠骨と平行に伸びる横格子骨と、縦枠骨と平行に伸びる縦格子骨とにより構成される。
【0066】
[枠部]
上記横枠骨及び縦枠骨からなる枠部は、格子板の外形形状を画定するものである。枠部の形状は、特定の形状に限定されるものではないが、最終的に使用される鉛蓄電池の電槽(外装ケース)の内部形状に適合させた形状とすることが好ましい。立方体または直方体状の電槽を用いる場合には、枠部の輪郭形状を正方形又は長方形とすることができる。
【0067】
枠部の輪郭形状を長方形とする場合、長辺の寸法を370〜390mm、短辺の寸法を130〜150mmとすることができる。このような寸法を採用すると、大きな極板を作製することができ、この極板を多数枚用いることで放電容量の大きな鉛蓄電池を作製することができる。また、上記の寸法は、汎用されている産業用鉛蓄電池の極板と同程度の寸法であり、上記の寸法の格子体を用いて構成した極板を収容する電槽及び該電槽を閉じる蓋としては、汎用されているものをそのまま用いることができる。
【0068】
横枠骨及び縦枠骨の断面形状は特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状とするのが好ましい。横枠骨及び縦枠骨の断面形状は、より具体的には、格子板の厚さ方向に長い菱形や六角形の断面形状とすることができる。
【0069】
横枠骨及び縦枠骨の厚さは特に限定されるものではないが、5mm以上であることが好ましい。本発明では、枠部の内側に格子を構成する内骨(格子骨)の厚さを、枠骨の厚さ未満とすることが重要である。横枠骨及び縦枠骨の厚さを5mm以上の寸法で標準化しておけば、格子板を長期間に亘って腐食に耐えさせるために内骨を太くしたり、格子に活物質を充填する際に格子の一部を露出させないようにするために内骨を細くしたりする設計が容易になる。
【0070】
[耳部]
格子板の枠部に集電用の耳部を設ける。この耳部は、極板群の同極性の極板同士を接続するストラップを接続するために用いられる。耳部の形状、個数、厚さ、材質等は、特に限定されるものではないが、電槽及びその蓋の形状と極板の形状とに合わせて、適宜の形状及び大きさに形成することが好ましい。耳部の個数は1個であるのが好ましく、その厚さは枠骨の厚さと同等程度であることが好ましい。製造を容易にするため、耳部は枠部及び格子部と同じ材料により形成するのが好ましい。
【0071】
[縦格子骨及び横格子骨]
縦格子骨及び横格子骨は、枠部の外形形状を維持すると共に、活物質を保持し、活物質の充放電反応を行わせるために必要である。縦格子骨及び横格子骨の本数は特に限定されるものではないが、本数を増やしすぎると活物質を充填する際に格子骨相互間の隙間が狭くなりすぎ、活物質充填時に下方を向いている格子の裏面側に活物質が回り込みにくくなってしまう。逆に格子骨の数が少なすぎると、充填した活物質を保持することが難しくなるだけでなく、活物質の充放電反応を活発に行わせることができなくなる。そのため、縦格子骨及び横格子骨の本数は、活物質の充填が容易であり、活物質を確実に保持することができ、活物質の充放電反応に支障を来すことがなく、且つ使用される鉛蓄電池の放電容量に必要な活物質量の確保に適合するように、適宜の本数に設定することが好ましい。
【0072】
縦格子骨及び横格子骨の断面形状は特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、活物質を確実に保持することができ、且つ活物質の充填を容易に行わせることができる形状とすることが好ましい。縦格子骨及び横格子骨の断面形状は、具体的には、格子板の厚さ方向(極板の厚さ方向)に長い菱形や六角形とすることができる。
【0073】
縦格子骨及び横格子骨の材質は、先に述べた横枠骨及び縦枠骨と同じものであっても、異なるものであっても良いが、横枠骨、縦枠骨、横格子骨及び縦格子骨を、一括して一体成形することを容易に行うことができるようにするために、縦格子骨及び横格子骨を構成する材料は、横枠骨及び縦枠骨を構成する材料と同じものであることが好ましい。
【0074】
本発明で用いる複数の縦格子骨及び(又は)横格子骨は、その全てを同じ太さとするのではなく、所望の寿命期間の間腐食に耐え得るようにある程度の余裕を持たせて設定された断面積を有する細骨と、この細骨よりも断面積が大きい太骨とにより構成し、各太骨に隣接する骨が必ず細骨となるように太骨と細骨とを配列する。細骨の断面積は、実験データに基づいて決定することができる。太骨の断面積は、設定した寿命期間が近づいて格子骨の腐食が進み、細骨の機械的強度が低下した段階でも格子の形状を初期の形状に維持するために必要な強度を太骨に持たせるために必要な大きさに設定する。この太骨の断面積も、実験データに基づいて決定することができる。
【0075】
横格子骨及び縦格子骨の少なくとも一方に設ける複数の太骨は、枠部の厚さよりも小さい厚さを有するように形成されて、それぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を同一平面上に位置させた状態で配置される。
【0076】
横格子骨及び縦格子骨の少なくとも一方に設ける細骨は、太骨の幅よりも小さい幅と、太骨の厚さよりも小さい厚さとを有するように構成し、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方は、太骨が連続して配置されることがないように、太骨の隣に必ず細骨が配置されるように構成する。複数の細骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に配置した状態で設ける。このように構成すると、格子体に活物質を充填する際に下向きになる格子板の裏側(厚さ方向の他端側)の形状を、太骨が下方に突出し、細骨が凹んだ状態で配置された形状として、各細骨の下方に広いスペースを形成することができるため、太骨の下方に活物質を流れ込み易くすることができ、格子の一部が活物質で覆われていない状態が生じるのを防ぐことができる。
【0077】
本発明の好ましい態様では、複数の細骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を、複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設ける。
【0078】
本発明において、太骨の厚さ方向の両端を枠部の厚さ方向の両端よりも内側に位置させて配置することは極めて重要である。太骨の厚さを枠部の厚さと同一として、太骨の厚さ方向の一端を枠部の厚さ方向の一端と同一の平面上に位置させ、太骨の厚さ方向の他端を枠部の厚さ方向の他端と同一の平面上に位置させるように太骨を設けた場合には、活物質を充填する際に太骨の厚さ方向の端部が露出した状態になるのを避けられない。活物質を充填する際に上向きにある太骨の端部は、活物質を多めに供給することにより活物質中に埋めることができるが、活物質を充填する際に下向きにある太骨の端部を活物質で覆うことは困難である。太骨の端部が活物質で覆われることなく露出した状態にある正極板を用いて鉛蓄電池を構成すると、露出している太骨の端部が直接電解液に接触するだけでなく、太骨と活物質との界面を通して電解液が侵入して電解液が太骨の表面に直に接触するため、太骨の表面に不動態膜(硫酸鉛)が生成する。太骨の表面に不動態膜が生成すると、太骨と活物質との間で電流が流れなくなり、太骨の部分では活物質の充放電反応が行われなくなるため、早期の容量低下を招き、電池寿命を短くしてしまう。これに対し、本発明のように、太骨の厚さを枠部の厚さよりも薄くして、細骨の厚さ方向の両端だけでなく、太骨の厚さ方向の両端をも枠部の厚さ方向の両端よりも内側に位置させておけば、太骨及び細骨を完全に活物質で覆うことができるため、格子体に活物質を充填して得た極板を用いて鉛蓄電池を構成した場合に、格子骨に電解液が直に接触して格子骨の表面に不動態膜が形成されるのを防ぐことができ、電池の早期の容量低下を防いで、電池の寿命を延ばすことができる。
【0079】
本発明においては、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列するが、横格子骨及び縦格子骨を構成する細骨の太さ(幅及び厚さ)は必ずしも1種類である必要はなく、幅及び厚さが異なる複数種類の細骨を設けることができる。また枠骨と太骨との間及び太骨と太骨との間に配置する細骨は、1本でも複数本でもよい。
【0080】
縦格子骨及び横格子骨はその何れか一方のみに太骨と細骨とを設け、他方を全て同じ太さの骨により構成することもできるが、格子骨の耐腐食性を向上させ、格子骨の一部が活物質で覆われない状態が生じるのを防ぐという本発明の目的を達成するためには、縦格子骨及び横格子骨の双方を太骨と細骨とにより構成することが好ましい。
【0081】
横格子骨及び縦格子骨のそれぞれを構成する太骨及び細骨の断面形状は、特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状であることが好ましい。横格子骨及び縦格子骨のそれぞれを構成する太骨及び細骨の断面形状は、より具体的には、厚さ方向に長い菱形や六角形等とすることができる。
【0082】
縦格子骨及び横格子骨の双方を太骨と細骨とにより構成する場合の構成の説明を容易にするため、本明細書では、縦格子骨を構成する細骨及び太骨をそれぞれ細縦骨及び太縦骨と呼び、横格子骨を構成する細骨及び太骨をそれぞれ細横骨及び太縦骨と呼ぶことにより、縦格子骨を構成する細骨及び太骨と、横格子骨を構成する細骨及び太骨とを区別する。
【0083】
活物質の脱落を防止し、活物質の保持を確実に行わせるためには、複数の縦格子骨を、細縦骨と太縦骨とにより構成して、細縦骨と太縦骨とを交互に配置するのが好ましい。
【0084】
また格子は、耳部から遠ざかるに従って電気抵抗が大きくなり、耳部から遠ざかるに従って格子骨で生じる電圧降下が大きくなっていく。そのため、耳部から遠い箇所で格子骨と活物質との間に流れる電流が制限され、耳部から離れた箇所で活物質の充放電反応が活発に行われにくくなる。このような状態が生じるのを防ぐため、耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、耳部から離れた他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなるように格子骨を配置するのが好ましい。そのため、本発明の好ましい態様では、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域が設定される。
【0085】
第1の領域及び第2の領域における細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合は、特に限定されるものではないが、第1の領域では、1本の太横骨の隣に4本の細横骨が並び、第2の領域では、1本の太横骨の隣に3本の細横骨が並ぶように、太横骨の本数と細横骨の本数との割合を設定するのが好ましい。このような割合で太横骨と細横骨とを設けると、耳部から遠ざかるに従って格子の電気抵抗(電圧降下)が大きくなるのを抑制しつつ、ペースト状活物質の充填を容易に行わせることができる。
【0086】
[細骨の太さと太骨の太さとの関係]
太横骨及び太縦骨の太さ(断面積)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。格子板の鋳造性を考慮して、太横骨の太さと太縦骨の太さとを異ならせることができる。例えば、太横骨の太さを縦太骨の太さよりも太くしておくと、格子板を鋳造する鋳型の横格子骨を鋳造するキャビティを鉛直方向に向けた状態で、重力鋳造方式により格子板を鋳造する場合に、太横骨を鋳造する断面積が大きいキャビティ(鉛直方向に伸びるキャビティ)内を通して、大量の溶融鉛を円滑に流すことができるため、縦格子骨を鋳造するキャビティ内への溶湯の流れを円滑にして、鋳造を容易にすることができる。
【0087】
また太骨の太さと細骨の太さとの関係は、活物質の充填の容易さ、極板の寿命などを考慮して適宜に設定する。本発明の好ましい態様では、後記する実施例を検証した結果から、太骨の幅を細骨の幅で除した値及び太骨の厚さを細骨の厚さで除した値をそれぞれ太骨の幅及び厚さの細骨の幅及び厚さの評価値として、これらの評価値が共に1.1〜1.5の範囲に収まるように、太骨の太さと細骨の太さとの関係を設定する。
【0088】
即ち、太縦骨の幅を細縦骨の幅で除した値、太縦骨の厚さを細縦骨の厚さで除した値、太横骨の幅を細横骨の幅で除した値及び太横骨の厚さを細横骨の厚さで除した値が1.1〜1.5の範囲に収まるように太骨の太さと細骨の太さとの関係を設定する。
【0089】
例えば太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の厚さを変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.1未満になると、細骨の厚さが厚くなって幅が狭くなり、格子板の厚さ方向の一端側を上にして格子板に活物質を充填する際に格子板の下面(裏面)側で、各細骨の下方に形成されるスペースが狭くなるため、各太骨の下方に活物質が流れ込み難くなって、太骨の一部が活物質で覆われない状態が生じることがある。またこの場合、細骨の幅が狭くなりすぎるため、充填した活物質を確実に保持することが難しくなり、活物質を充填する工程に続いて活物質を熟成・乾燥する工程に移行するために極板を起立させた際に、活物質が格子板から脱落し易くなる。
【0090】
また太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.1未満になると、細骨の厚さは小さくなるが、幅が広くなり過ぎて、細骨と太骨との間の間隔が狭くなり、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0091】
更に、細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の厚さを変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.1未満になると、太骨の厚さが大きくなり過ぎ、太骨の厚さを枠部の厚さ未満に設定することができなくなる。
【0092】
また細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.1未満になると、太骨の幅が広くなり過ぎて、細骨と太骨との間の間隔が狭くなり、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0093】
更に、太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の厚さ幅を変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.5を超えると、細骨の幅が広くなり過ぎ、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0094】
また太骨の厚さ及び幅を一定とし、細骨の断面積を一定として、細骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.5を超えると、細骨の厚さが厚くなりすぎて、活物質を充填する際に細骨の下方に形成されるスペースが不足し、太骨の下方に活物質を回り込ませることができなくなって、太骨の端面が露出した状態になるおそれが生じる。
【0095】
更に、細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の厚さを変化させる場合に、上記太骨の厚さの評価値が1.5を超えると、太骨の厚さが厚くなり過ぎ、太骨の厚さを枠部の厚さ未満にすることができなくなる。
【0096】
また細骨の厚さ及び幅を一定とし、太骨の断面積を一定として、太骨の幅を変化させる場合に、上記太骨の幅の評価値が1.5を超えると、太骨の幅が広くなり過ぎて、太骨と細骨との間の隙間が狭くなるため、格子板に活物質を充填する際に活物質の流動を円滑に行わせることができなくなる。
【0097】
上記太骨の幅の評価値及び厚さの評価値が共に1.1〜1.5の範囲に入るようにすれば、太骨の幅及び厚さ並びに細骨の幅及び厚さを適正な大きさとして、活物質を充填する際の活物質の流動を円滑に行わせて格子の一部が露出するのを防ぐとともに、格子板への活物質の保持を確実に行わせることができるため、電池の長寿命化を図ることができる。
【0098】
[活物質]
鉛蓄電池用の極板を構成する際には、格子板にペースト状に調製した活物質が充填される。この活物質は特に限定されるものでないが、一酸化鉛を含んだ鉛粉、水、硫酸等を混練(正極、負極の特性に合わせてカットファイバ、炭素粉末、リグニン、硫酸バリウム、鉛丹等の添加物を加える場合もある)して作製するのが好ましい。また活物質の充填量は、枠骨の内側に形成される骨(細骨及び太骨)が完全に隠れれば問題はないが、枠骨の厚さ以上まで充填するのが望ましい。
【0099】
[格子板の製造方法]
格子板の製造方法としては、重力鋳造方式(GDC:Gravity Die Casting)、連続鋳造方式、エキスパンド方式、打ち抜き方式等があるが、本発明に係わる格子板の製造には重力鋳造方式を用いることが好ましい。重力鋳造方式は、格子板の原材料金属(合金)を溶融し、この溶融金属(合金)を、該溶融金属の温度に耐え得る材料からなる金型内に重力により流し込み、鋳造する方法である。重力鋳造方式を用いることが好ましい理由は、重力鋳造方式では、鋳造可能な格子の太さに理論上限界がなく、且つ太格子骨と細格子骨とを合わせ持つ格子の製造が容易であり、得られた格子板の集電特性及び耐食性が優れていることにある。
【0100】
[極板]
本発明に係わる極板は、上述のペースト状活物質をペースト充填機によって格子板に充填し、熟成・乾燥することにより作製される。熟成・乾燥の時間や温度は特に限定されるものではないが、格子板の厚さや活物質の物性によって適した値に調整することが好ましい。
【0101】
[鉛蓄電池]
本発明に係わる鉛蓄電池の構成は、少なくとも正極板に本発明に係わる格子板を用いる点を除き、特に限定されるものではない。前述のように、鉛蓄電池は、正極板、負極板、電解液としての希硫酸、セパレータ(ガラス繊維製のリテーナ等)、電槽、蓋等の部材から作製される。例えば図16に示すように、正極板1と負極板2との間にセパレータを介在させながら、正極板1と負極板2とを1枚ずつ交互に積層して、同極板の耳部同士をストラップ5及び6で連結させ、極板群4を構成する。この極板群4を電槽7の中に入れて蓋をし、希硫酸を注液した後に化成を行って鉛蓄電池を完成する。
【0102】
[具体的実施形態の構成]
次に図面を参照して本発明の具体的実施形態の構成を説明する。
図1は、本発明に係わる格子板20の一実施形態を示したものである。図示の格子板20は、長方形の輪郭形状を有する枠部21と、枠部21の内側に形成された格子22とを備えている。枠部21は、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨21a,21aと、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨21b,21bとを有し、枠部21の一方の横枠骨21aには、図示しないストラップを接続するための集電用耳部25が一体に形成されている。枠部21の他方の横枠骨21aには、極板群が電槽のセル室内に挿入された際にセル室の底面に当接して、枠部21の下端をセル室の底壁よりも浮かした状態に保持する一対の足部26,26が形成されている。
【0103】
格子22は、横枠骨21aと平行に伸びるように設けられて、縦枠骨21bの長手方向に一定の間隔を持って並べて配置された複数(図示の例では26本)の横格子骨23,23,…と、縦枠骨21bと平行に伸びるように設けられて、横枠骨21aの長手方向に一定の間隔を持って並べて配置された複数(図示の例では9本)の縦格子骨24,24,…とからなり、横格子骨23,23,…と縦格子骨24,24,…とが直角に交差することにより、格子22を構成している。
【0104】
横格子骨23は、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数(図示の例では21本)の細骨23aと、細骨23aよりも断面積が大きい複数(図示の例では5本)の太骨23bとを有して、各太骨23bに隣接する骨が細骨23aとなるように太骨23bと細骨23aとが配列されている。
【0105】
同様に、縦格子骨24は、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数(図示の例では5本)の細骨24aと、細骨24aよりも断面積が大きい複数(図示の例では4本)の太骨24bとを有し、各太骨24bに隣接する骨が細骨24aとなるように太骨24bと細骨24aとが配列されている。
【0106】
本明細書では、横格子骨23を構成する細骨23a及び太骨23bと、縦格子骨24を構成する細骨24a及び太骨24bとを区別するため、横格子骨23を構成する細骨23a及び太骨23bをそれぞれ細横骨及び太横骨と呼び、縦格子骨24を構成する細骨24a及び太骨24bをそれぞれ細縦骨及び太縦骨と呼んでいる。
【0107】
本実施形態では、図2ないし図4に示したように、枠部21を構成する横枠骨21a(図3参照)及び縦枠骨21b(図2参照)が縦長の六角形の断面形状を有するように形成されている。また格子22を構成する細横骨23a(図3参照)及び細縦骨24a(図2参照)は、縦長の六角形の断面形状を有し、太横骨23b(図3参照)及び太縦骨24b(図2参照)はほぼ正六角形の断面形状を有している。
【0108】
複数の太横骨23b及び太縦骨24bは、図2ないし図4に示したように、所定の幅Wと、枠部21の厚さよりも小さい厚さTとを有して、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23b1,24b1及び他端側の端部23b2,24b2をそれぞれ枠部21の厚さ方向の一端側の端面21A及び他端側の端面21Bよりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部23b1,24b1を同一平面上に位置させた状態で配置されている。
【0109】
また複数の細横骨23a及び細縦骨24aは、太横骨23b及び太縦骨24bの幅W及び厚さTよりも小さい幅w及び厚さtを有するように形成されている。複数の細横骨23a及び細縦骨24aは、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23a1及び24a1を複数の太横骨23b及び太縦骨24bの厚さ方向の一端側の端部23b1及び24b1が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。
【0110】
なお本発明において、複数の細横骨23a及び細縦骨24aは、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23a1及び24a1を複数の太横骨23b及び太縦骨24bの厚さ方向の一端側の端部23b1及び24b1が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられていればよく、必ずしも、それぞれの厚さ方向の一端側の端部23a1及び24a1と複数の太横骨23b及び太縦骨24bの厚さ方向の一端側の端部23b1及び24b1とを厳密に同一の平面上に位置させる必要はない。例えば、図5に示したように、複数の細横骨23a及び細縦骨24aの一端側の端部23a1及び24a1を、太横骨23b及び太縦骨24bの一端側の端部23b1及び24b1よりも僅かに厚さ方向の内側に位置させてもよい。
【0111】
本実施形態では、図1及び図2示されているように、横枠骨21aの長手方向に太縦骨24bと細縦骨24aとが交互に並ぶように、縦格子骨24を構成する細縦骨24a及び太縦骨24bが設けられている。
【0112】
また、本実施形態では、格子板の主面(最も面積が広い面)に、耳部25が設けられた一方の横枠骨21a側に位置する第1の領域A1と、耳部25から離れた位置にある他方の横枠骨21a側に位置する第2の領域A2とが設定されて、格子板の主面が、縦方向に並ぶ第1の領域A1と第2の領域A2とに2分されている。そして、第1の領域で一定の面積当りに存在する細横骨23aの本数の太横骨23bの本数に対する割合を第1の割合とし、第2の領域A2で一定の面積当たりに存在する細横骨23aの本数の太横骨23bの本数に対する割合を第2の割合としたときに、第2の割合が第1の割合よりも少なくなるように、第1の領域及び第2の領域にそれぞれ設ける細骨の数を異ならせている。図示の例では、横枠骨21a,21aを太骨と見なしたときに、第1の領域A1では、図1及び図3に示したように、隣り合う太横骨23b,23bの間に4本の細横骨23aが並び、第2の領域A2では、図1及び図4に示されているように、隣り合う太横骨23b,23bの間に3本の細横骨23aが並ぶように、横格子骨23を構成する太横骨23b及び細横骨23aが設けられている。すなわち第2の領域における太横骨23b同士の間隔が、第1の領域A1における太横骨23b同士の間隔よりも狭くなっている。
【0113】
格子板を用いて鉛蓄電池用極板を製造する際には、鋳造された格子板20の厚さ方向を上下方向に向けた状態で、該格子板を搬送ベルトなどの搬送手段の上に載せて搬送する過程で、上方に配置したペースト充填機から格子板20にペースト状の活物質を供給して該活物質を格子板に塗着し、塗着した活物質を、格子板の厚さ方向の一端側(上端側)から他端側(下端側)に押し込んで格子の目を通して流動させることにより、格子全体にペースト状活物質を充填する。
【0114】
本発明においては、太横骨及び太縦骨の部分に、電池の寿命期間に亘って格子の形状を所定の形状に維持する機能を持たせる。従って本発明の格子板を製作するに当たって、太横骨及び太縦骨の本数は、所望の寿命期間の間格子の形状を維持するために必要な本数に設定されるが、格子板に充填し得る活物質量を減少させることがないようにするために、太横骨及び太縦骨の本数は多すぎないように設定する。同様に、太横骨及び太縦骨の断面積は、格子板に充填し得る活物質量を減少させることがなく、かつ所望の寿命期間に亘って格子体の形を保持するために必要最小限の太さに(太すぎないように)設定する。
【0115】
一方細横骨及び細縦骨の断面積は、太横骨及び太縦骨の力を借りることを前提にして、所望の寿命期間の間所定の形状を保持し、活物質を保持する機能を維持するのに適した大きさ(太横骨及び太縦骨の断面積よりは小さい大きさ)に設定する。また細横骨及び細縦骨の幅は、太横骨及び太縦骨との間にペースト状活物質の流動を容易にするためのスペースを確保することができる大きさに設定される。細横骨及び細縦骨の幅が大きすぎると、活物質を充填する際にその流動を容易にして活物質の充填の容易性を向上させ、格子体の一部が活物質で覆われない状態が生じるのを防ぐという、本発明の効果を得ることができなくなるだけでなく、格子板に充填し得る活物質量が減少してしまう。また細横骨及び細縦骨の断面積が小さすぎると、細横骨及び細縦骨の腐食が早期に深部に達してその機械的強度が低下するため、太横骨及び太縦骨の助けを借りても細横骨及び細縦骨の形を維持することができなくなって、活物質保持機能が低下してしまう。
【0116】
枠部の厚さが薄すぎると、枠部の厚さ未満に設定される太骨の厚さが薄くなり過ぎて、格子骨の腐食が限界に達するまでの期間が短くなり、極板の寿命が短くなる傾向がある。また枠部の厚さが薄くなり過ぎると、細骨の厚さが薄くなり過ぎるため、活物質の保持能力が低下するおそれがある。枠部の厚さを5mm以上として、格子骨を構成する太横骨及び細横骨の厚さと太縦骨及び細縦骨の厚さとを5mm未満の範囲で適当な値に設定することができるようにしておくと、極板の寿命を長くする要求と、活物質の保持能力を低下させることなく活物質の充填の容易性を高める要求との双方に応えることができる。
【0117】
枠部は、現用の産業用鉛蓄電池で用いられている格子板の枠部と同じ程度の大きさの長方形、例えば、長辺の寸法が370〜390mm、短辺の寸法が130〜150mmの長方形の形に形成されることが好ましい。
【0118】
格子板の枠部の寸法を上記の値に設定すると、比較的大形の極板を作製することができ、この極板を多数用いることにより、放電容量が大きい電池を作製することができる。また上記の格子板の寸法は、産業用の鉛蓄電池で用いられている格子板の寸法と同程度であるため、従来の産業用鉛蓄電池の電槽や蓋等を変更することなくそのまま用いて放電容量が大きく、寿命が長い鉛蓄電池を得ることができる。
【0119】
図1に示した例では、太縦骨と細縦骨とが横枠骨21a,21bの長手方向に沿って交互に並ぶように縦格子骨を設けているが、本発明は、図1に示したように縦格子骨を構成する場合に限定されるものではなく、例えば図7に示したように、太縦骨24bの隣に2本の細縦骨24aが並ぶように縦格子骨を構成しても良い。
【0120】
上記の実施形態では、横格子骨及び縦格子骨の双方を細骨と太骨とにより構成したが、本発明においては、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨と細骨よりも断面積が大きい複数の太骨とを有して、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とが配列された構成を有していればよく、上記実施形態のように縦格子骨及び横格子骨を構成する場合に限定されない。例えば、横格子骨のみを太横骨と細横骨とにより構成し、縦格子骨は太縦骨のみにより構成しても良い。
【0121】
横格子骨のみを太横骨と細横骨とにより構成し、縦格子骨は太縦骨のみにより構成する場合にも、耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域を設定して、耳部から離れるに従って格子部の電気抵抗が増大する傾向になるのを防ぐようにするのが好ましい。
【0122】
上記の実施形態では、格子板の主面を、耳部が設けられた一方の横枠骨側に位置する第1の領域A1と、耳部から離れた側の他方の横枠骨側に位置する第2の領域A2とを設けて、格子板の主面を縦方向(上下)に2分し、一方の横枠骨及び他方の横枠骨を太横骨と見なしたときに、第1の領域A1で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が、第2の領域A2で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数よりも多くなるように、第1の領域及び第2の領域における細横骨の数を設定するようにしたが、本発明において、格子板の主面を複数の領域に分けて、領域毎に細横骨の数の太横骨の数に対する割合を異ならせる場合、耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっているようにすればよく、格子板の主面を複数の領域に分ける分け方は上記の例に限定されない。例えば、第1の領域A1と第2の領域A2との間に更に一つ以上の領域を設けて、格子板の主面を縦方向に3以上の領域に分け、耳部が設けられた一方の横枠骨側に設けられた領域から他方の横枠骨側に設けられた領域にいくに従って、一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合が段階的に少なくなっていくように(すなわち、太横格子同士の間隔が段階的に狭くなっていくように)、各領域における細横骨の数と太横骨の数とを設定してもよい。
【実施例】
【0123】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
[格子板の作製]
鉛に、スズ:1.0〜1.8質量%、カルシウム:0.05〜0.1質量%を添加して作製した鉛合金を溶融し、異なる5種類の型を用いて重力鋳造方式により正極用の格子板A、格子板B、格子板C、格子板D、格子板Eを作製した。これらの格子板のうち、格子板A及びBは比較例であり、格子板CないしEは本発明の実施例である。
【0124】
<格子板A:比較例1>
格子板Aは図12に示したものに相当する。格子板Aにおいては、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを3.6mm、幅を3.2mmとした。枠部の内側に、厚さが幅よりも大きい六角形の断面形状を有する縦格子骨及び横格子骨を等間隔で形成し、図12に示すように、縦格子骨及び横格子骨の全てを同一の太さの骨(リブ)により形成した。縦格子骨及び横格子骨の本数はそれぞれ9本及び29本とした。縦格子骨及び横格子骨を構成する骨の厚さTは3.2mm、幅wは2.4mmとした。これは、従来から用いられている格子板である。縦格子骨及び横格子骨はそれぞれ骨の中心線間の間隔を等間隔としている(以下の例においても同様)。
【0125】
<格子板B:比較例2>
格子板Bは、図13に示す格子板に相当する。格子板Bにおいては、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとした。また枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨の断面形状は、厚さが幅よりも大きい六角形とし、縦格子骨及び横格子骨の全てを、厚さTが5.4mm、幅Wが4.3mmの骨により構成した。縦格子骨及び横格子骨の本数はそれぞれ9本及び26本とした。
【0126】
<格子板C:実施例1>
格子板Cにおいては、枠部の内側に図1に示したパターンで縦格子骨と横格子骨とを設けた。格子板Bと同様に、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとし、枠部の内側に、図1に示すように太骨と細骨とを備えた縦格子骨及び横格子骨を形成した。太縦骨24b及び太横骨23bの断面形状は、厚さが幅よりも大きい六角形とし、厚さを5.4mm、幅を4.3mmとした。また細縦骨24a及び細横骨24aの断面形状も厚さが幅よりも大きい六角形とし、その厚さを3.6mm、幅を2.8mmとした。格子板Cにおいては、図2ないし図4に示したように、活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細縦骨24a及び細横骨23aの厚さ方向の一端側の端部24a1及び23a1を、太縦骨24b及び太横骨23bの厚さ方向の一端側の端面24b1及び23b1と同一の平面上に位置させた。
【0127】
<格子板D:実施例2>
格子板Dにおいては、格子板Bと同様に、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとした。また枠部の内側に形成される骨のうち、横格子骨の断面形状を、格子板Aと同様(図12)に厚さが幅よりも大きい六角形とし、全ての横格子骨として、厚さが3.2mm、幅が2.4mmの骨を用いた。横格子骨の本数は26である。一方、縦格子骨には太縦骨と細縦骨とを設け、太縦骨及び細縦骨の断面形状は、格子板Cと同様に厚さが幅よりも大きい六角形とした。この場合、太縦骨の厚さを5.4mm、幅を4.3mmとし、細縦骨の厚さを3.6mm、幅を2.8mmとした。活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細縦骨24a及び細横骨23aの厚さ方向の一端側の端部24a1及び23a1は、太縦骨24b及び太横骨23bの厚さ方向の一端側の端面24b1及び23b1と同一の平面上に位置させた。縦格子骨の配列パターンは図1に示したものと同様に、太縦骨と細縦骨とを交互に配置するパターンとした。
【0128】
<格子板E:実施例3>
格子板Eにおいては、格子板Bと同様に、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mm、幅を4.4mmとした。また枠部の内側に形成される格子骨のうち、縦格子骨は、格子板Aと同様に、厚さが3.2mm、幅が2.4mmの六角形の断面形状を有する同一形状の骨により構成した。一方、横格子骨には、格子板Cと同様に、厚さが5.4mm、幅が4.3mmの六角形の断面形状を有する太横骨と、厚さが3.6mm、幅が2.8mmの六角形の断面形状を有する細横骨とを設けた。この場合も、活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細縦骨24a及び細横骨23aの厚さ方向の一端側の端部24a1及び23a1は、太縦骨24b及び太横骨23bの厚さ方向の一端側の端面24b1及び23b1と同一の平面上に位置させた。
【0129】
[活物質の充填状態の確認]
前述した格子板A,B,C,D及びEに対して、充填機によりペースト状の活物質を充填する活物質充填実験を実施し、その後、熟成・乾燥をして未化成の正極板を作製した。
【0130】
活物質充填実験に用いたペースト状の正極用活物質は、一酸化鉛を主成分とする鉛粉の質量に対して、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合した後、水を12質量%、希硫酸を16質量%加えて再び混練をして作製した。この正極用活物質の作製方法は、従来から行われている方法と同様である。
【0131】
[充填結果]
格子板A,B,C,D及びEにペースト状活物質を充填し、活物質充填時に下方に向いていた格子板の裏側への活物質の充填状態を視認した結果、及び活物質を充填した後、乾燥・熟成工程を経て製造した極板を断面して目視により確認した結果を以下に示す。
【0132】
[格子板裏側での充填状態]
格子板Aにおいては、図12に示すように、すべての格子骨が活物質中に綺麗に埋まっており、格子板の裏側への活物質の充填状態は良好であった。
【0133】
格子板Bにおいては、図13に示したように、格子板の裏側への活物質の充填がうまく行われず、格子骨の露出した部分が観察され、活物質には亀裂が発生していることが観察された。
【0134】
格子板Cにおいては、図12に示すように細格子骨3及び太格子骨4の双方が活物質中に埋まっており、格子板Aと同様に、格子板の裏側への活物質の充填状態は良好であった。
【0135】
格子板D及びEにおいても、格子板Cと同様に、格子板の裏側への活物質の充填状態が良好であることが観察された。
【0136】
以上の結果より、本発明の実施例1ないし3に係わる格子板C,D及びEについては、図12に示された従来の格子板と同様に、活物質の充填が良好に行われることが確認された。
【0137】
[鉛蓄電池の作製]
前述した格子板A,C,D及びEを用いた4種類の鉛蓄電池の作製方法を、以下に示す。
【0138】
正極板としては、上述の方法で作製した正極用活物質を格子板A,C,D,Eに充填して、熟成・乾燥したものを用いた。格子板Bにおいては、活物質充填時に下向きにあった格子板の裏面側への活物質の充填が十分に行われず、図13に示したように格子板の裏側で格子が露出した部分が観察され、これを用いた電池は早期に容量低下を起こす可能性が高いことが明らかであったため、格子板Bを用いた正極板を採用した鉛蓄電池は作製しなかった。
【0139】
また負極用の格子板としては、以下に示す方法で作製したものを用いた。
鉛にスズ1.8〜2.2質量%、カルシウム0.08〜0.12質量%を添加して作製した鉛合金を溶融し、重力鋳造方式によって枠部の縦寸法が385mm、横寸法が140mm、厚さが3.0mmの負極用格子板を作製した。枠部の内側の横枠骨及び縦枠骨はすべて、厚さが2.6mm、幅が1.8mmの六角形の断面形状を有する骨により形成した。
【0140】
また負極活物質を次のようにして作製した。先ず一酸化鉛を主成分とする鉛粉の質量に対して、リグニンを0.2質量%、硫酸バリウムを0.1質量%、一般に市販されている黒鉛等のカーボン粉末を0.2質量%、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合し、次に、水を12質量%加えて混練をした後、更に希硫酸を13質量%加えて再び混練をしてペースト状活物質を作製した。この負極活物質の作製方法は従来から行われている方法と同様である。このようにして得られた負極活物質を上記格子板に充填した後、熟成・乾燥を行って負極板を作製した。
【0141】
上記の正極板と負極板とを、間にセパレータを介在させながら1枚ずつ交互に積層し、同極性の極板の耳部同士をストラップで連結して極板群を作製した。この極板群を電槽の中に入れた後、希硫酸を注液し、化成を行って縦90mm、横172mm、高さ495mmの2V系鉛蓄電池とした。格子板A,C,D及びEをそれぞれ用いた電池A,C,D及びEをそれぞれ3個ずつ作製してトリクル充電による寿命加速試験を行った。
【0142】
[鉛蓄電池の寿命試験]
作製した上記の各電池に対して、60℃の恒温槽中で充電電圧を2.23Vとしてトリクル充電による寿命加速試験を行った。なお電池に負担をかけないようにするため、充電電流を0.05CA以下に制限した。気温60℃の雰囲気中に置かれた鉛蓄電池のトリクル寿命が1ヶ月であることは、気温25℃の雰囲気中に置かれた場合に1年間のトリクル寿命を有することを意味する。試験に供した各電池が換算年数において1年が経過した時点、5年が経過した時点及び10年が経過した時点でそれぞれ1個ずつ電池を取り出して、電池の解体調査を行った。
【0143】
[寿命試験結果]
解体した電池から格子板A,C,D,Eをサンプリングし、格子の腐食量を測定した。その比較結果を図14に示す。図14において曲線a,c,d,eはそれぞれ電池A,C,D,Eについての測定結果示す。腐食量の測定方法としては、格子板を強アルカリ溶液に浸して腐食部分を溶解させ、溶解前後の重量差から算出する方法を用いた。
【0144】
換算年数1年が経過した時点では、各電池の腐食量にさほど差はないものの、5年が経過した時点、10年経過時点と換算年数が長くなっていくに従って差が大きくなっていく。格子板の腐食量が40%に達した時点を電池寿命が尽きる時点として設定して、寿命判定線を引き、1〜10年までの傾きから延長線を引いて該延長線が寿命判定線と交わった点を電池寿命とすると、電池寿命はそれぞれ、電池Aでは約12.5年、電池Cでは約19年、電池Dでは約16年、電池Eでは約15年と予測することができ、格子板A,E,D,Cの順に長期間腐食に耐えられるという結果が得られた。
【0145】
以上の試験結果より、本発明の格子板を用いることで、従来の鉛電池に比べて大幅に長寿命な電池を作製することが可能であると判断することができる。また、格子板D,Eについての試験結果より、縦格子骨及び横格子骨の何れか一方のみを太骨と細骨とにより構成し、他方を格子板Aと同様に全て細骨で構成した場合にも、寿命を延ばす効果が得られることが確認された。しかし、格子板D,Eを用いた場合には、格子板Cを用いた場合ほどには寿命が延びなかったことから、縦格子骨及び横格骨の双方を太骨と細骨との組合せにより構成した場合(実施例1)に、より長寿命の電池が得られることが明らかになった。
【0146】
[変動抑制試験]
次に、前記電池A,Cをそれぞれ3個ずつ作製し、これを、風力発電設備において、風力発電装置に充電器を介して鉛蓄電池を接続して、発電機の出力による鉛蓄電池の充電と、該鉛蓄電池から系統への放電とを行わせることにより、発電装置の発電量の変動を補償して、発電装置から系統に供給される電力の平準化を図る運用を想定して、低い充電状態で、かつ短い間隔で充放電を繰り返す変動抑制試験を行った。
【0147】
この変動抑制試験では、25℃の環境温度において、充電状態(SOC)を60%、充電電流を0.2CA、放電電流を0.2CAとして、1秒間の放電と1秒間の充電とを休止期間をおかずに繰り返し、電池電圧を、1.80V〜2.42V/セルの範囲に保つように制御して、24ヶ月(2年)の試験を行った。試験の期間を通じて、SOCを60%に維持した。また、1カ月毎に25℃環境下にて0.1CA放電容量で定電流放電を実施し、電池電圧が放電終止電圧1.80V/セルになった時点で試験を終了して、その放電時間からAhを計算して放電容量とした。このようにして測定した放電容量の推移を確認した。尚、電池が寿命に到るまで劣化が進んだか否かを判断する目安として、初期の電池容量の70%の容量を寿命判定容量とし、電池容量が初期の容量に対し70%以下となった状態を寿命に達した状態として、劣化の進行度合いを判定した。
【0148】
この変動抑制試験では、風力発電設備で5000サイクル/日(約17秒に1回)の充放電を繰り返すと想定して、充放電サイクルをこれよりも十分に短く設定することにより、加速寿命試験を行っている。すなわち、上記変動抑制試験では、2秒に1回の割合で充放電を繰り返しているので、1日当り43200サイクルの充放電となり、43200/5000=8.6倍の加速寿命試験を行なっていることになる。
【0149】
[変動抑制試験結果]
上記の変動抑制試験の結果を図15に示す。図15の縦軸の0.1CA容量比は、各月における0.1CA容量の試験開始時の0.1C容量(初期容量)に対する比である。図15から、電池Cは24ヶ月(2年)後も初期容量を維持していることが理解できる。この試験結果から、電池Cは、2×8.6=17.2年以上の寿命を維持することが推定される。一方、電池Aは、24ヶ月経過後に初期容量の85%まで容量が低下しており、曲線の傾きから、この後、急激に容量低下が起こることが予測される。
【0150】
[太横骨間の細横骨の本数の差異による影響を調べる実験]
次に、枠部を構成する各縦枠骨及び横枠骨をそれぞれ太縦骨及び太横骨と見なして、縦格子骨において隣り合う太縦骨間に設ける細縦骨の本数及び横格子骨において太横骨間に設ける細横骨の本数を種々変えた正極用格子板を実施例4ないし実施例11として作成し、縦格子骨において太縦骨の間に設ける細縦骨の本数を1とし、横格子骨において太横骨間に設ける細横骨の本数を耳部に近い側と耳部から遠い側とで種々異ならせた正極用格子板を実施例12ないし33として作成して、これらの構成の差異により活物質の充填状態や格子部の電気抵抗がどのような影響を受けるかを調べる実験を行った。
【0151】
[正極用格子板の作製]
鉛に、スズ:1.8質量%、カルシウム:0.08質量%を添加して100質量%とした鉛合金を溶融し、異なる型を用いて重力鋳造方式により、縦格子骨において隣り合う太縦骨の間(枠縦骨も太縦骨と見なす。)に設ける細縦骨の数を異ならせた正極用格子板を実施例4ないし6として作成し、横格子骨において、隣り合う太横骨の間(枠横骨も太横骨と見なす。)に設ける細横骨の数を種々異ならせた正極用格子板を実施例7ないし11として作製した。
【0152】
また、格子板を耳部が設けられた横枠骨側(耳側)に位置する第1の領域と、足部が設けられた横枠骨側(足側)に位置する第2の領域とに2分し、耳側の第1の領域と足側の第2の領域とで隣り合う太横骨の間に設ける細横骨の数を種々異ならせた正極用格子板を実施例12ないし21として作製した。
【0153】
更に、耳部側の第1の領域で隣り合う太横骨の間に設ける細横骨の数を4とし、足部側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に設ける細横骨の数を3として、太骨(太横骨及び太縦骨)の厚さと幅とを種々異ならせた正極用格子板を実施例22ないし27として作成し、細骨(細横骨及び細縦骨)の厚さ及び幅を種々異ならせた正極用格子板を実施例28ないし33として作製した。
【0154】
実施例4ないし33において、格子板の枠部の大きさをすべて同一とし、枠部の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚さを5.8mmとした。以下実施例4ないし33の構成について更に詳細に説明する。実施例4ないし33においては、複数の細縦骨及び複数の細横骨のそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた。
【0155】
<実施例4>
実施例4の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、図2に示すように隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を設けた構成とし、横格子骨は、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を設けた構成としている。縦骨の断面形状は、厚さが幅よりも大きい六角形とし、太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さTを5.4mm、幅Wを4.2mmとした断面六角形の骨により構成した。また細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さtが3.6mm、幅wが3.4mmの断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨の厚さTを細骨の厚さtで除した値、即ち、太縦骨24bの厚さTを細縦骨24aの厚さtで除した値及び太横骨23bの厚さTを細横骨23aの厚さtで除した値を1.50、太骨の幅Wを細骨の幅wで除した値、即ち、太縦骨24bの幅Wを細縦骨24aの幅wで除した値及び太横骨23bの幅Wを細横骨23aの幅wで除した値を1.24とした。
【0156】
<実施例5>
実施例5の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、図7に示すように隣り合う太縦骨24b,24bの間に2本の細縦骨24aを配置する構成とし、横格子骨は図4に示すように、隣り合う太横骨23b,23bの間に3本の細横骨23aを配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さTを5.4mm、幅Wを4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さtを3.6mm、幅wを3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0157】
<実施例6>
実施例6の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に3本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図4に示すように、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さTを5.4mm、幅Wを4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さtを3.6mm、幅wを3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0158】
<実施例7>
実施例7の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は図6に示すように隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に1本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0159】
<実施例8>
実施例8の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に2本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0160】
<実施例9>
実施例9の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図4に示すように隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に3本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0161】
<実施例10>
実施例10の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図3に示すように隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に4本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0162】
<実施例11>
実施例11の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に太骨(太縦骨及び太横骨)と細骨(細縦骨及び細横骨)とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は、図8に示すように、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さを3.6mm、幅を3.4mmとした断面六角形の骨により構成した。横格子骨は、耳部に近い側でも、耳部から離れた側でも、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨が配置される構成とした。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0163】
上記実施例4ないし11の格子板の構成を下記に表1にまとめて示した。
【表1】
【0164】
<実施例12>
実施例12の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は、耳側に設定した第1の領域で、図8に示すように、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0165】
<実施例13>
実施例13の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とし、横格子骨は耳側に設定した第1の領域で、図8に示すように、隣り合う太横骨の間に5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。また、太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0166】
<実施例14>
実施例14の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に、5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0167】
<実施例15>
実施例15の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に、図8に示すように5本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に図3に示すように4本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0168】
<実施例16>
実施例16の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に、4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0169】
<実施例17>
実施例17の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0170】
<実施例18>
実施例18の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0171】
<実施例19>
実施例19の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0172】
<実施例20>
実施例20の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0173】
<実施例21>
実施例21の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に2本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に1本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0174】
<実施例22>
実施例22の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.8mm、幅を3.6mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.61、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.06である。
【0175】
<実施例23>
実施例23の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0176】
<実施例24>
実施例24の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.0mm、幅を4.5mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.39、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.32である。
【0177】
<実施例25>
実施例25の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを4.6mm、幅を4.9mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.28、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.44である。
【0178】
<実施例26>
実施例26の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを4.2mm、幅を5.4mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.17、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.59である。
【0179】
<実施例27>
実施例27の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを3.8mm、幅を6.0mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.06、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.76である。
【0180】
<実施例28>
実施例28の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが5.2mm、幅が2.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.04、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.75である。
【0181】
<実施例29>
実施例29の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが5.0mm、幅が2.5mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.08、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.68である。
【0182】
<実施例30>
実施例30の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが4.4mm、幅が2.8mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.23、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.50である。
【0183】
<実施例31>
実施例31の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが4.0mm、幅が3.1mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.35、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.35である。
【0184】
<実施例32>
実施例32の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.6mm、幅が3.4mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.50、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.24である。
【0185】
<実施例33>
実施例33の格子板においては、枠部の内側に形成される縦格子骨及び横格子骨に、太骨と細骨とを設け、縦格子骨は、隣り合う太縦骨の間に1本の細縦骨を配置する構成とした。横格子骨は耳側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨を配置する構成とし、足側の第2の領域で隣り合う太横骨の間に3本の細横骨を配置する構成とした。太骨(太縦骨及び太横骨)は、厚さを5.4mm、幅を4.2mmとした断面六角形の骨により構成し、細骨(細縦骨及び細横骨)は、厚さが3.2mm、幅が3.9mmの断面六角形の骨により構成した。太骨(太縦骨及び太横骨)の厚さを細骨(細縦骨及び細横骨)の厚さで除した値は1.69、太骨(太縦骨及び太横骨)の幅を細骨(細縦骨及び細横骨)の幅で除した値は1.08である。
【0186】
上記実施例12ないし33の構成をまとめて下記の表2に示した。
【表2】
【0187】
[活物質の充填状態の確認]
実施例5ないし33の格子板に対し、ペースト充填機により同一条件でペースト状の正極用活物質を充填する活物質充填実験を実施し、その後、熟成・乾燥をして未化成の正極板を作製した。
【0188】
実験に使用した活物質は、以下に示す従来から使用されている工程により調製した。先ず一酸化鉛を主成分とする鉛粉に、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合し、次に水を12質量%、希硫酸を16質量%加えて100質量%とし、再び混練をして正極用のペースト状活物質を作製した。
【0189】
[充填結果]
実施例5ないし実施例33の格子板にペースト状活物質を充填した後、活物質充填時に下方を向いていた格子板の裏面側での活物質の充填状態を視認した。次いで、乾燥・熟成工程を経て製造した極板を断面して、活物質の充填状態を観察した。これらの結果を下記の表3に示す。
【表3】
【0190】
格子板の裏面側への充填状態を視認した結果、各格子板とも、太骨及び細骨が活物質中に埋まっていることが確認された。しかし極板を断面して観察した結果では、実施例7,8,12,13,16,17,19〜21,26,27及び33において、図11に示すように裏側の活物質の厚さが薄く、格子板の裏面側への活物質の充填が十分に行われない傾向が見られた。
【0191】
なお、実施例7,8は、隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の本数が1本または2本の場合であり、実施例12,13,16,17,19〜21は、横骨が耳から遠い側に設定された第2の領域において、隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数が1本または2本の場合である。また、実施例26,27は、太骨の幅を細骨の幅で除した値が1.5より大きい場合であり、実施例33の格子板は、太骨の幅を細骨の幅で除した値が1.1未満の場合である。
【0192】
また、実施例5,6,10,11,14,15においては太骨の本数が少なく、実施例22、28及び29においては、骨の断面形状が著しく縦長である(極板の厚さ方向に長く、幅が狭すぎる)ため、活物質の保持がし難く、運搬時等の振動程度でも容易に活物質の脱落する現象が観察された。
【0193】
更に、実施例28及び29においては、ペースト状の活物質を流動させるための隙間が少ないため、断面の観察において問題があるとは言えないまでも、活物質の充填が十分に行われていない箇所が見受けられた。
【0194】
なお、実施例5,6は、縦格子骨において隣り合う太縦骨の間に配置する細縦骨の数を2本以上とした場合(太縦骨と細縦骨とを交互に配置していない場合)であり、実施例11は、横格子骨において隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を5以上とした場合である。また実施例14及び15は、耳に近い側に設定した第1の領域において、隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を5とした場合である。また、実施例22は、太骨の厚さを細骨の厚さで除した数値が、1.5より大きい場合であり、実施例28及び29は、太骨の厚さを細骨の厚さにより除した数値が、1.1未満の場合である。
【0195】
また、実施例10のように、隣り合う耳部側に設定された第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数及び耳から離れた側に設定された第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を共に4とした場合には、耳部から離れるに従って格子の電気抵抗が大きくなっていき、耳部から離れるに従って格子骨で生じる電圧降下が大きくなっていくことが確認された。これに対し、実施例4,9,18,23〜25,30〜32のように、第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を4とし、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置する細横骨の本数を3とした場合には、第2の領域で格子骨に生じる電圧降下が抑制されることが確認された。
【0196】
以上の結果から、実施例4,9,18,23〜25,30〜32のように、縦格子骨を太縦骨と細縦骨とが交互に配置される構成とし、横格子骨は、耳部に近い側に設定した第1の領域で隣り合う太横骨の間に4本の細横骨が配置され、耳部から離れた側に設定された第2の領域で隣り合う太骨の間に3本の細横骨が配置される構成とし、かつ太骨の厚さを細骨の厚さで除した値及び太骨の幅を細骨の幅で除した値を1.1〜1.5の範囲に収めるように太骨及び細骨の寸法を設定することにより、図10に示すように格子板の裏側への活物質の充填が良好に行われて格子骨が露出することがなく、かつ長期間に亘って腐食に耐えて格子板に活物質を保持する機能を維持することができる格子板を得ることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明によれば、腐食に長期間耐えることができ、しかも活物質の充填が容易な鉛蓄電池用の格子板を得ることができる。またこの格子板に活物質を充填して正極板を構成することにより、従来より長寿命な制御弁式鉛蓄電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0198】
20 格子板
21 枠部
21a 横枠骨
21b 縦枠骨
22 格子
23 横格子骨
24 縦格子骨
25 集電用耳部
26 足部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、前記横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて前記枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、前記枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備えた鉛蓄電池用格子板であって、
前記縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方は、鉛蓄電池の所期の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨と前記細骨よりも断面積が大きい複数の太骨とを有して、各太骨に隣接する骨が細骨となるように前記太骨と細骨とが配列され、
前記複数の太骨は、前記枠部の厚さよりも小さい厚さを有して、それぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ前記枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を同一平面上に位置させた状態で配置され、
前記細骨の幅及び厚さはそれぞれ前記太骨の幅及び厚さよりも小さく設定され、
前記複数の細骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を前記複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面の位置を越えない範囲で前記複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられ、
前記縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を構成する複数の細骨は、太さが異なる複数種類の細骨を有している、
鉛蓄電池用格子板。
【請求項2】
前記縦格子骨は、前記太骨である太縦骨と、前記細骨である細縦骨とを有し、
前記横格子骨は、前記太骨である太横骨と、前記細骨である細横骨とを有している、
請求項1に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項3】
前記複数の細縦骨及び複数の細横骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を前記太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている、
請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項4】
前記耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、前記耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている、
請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項5】
前記縦格子骨を構成する太縦骨及び細縦骨は、前記横枠骨の長手方向に太縦骨と細縦骨とが交互に並ぶように設けられ、
前記耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ第1の領域及び第2の領域が設定され、
前記一方の横枠骨及び他方の横枠骨を太横骨と見なしたときに、前記第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数よりも多くなるように、前記第1の領域及び第2の領域における細横骨の数が設定されている、
請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項6】
前記第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数は4であり、前記第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数は3である請求項5に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項7】
前記太縦骨の幅を前記細縦骨の幅で除した値、前記太縦骨の厚さを前記細縦骨の厚さで除した値、前記太横骨の幅を前記細横骨の幅で除した値及び前記太横骨の厚さを前記細横骨の厚さで除した値が1.1〜1.5の範囲にある請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項8】
前記横格子骨は、前記太骨である太横骨と前記細骨である細横骨とを有するが、前記縦格子骨は前記太骨である太縦骨のみからなっている、
請求項1に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項9】
前記複数の細横骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を前記太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている、
請求項8に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項10】
前記耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、前記耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている、
請求項8に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項11】
前記耳部が設けられた一方の横枠骨側及び前記耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を前記第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域が設定されている、
請求項8に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れかに記載された格子板に活物質を充填してなる鉛蓄電池用極板。
【請求項13】
少なくとも正極板が、請求項1ないし11の何れかに記載された格子板に正極活物質を充填した構成を有する鉛蓄電池。
【請求項1】
横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、前記横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて前記枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、前記枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備えた鉛蓄電池用格子板であって、
前記縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方は、鉛蓄電池の所期の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨と前記細骨よりも断面積が大きい複数の太骨とを有して、各太骨に隣接する骨が細骨となるように前記太骨と細骨とが配列され、
前記複数の太骨は、前記枠部の厚さよりも小さい厚さを有して、それぞれの厚さ方向の一端側の端部及び他端側の端部をそれぞれ前記枠部の厚さ方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚さ方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚さ方向の一端側の端部を同一平面上に位置させた状態で配置され、
前記細骨の幅及び厚さはそれぞれ前記太骨の幅及び厚さよりも小さく設定され、
前記複数の細骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を前記複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面の位置を越えない範囲で前記複数の太骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられ、
前記縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を構成する複数の細骨は、太さが異なる複数種類の細骨を有している、
鉛蓄電池用格子板。
【請求項2】
前記縦格子骨は、前記太骨である太縦骨と、前記細骨である細縦骨とを有し、
前記横格子骨は、前記太骨である太横骨と、前記細骨である細横骨とを有している、
請求項1に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項3】
前記複数の細縦骨及び複数の細横骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を前記太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている、
請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項4】
前記耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、前記耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている、
請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項5】
前記縦格子骨を構成する太縦骨及び細縦骨は、前記横枠骨の長手方向に太縦骨と細縦骨とが交互に並ぶように設けられ、
前記耳部が設けられた一方の横枠骨側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ第1の領域及び第2の領域が設定され、
前記一方の横枠骨及び他方の横枠骨を太横骨と見なしたときに、前記第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数が、第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数よりも多くなるように、前記第1の領域及び第2の領域における細横骨の数が設定されている、
請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項6】
前記第1の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数は4であり、前記第2の領域で隣り合う太横骨の間に配置される細横骨の数は3である請求項5に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項7】
前記太縦骨の幅を前記細縦骨の幅で除した値、前記太縦骨の厚さを前記細縦骨の厚さで除した値、前記太横骨の幅を前記細横骨の幅で除した値及び前記太横骨の厚さを前記細横骨の厚さで除した値が1.1〜1.5の範囲にある請求項2に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項8】
前記横格子骨は、前記太骨である太横骨と前記細骨である細横骨とを有するが、前記縦格子骨は前記太骨である太縦骨のみからなっている、
請求項1に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項9】
前記複数の細横骨は、それぞれの厚さ方向の一端側の端部を前記太縦骨及び太横骨の厚さ方向の一端側の端部が配置された平面と同一の平面上に位置させた状態で設けられている、
請求項8に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項10】
前記耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、前記耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなっている、
請求項8に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項11】
前記耳部が設けられた一方の横枠骨側及び前記耳部から離れた位置にある他方の横枠骨側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を前記第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域が設定されている、
請求項8に記載の鉛蓄電池用格子板。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れかに記載された格子板に活物質を充填してなる鉛蓄電池用極板。
【請求項13】
少なくとも正極板が、請求項1ないし11の何れかに記載された格子板に正極活物質を充填した構成を有する鉛蓄電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−79706(P2012−79706A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274500(P2011−274500)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2010−543837(P2010−543837)の分割
【原出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2010−543837(P2010−543837)の分割
【原出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
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