説明

鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板及び鉛蓄電池

【課題】 鉛蓄電池の充放電サイクル寿命を改善した複合キャパシタ負極板を提供する。
【解決手段】 キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を有する第1カーボン材料の粒子の表面に、導電性を有する第2カーボン材料の粒子を一体化被覆して成る複合カーボン粒子を含むカーボン合剤の被覆層を負極板の表面に形成して成る鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PSOCで急速充放電を繰り返すハイブリッド電気自動車、アイドルストップ車、風車、太陽光発電などの産業用に適する鉛蓄電池の負極として用いられる複合キャパシタ負極板及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2007-506230号公報には、負極板の表面に、キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を有するカーボン材料の粒子と導電性を有するカーボン材料の粒子の混合粉と結着剤を混合して成るカーボン合剤をペースト状として塗布、乾燥して成るポーラスなカーボン合剤被覆層を形成して成る複合キャパシタ負極板を負極として用いて具備した鉛蓄電池が、PSOCで急速充放電を繰り返して使用されるハイブリッド電気自動車などに用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-506230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の複合キャパシタ負極板を具備した鉛蓄電池は、従来の負極板を具備した鉛蓄電池に比し、サイクル寿命が延長するが、充放電サイクルを繰り返すうちに、キャパシタ機能を有するカーボン材料の粒子の表面にPbやPbSO4が析出し、これにより該粒子が有する無数の内部細孔への入口が閉塞され、キャパシタ機能を著しく損なわれ、これに伴い、PSOCでの急速充放電サイクル寿命が短くなることが判明した。
更に詳細に説明すると、上記従来の該カーボン合剤被覆層に含有する活性炭などのキャパシタ機能を有するカーボン材料の粒子は、充電により卑側に分極するとその粒子の表面はマイナス電荷を帯び、電気二重層に正電荷を有するプロトンやカチオンを吸着し、放電により貴側に分極するとこれらを脱着する。また、無電化電位よりも更に貴側に放電するとその粒子の表面はプラス電荷を帯び、電気二重層にアニオンを吸着する。
このように、キャパシタ機能を有するカーボン材料の粒子は、プロトンだけではなくカチオンとしてPbイオンの吸脱着も同時平行的に起こる。そのため、活性炭の表面に吸着したPbイオンはPb金属に還元され、その粒子の表面に析出する。また、放電時にはPbの酸化によりPbSO4を析出することになる。該粒子は内部細孔の発達により巨大な内部表面積を有するが、外部は一見滑らかな多面体や球状で見掛けの表面積は小さい。従って、その粒子の外部表面にPbやPbSO4が析出すると内部細孔への入口が閉塞されるので、キャパシタ機能を著しく損なうことになる。
本発明は、上記の課題を解決し、上記のキャパシタ機能を有するカーボン材料の粒子の表面の開口の閉塞を抑制し、キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を有するカーボン材料の粒子の良好なキャパシタ機能を維持し、長寿命の鉛蓄電池をもたらす鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に記載の通り、キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を有する第1カーボン材料の粒子の表面に、導電性を有する第2カーボン材料の粒子を一体化被覆して成る複合カーボン粒子を含むカーボン合剤の被覆層を負極板の表面に形成して成ることを特徴とする鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、該第2カーボン材料の粒径は、第1カーボン材料の粒径の10分の1以下であることを特徴とする。
更に本発明は、請求項3に記載の通り、該複合カーボン粒子に導電性に優れた第3カーボン材料を添加混合して成るカーボン合剤を負極板の表面に被覆して成ることを特徴とする。
更に本発明は、請求項4に記載の通り、第1カーボン材料は活性炭又はカーボンブラックであり、第2カーボン材料はカーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノチューブ又はカーボンホイスカーであり、第3カーボン材料はカーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンナノワイヤーカーボンナノチューブ又はカーボンホイスカーであることを特徴とする。
更に本発明は、請求項5に記載の通り、該カーボン合剤層は第1カーボン材料100重量部に対して第2カーボン材料は4〜100重量部から成る複合カーボン粒子と該第1カーボン材料100重量部に対して第3カーボン材料50重量部以下と結着剤は2〜30重量部と増粘剤は20重量部以下、短繊維は20重量部以下から成ることを特徴とする。
更に本発明は、請求項6に記載の通り、該負極板の表面を被覆するカーボン合剤の量は、該負極板に充填された負極活物質の重量に対し1〜15重量%としたことを特徴とする。
更に本発明は、請求項7に記載の通り、請求項1〜6に記載のいずれか1つの複合キャパシタ負極板を具備したことを特徴とする鉛蓄電池に存する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、第1カーボン材料の粒子の表面に第2カーボン材料の粒子を一体化被覆して成る複合カーボン粒子を含むカーボン合剤被覆層を負極板の表面に形成して成る複合キャパシタ負極板と、この複合キャパシタ負極板を具備した鉛蓄電池は、充放電を繰り返しても、キャパシタ機能を有する第1カーボン材料の粒子の表面は、その表面に一体に被覆している導電性を有する第2カーボン材料の粒子により、後記に明らかにする理由により保護されるので、PbやPbSO4の析出による該微細閉塞は抑制される。その結果、第1カーボン材料の粒子と第2カーボン材料の粒子を単に混合して成るカーボン合剤被覆層を負極板に形成された複合キャパシタ負極板を具備した従来の鉛蓄電池に比し、サイクル寿命が著しく延長した鉛蓄電池をもたらす。
請求項2に係る発明によれば、第2カーボン材料の粒子の表面への第1カーボン材料粒子の一体化被覆が容易にできる。
請求項3に係る発明によれば、複合カーボン粒子同士の導電性を確保することができる。
請求項4に係る発明によれば、第1カーボン材料として列挙した群から少なくとも1種を選択することにより、キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を確保できる。第2カーボン材料として列挙した群から少なくとも1種を選択することにより優れた導電性を確保できる。第3カーボン材料として列挙した群から少なくとも1種を選択することにより、一層優れた導電性を有するカーボン合剤被覆層が得られる。
請求項5に係る発明によれば、夫々の配合材料の夫々の添加量を特定することにより後記に明らかにする効果が得られる。
請求項6に係る発明によれば、カーボン合剤被覆層の厚みが薄すぎることなく適正な厚みで被覆層を形成でき被覆効果を確保することができる。
請求項7に係る発明によれば、請求項1〜6に記載の複合キャパシタ負極板を具備した鉛蓄電池は、従来の鉛蓄電池に比し、PSOCで急速充放電を繰り返した場合におけるサイクル寿命を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板の実施形態を以下に例示する。
キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を有する第1カーボン材料として、活性炭、カーボンブラックなどの群から選択した少なくとも1種を使用する。該第1カーボン材料の粒径は、例えば、3μm〜30μmの範囲のものを使用する。第2カーボン材料として、導電性を確保し、且つ該第1カーボン材料の粒子表面に比較的圧着し易いカーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノチューブ、カーボンホイスカー、グラファイトの群から選択した少なくとも1種を使用する。該第2カーボン材料の粒径は、該第1カーボン材料の粒径より小さい粒径のものを使用する。好ましくは、第1カーボン材料の粒径の10分の1以下のものを使用する。
従って、第1カーボン材料の粒径が3μm〜30μm又はそれ以下のものを使用する場合は、0.3μm〜3μmの粒径のものを使用する。
【0008】
第1カーボン材料の粒子の表面にこれより小径の粒子の第2カーボン材料を一体化被覆し複合カーボン粒子を作製するには、ビーズミルやボールミルなどの粉砕装置、造粒装置、メカノフュージョンやハイブリダイザーなどの一体化装置を用いる。高価ではあるが、レーザー、アーク放電、電子線などでも複合カーボン粒子を作製してもよい。
この一体化被覆処理において、第2カーボン材料の粒子の径が第1カーボン材料の粒子の径より10分の1以下であるものを使用することにより、該第1カーボン材料の粒子の表面に第2カーボン材料の微粒子を充分に結着でき、一体化複合カーボン粒子の製造効率が最も良いことを確認した。
この場合、第1カーボン材料と第2カーボン材料の配合比は、第1カーボン材料100重量部に対し第2カーボン材料は4〜100重量部が好ましく、かかる配合比の複合カーボン粒子が無数に得られる。
【0009】
更に、本発明によれば、負極板の表面に形成する該複合カーボン粒子を含有するカーボン合剤被覆層の導電性を更に良くするために、複合カーボン粒子間を電気的に接続する導電性の優れた第3カーボン材料を添加することが好ましい。第3カーボン材料としては、カーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノチューブ、カーボンホイスカーの群から選ばれた少なくとも1種を使用する。
また、該第3カーボン材料の寸法は、粒状の場合は第1カーボン材料の粒径の10分の1以下の寸法の範囲のものを使用することが好ましい。
該第1カーボン材料である最も好ましい活性炭としては、合成樹脂由来、やし殻、木材、おがくず、木炭、リグニンなどの木質の天然材由来、亜炭、泥炭などの炭素系由来、石油系由来などの各種活性炭、カーボンブラックとしてはアセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0010】
該複合カーボン粒子を製造する場合の第1カーボン材料と第2カーボン材料の配合比は、前記したように、該第1カーボン材料100重量部に対し、第2カーボン材料は4〜100重量部の範囲が使用できる。第2カーボン材料が4重量部未満の場合は、充分な寿命効果が得られない。100重量部を超えると導電効果が飽和する。該第1カーボン材料100重量部に対し10〜80重量部を配合したものを一体化複合することが好ましい。
該第3カーボン材料は、前記した複合カーボン粒子相互の導電性を確保するため、該第1カーボン材料100重量部に対し50重量部以下が好ましい。50重量部を超えるとその導電効果が飽和するので、50重量部以下が経済的であるが、40重量部以下がより好ましい。
【0011】
カーボン合剤としては、負極板の表面との結着と同時に、該複合カーボン粒子相互の結着のため、或いは第3カーボン材料を配合した場合には、該複合カーボン粒子との結着及び第3カーボン材料の粒子相互の結着のため、結着剤を添加する必要がある。
結着剤としては、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などであり、その添加量は、該第3カーボン材料100重量部に対し2〜30重量部の範囲、2重量部未満であると結着不良を生じ、30重量部を超えると結着効果が飽和する。一般に、5〜15重量部が好ましい。
【0012】
該カーボン合剤をペースト状とし負極板に塗布するためには、該カーボン合剤に増粘剤を添加する。増粘剤としては、水性のカーボン合剤ペーストとするにはCMCやMCなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどが適当であり、有機系のカーボン合剤ペーストにはNMPなどが適当である。増粘剤を用いる場合は、乾燥残分が第1カーボン材料100重量%に対し20重量部を超えるとカーボン合剤被覆層の導電性を損なうので、20重量%以下が良い。
該カーボン合剤に短繊維補強材を添加しても良い。該短繊維補強材としては、カーボン、ガラス、ポリエステルなど硫酸酸性中で安定であれば良く、太さは直径20μm以下、長さは0.1mm〜4mmが望ましい。その添加量は、該第1カーボン材料100重量部に対し20重量部を超えると、該カーボン合剤被覆層の導電性が低下するので20重量部以下が好ましい。
【0013】
第1カーボン材料と第2カーボン材料の上記の好ましい配合量で一体化した複合カーボン粒子と結着剤2〜30重量部と適量の分散媒を混合して成るカーボン合剤をペースト状として負極板の表面に塗布し、乾燥してポーラスなカーボン合剤被覆層を形成して本発明の複合キャパシタ負極板を製造するに当たり、該カーボン合剤は負極板に充填されている活物質の重量に対し1〜15重量%を添加することが好ましい。1重量%未満では被覆効果が得られず、15重量%を超えると被覆層の厚みが厚過ぎて分極を生ずる。3〜10重量%の範囲が好ましい。
該カーボン合剤被覆層は、負極板の片面又は両面に形成する。
【0014】
次に、本発明の更に詳細な実施例につき比較例と共に説明する。
実施例1
複合カーボン粒子を次のように製造した。第1カーボン材料として平均粒径が8μmの活性炭を100重量部と平均粒径が0.1μmの第2カーボン材料としてアセチレンブラックを60重量部をメディア径5mmのビーズミルで1時間ミリングし、活性炭粒子の表面にアセチレンブラックの微細粒子が一体に結着被覆した複合カーボン粒子が無数に得られた。これに結着剤としてSBR、増粘剤としてCMC、短繊維補強材としてPET、分散媒として水を添加し、ミキサーで混合してカーボン合剤ペーストを調製した。該カーボン合剤ペーストの配合組成を表1に示す。
一方、公知の方法で、制御弁式鉛蓄電池に用いる正極板と負極板を製造した後、タンク化成処理したものを夫々多数枚用意した。
各負極板については、更に、該負極板の耳部を除き、前記の調製したカーボン合剤ペーストを該集電用格子基板に充填されている負極活物質の表面全体に均一に塗布し、次いで60℃で1時間乾燥し該負極板の両面に気孔率75%のポーラスなカーボン合剤被覆層が形成された複合キャパシタ負極板を製造した。かくして製造された該複合キャパシタ負極板の該ポーラスなカーボン合剤被覆層の厚みは片面当たり0.2mmであり、且つその重量は負極活物質の重量に対し5重量%を有するものであった。
【0015】
【表1】

【0016】
次いで、該複合キャパシタ負極板5枚と正極板4枚とをAGMセパレータを介して交互に積層し極板群を組み立て、この極板群を用い、公知の制御弁式鉛蓄電池の製造法により、正極容量規制で5時間率容量10Ahの2Vセルの鉛蓄電池を製造した。その製造過程において、該極板群を電槽内に収容したとき、群の圧迫度が50kPaに成るように、極板群の両端と電槽との間にスペーサーを介入した。硫酸電解液としては、硫酸アルミニウム・18水塩を30g/l溶解した比重1.30の硫酸水溶液130mlをセル内に注入した。次いで、セルの活性化のために1Aで15時間充電、セル電圧が1.75Vに達するまで2Aで放電、再び1Aで15時間の充電を行った。そして、2Aでセル電圧1.75Vに達するまで放電し、このセルの5時間率容量を測定したところ10Ahであった。
【0017】
実施例2
実施例1のカーボン合剤ペーストに第3カーボン材料として導電性の優れたアセチレンブラックを添加した下記表2に示す配合組成のカーボン合剤ペーストを使用した以外は、実施例1と同様にして複合キャパシタ負極板を製造し、これを用いて実施例1と同様にして5時間率容量10Ahの2Vセルの鉛蓄電池を製造した。
【0018】
【表2】

【0019】
実施例3
第3カーボン材料として使用した実施例2のカーボン合剤の組成成分として使用したアセチレンブラックの粒子20重量部を気相成長ナノカーボン繊維(VGCF)20重量部に代えた下記表3に示す配合組成のカーボン合剤ペーストを用いた以外は、実施例2と同様にして、複合キャパシタ負極板を製造し、これを用いて実施例1と同様にして5時間率容量10Ahの2Vセルの鉛蓄電池を製造した。
【0020】
【表3】

【0021】
比較例1
実施例1に使用した第1カーボン材料として活性炭の粒子100重量部と第2カーボン材料としてアセチレンブラックの粒子60重量部を複合一体化せず、単に混合した混合粉を用いた以外は、表1と同じ配合組成から成る下記表4に示すカーボン合剤ペーストの配合組成を用い、実施例1と同様にして、複合キャパシタ負極板を製造し、これを用いて実施例1と同様にして5時間率容量10Ahの2Vセルの鉛蓄電池を製造した。
【0022】
【表4】

【0023】
比較例2
カーボン合剤ペーストを塗布する前の実施例1で用いた負極板5枚と実施例1で用いたと同じ正極板4枚とセパレータにより極板群を組み立てた以外は、実施例1と同様にして、5時間率容量10Ahの2Vセルの鉛蓄電池を製造した。
【0024】
寿命試験
次に、上記に製造した実施例1〜3の各鉛蓄電池及び比較例1及び2の各鉛蓄電池につき、HEVによる走行を模擬してPSOCで急速充放電を繰り返すことにより、寿命試験を行った。即ち、各蓄電池を2Aで1時間放電してSOC 80%とした後、50A・1秒放電と20A・1秒充電を500回繰り返した後、30A・1秒充電と休止・1秒を510回繰り返し、これを1サイクルとして、このサイクルを繰り返し、該電池の放電電圧が0Vに達した時を寿命とした。その結果を下記表5に示す。
【0025】
【表5】

【0026】
上記表5から明らかなように、実施例1,2,3に記載の本発明の複合キャパシタ負極板を具備した鉛蓄電池は、比較例1に記載の従来の複合キャパシタ負極板を具備した鉛蓄電池、或いは比較例2に記載の通常の負極板を具備した鉛蓄電池に比し、サイクル寿命の著しい向上をもたらすことが認められる。
【0027】
実施例4
次に、表1のカーボン合剤ペーストと寸法102mmW×108.5mmH×1.5mmtの負極板を用い、実施例1と同様にして複合キャパシタ負極板を多数作製する一方、寸法102mmW×107.5mmH×1.7mmtの正極板を多数作成した。
寸法126mmW×236mmL×200mmHの6セルから成るJIS D 5301のB24サイズ液式鉛蓄電池の各セル室内に上記の複合キャパシタ負極板7枚と上記の正極6枚とをポリエチレンの表面にガラス繊維不織布を重ね合わされた厚さ1.0mmのラミネートセパレータを介し交互に積層して成る極板群を、実施例1と同様にスペーサーを介入して群圧が20kPaになるように収容し、次いで、常法により各セルを直列に接続し、施蓋し、次いで、各セル室内に硫酸電解液450mlを注入した後、電槽化成後の電解液の比重が1.285となるように調製した。かくして、5時間率容量42Ahの液式鉛蓄電池を製造した。
この液式鉛蓄電池を用い、25℃の周囲温度下で下記するアイドルストップ車条件の寿命試験を行った。即ち、45Aで59秒放電、引き続き300A-1秒放電を行い、次いで、14.0Vの定電圧で100A-60秒充電する。この充放電を3600回行い、その後、48時間放置し、再び上記の充放電を繰り返し、蓄電池電圧が7.2Vとなった時点を寿命とし、このときのサイクル数をサイクル寿命とした。その結果を下記表6に示す。
【0028】
【表6】

【0029】
実施例5
表2のカーボン合剤ペーストを用いた以外は、実施例4と同様にして複合キャパシタ負極板を多数製造し、これを用いて実施例4と同様にして5時間率容量42Ahの液式鉛蓄電池を製造した。
この電池を用いて、実施例4と同じサイクル寿命試験を行った。その結果を表6に示す。
【0030】
実施例6
表3のカーボン合剤ペーストを用いた以外は、実施例4と同様にして複合キャパシタ負極板を多数製造し、これを用いて実施例4と同様にして5時間率容量42Ahの液式鉛蓄電池を製造した。
この電池を用いて、実施例4と同じサイクル寿命試験を行った。その結果を表6に示す。
【0031】
比較例3
表4に示す従来のカーボン合剤ペーストを用いた以外は、実施例4と同様にして複合キャパシタ負極板を多数製造し、これを用いて実施例4と同様にして5時間率容量42Ahの液式鉛蓄電池を製造した。
この電池を用いて、実施例4と同じサイクル寿命試験を行った。その結果を表6に示す。
【0032】
比較例4
カーボン合剤ペーストを塗布しない実施例4に記載の負極板を用い、実施例4と同様にして5時間率容量42Ahの液式鉛蓄電池を製造し、この電池を用いて、実施例4と同じサイクル寿命試験を行った。その結果を表6に示す。
【0033】
表6から明らかなように、実施例4,5,6に記載の複合キャパシタ負極板を具備した液式鉛蓄電池は、比較例3に記載の従来の複合キャパシタ負極板を具備した液式鉛蓄電池及び比較例4に記載の通常の負極板を具備した液式鉛蓄電池に比し、サイクル寿命の著しい向上をもたらすことが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ容量及び/又は擬似キャパシタ容量を有する第1カーボン材料の粒子の表面に、導電性を有する第2カーボン材料の粒子を一体化被覆して成る複合カーボン粒子を含むカーボン合剤の被覆層を負極板の表面に形成して成ることを特徴とする鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
【請求項2】
該第2カーボン材料の粒径は、第1カーボン材料の粒径の10分の1以下であることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
【請求項3】
該複合カーボン粒子に導電性に優れた第3カーボン材料を添加混合して成るカーボン合剤を負極板の表面に被覆して成ることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
【請求項4】
第1カーボン材料は活性炭又はカーボンブラックであり、第2カーボン材料はカーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノチューブ又はカーボンホイスカーであり、第3カーボン材料はカーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン、カーボンナノワイヤーカーボンナノチューブ又はカーボンホイスカーであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
【請求項5】
該カーボン合剤層は第1カーボン材料100重量部に対して第2カーボン材料は4〜100重量部から成る複合カーボン粒子と該第1カーボン材料100重量部に対して第3カーボン材料50重量部以下と結着剤は2〜30重量部と増粘剤は20重量部以下、短繊維は20重量部以下から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
【請求項6】
該負極板の表面を被覆するカーボン合剤の量は、該負極板に充填された負極活物質の重量に対し1〜15重量%としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の鉛蓄電池用複合キャパシタ負極板。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のいずれか1つの複合キャパシタ負極板を具備したことを特徴とする鉛蓄電池。

【公開番号】特開2012−133959(P2012−133959A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284040(P2010−284040)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】