説明

鉢植え植物用包装具

【課題】鉢植え植物の広がりを抑え、これを保護するとともに、短時間で容易に梱包することを可能にする鉢植え植物用包装具を提供する。
【解決手段】包装具1を、熱収縮率の異なる2種類のフィルム部材から形成するとともに、植木鉢部位を覆う下側フィルム部1Bの熱収縮率が、植物の根元部より上方を覆う上側フィルム部1Aの熱収縮率より大きくなるように構成する。熱を加えることにより、下側フィルム部1Bは、短時間で植木鉢の外周に沿って密着する。これに比べて、比較的小さな熱収縮率の上側フィルム部1Aは、植物の周囲を緩やかに覆う程度の収縮に留まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉢植え植物を、短時間で見栄え良く包装することのできる包装具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉢植えの観賞用植物や苗が植え付けられた育苗ポット等は、通常、包装せずにそのままの状態で流通しており、所定形状の穴が多数空いたパレットなどに収められて運搬されている。
【0003】
ところで、近年、花卉や鉢植えの植物は、花屋の店頭だけでなく、スーパーやDIYショップ等で販売されることも多い。そのため、流通過程における枝葉や花弁の損傷、および、不慣れな人員が取り扱うことによる傷付きの防止や店頭での見栄えの向上のために、園芸場からの出荷の段階で、簡易的な包装(梱包)を求められる場合が増えている。
【0004】
図3は、従来の鉢植え植物の包装に用いられる包装具の正面図であり、図4は、この包装具を用いて鉢植え植物を包装した状態を示す斜視図である。
【0005】
通常、鉢植えの植物を鉢ごと包装する包装具11は、2枚の樹脂フィルムを用いて形成されており、使用前の状態においては、底辺11bと上辺11aを有する台形状である。また、各斜辺11c,11cは、ヒートシール等により互いに接着されており、使用時には、底辺11bと上辺11aを円形状に広げることにより、全体として、両端が開口した円錐状になるように構成されている。
【0006】
この従来例においては、図4にように、上辺11a側は、内容物となる鉢植え植物の挿入を容易とするために、大きな開口として形成されており、底辺11b側は、鉢底のサイズに合わせた径に形成されている。
【0007】
なお、底辺11b側には、ヒートシールあるいは別部材を取り付けることにより、底部(底面)が設けられている場合もある(例えば、特許文献1〜2等を参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第2585269号公報
【特許文献2】実用新案登録第3118893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、以上のような鉢植え植物用の包装具には、包装具が脱落するのを防止するとともに、鉢に植えられた植物が広がる(散開する)のを抑えるために、鉢植え植物を挿入した後に、鉢より上部でかつ植物の根元にあたる付近(図4の矢印X参照)に、紐やリボンを掛けたり、あるいは、この部位を折りたたんで径を絞りステープル止めする等の後処理が施されている。
【0009】
しかしながら、これらの後処理(縮径加工)は、ひとつひとつ手作業で行なわねばならず、商品出荷作業の手間と工数を増大させ、ひいては商品のコストアップを招いてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、鉢植え植物の広がりを抑え、これを保護するとともに、短時間で容易に梱包することを可能にする鉢植え植物用包装具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、樹脂フィルムを用いて、少なくとも一方の端部が開口する略円筒状に形成され、その内部に鉢植え植物を鉢ごと収容する包装具であって、前記鉢の周囲を覆う下側フィルム部と、前記植物の周囲を覆う上側フィルム部とが、熱収縮性を有するフィルム部材を用いて形成されているとともに、この下側フィルム部の熱収縮率が、該上側フィルム部の熱収縮率より大きくなるように構成されていることを特徴とする鉢植え植物用包装具である。
【0012】
本発明は、鉢植え植物の梱包において、比較的しっかりした緊縛が求められる植木鉢部位と、緩やかに保護することが求められる植物の枝葉や花弁部とを、異なる熱収縮率を有する樹脂フィルムでカバーすることにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、鉢植え植物を鉢ごと収容する包装具を、熱により収縮する特性を有する樹脂フィルムを用いて形成することにより、鉢植え植物の挿入後に、このフィルムにヒーターや温風発生機等の簡素な設備で熱を与えるだけで、包装具を容易に収縮させることができる。また、この包装具は、植物の根元にあたる付近に紐やリボンを掛けたり、あるいは、この部位を折りたたんで径を絞りステープル止めする等の後処理を行う必要がなく、包装工程の自動化(無人化)も比較的容易に行なうことが可能である。従って、本発明の包装具は、鉢植え植物の梱包作業の手間と工数を大幅に低減することができる。
【0014】
また、植木鉢の周囲を覆う下側フィルム部の熱収縮率を、植物の周囲を覆う上側フィルム部の熱収縮率より大きくなるように構成することによって、植物の枝葉や花弁等の保護と包装具の植木鉢への固定を、同時に実現することが可能になる。
【0015】
ここで、前記上側フィルム部と下側フィルム部との境界が、前記鉢の上縁より上方に配置されている構成を好適に採用することができる。(請求項2)
【0016】
この構成により、外力により倒れ易い鉢植え植物の根元部をしっかりと保護することが可能になるとともに、輸送中等の包装具の脱落を、より確実に防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の鉢植え植物用包装具によれば、別途紐やリボンあるいはステープル等を用いることなく、植物の枝葉や花弁等の保護と包装具の植木鉢への固定を、容易に行うことができるようになる。
【0018】
また、本発明の鉢植え植物用包装具は、その包装工程の自動化が容易で、包装作業にかかる時間とコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつこの発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態における包装具の正面図であり、図2は、この包装具を用いて鉢植え植物を包装した状態を示す斜視図である。
【0020】
本実施形態における包装具1も、従来例と同様、鉢植え植物の包装に用いられるものであり、透明な樹脂フィルムを用いて略筒状に形成されている。また、この包装具1も、使用前の状態においては、底辺1bと上辺1aを有する台形状であり、各斜辺1c,1cは、ヒートシール等により互いに接着されている。
【0021】
また、この包装具1は、底辺1bと上辺1aを略円形状に広げることにより、全体として、両端が開口した円錐状になるように構成されており、内容物となる鉢植え植物を容易に挿入することができるように構成されている。なお、底辺1b側は、この鉢の底径に合わせた開口径に形成されている。
【0022】
本実施形態における包装具1の特徴は、熱収縮率の異なる2種類のフィルム部材から形成されているとともに、植木鉢部位を覆う下側フィルム部1Bの熱収縮率が、植物の根元部より上方を覆う上側フィルム部1Aの熱収縮率より大きくなるように構成されている点である。
【0023】
さて、この包装具1を用いて鉢植え植物を包装する場合は、従来例と同様、先ずその上辺1aを大きく円形に広げて開口させた状態で、内部に鉢植え植物を鉢ごと挿入する。この時、各フィルム部材はまだ収縮していないため、鉢植え植物を最下部まで容易に簡単に挿入することができる。
【0024】
また、鉢植え植物の挿入が終わった後は、当該包装具1にヒーターや温風発生機で熱を加えることにより、各フィルム部材を容易に収縮させることができる。この時、植物の根元部から下方を覆う下側フィルム部1Bは、比較的大きな収縮(縮径)を生じるため、図2のように、植木鉢の外周に沿って密着する。これに対して、上側フィルム部1Aは、比較的小さな収縮率になるように設計されていることから、鉢植え植物の周囲を緩やかに覆う程度の収縮(縮径)に留まることとなる。
【0025】
以上の構成により、この包装具1は、輸送中の脱落が防止されるとともに、鉢に植えられた植物が広がる(散開する)のを抑えることができる。従って、本実施形態における鉢植え植物用包装具は、流通過程における枝葉や花弁の損傷、および、不慣れな人員が取り扱うことによる傷付き等を防止することができる。
【0026】
また、この包装具1は、植物の根元にあたる付近に紐やリボンを掛けたり、あるいは、この部位を折りたたんで径を絞りステープル止めする等の後処理を行う必要がなく、鉢植え植物を短時間で容易に梱包することが可能である。しかも、包装工程の自動化(無人化)も比較的容易に行なうことができる。従って、本発明の包装具は、鉢植え植物の梱包作業の手間と工数を大幅に低減することができる。
【0027】
なお、以上の実施形態では、使用時に略円錐状になる包装具を例に説明したが、本発明における鉢植え植物要包装具の形状は、この実施形態での例に限定されるものではなく、梱包する植木鉢と植物の形に合わせて設計すれば良い。しかしながら、包装具の脱落防止と植物の広がりを抑えるという効果を考慮すると、上側フィルム部と下側フィルム部との境界は、植木鉢の上縁より上方に来るように配置することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態における包装具の正面図である。
【図2】本発明の実施形態における包装具を用いて鉢植え植物を包装した状態を示す斜視図である。
【図3】鉢植え植物の包装に用いられる従来の包装具の正面図である。
【図4】従来の包装具を用いて鉢植え植物を包装した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 包装具
1a 上辺 1b 底辺 1c 斜辺
1A 上側フィルム部
1B 下側フィルム部
11 包装具
11a 上辺 11b 底辺 11c 斜辺


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムを用いて、少なくとも一方の端部が開口する略円筒状に形成され、その内部に鉢植え植物を鉢ごと収容する包装具であって、
前記鉢の周囲を覆う下側フィルム部と、前記植物の周囲を覆う上側フィルム部とが、熱収縮性を有するフィルム部材を用いて形成されているとともに、この下側フィルム部の熱収縮率が、該上側フィルム部の熱収縮率より大きくなるように構成されていることを特徴とする鉢植え植物用包装具。
【請求項2】
前記上側フィルム部と下側フィルム部との境界が、前記鉢の上縁より上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鉢植え植物用包装具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81166(P2008−81166A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263684(P2006−263684)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000249676)株式会社ミューパック・オザキ (16)
【Fターム(参考)】