説明

鉢植え用容器及び該容器を利用した緑化設備

【課題】 汎用性に富むとともに低廉な鉢植え用容器及び該容器を利用した緑化設備を提供する。
【解決手段】 ペットボトル本体Bを外,内容器体1a,1bに上下に水平分割しその口頸部付き内容器体を口頸部1cが下になるように外容器体内に嵌合すると共に、前記外容器体の周面に前記内容器体の周面と重合しない位置にて排水孔4を形成し、かつ前記内容器体の内部に排水性を考慮した土層構造を施し前記排水孔を境に上方部分を栽培部6、下方部分を貯水部7とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルやエコロジーの見地から日常生活で多量に廃棄されるペットボトルを有効利用した鉢植え用容器及び該容器を利用した緑化設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルを利用したこの種容器として、例えば特許文献1に開示されたものがある。これは、ペットボトルを切り合わせて育成槽と貯水槽の二層にし、貯水槽へと自水紐を伸ばし育成槽に水分が常に補強されるようにし、水耕培地内に含有される栄養分で植物を水耕育成する。そして、二槽間の重ね合わさった位置に通気孔を貫通させて容器内の温度差によって酸素を吸入して溶存酸素の安定と煙突効果で培地と容器の間を空気が上昇する構成になっている。
【0003】
また、従来の緑化設備として、例えば特許文献2及び特許文献3に開示されたものがある。特許文献2は、ビルの屋上や一般住宅のベランダ等の屋上床面に設置されて、草花、観葉植物或いは灌木等の植物を栽培するための緑化設備において、当該緑化設備の底部に、緑化設備の勾配上手の仕切外側面に一端が開口し、勾配下手の仕切外側面に他端が開口する排水路を設置したものである。特許文献3は、建築物の屋上に設置した複数の排水マットと、これら複数の排水マットにわたってその上側に設置した植生マットとを有し、排水マットを相互に間隔をあけて設置して、隣接する排水マット間に排水溝を形成したものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−320970号公報
【特許文献2】特開平10−4804号公報
【特許文献3】特開2003−235355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された容器にあっては、貯水機能のみを有し排水機能を有しないため、用途が水耕栽培に限定され汎用性に欠けると共に、容器を水平に多数並べて使用しようとすると、通気孔が閉塞されて通気性が確保できなくなる場合があり緑化設備等には到底利用することができず使い勝手が悪いという問題点があった。
【0006】
特許文献2及び特許文献3に開示されたものにあっては、ともに降雨水を如何に効率良く排水するかという技術であって、貯水機能を有しないため、別途大掛かりな灌水装置を設置したり或いは高価な貯水システムを構築したりする必要があり、コストアップを招来するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、汎用性に富むとともに低廉な鉢植え用容器及び該容器を利用した緑化設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明に係る鉢植え用容器は、ペットボトル本体を上,下両部材に水平分割しその口頸部付き上部材を口頸部が下になるように下部材内に嵌合すると共に、前記下部材の周面に前記上部材の周面と重合しない位置にて排水孔を形成し、かつ前記上部材の内部に排水性を考慮した土層構造を施し前記排水孔を境に上方部分を栽培部、下方部分を貯水部としたことを特徴とする。
前記ペットボトル本体は断面方形でかつ各角部が面取りされており、この面取り部に前記排水孔を形成すると好適である。
前記口頸部の端面に水移動用の切欠きを形成すると好適である。
前記土層構造に、下部材内への土の流出を阻止するフィルターを介在すると好適である。
【0009】
また、前記目的を達成するための本発明に係る緑化設備は、前記鉢植え用容器を区画内に水平に並べて多数設置すると共に、各容器の上部に前記区画内の全域に亙り栽培部用土を敷き詰めたことを特徴とする。
前記緑化設備は人工地盤用の緑化設備であって、前記各容器を防水層上に防根シートを介して設置すると好適である。
前記区画形成用枠部材と各容器周面との空隙及び各容器周面間の空隙に栽培部用土の流出を防止したり排水孔からの排水を確保するための詰め物を充填すると好適である。
前記四つの容器の周面角部で形成された空隙を四つの容器に跨がって嵌合すべく加工されたキャップで閉塞すると好適である。
【発明の効果】
【0010】
前記構成の鉢植え用容器によれば、貯水機能のみならず排水機能を有し、しかも排水孔の高さ方向の位置を任意に決定することで、栽培対象物に応じた必要量の水を確保することができるので、多種の栽培対象物に容易に対応することができ汎用性が高められる。また、区画内に多数水平に並べることで緑化設備等にも容易に適用することができる。勿論、ペットボトルを利用するので、リサイクルやエコロジーを実践できる。
【0011】
前記構成の緑化設備によれば、適正な水量を確保し得る貯水機能を有するので、別途大掛かりな灌水装置を設置したり或いは高価な貯水システムを構築したりする必要がなく、低廉な緑化設備を実現することができる。勿論、ペットボトルを利用するので、リサイクルやエコロジーを実践できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る鉢植え用容器及び該容器を利用した緑化設備を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1を示す鉢植え用容器の斜視図、図2は同じく要部断面図、図3は同じく製作工程図、図4は同じく製作工程図、図5は下部材の横断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、ポトス等の観葉植物(栽培対象物)Pを栽培する鉢植え用容器1は外容器体(下部材)1aと内容器体(上部材)1bとからなり、廃棄等されたペットボトルを用いて後述する製作方法で作られる。
【0015】
内容器体1bの内部には、無機質の土壌改良材2とその上方に位置して栽培部用土(又は改良土)3が充填され排水性を考慮した土層構造が施されている。外容器体1aの周面には、内容器体1bの周面と重合しない位置にて排水孔4が周方向に複数(図示例では四つ)形成されている。
【0016】
そして、内容器体1bと外容器体1aとは、内容器体1bの下端面に形成された水移動用の切欠き(Vカット)5を介して内部が連通される。従って、雨水や灌水によって鉢植え用容器1内に水が流入し溜まりだすとやがて排水孔4よりオーバーフローし水位(の上限値)が一定となる。依って、排水孔4を境に鉢植え用容器1の上方部分が栽培部6、下方部分が貯水部7となる。
【0017】
前記鉢植え用容器1は、例えば図3及び図4に示す製作工程を経て製作される。
先ず、2リットルのペットボトル本体(断面方形でかつ角部が面取りされている)Bをカッター等で上下に二分割して外容器体(下部材)1aと内容器体(上部材)1bを得る(図3の(a)及び(b)参照)。この際、分割位置(高さ)は任意に調整できる。
【0018】
次いで、内容器体(上部材)1bの口頸部1cの端面に、カッター等で切欠き(Vカット)5を周方向に複数(図示例では四つ)形成する(図3の(c)参照)。
【0019】
次いで、前記口頸部1cが下になるように内容器体(上部材)1bを外容器体(下部材)1a内に強制的に嵌合する(図4の(a)参照)。この際、口頸部1cの端面が外容器体(下部材)1aの底面に押し当てられたとしても前記切欠き(Vカット)5により内容器体(上部材)1bと外容器体(下部材)1aとの連通状態は保持される。また、内容器体(上部材)1bと外容器体(下部材)1aとの周面間を接着剤やホッチキス等で結合してもよい。
【0020】
そして、最後に外容器体(下部材)1aの周面に前記内容器体(上部材)1bの周面と重合しない位置にてドリル等で排水孔4を形成する(図4の(b)参照)。この際、排水孔4の位置により貯水部7における貯水量を調整することができる。また、図5に示すように、排水孔4は外容器体(下部材)1aの四つの面取りされた角部に形成される。
【0021】
このように本実施例の鉢植え用容器1によれば、貯水機能のみならず排水機能を有し、しかも排水孔4の高さ方向の位置を任意に決定することで、ポトス等の観葉植物Pに応じた必要量の水を確保することができ、水分過多による枯れ死を未然に回避しつつ水分の安定供給が可能となる。つまり、多種の栽培対象物に容易に対応することができ汎用性が高められるのである。
【0022】
また、排水孔4は外容器体(下部材)1aの角部における面取り部に形成されているので、鉢植え用容器1を所定の区画内に多数水平に並べても排水孔4は閉塞されず、各鉢植え用容器1の貯水、排水機能は良好に保持されるので、ビルの屋上や家庭のベランダ等の緑化設備にも容易に適用することができる。勿論、ペットボトルを利用するので、リサイクルやエコロジーを実践できる。
【0023】
尚、上記実施例において、無機質の土壌改良材2の粒子が細かく、外容器体(下部材)1a側へ流出する虞がある場合は、内容器体(上部材)1b内に不織布等のフィルターを適宜介在させても良い。
【実施例2】
【0024】
図6は本発明の実施例2を示す緑化設備の構造説明図で、同図(a)は栽培部用土(又は改良土)を省略した平面図、同図(b)は正断面図、図7は同じく要部拡大図、図8は同じく要部斜視図である。
【0025】
これは、実施例1における鉢植え用容器1を、屋上防水層10上に防根シート11を介して四角枠(部材)12により画成された所定面積の区画内に、水平に並べて多数設置すると共に、各容器1の上部に前記区画内の全域に亙り栽培部用土3を敷き詰めて、人口地盤用の緑化設備を構成した例である。尚、図示例では、各容器1内に栽培部用土3が充填されていないが、実施例1と同様に各容器1内に栽培部用土3を充填した上で区画内の全域に亙り栽培部用土3を敷き詰めても良い。
【0026】
また、前記四角枠12と各容器1周面との空隙C2には排水孔4より大きい粒子の物或いは水苔等の繊維質の物からなる図示しない詰め物を充填し、また各四つの容器1の周面角部で形成された空隙C1を四つの容器1に跨がって嵌合すべく加工されたペットボトルのキャップ13で閉塞して(図6の(a)では代表して3個だけ図示している)、各容器1の排水孔4による貯水、排水機能を良好に保持するようになっている。
【0027】
図示例では、キャップ13の周壁に四カ所に亙って切り起こし加工が施されてスリット13cが形成され、これらのスリット13cが互いに隣り合う容器1の周面角部に跨がって嵌合するようになっている。尚、図8中14はホッチキスの針で、互いに隣り合う容器1の周面同士を結合しているが、特に結合しなくても良い。また、前記空隙C1にもキャップ13で閉塞する代わりに詰め物を充填して栽培部用土の流出を防止したり排水孔からの排水を確保するようにしても良い。
【0028】
このように本実施例の緑化設備によれば、適正な水量を確保し得る貯水機能を有するので、別途大掛かりな灌水装置を設置したり或いは高価な貯水システムを構築したりする必要がなく、低廉な緑化設備を実現することができる。勿論、ペットボトルを利用するので、リサイクルやエコロジーを実践できる。
【0029】
尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で容量や断面形状の異なるペットボトルを用いる等各種変更が可能であることはいうまでもない。また、図8の状態では、小物入れ等の収納容器としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1を示す鉢植え用容器の斜視図である。
【図2】同じく要部断面図である。
【図3】同じく製造工程図である。
【図4】同じく製造工程図である。
【図5】同じく下部材の横断面図である。
【図6】本発明の実施例2を示す緑化設備の構造説明図で、同図(a)は栽培部用土(又は改良土)を省略した平面図、同図(b)は正断面図である。
【図7】同じく要部拡大図である。
【図8】同じく要部斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 鉢植え用容器
1a 外容器体(下部材)
1b 内容器体(上部材)
1c 口頸部
2 無機質の土壌改良材
3 栽培部用土(又は改良土)
4 排水孔
5 切欠き(Vカット)
6 栽培部
7 貯水部
10 屋上防水層
11 防根シート
12 四角枠(部材)
13 キャップ
13c スリット
14 ホッチキスの針
P ポトス等の観葉植物
B ペットボトル本体
C1,C2 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトル本体を上,下両部材に水平分割しその口頸部付き上部材を口頸部が下になるように下部材内に嵌合すると共に、前記下部材の周面に前記上部材の周面と重合しない位置にて排水孔を形成し、かつ前記上部材の内部に排水性を考慮した土層構造を施し前記排水孔を境に上方部分を栽培部、下方部分を貯水部としたことを特徴とする鉢植え用容器。
【請求項2】
前記ペットボトル本体は断面方形でかつ各角部が面取りされており、この面取り部に前記排水孔を形成したことを特徴とする請求項1記載の鉢植え用容器。
【請求項3】
前記口頸部の端面に水移動用の切欠きを形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の鉢植え用容器。
【請求項4】
前記土層構造に、下部材内への土の流出を阻止するフィルターを介在したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の鉢植え用容器。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の鉢植え用容器を区画内に水平に並べて多数設置すると共に、各容器の上部に前記区画内の全域に亙り栽培部用土を敷き詰めたことを特徴とする緑化設備。
【請求項6】
前記緑化設備は人工地盤用の緑化設備であって、前記各容器を防水層上に防根シートを介して設置したことを特徴とする請求項5記載の緑化設備。
【請求項7】
前記区画形成用枠部材と各容器周面との空隙及び各容器周面間の空隙に詰め物を充填したことを特徴とする請求項5又は6記載の緑化設備。
【請求項8】
前記各容器の内四つの容器の周面角部で形成された空隙を当該四つの容器に跨がって嵌合すべく加工されたキャップで閉塞したことを特徴とする請求項5,6又は7記載の緑化設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−34117(P2006−34117A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215192(P2004−215192)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(504282991)株式会社 富士植木 (1)
【Fターム(参考)】