説明

銀はんだ、あるいは鑞付け用合金とそれらの使用

本発明は、銀はんだおよび鑞付け用合金、ならびに様々な品位の銀、特に銀細工の品位における接合箇所をハンダ付けする際の使用に関する。それらの合金は、少なくとも55wt%の銀およびゲルマニウム0.5〜3wt%を含んでいるAg-Cu-Znの合金である。それらは、色、流動性および耐食性の有用な組み合わせを示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な銀の品位、特に銀細工をする為の銀の品位において接合箇所をはんだ付けする際の、銀はんだ、あるいは鑞付け用合金とそれらの使用方法に関する。また、鑞付け用の銀合金は、銀細工業界において銀はんだもしくははんだとしても知られており、本明細書中ではこれらの語を相互に置き換え可能なものとして用いている。
【背景技術】
【0002】
銀-銅-亜鉛型の、銀をベースとする様々な合金は、はんだ(鑞付け用の材料)として役立つ。450℃以上の融点を有するが母材となる金属よりも融点の低いフィラー金属を使い、それを毛管引力によって接合箇所に分配する接合法として、鑞付けを定義している。
【0003】
銀、銅そして亜鉛は、http://www.aws.org/wj/supplement/08-2002-JACOBSON-s.pdfからダウンロードできるWelding Journal別冊(American welding Society/Welding Research Council監修)の2002年8月に掲載されたDevelopment of new silver-free brazing alloys for steel tubular assembly、Jacobson ほか著、p149-S〜p155-Sの図2において描かれている三相の相転移図を見ると、665℃で溶け、銀の含有量56%を伴う三元共融物を形成する。軟鋼あるいは銅を鑞付けするための、AWSによって推奨される市販の銀合金は、銀を44wt%、銅を30wt%、亜鉛を26wt%の組成からなっている。このような合金では、少なくともAgを55wt%含むはんだ合金が標準となっている銀細工に使用するには、銀の含有量が少なすぎる。
【0004】
銀細工に使用する為の鑞付け合金は、それらの融点に依存して、Easy、Medium、そしてHardに分類されており、主なUKの業者は以下の値を挙げている。
【0005】

Thessco社 固相線(Solidus) 液相線(Liquidus)
Easy 705℃ 725℃
Medium 720℃ 765℃
Hard 745℃ 778℃

Johnson Matthey社 固相線(Solidus) 液相線(Liquidus)
Easy 705℃ 723℃
Medium 720℃ 765℃
Hard 745℃ 778℃
【0006】
銀75wt%、銅22wt%ならびに亜鉛3wt%を含む合金が知られており、銀に合う良い色をもつが、しかし融点が高い。また、銀70wt%、銅20wt%ならびに亜鉛10wt%を伴う合金でも、良い色を持ち、融点はもっと低い。さらに、銀65wt%、銅20wt%ならびに亜鉛15wt%を含む合金は、http://www.wlv.com/joining/silvabrazrefchart.xlsを参照すると、融点はさらに低い。これは、勿論、銀細工のはんだ合金における様々な業者の一つから得た一つのウェブページにすぎない。
【0007】
電気産業において使用する為の耐食性の銀は、特開昭61−078592号(京セラ)で開示されており、これは銀をベースとし、ゲルマニウムを0.05〜19wt%、パラジウムを0.01〜1.0wt%、ならびにリチウムを0.01〜2wt%含んでいる。一つの例示する組成として、銀を94wt%、ゲルマニウムを4wt%、パラジウムを0.5wt%、リチウムを0.5wt%、鉄を0.5wt%、ニッケルを0.5wt%含んでおり、別の例示する組成としては、銀80%、ゲルマニウム11.95%、パラジウム8%、リチウム0.05%から成っている。推奨されるゲルマニウムの割合は比較的に高い。銀細工においてパラジウムの使用は避けるべきであり、同様に、リチウムもほんの僅かな量であっても使用を避けるべきである。伸張性ならびに湿潤性は望むべき特性をなしていると言われているが、はんだ付けをした材料との色合いは必要とされていない。
【0008】
特許GB-B-2255348(Reteau,Albert,and Johns; Metaleurop Recherche社)では、含有している銅が酸化しやすいことに起因する問題を減らす一方で、Ag-Cu合金の特有の光沢、および硬度の特性を維持している新しい銀合金を開示した。その合金は、不純物と銅の他に、少なくとも銀を92.5wt%、ゲルマニウムを0.5〜3wt%およびその他を含んでいるAg-Cu-Ge三元合金である。特許US-A-6168071およびEP-B-0729398(Johns)では、銀の含有量が少なくとも77wt%でゲルマニウム0.4から7%まで含み、その残りが不純物の他には主に銅である、銀/ゲルマニウム合金を開示しており、その合金は、結晶微細化用添加剤として0ppmよりも多く20ppmよりも少ない濃度でホウ素元素を含んでいる。GB-B-2255348ならびにEP-B-0729398で教示している銀合金は、現在、商標名Argentium (Ag92.5wt%、Cu6.3wt%、Ge1.2wt%)でアメリカとヨーロッパで商用として利用されており、本紙で使っている「Argentium 」と言う言葉はこれらの合金のことを言っている。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、一態様において、銀を少なくとも55wt%、ゲルマニウムを0.5〜3wt%含むAg-Cu-Zn型の銀はんだ合金を提供する。
上記の合金は比較的に低融点で、流動性に富み、良い色をした有用な化合物である。特に、このような合金は固相線(solidus)の温度が約700〜約750℃の範囲にあり、液相線(liquidus)の温度が約725〜約780℃の範囲にある。それらはスターリングのような銀の品位を含む貴金属をはんだ付けや鑞付けをする際に使用できる。それらは、Argentium銀をはんだ付けする際に特に有用である。
【0010】
本発明の他の好ましい特徴は、注意の向けられた追加の請求項から明らかであろう。本合金はゲルマニウムを1.5〜2.5wt%含んでいてもよく、特にはゲルマニウムを約2.0〜2.5wt%含むものが好ましく、ゲルマニウムを約2.0wt%含むものがさらに好ましい。ゲルマニウムの添加は、耐食性を増す為だけでなく、融点を降下させ、色を向上させる事がわかった。
【0011】
Ag-Cu-Zn合金は、典型的には銀55〜77wt%、銅10〜30wt%(56〜75wt%が好ましい)、亜鉛8〜15wt%を含んでいる。流動性を良くする為に、Ag-Cu-Zn合金はさらにケイ素0.05〜0.4wt%を含み、ケイ素を約0.1〜0.2wt%含むものが好ましい。この割合が多すぎると脆性破壊を生じる。その合金は、色を良くし、融点を降下させるスズをさらに1〜3wt%含み、特にスズを約2%含むものが好ましい。例えば、1ppm〜0.3wt%の量のホウ素、より典型的には0.1〜0.3wt%の量のホウ素をさらに含んでいてもよく、これにより、結晶粒径が小さくなり、その化合物を圧延あるいは伸張するのに助けとなる。
【0012】
主な含有組成は:
(a)銀55〜77w%t、銅10〜30w%tおよび亜鉛8〜15wt%、ならびにゲルマニウム2〜2.5wt%およびケイ素0.05〜0.4wt%、
(b)銀55〜77wt%、銅10〜30wt%および亜鉛8〜15wt%、ならびにゲルマニウム2〜2.5wt%およびスズ3wt%、あるいは
(c)銀55〜77w%t、銅10〜30wt%および亜鉛8〜15wt%、ならびにゲルマニウム2〜2.5wt%、およびケイ素0.05〜0.4wt%ならびにスズ1〜3wt%を含んでいる。
【0013】
本発明の合金は、銀細工する為に便利ないくつかの形態にする事ができる。例えば、棒状、ストリップ状、針金状、微小粒子状、あるいは賦形剤中で粉状にした合金が伸ばされる事でペースト状にする事ができ、一般のフラックスと共に使う事ができる。ペースト状の場合、US-A-5443658(Hermanek)では、水78wt%、鉱油10wt%、残りをカルボキシメチルセルロースナトリウムとしたグリセリン10wt%を含んだ水溶性ゲルの賦形剤を開示した。US-A-5120374(Mizuhara)では、ヒドロキシプロピルセルロースを1〜4wt%、1,2-プロパンジオールを40〜80wt%、2-プロパノールを18〜58wt%もしくはヒドロキシプロピルセルロースを1〜4wt%、1,2-プロパンジオールを20〜70w%t、水を26〜76wt%含んだゲルを開示している。US-A-4475959では、水酸化溶剤中で分散する樹脂に基づいた有機賦形剤系を開示している。また、低融点の炭化水素賦形剤が使われてもよい。有用な材料は、通常の固体物質を室温以下で溶かせるものを含んでおり、例として、28〜100℃で溶けるC18-C60の石油炭化水素ワックスが挙げられる。そのような材料としては、低灰や固体状の残留物が挙げられ、どちらも溶かして流す事ができ、500℃以下で昇華ならびに/もしくは熱分解する。有用な炭化水素はパラフィン系、芳香族系、もしくは混合した芳香族パラフィン系、あるいはこのような性質を有する化合物の混合物、そして様々な炭化水素化合物を含んでいる。例として、オクタデカン、鉱物性有機溶媒、パラフィンワックス、そしてペトロラタム(非直鎖型固体パラフィン系炭化水素のコロイド系および高温煮沸される液体パラフィン系炭化水素であり、それらにおいては、ほとんどの液体炭化水素がミセルの中に取り込まれる)、例えばワセリンが挙げられる。
【0014】
これらの合金は、従来の何らかのはんだ付けあるいは鑞付けの方法において用いる事ができる。例えば、ハンドトーチ、固定バーナー、誘導加熱もしくは抵抗加熱を使う方法、あるいは鑞付け用の炉、好ましくは保護雰囲気を提供するような炉を使う方法において用いる事ができる。
【0015】
本発明を、以下の例でさらに説明する。
【0016】
〔例1〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ 2.5%
亜鉛 14.5%
ケイ素 0.1%
銅 22.9%
結果としてできる化合物は、鋳塊(これは40%が硬化すれば十分で、続いて焼き鈍しを必要とする)からの伸びが良く、そして、最初にギルディングメタルのサンプル上でテストした時に良質のはんだとして評価された。そのはんだ化合物は、T字接合に沿って良く流れる。公知である56および60銀はんだ(56および60wt%の銀)と比較して、観察される色は良く、特に60はんだの外観と比較して良好なものであった。被膜テストにおいては、テストした本例のはんだは、56および60はんだよりも明るかった。Degussaフラックスを用いたギルディングメタル上での融点は一般の56銀はんだのものよりも低かった。
【0017】
英国のシェフィールドにあるThessco Ltd.社によるArgentium Ag/Geのサンプルを、上記のはんだ組成と一般の56および60銀はんだを使って、ならびに様々なフラックスを使って、はんだ付けした。
【0018】
Degussaフラックス - 上記の化合物の融点は、わずかに60銀はんだのものを下回った。分散(dispersion)前において、はんだのビード(beading)が観察された。結果として、はんだ付けした接合箇所では、良い表面のきめが見られた。
【0019】
Superior 601フラックス - 上記の化合物の融点はDegussaフラックスを使うよりも低く、そして分散前において、はんだのビードは観察されなかった。結果として、はんだ付けした接合箇所では、良い表面のきめが見られた。
【0020】
Thessco Yフラックス - 上記の化合物の融点は、DegussaフラックスあるいはSuperior601フラックスを用いたもののどちらよりも低く、56銀はんだと同様であることが観察された。分散前において、はんだのビードは観察されず、結果として、60銀はんだと比べてテストした時に、はんだ付けした接合箇所には良い表面のきめが見られたが、わずかに高温である事が望ましいと提案される65銀はんだの融点でわずかに粗い接合箇所があった。
【0021】
本例のはんだは、比較的に低温で使用できる最良の物の一つとして評価された。その長所と短所は以下の通りであった。
・ 標準の56銀はんだを含めた他の低い融点のはんだと比べて良い色合いをしている。
・ 生産されている他のはんだと比較して最も低い融点である。
・ はんだはT字接合に沿って良好に流れる。
・ Thessco Ltd.社で行った被膜テストにおいて良い結果を得た。本例のはんだは、後にテストを行った56および60の両方のはんだよりも明るい色をだした。
・ はんだの表面はいくつかのArgenntium(Thessco社)サンプル上で少しだけ粗い。(はんだ付けをする温度をこれらのサンプルにおいて若干高くする必要があるかもしれない。)
【0022】
〔例2〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 14%
ケイ素 0.1%
銅 25.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そしてギルディングメタルのサンプル上におけるテストでは、良い色で、かつT字溶接に沿った流れも良い、良質のはんだを得る事ができた。しかしながら、その融点は60銀はんだよりも高かった。Thessco Fフラックスを使う時、分散前にはんだのビードが観察されたが、60銀はんだでも同じビードが生じた。
【0023】
〔例3〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 65%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 9%
ケイ素 0.1%
銅 23.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そしてギルディングメタルのサンプル上におけるテストでは、わずかに黄色を呈するが良質のはんだを得る事ができた。Thessco Fフラックスを使う時、その融点は、公知のEasy銀はんだよりもわずかに高く、分散前に、はんだのビードが観察された。ビードはまた、Superiorフラックス6においても観察された。Superiorフラックス601を使う事で、その融点は、Easy銀はんだの物と同等になり、そして分散前にはんだのビードは観察されなかった。
【0024】
〔例4〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 14%
ケイ素 0.4%
銅 25.6%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そしてギルディングメタルのサンプル上におけるテストでは、良い色の良質のはんだを得る事ができた。その融点は60銀はんだよりも若干低かった。ギルディングメタルの平坦な表面上ではんだ付けをした時に見られる表面のきめは、わずかに粗かった。
【0025】
〔例5〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 17%
ケイ素 0.4%
銅 24.6%
結果としてできた化合物は黄色く見え、さらなる評価を行なわなかった。
【0026】
〔例6〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 56%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 19.8%
ケイ素 0.2%
銅 22%
結果としてできた化合物は黄色く見え、さらなる評価を行なわなかった。
【0027】
〔例7〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 65%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 13.5%
ケイ素 0.1%
銅 19.2%
結果としてできた化合物は、黄色く見え、そして分散前に鑞付けによるビードがみられた。
【0028】
〔例8〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 67%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 8%
ケイ素 0.1%
銅 22.1%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そしてギルディングメタルのサンプル上でThessco Fフラックスを使って評価をすると、とても良質のはんだを得る事ができた。それは、良い色で、かつ分散前にはんだのビードが見られなかった。その化合物はEasy銀はんだのものよりもわずかに融点が高い。しかしながら、Degussaフラックスを使ってArgentiumAg/Ge材料(Thessco社)上で再テストした時には、Easy銀はんだよりも融点が低く、わずかに良い色を示した。Degussa フラックスを使い、棒を使う事ではんだを送り込みながらArgentium内のT字接合をはんだ付けした時、はんだはとても良く流れ込んだ。本例のはんだは、下記に記されている有用性において、より高い温度でのはんだ付けで使用する為の最良の物の一つと判断された。

・ 鋳塊からの伸びが良い。
・ 融点が例10のものよりわずかに低い。
・ はんだがT字接合に沿って非常に良く流れる。
・ 良い色合いを持つ。
・ 表面のきめが良い。
【0029】
〔例9〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 60%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 13%
ケイ素 0.1%
銅 24.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そして最初にギルディングメタルのサンプル上でテストされ、良質のはんだを得る事ができた。Degussaフラックスを使う時、良い色をしており、分散前にはんだのビードが観察されなかった。Thessco Fフラックスを使う事で、分散前にはんだビードが観察され、公知である60銀はんだでも、同じギルディングメタル上でビードが観察された。上記のはんだ化合物はT字接合に沿って良好に流れ、そして良い表面のきめを示した。その融点は公知である60銀はんだよりも少し高い。Argentium,(Thessco社)の上にはんだ付けした時、その色合いはきわめて良く、そしてはんだはEasyはんだよりも灰色になった。
【0030】
〔例10〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 70%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 8%
ケイ素 0.1%
銅 19.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そして最初にギルディングメタルのサンプル上で評価し、とても良質のはんだを得る事ができた。Degussaフラックスを使う時、分散前にはんだビードは観察されないが、Thessco Fフラックスを使う時は、はんだビードが観察された。そのはんだは、良い表面のきめが観察され、融点はEasyはんだよりもわずかに低かった。Degussaフラックスを用いてArgentium,(Thessco社)上でテストした時、その融点は例8にあるはんだよりもわずかに高いが、色はわずかに良かった。本例の化合物は下記にある有用性の為に、より高い温度でのはんだ付けで使用する為の最良の物の一つと判断された。

・ 鋳塊からの伸びが良い。
・ Argentiumに合う良い色合いを持つ。例8よりわずかに良い色合いを持つ。
・ 融点がわずかにEasyはんだよりも低い。
・ はんだがT字接合に沿って良好に流れる。
・ 一般的に表面のきめが良い。
【0031】
〔例11〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 56%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 13%
ケイ素 0.2%
銅 28.8%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そして最初にギルディングメタルのサンプル上で評価した時に、良い色合いをしており、かつ表面のキメが良く、とても良質のはんだを得る事ができた。そのはんだは、Thesscoフラックスを使ってT字接合に沿って良好に流れた。また、Thesscoフラックスを使うと、引き延ばしてあるギルディングメタルの大部分が、良い流動性をもち、何の問題もなく、基盤上にはんだ付けされた。サンプルは、違うフラックスを使って56銀はんだと共にテストされ、より高い融点を示す事がわかった。Thessco Fフラックスを用いると、本例のはんだ化合物と56銀はんだの両方で、分散前にビードが観察されたが、Degussaフラックスを使う時は、ビードはサンプル間で変化した。
【0032】
〔例12〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 74%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 8%
ケイ素 0.1%
銅 15.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、そして最初にギルディングメタル上で評価すると、良い色をしており、かつ良い表面のきめをしている良質のはんだを得る事ができた。そのはんだは、Thesscoフラックスを使いT字接合に沿って良好に流れた。その融点はわずかにEasy銀はんだよりも低く、かつ例10のはんだよりもわずかに融点が低かった。Thessco Fフラックスを用いると、分散前においてはんだのビードが観察されたが、接合箇所は良い表面のきめをしていた。Argentium(Thessco社)でテストした時、素晴らしい色合いを達成でき、Easy銀はんだで得られるのと同等の融点となったが、分散が不完全になり、より高い融点温度が望ましい事が示唆される。
【0033】
〔例13〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 60%
ゲルマニウム 3%
スズ -
亜鉛 12%
ケイ素 0.1%
銅 24.9%
結果としてできた化合物は、公知の56銀はんだより低い融点ではあるが、鋳塊からの伸びが良くなかった。
【0034】
〔例14〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 60%
ゲルマニウム 2.5%
スズ -
亜鉛 12.5%
ケイ素 0.1%
銅 24.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊(これは40%が硬化すれば十分で、続いて焼き鈍しを必要とする)からの伸びがかなり良かった。
【0035】
〔例15〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 60%
ゲルマニウム 2.5%
スズ -
亜鉛 12.5%
ケイ素 0.1%
銅 24.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊(これは40%が硬化すれば十分で、続いて焼き鈍しを必要とする)からの伸びがかなり良く、良い色を呈した。違うフラックスを使って、公知の56銀はんだと60銀はんだと共に、ギルディングメタル上でテストしたサンプルでは、分散前にビードが見られた。
【0036】
〔例16〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 74%
ゲルマニウム 2%
スズ 1%
亜鉛 7.5%
ケイ素 0.2%
銅 15.3%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、良い色を呈するが、その融点はEasy銀はんだや例12におけるはんだよりも高く、それは完全に分散をする事ができない。
【0037】
〔例17〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 74%
ゲルマニウム 2%
スズ 1%
亜鉛 7.5%
ケイ素 0.2%
銅 15.3%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良くなかった。Degussaフラックスを使ったギルディングメタル上での最初のテストでは、良い色合いを示し、Easyはんだと比較して融点が低かった。
【0038】
〔例18〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 74%
ゲルマニウム 2%
スズ -
亜鉛 13%
ケイ素 -
銅 11%
結果としてできた化合物は、鋳塊(これは40%が硬化すれば十分で、続いて焼き鈍しを必要とする)からの伸びがかなり良かった。Degussaフラックスを使ってギルディングメタル上で最初にテストされたはんだでは、良い色合いを示し、Easyはんだと比較して融点が低かった。Easyはんだとと共にArgentium(Thessco社) Ag/Ge上でテストした時、本例の化合物の方が、融点が低く、磨いた後にArgentiumと良い色合いを示し、Easy銀はんだの方は黄色く見えた。例10のはんだと共にDegussaフラックスを使ってArgentium上でテストすると、その融点は同じもしくはわずかに低く、磨いた後の色合いはわずかに暗かった。Degussaフラックスを使ってArgentium上でテストした時、そのはんだはT字接合に沿って良好に流れた。本例のはんだは、下記の理由により、より高い温度での使用において最良の中の一つと判断できた。
・ はんだはケイ素を含んでいない。(合金に加える為の組成が一つ少ない)
・ 融点は例10のはんだよりもわずかに低くなる。(例2を参照)
・ はんだはT字接合に沿って良好に流れる。
・ 表面のキメが良い。
・ 鋳塊からの伸びが良い。
【0039】
〔例19〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ 2.5%
亜鉛 14.5%
ケイ素 -
銅 23%
結果としてできた化合物は、ケイ素が除かれた事以外は例1と同様である。鋳塊(これは40%が硬化すれば十分で、続いて焼き鈍しを必要とする)からの伸びがかなり良かった。Degussaフラックスを使って56銀はんだと共にArgentium(Thessco社)上でテストした時、それはT字接合に沿って良好に流れ、融点は56銀はんだよりもわずかに高く、色がより良い事が示された。Degussaフラックスを使って例1のはんだと共にArgentium(Thessco社)のサンプル上でテストした時、その融点は変わらず、色は若干黄色くなり、はんだはあまり良好に分散しなかった。
【0040】
〔例20〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 74%
ゲルマニウム 2%
スズ 1%
亜鉛 11.4%
ケイ素 0.2%
銅 11.4%
結果としてできた化合物は、非常に堅い合金であり、鋳塊から伸びる時にとても砕けやすくなり、そしてEasy銀はんだと比べて色が黄色い。
【0041】
〔例21〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 68%
ゲルマニウム 2%
スズ 2%
亜鉛 8%
ケイ素 0.1%
銅 19.4%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びが良く、融点がEasy銀はんだよりもわずかに低く、そして、Easy銀はんだよりもわずかに黄色いが色合いは良い。
【0042】
〔例22〕
例21の鑞付け化合物にスズを3wt%加えて再び溶かした。結果としてできた化合物は、例21の物ほど十分には伸びず、その伸びは40%まで落ち、砕けやすくなった。その融点は例21の化合物より低く、スズの添加が融点を低くするという事がわかった。そして、その融点は60銀はんだのものより低かった。その色はEasy銀はんだと比較して黄色いが、Fフラックスを使用する事で流動性が増した。
【0043】
〔例23〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ 1.4%
亜鉛 14.5%
ケイ素 0.1%
銅 24%
結果としてできた化合物は、例1のハンダよりも伸びが良く、スズの添加が銀はんだをより堅く、より砕けやすくする傾向にある事が明らかになった。Thescco F フラックスを使ってギルディングメタル上にハンダ付けを行う時、本例の化合物は60銀はんだよりも融点が低いが、分散前にビードを生じた。また、56銀はんだでは、本例のはんだと同時にビードを生じたが、本例のはんだよりも先に分散した。Fフラックスを使用してArgentium上にハンダ付けをする時、本例のはんだはよく分散し、56銀はんだよりわずかに低く溶け、56銀はんだよりもわずかに良い色を呈した。
【0044】
〔例24〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 69%
ゲルマニウム 2%
スズ 2%
亜鉛 8%
ケイ素 0.1%
銅 18.9%
結果としてできた化合物は、鋳塊からの伸びは良いが、Easy銀はんだよりも、かなり高い温度で溶けた。Argentium(Thessco社)上にはんだ付けをする時に、上方から熱すると、分散前にどちらのはんだでもビードを生じたが、下方から熱するとビードを生じずに分散した。
【0045】
〔例25〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ 2.5%
亜鉛 14.5%
ケイ素 0.1%
ホウ素 0.14%
銅 22.76%
結果としてできた化合物(ホウ素の添加を除いて例1の物と同じ)は、鋳塊 (64%の縮小でエッジにクラック発生) からの伸びが良かった。Thessco Fフラックスを使ってArgentium(Thessco社)上にはんだ付けを行った時、それは、56銀はんだよりも低い温度で溶けたが、Thessco MX12銀はんだよりは高く、また、例1のはんだと同様の色合いであり、よく分散した。このはんだ化合物は、低温で使用する為の最良の接合剤の一つとして評価された。そして、それには下記にある利便性がある。
・ ホウ素の添加が例1のはんだよりも良く伸びる合金を可能にする。
・ 融点が56はんだより低い。
・ 標準の56銀はんだを含む他の低融点はんだに比べ良い色合いである。
【0046】
本例のはんだ(Yはんだ)と共にhardおよびeasy銀はんだを用いて、耐変色性の比較を行った。HardとEasyならびにYはんだをArgentium銀の上にはんだ付けした。はんだ付けしたサンプルは、2つのタイプの研磨化合物を使って磨き、それから超音波洗浄機で洗浄溶媒を用いて脱脂し、最終的に銀研磨をする為の布で拭いた。変色を加速させる為の手順は、20%の純ポリ硫化アンモニウム溶液をサンプルに10分間さらす事によって実行した。10分間さらした後、Yはんだは、図1のサンプルの写真で示してあるように、hardおよびeasy銀はんだの両方に比べて優れた耐変色性を示した。
【0047】
〔例26〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 63%
ゲルマニウム 2%
スズ 1%
亜鉛 14%
ケイ素 0.1%
ホウ素 0.14%
銅 19.76%
結果としてできた化合物は、 鋳塊 (60%の縮小でエッジにクラック発生) からの伸びが良く、Argentium(Thessco社)上にFフラックスを使ってはんだ付けする時には、融点が60銀はんだよりもかなり低かった。その融点は、例10と25のはんだにおける融点の間にあり、56あるいは60銀はんだよりも良い色をしており、そしてテストした一つのサンプルではビードを生じたが、他のサンプルではビードを生じなかった。それは、その伸び特性、融点ならびに色合いの組み合わせから、中くらいの温度で使用する為の最良のはんだ化合物であると考えられた。
【0048】
〔例27〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 63%
ゲルマニウム 2%
スズ -%
亜鉛 15%
ケイ素 0.1%
ホウ素 0.14%
銅 19.76%
結果としてできた化合物(スズを除いて実施例26と同じもの)は、 鋳塊 (75%の縮小でエッジにクラック発生) からの伸びが良かった。Thessco Fフラックスを使ってArgentium(Thessco社)上にはんだ付けを行う時、それは例26におけるはんだよりも高温度で溶け、融点を下げると言うスズの効果が明らかになった。
【0049】
〔例28〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ 2.5%
亜鉛 14.5%
ケイ素 -%
ホウ素 0.14%
銅 22.86%
結果としてできた化合物(ケイ素を除いて実施例25と同じもの)は、 鋳塊 (32%の縮小でエッジにクラック発生) からの伸びが良くなく、黄色を呈した。成形(mold)温度で用いると黄色になりすぎてしまい、より高い成形(mould)温度で再び溶かすと、結果としてできた鋳塊は、57%の縮小でエッジにクラックが発生し、伸びがより良くなると考えられる。
【0050】
〔例29〕
鑞付け用の化合物は、下記にある材料を一緒に溶かす事によって生成された。

銀 58%
ゲルマニウム 2%
スズ 2.5%
亜鉛 14.5%
ケイ素 0.3%
ホウ素 0.14%
銅 22.56%
結果としては、 鋳塊 (50%の縮小でエッジにクラック発生) からの伸びがかなり良かった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図面の簡単な説明の記載なし。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Agを少なくとも55wt%、およびGeを0.5〜3wt%含んでいるAg-Cu-Zn型である事を特徴とする銀はんだあるいは鑞付け用合金。
【請求項2】
Geを1.5〜2.5wt%含んでいる事を特徴とする請求項1記載の合金。
【請求項3】
Geを約2wt%含んでいる事を特徴とする請求項1記載の合金。
【請求項4】
Agを55〜77wt%、Cuを10〜30wt%ならびにZnを8〜15wt%含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項5】
さらにSiを0.05〜0.4wt%含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項6】
Siを約0.1wt%含んでいる事を特徴とする請求項5記載の合金。
【請求項7】
さらにSnを1〜3wt%含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項8】
Snを約2wt%含んでいる事を特徴とする請求項7記載の合金。
【請求項9】
Agを55〜77wt%、Cuを10〜30wt%およびZnを8〜15wt%、ならびにGeを2〜2.5wt%およびSiを0.05〜0.4wt%を含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項10】
Agを55〜77wt%、Cuを10〜30wt%およびZnを8〜15wt%、ならびにGeを2〜2.5wt%およびSnを1〜3wt%含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項11】
Agを55〜77wt%、Cuを10〜30wt%およびZnを8〜15wt%、ならびにGeを2〜2.5wt%、Siを0.05〜0.4wt%およびSnを1〜3wt%含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項12】
さらにホウ素を0.1〜0.3wt%含んでいる事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項13】
固相線の温度が約705℃であり、液相線の温度が約725℃である事を特徴とする上述の請求項のいずれか一項に記載の合金。
【請求項14】
固相線の温度が約720℃であり、液相線の温度が約765℃である事を特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の合金。
【請求項15】
固相線の温度が約745℃であり、液相線の温度が約778℃である事を特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の合金。
【請求項16】
銀の接合箇所を、はんだ付け、もしくは鑞付けする為の上述の請求項のいずれか一項に記載の合金の使用。
【請求項17】
スターリング銀の接合箇所を、はんだ付け、もしくは鑞付けする為の請求項1〜15のいずれか一項に記載の合金の使用。
【請求項18】
Agを約92.5wt%、Cuを約6.3wt%、Geを約1.2wt%含有している銀の接合箇所を、はんだ付け、もしくは鑞付けする為の請求項1〜15のいずれか一項に記載の合金の使用。
【請求項19】
棒状、ストリップ状、もしくは針金状の形態である事を特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の合金。
【請求項20】
ペースト状の形態である事を特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の合金。

【公表番号】特表2007−518565(P2007−518565A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540626(P2006−540626)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/050027
【国際公開番号】WO2005/051593
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(505436438)ミドルセックス シルバー カンパニー リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】MIDDLESEX SILVER CO.LIMITED