説明

銀インク組成物

【課題】フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法への適用に好適な銀インク組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする銀インク組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷法等への適用に好適な銀インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属銀は、記録材料や印刷刷版の材料として、また、導電性に優れることから高導電性材料として幅広く使用されている。
金属銀の一般的な製造方法としては、これまで、無機化合物である酸化銀を還元剤の存在下で加熱処理する方法が幅広く適用されている。このような条件下で加熱することにより、酸化銀が還元され、生じた金属銀が相互に融着して、金属銀を含む被膜が形成される。しかし、この方法では、還元剤が必要であり、約300℃程度と極めて高温で加熱する必要がある。さらに、金属銀を導電性材料として使用する場合には、抵抗を低減するために、微細な酸化銀粒子を使用する必要がある。
【0003】
これに対して、このような問題点を解決するために、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、α−ケトカルボン酸銀、β−ケトカルボン酸銀等の有機酸銀を使用した金属銀の製造方法が開示されている。例えば、β−ケトカルボン酸銀は、約210℃以下の低温で加熱処理しても速やかに金属銀を形成する(特許文献1参照)。このような優れた特性を生かして、β−ケトカルボン酸銀を溶媒に溶解させて銀インク組成物を調製し、これを基材上に印刷して、得られた印刷物を加熱(焼成)処理することで、金属銀を形成する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第07/004437号
【特許文献2】特開2009−114232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載の銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀の沈降を伴うことなく調製できる濃度が比較的低く、高粘度のものが得られない。そのため、例えば、フレキソ印刷法等、高粘度インクを使用して基材上にインクを厚盛りすることが必要な印刷法へは適用できず、基材への印刷方法が限定されるという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法への適用に好適な銀インク組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
本発明は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする銀インク組成物を提供する。
【0007】
【化1】

(式中、Rは一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY−」、「CY−」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」若しくは「(RO)CY−」で表される基であり;Yはそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;Rは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
【0008】
【化2】

(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
【0009】
本発明の銀インク組成物においては、前記Rが直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はフェニル基であり、前記Xが水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はベンジル基であることが好ましい。
本発明の銀インク組成物においては、前記β−ケトカルボン酸銀が、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀及びベンゾイル酢酸銀からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の銀インク組成物においては、前記アミン化合物として、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、2−フェニルエチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−プロピルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N−メチルベンジルアミン及びN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンからなる群から選択される一種以上が配合されたことが好ましい。
本発明の銀インク組成物においては、前記アセチレンアルコール類が、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3−メチル−1−ペンチン−3−オールからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法への適用に好適な銀インク組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1及び比較例1における銀インク組成物の静置保存時の色差を示すグラフである。
【図2】参考例1及び比較例2における銀インク組成物の静置保存時の色差を示すグラフである。
【図3】実施例5〜6、参考例2及び比較例3における銀インク組成物の静置保存時の粘度を示すグラフである。
【図4】実施例5〜6、参考例2及び比較例3における銀インク組成物の静置保存時の色差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<銀インク組成物>
本発明の銀インク組成物は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀」と略記する)と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール類」と略記する)と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする。
【0013】
【化3】

(式中、Rは一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY−」、「CY−」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」若しくは「(RO)CY−」で表される基であり;Yはそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;Rは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
【0014】
【化4】

(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
【0015】
(β−ケトカルボン酸銀)
本発明において、β−ケトカルボン酸銀は、前記一般式(1)で表わされる。
【0016】
一般式(1)において、Rは一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY−」、「CY−」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」若しくは「(RO)CY−」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜6であることが好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
【0017】
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
【0018】
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の一つの単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の一つの単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
【0019】
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一でも異なっていてもよく、一部の置換基が異なっていてもよい。
【0020】
Rにおけるフェニル基は、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合した一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0021】
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY−」及び「CY−」においては、それぞれ複数のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0022】
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0023】
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はフェニル基であることが好ましい。
【0024】
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
Xにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様である。
【0025】
Xにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
Xにおけるフェニル基及びベンジル基は、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
XにおけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、二つのXは、二つのカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して一つの基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C−NO」で表される基が例示できる。
【0026】
Xは、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はベンジル基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
【0027】
前記β−ケトカルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、又はベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。これらβ−ケトカルボン酸銀は、前記一般式(1)で表わされるものの中でも、加熱(焼成)処理により形成された金属銀において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
【0028】
本発明において、β−ケトカルボン酸銀は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0029】
(アセチレンアルコール類)
本発明において、アセチレンアルコール類は、前記一般式(2)で表わされる。
【0030】
一般式(2)において、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0031】
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合した一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0032】
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0033】
好ましい前記アセチレンアルコール類としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
【0034】
本発明において、アセチレンアルコール類は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0035】
前記混合物におけるアセチレンアルコール類の配合量は、β−ケトカルボン酸銀の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.06〜0.3モルであることがより好ましい。下限値以上とすることで、アセチレンアルコール類の使用効果がより高くなり、上限値以下とすることで、より良好に金属銀を形成できる。
【0036】
(アミン化合物、アンモニウム塩)
本発明における炭素数2〜25のアミン化合物は、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、炭素数2〜25のアンモニウム塩とは、かかる炭素数の第4級アンモニウム塩である。前記アミン化合物及びアンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン又はアンモニウム塩を形成している窒素原子の数は一つでもよいし、二つ以上でもよい。
【0037】
前記第1級アミンとしては、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
【0038】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン(2−アミノオクタン)、tert−ブチルアミン、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、シクロヘキシルアミンが例示でき、n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、tert−ブチルアミンがより好ましい。
【0039】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0040】
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、一つでもよいし、二つ以上でもよい。二つ以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環の骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
【0041】
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
【0042】
前記ジアミンは、アミノ基を二つ有していればよく、二つのアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の一つの水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミンが例示できる。
【0043】
前記第2級アミンとしては、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
【0044】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の二つのアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミンが例示できる。
【0045】
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の二つのアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0046】
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の二つのヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0047】
前記第3級アミンとしては、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
【0048】
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の三つのアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、三つのアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
【0049】
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の二つのアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0050】
前記第4級アンモニウム塩としては、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の四つのアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、四つのアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラドデシルアンモニウムブロミドが例示できる。
【0051】
ここまでは、主に鎖状のアミン及びアンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及びアンモニウム塩は、アミン又はアンモニウム塩を形成している窒素原子が環構造(複素環構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン又はアンモニウム塩を形成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環の骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
【0052】
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン又はアンモニウム塩を形成している窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、一つでもよいし、二つ以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
【0053】
アミン化合物及びアンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0054】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このようなモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
【0055】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、かかるアリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このようなモノアリールアミンとして、具体的には、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0056】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このようなジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
【0057】
前記アミン化合物は、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、2−フェニルエチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−プロピルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N−メチルベンジルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
【0058】
本発明においては、アミン化合物のみを使用してもよいし、アンモニウム塩のみを使用してもよく、アミン化合物及びアンモニウム塩を併用してもよいが、アミン化合物のみを使用することが好ましい。
【0059】
前記アミン化合物及びアンモニウム塩は、いずれも一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0060】
前記混合物におけるアミン化合物及びアンモニウム塩の総配合量は、β−ケトカルボン酸銀の配合量1モルあたり1〜5モルであることが好ましく、1.5〜4モルであることがより好ましい。下限値以上とすることで、アミン化合物及びアンモニウム塩の使用効果がより高くなり、上限値以下とすることで、より良好に金属銀を形成できる。
【0061】
(その他の成分)
前記混合物は、前記β−ケトカルボン酸銀、アセチレンアルコール類、並びにアミン化合物及び/又はアンモニウム塩以外に、本発明の効果を妨げない範囲内において、これらに該当しないその他の成分がさらに配合されていてもよい。
前記その他の成分は特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、好ましいものとして溶媒が例示できる。
前記溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、一つ以上の水素原子がシアノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素等の各種有機溶媒や、水が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0062】
(混合物の調製)
前記混合物は、前記β−ケトカルボン酸銀、アセチレンアルコール類、アミン化合物及び/又はアンモニウム塩、並びに必要に応じて前記その他の成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0063】
配合成分は、混合物中ですべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよい。
【0064】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、0〜30℃であることが好ましい。
【0065】
(濃縮)
本発明の銀インク組成物は、20℃における粘度が100mPa・s以上となるように、前記混合物を濃縮して得られたものである。濃縮によって、混合物中のβ−ケトカルボン酸銀以外の成分が優先的に気化して除去されることにより、β−ケトカルボン酸銀の濃度が上昇し、粘度が高い銀インク組成物が得られる。
【0066】
濃縮方法は公知の方法から適宜選択すればよく、好ましい方法としては、常圧下での加熱濃縮、常温下又は加熱条件下での減圧濃縮が例示できる。なかでも、常温下又は加熱条件下での減圧濃縮が好ましい。
【0067】
温度、時間、圧力等の濃縮条件は、前記混合物の配合成分や量に応じて適宜調節すればよい。例えば、濃縮時の温度の下限値は、18℃であることが好ましく、20℃であることがより好ましく、23℃であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、銀インク組成物がより効率的に得られる。また、濃縮時の温度の上限値は、70℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、50℃であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
【0068】
濃縮時間の下限値は、10分であることが好ましく、15分であることがより好ましく、20分であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、より高い粘度の銀インク組成物が得られる。また、濃縮時間の上限値は、180分であることが好ましく、120分であることがより好ましく、90分であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物がより効率的に得られる。
【0069】
濃縮時の圧力の上限値は、500hPa(ヘクトパスカル)であることが好ましく、300hPaであることがより好ましく、150hPaであることがさらに好ましく、100hPaであることが特に好ましい。このような範囲とすることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物がより効率的に得られる。また、濃縮時の圧力の下限値は特に限定されない。
【0070】
濃縮時の温度、濃縮時間、濃縮時の圧力は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、濃縮時の温度を低めに設定しても、濃縮時の圧力を低めに設定するか、濃縮時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に前記混合物を濃縮できる。また、濃縮時の圧力を高めに設定しても、濃縮時の温度を高めにするか、濃縮時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に前記混合物を濃縮できる。すなわち、濃縮時の温度、濃縮時間、濃縮時の圧力として例示した上記数値範囲の中の数値を、相互の値を考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
【0071】
前記混合物は、撹拌しながら濃縮することが好ましい。このようにすることで、濃縮時の混合物をより均一にすることができ、例えば、一部の成分が溶解していなくてもより均一に分散させることができるので、濃縮工程をより安定して行うことができる。その結果、最終的な濃縮物(すなわち、銀インク組成物)の品質がより良好となる。
この時の撹拌方法は、混合物調製時の前記混合方法と同様でよく、また、混合物を収容した容器が回転等の運動が可能であれば、この容器を運動させて混合物を撹拌してもよい。
【0072】
本発明において、銀インク組成物の20℃における粘度は、100mPa・s以上であり、120mPa・s以上であることが好ましい。このような範囲とすることで、フレキソ印刷法等に適した粘度となる。また、銀インク組成物の20℃における粘度は、500mPa・s以下であることが好ましく、450mPa・s以下であることがより好ましい。このような範囲とすることで、印刷への適用により適した物性となる。なお、ここでは銀インク組成物の20℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
【0073】
本発明の銀インク組成物は、例えば、80℃〜200℃等の温度で加熱(焼成)処理することにより、β−ケトカルボン酸銀を熱分解させ、容易に金属銀を形成できる。したがって、例えば、銀インク組成物をフレキソ印刷法等の各種印刷法に適用し、得られた印刷パターンを加熱処理することで、金属銀のパターンを形成できる。加熱温度は、β−ケトカルボン酸銀の種類に応じて、適宜調節すればよい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜調節すればよい。
【0074】
本発明の銀インク組成物の保存温度は、0〜30℃であることが好ましく、2〜25℃であることがより好ましい。このような範囲とすることで、より良好な品質を長期間維持できる。
【0075】
本発明の銀インク組成物は、前記濃縮工程を経ることで、β−ケトカルボン酸銀の沈降を伴うことなく、極めて高い粘度とすることができる。また、濃縮条件を適宜調節することで、粘度を所望の幅広い値に容易に調節できる。そして、この時の粘度を、前記必須成分を配合して得られる、濃縮工程を経ていない混合物で、β−ケトカルボン酸銀の沈降を伴うことなく実現できる粘度の最高値よりもはるかに高くできる。さらに、本発明の銀インク組成物は、このような高い粘度であるにも関わらず、保存時の成分の析出や沈降も抑制され、保存安定性に優れる。
【0076】
本発明の銀インク組成物は、粘度が高いことにより、フレキソ印刷法等の、高粘度インクを使用して基材上にインクを厚盛りすることが必要な印刷法に適しており、微細なパターンを高精度に印刷できる。そして、得られた印刷パターンを加熱処理することで、容易に金属銀のパターンを形成できる。
【実施例】
【0077】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0078】
<銀インク組成物の製造>
[実施例1]
2−エチルヘキシルアミン(125.30g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(5.60g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(96.30g)を添加して撹拌することで、混合物を得た。そして、得られた混合物の粘度(濃縮前の粘度)を下記方法で測定した。各成分の配合量(モル数)を表1に、混合物の粘度を表2に、それぞれ示す。
次いで、得られた混合物全量(227.20g)を、25℃のウオーターバスで温度調節しながら、30hPaの圧力を保ち、60分間減圧濃縮することで、銀インク組成物(204.48g)を得た。得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を下記方法で測定した。測定結果を表2に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、10.0%であった。
【0079】
(粘度の測定方法)
温度20℃の環境下で、測定対象物である20gの前記混合物又は銀インク組成物中に、超音波式粘度計(CBC社製「VISCOMATE VM−10A」)のセンサー(振動体)を挿入して、前記混合物又は銀インク組成物の粘度を測定した。
【0080】
[参考例1]
表1に示すように、2−エチルヘキシルアミン(86.50g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2.80g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(48.15g)を添加して撹拌することで、混合物を得た。そして、得られた混合物の粘度(濃縮前の粘度)を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。
次いで、得られた混合物全量(137.45g)を、25℃のウオーターバスで温度調節しながら、30hPaの圧力を保ち、60分間減圧濃縮することで、銀インク組成物(131.54g)を得た。そして、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、4.3%であった。
【0081】
[比較例1]
表1に示すように、2−エチルヘキシルアミン(53.95g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2.85g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(50.00g)を添加して撹拌することで、比較用の銀インク組成物(106.80g)を得た。そして、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
[比較例2]
表1に示すように、2−エチルヘキシルアミン(67.12g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2.28g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下2−メチルアセト酢酸銀(40.00g)を添加して撹拌することで、比較用の銀インク組成物(109.40g)を得た。そして、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0083】
<銀インク組成物の粘度及び色差の評価>
上記実施例、参考例及び比較例で得られた銀インク組成物を分割し、4℃、20℃の二通りの温度で7日間静置保存した。そして、この間のこれら銀インク組成物の粘度を上記方法で測定した。また、銀インク組成物の明度(L)及び色度(a、b)をそれぞれ下記方法(測定方法(1))で測定し、得られた測定値から、下記方法で色差(ΔE)を算出した。結果を図1及び2に示す。
【0084】
(L、a、bの測定方法(1))
透明な10mm角セル中に、銀インク組成物10gを入れ、分光光度計(日立社製「U−3500」)を使用して、銀インク組成物のL、a、bを測定した。測定条件は以下の通りである。
波長領域:380〜780nm
データモード:%T
スキャンスピード:600nm/min
サンプリング間隔:2nm
ランプ:D
【0085】
(色差の算出)
上記で得られたL、a、bの測定値から、下記式(I)にしたがって色差(ΔE)を算出した。
ΔE=[(L−L+(a−a+(b−b1/2 ・・・(I)
(式中、Lは組成物の製造後の特定日におけるLの値であり、Lは組成物の製造直後におけるLの値であり、aは組成物の製造後の特定日におけるaの値であり、aは組成物の製造直後におけるaの値であり、bは組成物の製造後の特定日におけるbの値であり、bは組成物の製造直後におけるbの値であり、L、a及びbは同時期の値であり、L、a及びbは同時期の値である。)
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表2中、「β−ケトカルボン酸銀濃度」とは、実施例1及び参考例1においては、濃縮によりβ−ケトカルボン酸銀の量が減少しないことに基づいて、β−ケトカルボン酸銀の配合量から算出した値である。
比較例1の銀インク組成物は、濃縮を行わずにβ−ケトカルボン酸銀の濃度が実施例1の銀インク組成物と同じとなるように調節したものである。同様に、比較例2の銀インク組成物は、濃縮を行わずにβ−ケトカルボン酸銀の濃度が参考例1の銀インク組成物と同じとなるように調節したものである。
【0089】
表1及び2から明らかなように、β−ケトカルボン酸銀の濃度が同じであるにも関わらず、実施例1は比較例1よりも、参考例1は比較例2よりも、それぞれ銀インク組成物の粘度が顕著に高かった。参考例1の銀インク組成物は、濃縮度を実施例1よりも低くしたため、粘度が100未満にとどまっているが、さらに濃縮度を挙げることで、実施例1と同様の高粘度の銀インク組成物とすることができる。
【0090】
実施例1、参考例1、比較例1〜2の銀インク組成物は、すべて4℃、20℃のいずれの温度においても、静置保存中の粘度がほとんど変化せず、安定していた。
一方、図1及び2から明らかなように、実施例1は比較例1よりも、参考例1は比較例2よりも、それぞれ静置保存中の銀インク組成物の色差の変動が抑制されていた。
【0091】
<銀インク組成物の製造>
[実施例2]
混合物の全量が30gとなるように、各成分の配合比を変えることなく配合量を調節し、表3に示すように、40℃のウオーターバスで温度調節しながら30分間濃縮したこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物(26.25g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表4に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、12.5%であった。
【0092】
[実施例3]
混合物の全量が30gとなるように、各成分の配合比を変えることなく配合量を調節し、表3に示すように、70hPaの圧力を保ち、30分間濃縮したこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物(27.21g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表4に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、9.3%であった。
【0093】
[実施例4]
混合物の全量が30gとなるように、各成分の配合比を変えることなく配合量を調節し、30分間濃縮したこと以外は、表3に示すように、実施例1と同様の方法で銀インク組成物(26.79g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表4に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、10.7%であった。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
<銀インク組成物の評価>
実施例2の銀インク組成物を使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材上に、200線/inchのアニロックスローラーによりフレキソ印刷を行った。この時のライン幅の設定値は370μmとした。その結果、β−ケトカルボン酸銀の濃度が同じで、濃縮を行っていない比較用の銀インク組成物を使用した場合よりも、ライン幅が狭く、乾燥後のインクの滲み率は、測定した五ヶ所の平均値で10%低い14%であった。すなわち、実施例2の銀インク組成物を使用することで、滲みの少ないライン(パターン)を印刷できた。また、ラインの断面を顕微鏡で観察したところ、比較用の銀インク組成物の場合には、ラインの表面や内部にピンホールが生じるなど、欠陥が生じていたが、実施例2の銀インク組成物の場合には、このような欠陥が無く、ラインの表面が滑らかでエッジもきれいに立っており、精細なラインが形成されていた。このように、アニロックスローラー150〜300線/inchで良好なパターンを形成できた。
【0097】
<銀インク組成物の製造>
[実施例5]
表5に示すように、製造直後の粘度を151mPa・sとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。なお、混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、6.5%であった。
【0098】
[実施例6]
表5に示すように、製造直後の粘度を356mPa・sとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。なお、混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、12.5%であった。
【0099】
[参考例2]
表5に示すように、製造直後の粘度を95mPa・sとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。なお、混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、3.2%であった。
【0100】
[比較例3]
表5に示すように、比較例1と同様の方法で、製造直後の粘度が69mPa・sである比較用の銀インク組成物を得た。粘度は上記方法で測定した。
【0101】
<銀インク組成物の粘度及び色差の評価>
上記実施例、参考例及び比較例で得られた銀インク組成物を分割し、4℃、20℃の二通り(実施例6は20℃のみ)の温度で30日間静置保存した。そして、この間のこれら銀インク組成物の粘度を実施例1と同様の方法で測定した。また、下記方法(測定方法(2))で明度(L)及び色度(a、b)を測定し、実施例1と同様の方法で色差(ΔE)を算出した。粘度の測定結果を図3に、色差の算出結果を図4に、それぞれ示す。また、製造直後(静置保存前)及び30日静置保存時の銀インク組成物の粘度の測定結果をそれぞれ表5に示す。
【0102】
(L、a、bの測定方法(2))
銀インク組成物10gを透明なサンプル瓶に入れ、X−Rite社製分光測色計を使用して、暗室内においてサンプル瓶の底面側から銀インク組成物に光を照射し、L、a、bを測定した。
【0103】
【表5】

【0104】
参考例2の銀インク組成物は、濃縮度を実施例1よりも低くしたため、製造直後の粘度が100未満にとどまっているが、さらに濃縮度を挙げることで、実施例1と同様の高粘度の銀インク組成物とすることができる。
【0105】
図3及び4から明らかなように、実施例5〜6、参考例2、比較例3の銀インク組成物は、すべて4℃、20℃のいずれの温度においても、静置保存中の粘度、色差がほとんど変化せず、安定していた。
【0106】
<銀インク組成物の製造>
[実施例7]
2−エチルヘキシルアミン(16.56g)、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(0.72g)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下アセト酢酸銀(11.91g)を添加して撹拌することで、混合物を得た。そして、得られた混合物の粘度(濃縮前の粘度)を、実施例1と同様の方法で測定した。各成分の配合量(モル数)を表6に、混合物の粘度を表7に、それぞれ示す。
次いで、得られた混合物全量(29.19g)を、25℃のウオーターバスで温度調節しながら、70hPaの圧力を保ち、30分間減圧濃縮することで、銀インク組成物(26.94g)を得た。得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を、実施例1と同様の方法で測定した。測定結果を表7に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、7.7%であった。
【0107】
[実施例8]
アセト酢酸銀(11.91g)に代えて2−メチルアセト酢酸銀(12.70g)を、2−エチルヘキシルアミン(16.56g)に代えて2−アミノオクタン(1−メチルヘプチルアミン)(16.56g)を、それぞれ使用したこと以外は、実施例7と同様の方法で銀インク組成物(29.98g)を得た。混合物の粘度と、得られた銀インク組成物の製造直後の粘度を上記方法で測定した。測定結果を表7に示す。なお、前記混合物から銀インク組成物を得る過程での質量減少率は、7.2%であった。
【0108】
[比較例4]
実施例7の銀インク組成物と同じ組成となるように、2−エチルヘキシルアミン、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)をフラスコ内に添加して撹拌し、さらにここへ、氷冷下アセト酢酸銀を添加して撹拌することで、比較用の銀インク組成物を得た。すなわち、得られた銀インク組成物は、濃縮を行わずにβ−ケトカルボン酸銀の濃度が実施例7の銀インク組成物と同じとなるように調節したものである。
【0109】
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
表6及び7から明らかなように、β−ケトカルボン酸銀又はアミン化合物の種類が異なっても、実施例7又は8の銀インク組成物は、実施例1〜6の銀インク組成物と同様に高粘度であった。
【0112】
<銀インク組成物の粘度及び色差の評価>
実施例7で得られた銀インク組成物を分割し、4℃、20℃の二通りの温度で13日間静置保存した。そして、このときの3日目及び13日目において、銀インク組成物の粘度を実施例1と同様の方法で測定した。さらに、実施例1と同様の方法で明度(L)及び色度(a、b)を測定し、色差(ΔE)を算出した。結果を表8及び9に示す。
さらに、比較例4で得られた銀インク組成物についても同様に、4℃、20℃の二通りの温度で静置保存したときの、3日目及び13日目における色差(ΔE)を算出した。結果を表9に示す。
【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
表8及び9から明らかなように、実施例7の銀インク組成物は、4℃、20℃のいずれの温度においても、静置保存中の粘度、色差の変化が小さく、安定していた。比較例4の銀インク組成物も同様に、4℃、20℃のいずれの温度においても、静置保存中の色差の変化が小さく、安定していた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、フレキソ印刷法等の、高粘度インクを使用する印刷法で利用可能であり、微細な金属銀のパターン形成に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀と、下記一般式(2)で表わされるアセチレンアルコール類と、炭素数2〜25のアミン化合物及び/又はアンモニウム塩と、が配合されてなる混合物を濃縮して得られ、20℃における粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする銀インク組成物。
【化1】

(式中、Rは一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY−」、「CY−」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」若しくは「(RO)CY−」で表される基であり;Yはそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;Rは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
【化2】

(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は一つ以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
【請求項2】
前記Rが直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はフェニル基であり、前記Xが水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、又はベンジル基であることを特徴とする請求項1に記載の銀インク組成物。
【請求項3】
前記β−ケトカルボン酸銀が、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀及びベンゾイル酢酸銀からなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銀インク組成物。
【請求項4】
前記アミン化合物として、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、2−フェニルエチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−プロピルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N−メチルベンジルアミン及びN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンからなる群から選択される一種以上が配合されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀インク組成物。
【請求項5】
前記アセチレンアルコール類が、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3−メチル−1−ペンチン−3−オールからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233176(P2012−233176A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91228(P2012−91228)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】