説明

銀塩光熱写真イメージング材料および画像形成方法

【課題】 銀色調が良好な冷黒調、レーザ走査露光機での露光で発振波長の変動に対し出力画像の感度、最高濃度が極めて安定、かつ画像の色味、濃度、カブリ、感度が保存時の光や熱で劣化し難い銀塩光熱写真イメージング材料、それを用いる画像記録方法を提供。
【解決手段】 支持体上に、非感光性有機銀塩、ハロゲン化銀、銀イオン還元剤及びバインダーを含有する画像形成層を有する銀塩光熱写真イメージング材料において、該銀イオン還元剤の少なくとも1種が下記一般式(1)で表される化合物(α)であり、該画像形成層を有する面側にイエロー発色性ロイコ染料(β)及びシアン発色性ロイコ染料(γ)を含有し、かつ該(β)と(α)の添加量比((β)のモル数/(α)のモル数)が0.001〜0.2であり、該(γ)と(α)の添加量比((γ)のモル数/(α)のモル数)が0.001〜0.5である銀塩光熱写真イメージング材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩光熱写真イメージング材料および該イメージング材料を用いる画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や印刷製版の分野ではレーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッターのような効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる光熱写真材料に関する技術が必要とされている。
【0003】
かかる技術として有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号明細書、同3457075号明細書およびD.クロスタボーア(Klosterboer)著「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、J.スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第9章、第279頁、1989年)に記載されている。特に、銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例えば、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。米国特許2910377号明細書、特公昭43−4924号公報をはじめとする多くの文献に開示されている。
【0004】
銀塩光熱写真ドライイメージング材料はその利便性から、特に医療診断用途に頻繁に用いられるように成ってきている。医療診断用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。この有機銀塩を利用した光熱画像形成システムで純黒調の色調を出すことが難しく、前述の色調剤等で色調を調整しているが、色調コントロールは十分ではなく改良が望まれている。この欠点を改良する技術として特定の還元剤と特定の化合物の組み合わせが開示されているが(特許文献1、2参照)、その改良効果は十分とはいい難く、保存時に画像の色味や濃度が変化しやすい上にカブリの増加や感度の低下が見られ、また、レーザ走査露光機を用いて露光した場合に発振波長や温度のわずかな変動に対して出力画像の濃度が変動しやすい等、重大な問題を有しておりさらなる改良が求められていた。
【特許文献1】特開2002−169249号公報
【特許文献2】特開2002−236334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、銀色調が良好な冷黒調であり、レーザ走査露光機を用いて露光した場合に発振波長の変動に対して出力画像の感度、および最高濃度が極めて安定しており、かつ画像の色味、濃度、カブリおよび感度が保存時の光や熱の作用により劣化しにくい銀塩光熱写真イメージング材料および該イメージング材料を用いる画像記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0007】
(請求項1)
支持体上に、非感光性有機銀塩、ハロゲン化銀、銀イオン還元剤およびバインダーを含有する画像形成層を有する銀塩光熱写真イメージング材料において、該銀イオン還元剤の少なくとも1種が下記一般式(1)で表される化合物であり、該画像形成層を有する面側にイエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料を含有し、かつ該イエロー発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該イエロー発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.2であり、該シアン発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該シアン発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.5であることを特徴とする銀塩光熱写真イメージング材料。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。R13およびR14はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。Qはベンゼン環上に置換可能な基を表し、nは0〜2の整数を表す。Qが複数の場合、各々のQは同じあっても異なっていても良い。)
(請求項2)
前記イエロー発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該イエロー発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.1であることを特徴とする請求項1に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0010】
(請求項3)
前記シアン発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該シアン発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.3であることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0011】
(請求項4)
前記イエロー発色性ロイコ染料が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1はアルキル基またはシクロアルキル基を表し、R2は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアシルアミノ基を表す。ただし、R1、R2は2−ヒドロキシフェニルメチル基であることはない。R3は水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を表す。R4はベンゼン環上に置換可能な置換基を表す。)
(請求項5)
前記イエロー発色性ロイコ染料が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R31、R32、R33およびR34は各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。R35は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。)
(請求項6)
前記シアン発色性ロイコ染料が下記一般式(CL)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rc1、Rc2は水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、−NHCO−Rc6基(Rc6はアルキル基、アリール基、複素環基を表す。)であるか、またはRc1、Rc2は互いに連結して脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環または複素環を形成する基を表し、Acは−NHCO−基、−CONH−基または−NHCONH−基を表し、Rc3は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。また、−Ac−Rc3は水素原子であってもよい。Wcは水素原子または−CONH−Rc5基、−CO−Rc7基または−CO−O−Rc7基(Rc7は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、Rc4は水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはニトリル基を表し、Rc5は−CONH−Rc8基、−CO−Rc8基または−CO−O−Rc8基(Rc8は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、Xcは置換または無置換の、アリール基または複素環基を表す。)
(請求項7)
前記ハロゲン化銀が赤外増感されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0018】
(請求項8)
複素芳香族メルカプト化合物および複素芳香族ジスルフィド化合物から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【0019】
(請求項9)
請求項1〜8の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料を熱現像した後の該銀塩光熱写真イメージング材料の色相角habが、180度<hab<270度であることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、銀色調が良好な冷黒調であり、レーザ走査露光機を用いて露光した場合に発振波長の変動に対して出力画像の感度、および最高濃度が極めて安定しており、かつ画像の色味、濃度、カブリおよび感度が保存時の光や熱の作用により劣化しにくい銀塩光熱写真イメージング材料および該イメージング材料を用いる画像記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の銀塩光熱写真イメージング材料は、支持体上に、非感光性有機銀塩、ハロゲン化銀、銀イオン還元剤およびバインダーを含有する画像形成層を有する銀塩光熱写真イメージング材料において、該銀イオン還元剤の少なくとも1種が前記一般式(1)で表される化合物であり、該画像形成層を有する面側にイエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料を含有し、かつ該イエロー発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該イエロー発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.2であり、該シアン発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該シアン発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.5であることを一つの特徴とする。
【0023】
先ず、本発明に係る一般式(1)で表される化合物(銀イオン還元剤)について説明する。
【0024】
前記一般式(1)において、R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。
【0025】
本明細書における「脂肪族基」とは、それぞれ置換または無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アラルキル基を意味する。
【0026】
11およびR12で表される脂肪族基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブテニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプチニル基、シクロヘプタジエニル基、シクロオクタニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、シクロオクタトリエニル基、シクロノナニル基、シクロノネニル基、シクロノナジエニル基、シクロノナトリエニル基、シクロデカニル基、シクロデケニル基、シクロデカジエニル基、シクロデカトリエニル基等を挙げることができる。
【0027】
これらの基は任意の個所に置換基を有してもよく、該置換基の具体例としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボオキシ基、アリール基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、等が挙げられる。
【0028】
11およびR12で表される芳香族基としては単環でも縮合環でもよく、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、トリフェニレニル等を挙げることができる。これらの環は任意の個所に種々の置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、例えば、直鎖、分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20の、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ドデシル基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20の、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ドデシルオキシ基等)、脂肪族アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜21のアルキル基を持つもの、例えばアセチルアミノ基、ヘプチルアミノ基等)、芳香族アシルアミノ基、等が挙げられる。
【0029】
11として好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは置換または無置換の炭素数1〜10のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、である。
【0030】
12として好ましくは水素原子である。
【0031】
13およびR14は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表すが、R13およびR14で表される脂肪族基および芳香族基の具体例としては、前記R11およびR12で表される脂肪族基および芳香族基の例と同様の基が挙げられる。
【0032】
13およびR14で表される複素環基複素環として具体的には、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基等の芳香族ヘテロ環基やピペリジノ基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基等の非芳香族ヘテロ環基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していても良く、該置換基としては前述の芳香族基の環上の置換基と同様の置換基を挙げることができる。
【0033】
13およびR14の最も好ましい組み合わせはR13が第1級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)または第3級アルキル基(例えば、tert−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基等)であり、R14が第1級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)である場合である。
【0034】
Qはベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルキニル基(プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
【0035】
nは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはnが0の場合である。Qが複数の場合、各々のQは同じでも異なっていても良い。
【0036】
以下に、一般式(1)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
次に、本発明で用いられるイエロー発色性ロイコ染料について説明する。
【0043】
本発明において、公知のイエロー発色性ロイコ染料が使用できるが、特にイエロー発色性ロイコ染料として好ましく用いられるロイコ染料は、酸化されることにより360〜450nmの吸光度が増加する一般式(2)で表される色像形成剤である。好ましく用いられる一般式(2)の化合物について詳細に説明する。
【0044】
一般式(2)において、R1はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。
【0045】
1で表されるアルキル基またはシクロアルキル基としては炭素数1〜30のアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、アルキル基またはシクロアルキル基は無置換でも置換基を有していてもよい。無置換のアルキル基またはシクロアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−オクチル基、tert−アミル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルーシクロヘキシル基などが好ましく、イソプロピル基よりも立体的に大きな基(例えば、イソプロピル基、イソノニル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルーシクロヘキシル基、アダマンチル基など)であることがより好ましく、その中でも3級アルキル基であるtert−ブチル基、tert−オクチル基、tert−アミル基などが特に好ましい。R1が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などが挙げられる。
【0046】
2は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアシルアミノ基を表す。
【0047】
2が示すアルキル基またはシクロアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、R2が示すアシルアミノ基は炭素数1〜30のアシルアミノ基が好ましい。
【0048】
アルキル基またはシクロアルキル基の説明はR1の場合と同様である。好ましくは水素原子または無置換の炭素数1〜24のアルキル基であり、具体的にはメチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0049】
アシルアミノ基は無置換であっても置換基を有していてもよく、具体例としては、アセチルアミノ基、アルコキシアセチルアミノ基、アリールオキシアセチルアミノ基などが挙げられる。好ましくは、アセチルアミノ基である。
【0050】
また、R1、R2は2−ヒドロキシフェニルメチル基であることはない。
【0051】
3は水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を表す。R3が示すアルキル基またはシクロアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、アルキル基の説明はR1の場合と同様である。
【0052】
3として好ましくは、水素原子、無置換の炭素数1〜24のアルキル基またはシクロアルキル基であり、具体的にはメチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。また、R2、R3はいずれか一方は水素原子であることが好ましい。
【0053】
4はベンゼン環に置換可能な基を表し、例えば、一般式(1)におけるQで説明した基と同様の基である。
【0054】
4として好ましい基は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のオキシカルボニル基であり、炭素数1〜24のアルキル基がより好ましい。アルキル基の置換基としてはアリール基、アミノ基、アルコキシ基、オキシカルボニル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、イミド基、ウレイド基などが挙げられ、アリール基、アミノ基、オキシカルボニル基、アルコキシ基がより好ましい。これらのアルキル基の置換基はさらにこれらの置換基で置換されていてもよい。
【0055】
一般式(2)で表される化合物の中でさらに好ましい構造は一般式(3)で表される。次に一般式(3)で表される化合物について詳述する。
【0056】
前記一般式(3)において、R31、R32、R33およびR34は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基またはシクロアルキル基である。アルキル基またはシクロアルキル基上の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0057】
31、R32、R33およびR34においては、イソプロピル基よりも立体的に大きな基(例えば、イソプロピル基、イソノニル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルーシクロヘキシル基、アダマンチル基など)が少なくとも一つ存在することが好ましく、さらに好ましくは2つ以上存在する。イソプロピル基よりも立体的に大きなとしては3級アルキル基であるtert−ブチル、tert−オクチル、tert−アミル基などが特に好ましい。
【0058】
一般式(3)におけるR35は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。R35で表される脂肪族基、芳香族基または複素環基の説明は、前記一般式(1)におけるR13およびR14で表される脂肪族基、芳香族基または複素環基の説明と同様である。
【0059】
35として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R35として特に好ましくは水素原子である。
【0060】
以下に、一般式(2)および一般式(3)で表されるイエロー発色性ロイコ染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
【化13】

【0065】
【化14】

【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
本発明におけるイエロー発色性ロイコ染料の現像剤に対する添加量比(該イエロー発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.2であり、好ましくは0.001〜0.1である。
【0072】
また、本発明ではイエロー発色性ロイコ染料により形成される色素像の極大吸収波長における最高濃度の総和を0.01以上0.50以下とするのが好ましく、より好ましくは0.01以上0.30以下、特に好ましくは0.02以上0.10以下を有するように発色させることが好ましい。
【0073】
次に本発明で用いられるシアン発色性ロイコ染料について説明する。
【0074】
本発明において、シアン発色性染料として公知のシアン発色染料が用いられる。好ましくは、酸化されることにより600〜700nmの吸光度が増加する色像形成剤であり、特開昭59−206831号公報(特にλmaxが600〜700nmの範囲内にある化合物)、特開平5−204087号公報の一般式(I)〜一般式(IV)の化合物(具体的には「0032」〜「0037」に記載の(1)〜(18)の化合物)および特開平11−231460号公報の一般式4〜一般式7の化合物(具体的には「0105」に記載されているNo.1〜No.79の化合物)である。
【0075】
本発明において用いられるシアン発色性ロイコ染料としては、例えば、前記一般式(CL)で表される化合物が挙げられる。
【0076】
一般式(CL)中、Rc1、Rc2は水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、−NHCO−Rc6基(Rc6はアルキル基、アリール基、複素環基を表す。)であるか、またはRc1、Rc2は互いに連結して脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環または複素環を形成する基である。Acは−NHCO−基、−CONH−基または−NHCONH−基を表し、Rc3は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。また、−Ac−Rc3は水素原子であってもよい。Wcは水素原子または−CONH−Rc5基、−CO−Rc7基または−CO−O−Rc7基(Rc7は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、Rc4は水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはニトリル基を表す。Rc5は−CONH−Rc8基、−CO−Rc8基または−CO−O−Rc8基(Rc8は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表す。Xcは置換または無置換の、アリール基、複素環基を表す。
【0077】
一般式(CL)において、Rc1、Rc2で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子等が挙げられ、アルキル基としては炭素原子数が20までのアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等)が挙げられ、アルケニル基としては炭素原子数20までのアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル等)が挙げられ、アルコキシ基としては炭素原子数20までのアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ等)が挙げられる。また、−NHCO−Rc6基におけるRc6で表されるアルキル基としては、炭素原子数が20までのアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等)が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、チエニル基のような炭素原子数6〜20の基が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0078】
c3で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数20までのアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
【0079】
cで表される−CONH−Rc7基、−CO−Rc7基または−CO−O−Rc7基において、Rc7で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数20までのアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素数6〜20までのアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。Rc7は好ましくはフェニル基であり、より好ましくはハロゲン原子およびシアノ基を置換基として複数有するフェニル基である。
【0080】
c4で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられ、アルキル基としては鎖状若しくは環状のアルキル基、例えば、メチル基、ブチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、ブトキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられ、カルバモイル基としては、例えば、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。またニトリル基も好ましい。これらの中でも、水素原子、アルキル基がより好ましい。前記Rc3とRc4は、互いに連結して環構造を形成してもよい。
【0081】
上記の基はさらに置換基を有していてもよく、具体例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、芳香族基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。
【0082】
c5で表される−CONH−Rc8基、−CO−Rc8基または−CO−O−Rc8基において、Rc8で表されるアルキル基は、好ましく炭素原子数20までのアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0083】
c8で表される基が有することができる置換基としてはRc1〜Rc4における置換基と同様のものが使用できる。
【0084】
cで表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基のような炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。Xcで表される基が有することができる置換基としては、Rc1〜Rc4の説明において挙げた置換基を挙げることができる。
【0085】
cで表される基としてはパラ位にアルキルアミノ基(ジエチルアミノ基等)を有するアリール基または複素環基が好ましい。これらの基は写真的に有用な基を含んでもよい。
【0086】
以下にシアン発色性ロイコ染料(CL)の具体例を示すが、本発明で用いられるシアン発色性ロイコ染料はこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化20】

【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
シアン発色性ロイコ染料の添加量比(該シアン発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.5であり、好ましくは0.001〜0.3である。
【0091】
また、本発明では、シアンロイコ染料により形成される色素像の極大吸収波長における最高濃度の総和を0.01以上、0.50以下とするのが好ましく、より好ましくは0.01以上、0.30以下、特に好ましくは0.02以上、0.10以下を有するように発色させることが好ましい。
【0092】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料(単に本発明の感光材料ともいう)に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子(単にハロゲン化銀粒子ともいう)について説明する。なお、本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収することができ、または人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収することができ、且つ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内のいずれかの領域の光を吸収したときに、当該ハロゲン化銀結晶内及び/または結晶表面において、物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0093】
(感光性ハロゲン化銀粒子)
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0094】
粒子形成は通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、又核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件あるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールが出来るので好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法を行う場合には、先ず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させ核(種粒子)生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等のもとで、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ、粒子成長させる粒子成長工程によりハロゲン化銀粒子を調製する。粒子形成後、脱塩工程により不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により除く事で所望のハロゲン化銀乳剤を得ることが出来る。
【0095】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁や色調(黄色味)を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒径が小さい方が好ましく、平均粒径は0.02μm未満の粒子を計測の対象外としたときの値として、0.035μm以上、0.055μm以下が好ましい。なおここでいう粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0096】
本発明において、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる粒径の変動係数が30%以下をいう。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0097】
粒径の変動係数%=粒径の標準偏差/粒径の平均値×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらの内、特に立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0098】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以上、100以下、より好ましくは2以上、50以下がよい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0099】
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への銀増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。なお、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
【0100】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更には5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0101】
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより有効である。
【0102】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に下記の一般式で示されるポリエチレンオキシド化合物を用いることが好ましい。
【0103】
一般式
YO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)p(CH2CH2O)n
式中、Yは水素原子、−SO3M、または−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基にて置換されたアンモニウム基を、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは各々0〜50をpは1〜100を表す。
【0104】
上記の一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられてきたものであり、消泡剤として用いる技術は、例えば特開昭44−9497号に記載されている。上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は核形成時の消泡剤としても機能する。
【0105】
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜0.1質量%で用いる。
【0106】
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくはハライド水溶液若しくは両方の水溶液に0.01質量%〜2.0質量%で添加して用いることである。又、核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は粉末で添加しても、メタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
【0107】
なお、核形成時の温度は5℃〜60℃、好ましくは15℃〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を挙げ、核形成終了時の温度が40℃の様な場合)やその逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
【0108】
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は3.5モル/リットル以下が好ましく、更には0.01モル/リットル〜2.5モル/リットルの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1L当たり1.5×10-3〜3.0×10-1モル/分が好ましく、更に好ましくは3.0×10-3〜8.0×10-2モル/分である。
【0109】
核形成時のpHは1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げるため好ましくはpH2〜6である。又、核形成時のpBrは0.05〜3.0程度、好ましくは1.0〜2.5、更には1.5〜2.0がより好ましい。
【0110】
本発明に係るハロゲン化銀粒子はいかなる方法で感光性層(単に感光層ともいう)に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
【0111】
本発明に係るハロゲン化銀は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許第1,447,454号に記載されている様に、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入する事で脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることも出来る。又、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、または脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
【0112】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号及び特開昭53−27027号、同53−25420号に詳説される金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム等の無機ハロゲン化物、例えばトリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様なオニウムハライド類、例えばヨードフォルム、ブロモフォルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等のハロゲン化炭化水素類、N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド等のN−ハロゲン化合物、その他、例えば塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。この様にハロゲン化銀を有機酸銀とハロゲンイオンとの反応により有機酸銀塩中の銀の一部または全部をハロゲン化銀に変換することによって調製する事もできる。また、別途調製したハロゲン化銀に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
【0113】
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001モル乃至0.7モル、好ましくは0.03モル乃至0.5モル使用するのが好ましい。
【0114】
本発明に係るハロゲン化銀粒子には、周期表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらは1種類でも同種或いは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。
【0115】
これらの金属イオンは金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体または錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから、1×10-2モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-4の範囲がより好ましい。本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンは下記一般式で表されるものが好ましい。
【0116】
一般式 〔ML6m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0117】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0118】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0119】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いる事もできる。
【0120】
(非感光性有機銀塩)
本発明に係る非感光性有機銀塩は還元可能な銀源であり、銀イオンを含有する有機酸の塩で、非感光性である。本発明において用いられる有機酸としては、脂肪族カルボン酸、炭素環式カルボン酸、複素環式カルボン酸、複素環式化合物等が用いられる。
【0121】
本発明に係る非感光性有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、脂肪族カルボン酸の銀塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸との重合反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換芳香族カルボン酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸等)との重合反応生成物の銀錯体等)、チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプチド類の銀塩等が挙げられる。
【0122】
上記記載の有機銀塩の中でも、脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましく用いられ、炭素数10〜30、更に好ましくは15〜25の脂肪族カルボン酸の銀塩である。好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0123】
没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。これらの内、好ましい銀塩としてはベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。又、本発明においては脂肪族カルボン酸銀塩が2種以上混合されていることが、現像性を上げ高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば2種以上の脂肪族カルボン酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0124】
脂肪族カルボン酸銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して脂肪族カルボン酸銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0125】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩においては、熱現像後の画像の透明性向上、画像保存性向上の観点から、平均円相当径が0.05μm〜0.8μmの範囲に調整することが好ましく、また、熱現像時の銀イオン供給が適切に行われ、得られた画像の保存性向上の観点から、平均厚さが0.005μm〜0.07μmに調整することが好ましい、特に好ましくは、平均円相当径が0.2μm〜0.5μm、平均厚さを0.01μm〜0.05μmの範囲に調整することである。
【0126】
平均円相当径を求めるには、分散後の脂肪族カルボン酸銀塩を希釈してカーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(日本電子製、2000FX型)、直接倍率5000倍にて撮影を行った。スキャナにてネガをデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、平均粒径を算出する。
【0127】
平均厚さを求めるには、下記に示すようなTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた方法により算出する。
【0128】
まず、支持体上に塗布された感光層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。作製された超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し、液体窒素により−130℃以下に冷却しながら透過型電子顕微鏡(以下TEMと称す)を用いて、倍率5,000倍乃至40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラなどに素早く記録する。この際、観察される視野としては、切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
【0129】
カーボン膜としては極薄いコロジオン、ホルムバールなど有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは、岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または、上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては80ないし400kVが好ましく、特に好ましくは80ないし200kVである。
【0130】
その他、電子顕微鏡観察技法、及び試料作製技法の詳細については「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)をそれぞれ参考にすることができる。
【0131】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解しコンピュータによる画像処理を行うことが好ましい。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し2値化処理によって脂肪族カルボン酸銀に相当する箇所を抽出する。
【0132】
上記抽出した脂肪族カルボン酸銀塩粒子の厚さを300個以上適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
【0133】
前記記載の形状を有する脂肪族カルボン酸銀塩粒子を得る方法としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つ事や、ソープに対する有機酸の割合、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0134】
本発明に用いられる平板状脂肪族カルボン酸銀塩粒子(平均円相当径が0.05μm以上、0.8μm以下であり、且つ平均厚さが0.005μm以上、0.07μm以下の脂肪族カルボン酸銀塩粒子をいう)は、必要に応じバインダや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0135】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。

メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えばAl23、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr23、SiO2、SiO2−Al23、Cr23−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al23(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B23、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl24、Y3Al512、ZrO2−Y23(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al23−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを以下においてジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0136】
本発明に用いられる平板状脂肪族カルボン酸銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該脂肪族カルボン酸銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でもジルコニアを用いることが好ましい。上記分散を行う際、バインダ濃度は脂肪族カルボン酸銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい運転条件として挙げられる。又、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6m/秒から13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0137】
本発明において、脂肪族カルボン酸銀粒子に対する結晶成長抑制剤ないし分散剤として機能する化合物とは、脂肪族カルボン酸銀粒子の製造工程において、当該化合物を共存させた条件下で脂肪族カルボン酸銀を製造したときに、共存させない条件下で製造したときより小粒径化や単分散化する機能、効果を有する化合物をいう。具体例として、炭素数が10以下の一価アルコール類、好ましくは第2級アルコール、第3級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ポリエチレングリコールなどポリエーテル類、グリセリンが挙げられる。好ましい添加量としては、脂肪族カルボン酸銀に対して10質量%〜200質量%である。
【0138】
一方で、イソヘプタン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸、イソベヘン酸、イソヘキサコ酸など、それぞれ異性体を含む分岐脂肪族カルボン酸も好ましい。この場合、好ましい側鎖として、炭素数4以下のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。また、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モロクチン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、セラコレン酸などの脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられる。好ましい添加量は、脂肪族カルボン酸銀の0.5モル%〜10モル%である。
【0139】
グルコシド、ガラクトシド、フルクトシドなどの配糖体類、トレハロース、スクロースなどトレハロース型二糖類、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、アルギン酸など多糖類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、ソルビタン、ソルビット、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルホルムアミドなど水溶性有機溶媒、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの水溶性ポリマー類も好ましい化合物として挙げられる。好ましい添加量は、脂肪族カルボン酸銀に対して0.1質量%〜20質量%である。
【0140】
炭素数が10以下のアルコール好ましくは、第二級アルコール、第三級アルコールは、仕込み工程での脂肪族カルボン酸ナトリウムの溶解度を上げることにより減粘し、攪拌効率を上げることで単分散且つ小粒径化する。分岐脂肪族カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸は、脂肪族カルボン酸銀が結晶化する際にメイン成分である直鎖脂肪族カルボン酸銀よりも立体障害性が高く、結晶格子の乱れが大きくなるため大きな結晶は生成せず、結果的に小粒径化する。
【0141】
前述のように、従来のハロゲン化銀写真感光材料と比較して、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の構成上の最大の相違点は、後者の材料中には、現像処理の前後を問わず、カブリやプリントアウト銀(焼出し銀)の発生の原因となり得る感光性ハロゲン化銀、有機銀塩及び還元剤が多量含有されていることである。このため、銀塩光熱写真ドライイメージング材料には、現像前ばかりでなく現像後の保存安定性を維持するために、高度のカブリ防止及び画像安定化技術が必須であるが、従来はカブリ核の成長及び現像を抑制する芳香族性複素環化合物の他に、カブリ核を酸化消滅する機能を有する酢酸水銀のような水銀化合物が、非常に有効な保存安定化剤として使用されていたが、この水銀化合物の使用は安全性、環境保全性の点で問題であった。
【0142】
(カブリ防止剤、画像安定化剤)
以下において、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
【0143】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、還元剤としては、後述するように、主にビスフェノール類の還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好適には無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。
【0144】
従ってこれらの機能を有する化合物であればいかなる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有し、且つ銀塩光熱写真ドライイメージング材料に格別の弊害を生じることのない化合物であればいかなる構造をもった化合物でもよい。
【0145】
又、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては、発生するフリーラジカルに、還元剤と反応し不活性化するに充分な時間接触できる位の安定性をもたせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
【0146】
これらの化合物の代表的なものとして以下に挙げるビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0147】
ビイミダゾリル化合物としては、以下に示す一般式〔1〕で表される化合物が好ましく用いられる。
【0148】
【化23】

【0149】
式中、R1、R2及びR3(同一又は相異なる)の各々は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、オクチルオキシ基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基)、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、ブチルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基)、スルフォニル基(例えば、メチルスルフォニル基、フェニルスルフォニル基等)、アシルアミノ基、スルフォニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾキシ基等)、カルボキシル基、シアノ基、スルフォ基又はアミノ基を示す。これらのうちより好適な置換基はアリール基、アルケニル基、シアノ基等である。
【0150】
上記のビイミダゾリル化合物は、米国特許第3,734,733号及び英国特許第1,271,177号に記載されている製造方法及びそれに準じた方法により製造することができる。好ましい具体例としては、例えば、特開2000−321711に記載されている化合物例を挙げることができる。
【0151】
又、同様に好適な化合物として、以下に示す一般式〔2〕で示されるヨードニウム化合物が挙げられる。
【0152】
【化24】

【0153】
式中、Q1は5、6又は7員環を完成するのに必要な原子を包含し、かつ該必要な原子は、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる。R1、R2及びR3(同一又は相異なる)の各々は水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、オクチルオキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基等)、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、ブチルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基等)、スルフォニル基(例えば、メチルスルフォニル基、フェニルスルフォニル基等)、アシルアミノ基、スルフォニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾキシ基等)、カルボキシル基、シアノ基、スルフォ基及びアミノ基を示す。これらのうちより好適な置換基はアリール基、アルケニル基及びシアノ基である。
【0154】
4はアセテート、ベンゾエート、トリフルオロアセテートのようなカルボキシレート基及びO-を示す。Wは0又は1を表す。
【0155】
-はアニオン性対イオンであり、好適な例としてはCH3CO2-、CH3SO3-及びPF6-である。
【0156】
3がスルフォ基又はカルボキシル基のときは、Wは0で、かつR4はO-である。
【0157】
なお、R1、R2及びR3の何れかは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0158】
これらのうち特に好ましい化合物は、以下の一般式〔3〕で表される。
【0159】
【化25】

【0160】
式中、R1、R2、R3、R4、X-及びW等は、前記一般式〔2〕と同義であり、Yは炭素原子(−CH=;ベンゼン環)を表すか、又は窒素原子(−N=;ピリジン環)を表す。
【0161】
上記のヨードニウム化合物はOrg.Syn.,1961及び”Fieser著Advanced Organic Chemistry”(Reinhold,N.Y.,1961)に記載されている製造方法及びそれに準じた方法によって合成できる。
【0162】
好ましい具体例としては、例えば、特開2000−321711に記載されている化合物例が挙げることができる。
【0163】
上記の一般式〔1〕及び〔2〕で表される化合物の添加量は、10-3〜10-1モル/m2、好ましくは5×10-3〜5×10-2モル/m2である。なお、当該化合物は、本発明の感光材料において、いかなる構成層中にも含有させることができるが、還元剤の近傍に含有させることが好ましい。
【0164】
又、還元剤を不活性化し還元剤が脂肪族カルボン酸銀塩を銀に還元できないようにする化合物として、反応活性種がハロゲン原子でないものが好ましいが、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物も、ハロゲン原子でない活性種を放出する化合物と併用することにより、使用することができる。ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も多くのものが知られており、併用により良好な効果が得られる。
【0165】
これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、以下に挙げる一般式〔4〕で表される化合物が挙げられる。
【0166】
【化26】

【0167】
一般式〔4〕中、Q2はアリール基またはヘテロ環基を表す。X1、X2及びX3は、各々水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基または、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは、−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表す。
【0168】
2で表されるアリール基は、単環または縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0169】
2で表されるヘテロ環基は、N、OまたはSの少なくとも一つの原子を含む3乃至10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0170】
ヘテロ環基として好ましくは、縮合環を有していてもよい5乃至6員の不飽和ヘテロ環基であり、より好ましくは縮合環を有していてもよい5乃至6員の芳香族ヘテロ環基である。更に好ましくは窒素原子を含む縮合環を有していてもよい5乃至6員の芳香族ヘテロ環基であり、特に好ましくは窒素原子を1乃至4原子含む縮合環を有していてもよい5乃至6員の芳香族ヘテロ環基である。このようなヘテロ環基におけるヘテロ環として、好ましくはイミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾールであり、特に好ましくはピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンゾチアゾールである。
【0171】
2で表されるアリール基及びヘテロ環基は−Y−C(X1)(X2)(X3)の他に置換基を有していても良く、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
【0172】
1、X2及びX3で表される置換基としては、各々ハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ヘテロ環基が好ましいが、更に好ましくは、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基(アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基)であり、更に好ましくはハロゲン原子、トリハロメチル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
【0173】
Yは、−C(=O)−、−SO−または、−SO2−を表すが、中でも好ましく用いられるのは、−SO2−である。
【0174】
これらの化合物の添加量は、実質的にハロゲン化銀の生成によるプリントアウト銀の増加が問題にならない範囲が好ましく、前記活性ハロゲンラジカルを生成しない化合物に対する比率で、最大150%以下、更に好ましくは100%以下であることが好ましい。
【0175】
なお、上記の化合物の他に、本発明の銀塩光熱写真ドライイメジング材料中には、従来カブリ防止剤として知られている化合物が含まれてもよいが、上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同第4,546,075号、同第4,452,885号、特開昭59−57234号、米国特許第3,874,946号、同第4,756,999号、特開平9−288328号、同9−90550号に記載されている化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号に開示されている化合物が挙げられる。
【0176】
本発明において、銀イオン還元剤は一般式(1)で表されるビスフェノール誘導体であることが好ましい。本発明の光熱写真ドライイメージング材料に使用される銀イオン還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05モル乃至10モル好ましくは0.1モル乃至3モルが適当である。又この量の範囲内において、本発明の銀イオン還元剤は2種以上併用されてもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び有機銀塩粒子及び溶媒からなる感光乳剤溶液に添加混合して塗布した方が、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0177】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には化学増感を施すことができる。例えば、特願2000−57004及び特開2001−249426に記載されている方法等により、硫黄などのカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。以下に示すカルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。
【0178】
これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0179】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうちカルコゲン原子が炭素原子またはリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0180】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり、10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルを用いる。化学増感環境としては、特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀または銀核を消滅或いはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、又特に銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましく、該増感条件として、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、又温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0181】
従って、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて、温度30℃以下において化学増感を施され、且つ脂肪族カルボン酸銀塩と混合して分散され、脱水及び乾燥された感光性乳剤を用いることが好ましい。
【0182】
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して、吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われる事が好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。含窒素複素環化合物において、複素環としてはピラゾール環、ピリミジン環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,2,3,4−テトラゾール環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール環、ジアザインデン環、トリアザインデン環、ペンタアザインデン環などを挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾチアゾール環なども適用できる。
【0183】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、且つ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
【0184】
複素環にはヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えばアルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などを有してもよい。
【0185】
これ含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、おおよその量はハロゲン化銀1モル当たりの量で10-6モル〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4モル〜10-1モルの範囲である。
【0186】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
【0187】
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物としては、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0188】
化学増感を施されるハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたのでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
【0189】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0190】
本発明に使用される有用な増感色素は、例えばRD17643IV−A項(1978年12月p.23)、同18431X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0191】
有用なシアニン色素は、例えばチアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0192】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば米国特許第4,536,473号、同第4,515,888号、同第4,959,294号等に開示されている赤外分光増感色素が挙げられる。
【0193】
赤外分光増感色素については、ベンゾアゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されていることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が特に好ましい。
【0194】
上記の赤外増感色素は、例えばエフ・エム・ハーマー著、The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻、The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊、New York 1964年)に記載の方法を参照し、合成することができる。
【0195】
これらの赤外増感色素の添加時期はハロゲン化銀調製後のどの時点でもよく、例えば溶剤に添加して、或いは微粒子状に分散した所謂固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/脂肪族カルボン酸銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。又、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
【0196】
本発明において、上記の分光増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0197】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、脂肪族カルボン酸銀塩を含有する乳剤は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
【0198】
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質は、RD17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、強色増感剤としては、下記で表される複素芳香族メルカプト化合物がまたはメルカプト誘導体化合物が好ましい。
【0199】
Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
【0200】
尚、脂肪族カルボン酸銀塩及び/またはハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させたときに実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も含まれる。特に下記で表されるメルカプト誘導体化合物が、好ましい例として挙げられる。
【0201】
Ar−S−S−Ar
式中のArは上記で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
【0202】
上記の複素芳香環は、例えばハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有しうる。
【0203】
上記の強色増感剤の他に、特願2000−70296号に記載されている下記に示す一般式〔5〕で表される化合物と大環状化合物を強色増感剤として使用できる。
【0204】
【化27】

【0205】
式中、H31Arは芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、T31は脂肪族炭化水素基からなる2価の連結基又は連結基を表し、J31は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を一つ以上含む2価の連結基又は連結基を表す。Ra、Rb、Rc及びRdは各々、水素原子、アシル基、脂肪族炭化水素基、アリール基又は複素環基を表し、又はRaとRb、RcとRd、RaとRc或いはRbとRdの間で結合して含窒素複素環基を形成することができる。M31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k31は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。
【0206】
一般式〔5〕において、T31で表される脂肪族炭化水素基からなる2価の連結基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)であり、置換基を有していてもよく、例えば脂肪族炭化水素基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、更に好ましくは2〜12)であり、アリール基としては、炭素数6〜20の単環又は縮環のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル)であり、複素環基としては、3〜10員の飽和、不飽和のヘテロ環基(例えば、2−チアゾリル、1−ピペラジニル、2−ピリジル、3−ピリジル、2−フリル、2−チエニル基、2−ベンゾイミダゾリル基、カルバゾリル基等)であり、これらの基中のヘテロ環は単環であっても、他の環と縮合環を形成してもよい。これらの各基は任意の個所に置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基(シクロアルキル基、アラルキル基を含み、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニル基、p−トリル基、O−アミノフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数、0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。)、イミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜18、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、フェニルイミノ基等)アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ基等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニル基、トシル基等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基等)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、スルフィノ基、カルボキシル基、ホスホノ基、ホスフィノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノ等)等が挙げられる。
【0207】
上記の基のうちヒドロキシル基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、カルボキシル基、ホスホノ基、ホスフィノ基等のような塩形成可能な基は塩であってもよい。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。置換基として好ましくは、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、アシル基、アシルアミノ基、イミノ基、スルファモイル基、スルホニル基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルバモイル基、カルボキシル基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、アシル基、アシルアミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルバモイル基、カルボキシル基であり、更に好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、アシルアミノ基、イミノ基、ウレイド基、アミノ基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルバモイル基、カルボキシル基である。アミジノ基としては、置換基を有するものを含み、置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ピリジルメチル、ベンジル、フェネチル、カルボキシベンジル、アミノフェニルメチル等の各基)、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル、o−アミノフェニル、o−メトキシフェニル等の各基)、複素環基(例えば、2−チアゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、2−フリル、3−フリル、2−チエノ、2−イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル等の各基)等が挙げられる。
【0208】
31で表される酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を一つ以上含む2価の連結基としては、例えば、以下のものが挙げられる。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0209】
【化28】

【0210】
ここで、Re及びRfは各々、前述したRa〜Rdに定義した内容に同義である。
【0211】
31Arで表される芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数6〜30のものであり、より好ましくは炭素数6〜20の単環又は縮環のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基である。H31Arで表される芳香族複素環基としてはN、O及びSのうちの少なくとも一つの原子を含む5〜10員の不飽和のヘテロ環基であり、これらの基中のヘテロ環は単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。このようなヘテロ環基中のヘテロ環として好ましくは、5〜6員の芳香族ヘテロ環、及びそのベンゾ縮合環であり、より好ましくは窒素原子を含む5〜6員の芳香族ヘテロ環、及びそのベンゾ縮合環であり、更に好ましくは窒素原子を1〜2原子含む5〜6員の芳香族ヘテロ環、及びそのベンゾ縮合環である。
【0212】
ヘテロ環基の具体例としては、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、カルバゾール、等から誘導される各基が挙げられる。ヘテロ環基として好ましくは、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、インドール、インダゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、カルバゾールからなる各基であり、更に好ましくは、イミダゾール、ピリジン、ピラジン、キノリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾリン、ベンゾトリアゾール、カルバゾールから誘導される各基が挙げられる。
【0213】
31Arで表される芳香族炭化水素基並びに芳香族複素環基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、T31の置換基として挙げた基と同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。これらの置換基は更に置換されてもよく、また、置換基が二つ以上ある場合には各々、同じでも異なってもよい。H31Arで表される基は好ましくは芳香族複素環基である。
【0214】
Ra、Rb、Rc、Rdで表される脂肪族炭化水素基、アリール基及び複素環基は、前記T31において脂肪族炭化水素基、アリール基及び複素環基の例として挙げたと同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。Ra、Rb、Rc、Rdで表されるアシル基としては炭素数1〜12の脂肪族或いは芳香族の基であり、具体的にはアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等の基が挙げられる。RaとRb、RcとRd、RaとRc或いはRbとRdの間で結合して形成する含窒素複素環基としては3〜10員の飽和、不飽和のヘテロ環基(例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、アクリジン環、ピロリジン環、ピロール環、モルフォリン環等の環基)が挙げられる。
【0215】
31で表される分子内の電荷を相殺するに必要なイオンとして、酸アニオンの具体例としては、例えば、ハロゲンイオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等)、p−トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0216】
本発明に用いられる強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む感光性層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルで用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの量が好ましい。
【0217】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に好適なバインダは、透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。親水性でも非親水性でもよい。
【0218】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の感光層に好ましいバインダはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダはポリビニルブチラールである。詳しくは後述する。又、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて、上記のバインダは2種以上を組み合わせて用いうる。
【0219】
このようなバインダは、バインダとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定しうる。例えば、感光層において少なくとも脂肪族カルボン酸銀塩を保持する場合の指標としては、バインダと脂肪族カルボン酸銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、感光層のバインダ量が1.5〜6g/m2であることが好ましい。更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0220】
本発明では、100℃以上の温度で現像処理した後の熱転移点温度が、46℃以上、200℃以下であることが好ましい。本発明でいう熱転移点温度とは、VICAT軟化点または環球法で示した値であり、示差走査熱量計(DSC)、例えばEXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)等を用いて、熱現像済みの感光層を単離して測定した際の吸熱ピークをさす。一般的に高分子化合物はガラス転移点Tgを有しているが、銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光層に用いているバインダ樹脂のTg値よりも低いところに、大きな吸熱ピークが出現する。ガラス転移温度(Tg)は、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁〜III−179頁(1966年、ワイリー アンド サン社版)に記載の方法で求めたものであり、バインダが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
【0221】
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは、共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
【0222】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、支持体上に脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤等を含有する感光層に含有するバインダとしては、従来公知の高分子化合物を用いることができる。Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体よりなる化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
【0223】
また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に、特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜105℃の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
【0224】
このようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アリールエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されていてもされていなくてもよく、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−iso−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
【0225】
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:その具体例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなど;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトンなど;オレフィン類:例えば、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど;ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、n−ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニルなどを有するものなど;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。
【0226】
これらのうち、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物のなかでも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物では、生成する脂肪族カルボン酸との相溶性に優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0227】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、下記一般式〔6〕で表される化合物が、特に好ましい。
【0228】
【化29】

【0229】
式中、R51はアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表すが好ましくはアリール基以外の基である。R52は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、−COR53又は−CONHR53を表す。R53はR51と同義である。
【0230】
51、R52、R53で表される無置換アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6である。これらは直鎖であっても分岐していてもよく、好ましくは直鎖のアルキル基が好ましい。このような無置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるが、特に好ましくはメチル基もしくはプロピル基である。
【0231】
無置換アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記のアルキル基、アリール基に置換可能な基としては、アルキル基(例えば、メチル基、n−プロピル基、tert−アミル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、ドデシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ニトロ基、水酸基、シアノ基、スルホ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基等)などが挙げられる。この置換基が2つ以上あるときは、同じでも異なっていてもよい。置換アルキル基の総炭素数は、1〜20が好ましく、置換アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。
【0232】
52としては、−COR53(R53はアルキル基又はアリール基)、−CONHR53(R53はアリール基)が好ましい。a、b、cは各繰り返し単位の質量をモル(mol)%で示した値であり、aは40〜86モル%、bは0〜30モル%、cは0〜60モル%の範囲で、a+b+c=100モル%となる数を表し、特に好ましくは、aが50〜86モル%、bが5〜25モル%、cが0〜40モル%の範囲である。a、b、cの各組成比をもつ各繰り返し単位は、それぞれ同一のもののみで構成されていても、異なるもので構成されていてもよい。
【0233】
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべてのポリウレタンについて、必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、(Mは水素原子、又はアルカリ金属塩基を表す)、−N(R542、−N+(R543(R54は炭化水素基を表し、複数のR54は同じでも異なっていてもよい)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は1×10-1〜1×10-8モル/gであり、好ましくは1×10-2〜1×10-6モル/gである。これら極性基以外に、ポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のOH基を有することが好ましい。OH基は硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特に、OH基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは、分子末端にOH基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度が70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
【0234】
本発明に係る上記一般式〔6〕で表される高分子化合物は、「酢酸ビニル樹脂」桜田一郎編(高分子化学刊行会、1962年)等に記載の一般的な合成方法で合成することができる。
【0235】
これらの高分子化合物をバインダとして単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。本発明に係る感光性銀塩含有層(好ましくは感光層)には上記ポリマーを主バインダとして用いる。ここで言う主バインダとは「感光性銀塩含有層の全バインダの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」をいう。従って、全バインダの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明に係るポリマーが可溶となる溶媒であれば、特に制限はない。より好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0236】
本発明においては、上記バインダに対し架橋剤を用いることにより膜付きがよくなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
【0237】
本発明で用いられる架橋剤としては、従来ハロゲン化銀写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用いうるが、好ましいのは以下に示すイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。
【0238】
好適なものの一つである下記一般式〔7〕で表わされるイソシアネート系及びチオイソシアネート系架橋剤について説明する。
【0239】
一般式〔7〕
2=C=N−L−(N=C=X2v
式中、vは1または2であり、Lはアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキルアリール基で、v+1価の連結基であり、X2は酸素または硫黄原子である。
【0240】
なお、上記一般式〔7〕で表せる化合物において、アリール基のアリール環は置換基を有し得る。好ましい置換基の例は、ハロゲン原子(例えば、臭素原子または塩素原子)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基及びアルコキシ基から選択される。
【0241】
上記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個有しているイソシアネート類及びその付加体(アダクト体)であり、更に、具体的には、脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼンジイソシアネート類、ナフタレンジイソシアネート類、ビフェニルイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート類、トリフェニルメタンジイソシアネート類、トリイソシアネート類、テトライソシアネート類、これらのイソシアネート類の付加体及びこれらのイソシアネート類と2価または3価のポリアルコール類との付加体が挙げられる。
【0242】
具体例としては、特開昭56−5535号の10頁〜12頁に記載されているイソシアネート化合物を利用することができる。
【0243】
なお、イソシアネートとポリアルコールのアダクト体は、特に層間接着を良くし、層の剥離や画像のズレ及び気泡の発生を防止する能力が高い。かかるイソシアネートは銀塩光熱写真ドライイメージング材料のどの部分に置かれてもよい。例えば支持体中(特に支持体が紙の場合、そのサイズ組成中に含ませることができる)、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層または2層以上に添加することができる。
【0244】
又、本発明において使用することが可能なチオイソシアネート系架橋剤としては、上記のイソシアネート類に対応するチオイソシアネート構造を有する化合物も有用である。
【0245】
本発明において使用される上記架橋剤の量は、銀1モルに対して0.001〜2モル、好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。
【0246】
本発明において含有させることが出来るイソシアネート化合物及びチオイソシアネート化合物は、上記の架橋剤として機能する化合物であることが好ましいが、上記の一般式においてvが零(0)、即ち当該官能基を一つのみ有する化合物であっても良い結果が得られる。
【0247】
本発明において架橋剤として使用できるシラン化合物の例としては、特願2000−77904に記載されている一般式(1)または一般式(2)で表せる化合物が挙げられる。
【0248】
これらの一般式において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ置換されてもよい直鎖、分枝または環状の炭素数1〜30のアルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、シクロアルキル基等)、アルケニル基(プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基等)、アルキニル基(アセチレン基、ビスアセチレン基、フェニルアセチレン基等)、アリール基またはヘテロ環基(フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロピラン基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、イミダゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基等)を表し、置換基としては電子吸引性の置換基または電子供与性の置換基いずれをも有することができる。
【0249】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8から選ばれる置換基の少なくとも1つが耐拡散性基または吸着性基であることが好ましく、特にR2が耐拡散性基または吸着性基であることが好ましい。
【0250】
なお、耐拡散性基は、バラスト基とも呼ばれ炭素数が6以上の脂肪族基や炭素数が3以上のアルキル基が導入されているアリール基等が好ましい。耐拡散性は、バインダや架橋剤の使用量によって異なるが、耐拡散性の基を導入することにより、室温状態の分子内の移動距離が抑制され経時での反応を抑制できる。
【0251】
架橋剤として用いることができるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。またエポキシ化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等のいずれであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2000〜20000程度である。
【0252】
エポキシ化合物としては下記一般式〔8〕で表される化合物が好ましい。
【0253】
【化30】

【0254】
一般式〔8〕において、R90で表されるアルキレン基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシアルキル基又はアミノ基から選ばれる基であることが好ましい。またR90で表される連結基中にアミド連結部分、エーテル連結部分、チオエーテル連結部分を有していることが好ましい。X9で表される2価の連結基としては−SO2−、−SO2NH−、−S−、−O−、又は−NR91−が好ましい。ここでR91は1価の基であり、電子吸引基であることが好ましい。
【0255】
これらのエポキシ化合物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。
【0256】
エポキシ化合物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。又、併せて支持体の感光層と反対側の任意の層に添加することができる。尚、両面に感光層が存在するタイプの感材ではいずれの層であってもよい。
【0257】
酸無水物は下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。
【0258】
−CO−O−CO−
酸無水物はこのような酸無水基を1個以上有するものであればよく、酸無水基の数、分子量、その他に制限はないが、一般式〔9〕で表される化合物が好ましい。
【0259】
【化31】

【0260】
一般式〔9〕において、Zは単環または多環系を形成するのに必要な原子群を表す。これらの環系は未置換であってもよく、置換されていてもよい。置換基の例には、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ヘキシル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシル基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル)、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、及びアミノ基が含まれる。置換基としては、ハロゲン原子を含まないものが好ましい。
【0261】
これらの酸無水物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。
【0262】
本発明において酸無水物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。又、前記エポキシ化合物と同じ層に添加してもよい。
【0263】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及び必要に応じて銀の色調を調整する色調剤を通常(有機)バインダマトリックス中に分散した状態で含有していることが好ましい。
【0264】
好適な色調剤の例は、RD17029号、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号及び同第4,021,249号に開示されている。特に好ましい色調剤としてはフタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組み合わせである。
【0265】
また、本発明のシアン発色性ロイコ染料およびイエロー発色性ロイコ染料に加え、マゼンタ発色性ロイコ染料をさらに添加してもよい。添加することのできるマゼンタ発色性ロイコ色素としては、例えば、特表平8−507885号、欧州特許339,869号明細書、米国特許3,985,565号明細書、米国特許4,022,617号明細書に記載されているマゼンタ発色性ロイコ染料、その他公知のマゼンタ発色性ロイコ染料が挙げられる。添加量としては、添加量比(該マゼンタ発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)0.001〜0.5が好ましい。
【0266】
なお、従来医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、レントゲン写真の判読者にとって、より的確な記録画像の診断観察結果が得やすいと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であることを言う。
【0267】
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度Dmin及び光学濃度D=1.0における色相角habにより求められる。色相角habは国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間であるL*a*b*色空間の色座標a*、b*を用いて次の式によって求める。
【0268】
ab=tan−1(b*/a*
本発明において、好ましいhabの範囲は180°<hab<270°であり、更に好ましくは200°<hab<270°、最も好ましくは220°<hab<260°である。
【0269】
本発明においては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の表面層に(感光層側、又支持体をはさみ感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、現像前の取り扱いや熱現像後の画像の傷つき防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダに対し、質量比で0.1〜30%含有することが好ましい。
【0270】
マット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0271】
マット剤は平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0272】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
【0273】
(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明に係るマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0274】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(例えば、アルミニウム)等が挙げられるが、情報記録材料としての取り扱い上は可撓性のあるシートまたはロールに加工できるものが好適である。従って本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料における支持体としては、プラスチックフィルム(例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルムまたはポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50μm〜300μm程度、好ましくは70μm〜180μmである。
【0275】
本発明においては帯電性を改良するために、金属酸化物及び/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層などに含まれる。本発明においては米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0276】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有している。支持体の上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも一層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば、感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、又支持体の反対の面には感光材料間の、或いは感光材料ロールにおいてくっつきを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバックコート層に用いるバインダとしては熱現像層よりもガラス転移点が高く、擦り傷や、変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダのなかから選ばれる。なお、ラチチュードを広げる目的で、感光層を支持体の一方の側に2層以上または支持体の両側に各1層以上設置することは本発明にとって好ましい態様のひとつである。
【0277】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料においては、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料または顔料を含有させることが好ましい。
【0278】
用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。
【0279】
例えば、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本明細書ではチオピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本明細書ではピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)、又スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0280】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。以下本明細書ではこれらの色素を便宜的に一括してスクアリリウム染料とよぶ。
【0281】
なお、染料としては特開平8−201959号の化合物も好ましい。
【0282】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0283】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0284】
なお、本発明において、塗布銀量は銀塩光熱写真イメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、医療用画像を目的とする場合には、0.1g/m2以上、2.5g/m2以下が好ましい。更には0.5g/m2以上、1.5g/m2以下が好ましい。当該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2%〜18%を占めることが好ましい、更には3〜15%がより好ましい。
【0285】
また本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014個/m2以上、1×1018個/m2以下が好ましい。更には、1×1015個/m2以上、1×1017個/m2以下が好ましい。
【0286】
更に本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり、10-17g以上、10-15g以下、更には10-16g以上、10-14g以下が好ましい。
【0287】
上記のような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち、銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
【0288】
本発明において、現像条件は使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において、像様に露光した銀塩光熱写真ドライイメージング材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(例えば、約100℃〜200℃)で十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、銀塩光熱写真ドライイメージング材料を加熱することにより現像することができる。加熱温度が100℃以下では短時間に十分な画像濃度が得られず、又200℃以上ではバインダが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで脂肪族カルボン酸銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0289】
加熱する機器、装置、手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは本発明の保護層の設けられた銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、又熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0290】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、当該感光材料に付与した感色性に対し、適切な光源を用いることが望ましい。例えば、当該感光材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーである事や、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
【0291】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0292】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として、好ましくは55度以上、88度以下、より好ましくは60度以上、86度以下、更に好ましくは65度以上、84度以下、最も好ましくは70度以上、82度以下であることをいう。
【0293】
レーザ光が、感光材料に走査されるときの感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。
【0294】
また、第2の方法として、本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
【0295】
縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかけるなどの方法がよい。なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0296】
なお、上述した第1、第2の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;HeNeレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、HeCdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600nm〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩光熱写真ドライイメージング材料に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5μm〜75μm、長軸径として5μm〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩光熱写真ドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【実施例】
【0297】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0298】
実施例1
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の片方の面に、0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを、乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更にもう一方の面に、同様に0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Bを用い、下引層bを、乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。
【0299】
その後、複数のロール群からなるフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃にて15分熱処理を行った。
【0300】
(下引塗布液A)
n−ブチルアクリレート30質量%、tert−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6gおよびメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(サイロイド350、富士シリシア社製)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation(株)製、Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて、下引塗布液Aとした。
【0301】
〈コロイド状酸化スズ分散液の調製〉
塩化第2スズ水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸留水を添加し、全量を2000mlとする。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して、容量が470mlになるまで濃縮してコロイド状酸化スズ分散液を調製した。
【0302】
(下引塗布液B)
前記コロイド状酸化スズ分散液37.5g、n−ブチルアクリレート20質量%、tert−ブチルアクリレート30質量%、スチレン27質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート28質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、n−ブチルアクリレート40質量%、スチレン20質量%、グリシジルメタクリレート40質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと0.1gの界面活性剤UL−1を混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0303】
【化32】

【0304】
《バック面側塗布》
メチルエチルケトン(以下、MEKと略す)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB381−20)84.2gおよびポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に溶解した液に、0.30gの赤外染料1を添加し、更にメタノール43.2gに溶解したF系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとF系活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌し、バック面側用の塗布液を調製した。
【0305】
【化33】

【0306】
このように調製したバック面塗布液を、上記記載の下引層b上に乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0307】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)m
(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて溶液(A1)に、溶液(B1)の1/4量および溶液(C1)全量を温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を、水溶液(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量および溶液(D1)の全量を、温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、乳剤を得た。
【0308】
この乳剤は平均粒子サイズ0.040μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0309】
次に上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更にこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。これを感光性ハロゲン化銀乳剤Aとする。
【0310】
【化34】

【0311】
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0312】
次に1モル/リットルの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が50μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気および乾燥機入り口熱風温度の運転条件により、含水率が0.1%になるまで乾燥して粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aを得た。脂肪族カルボン酸銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0313】
《予備分散液Aの調製》
14.57gのソルーシア社製ポリビニルブチラール樹脂B−79をメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、500gの粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0314】
《感光性乳剤分散液Aの調製》
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液Aを調製した。
【0315】
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0316】
《赤外増感色素液Aの調製》
19.2mgの赤外増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2および365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールを、31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0317】
《添加液aの調製》
銀イオン還元剤(表1に記載の化合物と量)、イエロー発色性ロイコ染料(表1に記載の化合物と量)およびシアン発色性ロイコ染料(表1に記載の化合物と量)、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの赤外染料1をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
【0318】
《添加液bの調製》
3.56gのカブリ防止剤2、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0319】
《感光層塗布液Aの調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液A(50g)およびMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、バインダ樹脂としてソルーシア社製ポリビニルブチラール樹脂B−79を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、添加液a(銀イオン還元剤、イエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料が表1に記載した添加量になるように秤量)、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液Aを得た。
【0320】
《マット剤分散液の調製》
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散し、マット剤分散液を調製した。
【0321】
《表面保護層塗布液の調製》
MEK(メチルエチルケトン)865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物(VSC)を1.5g、ベンゾトリアゾールを1.0g、F系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)を1.0g、添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0322】
【化35】

【0323】
《銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料101〜125の作製》
感光層塗布液Aと表面保護層塗布液を、公知のエクストルージョン型コーターを用いて、同時に、下引き層a上に重層塗布することにより各試料を作製した。塗布は感光層が塗布銀量1.5g/m2、表面保護層が乾燥膜厚で2.5μmになる様にして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行い各試料を作製した。
【0324】
【表1】

【0325】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した試料の乳剤面側から、高周波重畳にて波長810nm及び814nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査による露光を与えた。この際に、試料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。(なお、当該角度を90度とした場合に比べ、ムラが少なく、且つ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。)
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、試料の保護層とドラム表面が接触するようにして、123℃で13.5秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。以上のようにして得られた各画像について、下記の評価を行った。
【0326】
《感度、カブリ、最高濃度の測定》
各波長による露光により得られた各画像について、マクベス濃度計(TD−904)により濃度測定を行い、横軸;露光量、縦軸:画像濃度からなる特性曲線を作成し、未露光部分よりも1.0高い濃度を与えるのに要する露光量の比の逆数を感度と定義し、さらに最小濃度(カブリ)および最高濃度を測定した。810nmの半導体レーザで露光した試料101の感度を100とする相対値で表した。
【0327】
《色相角habの測定》
色相角habの測定は、現像処理後試料の最小濃度部および光学濃度1.0の部分をCIEにより規定された常用光源D65を測色用の光源として、2°視野で分光測色計CM−508d(ミノルタ社製)を用いて測定して求めた。
【0328】
《画像保存性の評価》
810nmで半導体レーザで露光して得られた各画像について、下記の方法に従って、最小濃度部および最高濃度部に画像濃度変化率を測定して、画像保存性を評価した。
【0329】
(最小濃度部の画像保存性の評価)
上記の感度、カブリ、最高濃度の測定方法と同様にして作製した熱現像処理済の各試料を、45℃、55%RHの環境下で、市販の白色蛍光灯を試料表面における照度が500luxとなるように配置し、3日間連続照射を施した。蛍光灯照射済み試料の最小濃度(D2)と蛍光灯未照射試料の最小濃度(D1)をそれぞれ測定し、下式より最小濃度変化率(%)を算出し、これを最小濃度部の画像保存性の尺度とした。数値が100に近いほど優れていることを表す。
【0330】
最小濃度変化率=D2/D1×100(%)
(最高濃度部の画像保存性の評価)
上記最小濃度変化率の測定と同様の方法にて作製した各試料を、25℃および45℃の環境下に3日間放置した後、最高濃度の変化を測定し、下式により画像濃度変化率を測定し、それを最高濃度部の画像保存性の尺度とした。数値が100に近いほど優れていることを表す。
【0331】
画像濃度変化率=45℃保存試料の最高濃度/25℃保存試料の最高濃度×100(%)
《画像保存後の色相角habの測定》
810nm半導体レーザで露光して得られた試料を、45℃、55%RHの環境下で、市販の白色蛍光灯を試料表面における照度が500luxとなるように配置し、3日間連続して照射した後、最小濃度部および光学濃度1.0の部分をCIEにより規定された常用光源D65を測色用の光源として、2°視野で分光測色計CM−508d(ミノルタ社製)を用いて測定して求めた。
【0332】
結果を、表2に示す。
【0333】
【表2】

【0334】
表2から、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、比較に比べ、色調が良好であるだけではなく、感度、最高濃度およびカブリが良好であり、さらにレーザ走査露光機を用いて露光した場合に発振波長の変動に対して出力画像の感度および最高濃度が極めて安定していることがわかる。
【0335】
実施例2
(PET支持体の作製)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロールを得た。
【0336】
(表面コロナ処理)
ピソリッドステートコロナ処理機(ピラー社製、6KVAモデル)を用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0337】
(下塗り支持体の作製)
(1)下塗層塗布液の作製
処方(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製、ペスレジンA−515GB(30質量%溶液) 234g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5、10質量%溶液) 21.5g
ポリマー微粒子(綜研化学(株)製、MP−1000、平均粒径0.4μm)
0.91g
蒸留水 744ml
処方(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(固形分40質量%、
スチレン/ブタジエン質量比=68/32) 158g
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−
トリアジンナトリウム塩(8質量%水溶液) 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 10ml
蒸留水 854ml
処方(バック面側第2層用)
SnO2/SbO(9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物)
84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製、メトローズTC−5(2質量%水溶液) 8.6g
ポリマー微粒子(綜研化学(株)製、MP−1000) 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 10ml
NaOH(1質量%) 6ml
プロキセル(ICI社製) 1ml
蒸留水 805ml
(下塗り支持体の作製)
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に上記下塗り塗布液処方をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0338】
(バック面塗布液の調製)
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)
塩基プレカーサー化合物11を64g、ジフェニルスルホンを28gおよび花王(株)製界面活性剤デモールN10gを蒸留水220mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散液(a)を得た。
【0339】
【化36】

【0340】
(染料固体微粒子分散液の調製)
シアニン染料化合物13を9.6gおよびp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.8gを蒸留水305mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散して平均粒子径0.2μmの染料固体微粒子分散液を得た。
【0341】
(ハレーション防止層塗布液の調製)
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記染料固体微粒子分散液56g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物14を0.2g、黄色染料化合物15を3.9g、水を844ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0342】
【化37】

【0343】
(バック面保護層塗布液の調製)
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)2.4g、tert−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、フッ素系界面活性剤(F−1:N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−プロピルアラニンカリウム塩)37mg、フッ素系界面活性剤(F−2:ポリエチレングリコールモノ(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−プロピル−2−アミノエチル)エーテル[エチレンオキサイド平均重合度15])0.15g、フッ素系界面活性剤(F−3)64mg、フッ素系界面活性剤(F−4)32mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合質量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0344】
【化38】

【0345】
《ハロゲン化銀乳剤1の調製》
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cと臭化カリウム44.2gとヨウ化カリウム2.2gを蒸留水にて容量400mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0346】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で1:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10-3モル加え、1分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。N,N′−ジヒドロキシ−N″−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0347】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.042μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて80%と求められた。
【0348】
【化39】

【0349】
《ハロゲン化銀乳剤2の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を47℃に変更し、溶液Bは臭化カリウム15.9gを蒸留水にて容量97.4mlに希釈することに変更し、溶液Dは臭化カリウム45.8gを蒸留水にて容量400mlに希釈することに変更し、溶液Cの添加時間を30分にして、六シアノ鉄(II)カリウムを除去した以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤2の調製を行った。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で1:1のメタノール溶液の添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として7.5×10-4モル、テルル増感剤Bの添加量を銀1モル当たり1.1×10-4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを銀1モルに対して3.3×10-3モルに変えた以外はハロゲン化銀乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。ハロゲン化銀乳剤2の乳剤粒子は、平均球相当径0.080μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子であった。
【0350】
《ハロゲン化銀乳剤3の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を27℃に変更する以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤3の調製を行った。また、ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で1:1を固体分散物(ゼラチン水溶液)として添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として6×10-3モル、テルル増感剤Bの添加量を銀1モル当たり5.2×10-4モルに変えた以外はハロゲン化銀乳剤1と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3を得た。ハロゲン化銀乳剤3の乳剤粒子は、平均球相当径0.034μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。
【0351】
《塗布液用混合乳剤Aの調製》
ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。これを、塗布液用混合乳剤Aとする。
【0352】
《脂肪酸銀分散物の調製》
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、tert−ブタノール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0353】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。
【0354】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製、PM−10型)で予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1260kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0355】
《還元剤分散物の調製》
銀イオン還元剤(表3に記載の化合物と量)と変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤−1分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.42μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0356】
《イエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料の分散物の調製》
イエロー発色性ロイコ染料(表3に記載の化合物と量)およびシアン発色性ロイコ染料(表3に記載の化合物と量)と変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP−203の10質量%水溶液)150gに、水75gを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーを0.5mmのジルコニアビーズとサンドミル(1/4Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いて、回転数1500rpmで10時間ビーズ分散し、メジアン径0.4μmの固体微粒子分散物を得た。得られた分散物を孔径3.0μmのポリプロピレンフィルターにてろ過し、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0357】
《現像促進剤−1の分散物の調製》
現像促進剤−1を75gと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP−203)の10質量%水溶液150gに、水75gを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーを0.5mmのジルコニアビーズとサンドミル(1/4Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いて、回転数1500rpmで10時間ビーズ分散し、メジアン径0.35μmの固体微粒子分散物を得た。得られた分散物を孔径3.0μmのポリプロピレンフィルターにてろ過し、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0358】
《水素結合性化合物−2分散物の調製》
水素結合性化合物−2(トリ(4−tert−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が22質量%になるように調製し、水素結合性化合物−2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.35μm、最大粒子径1.5μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0359】
《有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−1(2−トリブロモメタンスルホニルナフタレン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0360】
《有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−2(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0361】
《フタラジン化合物−1溶液の調製》
8kgの変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、MP203)を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0362】
《メルカプト化合物−1水溶液の調製》
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0363】
【化40】

【0364】
《顔料−1分散物の調製》
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加しよく混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0365】
《SBRラテックス液の調製》
Tg=23℃のSBRラテックスは以下により調製した。
【0366】
重合開始剤として過硫酸アンモニウム、乳化剤としてアニオン界面活性剤を使用し、スチレン70.5質量部、ブタジエン26.5質量部およびアクリル酸3質量部を乳化重合させた後、80℃で8時間エージングを行った。その後40℃まで冷却し、アンモニア水によりpH7.0とし、さらに三洋化成(株)製サンデットBLを0.22%になるように添加した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.3とし、さらにアンモニア水によりpH8.4になるように調整した。このとき使用したNa+イオンとNH4+イオンのモル比は1:2.3であった。さらに、この液1kg対してベンゾイソチアゾリンノンナトリウム塩7%水溶液を0.15ml添加しSBRラテックス液を調製した。
【0367】
(SBRラテックス:−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス)Tg23℃
平均粒径0.1μm、濃度43質量%、25℃相対湿度60%における平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し、ラテックス原液(43質量%)を25℃にて測定)、pH8.4
Tgの異なるSBRラテックスはスチレン、ブタジエンの比率を適宜変更し、同様の方法により調製した。
【0368】
《乳剤層(感光性層)塗布液の調製》
上記で得た脂肪酸銀分散物1000g、水125ml、還元剤分散物204g、イエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料の分散物(種類と量は表3に記載)、顔料−1分散物27g、有機ポリハロゲン化合物−1分散物82g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物40g、フタラジン化合物−1溶液173g、SBRラテックス(Tg:20.5℃)液1082g、メルカプト化合物−1水溶液9gを順次添加し、塗布直前に塗布液用混合乳剤Aを158g添加してよく混合した乳剤層塗布液をそのままコーティングダイへ送液し、塗布した。上記乳剤層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で40[mPa・s]であった。レオメトリックスファーイースト株式会社製RFSフルードスペクトロメーターを使用した25℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ1500、220、70、40、20[mPa・s]であった。
【0369】
《乳剤面中間層塗布液の調製》
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)の10質量%水溶液772g、顔料の20質量%分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226gにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を10.5ml、総量880gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で21[mPa・s]であった。
【0370】
《乳剤面保護層第1層塗布液の調製》
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、0.5mol/L濃度の硫酸を28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で17[mPa・s]であった。
【0371】
《熱現像感光材料の作製》
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の固形分塗布量が0.04g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。バック面と反対の面に下塗り面から乳剤層、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作製した。このとき、乳剤層と中間層は31℃に、保護層第一層は36℃に温度調整した。乳剤層の各化合物の塗布量(g/m2)は以下の通りである。
【0372】
ベヘン酸銀 6.19
還元剤 種類と量は表3記載
イエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料 種類と量は表3記載
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.032
ポリハロゲン化合物−1 0.46
ポリハロゲン化合物−2 0.25
フタラジン化合物−1 0.21
SBRラテックス 11.1
メルカプト化合物−1 0.002
ハロゲン化銀(Agとして) 0.145
塗布乾燥条件は以下のとおりである。塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。乾燥後、25℃で相対湿度40〜60%で調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で感光性層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、感光層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0373】
【表3】

【0374】
(写真性能の評価)
富士メディカルドライレーザイメージャーFM−DP L(最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザ搭載)にて写真材料を露光した。露光後は、FM−DPLの熱現像部ユニットを改造して熱現像(112℃−119℃−121℃−121℃に設定した4枚のパネルヒータで合計24秒=標準現像時間は24秒)した。各波長による露光により得られた各画像について、マクベス濃度計(TD−904)により濃度測定を行い、横軸;露光量、縦軸:画像濃度からなる特性曲線を作成し、未露光部分よりも1.0高い濃度を与えるのに要する露光量の比の逆数を感度と定義し、さらに最小濃度(カブリ)を測定した。感度については表3の試料201の感度を100とする相対値で表した。
【0375】
《色相角habの測定》
色相角habの測定は、現像処理後試料の最小濃度部および光学濃度1.0の部分をCIEにより規定された常用光源D65を測色用の光源として、2°視野で分光測色計CM−508d(ミノルタ社製)を用いて測定して求めた。
【0376】
<画像保存性>
(最小濃度部の画像保存性評価)
上記の感度、カブリ、最高濃度の測定方法と同様にして作製した熱現像処理済の各試料を、45℃、55%RHの環境下で、市販の白色蛍光灯を試料表面における照度が500luxとなるように配置し、3日間連続照射を施した。蛍光灯照射済み試料の最小濃度(D2)と蛍光灯未照射試料の最小濃度(D1)をそれぞれ測定し、下式より最小濃度変化率(%)を算出し、これを最小濃度部の画像保存性の尺度とした。数値が100に近いほど優れていることを表す。
【0377】
最小濃度変化率=D2/D1×100(%)
(最高濃度部の画像保存性の評価)
上記最小濃度変化率の測定と同様の方法にて作製した各試料を、25℃および45℃の環境下に3日間放置した後、最高濃度の変化を測定し、下式により画像濃度変化率を測定し、それを最高濃度部の画像保存性の尺度とした。数値が100に近いほど優れていることを表す。
【0378】
画像濃度変化率=45℃保存試料の最高濃度/25℃保存試料の最高濃度×100(%)
《画像保存後の色相角habの測定》
各試料を、45℃、55%RHの環境下で、市販の白色蛍光灯を試料表面における照度が500luxとなるように配置し、3日間連続して照射した後、最小濃度部および光学濃度1.0の部分をCIEにより規定された常用光源D65を測色用の光源として、2°視野で分光測色計CM−508d(ミノルタ社製)を用いて測定して求めた。
【0379】
結果を表4に示す。
【0380】
【表4】

【0381】
表4の結果から、本発明の熱現像感光材料は比較試料に比べて、感度が高く低カブリであり、色調も良好であることがわかる。さらに画像保存性についても比較例よりも非常に優れていることがわかる。
【0382】
本発明の試料は、保存時の光や熱の作用による画像の最高濃度およびカブリの劣化が非常に少なく、CIEで規定される色相角habの値が、画像保存後もなお180°を越えかつ270°未満であり、冷調な画像調子を有しており、光や熱に対して画像色調の劣化が著しく小さく、診断画像として適切な出力画像が得られることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、非感光性有機銀塩、ハロゲン化銀、銀イオン還元剤およびバインダーを含有する画像形成層を有する銀塩光熱写真イメージング材料において、該銀イオン還元剤の少なくとも1種が下記一般式(1)で表される化合物であり、該画像形成層を有する面側にイエロー発色性ロイコ染料およびシアン発色性ロイコ染料を含有し、かつ該イエロー発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該イエロー発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.2であり、該シアン発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該シアン発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.5であることを特徴とする銀塩光熱写真イメージング材料。
【化1】

(式中、R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。R13およびR14はそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。Qはベンゼン環上に置換可能な基を表し、nは0〜2の整数を表す。Qが複数の場合、各々のQは同じあっても異なっていても良い。)
【請求項2】
前記イエロー発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該イエロー発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.1であることを特徴とする請求項1に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【請求項3】
前記シアン発色性ロイコ染料と一般式(1)で表される化合物の添加量比(該シアン発色性ロイコ染料のモル数/一般式(1)で表される化合物のモル数)が0.001〜0.3であることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【請求項4】
前記イエロー発色性ロイコ染料が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【化2】

(式中、R1はアルキル基またはシクロアルキル基を表し、R2は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアシルアミノ基を表す。ただし、R1、R2は2−ヒドロキシフェニルメチル基であることはない。R3は水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基を表す。R4はベンゼン環上に置換可能な置換基を表す。)
【請求項5】
前記イエロー発色性ロイコ染料が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【化3】

(式中、R31、R32、R33およびR34は各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。R35は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。)
【請求項6】
前記シアン発色性ロイコ染料が下記一般式(CL)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【化4】

(式中、Rc1、Rc2は水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、−NHCO−Rc6基(Rc6はアルキル基、アリール基、複素環基を表す。)であるか、またはRc1、Rc2は互いに連結して脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環または複素環を形成する基を表し、Acは−NHCO−基、−CONH−基または−NHCONH−基を表し、Rc3は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。また、−Ac−Rc3は水素原子であってもよい。Wcは水素原子または−CONH−Rc5基、−CO−Rc7基または−CO−O−Rc7基(Rc7は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、Rc4は水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはニトリル基を表し、Rc5は−CONH−Rc8基、−CO−Rc8基または−CO−O−Rc8基(Rc8は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、Xcは置換または無置換の、アリール基または複素環基を表す。)
【請求項7】
前記ハロゲン化銀が赤外増感されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【請求項8】
複素芳香族メルカプト化合物および複素芳香族ジスルフィド化合物から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の銀塩光熱写真イメージング材料を熱現像した後の該銀塩光熱写真イメージング材料の色相角habが、180度<hab<270度であることを特徴とする画像形成方法。