説明

銀超微粒子の製造方法および銀超微粒子含有組成物

【課題】安全性が高く、希薄水溶液での経時分散安定性に優れた銀超微粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】銀イオンの還元による銀超微粒子の製造方法であって、水を主体に含有する水性媒体中に少なくとも水溶性銀塩、塩基性化合物、ヒドロキシアルキル化デキストリンを含有せしめた混合物より製造される事を特徴とする銀超微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀超微粒子の製造方法および銀超微粒子含有組成物に関する。詳しくは安全性が高く、希薄水溶液での経時分散安定性に優れた銀超微粒子の製造方法および銀超微粒子含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
平均粒子径が1μm以下の銀超微粒子、特に100nm以下の銀超微粒子は、極めて高い表面エネルギーによる融点低下や、局在化表面プラズモンによる電場増強効果等の特徴を有する事から、導電性材料、表面増強ラマン散乱分光、太陽電池、光輝性塗料、色材、抗菌等の様々な分野での応用が期待されている。
【0003】
銀超微粒子の製造方法として、特開2003−103158号公報(特許文献1)や特開2006−328472号公報(特許文献2)には、市販の高分子分散剤を用い、液相で還元剤を用いて還元する製造方法が開示されている。
【0004】
銀超微粒子を、光輝性塗料、色材、抗菌の用途として用いる場合、人が直接触れる事も多く、特に衣類等の抗菌に用いる場合には、抗菌に用いる銀超微粒子の分散剤も安全である事が好ましく、上記の製造方法では、銀超微粒子を被覆している高分子分散剤や残留還元剤が問題になるという課題があった。
【0005】
このような液相による、いわゆる湿式法とされる銀超微粒子の製造方法は、古くはCarey Leaが1889年に発表した方法(American Journal of Science,Vol.37,P476−491,1889)に端を発する。また、Experiments in Colloid Chemistry,1940,p.19,Hauser,E.A.and lynn,J.E.には、水溶性銀塩、塩基性化合物、デキストリンを用いた製造方法が記載されており、化学大事典にも同様の方法が記載されている。
【0006】
特に、水溶性銀塩、塩基性化合物、デキストリンを用いた銀超微粒子の製造方法は、分散剤と還元剤が食品添加物のデキストリンおよびその分解物である事から、安全性が高いと考えられる。
【0007】
しかしながら、この製造方法により製造された銀超微粒子は、水性媒体中に銀超微粒子が、例えば20質量%含まれる濃厚な銀超微粒子分散液の形態では安定な分散状態を保つ事が出来るが、水性媒体中に銀超微粒子が数質量%未満の希薄な濃度で分散している場合には、経時により沈降してしまうという課題があった。
【0008】
このような希薄な濃度で分散された銀超微粒子は、例えば抗菌用途や光輝性塗料用途に用いられる。配線用途では、銀超微粒子同士を結合させ低い抵抗値で導通を得るために、極めて高密度に厚く銀超微粒子を並べる必要があるため、銀超微粒子を高濃度で含有している必要があるが、抗菌用途では表面に露出した銀超微粒子しか効果を及ぼさないため、厚み方向に銀超微粒子を重ねる事は無意味となる。そのため、例えば100ppm以下の希薄な水溶液に調製し、抗菌効果を付与したい物質に塗布あるいは浸漬等の方法により銀超微粒子を薄く付着させている。また、光輝性塗料用途においても、厚く塗布する事はコストアップに繋がるため、薄く塗布する事が好ましく、配線用途と比較し、1/10以下の薄い濃度で用いられる事が多い。
【0009】
また、特開2008−88480号公報(特許文献3)には、酸化銀とデンプン、デキストリン、アミロース、アミロペクチン等の天然高分子化合物である1,4−グルコシド結合を有する化合物とを水溶媒中、80℃以下で加熱する事により、分散安定性に優れた銀ナノ粒子を得る事が出来る製造方法が開示されているが、副反応として反応容器壁面への析出が生じ生産性が低く、また水溶性銀塩、塩基性化合物、デキストリンを用いて製造された銀超微粒子と同様に、希薄水溶液における経時安定性が悪いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−103158号公報
【特許文献2】特開2006−328472号公報
【特許文献3】特開2008−88480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、安全性が高く、希薄水溶液での経時分散安定性に優れた銀超微粒子を製造する方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1.銀イオンの還元による銀超微粒子の製造方法であって、水を主体に含有する水性媒体中に少なくとも水溶性銀塩、塩基性化合物、ヒドロキシアルキル化デキストリンを含有せしめた混合物より製造される事を特徴とする銀超微粒子の製造方法。
2.前記塩基性化合物が水酸化カリウムである上記1記載の銀超微粒子の製造方法。
3.上記1または2に記載の銀超微粒子の製造方法によって得られた銀超微粒子を含有する銀超微粒子含有組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全性が高く、希薄水溶液での経時分散安定性に優れた銀超微粒子の製造方法を提供する事が出来る。また、希薄水溶液での経時分散安定性に優れた銀超微粒子含有組成物を提供する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明者らは、水を主体に含有する水性媒体中に少なくとも水溶性銀塩、塩基性化合物、デキストリンを含有せしめ、水溶性銀塩由来の銀イオンを還元し銀超微粒子を製造する銀超微粒子の製造方法について鋭意検討した結果、ヒドロキシアルキル化デキストリンを用いて製造する事により、希薄水溶液での経時分散安定性に優れた銀超微粒子が得られる事を見いだした。
【0016】
本発明における希薄水溶液とは、該希薄水溶液に含まれる銀超微粒子の濃度が1〜30000ppm(3質量%以下)の水溶液を示す。
【0017】
本発明の銀超微粒子の製造方法において、水を主体に含有する水性媒体とは、溶媒として、水が少なくとも80質量%以上である事を示し、好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上である事を意味する。水以外に含まれる溶媒としては、アルコール類、グリコール類、グリセリン等の水と混和性の高い有機溶媒を例示する事が出来る。
【0018】
本発明に用いられる水溶性銀塩は、水に対する溶解度の高い硝酸銀塩、フッ化銀塩、過塩素酸銀塩が好ましく、溶解度が高く、副生成物が硝酸塩類となる硝酸銀塩が特に好ましい。また、水を主体に含有する水性媒体中に含有せしめる水溶性銀塩の量は、製造効率の観点から、該水性媒体中に水溶性銀塩、塩基性化合物、ヒドロキシアルキル化デキストリンを含有せしめた混合物1kgに対して、銀イオンに換算して0.1モル以上である事が好ましく、より好ましくは0.5モル以上である。なお上限は、水溶性銀塩および塩基性化合物の溶解濃度の上限に到達する事から、約2.8モル以下とする事が望ましい。なお、銀イオンに換算して0.9モル以上とする場合には、メディアミルを用いて該混合物を混練する事が好ましい。
【0019】
本発明に用いられる塩基性化合物には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム等の強塩基を用いる事が出来る。中でも溶解度の高い水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムが好ましい。特に、硝酸銀塩と水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの組み合わせは、副生成物が食品添加物である硝酸ナトリウムあるいは硝酸カリウムとなるため安全性の観点から好ましい。銀超微粒子の分散安定性の観点より塩基性カリウム塩を用いる事がより好ましく、水酸化カリウムを用いる事が特に好ましい。
【0020】
本発明に用いられる塩基性化合物に水酸化カリウムを用いる場合、その他の塩基性化合物として水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、アンモニア水等の塩基性化合物と併用する事も出来るがその場合、塩基性化合物全体の添加量に対して50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である事が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる塩基性化合物の添加量は、水溶性銀塩由来の銀イオンと当量以上で添加する事が好ましい。当量未満の場合、形成される銀超微粒子の量が減少し銀超微粒子の収率が低下する場合がある。上限は特にないが塩基性化合物の添加量を増やすと、反応後に得られる銀超微粒子を含有する分散液の総量が増加し生産性が低くなるため、2当量以下とする事が望ましい。
【0022】
本発明に用いられるヒドロキシアルキル化デキストリンの調製に当たっては、澱粉に各種アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を作用させてヒドロキシアルキル化し、その後、公知の方法で加水分解処理する方法と、予め澱粉を加水分解し、得られたデキストリンに対して各種アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を作用させてヒドロキシアルキル化する方法の、何れの方法を採用しても良いが、調製の容易さより、先に澱粉のヒドロキシアルキル化を行う事が好ましい。これらの中でも、プロピレンオキサイドを用いて製造されるヒドロキシプロピル化デキストリンが、入手性の観点から好ましい。
【0023】
ヒドロキシアルキル化の程度は、グルコース残基1個あたりの置換基数の平均値で示される置換度として0.01以上であれば良く、0.05以上が好ましい。上限は製造効率の観点から0.30程度である。
【0024】
ヒドロキシアルキル化デキストリンの調製に用いられる原料としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)、ワキシコーンスターチ、サゴ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等、デキストリン製造に用いられる公知の澱粉類を使用する事が出来る。これらの中でも、より優れた分散安定性が得られるワキシコーンスターチおよびタピオカ澱粉を原料としたヒドロキシアルキル化デキストリンが好ましい。
【0025】
また、原料となる澱粉に架橋剤を反応させて架橋構造を付与する事も好ましく行われる。架橋剤には、原料となる澱粉の水酸基と反応し架橋構造を形成し得る試薬を用いる事が出来、例えば、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、アクロレイン、ジエポキシド化合物、ジアルデヒド化合物、リン酸等を用いる事が出来るが、安全性の観点からリン酸を用いる事が好ましい。
【0026】
ヒドロキシアルキル化デキストリンの調製に際し用いられる加水分解方法としては、酸処理、アルカリ処理、加熱処理、酵素処理などを、特に制限はなく単独あるいは組み合わせて用いる事が出来るが、加水分解の度合いを制御しやすいα−アミラーゼに代表される、酵素処理による加水分解処理が好ましい。
【0027】
加水分解の程度は、デキストロース当量として、0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3がより好ましい。
【0028】
このヒドロキシアルキル化デキストリンは、例えばペノンPKW(日澱化学(株)製ヒドロキシプロピル化デキストリン)やアミコールSQ(日澱化学(株)製ヒドロキシプロピル化デキストリン)として入手する事が出来る。
【0029】
本発明に用いられるヒドロキシアルキル化デキストリンの添加量は、水溶性銀塩由来の銀イオン1モルに対して、30gから200gが好ましく、より好ましくは、80gから150gである。
【0030】
本発明において、ヒドロキシアルキル化デキストリンの他に、保護コロイドあるいは分散剤として作用する、銀超微粒子の製造に使用される公知の水溶性高分子化合物を加えても良い。例えばアラビアゴム、デキストラン、デキストリン等の多糖類やゼラチン等の天然高分子化合物、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン等の合成高分子化合物を広く用いる事が出来る。添加量はヒドロキシアルキル化デキストリンの添加量に対し、30質量%以下が好ましい。
【0031】
ヒドロキシアルキル化デキストリンは、その一部が塩基性化合物により加水分解され還元剤として作用するが、本発明の製造方法においては、更に公知の銀イオンを銀に還元する事が出来る還元剤を加えても良い。例えば、銀塩写真用の現像試薬として知られるハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルフォネートカリウム塩、アスコルビン酸またはその塩、無電解鍍金の還元剤として知られる水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン化合物、ホルマリン、ホスフィン酸またはその塩、酒石酸またはその塩を例示する事が出来る。添加量は水溶性銀塩由来の銀イオン1モルに対して、0.3当量以下が好ましい。また、デキストリン、マルトース、グルコースなどの多糖類や二糖類、単糖類を例示する事も出来るが、この場合は水溶性銀塩由来の銀イオン1モルに対して0.1当量以下が好ましい。
【0032】
本発明において、水を主体に含有する水性媒体中に少なくとも水溶性銀塩、塩基性化合物、ヒドロキシアルキル化デキストリンを含有させる事により、銀イオンの還元反応が開始し、銀超微粒子が生成され、銀超微粒子を含有する分散液を得る事が出来る。この銀超微粒子を含有する分散液を本発明における銀超微粒子含有組成物とする事が出来る。例えば、この銀超微粒子含有組成物を水道水で希釈し対象物に塗布する事により、抗菌効果を与える事が出来る。
【0033】
また、銀超微粒子以外の副生成物(例えば硝酸塩や、ヒドロキシアルキル化デキストリン分解物)や余剰物(還元反応終了時に残っている塩基性化合物やヒドロキシアルキル化デキストリン等)を減少させる必要性がある場合には、酢酸などの酸による中和、各種酵素を用いた余剰なヒドロキシアルキル化デキストリンの分解、更には限外濾過や遠心分離等の公知の方法を用いた精製を行う事が出来る。
【0034】
各種酵素を用いた余剰なヒドロキシアルキル化デキストリンの分解は、例えばα−アミラーゼによる1,4−α−結合の不規則切断を例示する事が出来る。具体的には、用いるα−アミラーゼに適したpH・温度に銀超微粒子含有組成物を調整し、α−アミラーゼを加えれば良い。α−アミラーゼは、例えば天野エンザイム株式会社よりビオザイムAやビオザイムF10SDとして市販されている各種α−アミラーゼを用いる事が出来る。
【0035】
限外濾過による精製は、分画分子量が15000以下の限外濾過膜を用いる事が好ましく、分画分子量が3000〜10000の限外濾過膜を用いる事が特に好ましい。必要に応じ、濃縮された銀超微粒子を含有する分散液を希釈し、再度限外濾過を行い精製度合いを高めても良い。
【0036】
遠心分離による精製は、銀超微粒子が沈殿する遠心Gで適宜行えば良く、沈殿助剤として、アルコール類やケトン類を用いても良い。必要に応じ、得られた沈殿物を再分散し、複数回の遠心分離を行い精製度合いを高めても良い。
【0037】
上記の方法で精製された銀超微粒子を含有する分散液を本発明における銀超微粒子含有組成物とする事が出来る。また必要に応じ、粘度調整用の増粘剤としてキサンタンガム、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等、乾燥抑制用の高沸点溶媒としてエチレングリコール、グリセリン等、表面張力調整用の界面活性剤としてアルキル硫酸ナトリウム類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム類、フッ素系界面活性剤等、バインダーとしてゼラチンやポリビニルアルコール等の水溶性樹脂や各種ポリマーラテックスを添加しても良い。
【0038】
バインダーとして用いるポリマーラテックスとしては、単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスの水分散物であるエマルジョンを用いる事が好ましい。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの重合体があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体、ポリエステル、各種ウレタン等がある。この中でもポリエステルラテックス、アクリルラテックスおよびウレタンラテックスを用いる事が好ましい。
【0039】
バインダーとして用いるポリマーラテックスのガラス転移点温度あるいは最低造膜温度は、本発明の銀超微粒子含有組成物が塗布された後に暴露される周辺温度以下である事がバインダー機能の発現という観点から好ましい。ガラス転移点温度あるいは最低造膜温度の下限は特にないが、市販されているポリマーラテックスにおいては、一般的に−40℃以上である。
【0040】
本発明における銀超微粒子とは、平均粒子径が0.3μm以下の銀超微粒子を示す。より好ましくは0.1μm以下であり、特に好ましくは50nm以下である。銀超微粒子の直径の下限は1nmである。銀超微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡下での観察により求める事が出来る。詳細にはポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、銀超微粒子分散液を塗布、乾燥させ、走査型電子顕微鏡にて観察し、一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均し求める事が出来る。
【0041】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【実施例】
【0042】
《実施例1》
<銀超微粒子含有組成物1の作製>
2Lのステンレスビーカーにヒドロキシアルキル化デキストリン(日澱化学(株)製、ペノンPKW)を84.0gと純水860gを加え、約30分間撹拌した。その後、硝酸銀131.8gを加え、更に約30分間撹拌し、完全に溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却を行い、それに塩基性化合物として水酸化ナトリウム43.4gを純水83.9gに溶解した20℃の液を添加し、撹拌回転数400rpmの状態で温度が30℃以上にならないように氷浴中で60分間還元反応を行った。還元反応終了後、酢酸にてpHを7.0に調整し、本発明の銀超微粒子含有組成物1を得た。
【0043】
このヒドロキシアルキル化デキストリンは、ワキシコーンスターチを原料澱粉とし、これにプロピレンオキサイドを反応させ、置換度0.06のヒドロキシプロピル化澱粉とした後、リン酸架橋し、デキストロース当量が1.2となるように酵素により加水分解処理されたヒドロキシプロピル化デキストリンであり、GPCにて測定された平均分子量は約270000である。
【0044】
<銀超微粒子含有組成物2の作製>
銀超微粒子含有組成物1の作製において、ヒドロキシプロピル化デキストリン(日澱化学(株)製、ペノンPKW)の替わりにヒドロキシプロピル化デキストリン(日澱化学(株)製、アミコールSQ)を用いた以外は同様にして、本発明の銀超微粒子含有組成物2を得た。
【0045】
このヒドロキシプロピル化デキストリンは、タピオカ澱粉を原料澱粉とし、これにプロピレンオキサイドを反応させ、置換度0.18のヒドロキシプロピル化澱粉とした後、リン酸架橋し、デキストロース当量が4.9となるように酵素により加水分解処理されたものであり、GPCにて測定された平均分子量は約24000である。
【0046】
<銀超微粒子含有組成物3の作製>
銀超微粒子含有組成物1の作製において、水酸化ナトリウム43.4gの替わりに水酸化カリウム60.9gを用いた以外は同様にして、本発明の銀超微粒子含有組成物3を得た。
【0047】
<銀超微粒子含有組成物4の作製>
銀超微粒子含有組成物1の作製において、ヒドロキシアルキル化デキストリンの替わりにGPCにて測定された平均分子量が約16000の焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.3)を用いた以外は同様にして、比較例の銀超微粒子含有組成物4を得た。
【0048】
<銀超微粒子含有組成物5の作製>
平均粒径が1.5μmの酸化銀10gとβ−シクロデキストリン10gを純水980gに加え、撹拌回転数400rpmで温度70℃に保持し、1時間反応を行い、比較例の銀超微粒子含有組成物5を得た。反応容器内部の壁面には銀超微粒子ではない膜様の銀が付着していた。
【0049】
<分散安定性の評価>
このようにして得られた銀超微粒子含有組成物1〜5の希薄水溶液における分散安定性を評価するために、銀超微粒子含有組成物1〜5を銀濃度が100ppmとなるように水道水にて希釈し、透明ガラス容器に各100gずつに小分けし、常温状態で2ヶ月間放置し、沈降状態を確認した。評価は以下の基準で実施した。結果を表1に示す。
○:沈降物はほとんど認められなかった。
△:僅かに沈降物が発生していた。
×:沈降物が発生していた。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より明らかなように、本発明により希薄水溶液における銀超微粒子の分散安定性が優れた銀超微粒子含有組成物を得る事が出来る事が判る。
【0052】
《実施例2》
<銀超微粒子含有組成物6の作製>
2Lのステンレスビーカーにヒドロキシアルキル化デキストリン(日澱化学(株)製、ペノンPKW)を84.0gと純水860gを加え、約30分間撹拌した。その後、硝酸銀131.8gを加え、更に約30分間撹拌し、完全に溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却を行い、それに塩基性化合物として水酸化カリウム60.9gを純水83.9gに溶解した20℃の液を添加し、撹拌回転数400rpmの状態で温度が30℃以上にならないように氷浴中で60分間還元反応を行った。還元反応終了後、酢酸にてpH=5.6に調整した後、ビオザイムF10SD(天野エンザイム(株)製)を200mg添加し45℃で1時間撹拌し、残留しているデキストリンを低分子化した。その後、遠心分離により銀超微粒子と上澄み液を綺麗に分離させ、上澄み液を廃棄した。残った銀超微粒子を再分散し、銀濃度が2質量%の本発明の銀超微粒子分散液6を得た。
【0053】
<銀超微粒子含有組成物7の作製>
銀超微粒子含有組成物6の作製において、ヒドロキシアルキル化デキストリンの替わりに焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.3)を用いた以外は同様にして、比較例の銀超微粒子含有組成物7を得た。
【0054】
<分散安定性の評価>
このようにして得られた銀超微粒子含有組成物6および7の分散安定性を評価するために、透明ガラス容器に各100gずつに小分けし、50℃の状態で2ヶ月間放置し、沈降状態を確認した。評価は以下の基準で実施した。結果を表2に示す。
○:沈降物はほとんど認められなかった。
△:僅かに沈降物が発生していた。
×:沈降物が発生していた。
【0055】
【表2】

【0056】
表2より明らかなように、本発明により希薄水溶液における銀超微粒子の分散安定性が優れた銀超微粒子含有組成物を得る事が出来る事が判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンの還元による銀超微粒子の製造方法であって、水を主体に含有する水性媒体中に少なくとも水溶性銀塩、塩基性化合物、ヒドロキシアルキル化デキストリンを含有せしめた混合物より製造される事を特徴とする銀超微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記塩基性化合物が水酸化カリウムである請求項1記載の銀超微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の銀超微粒子の製造方法によって得られた銀超微粒子を含有する銀超微粒子含有組成物。