説明

銅亜鉛スズカルコゲナイドナノ粒子

本発明は、ケステライト(銅亜鉛スズ硫化物)のナノ粒子および銅亜鉛スズセレン化物ナノ粒子、それらのインクおよびデバイス、ならびにそれらを作製するための方法に関する。このナノ粒子は、薄膜太陽電池用途におけるp型半導体としての吸収層に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)に基づいて優先権を主張するものであり、2009年5月21日にそれぞれ出願され、あらゆる目的のために、全体がそれぞれ本明細書の一部として参照により援用される、以下の米国仮特許出願第61/180,179号、同第61/180,181号、同第61/180,184号、および同第61/180,186号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、銅亜鉛スズカルコゲナイドナノ粒子、それらの組成物、ならびに薄膜およびデバイスにおけるそれらの使用に関する。このナノ粒子は、太陽電池における吸収層に有用なp型半導体である。
【背景技術】
【0003】
太陽電池(光電池またはPV電池とも呼ばれる)、および太陽電池モジュールは、太陽光を電気に変換する。これらのデバイスは、太陽の可視光および近可視光エネルギーを使用可能な電気エネルギーに変換するために、半導体の特定の電子特性を用いる。この変換は、半導体材料中に放射エネルギーが吸収されて、いくつかの価電子が遊離されることによって、電子正孔対が生成されることから起こる。当該技術分野で使用される際の用語「バンドギャップエネルギー」、「光学バンドギャップ」および「バンドギャップ」は、半導体材料に電子正孔対を生成するのに必要なエネルギー(通常、価電子帯から伝導帯へと電子を励起するのに必要な最小エネルギー)を指す。
【0004】
太陽電池は、従来より、比較的コストがかかる製造プロセスで、光吸収性の半導体材料としてシリコン(Si)を用いて作製されてきた。太陽電池をより経済的に採算の合うものにするために、銅−インジウム−ガリウム−スルホ−ジ−セレニド、Cu(In,Ga)(S,Se)2(CIGSとも呼ばれる)などの薄膜の光吸収性の半導体材料を低コストで利用できる太陽電池デバイス構造が開発されてきた。この種の太陽電池は、通常、裏面電極層とn型接合パートナー層との間に挟まれたp型吸収層を有する。裏面電極層がMoであることが多い一方、接合パートナーはCdSであることが多い。限定はされないが、アルミニウムをドープされた酸化亜鉛などの透明導電性酸化物(TCO)が、接合パートナー層上に形成され、通常、透明電極として使用される。CIS系太陽電池は、電力変換効率が19%を超えることが実証されている。
【0005】
ナノ結晶CIGSの開発およびナノ結晶CIGSからの膜の製造は、多くの論文および特許出願において報告されてきた。例えば、特許文献1には、約200℃より高い標準沸点および約5nm〜約1000nmの平均粒径を有するアルキルアミン溶媒の存在下で、金属構成要素をカルコゲナイド元素前駆体と反応させることによる、カルコパイライトナノ粒子の製造が記載されている。反応温度は、265〜280℃に及んだ。特許文献2には、金属カルコゲナイドナノ粒子と揮発性キャッピング剤とを含むコロイド懸濁液から、基板上に金属カルコゲナイド半導体材料の膜を形成する方法が開示されている。このコロイド懸濁液は、金属塩をカルコゲナイド塩と反応させて金属カルコゲナイドを沈殿させ、金属カルコゲナイドを回収し、金属カルコゲナイドを揮発性キャッピング剤と混合することによって作製されるが、特許文献3には、非球形粒子のインクを含む、非球形粒子から形成される半導体薄膜が開示されている。
【0006】
薄膜太陽電池におけるCIGSの将来性が実証されているにもかかわらず、インジウムおよびセレンの毒性および希少性が、商用のデバイスにおけるCIGSの広範な使用および受け入れの大きな妨げとなっている。薄膜太陽電池の吸収層の他の選択肢は、銅亜鉛スズ硫化物、Cu2ZnSnS4(CZTS)である。銅亜鉛スズ硫化物は、約1.5eVの直接遷移および104cm-1より高い吸収係数を有する。さらに、CZTSは、毒性元素または希少元素を全く含まない。CIGSの結晶はカルコパイライト構造を有するが、CZTS結晶は、c軸に沿って重ねる(doubling)ことでカルコパイライト構造に関連するケステライト構造に入っている。
【0007】
現在、CZTS系太陽電池の開発は、CIGS系太陽電池に大きく遅れをとっている。最初のCZTSヘテロ接合PV電池が1996年に報告されたが、CZTS電池の現在の記録効率は9.6%である。これまでに、CZTSの薄膜は、Cu、SnS、およびZnS前駆体のスパッタリング、ハイブリッドスパッタリング、パルスレーザー堆積、ハロゲン化物およびチオ尿素錯体の噴霧熱分解、電着/加熱硫化(thermal sulfurization)、電子ビームCu/Zn/Sn/加熱硫化、ゾル・ゲル法の後に加熱硫化ならびに印刷された前駆体によって作製されてきた。Cu−Snカルコゲナイド(SまたはS−Se)、Zn−カルコゲナイド粒子、および過剰なカルコゲンを溶解させたヒドラジンベースのスラリーの調製を含む、CZTSに対するハイブリッド溶液−粒子法(hybrid solution−particle approach)が報告されている。ヒドラジンは、Merck Indexに「激しい毒物」と記載されている、反応性の高い、爆発の可能性のある溶媒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第08/021604号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/037832号パンフレット
【特許文献3】国際公開第09/051862号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、改良されたCZTS粒子、ならびにそれから作製された組成物、膜およびデバイスの開発が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本発明では、銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含有する四元ナノ粒子が提供され、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0011】
別の実施形態において、本発明では、銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含有する複数の四元ナノ粒子を含有する組成物が提供され、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
さらなる実施形態において、本発明では、有機溶媒と、銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含有する複数の四元ナノ粒子を含有する組成物とを含有するインクが提供され、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0013】
さらに別の実施形態において、本発明では、銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含有する複数の四元ナノ粒子を含有する組成物から製造される膜が提供され、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに別の実施形態において、本発明では、上述した膜を含有する電子デバイスが提供される。
【0014】
さらに別の実施形態において、本発明では、(i)銅、亜鉛およびスズの金属塩および/または錯体と、(ii)1つまたは複数のカルコゲン前駆体と、(iii)キャッピング剤との反応混合物を溶媒中で形成する工程と、(b)反応混合物を加熱してナノ粒子を形成する工程とによって、銅−亜鉛−スズ−カルコゲナイド四元ナノ粒子を作製するための方法が提供される。
【0015】
さらに別の実施形態において、本発明では、銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含有する複数の四元ナノ粒子を含有する組成物の層を基板上に堆積する工程と、堆積された組成物の層を乾燥させて層から溶媒を除去する工程とによって膜を形成する方法が提供され、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
本発明は、天然存在度が高くかつ毒性の低い元素をベースとする環境的に持続可能なナノ結晶半導体およびこのような半導体のインクの開発に対する必要性に対処するものである。さらに、このような材料をベースとする薄膜およびデバイスが必要とされている。化石燃料の供給量の低下および世界的なエネルギー需要の高まりを考慮すると、太陽電池に使用するのに適した薄膜吸収層の製造に有用な、環境的に持続可能なナノ結晶半導体が特に望ましい。より低温でアニール可能なナノ結晶材料も特に望ましい。ナノ粒子合成の際、適度な反応温度、短い反応時間、ならびに単離および精製プロセスの工程が最小限であることが、コストを下げ、エネルギーを節約し、商業的に実現可能なプロセスを開発するために望ましい。特に望ましいのは、単離または精製工程を含まないナノ粒子合成プロセスであり、このプロセスでは、合成したままの反応混合物が比較的毒性の低い溶媒および試薬を用いて、インクまたはインク前駆体として働き得る。
【0017】
さらに、ナノ結晶半導体、およびこのようなナノ粒子の合成経路が対象となっているが、その理由は、このようなナノサイズの粒子は、量子サイズ効果、サイズ依存性の化学反応性、光非線形性、および効率的な光電子放出などの多くの独特の生理化学的特性を有するためである。ナノ結晶半導体の膜は、より大きな粒子から作製される膜よりかなり低いアニール温度を有し、薄膜太陽電池の吸収層の前駆体膜として機能し得る。サーマルバジェットの低減に関連する独自の省エネルギーに加えて、堆積温度の低下により、ソーダ石灰ガラス、さらには場合によりポリマーベースの基板などのより低コストの基板を使用可能であると同時に、基板の外方拡散(out diffusion)を軽減し、熱応力を和らげる。
【0018】
本発明の様々な特徴および/または実施形態を、後述のとおりに図面で説明する。これらの特徴および/または実施形態はあくまでも典型例であり、図面に含めるためのこれらの特徴および/または実施形態の選択は、図面に含まれていない主題(subject matter)が、本発明を実施するのに適していないこと、または図面に含まれていない主題が、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲から除外されることを示すものとして解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1−1】実施例1で作製されるナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(「TEM」)を示す。
【図1−2】実施例1で作製されるナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(「TEM」)を示す。
【図1−3】実施例1で作製されるナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(「TEM」)を示す。
【図1−4】実施例1で作製されるナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(「TEM」)を示す。
【図2】実施例2で作製されるナノ粒子のTEMを示す。
【図3】太陽電池における層のスタックの斜視図を示す。
【図4】実施例15で作製される膜の性能データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、銅、亜鉛、スズおよび硫黄および/またはセレンを含有する四元ナノ粒子に関し、これはある実施形態において用語「CZTS」と呼ばれ、Cu2ZnSnS4などの化合物であり得る。本明細書に含まれる他の化合物の例は、「CZTSe」(Cu2ZnSnSe4と呼ばれる);ならびに「CZTS/Se」(Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4およびCu2ZnSnSxSe4-x(式中、0≦x≦4)を含むCu2ZnSn(S,Se)4の全ての可能な組合せを包含する)である。ここで、用語「CZTS」、「CZTSe」および「CZTS/Se」は、ある範囲の化学量論量を有する銅亜鉛スズ硫化物/セレン化物半導体、例えば、式Cu1.94Zn0.63Sn1.34で表されるものをさらに包含する。すなわち、元素の化学量論量は、2Cu:1Zn:1Sn:4S/Seの比率(すなわち、銅対亜鉛対スズ対カルコゲンのモル比が約2:1:1:4である)に厳密に限定されない。他の実施形態において、Cu/(Zn+Sn)のモル比は1.0未満であることがあり、または亜鉛対スズのモル比は1より大きいことがある。銅の含量が少ないCZTS太陽電池では、例えば、Cu/(Zn+Sn)のモル比は1.0未満であるが、高効率のデバイスについては、亜鉛対スズのモル比が1より大きいのが望ましいことが多い。また、化合物は、二元半導体、カルコゲン元素、ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される少量の様々なドーパントをドープされていてもよい。
【0021】
CZTSは、ケステライト構造によって結晶化し、ひいてはケステライト構造を有し、ここで、用語「ケステライト」は、鉱物のケステライトおよびスタナイト系に属する材料を指す。ケステライトは、標準式Cu2ZnSnS4で表される、I4−またはI4−2m空間群のいずれかの結晶化合物を指す鉱物名である。ただし、Feなどの他の金属が、Znの代わりになることが多い。ケステライトは、Znの大部分がFeで置換されているとき、スタナイトと呼ばれる。ケステライトは、2a(0,0,0)位および2c(0,1/2,1/4)位にCuを有し、2d(1/2,0,1/4)位にZnに有するI4−形態でのみ存在するとかつては考えられていたが、ZnがCu部位を占め、その逆もあり得る無秩序を呈し、対称性がI4−2mにまで低くなっていることが示されている。CuおよびZnのx線散乱因子が類似しているため、カチオン秩序の違いはx線回折で見分けがつかない。カチオン秩序の違いは、中性子回折で見分けられる。この経路によって製造される材料では、ケステライト構造と一致し、かつ一硫化物および酸化物と異なるピークを含む回折パターンが得られる。同様に、X線吸収分光法(XAS)が、ケステライト形態に独特の、一硫化物および酸化物と異なるスペクトル的特徴を示す。XASの場合、ケステライト相にわずかなCu原子およびZn原子が得られる。これは、全元素化学量論量とともに、ケステライト相におけるCu対Znの比率の決定を可能にする。これは、凝集体において同じ元素組成比を生じる別個の硫化物相の混合物と明らかに見分けられる。鉱物のケステライトおよびスタナイト系は、Hall、S.R.ら、Canadian Minerologist、16(1978)131〜137などの出典にさらに説明されている。
【0022】
本発明の一実施形態において、銅、亜鉛、スズおよびカルコゲンを含有するナノ粒子が提供され、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。本明細書において使用される際の用語「カルコゲン」は第16族元素を指し、用語「金属カルコゲナイド」または「カルコゲナイド」は、金属と第16族元素とを含む半導体材料を指す。本明細書において、用語「二元金属カルコゲナイド」は、1種の金属を含むカルコゲナイド組成物を指す。用語「三元金属カルコゲナイド」は、2種の金属を含むカルコゲナイド組成物を指す。用語「四元金属カルコゲナイド」は、3種の金属を含むカルコゲナイドを指す。用語「多元金属カルコゲナイド」は、2種以上の金属を含むカルコゲナイド組成物を指し、三元および四元金属カルコゲナイド組成物を包含する。金属カルコゲナイドは、光起電用途に有用な候補材料であるが、その理由は、これらの化合物の多くが、十分に地表太陽スペクトル(terrestrial solar spectra)の範囲内の光学バンドギャップ値を有するためである。
【0023】
本明細書において提供される銅、亜鉛、スズおよびカルコゲンの粒子は、約1nm〜約1000nmの最長寸法を有するナノ粒子である。本明細書において、用語「ナノ粒子」、「ナノ結晶」および「ナノ結晶粒子」は、同義的に用いられて、結晶構造ならびに球体、棒状体、線、管、フレーク、ウィスカ、リング、ディスクおよび三角形を含む様々な形状を有する粒子を指し、これは約1nm〜約1000nm、好ましくは、約5nm〜約500nm、最も好ましくは約10nm〜約100nmの最長寸法を特徴とし、ここで、接頭語「ナノ」は、ナノ範囲内のサイズ(上述したような)を指す。ナノ粒子の最長寸法は、最長寸法に沿って端から端までのナノ粒子の測定値と定義され、この寸法は、粒子の形状に応じて変わることとなる。例えば、楕円体またはほぼ楕円体の粒子の場合、最長寸法は、粒子によって画定される円の直径となる。他の不規則な形状の粒子(例えば、角張った形状を有し得る結晶)の場合、最長寸法は、最長寸法が粒子の表面の2点間の最も遠い距離であるような対角線または辺であり得る。ナノ粒子の最長寸法を決定するための方法は、「Nanoparticles:From Theory to Application」、G.Schmid、(Wiley−VCH、Weinheim、2004);および「Nanoscale Materials in Chemistry」、K.J.Klabunde、(Wiley−Interscience、New York、2001)などの出典にさらに説明されている。本発明のある実施形態において、本明細書において提供されるナノ粒子の形状は三角形である。
【0024】
本発明の別の実施形態において、提供される銅、亜鉛、スズおよびカルコゲンのナノ粒子は、粒子の表面に物理的に吸収または吸着されるか、あるいは化学結合された基または配位子であり得るキャッピング剤を組み込んでいることがある。キャッピング剤は、粒子の単層またはコーティングの1種として機能し、分散助剤としても働き得る。配位子がキャッピング剤として機能する場合、金属錯体が形成されることが多く、その際、金属が分子またはアニオンの周囲のアレイに結合される。中心の原子またはイオンに直接結合される配位子内の原子は、ドナー原子と呼ばれ、窒素、酸素、リンまたは硫黄を含むことが多い。配位子は、金属原子に少なくとも一対の電子を提供する。本明細書において使用するのに適したキャッピング剤の例としては、以下のもののうちのいずれか1つまたは複数が挙げられる:
(a)窒素系、酸素系、硫黄系、またはリン系の官能基などの官能基を含有する有機分子;
(b)ルイス塩基(様々な実施形態において、ルイス塩基は、大気圧における沸点が約150℃以上であるように選択することができ、および/または有機アミン、ホスフィンオキシド、ホスフィン、チオール、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる);
(c)電子対供与基、または電子対供与基に転化可能であり、かつ大気圧における沸点が約150℃未満の基;
(d)第一級、第二級または第三級アミン基またはアミド基、ニトリル基、イソニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アジド基、チオ基、チオレート基、スルフィド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスフィン基、亜リン酸基、ヒドロキシル基、アルコレート基、フェノレート基、エーテル基、カルボニル基およびカルボン酸基;
(e)カルボン酸、カルボン酸無水物、およびグリシジル基;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、酢酸エチル、ブタノール、ピリジン、エタンチオール、テトラヒドロフラン、およびジエチルエーテル;
(f)オレイルアミンなどの、ナノ粒子が形成される溶媒;および/または
(g)アミン、アミド、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、チオカルボニル、チオレート、硫化物、スルフィネート、スルホネート、ホスフェート、ホスフィン、ホスファイト、ヒドロキシル、アルコレート、フェノレート、エーテル、カルボニル、カルボキシレート、カルボン酸、カルボン酸無水物、グリシジル、およびそれらの混合物からなる群の構成要素。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は、上述した複数のナノ粒子を含有する組成物を提供する。このような組成物は、例えば、粒子の平均最長寸法が、約10nm以下の標準偏差で約10nm〜約100nmの範囲にあるような粒径分布を有し得る。
【0026】
本明細書において提供されるナノ粒子は、有機溶媒などの溶媒に溶かした反応混合物中で作製することができる。好適な有機溶媒としては、ルイス塩基、およびルイス塩基を形成可能な有機溶媒が挙げられる。溶媒の目的は、反応の媒体を提供し、ナノ粒子の凝集を最小限に抑えるかまたは防ぐのを助けることである。溶媒およびキャッピング剤の両方として働く好適な有機溶媒としては、ルイス塩基性官能基を含む溶媒が挙げられる。ルイス塩基性溶媒は、必ずしもではないが多くの場合、ナノ粒子の表面を覆う調整媒体(coordinating media)をうまく提供し、ナノ粒子が凝集するのを防ぐため、上記の目的に有用である。好適な有機溶媒のいくつかの具体的な種類としては、有機アミン、ホスフィンオキシド、ホスフィンおよびチオールが挙げられる。好ましい溶媒は、アルキルアミンであり、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、およびトリオクチルアミンからなる群がより好ましく、オレイルアミンが特に好ましい。本明細書において使用するのに適した溶媒としては、大気圧における沸点が約150℃以上の溶媒が挙げられる。例えば、大気圧における沸点が約150℃以上のルイス塩基性溶媒も有用であり、大気圧における沸点が約150℃以上の、有機アミン、ホスフィンオキシド、ホスフィンおよびチオールからなる群がより好ましく、大気圧における沸点が約150℃以上のアルキルアミンが特に好ましい。
【0027】
銅、亜鉛およびスズの金属塩および/または錯体が、銅、亜鉛およびスズの供給源として用いられる。これらとしては、1つまたは複数の有機配位子の銅錯体、亜鉛錯体、およびスズ錯体が挙げられる。好適な金属塩および/または錯体は、銅(I)、銅(II)、亜鉛(II)、スズ(II)およびスズ(IV)と、有機および/または無機対イオンおよび配位子との塩ならびに錯体も含む。銅(I)、銅(II)、亜鉛(II)、スズ(II)およびスズ(IV)ハロゲン化物、アセテート、および2,4−ペンタンジオネートを含む金属塩および/または錯体が特に好ましい。好適なカルコゲン供給源または前駆体は、硫黄元素、セレン元素または混合物である。カルコゲン元素をカルコゲン供給源として用いることの利点は、カルコゲン元素が、反応混合物をさらに精製せずにそのままインクまたはインク前駆体として用いるのを容易にすることである。有機配位子との銅(I)、銅(II)、亜鉛(II)、スズ(II)およびスズ(IV)錯体が、反応混合物をインクまたはインク前駆体として用いることとなる用途に好ましい。アセテートおよび2,4−ペンタンジオネートの、銅(I)、銅(II)、亜鉛(II)、スズ(II)およびスズ(IV)錯体が、この用途に特に好ましい。
【0028】
他の好適な銅塩および/または錯体としては、銅(I)ハロゲン化物、銅(I)アセテート、銅(I)2,4−ペンタンジオネート、銅(II)ハロゲン化物、銅(II)アセテート、および銅(II)2,4−ペンタンジオネートからなる群から選択されるものが挙げられ;亜鉛塩および/または錯体は、亜鉛(II)ハロゲン化物、亜鉛(II)アセテート、および亜鉛(II)2,4−ペンタンジオネートからなる群から選択され;スズ塩および/または錯体は、スズ(II)ハロゲン化物、スズ(II)アセテート、スズ(II)2,4−ペンタンジオネート、スズ(IV)ハロゲン化物、スズ(IV)アセテート、およびスズ(IV)2,4−ペンタンジオネートからなる群から選択される。
【0029】
上述したように、本明細書において使用される際の用語「金属錯体」は、金属が分子またはアニオンの周囲のアレイに結合されている組成物を指し、通常、「配位子」または「錯化剤」と呼ばれる。中心の原子またはイオンに直接結合される配位子内の原子は、ドナー原子と呼ばれ、窒素、酸素、リンまたは硫黄を含むことが多い。配位子は、金属原子に少なくとも一対の電子を提供する。本明細書において、用語「1つまたは複数の有機配位子の錯体」は、金属アセテートおよび金属アセチルアセトネート(「2,4−ペンタンジオネート」とも呼ばれる)を含む少なくとも1つの有機配位子を含む金属錯体を指す。用語「金属塩」は、金属カチオンと無機アニオンとがイオン結合によって結合された組成物を指す。無機アニオンの関連する種類は、酸化物、硫化物、カーボネート、サルフェートおよびハロゲン化物を含む。
【0030】
加熱マントル、加熱ブロック、または油/砂浴を用いて、反応混合物を入れたフラスコを加熱することができる。あるいは、マイクロ波放射線を用いて加熱を行ってもよい。通常、マグネチックスターラーをフラスコの中に入れて、反応混合物が十分に混合された状態を保つ。任意選択的に、合成の後、1つまたは複数の非溶媒または貧溶媒を用いた析出によって、非結合(non−ligated)溶媒および反応の副生成物からナノ粒子を分離させてもよい。ナノ粒子の析出のために好ましい貧溶媒は、有機プロトン性溶媒またはそれらの混合物であり、メタノールおよびエタノールが特に好ましい。
【0031】
本発明の方法の別の実施形態において、個々の銅、亜鉛およびスズの金属塩をオレイルアミンなどの溶媒に別々に溶解させて溶液を形成する。この溶液を混合して混合物を形成し、約100℃に保つ。この混合物に、硫黄などのカルコゲン元素を溶媒に溶かした溶液を添加する。温度を230℃まで上げ、この温度で反応物の色が薄茶色から黒色に変化する。これはナノ粒子が形成されたことを示す。反応物の加熱を約10分後に止め、系を1時間冷ます。次に、エタノールなどの有機極性プロトン性貧溶媒または溶媒と貧溶媒との混合物を用いて反応物をクエンチし、溶液を遠心分離させる。固形物が管の底に移動したら、上澄みをデカントして固形物を回収する。この固形物を、溶媒または溶媒の混合物中で所望の濃度で再懸濁させる。
【0032】
本発明の方法の別の実施形態において、反応物の成分を順に連続して添加する。すなわち、個々の銅、亜鉛およびスズの塩または錯体を溶媒に別々に溶解させて溶液を形成する。カルコゲン元素を溶媒に溶解させてカルコゲン溶液を形成する。スズ溶液と亜鉛溶液とを混合して二元溶液を形成する。銅溶液を二元溶液と混合して三元溶液を形成する。次の工程で、三元溶液を、アルゴンの存在下で160〜230℃に加熱する。上記の範囲から選択した温度で、カルコゲン溶液を三元溶液と混合して四元溶液を形成する。次に、四元溶液を冷却して銅亜鉛スズ硫化物ナノ粒子を形成する。有機溶媒などの非溶媒を添加することによって、銅亜鉛スズ硫化物ナノ粒子を溶媒から分離させる。有機溶媒は、極性プロトン性有機溶媒あるいは極性プロトン性有機溶媒と非極性または極性非プロトン性有機溶媒との二元混合物であってもよい。上澄みを遠心分離およびデカントすることによって、銅亜鉛スズ硫化物ナノ粒子を有機溶媒から分離させる。
【0033】
本発明の方法の別の実施形態において、個々の銅、亜鉛およびスズの金属塩および/または錯体を、溶媒とキャッピング剤との混合物に順に別々に添加して反応混合物を形成した後、カルコゲン前駆体を反応混合物に添加することができる。溶媒およびキャッピング剤が混合物中に一緒に存在する場合、キャッピング剤は、通常、ルイス塩基であるように選択されることとなり、溶媒は、通常、ルイス塩基でないか、またはキャッピング剤よりナノ粒子に弱く結合するルイス塩基であるように選択されることとなる。
【0034】
本発明において、通常の温度より低い温度でナノ粒子の形成を得ることが好都合であり、約130〜約300℃の温度が好ましく、約160〜約230℃がより好ましく、約160〜約200℃が最も好ましい。約160〜約200℃で、本明細書に記載の方法では、約10nm〜約100nmのサイズ範囲の最長寸法を有するナノ粒子が得られることが多い。こうした低温には、大気圧または近大気圧で手順を実施する利点、およびより低沸点の溶媒およびキャッピング剤を用いる利点が得られる。この結果、アニールされた膜における炭素系不純物が少なくなる。約160〜約230℃のより好ましい温度は、金属カルコゲナイドナノ粒子の製造で通常報告される温度より低いため、エネルギー節約にもなる。
【0035】
特に金属酸化物が形成される可能性があるため、カルコゲナイドナノ粒子の合成中に反応媒体に酸素および/または水が存在しないようにするのが望ましい。無酸素雰囲気を実現するために特別な技術および設備が利用可能である。このため、例えば、冷却器および丸底フラスコに接続されたシュレンクラインまたは真空ラインを用いることで、無酸素雰囲気中またはグローブボックス内において、溶液中で反応物を調製することができる。しかしながら、例えば溶媒または前駆体溶液を反応フラスコに添加する際に、系に酸素が入るのがやむを得ない場合、さらなる工程に進む前に、不活性ガス(例えば、N2、Ar、またはHe)で系を脱気および/またはパージして酸素を除去する必要があることがある。本明細書において無酸素雰囲気条件下で反応を行うことが有用であり得るが、このような無酸素環境は、本明細書において必須ではなく、本発明の教示の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明者らは、本明細書において限られた条件下でのCZTSナノ粒子の形成を報告しているが、酸素および水の存在を必ずしも除外しなかった。
【0036】
本明細書に記載の方法は、合成プロセスが望ましく簡素化されていることを特徴とする。より具体的には、開示される反応は非常に速いため、構成要素の前駆体が添加された後数分以内に結晶CZTSナノ粒子が形成される。さらに、ナノ粒子の合成は、近大気圧で適度な温度で行われる。合成は、酸素の存在を許容する。すなわち、いくつかの場合、ナノ粒子がアルゴンの雰囲気下で形成されたが、前駆体溶液は空気中で調製され、脱気されなかった。さらに、カルコゲナイドナノ粒子の合成に用いられる前駆体は一般的に入手可能であり、毒性が低く、取り扱いが容易である。最後に、合成方法に必要な設備が一般的に入手可能であり、例えば、高温および高圧を得るための特別な設備が不要である。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、本明細書に記載の方法によって製造されるナノ粒子は、非常に単分散性である。
【0038】
本明細書に記載の方法を用いて、四元金属カルコゲナイドCZTSナノ粒子を合成することができる。本明細書において作製されるCZTSナノ粒子は、非極性溶媒中に安定した分散体を形成する狭いサイズ分布を有する結晶粒子を含む。本発明の方法によって作製される粒子を、XRD、TEM、ICP−MS、EDAX、DLS、およびAFMによって特性評価した。DLSは、各カテゴリーで非常に狭いサイズ分布を示した(10±10nmおよび50±10nmなど)。XRDは、ケステライト構造の存在を確認した。ICPおよびEDAXは、反応物の逐次添加および前駆体としてのカルコゲンの使用により、同時添加またはチオ尿素などの、カルコゲンの他の供給源を用いる反応条件と比較して、より正確なCZTS/Seの化学量論量が得られることを示した。
【0039】
本明細書に記載の方法を用いて、ケステライト構造および約1nm〜約1000nmの平均最長寸法を特徴とする四元ナノ粒子を含む組成物、あるいは銅、スズ、亜鉛および1つまたは複数のカルコゲンを含み、かつ約1nm〜約1000nmの平均最長寸法を特徴とする四元ナノ粒子を含む組成物を作製することができる。
【0040】
本明細書に記載の方法を用いて、銅、亜鉛、スズ、カルコゲンおよびキャッピング剤を含有するナノ粒子を作製することができ、ここで、カルコゲンは、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、ナノ粒子は、約1nm〜約1000nmの最長寸法を有する。本発明の方法の他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有するナノ粒子を作製することができることを特徴とする:
ケステライト構造;
銅対亜鉛対スズ対カルコゲンのモル比が約2:1:1:4である;
銅対亜鉛およびスズのモル比が1未満である;
亜鉛対スズのモル比が1より大きい;
最長寸法が約10nm〜約100nmである;
ナトリウムなどのドーパントが存在する;
キャッピング剤がルイス塩基を含む;
キャッピング剤がルイス塩基を含み、ここで、ルイス塩基の大気圧における沸点が約150℃以上であり、ルイス塩基は、有機アミン、ホスフィンオキシド、ホスフィン、チオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される;
キャッピング剤がオレイルアミンを含む;
キャッピング剤が、大気圧における約150℃未満の沸点を有し、少なくとも1つの電子対供与基または電子対供与基に転化可能な基を含む;および/または
キャッピング剤が、アミン、アミド、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、チオカルボニル、チオレート、硫化物、スルフィネート、スルホネート、ホスフェート、ホスフィン、ホスファイト、ヒドロキシル、アルコレート、フェノレート、エーテル、カルボニル、カルボキシレート、カルボン酸、カルボン酸無水物、グリシジル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
本明細書に記載の方法を用いて上述した複数のナノ粒子を含有する組成物を作製することもでき、このようなナノ粒子の組成物は、約10nm以下の標準偏差で約10nm〜約100nmの平均最長寸法を有し得る。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、(上述した、および/または上述した方法によって作製される)CZTSナノ粒子および1つまたは複数の有機溶媒を含有するインクをさらに提供する。様々な実施形態において、出発物質となる金属構成要素と溶媒との反応混合物をさらに精製せずにそのままインクとして用いることができる。任意選択的に、反応混合物から析出した後、ナノ粒子を溶媒または溶媒の混合物中で所望の濃度で再懸濁させてインクを得てもよい。好ましい有機溶媒は、芳香族化合物、アルカン、ニトリル、エーテル、ケトン、エステルおよび有機ハロゲン化物またはそれらの混合物を含み、トルエン、p−キシレン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびアセトニトリルが特に好ましい。溶媒中のナノ粒子の好ましい濃度は、約1重量%〜約70重量%であり、約5重量%〜約50重量%がより好ましく、約10重量%〜約40重量%が最も好ましい。
【0043】
CZTSナノ粒子および有機溶媒に加えて、インクは、任意選択的に、限定はされないが、分散剤、界面活性剤、ポリマー、バインダー、架橋剤、乳化剤、消泡剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、増粘剤、膜調整剤、酸化防止剤、流動剤、均展剤、および腐食防止剤、ならびにそれらの混合物を含む1つまたは複数の化学物質をさらに含み得る。好ましい添加剤は、オリゴマーまたはポリマーバインダーおよびそれらの混合物ならびに/あるいは界面活性剤である。好ましくは、オリゴマーまたはポリマーバインダーは、約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、さらにより好ましくは約5重量%以下の量で存在し、約2重量%以下が最も好ましい。これらのオリゴマーまたはポリマーバインダーは、直鎖状、分枝状、櫛形/ブラシ形、星形、超分枝および/または樹枝状構造を含む様々な構造を有していてもよい。
【0044】
オリゴマーまたはポリマーバインダーの好ましい種類は、好ましくは約250℃以下、より好ましくは約200℃以下の分解温度を有する分解可能なバインダーを含む。分解可能なオリゴマーまたはポリマーバインダーの好ましい種類は、ポリエーテルのホモポリマーおよびコポリマー、ポリラクチド、ポリカーボネート、ポリ[3−ヒドロキシ酪酸]、およびポリメタクリレートを含む。より好ましい分解可能なオリゴマーまたはポリマーバインダーは、ポリ(メタクリル)コポリマー、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸)、ポリ[3−ヒドロキシ酪酸]、ポリ(DL−ラクチド/グリコシド)、ポリ(プロピレンカーボネート)およびポリ(エチレンカーボネート)を含む。特に好ましい分解可能なバインダーは、Elvacite(登録商標)2028バインダーおよびElvacite(登録商標)2008バインダー(Lucite International、Inc.)からなる群を含む。好ましくは、分解可能なオリゴマーまたはポリマーバインダーは、約50重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらにより好ましくは約10重量%以下の量で存在し、約5重量%以下が最も好ましい。
【0045】
界面活性剤は、ナノ粒子インク中に存在する場合、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、さらにより好ましくは約3重量%以下の量で存在し、1重量%以下が最も好ましい。この目的に適した多くの界面活性剤が入手可能である。選択は、観察されたコーティングおよび分散体の品質および/または基板に対する所望の接着性に基づいて行うことができる。ある実施形態において、界面活性剤は、シロキシ−、フルオリル−、アルキル−およびアルキニル置換された界面活性剤を含む。これらとしては、例えば、Byk(登録商標)界面活性剤(Byk Chemie)、Zonyl(登録商標)界面活性剤(DuPont)、Triton(登録商標)界面活性剤(Dow)、Surfynol(登録商標)界面活性剤(Air Products)およびDynol(登録商標)界面活性剤(Air Products)が挙げられる。界面活性剤の好ましい種類は、開裂可能または分解可能な界面活性剤および約250℃未満、好ましくは約200℃未満、より好ましくは約150℃未満の沸点を有する界面活性剤を含む。好ましい低沸点の界面活性剤は、Air Products製のSurfynol(登録商標)61界面活性剤である。開裂可能な界面活性剤は、「Cleavable Surfactants」、Hellbergら、Journal of Surfactants and Detergents、3(2000)81〜91;および「Cleavable Surfactants」、Tehrani−Baghaら、Current Opinion in Colloid and Interface Science、12(2007)81〜91などの出典にさらに説明されている。
【0046】
インクは、任意選択的に、他の半導体およびドーパントをさらに含み得る。好ましいドーパントは、二元半導体、カルコゲン元素、およびナトリウムである。ドーパントは、インク中に存在する場合、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約2重量%以下で存在する。
【0047】
特定の一実施形態において、本発明は、ここでケステライト構造および/または約1nm〜約1000nmの平均最長寸法を特徴とするナノ粒子を含有するインクを提供する。別の実施形態において、本発明は、銅、スズ、亜鉛、1つまたは複数のカルコゲンおよびキャッピング剤を含むナノ粒子を含むインクを提供する。銅、スズ、亜鉛、1つまたは複数のカルコゲンおよびキャッピング剤を含むナノ粒子も、ケステライト構造および/または約1nm〜約1000nmの平均最長寸法を特徴とし得る。
【0048】
他の実施形態において、本発明は、複数のナノ粒子の組成物と一緒に1つまたは複数の有機溶媒を含有するインクも提供し、ここで、組成物中のナノ粒子は、銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含有し、カルコゲンは、硫黄、セレンからなる群から選択される。さらに他の実施形態において、インク中のナノ粒子の組成物、または組成物中のナノ粒子は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を特徴とする:
組成物中のナノ粒子が、ケステライト構造を有する;
組成物中のナノ粒子の、銅対亜鉛対スズ対カルコゲンのモル比が約2:1:1:4である;
組成物中のナノ粒子の、銅対亜鉛およびスズのモル比が1未満である;
組成物中のナノ粒子の、亜鉛対スズのモル比が1より大きい;
ナノ粒子が、約1nm〜約1000nmの最長寸法を有する;
組成物中のナノ粒子が、アミン、ホスフィンオキシド、ホスフィン、チオール、アミド、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、チオカルボニル、チオレート、硫化物、スルフィネート、スルホネート、ホスフェート、ホスファイト、ヒドロキシル、アルコレート、フェノレート、エーテル、カルボニル、カルボキシレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、電子対供与基、または電子対供与基に転化可能な基を有するキャッピング剤を含有する;
組成物中のナノ粒子が、オレイルアミンであるキャッピング剤を含有する;
組成物が、約10nm〜約100nm平均最長粒子寸法を特徴とする粒径分布を有する;
インク中のナノ粒子の濃度が、インクの総重量を基準にして、約1重量%〜約70重量%である;
インク中の有機溶媒が、芳香族化合物、アルカン、ニトリル、エーテル、ケトン、エステル、有機ハロゲン化物およびそれらの混合物からなる群から選択される;
インクが、分散剤、界面活性剤、ポリマー、バインダー、架橋剤、乳化剤、消泡剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、増粘剤、膜調整剤、酸化防止剤、流動剤、均展剤、腐食防止剤およびそれらの混合物からなる群から選択される成分も含有する;
インクが、分解可能なバインダー;分解可能な界面活性剤;開裂可能な界面活性剤;約250℃未満の沸点を有する界面活性剤;およびそれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数のバインダーまたは界面活性剤を含有する;
インクが、ポリエーテルのホモポリマーおよびコポリマー;ポリラクチドのホモポリマーおよびコポリマー;ポリカーボネートのホモポリマーおよびコポリマー;ポリ[3−ヒドロキシ酪酸]のホモポリマーおよびコポリマー;ポリメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー;およびそれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の分解可能なバインダーを含有する;および/または
インクが、二元半導体、カルコゲン元素、ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるドーパントも含有する。
【0049】
上述したナノ粒子の組成物またはインクは、基板上の膜になることができ、このような膜は、1つまたは複数の層を有していてもよく、ここで層の一部または全てが本発明のインクまたは組成物から形成される。膜の層が堆積または配置される土台になる基板は、可撓性または剛性であってもよい。基板は、例えば、アルミニウム箔またはポリマー(これらを、市販のウェブコーティングシステムを用いてロールツーロール(連続式または分割式)で可撓性基板として使用する)から作製され得る。剛性基板は、ガラス、ソーラーガラス、低鉄ガラス、グリーンガラス、ソーダ石灰ガラス、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、ポリマー、セラミック、金属板、金属化セラミック板、金属化ポリマー板、金属化ガラス板、および/または上記のいずれかの1つまたは複数の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含み得る。
【0050】
本発明の組成物またはインクの膜は、限定はされないが、湿式コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、接触印刷、トップフィード(top feed)反転印刷、ボトムフィード(bottom feed)反転印刷、ノズルフィード反転印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、反転マイクログラビア印刷、コンマダイレクト(comma direct)印刷、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、マイヤーバー(meyerbar)コーティング、リップダイレクトコーティング、デュアルリップダイレクトコーティング、キャピラリーコーティング、インクジェットコーティング、ジェット堆積、噴霧堆積などを含む様々な溶液をベースとするコーティング技術のいずれかによって基板上に形成することができる。膜の形成に有用な他のコーティング技術としては、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷および熱転写印刷が挙げられる。
【0051】
本発明によって提供されるナノ粒子は、半導体特性を有し、従来の半導体材料と異なり、本発明のナノ粒子は、コロイド懸濁液中で相互作用して凝集する傾向がある。キャッピング剤をナノ粒子に組み込むと、コロイド懸濁液を安定化し、その分解を防ぐのを助けるのに有用である。キャッピング剤の存在は、ナノ粒子の相互作用および凝集を防ぐのを助け、それによって、分散媒にわたってコロイド物質(例えば、金属カルコゲナイドナノ粒子)、分散相の均一な分布を保つ。残念なことに、不揮発性キャッピング剤が使用されるとき、およびナノ粒子の組成物またはインクが膜になるとき、不揮発性キャッピング剤は、揮発せずに分解する傾向があり、それによって、かなりの不純物(例えば、炭素)が膜に入る。このような不純物は膜性能にとって必ずしも重大ではないが、膜の電子特性を低下させる。不揮発性キャッピング剤と対照的に、揮発性キャッピング剤は、通常、膜を形成するためのインクの堆積の際に、分解したり、膜に不純物を導入したりせずに、揮発する。
【0052】
本発明の利点は、上述した適度な反応温度を使用することで、比較的低沸点のキャッピング剤を組み込むことが可能になることであり、比較的低沸点のキャッピング剤は、ナノ粒子を形成するための反応の際に保持されないほど揮発性が高くないが、膜の形成の際に揮発するのに十分な揮発性がある。しかしながら、ナノ粒子の形成の際に使用するためにどのキャッピング剤が選択されるとしても、さらなるプロセス工程では、より揮発性の高いキャッピング剤に換えられることがある。例えば、ナノ粒子の合成の際に組み込まれた高沸点の不揮発性キャッピング剤が、ナノ粒子の合成の後、揮発性を調整する(volatile coordinating)ルイス塩基などの揮発性キャッピング剤に換えられることがある。このため、一実施形態において、合成の際に組み込まれた不揮発性キャッピング剤によって安定化された湿潤ナノ粒子ペレットが揮発性キャッピング剤中に懸濁されて、キャッピング剤が換えられたコロイド懸濁液が製造される。その際、不揮発性キャッピング剤と置き換わった揮発性キャッピング剤が、膜の形成中に懸濁液から揮発されるため、コロイド懸濁液が基板上に堆積されるとき、ほとんど炭素を含まない前駆体膜が形成される。
【0053】
さらに別の実施形態において、キャッピング剤の交換を膜の形成の後に行うことができる。アニールされていない膜を、揮発性キャッピング剤の浴に浸し、その際、合成されたままのナノ粒子に組み込まれている不揮発性キャッピング剤を揮発性キャッピング剤に換えることができる。次に、膜が浴から取り出されるとき、不揮発性キャッピング剤が、過剰の揮発性キャッピング剤とともに除去される。この方法の利点としては、特に膜が後にアニールされる場合およびアニールされるとき、膜が緻密になること、ならびに膜における炭素系不純物のレベルが低くなることが挙げられる。この方法の他の利点は、コロイド懸濁液の不安定化、凝集、およびコロイド分解を引き起こし得る水の存在に比較的影響されにくいことである。
【0054】
さらに別の実施形態において、第1のキャッピング剤を含有するナノ粒子の反応混合物を、第1のキャッピング剤より高い揮発性を有する第2のキャッピング剤と接触させて、ナノ粒子中の第1のキャッピング剤を第2のキャッピング剤に換えることができ;または第1のキャッピング剤を含有するナノ粒子を、反応混合物から回収した後、第1のキャッピング剤より高い揮発性を有する第2のキャッピング剤とナノ粒子を接触させて、ナノ粒子中の第1のキャッピング剤を第2のキャッピング剤に換えることができる。さらに別の実施形態において、第1のキャッピング剤を含有する膜を、第1のキャッピング剤より高い揮発性を有する第2のキャッピング剤と接触させて、膜のナノ粒子中の第1のキャッピング剤を第2のキャッピング剤に換えることができる。上記の実施形態のいずれにおいても、第2のキャッピング剤は、大気圧における約200℃未満の沸点を有し得る。
【0055】
ナノ粒子の組成物またはインクが膜になるとき、分解したり不純物を導入したりせずに、膜堆積中に放出されることを十分に揮発性であるとすると、本発明の文脈においてキャッピング剤は揮発性とみなされる。本明細書において使用するのに適した揮発性を有するキャッピング剤としては、沸点が大気圧において約200℃未満、好ましくは大気圧において約150℃未満、より好ましくは大気圧において約120℃未満、最も好ましくは大気圧において約100℃未満であるキャッピング剤が挙げられ、ここで、これらの範囲はそれぞれ、0以外の値によって下限が制限される。本明細書において使用するのに適した他の揮発性キャッピング剤としては、少なくとも1つの電子対供与基またはこのような電子対供与基に転化可能な基を含有する化合物が挙げられる。電子対供与基は、電気的に中性または陰性であり得、通常、O、N、PまたはSなどの原子を含有する。電子対供与基としては、限定はされないが、第一級、第二級または第三級アミン基またはアミド基、ニトリル基、イソニトリル基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、アジド基、チオ基、チオレート基、スルフィド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスフィン基、亜リン酸基、ヒドロキシル基、アルコレート基、フェノレート基、エーテル基、カルボニル基およびカルボン酸基が挙げられる。電子対供与基に転化可能な基としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸無水物、およびグリシジル基が挙げられる。好適な揮発性キャッピング剤の具体例としては、限定はされないが、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、酢酸エチル、ブタノール、ピリジン、エタンチオール、テトラヒドロフラン、およびジエチルエーテルが挙げられる。好ましくは、揮発性キャッピング剤は、アセトニトリル、ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、またはピリジンである。
【0056】
溶媒および場合により分散剤は、通常、膜の形成の際に起こる乾燥によって本発明の組成物またはインクから除去されるが、本明細書において形成される膜は、加熱によってアニールされてもよい。本明細書において形成される膜の加熱は、通常、微小粒子の対応する層よりはるかに低い温度で固体層を提供し、これは、一部には、粒子間の接触表面積が広くなることに起因し得る。いずれの場合も、本明細書において形成される膜をアニールするのに適した温度としては、約100℃〜約1000℃、より好ましくは約200℃〜約600℃、さらにより好ましくは約375℃〜約525℃の温度が挙げられ、この後者の範囲は、アルミニウム箔または高融点ポリマー基板上で処理するのに安全な温度範囲である。アニールされる膜は、以下のプロセスのうちの少なくとも1つを用いた熱処理技術によって、加熱および/または反応を促進され(accelerated)得る:パルス熱処理、レーザービームへの露光、または赤外線ランプによる加熱、ならびに/あるいは同様のまたは関連したプロセス。高速熱処理に適した他のデバイスとしては、アニール用に断熱モードで用いられるパルスレーザー、連続波レーザー(通常10〜30W)、パルス電子ビームデバイス、走査電子ビームシステムおよび他のビームシステム、黒鉛板加熱器、ランプシステム、および走査水素炎システムも挙げられる。非指向性の(non−directed)低密度システムも使用されてもよい。あるいは、本明細書において使用するのに適した他の熱処理としては、米国特許第4,350,537号明細書および同第4,356,384号明細書に記載されるパルス熱処理;ならびに米国特許第3,950,187号明細書、同第4,082,958号明細書、および同第4,729,962号明細書(上述した特許はそれぞれ、あらゆる目的のために、本明細書の一部として参照により援用される)に記載されるパルス電子ビーム処理および高速熱処理が挙げられる。上述した加熱方法は、単独で、あるいは互いとの、および上記のものまたは他の同様の処理技術との1つまたは複数の組合せで適用されてもよい。
【0057】
アニール温度は、特定のプラトー温度に保たれることなく、ある温度範囲内で変動するように調節することができる。この技術(本明細書において高速熱アニール、すなわちRTAと呼ばれる)は、限定はされないがアルミニウム箔などの金属箔基板に光起電性の活性層(「吸収」層と呼ばれることもある)を形成するのに特に適している。この技術の詳細は、あらゆる目的のために参照により援用される米国特許出願第10/943,685号明細書に記載されている。
【0058】
アニールされた膜は湿潤前駆体層と比べて高い密度および/または薄い厚さを有し得るが、その理由は、キャリア液体および他の材料が、処理の間に除去されたためである。一実施形態において、膜は、約0.5ミクロン〜約2.5ミクロンの範囲の厚さを有し得る。他の実施形態において、膜の厚さは、約1.5ミクロン〜約2.25ミクロンであってもよい。組成物またはインクの堆積された層の処理により、ナノ粒子が溶けて融合し、ほとんどの場合、隙間がなくなるため、得られる高密度膜の厚さが薄くなることとなる。
【0059】
本明細書において提供されるCZTSナノ粒子の組成物またはインクにナトリウムを組み込んで、それらから形成される膜の品質を向上させることができる。第1の方法では、基板上に形成される多層膜において、ナトリウム含有材料の1つまたは複数の層が、本発明のナノ粒子から形成される層の上および/または下に形成され得る。ナトリウム含有層の形成は、溶液コーティングおよび/または限定はされないが、スパッタリング、蒸着、CBD、電気めっき、ゾル・ゲルコーティング、噴霧コーティング、CVD、PVD、ALDなどを含む他の技術によって行われ得る。任意選択的に、第2の方法ではまた、CZTSナノ粒子から形成される膜におけるCZTSナノ粒子にナトリウムをドープすることによって、ナトリウムが膜の層のスタックに導入されてもよい。任意選択的に、第3の方法では、ナトリウムがナノ粒子のインク自体に組み込まれてもよい。例えば、インクは、有機または無機対イオン(硫化ナトリウムなど)を含むナトリウム化合物を含んでもよく、ここで、(別個の化合物として)インクに添加されるナトリウム化合物は、粒子としてまたは溶解された状態で存在し得る。したがって、ナトリウムは、ナトリウム化合物の「凝集」形態(例えば、分散粒子)、および「分子的に溶解された」形態のいずれかまたは両方で存在してもよい。
【0060】
上述した3つの方法は互いに相容れないものではなく、それぞれ単独で、あるいは他の方法とともにいずれか1つまたは複数の組合せで適用されて、CZTS膜を含有するスタックに所望の量のナトリウムを提供し得る。さらに、ナトリウムおよび/またはナトリウム含有化合物が、基板に(例えばモリブデン標的に)添加されてもよい。ナトリウムの供給源は限定されないが、以下のもののうちの1つまたは複数が挙げられる:プロトンがナトリウムで置換された任意の脱プロトン化アルコール、プロトンがナトリウムで置換された任意の脱プロトン化有機または無機酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、および以下の酸のナトリウム塩:ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸など。他の供給源としては、フッ化ナトリウムなどのナトリウムハロゲン化物が挙げられ;K、RbまたはCsなどの他のアルカリ金属も、同様の効果を有するドーパントとして使用され得る。
【0061】
さらに、ナトリウム材料は、Al、GeおよびSiなどのバンドギャップ拡大効果を提供し得る他の元素と組み合わせてもよい。ナトリウムに加えて、これらの元素のうちの1つまたは複数を使用すると、吸収層の品質をさらに向上させることができる。Na2Sなどのナトリウム化合物の使用は、NaおよびSの両方を膜に提供し、改質されていないCZTS層または膜のバンドギャップと異なるバンドギャップの層を得るために、RTA工程によって提供されるようなアニールに組み込まれ得る。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態において、例えば、カルコゲン粒子または二元カルコゲナイド粒子を含有する粉末の形態で、追加のカルコゲンの供給源を含むCZTS膜が基板上に形成され得る。カルコゲンの追加の供給源は、カルコゲンの追加の供給源を含有する個別の層として提供されてもよく、またはカルコゲンの追加の供給源は、基板上に単層を印刷する元となるCZTS組成物またはインクに組み込まれ得る。カルコゲン粒子は、ミクロンサイズまたはサブミクロンサイズの酸素以外のカルコゲン(例えば、Se、S)粒子であってもよく、サイズが数百ナノメートル以下から数ミクロンの最長寸法を有していてもよい。カルコゲナイド粒子は、ミクロンサイズまたはサブミクロンサイズであってもよく、(CuS,Se)などの第IB族の二元カルコゲナイドナノ粒子および/またはZn(Se,S)などの第IIA族の酸化物以外のカルコゲナイドナノ粒子および/またはSn(Se,S)2などの第IVA族の二元カルコゲナイドナノ粒子を含んでいてもよい。他の好適なカルコゲン粒子または二元カルコゲナイド粒子としては酸素以外のカルコゲン粒子、第IB族の二元カルコゲナイドナノ粒子、第IIA族の酸化物以外のカルコゲナイドナノ粒子、Se粒子、S粒子、CuS粒子、CuSe粒子、ZnSe粒子、ZnS粒子、SnSe2粒子、SnS2粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0063】
追加のカルコゲンの供給源を添加するために、本発明の四元カルコゲナイドナノ粒子の混合物、および追加のカルコゲン粒子を、基板上に配置し、追加のカルコゲン粒子を溶融して液体カルコゲンを形成するのに十分な温度まで加熱する。液体カルコゲンおよび四元ナノ粒子を、液体カルコゲンをナノ粒子と反応させるのに十分な温度まで加熱して、得られる膜におけるカルコゲン不足を解消し、かつ層を緻密化する。次に、膜を冷ます。
【0064】
ある実施形態において、カルコゲン粒子または二元カルコゲナイド粒子の層が、CZTS膜の下に形成されてもよい。層がこの位置でも、カルコゲン粒子が、CZTS層へのカルコゲンまたは他の足りない元素の十分な余剰を提供し、ひいては十分に反応し、本発明の四元粒子の化学量論量を修正することができる。さらに、下層から放出されたカルコゲンがCZTS膜を通して上昇し得るため、層のこの位置は、複数の元素をより良好に混合するのに役立ち得る。カルコゲン富化層の厚さは、約0.4〜0.5ミクロンの範囲であり得る。さらに別の実施形態において、カルコゲン富化層の厚さは、約500〜50nmである。本発明のさらに他の実施形態において、多層の材料が、印刷され、次の層を堆積する前に様々な程度にカルコゲンと反応されてもよく、このように、多層膜を構成する層の群にわたって傾斜した組成含量が提供され得る。
【0065】
二元カルコゲナイド粒子は、二元カルコゲナイド原材料、例えば、ミクロンサイズの粒子またはそれより大きい粒子を出発材料として得られる。二元カルコゲナイド原料は、ボールミル加工されて、所望のサイズの粒子が生成され得る。あるいは、二元合金カルコゲナイド粒子が、高温冶金、すなわち、元素成分を溶融し、溶融物を噴霧して、凝固によりナノ粒子になる液滴を形成することによって形成されてもよい。
【0066】
カルコゲン粒子は、二元カルコゲナイドナノ粒子および四元カルコゲナイドナノ粒子より大きくてもよく、その理由は、二元および四元ナノ粒子の前にカルコゲン粒子が溶融し、材料との良好な接触を提供するためである。好ましくは、カルコゲン粒子は、形成されるカルコゲナイド膜の厚さより薄い。カルコゲン粒子(例えば、SeまたはS)は、いくつかの様々な方法で形成され得る。例えば、SeまたはS粒子を、市販の細目粉末(例えば、200メッシュ/75ミクロン)から出発して、粉末を望ましいサイズにボールミル加工して形成してもよい。あるいは、SeまたはS粒子を、蒸発−凝縮方法を用いて形成してもよい。あるいは、SeまたはS原料を溶融し噴霧(「噴霧化」)して凝固によりナノ粒子になる液滴を形成してもよい。
【0067】
カルコゲン粒子はまた、WangおよびXia、Nano Letters、2004 Vol.4、No.10、2047〜2050(「Bottom−Up and Top−Down Approaches to Synthesis of Monodispersed Spherical Colloids of Low Melting−Point Metals」)に記載の「トップ−ダウン」方法などの溶液ベースの技術を用いて形成されてもよい。この技術により、単分散の球状コロイドのように400℃未満の融点を有し、100nm〜600nmの調節可能な直径を有する要素を、大量に処理することが可能である。この技術では、カルコゲン(SeまたはS)粉末を、ジ(エチレングリコール)などの沸騰している有機溶媒に直接添加し、溶融して大きな液滴を生成する。反応混合物を激しく攪拌し、ここで20分間乳化した後、高温の混合物を低温の有機溶媒浴(例えば、エタノール)に注いでカルコゲン(SeまたはSe)液滴を凝固させると、金属の均一な球状コロイドが得られる。
【0068】
本発明のさらに別の実施形態において、電子デバイスが、多層を含む膜から製造可能であり;第1の層が、上述した複数のナノ粒子を含有することができ、第2の層が、二元半導体、カルコゲン供給源、ナトリウム含有材料、またはそれらの混合物を含有することができる。このようなデバイスでは、第1の層は第2の層に隣接し得る。
【0069】
上述したように基板上に製造される膜は、例えば、光起電デバイス、モジュール、またはソーラーパネルにおける吸収層として働く電子デバイスに組み込むことができる。通常の太陽電池は、透明基板(ソーダ石灰ガラスなど)、バックコンタクト層(例えば、モリブデン)、吸収層(第1の半導体層とも呼ばれる)、緩衝層(例えば、CdS;第2の半導体層とも呼ばれる)、およびトップ電気コンタクトを含む。太陽電池はまた、トップコンタクト層に電気接点または電極パッドを含み、基板の前面に、半導体材料への光の初期透過を促す反射防止(AR)コーティングを含み得る。図3は、以下の要素を含有する、示されるスタックの上記の特徴を示す:透明基板1;バックコンタクト層2;吸収層3(本発明のp型CZTS/Seナノ粒子から形成される);緩衝層4;トップコンタクト層5[例えば、アルミニウムドープ酸化亜鉛などの透明導電性酸化物(「TCO」)であり得る];およびトップコンタクト層6上の電気接点または電極パッド。
【0070】
基板は、例えば、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼、モリブデンなどの金属箔、あるいはポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PET)、または金属化プラスチックなどのプラスチックまたはポリマーで作製され得る。ベース電極は、例えば、厚さ約10ミクロン〜約100ミクロンのAl箔の層などの導電性材料で作製され得る。任意選択の界面層は、電極を基板に結合し易くし得る。接着は、限定はされないが、クロム、バナジウム、タングステン、およびガラス、あるいは窒化物、酸化物、および/または炭化物などの化合物を含む様々な材料を含み得る。CZTS吸収層は、アニール後に約0.5ミクロン〜約5ミクロンの厚さ、より好ましくはアニール後に約0.5ミクロン〜約2ミクロンの厚さであってもよい。
【0071】
n型半導体薄膜(接合パートナー層と呼ばれることもある)は、例えば、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、水酸化亜鉛、セレン化亜鉛(ZnSe)などの無機材料、n型有機材料、あるいはこれらのまたは同様の材料の2つ以上のある組合せ、あるいはn型ポリマーおよび/または小分子などの有機材料を含み得る。これらの材料の層は、例えば、化学浴堆積法(CBD)および/または化学表面堆積法(および/または関連の方法)によって、約2nm〜約1000nm、より好ましくは約5nm〜約500nm、最も好ましくは約10nm〜約300nmの範囲の厚さまで堆積され得る。これは、連続式のロールツーロールおよび/または分割式のロールツーロールおよび/またはバッチ式システムにおける使用向けに構成され得る。
【0072】
透明電極は、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、インジウムスズ酸化物(ITO)、またはスズ酸カドミウムなどの透明導電性酸化物層を含んでいてもよく、それらはいずれも、限定はされないが、スパッタリング、蒸着、CBD、電気めっき、CVD、PVD、ALDなどを含む様々な手段のいずれかを用いて堆積することができる。
【0073】
あるいは、透明電極は、例えば、ドープPEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)の透明層といった透明導電性ポリマー層を含んでいてもよく、これは、スピンコーティング、浸漬コーティング、または噴霧コーティングなどを用いて堆積することができる。PSS:PEDOTは、ジエーテルで架橋されたチオフェン複素環をベースとするドープされた導電性ポリマーである。ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)をドープされたPEDOTの水分散体は、Baytron(登録商標)Pの商品名でH.C.Starck(Newton,Mass.)から入手可能である。透明電極は、全シート抵抗を下げるために、金属(例えば、Ni、AlまたはAg)フィンガーの層をさらに含んでいてもよい。あるいは、透明導電性層は、カーボンナノチューブをベースとする透明導体を含んでいてもよい。
【0074】
本発明のある実施形態の動作および効果は、後述する一連の実施例からより完全に理解されよう。これらの実施例が基づく実施形態は、あくまでも典型例であり、本発明を示すためのそれらの実施形態の選択は、実施例に記載されていない材料、成分、反応物、構成、設計、条件、仕様、工程、技術が、本明細書において使用するのに適していないこと、または実施例に記載されていない主題が、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲から除外されることを示すものではない。
【実施例】
【0075】
以下は、上記および実施例で使用される略語および商品名の一覧である:
【0076】
【表1】

【0077】
材料
塩化第一銅、Cu(I)Cl 99.99%;塩化亜鉛、ZnCl2 99.99%;塩化スズ、SnCl2 99.99%、硫黄元素、セレン元素、チオ尿素、トルエン、p−キシレン、アセトニトリルおよびクロロホルムは全て、Aldrichから購入し、さらに精製せずに用いた。オレイルアミン(70%工業グレード)は、Flukaから購入し、0.45μmのフィルタ(Whatman GE)に通してろ過した。Elvacite(登録商標)2028およびElvacite(登録商標)2008は、Lucite International,Inc.(Cordova,TN)から入手した。
【0078】
太陽電池の作製のための基本手順
Moをスパッタリングされた基板。ソーダ石灰ガラス基板を、Denton Sputtering Systemを用いてパターニングされたモリブデンの500nmの層でコーティングすることによって、太陽電池用の基板を作製した。堆積条件は、150ワットの直流電力、20sccmのAr、および5mTの圧力であった。
【0079】
硫化カドミウムの堆積
表1にしたがってCdS浴の前駆体溶液を調製し、コーティングされる基板が完全に沈むように作製された基板を入れた反応容器中で室温で組み合わせた。前駆体溶液を混合した直後に、混合された成分を入れた容器を、湯せんした(water−heated)容器(65℃)(大きな結晶皿)に入れた。CdSを試料の上に17.5分間堆積した。試料を脱イオン水で1時間すすぎ、200℃で15分間乾燥させた。
【0080】
【表2】

【0081】
透明導体堆積
透明導体を、CdSの上に以下の構造でスパッタリングした:50nmの絶縁ZnO(150W RF、5ミリトル、20sccm)および500nmの、2%のAl23を用いてAlをドープされたZnO、98%のZnO標的(75W RF、10ミリトル、20sccm)。
【0082】
実施例1
230℃の反応温度で前駆体を逐次添加することによる銅亜鉛スズ硫黄ナノ粒子の合成
以下の手順で、全ての金属塩および硫黄元素を、100℃でオレイルアミンに溶解させた:10mLのオレイルアミンに溶解させた80mg(0.586mmol)の塩化亜鉛の溶液および10mLのオレイルアミンに溶解させた102mg(0.587mmol)の塩化スズ(II)の溶液を、Ar雰囲気下で、予め脱気されて110℃に加熱されたフラスコ中で攪拌しながら混合した。5分間攪拌した後、10mLのオレイルアミンに溶解させた77mg(0.777mmol)の塩化第一銅の溶液を反応混合物に添加し、得られた溶液をさらに5分間攪拌した。この時点で、10mLのオレイルアミンに溶解させた163mg(5.08mmol)の硫黄の溶液を系に添加し、反応温度を、10℃/分の速度で230℃に上昇させた。
【0083】
230℃に達した後、系を10分間この温度に保ってから、加熱を止めた。反応物を攪拌しながら自然に冷ました。加熱ブロックは冷却の際に所定の位置に保った。冷ました後、80mLのエタノールを反応混合物に添加した。溶媒の遠心分離およびデカントによって粒子を回収した。ケステライト構造の存在を、XRDによって測定し、Cu:Zn:Sn:Sの比率をICP(表2を参照)によって測定した。DLS、TEM(図1−1、1−2、1−3、1−4を参照)およびAFMを用いて粒径を測定した。粒径は1〜10nmの範囲であった。
【0084】
実施例2
160℃の反応温度で前駆体を逐次添加することによる銅亜鉛スズ硫黄ナノ粒子の合成
以下の手順で、全ての金属塩および硫黄元素を、100℃でオレイルアミンに溶解させた:10mLのオレイルアミンに溶解させた80mg(0.586mmol)の塩化亜鉛の溶液および10mLのオレイルアミンに溶解させた102mg(0.587mmol)の塩化スズ(II)の溶液を、Ar雰囲気下で、予め脱気されて160℃に加熱されたフラスコ中で攪拌しながら混合した。5分間攪拌した後、10mLのオレイルアミンに溶解させた77mg(0.777mmol)の塩化第一銅の溶液を添加し、3つの成分をさらに5分間攪拌した。この時点で、10mLのオレイルアミンに溶解させた163mg(5.08mmol)の硫黄元素の溶液を、反応温度をさらに10分間160℃に保ちながら系に添加した。次に、加熱を止め、反応物を攪拌しながら自然に冷ました。加熱ブロックは冷却の際に所定の位置に保った。冷ましたらすぐに、ヘキサンおよびエタノールの1:1混合物40mLを反応混合物に添加した。溶媒の遠心分離およびデカントによって粒子を回収した。ケステライト構造の存在を、XRDによって測定し、Cu:Zn:Sn:Sの比率をEDX(表2を参照)によって測定した。DLS、TEM(図2)およびAFMを用いて粒径を測定した。粒径は10〜50nmの範囲であった。
【0085】
実施例3
前駆体の逐次添加による銅亜鉛スズセレンナノ粒子の合成
以下の手順で、全ての金属塩およびセレン元素を、100℃でオレイルアミンに溶解させた:硫黄元素の代わりにセレン元素401mg(5.08mmol)を用いた以外は実施例1の手順にしたがった。ケステライト構造の存在をXRDによって測定した。
【0086】
実施例4
前駆体の同時添加による銅亜鉛スズ硫黄ナノ粒子の合成
以下の手順で、全ての金属塩および硫黄元素を、100℃でオレイルアミンに溶解させた:10mLのオレイルアミンに溶解させた80mg(0.586mmol)の塩化亜鉛の溶液、10mLのオレイルアミンに溶解させた102mg(0.587mmol)の塩化スズ(II)の溶液、10mLのオレイルアミンに溶解させた77mg(0.777mmol)塩化第一銅の溶液、および10mLのオレイルアミンに溶解させた163mg(5.08mmol)の硫黄元素の溶液を同時に混合し、反応温度を、10℃/分の速度で230℃に上昇させた。230℃に達した後、系を10分間この温度に保ってから、加熱を止めた。反応物を攪拌しながら自然に冷ました。加熱ブロックは冷却の際に所定の位置に保った。冷ました後、80mLのエタノールを混合物に添加した。溶媒の遠心分離およびデカントによって粒子を回収した。粒径は10〜50nmの範囲であり、組成物のCZTS中でのZn:Snの比率は1:2を示した。ケステライト構造の存在を、XRDによって測定し、Cu:Zn:Sn:Sの比率をEDX(表2を参照)によって測定した。DLS、TEMおよびAFMを用いて粒径を測定した。同様のXRDパターンを保ちながら、異なる組成物を得た。
【0087】
比較例5
硫黄供給源としてチオ尿素を用いたナノ粒子合成
0.1gの塩化第一銅(1mmolのCu)と、0.068gの塩化亜鉛(0.5mmolのZn)と、0.094gの塩化スズ(II)(0.5mmolのSn)と、10mLのオレイルアミンとの混合物を、シュレンクフラスコ中で60℃で30分間、激しく攪拌し、シュレンクラインで真空を引くことによって脱気した。次に、混合物を、窒素の存在下で10分間にわたって130℃に加熱した。加熱の際、溶液が青色から黄色に変わり、Cu、ZnおよびSnのオレイルアミン錯体が形成されたことを示した。一方、シュレンクフラスコ中で窒素の存在下で200℃で1mLのオレイルアミンに0.076gのチオ尿素(1.0mmol)を溶解させることによって、チオ尿素溶液を調製した。Zn/Sn/Cu/オレイルアミン反応物溶液を100℃に冷まし、カニューレを介してチオ尿素反応物溶液を添加した。注入した直後に、反応混合物を、15℃/分の速度で240℃に加熱する。1時間後、ナノ結晶を含むシュレンクフラスコを、加熱マントルから取り出し、室温に冷ました。次に、エタノール(30mL)を添加してナノ結晶を沈殿させた後、7000rpmで3分間遠心分離にかけた。上澄みをナノ結晶からデカントして取り除き、廃棄した。ナノ結晶を、クロロホルム、ヘキサン、およびトルエンを含む様々な非極性有機溶媒に再分散させる。特性評価の前に、分散体を、通常、7000rpmで5分間、再度遠心分離にかけて付着が不十分なナノ結晶を除去する。XRDおよびEDAX(表2を参照)によって試料を特性評価した。XRDの結果は、SnS、ZnS、Cu2Sが存在することを示している。EDAXによって検出された少量のZnは、他の種類のカルコゲナイド含有材料を合成するのに用いられるこのプロセスが、CZTS合成に当てはめられなかったことを示している。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例6
トルエン中のCZTSインクの調製
実施例1の手順によって製造された0.086gのCZTSナノ粒子を再分散させることによってインクを調製した。1mLのトルエン(密度0.8669g/mL)中での超音波処理によって粒子を分散させて、ナノ粒子濃度が10重量%のインクを生成した。
【0090】
実施例7
Elvacite(登録商標)2028バインダーを用いたp−キシレン中のCZTSインクの調製
以下の工程によってインクを調製した:まず、実施例1の手順によって作製された0.172gのCZTSナノ粒子を、1mLのp−キシレン(密度0.861g/mL)中での超音波処理によって分散させて、ナノ粒子の20重量%懸濁液を生成した。次に、ナノ粒子懸濁液を、Elvacite(登録商標)2028p−キシレンの2重量%溶液1mLと混合して、ナノ粒子の濃度が10重量%のインクを生成した。
【0091】
実施例8
Elvacite(登録商標)2028バインダーを用いたトルエン中のCZTSインクの調製
以下の工程によってインクを調製した:まず、実施例1の手順によって作製された0.172gのCZTSナノ粒子を、1mLのトルエン(密度0.861g/mL)中での超音波処理によって分散させて、ナノ粒子の20重量%懸濁液を生成した。次に、ナノ粒子懸濁液を、トルエン中の2重量%Elvacite(登録商標)2028の溶液1mLと混合して、ナノ粒子の濃度が10重量%のインクを生成した。
【0092】
実施例9
Elvacite(登録商標)2008バインダーを用いたアセトニトリル中のCZTSインクの調製
以下の工程によってインクを調製した:まず、実施例1の手順によって作製された0.172gのCZTSナノ粒子を、1mLのアセトニトリル(密度0.786g/mL)中での超音波処理によって分散させて、ナノ粒子の20重量%懸濁液を生成した。次に、ナノ粒子懸濁液を、アセトニトリル中の2重量%Elvacite(登録商標)2008の溶液1mLと混合して、ナノ粒子の濃度が10重量%のインクを生成した。
【0093】
実施例10
CZTSナノ粒子合成:ブチルアミンとのオレイルアミンの交換
CZTSナノ粒子を、実施例1の手順にしたがって作製し、トルエン中に再分散させ、遠心分離にかけてから、溶媒をデカントした。ペレットを減圧下で乾燥させた。次に、乾燥材料を秤量してから、0.3gの材料を、Ar雰囲気下で、攪拌子を備えた丸底フラスコ中に入れた。シリンジを用いて無水ブチルアミン(5mL)をフラスコに添加し、反応物を室温で3日間攪拌させて、ブチルアミン中のインクを得た。次に、15mLのエタノールを添加することによって粒子を沈殿させ、溶媒の遠心分離およびデカントによって回収してナノ粒子のペレットを得た。
【0094】
実施例11
クロロホルム中のブチルアミンでキャッピングされたCZTS−ナノ粒子インクの調製
実施例10にしたがって作製されたナノ粒子ペレットを、150mg/mLの濃度でクロロホルム中に再分散させ、次に、0.22μmのポリテトラフルオロエチレンフィルタを通してろ過して、インクを生成した。
【0095】
実施例12
CZTS膜の形成
実施例1にしたがって作製されたCZTSの湿潤ペレット(約100mg)を0.5mLのトルエン中に溶解させ、流体の懸濁液を得た。Branson 25−10 Sonicatorを用いて、懸濁液を5分間ずつ5〜60分間超音波処理した。最も高い品質の分散体は、30〜45分間の超音波処理時間で得られた。
【0096】
次に、Speed−line Technologiesの3GP卓上スピンコータを用いて、ガラス基板、ならびにモリブデンのスパッタリングによってパターニングされたガラス基板のモリブデンがコーティングされた側にも試料をスピンコーティングした。コーティング速度は500〜1500rpmの範囲であり、コーティング時間は10〜30秒間の範囲であった。最も高い品質のコーティングは、1000rpm、20秒間のスピン条件で得られた。得られる膜の厚さは、50〜800nmと様々であった。
【0097】
次に、膜を炉または高速熱アニール処理器のいずれかにおいてアニールした。アニール温度は400〜550℃の範囲であり、時間は10〜30分間と様々に変えた。最も高い品質のアニールされた膜は、500〜550℃の温度で15分間アニールすることによって得られた。膜の厚さおよび粗度は、粗面計を用いて得られ、光学スペクトルによって膜をさらに特性評価した。高速熱アニールでは、ULVAC−RICO Inc.(Methuen,MA)製のMILA−5000 Infrared Lamp Heating Systemを加熱に用い、15℃に保たれたPolyscience(Niles,IL)循環浴を用いて系を冷ました。以下のとおりに試料を窒素パージ下で加熱した:10分間20℃;1分間で400℃に昇温し;2分間400℃に保ち;約30分間の間に20℃に冷ました。
【0098】
実施例13
エタノールで浸漬することによるCZTS膜の緻密化
実施例12に記載のように予めアニールされた膜を作製した。これらの膜を、コーティングした後スピンコータに載せたままにしておき、次に、エタノールで浸漬した。数秒間浸漬した後、スピンプログラムを再度行って、膜を風乾させる。得られた膜は、予め浸漬された膜より緻密で硬質であった。
【0099】
実施例14
バーコーティングされたCZTS膜の形成
実施例1にしたがって作製されたCZTSの湿潤ペレット(約100mg)を、トルエンおよびクロロホルムを含む約0.5mLの様々な溶媒に溶解させてインクを得た。得られたCZTSインクを、ガラス基板上にバーコーティングした。バーコーティングされた膜のうちの2つを、550℃の炉の中で15分間アニールした。膜をXRDによって特性評価し、膜の一部を解体し、HR−TEMによって分析した。
【0100】
実施例15
スピンコーティングされたCZTSナノ粒子に由来する吸収層を用いた太陽電池
Moをスパッタリングされたソーダ石灰ガラス上のp型CZTS吸収体のアニールされた膜を、実施例12に記載のように作製した。次に、試料をCdS浴に入れ、約50nmのn型CdSを、CZTS膜の上に堆積した。次に、透明導体を、CdSの上にスパッタリングした。完成されたデバイスを擬似太陽光照射下で試験し、J−V特性を図4に示す。
【0101】
実施例16
熱的に蒸着されたナトリウム層を有するポリイミド基板上のCZTS系太陽電池
高温ポリイミド膜を基板として用いたCZTS吸収層で太陽電池を作製する。高性能の太陽電池に必要なナトリウムの一部を提供するために、Naの極薄い層(1nm未満)をMoに熱的に蒸着するという変更点以外は実施例15の手順にしたがった。次に、CZTSインクを、ポリイミド/Mo/Na基板上にコーティングする。
【0102】
実施例17
ナトリウムドープCZTSインクから作製されるポリイミド基板上の太陽電池
実施例15の手順にしたがって、高温ポリイミド膜を基板として用いたCZTS吸収層で太陽電池を作製する。オクタン酸ナトリウムを0.5重量%でインクに組み込む。
【0103】
実施例18
カルコゲン元素をドープされたCZTSインク
実施例6の手順にしたがって、CZTSナノ粒子のインクを形成する。サブミクロンサイズの硫黄元素粒子を、超音波処理を加えて、インクに1重量%で添加する。このインクを用いて、実施例15の手順にしたがって、太陽電池を作製する。
【0104】
実施例19
二元カルコゲナイド粒子をドープされたCZTSインク
実施例6の手順にしたがって、CZTSナノ粒子のインクを形成する。SnS2およびZnSの二元カルコゲナイドナノ粒子を、それぞれ超音波処理を加えて、0.2重量%でインクに添加する。このインクを用いて、実施例15の手順にしたがって、コーティングおよび太陽電池を作製する。
【0105】
実施例20〜25
様々なCZTSインクをベースとするコーティングおよび太陽電池
表3に挙げられた手順にしたがって、CZTSナノ粒子のインクを形成する。これらのインクを用いて、実施例15の手順にしたがって、コーティングおよび太陽電池を作製する。
【0106】
【表4】

【0107】
実施例26
CZTS組成物の変形:硫黄勾配
硫黄元素をドープしたCZTSナノ粒子の10種のインクを、実施例18の手順にしたがって形成する。インク中の硫黄の重量%は、0.1重量%ずつ1.0から0.1重量%まで変える。表4に示される各層について、インク組成物を用いた逐次噴霧に通過させてCZTSインクを噴霧コーティングすることによって、Moをスパッタリングされたソーダ石灰ガラス上に、硫黄勾配を有するCZTS膜を生成する。この吸収層を用いて、実施例15の手順にしたがって太陽電池を作製する。
【0108】
実施例27
CZTS組成物の変形:Cu勾配を有する低Cu
SnS2およびZnSの二元カルコゲナイドナノ粒子をドープされたCZTSナノ粒子の10種のインクを、実施例19の手順にしたがって形成する。インク中の二元カルコゲナイドナノ粒子の重量%は、0.05重量%ずつ0から0.45重量%まで変える。表4に示される各層について、インク組成物を用いた逐次噴霧に通過させてCZTSインクを噴霧コーティングすることによって、Moをスパッタリングされたソーダ石灰ガラス上に、銅勾配を有する銅の含量が少ないCZTS膜を生成する。この吸収層を用いて、実施例15の手順にしたがって太陽電池を作製する。
【0109】
【表5】

【0110】
実施例28
CZTSナノ粒子の噴霧コーティング
実施例1の手順にしたがって、CZTSナノ粒子(100mg)を作製した。ナノ粒子を5mLのクロロホルム中に懸濁させ、次に、懸濁液を堆積の前に10分間超音波処理した。表5に与えられた条件にしたがって、Moをスパッタリングされたソーダ石灰ガラス上にインクを噴霧する。この吸収層を用いて、実施例15の手順にしたがって太陽電池を作製する。
【0111】
実施例29
絶縁ZnOウィンドウ
CdSの代わりに絶縁ZnOをウィンドウとして用いて、実施例15の手順にしたがって太陽電池を作製する。
【0112】
実施例30
CZTS吸収層およびカーボンナノチューブをベースとする透明導体を有する太陽電池
ZnO:Alの代わりにカーボンナノチューブをベースとする透明導体を用いて、実施例15の手順にしたがって太陽電池を作製する。
【0113】
実施例31
マイクロ波放射線によって合成されるCZTSナノ粒子
以下の手順で、全ての金属塩および硫黄元素を、100℃でオレイルアミンに溶解させる:5mLのオレイルアミンに溶解させた80mg(0.586mmol)の塩化亜鉛の溶液、5mLのオレイルアミンに溶解させた102mg(0.587mmol)の塩化スズ(II)の溶液、5mLのオレイルアミンに溶解させた77mg(0.777mmol)の塩化第一銅の溶液および5mLのオレイルアミンに溶解させた163mg(5.08mmol)の硫黄元素の溶液を、同時に混合し、攪拌子を備えたマイクロ波シンセサイザの特別なバイアルに入れた。次に、バイアルを、熱硬化点が230℃のInitiator−8マイクロ波(Biotage,Sweden)系に入れる。230℃に達した後、系を10分間この温度に保ってから、バイアルを系から取り出す。ラックの中で30分間冷ました後、バイアルを開け、反応混合物を、等体積(それぞれ20mL)として2つの50mLのFalcon試験管に移した。次に、20mLの体積のエタノールを各管に添加する。溶媒の遠心分離およびデカントによって粒子を回収する。
【0114】
実施例32
CZTS膜の硫化
実施例1の手順にしたがってCZTSナノ粒子を作製した。実施例1にしたがって作製されたCZTSの湿潤ペレット(約100mg)を、トルエンおよびクロロホルムを含む約0.5mLの様々な溶媒に懸濁させてインクを得た。得られたCZTSインクをガラス基板上にバーコーティングした。バーコーティングされた膜を、硫黄富化雰囲気下で、窒素雰囲気の連続流の下で、炉の中で500℃で1時間アニールした。アニールを、外部温度調節器および2インチ石英管を備えた単一ゾーンのLindberg/Blue(Ashville,NC)管炉中で行った。コーティングされた基板を、管の中の石英板上に配置した。長さ3インチのセラミックボートに2.5gの硫黄元素を充填し、セラミックボートを窒素注入口の近くで、直接加熱ゾーンの外に配置した。
【0115】
実施例33
CZTS膜のセレン化
実施例1の手順にしたがってCZTSナノ粒子を作製する。実施例1にしたがって作製されたCZTSの湿潤ペレット(約100mg)を、トルエンおよびクロロホルムを含む約0.5mLの様々な溶媒に懸濁させてインクを得る。得られたCZTSインクをガラス基板上にバーコーティングする。バーコーティングされた膜を、セレン富化雰囲気下で、窒素雰囲気の連続流の下で、炉の中で500℃で1時間アニールした。中央に口および1mmの穴を有する蓋を備えた1/8インチの壁を有する長さ5インチ×幅1.4インチ×高さ1インチの黒鉛ボックス(Industrial Graphite Sales(Harvard,IL)によって特注された)に試料を入れる。各端部に0.1gのセレンを含む2つの小さいセラミックボート(長さ0.984インチ×幅0.591インチ×高さ0.197インチ)を各黒鉛ボックスに装着する。次に、黒鉛ボックスを2インチの管に入れる(1つの管につき黒鉛ボックスは最大で2つまで)。管を10〜15分間真空にかけた後、10〜15分間窒素パージする。このパージプロセスを3回行う。次に、黒鉛ボックスを入れた管を、単一ゾーンの炉中で500℃で1時間加熱する。炉では加熱および冷却が両方とも窒素パージしながら行われる。放出されるガスを、連続バブラー(consecutive bubblers)によって散布する:1MのNaOH(水溶液)の後、1MのCu(NO32(水溶液)。
【0116】
本明細書において数値の範囲が記載または設定されている場合、その範囲は、その端点ならびにその範囲内の全ての個々の整数および端数を含み、また、それらのより狭い範囲の各々が明示的に記載されているのと同程度に、規定の範囲内のより大きなグループの値のサブグループを形成するためにそれらの端点ならびに内部整数および端数の全ての様々な可能な組合せによって形成されるより狭い範囲の各々も含む。数値の範囲が規定値より大きいものとして本明細書に記載されている場合、その範囲は、それにもかかわらず限定され、本明細書に記載の本発明の文脈内で動作可能な値によってその上限が制限される。数値の範囲が規定値より小さいものとして本明細書に記載されている場合、その範囲は、それにもかかわらず0以外の値によってその下限が制限される。
【0117】
本明細書において、特に明確に記載されていない限りまたは使用法の文脈によって矛盾する示唆がない限り、本明細書に記載される量、サイズ、範囲、配合、パラメータ、ならびに他の量および特性は、特に「約」という用語によって修飾される場合、正確であってもよいが正確である必要はなく、また、本発明の文脈の範囲内で、規定値に対する機能的なおよび/または動作可能な等価を有する規定外の値を規定値に含めるだけでなく、許容差、換算係数、丸め誤差、測定誤差などを反映して、概略値であっても、および/または(必要に応じて)規定より大きくてもまたは小さくてもよい。
【0118】
本明細書において、特に明確に記載されていない限りまたは使用法の文脈によって矛盾する示唆がない限り、本発明の主題の実施形態が、特定の特徴または要素を含む(comprising)、包含する(including)、含有する(containing)、有する(having)、で構成される(composed of)またはによって構成される(constituted by)またはで構成される(constituted of)と記載または説明される場合、明確に記載または説明されたものに加えて、1つまたは複数の特徴または要素が実施形態に存在し得る。しかしながら、本発明の主題の代替的な実施形態は、特定の特徴または要素から本質的になる(consisting essentially of)と記載または説明されていることがあり、その実施形態において、実施形態の動作の原理または際立った特性を実質的に変え得る特徴または要素は存在しない。本発明の主題の他の代替的な実施形態は、特定の特徴または要素からなる(consisting of)と記載または説明されることがあり、その実施形態、またはその実質的でない変形例において、具体的に記載または説明された特徴または要素のみが存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、亜鉛、スズ、カルコゲン、およびキャッピング剤を含む四元ナノ粒子であって、前記カルコゲンが、硫黄、セレンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子。
【請求項2】
約1nm〜約1000nmの最長寸法、および/またはケステライト構造を有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
銅対亜鉛対スズ対カルコゲンのモル比が約2:1:1:4であり、または銅対亜鉛およびスズのモル比が1未満であり、または亜鉛対スズのモル比が1より大きい、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記キャッピング剤が、(a)窒素系、酸素系、硫黄系、またはリン系の官能基を含む有機分子、(b)ルイス塩基、または(c)電子対供与基、または電子対供与基に転化可能であり、大気圧における沸点が約150℃未満の基を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
複数のナノ粒子を含む組成物であって、平均最長粒子寸法が、約10nm以下の標準偏差で約10nm〜約100nmの範囲にあるような粒径分布を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
銅−亜鉛−スズ−カルコゲナイド四元ナノ粒子を作製するための方法であって、(a)(i)銅、亜鉛およびスズの金属塩および/または錯体と、(ii)1つまたはそれ以上のカルコゲン前駆体と、(iii)第1のキャッピング剤との反応混合物を溶媒中で形成する工程と、(b)前記反応混合物を加熱してナノ粒子を形成する工程とを含む方法。
【請求項7】
個々の銅、亜鉛およびスズの金属塩および/または錯体を、溶媒と前記第1のキャッピング剤との混合物に順に別々に添加して反応混合物を形成した後、カルコゲン前駆体を前記反応混合物に添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記第1のキャッピング剤より高い揮発性を有する第2のキャッピング剤と前記反応混合物を接触させて、前記ナノ粒子中の前記第1のキャッピング剤を前記第2のキャッピング剤に換える工程、または(b)前記反応混合物から前記ナノ粒子を回収した後、前記第1のキャッピング剤より高い揮発性を有する第2のキャッピング剤と前記ナノ粒子を接触させて、前記ナノ粒子中の前記第1のキャッピング剤を前記第2のキャッピング剤に交換する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のキャッピング剤が、大気圧における約200℃未満の沸点を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有機溶媒と、請求項1に記載の複数のナノ粒子を含む組成物とを含むインク。
【請求項11】
分解可能なバインダー、分解可能な界面活性剤、開裂可能な界面活性剤、約250℃未満の沸点を有する界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つまたはそれ以上のバインダーまたは界面活性剤をさらに含む、請求項10に記載のインク。
【請求項12】
膜として作製される請求項1に記載の複数のナノ粒子を含む組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の複数のナノ粒子を含む組成物の層を基板上に堆積する工程と、前記堆積された組成物の層を乾燥させて層から溶媒を除去する工程とを含む、膜を形成する方法。
【請求項14】
前記膜をアニールするための雰囲気中で前記膜を加熱する工程をさらに含む方法であって、前記雰囲気が、不活性であるか、またはセレン蒸気、硫黄蒸気、水素、硫化水素、セレン化水素、およびそれらの混合物からなる群から選択される反応成分を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記膜が第1のキャッピング剤を含む方法であって、前記第1のキャッピング剤より高い揮発性を有する第2のキャッピング剤と前記膜を接触させて、前記膜の前記ナノ粒子中の前記第1のキャッピング剤を前記第2のキャッピング剤に交換する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のキャッピング剤が、大気圧における約200℃未満の沸点を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の複数のナノ粒子を含む膜を含む電子デバイス。
【請求項18】
前記膜が多層を含み、第1の層が、請求項1に記載の複数のナノ粒子を含み、第2の層が、二元半導体、カルコゲン供給源、ナトリウム含有材料、またはそれらの混合物を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
カルコゲン供給源が、カルコゲン粒子、二元カルコゲナイド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択され、および/またはナトリウム含有材料が、脱プロトン化アルコールのナトリウム塩、脱プロトン化酸のナトリウム塩、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫化ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第1の層が前記第2の層に隣接している、請求項18に記載のデバイス。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527401(P2012−527401A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512057(P2012−512057)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035734
【国際公開番号】WO2010/135622
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】