説明

銅張積層板

【課題】絶縁層の表面粗さが極めて小さいにもかかわらず、絶縁層に対して高い密着強度で銅層が形成された銅張積層板の製造方法を提供する。
【解決手段】電気めっきにより銅合金めっき層が表面に形成された2枚の銅箔の間に、1枚以上のプリプレグを銅合金めっき層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して銅箔をプリプレグに熱圧着する工程、銅箔を銅エッチング液で除去する工程、プリプレグ表面に無電解めっきによりに銅層を形成する工程によって、銅張積層板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅張積層板の製造方法及び銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、硬化性樹脂組成物層表面に銅箔のマット面を貼り合わせ、硬化性樹脂組成物層を硬化させて、銅箔のマット面の凹凸によるアンカー効果によって銅箔と絶縁層(硬化後の硬化性樹脂組成物層)の密着力を高めることで、銅箔を導体層として使用する技術が知られている。また、銅箔を硬化性樹脂組成物層に貼り合わせ、硬化後、銅箔を除去することにより、銅箔のマット面の凹凸を絶縁層に転写し、絶縁層に転写された凹凸のアンカー効果によって絶縁層上に形成するめっき導体層との密着を高める技術が知られている。しかし、一般に絶縁層表面の凹凸が大きくなると、めっき導体層のピール強度が大きくなるが、その反面、回路形成時に不要な導体層をエッチングで除去する際に、凹凸部分の導体層が除去され難く、凹凸部分の導体層を十分に除去し得る条件でエッチングした場合、回路配線の溶解が顕著化し、微細配線化の妨げになるという問題がある。
【0003】
一方、プラズマディスプレイパネル用の銅箔として、光反射防止のために表面をNi合金等で黒化処理した銅箔が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/079130号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、絶縁層の表面粗さが極めて小さいにもかかわらず、絶縁層に対して高い密着強度で銅層が形成された銅張積層板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で銅合金めっき層を絶縁層に向けて熱圧着する工程、銅箔を除去する工程、銅層を形成する工程によって、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
〔1〕以下の工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする、銅張積層板の製造方法;
(A)電気めっきにより銅合金めっき層が表面に形成された2枚の銅箔の間に、1枚以上のプリプレグを銅合金めっき層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して銅箔をプリプレグに熱圧着する工程、
(B)銅箔を銅エッチング液で除去する工程、
(C)プリプレグ表面に無電解めっきによりに銅層を形成する工程。
〔2〕銅合金めっき層の表面粗さ(Ra)が300nm以下であることを特徴とする、上記〔1〕記載の銅張積層板の製造方法。
〔3〕プリプレグ表面の表面粗さ(Ra)が300nm以下であることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕記載の銅張積層板の製造方法。
〔4〕更に(D)銅合金めっき層を除去する工程を含むことを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
〔5〕更に(E)スルーホールを形成する工程を含むことを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
〔6〕更に(F)デスミア工程を含むことを特徴とする、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
〔7〕更に(G)電気めっきにより導体層を形成する工程を含むことを特徴とする、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
〔8〕工程(A)における銅箔として、銅合金めっき層の表面にさらに接着層が積層された銅箔を使用するか、及び/又は、プリプレグとして、表面に接着層を形成したプリプレグを使用することを特徴とする、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
〔9〕銅合金が、Ni−Co−Cu、Ni−Cu、Co−Cuのいずれかから選ばれることを特徴とする、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
〔10〕プリプレグによる絶縁層表面の表面粗さ(Ra)が5nm以上、300nm以下であり、該絶縁層と銅層の剥離強度(kgf/cm)が0.50以上、10以下であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法により製造された銅張積層板。
【発明の効果】
【0008】
特定の条件で銅合金めっき層を絶縁層に向けて熱圧着する工程、銅箔を除去する工程、銅層を形成する工程によって、絶縁層の表面粗さが極めて小さいにもかかわらず、絶縁層に対して高い密着強度で銅層が形成された銅張積層板の製造方法を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の銅張積層板の製造方法は以下の工程を含むことを主たる特徴とする。
(A)電気めっきにより銅合金めっき層が表面に形成された2枚の銅箔の間に、1枚以上のプリプレグを銅合金めっき層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して銅箔をプリプレグに熱圧着する工程、
(B)銅箔を銅エッチング液で除去する工程、及び
(C)プリプレグ表面に無電解めっきによりに銅層を形成する工程。
【0010】
[銅合金めっき層が表面に形成された銅箔]
<銅箔>
銅箔としては、例えば、電解銅箔又は圧延銅箔が使用される。銅合金めっき層が形成される面の表面粗さ(Ra)は150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましい。銅箔の厚みは、特に制限はないが、厚みが大きすぎると取り扱い性が低下するという観点で、上限値は70μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましく、18μm以下が更に一層好ましい。一方、厚みが小さすぎても取り扱い性が低下するという観点で、下限値は9μm以上が好ましい。
【0011】
銅箔には、更にキャリアをつけることにより、銅箔の下限値を9μm未満に引き下げることができる。キャリアとは自己支持性を有するフィルム又はシート状の材料であり、具体的には、銅、アルミニウム等の金属箔、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム等が挙げられる。キャリアの厚みは12〜50μmが好ましく、厚みが12μmより薄い場合は取り扱い性が低下する傾向がある。
なお、キャリア付き銅箔は、キャリア上に、クロム系異種金属からなるか、または、含窒素化合物、含イオウ化合物などの有機物からなる剥離層を形成し、その上に電解めっきで薄く銅膜を形成することで作製される。
【0012】
<銅合金めっき層>
本発明の「銅合金めっき層」は、銅箔上に銅合金のめっき処理を行うことで得られる層である。また、銅合金とは、銅と銅以外の金属からなる合金を意味し、具体的には、Ni−Co−Cu、Ni−Cu、Co−Cuのいずれかから選ばれる。銅合金めっき層の形成方法は、特に制限はなく、一般的な銅箔表面への電解めっきによる銅合金めっき方法に準じて行うことができる。
【0013】
銅箔上に形成された銅合金めっき層の表面粗さ(Ra)が熱圧着後のプリプレグ表面(絶縁層表面)に転写されるという観点から、銅合金めっき層における表面粗さ(Ra)の上限は、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、150nm以下が更に一層好ましい。一方、銅合金めっき層の表面粗さ(Ra)が小さすぎると、熱圧着後のプリプレグ表面(絶縁層表面)に転写される粗面の表面粗さ(Ra)が小さすぎるために、絶縁層表面に形成される導体層の密着性の低下が懸念されるという観点から、銅合金めっき層における表面粗さ(Ra)の下限は10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。
【0014】
銅箔表面へのめっき金属の付着量によって、銅合金めっき層の表面粗さが調整される。具体的には、Ni−Co−Cu層を形成する場合、Ni+Coの付着量(NiとCoの総付着量)が130〜1000mg/mとなるようにめっきを行うのが好ましい。Ni+Coの付着量が130mg/mより少ないと金属箔表面に十分な銅合金めっき層を形成することができなくなる傾向があり、1000mg/mを超えると銅合金めっき層の表面粗さが大きくなりすぎる傾向がある。
【0015】
また、Ni−Cu層を形成する場合、Niの付着量が200〜1000mg/mとなるようにめっきを行うのが好ましい。Niの付着量が200mg/mより少ないと金属箔表面に十分な銅合金めっき層を形成することができなくなる傾向があり、1000mg/mを超えると銅合金めっき層の表面粗さが大きくなりすぎる傾向にある。
【0016】
また、Co−Cu層を形成する場合、Co付着量が300〜1000mg/mとなるようにめっきを行うのが好ましい。Coの付着量が300mg/mより少ないと金属箔表面に十分な銅合金めっき層を形成することができなくなる傾向があり、1000mg/mを超えると銅合金めっき層の表面粗さが大きくなりすぎる傾向にある。
【0017】
以下にNi−Co−Cu層、Ni−Cu層又はCo−Cu層を形成する場合の好適なめっき条件を示す。
(Cu−Ni−Coめっき液)
Cu:5〜30g/L
Ni:5〜30g/L
Co:5〜30g/L
pH:2〜4
液温:20〜60℃
電流密度:30〜60A/dm
【0018】
(Cu−Coめっき液)
Cu:5〜30g/L
Co:10〜30g/L
pH:2〜4
液温:20〜60℃
電流密度:30〜50A/dm
【0019】
(Cu−Niめっき液)
Cu:5〜30g/L
Ni:10〜30g/L
pH:2〜4
液温:20〜55℃
電流密度:30〜55A/dm
【0020】
<防錆処理層>
本発明の銅合金めっき層が表面に形成された銅箔は、銅合金めっき層にさらに防錆処理がなされたものでもよい。防錆処理には、亜鉛(Zn)、クロメート、亜鉛合金(具体的には、Zn−Ni,Zn−Ni−P等)等の無機防錆剤を用いることがき、防錆剤は1種であっても2種以上を混合使用してもよい。また、かかる防錆剤を用いた防錆処理の方法に特に制限はなく、電解めっき法、無電解めっき法、スパッタリング法などを採用することができる。なかでも、Zn・クロメート処理が好適であり、電解めっきによるめっき条件としては具体的には以下の条件が挙げられる。
【0021】
(Zn・クロメート処理液)
Cr:2〜10g/L
Zn:0.1〜0.5g/L
NaSO:5〜20g/L
pH:3.5〜5.0
液温:20〜60℃
電流密度:0.1〜3.0A/dm2
めっき時間:1〜3秒
【0022】
なお、防錆処理によっても銅合金めっき層の表面粗さは実質的に変化しない。よって、防錆処理後の銅合金めっき層の表面粗さ(Ra)の上限も、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、150nmが更に一層好ましい。また、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。
【0023】
<接着層>
本発明の銅合金めっき層が表面に形成された銅箔は、プリプレグとの熱圧着時の接着性向上のために、銅合金めっき層上にさらに接着層が積層されたものであってもよい。銅合金めっき層が防錆処理されている場合は、該防錆処理面上に接着層が積層される。接着層には、具体的には、後述するプリプレグに使用する硬化性樹脂組成物と同様の硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0024】
接着層の厚みは特に限定されるものではないが、薄いほど好ましい傾向にある。具体的には、銅張積層板における熱膨張率上昇や剛性低下の抑制の観点から、接着層の厚みの上限は20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、5μm以下が更に一層好ましい。なお、製造上安定性に優れるという観点から、接着層の厚みの下限は0.5μm以上好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0025】
接着層は銅合金めっき層上に硬化性樹脂組成物層を形成することにより得ることができる。接着層の形成方法は特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、銅合金めっき層上に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて形成することができる。
【0026】
有機溶剤としては、樹脂組成物が溶解するものであれば特に制限はないが、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は1種を使用または2種以上を混合使用してもよい。
【0027】
乾燥条件は樹脂組成物中の有機溶剤含有量を低下できさえすれば特に限定はないが、乾燥終点の樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点等によっても異なるが、具体的には30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分乾燥させることにより、接着層を形成することができる。
【0028】
接着層は、銅箔とは別に、支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成した接着フィルムを作製し、その硬化性樹脂組成物層を銅箔表面の銅合金めっき層上に接触するように、接着フィルムと銅箔とを加熱条件下で貼り合わせる方法によって形成することもできる。
【0029】
ここでの接着フィルムの支持体とは、自己支持性を有するフィルム又はシート状物であり、プラスチックフィルム等を用いることができ、特にプラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、コストパフォーマンスの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、支持体自身を剥離させやすいという観点で、支持体表面に表面処理(コロナ処理等)を施すか、支持体表面に離型層を形成させることが好ましい。支持体は市販のものを用いることもでき、具体的には、T60(東レ(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、A4100(東洋紡績(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、Q83(帝人デュポンフィルム(株)製、ポリエチレンナフタレートフィルム)、リンテック(株)製のアルキッド型離型剤(AL−5)付きポリエチレンテレフタレートフィルム、ダイアホイルB100(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)等が挙げられる。
【0030】
接着フィルムと銅箔の貼り合わせは、接着フィルムをその硬化性樹脂組成物層が銅箔と対向するように銅箔に重ねて、熱プレス、熱ロール等によって行なう。この際の加熱温度は、好ましくは60〜140℃の範囲から選択され、より好ましくは80〜120℃の範囲から選択される。圧着圧力は、好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)、より好ましくは2〜7kgf/cm(19.6×10〜68.6×10N/m)の範囲から選択される。時間は、5秒〜3分の範囲が好ましく、15秒〜1分の範囲がより好ましい。また、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で積層するのが好ましい。なお、かかる接着フィルムと銅箔の貼り合わせにおける加熱、圧着等の処理は、硬化性樹脂組成物層が硬化反応の中間段階(Bステージ)で止まるように実施されるのが好ましい。
【0031】
なお、本発明における「銅合金めっき層が表面に形成された銅箔」は市販品を使用することができる。具体的には、日鉱金属(株)製の「HLPFN」(銅合金めっき層:Ni−Co−Cu、防錆処理:Zn・クロメート処理、表面粗さ(Ra):約250nm)、日鉱金属(株)製の「BHY−HA」(銅合金めっき層:Ni−Co−Cu、防錆処理:Zn・クロメート処理、表面粗さ(Ra):約300nm)が挙げられる。
【0032】
[プリプレグ]
本発明におけるプリプレグは、シート状繊維基材に硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥させて得ることができる。硬化性樹脂組成物は、その硬化物が、十分な硬度と絶縁性を有するものであれば、特に限定なく使用でき、具体的には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の硬化性樹脂にその硬化剤を少なくとも配合した組成物が使用される。特にエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する組成物が好ましく、エポキシ樹脂及び硬化剤とともに熱可塑性樹脂をさらに含有する組成物がより好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂としては、硬化性を有するものであれば特に制限はないが、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種使用または2種以上を混合使用してもよい。
【0034】
耐熱性、絶縁信頼性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D」等)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」、「ESN−185V」)、アントラキノン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8800」、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、「NC3000」、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」、東都化成(株)製「GK3207」)がより好ましい。
【0035】
硬化剤としては、硬化させる能力がありさえすれば特に制限はないが、具体的には、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル樹脂等を挙げられる。これらの硬化剤は1種使用または2種以上を混合使用してもよい。めっきの剥離強度を向上させる観点から、硬化剤としては分子構造中に窒素原子を有するものが好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましく、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が更に好ましい。
【0036】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤については、特に制限はないが、具体的には、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、TD2090(DIC(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤は、特に制限はないが、具体的には、LA3018、LA7052、LA7054、LA1356(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0037】
活性エステル系硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル系硬化剤は1種使用または2種以上を混合使用してもよい。活性エステル系硬化剤としては、特開2004−427761号公報に開示されている活性エステル系硬化剤を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル系硬化剤としては、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB−9451、EXB−9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製)、などが挙げられる。
【0038】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体的例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
【0039】
シアネートエステル樹脂は、具体的には、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。好ましいシアネートエステル樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。市販されているシアネートエステル樹脂としては、ロンザジャパン(株)製、PT30(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂、シアネート当量124)、ロンザジャパン(株)製、BA230(ビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され、三量体となったプレポリマー、シアネート当量232)、ロンザジャパン(株)製、DT4000(ジシクロペンタジエン型多官能シアネートエステル樹脂、シアネート当量140)等が挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、樹脂が効果しさえすれば特に制限はないが、具体的には、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対してこれら硬化剤のフェノール性水酸基当量が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.4〜1.0の範囲となる比率がより好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率が更に好ましい。反応基当量比がこの範囲外であると、硬化物の機械強度や耐水性が低下する傾向になる。
【0041】
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤に加え、硬化促進剤をさらに配合することができる。このような硬化促進剤としては、硬化促進作用を有していれば特に制限はないが、例えば、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、有機ホスフィン・ホスホニウム化合物等が挙げられる。具体的には、四国化成(株)製の2MZ(2-メチルイミダゾール)、C11Z(2-ウンデシルイミダゾール)、C17Z(2−ヘプタデシルイミダゾール)、1.2DMZ(1,2−ジメチルイミダゾール)、2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ(2−フェニルイミダゾール)、2P4MZ(2−フェニル−4−メチルイミダゾール)、1B2MZ(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール)、1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)、2MZ−CN(1 - シアノエチル−2−メチルイミダゾール)、C11Z−CN(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ−CN(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ−CN(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)、C11−CNS(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト)、2PZCNS−PW(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト)、2MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、C11Z−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2E4MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2MA−OK(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)、2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)、2P4MHZ−PW(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)、TBZ(2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール)、SFZ(1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド)、P−0505(エポキシ−イミダゾールアダクト)等のイミダゾール化合物;サンアプロ(株)製のU-CAT SA 1(DBU-フェノール塩)、U-CAT SA 102(DBU-オクチル酸塩)、U-CAT SA 506(DBU-p-トルエンスルホン酸塩)、U-CAT SA 603(DBU-ギ酸塩)、U-CAT SA 810(DBU-オルトフタル酸塩)、U-CAT SA 831、841、851、U-CAT 881(DBU-フェノールノボラック樹脂塩)、U-CAT 5002(N-ベンジルDBU-テトラフェニルボレート塩)等のジアザビシクロ化合物;北興化学工業(株)製、TPP−S(トリフェニルホスフィントリフェニルボラン)、TPP−K(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)、TBP−DA(テトラブチルホスホニウムデカン酸塩)などの有機ホスフィン・ホスホニウム化合物、等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0042】
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物に適度な可撓性を付与する等の目的で熱可塑性樹脂を配合することができる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が挙げられる。これらはいずれか1種使用するかまたは2種以上を混合使用してもよい。当該熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂組成物の不揮発分を100質量%としたとき、0.5〜60質量%の割合で配合するのが好ましく、より好ましくは3〜50質量%である。熱可塑性樹脂の配合割合が0.5質量%未満の場合、樹脂組成物粘度が低いために、均一な熱硬化性樹脂組成物層を形成することが難しくなる傾向となり、60質量%を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、樹脂がガラスクロス間の隙間に流動せず、ガラスクロス内にボイドが残りやすくなる傾向となる。
【0043】
フェノキシ樹脂は特に限定されないが、具体的には、東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YL6954、YL6974、YL7213、YL6794、YL7482、YL7553、YL7290等が挙げられる。
【0044】
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0045】
ポリイミドの具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0046】
ポリアミドイミドの具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0047】
ポリエーテルスルホンの具体例としては、住友化学(株)製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。
【0048】
ポリスルホンの具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0049】
本発明における硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物の低熱膨張化のために無機充填材を含有させることができる。無機充填材としては、具体的には、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが好ましい。シリカとしては球状のものが好ましい。なお、無機充填剤は絶縁信頼性の観点から、平均粒径が3μm以下であるのが好ましく、平均粒径が1.5μm以下であるのがより好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0050】
無機充填材は、耐湿性、分散性等の向上のため以下の表面処理剤により表面処理されることが好ましい。表面処理剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物;ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられる。これらは1種使用または2種以上を混合使用してもよい。
【0051】
硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、本発明の効果を阻害しない程度であれば特に制限はないが、硬化性樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、20〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましく、20〜50質量%が更に一層好ましい。無機充填剤の含有量が20質量%未満の場合、熱膨張率の低下効果が十分に発揮されない傾向にあり、無機充填剤の含有量が80質量%を超えると、硬化物の機械強度が低下する傾向となる。
【0052】
また、硬化性樹脂組成物は、硬化物の機械強度を高める、応力緩和効果等の目的で固体状のゴム粒子を含有してもよい。ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、具体的には、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、具体的には、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は具体的には、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は具体的には、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW-4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK-500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)などが挙げられる。
【0053】
本発明におけるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。具体的には、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA-1000(大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。配合するゴム粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。
【0054】
ゴム粒子を配合する場合の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、2〜5質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0055】
また、硬化性樹脂組成物は、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲でマレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂などのエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を配合することもできる。このような熱硬化性樹脂は1種使用または2種以上を混合使用してもよい。マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0056】
また、硬化性樹脂組成物は、難燃性をさらに付与する目的として、難燃剤を含有させることができる。難燃剤としては、具体的には、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPE100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。これら難燃剤は1種使用または2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
また、硬化性樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲で、上述した以外の他の各種樹脂添加剤を任意で含有しても良い。樹脂添加剤としては、具体的には、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、シランカップリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げられる。
【0058】
シート状繊維基材は、特に制限はないが、具体的にはガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。具体的には、旭シュエーベル(株)製スタイル1027MS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布質量20g/m2、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製スタイル1037MS(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布質量24g/m2、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製1078(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布質量48g/m2、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製2116(経糸密度50本/25mm、緯糸密度58本/25mm、布質量103.8g/m2、厚さ94μm)、等のガラスクロス基材;(株)クラレ製の芳香族ポリエステルからメルトブロー法により製造されたベクルス(目付け量6〜15g/m2)や(株)クラレ製のベクトランを繊維素材とする不織布等が挙げられる。シート状繊維基材は、厚さが10〜150μmのものが好ましく、10〜100μmのものがより好ましい。
【0059】
プリプレグは、公知のホットメルト法、ソルベント法などにより製造することができる。ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂組成物ワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、支持体上に積層された硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムをシート状補強基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで調製することもできる。
【0060】
ワニスを調製する場合の有機溶剤としては、樹脂組成物が溶解しさえすれば特に制限はないが、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げられる。これら有機溶剤は1種使用または2種以上を混合使用してもよい。
【0061】
乾燥条件は特に限定されないが、熱圧着工程における温度で硬化性樹脂組成物が流動性及び接着性を有する必要がある。従って、乾燥時には硬化性樹脂組成物の硬化をできる限り進行させないことが重要となる。一方、プリプレグ内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、乾燥終点における硬化性樹脂組成物中への有機溶剤の含有量は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。具体的な乾燥条件は、硬化性樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、80〜180℃で3〜13分乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0062】
また、銅合金めっき層の表面にさらに接着層が積層された銅箔を使用する場合には、あらかじめプリプレグを減圧下で加圧及び加熱したものを用いることもできる。
【0063】
あらかじめプリプレグを減圧下で加圧及び加熱したものは、具体的には、市販されている金属張積層板の金属箔を除去して作製することができ、また、上記プリプレグを用いて減圧下で加圧及び加熱して銅箔をプリプレグに熱圧着して作製した銅張積層板の銅箔を除去して作製することができ、また、離型剤で処理されたプラスチックフィルムで上記プリプレグを挟み、減圧下で加圧及び加熱して熱圧着した後、離型処理されたプラスチックフィルムを剥離することで作製することができる。
【0064】
減圧下で加圧及び加熱を行う熱圧着工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことができる。具体的には、加熱されたSUS板等の金属板を支持体あるいは銅箔の両面からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、減圧度を1×10−2MPa以下、好ましくは1×10−3MPa以下の減圧下とする。加圧及び加熱は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。具体的には、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm、時間が10〜60分の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜250℃、圧力が1〜40kgf/cm、時間が60〜120分の範囲で行うのが好ましい。
【0065】
本発明において、プリプレグは、以上説明したものに限定されず、市販されているプリプレグを使用することもできる。具体的には、日立化成(株)製、「GEA−679FG」、三菱ガス化学(株)製、「CCL−HL832NX Type A」、「CCL−HL832NB」等を挙げられる。
【0066】
プリプレグの厚さは、特に制限はないが、ガラスクロスのコスト及びプリプレグとして所望される剛性の観点から、20〜250μmが好ましく、20〜180μmがより好ましく、20〜150μmが更に好ましい。なお、プリプレグの厚さは、硬化性樹脂組成物の含浸量を調整することにより、容易にコントロールすることが出来る。また、プリプレグはプレスでボイドなく積層可能な流動性を持つことが必要であり、最低溶融粘度が200〜30000poiseの範囲であることが好ましく、1000〜20000poiseの範囲であることが特に好ましい。
【0067】
なお、前記で説明した、銅合金めっき層上に形成した接着層は、プリプレグ表面に形成させてもよい。この場合、具体的には、有機溶剤に樹脂組成物を溶解させた樹脂ワニス中に、プリプレグを含浸させて、又は、樹脂ワニスをプリプレグ上に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより、プリプレグ表面に接着層を形成することができる。有機溶剤及び乾燥条件は、前記と同様である。
【0068】
[銅張積層板の製造方法]
本発明の銅張積層板の製造方法は、少なくとも以下の(A)、(B)及び(C)の工程を経る。
(A)電気めっきにより銅合金めっき層が表面に形成された2枚の銅箔の間に、1枚以上のプリプレグを銅合金めっき層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して銅箔をプリプレグに熱圧着する工程、
(B)銅箔を銅エッチング液で除去する工程、
(C)プリプレグ表面に無電解めっきによりに銅層を形成する工程
【0069】
工程(A)において、減圧下で加熱及び加圧して銅箔をプリプレグに熱圧着する作業は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことができる。具体的には、加熱されたSUS板等の金属板を支持体あるいは銅箔両面からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、減圧度を1×10−2MPa以下、好ましくは1×10−3MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。具体的には、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm、時間が10〜60分の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜250℃、圧力が1〜40kgf/cm、時間が60〜120分の範囲で行うのが好ましい。
【0070】
市販されている真空ホットプレス機としては、具体的には、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0071】
2枚以上のプリプレグを用いる場合、異なるプリプレグを用いることもできる。具体的には、プリプレグを構成する、硬化性樹脂組成物の組成や、シート状繊維基材の材料や厚みなどの一部又は全部が異なるものを用いてもよく、全く同じものを用いてもよい。なお、銅箔が銅合金めっき層にさらに接着層を積層したものであるか、或いは、プリプレグがその表面に接着層を形成したものである場合、銅箔とプリプレグの間に接着層が介在するように、2枚の銅箔の間に1枚以上のプリプレグを配置して、同様の方法で、プリプレグと銅箔の銅張積層板前駆物を作製する。
【0072】
また、作業性の観点より、予め銅箔にプリプレグを貼り合わせた銅箔付きプリプレグを用いても良い。この場合、銅箔付きプリプレグ2枚を、プリプレグ側を対向させて重ねるか、又は、該銅箔付きプリプレグ2枚のプリプレグ間に別のプリプレグ1枚以上を配置して重ねた後、減圧下で加熱及び加圧して、プリプレグと銅箔の銅張積層板前駆物を作製する。銅箔とプリプレグの貼り合わせは、銅箔の銅合金めっき層とプリプレグが接するように、熱プレス、バッチラミネータ、ロールラミネータ等で積層させて行うことができる。加熱温度は、銅箔付きフィルムとプリプレグの接着性の観点から60℃以上が好ましい。また温度が高すぎると、プリプレグの硬化がすすみ、樹脂の流動性が低下する傾向にあるため、170℃未満が好ましい。積層の圧力は、バッチ式ラミネータの場合、1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm(19.6×10〜68.6×10N/m)の範囲が特に好ましい。積層時間は、5秒〜3分の範囲が好ましい。ロール式ラミネータの場合、線圧が1〜15Kgf/cm、好ましくは1〜10kgf/cmである。圧力が小さすぎると、樹脂組成物の流動性が不十分となり金属膜層との密着性が低下する傾向にあり、大きすぎると、樹脂のしみだしにより、所定の膜厚を維持することが困難となる傾向となる。
【0073】
また、あらかじめプリプレグを減圧下で加圧及び加熱したものを使用する場合、そのプリプレグ表面に接着層を有する銅箔を積層し、加熱するか、又は、減圧下で加熱及び加圧して熱圧着することで、プリプレグと銅箔の銅張積層板前駆物を作製する。また、あらかじめプリプレグを減圧下で加圧及び加熱したものの表面に接着層を形成し、その上に銅箔を積層し、加熱するか、又は、減圧下で加熱及び加圧して熱圧着することで、目的の銅張積層板前駆物を作製することもできる。
【0074】
この場合、積層はロール、ラミネート法、プレス圧着等で行うことができ、なかでも、真空ラミネート法により減圧下で積層するのが好適である。また、積層の方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0075】
また、積層時の加熱温度は、60〜140℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。圧力は、1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm(19.6×10〜68.6×10N/m)の範囲が特に好ましい。時間は、5秒〜3分の範囲が好ましく、15秒〜1分の範囲がより好ましい。空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で積層するのが好ましい。
【0076】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、具体的には、(株)名機製作所製 バッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコーター、日立エーアイーシー(株)製 真空ラミネーター等を挙げられる。
【0077】
積層後の硬化条件は硬化性樹脂の種類等によっても異なるが、一般に硬化温度が120〜200℃、硬化時間が15〜90分で行うことが好ましい。なお、比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ段階的に硬化させる、又は上昇させながら硬化させる方が、形成される絶縁層表面のしわ防止の観点から好ましい。
【0078】
なお、本発明において、「電気めっきにより銅合金めっき層が表面に形成された2枚の銅箔の間に1枚以上のプリプレグを銅合金めっき層がプリプレグ側となるように配置」とは、プリプレグと、銅合金めっき層が表面に形成され銅箔との相対的な配置関係を規定しており、銅箔付きプリプレグを使用する場合、前述のとおり、銅箔付きプリプレグにおいて、銅箔の銅合金めっき層がプリプレグ側に配置されているため、銅箔付きプリプレグ2枚をプリプレグ側を対向させて重ねるか、又は、かかるプリプレグ側を対向させた2枚の銅箔付きプリプレグの間に別のプリプレグ1枚以上をさらに配置し、それらを減圧下で加熱及び加圧することで、本工程(A)が実施される。
【0079】
工程(B)での銅箔の除去は、目的が達成されれば特に制限はないが、具体的には、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、ペルオキソ二硫酸ナトリウムと硫酸の水溶液等の銅エッチング液により行う。市販の銅エッチング液としては、メック(株)製のCF−6000、メルテックス(株)製のE−プロセス―WL等のアルカリ性エッチング液が挙げられる。銅箔の厚み等によっても異なるが、銅箔の除去は、一般に、銅箔をエッチング液(20〜60℃)に10〜60分程度浸漬させる浸漬法によって行うことができる。また、エッチング液をスプレー状にして、プリプレグと銅箔の銅張積層板前駆物に吹きかけてエッチングする方法でも良い。条件は浸漬法と同様である。
【0080】
かかる銅エッチング液による銅箔の除去処理によって、銅箔の除去処理後に露出するプリプレグの表面には、銅合金めっき層を有する銅箔の表面粗さ(Ra)が300nm以下の微細な粗面が転写される。銅箔の除去処理後に露出するプリプレグの表面粗さ(Ra)の上限は300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、150nm以下が更に一層好ましい。銅箔表面に形成されていた銅合金めっき層は銅箔の除去処理によって銅箔とともに殆どが除去されるが、プリプレグの表面に一部が残存してもよい。銅合金めっき層の残存量はX線光電子分光(XPS)によって測定され、その測定値で1.0atomic%以上となりうる。なお、銅合金めっき層の残存量が異なってもプリプレグの表面粗さ(Ra)は一定である。また、銅合金めっき層の表面は防錆処理がなされている場合が多いが、ここにおける銅合金めっき層の残存量とは、銅合金めっき層の表面が防錆処理されている場合、銅合金めっき層と防錆処理被膜の合計量である。なお、防錆処理被膜が残存しても特に問題はない。工程(A)の後に、工程(B)を行うことが好ましい。
【0081】
本発明の銅張積層板の製造方法には、更に、(D)銅合金めっき層を除去する工程を含ませることにより、高周波でのノイズの原因となる懸念がある銅合金めっき層を除去し、絶縁層表面に残存する銅合金めっきを減量でき、高周波での電気特性を向上させることができる。また、回路形成後、銅ランド上にバンプを形成するために、銅ランド上にAu−Ni無電解めっきを行う場合に、本来無電解めっきが析出しない樹脂表面上にも微小な銅合金めっきを核としてめっきが析出するなどの不具合の発生を回避させることができる。
【0082】
工程(D)は、酸化剤溶液処理によって行うことができ、特に制限はないが、かかる酸化剤溶液処理は、具体的には、(a)膨潤液による膨潤処理、(b)酸化剤溶液による粗化処理及び(c)中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。
【0083】
膨潤液としては、特に制限はないが、具体的には、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、アルカリ溶液が好ましく、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等の市販の膨潤液を使用してもよい。
膨潤液による膨潤処理は、特に制限はないが、例えば、銅箔が除去された処理面に20〜50℃の膨潤液を10秒〜2分付す方法によって行うことができる。作業性、樹脂が膨潤されすぎないようにできるという観点から、銅箔が除去された対象物を20〜50℃の膨潤液に10秒〜1分浸漬する方法が好ましい。
【0084】
酸化剤溶液としては、特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解させたアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%が好ましい。また、市販されている酸化剤溶液を使用してもよい。市販されている酸化剤溶液としては、具体的には、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ド−ジングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。酸化剤溶液による粗化処理は、特に制限はないが、例えば、膨潤液による膨湿処理がなされた処理面に20〜60℃の酸化剤溶液を10秒〜2分付す方法によって行うことができる。作業性、樹脂が粗化されすぎないようにできるという観点から、膨湿処理がなされた対象物を、20〜50℃の酸化剤溶液に10秒〜1分浸漬する方法が好ましい。
【0085】
中和液としては、特に制限はないが、具体的には、酸性の水溶液が挙げられる。また、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)を使用してもよい。
中和液による処理は、特に制限はないが、例えば、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面に20〜60℃の中和液を10秒〜2分付す方法によって行うことができる。効率的な作業性を確保できるという観点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた対象物を、20〜50℃の中和液に10秒〜1分浸漬する方法が好ましい。
【0086】
以上の酸化剤溶液による処理を行うことで、銅合金めっき層は略完全に除去され、酸化剤溶液による処理後のプリプレグの露出面には銅合金めっきが存在しないか、存在していてもXPSによる測定値で0.1atomic%以下である。また工程(D)は、工程(C)の前に行うことが好ましい。
【0087】
本発明の銅張積層板の製造方法において、工程(C)のプリプレグ表面に無電解めっきにより銅層を形成する工程は、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。具体的には、プリプレグ表面を界面活性剤等で処理し、パラジウム等のめっき触媒を付与した後、無電解めっき液に浸漬することで銅層を形成することができる。銅層の厚みは、0.1〜5.0μmが好ましく、0.2〜2.5μmがより好ましく、0.2〜1.5μmが更に好ましい。なお、銅層は、無電解めっきの一種であるダイレクトプレーティング法によって形成してもよい。工程(C)は、工程(B)を経て露出したプリプレグ表面に施すことが好ましく、工程(D)を経て露出したプリプレグ表面に施すことがより好ましい。
【0088】
本発明の銅張積層板の製造方法には、更に、工程(E)のスルーホールを形成する工程、を含ませることができる。工程(E)は、目的が達成されれば特に制限はないが、具体的には、機械ドリル、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等により行うことができる。工程(E)は、工程(A)若しくは工程(B)若しくは工程(D)の後に行うことが好ましい。ドリル加工中に樹脂表面が傷つくのを防止する観点や、スルーホール形成後にデスミア液により絶縁層表面が粗化されず、微細配線化を可能とする観点から、工程(E)は工程(B)の前に行うことがより好ましい。
【0089】
本発明の銅張積層板の製造方法には、更に、工程(F)のデスミア工程を含ませることができ、これにより、スルーホール形成により生じた壁面の残渣を除去し、壁面の粗化を行うことができる。工程(F)は、特に制限はなく、公知の方法によって行うことができる。具体的には、プラズマ等のドライ法、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤溶液処理(ウエット法)が好ましい。壁面のスミアを除去すると同時に、壁面が酸化剤で粗化され、めっき密着強度を向上させることができる観点から、酸化剤溶液処理がより好ましい。
【0090】
工程(F)における酸化剤溶液処理は、特に制限はないが、(a)膨潤液による膨潤処理、(b)酸化剤溶液による粗化処理及び(c)中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。
【0091】
膨潤液としては、特に制限はないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、アルカリ溶液が好ましく、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等の市販の膨潤液を使用してもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に制限はないが、具体的には、30〜90℃の膨潤液を1分〜15分付すことで行われる。作業性、樹脂が膨潤されすぎないようにする点から、40〜80℃の膨潤液に5秒〜10分浸漬する方法が好ましい。
【0092】
酸化剤溶液としては、特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%が好ましい。また、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ド−ジングソリューション セキュリガンスP等の市販の酸化剤溶液を使用してもよい。酸化剤溶液による粗化処理は、特に制限はないが、具体的には、膨潤液による膨湿処理がなされた処理面に50〜90℃の酸化剤溶液を10分〜40分付す方法を用いることができる。作業性、樹脂が粗化されすぎないようにする点から、膨湿処理がなされた対象物を、60〜85℃の酸化剤溶液に20分〜30分浸漬する方法が好ましい。
【0093】
中和液としては、特に制限はないが、酸性の水溶液が好ましい。アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシション・セキュリガントP等の市販の中和液を使用してもよい。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面に30〜80℃の中和液を5分〜30分付す方法を用いることができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた対象物を、40〜70℃の中和液に5分〜20分浸漬する方法が好ましい。
【0094】
工程(E)の後に、工程(F)を行うことが好ましい。後に無電解めっきを行い、スルーホールの接続信頼性を高めるという観点から、工程(F)は工程(C)の前に行うのがより好ましい。工程(B)の際にビア底の下地銅層表面がエッチングされビア底のスミアをより完全に除くことができ、さらに絶縁層表面が粗化されるのを防ぐと言う観点から、工程(F)は工程(B)の前に行うのが更に好ましい。
【0095】
本発明の銅張積層板の製造方法には、更に、(G)電気めっきにより導体層を形成する工程、を含ませることができる。該工程(G)における導体層形成方法は、特に制限はないが、セミアディティブ法等の公知の方法により行うことができる。具体的には、めっきレジストを形成し、上記の工程(C)で形成した銅層をめっきシード層として、電気めっきにより導体層を形成することが好ましい。電気めっきによる導体層は銅が好ましい。導体層の厚みは所望の回路基板のデザインにもよるが、一般に3〜35μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。工程(C)の後に、工程(G)を行うことが好ましい。
【0096】
本発明方法によれば、表面粗さ(Ra)が極めて低い絶縁層表面に高い密着強度の導体層を形成できる。即ち、プリプレグによる絶縁層表面の表面粗さ(Ra)は極めて低く、該絶縁層表面に高い密着強度の導体層を形成することができる。絶縁層と銅めっき層(導体層)との接着性が良好であるという観点から、絶縁層表面の表面粗さ(Ra)の下限は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましい。一方、回路形成の際の不要導体層のエッチングによる作業性と微細配線形成性が良好であるという観点から、絶縁層表面の表面粗さ(Ra)の上限は、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、150nm以下が更に一層好ましい。
【0097】
絶縁層への接着安定性に優れ高信頼性の回路形成が可能であるという観点から、該絶縁層と銅層の剥離強度(kgf/cm)の下限は、0.50以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.60以上が更に好ましく、0.65以上が更に一層好ましい。一方、剥離強度は高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、該絶縁層と銅層の剥離強度(kgf/cm)の上限は、性能的に十分であるという観点から、2以下が好ましく、5以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、100以下が更に一層好ましい。
【0098】
本発明において、このような平滑性が高い(すなわち、表面粗さが極めて小さい)絶縁層表面に剥離強度の高い導体層を形成することが可能となる理由は、銅箔除去後の樹脂表面に、銅めっき層の密着性を高めるのに適した非常に緻密な粗面が形成されることが一因と考えられる。
【0099】
本発明の銅張積層板は、エッチングによるめっきシード層の除去を温和な条件で行え、配線パターンの溶解を抑制することができるため、微細配線形成が要求される回路基板、更にはこれらを搭載した、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物にも使用することができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0101】
まず、本明細書での物性評価における測定方法について説明する。
【0102】
<導体層の剥離強度>
導体層の剥離強度をJIS C6481に準拠し、以下の方法で測定した。
下記の実施例および比較例において得られた銅張積層板を150mm×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターで幅10mm、長さ100mmの切込みをいれ、銅箔の一端をはがして掴み具で掴み、インストロン万能試験機を用いて室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重を測定し、剥離強度とした。導体層の厚みは約30μmとした。
【0103】
<絶縁層表面粗さ>
回路基板上の無電解銅めっき層及び電解銅めっき層を銅エッチング液で除去し、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして、銅箔をエッチング除去した後あるいは銅合金めっき層を除去した後のプリプレグ表面を測定して、表面粗さ(Ra値)を求めた。なお、Ra値は、ランダムに測定範囲を3箇所設定し、3箇所の測定値の平均値を採用した。
【0104】
〔プリプレグの表面における銅合金めっきの残存量測定方法〕
<測定装置>
装置型式:QUANTERA SXM( 全自動走査型X線光電子分光分析装置 )
到達真空度:7.0×10−10Torr
X線源:単色化 Al Kα(1486.6eV)
分光器:静電同心半球型分析器
検出器:多チャンネル式(32 Multi−Channel Detector)
中和銃設定 電子:1.0V(20μA)、イオン:10.0V(7mA)
<測定条件>
<サーベイスペクトル>
X線ビーム径:100μmΦ (HPモード、100.6W、20kV)
測定領域:1400μm×100μm
信号の取り込み角:45.0°
パスエネルギー:280.0eV
【0105】
〔実施例1〕
<プリプレグの作製>
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、DIC(株)製「N740」)25部、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量208、ジャパンエポキシレジン(株)製「157S70B75」、固形分75質量%のシクロヘキサノン溶液)25部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量170、DIC(株)製「EXA4710」)35部及びフェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)25部を、MEK15部とシクロヘキサノン15部の混合液に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、固形分60質量%のMEK溶液)30部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分60質量%のMEK溶液20部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)60部、有機リン系難燃剤(三光(株)製、「HCA−HQ」)25部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)をエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶媒に溶解した固形分15質量%の溶液10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製2116ガラスクロス(厚み94μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて140℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中0.8質量%、プリプレグの厚みは120μmであった。
【0106】
<銅張積層板前駆物の作製>
表面に電気めっきによるNi−Co−Cuの銅合金めっき層を有し、該表面上にZn及びクロメートの防錆処理がされ、そのRa値が250nmである銅箔(厚み18μmの電解銅箔)(日鉱金属(株)製「HLPFN」)及びプリプレグを340mm×500mmの大きさに裁断機で裁断した。その後、2枚の銅箔の間に2枚のプリプレグを設置し、(株)名機製作所製真空プレス機(MNPC−V−750−750−5−200)によって、減圧度を1×10−3MPaとし、圧力が10kgf/cmで、昇温速度3℃/分で室温から130℃迄上昇させて30分保持した後、圧力を30kgf/cmとし、昇温速度3℃/分で190℃まで昇温させて90分保持することで、銅張積層板前駆物を作製した。
【0107】
<銅箔の除去>
銅張積層板前駆物を塩化第二鉄水溶液に25℃で20分間浸漬させ、銅箔を除去した。なお、銅箔が除去された露出面には、銅合金めっき層が1.0atomic%以上残存していた。
【0108】
<銅張積層板の作製及び導体層の形成>
上記処理により銅箔が除去された露出面に対して、下記のアトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセスを使用して無電解銅めっきを行い、膜厚1μmの銅めっき層を形成し、銅張積層板を作製した。その後、電解銅めっきを行って合計30μm厚の導体層を形成して回路基板を得た。
【0109】
<アトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセス>
1.アルカリクリーニング(樹脂表面の洗浄と電荷調整)
商品名:Cleaning cleaner Securiganth 902
条件:60℃で5分
2.ソフトエッチング(ビア底、導体の銅の洗浄)
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液
条件:30℃で1分
3.プレディップ(次工程のPd付与のための表面の電荷の調整が目的)
商品名:Pre. Dip Neoganth B
条件:室温で1分
4.アクティヴェーター(樹脂表面へのPdの付与)
商品名:Activator Neoganth 834
条件:35℃で5分
5.還元(樹脂に付いたPdを還元する)
商品名:Reducer Neoganth WA
:Reducer Acceralator 810 mod.の混合液
条件:30℃で5分
6.無電解銅めっき(Cuを樹脂表面(Pd表面)に析出させる)
商品名:Basic Solution Printganth MSK-DK
:Copper solution Printganth MSK
:Stabilizer Printganth MSK-DK
:Reducer Cu の混合液
条件:35℃で20分
【0110】
〔実施例2〕
銅箔付きプリプレグを用いた以外は実施例1と同様な方法で回路基板を作製した。以下に銅箔付きプリプレグの作製方法及び回路基板の作製方法を示す。
【0111】
<プリプレグの作製>
実施例1で調製した硬化性樹脂組成物のワニスを、(株)有沢製作所製2116ガラスクロス(厚み94μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて140℃で5分間乾燥させ、続いてプリプレグの一方の面に、厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを、もう一方の面に厚さ12μmのポリエチレンフィルムを連続的にラミネートし、ロール状に巻き取った。プリプレグ中の残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中1〜0.1質量%、プリプレグ層の厚みは120μmであった。
【0112】
<銅箔付きプリプレグの作製>
ロール式ラミネータを用い、上記ロール状プリプレグのポリエチレンフィルムを剥がしながら、実施例1と同様の銅箔の防錆処理層がプリプレグに接触するように、ロール温度100℃、線圧5kg/cm、ラミネートスピード6m/分で貼り合わせ、得られた銅箔付きプリプレグをロール状に巻取った。
【0113】
<銅張積層板前駆物の作製>
ロール状の銅箔付きプリプレグを340mm×500mmの大きさに裁断機で裁断した。銅箔付きプリプレグにシワや反りは見られなかった。裁断した銅箔付きプリプレグ2枚のポリプロピレンフィルムを剥がし、プリプレグ表面を相対させて重ねた後、(株)名機製作所製真空プレス機(MNPC−V−750−750−5−200)によって、減圧度を1×10−3MPaとし、圧力が10kgf/cmで、昇温速度3℃/分で室温から130℃迄上昇させて30分保持した後、圧力を30kgf/cmとし、昇温速度3℃/分で190℃まで昇温させて90分保持することで、銅張積層板前駆物を作製した。その後、実施例1と同様の方法にて銅張積層板及び回路基板を作製した。なお、銅箔が除去された露出面には、銅合金めっき層が1.0atomic%以上残存していた。
【0114】
〔実施例3〕
実施例1と同じ銅箔を使用し、下記のとおり接着層付き銅箔を作製した。
【0115】
<硬化性樹脂組成物のワニスの作製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)28部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4700」)28部及びフェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部を、MEK25部とシクロヘキサノン25部の混合液に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、固形分60質量%のMEK溶液)27部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分50質量%のMEK溶液27部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)70部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)をエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶媒に溶解した固形分15質量%の溶液30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
【0116】
<接着層付き銅箔の作製>
銅箔上に上記ワニスをダイコーターにより塗布し、熱風乾燥炉を用いて溶剤を除去し、硬化性樹脂組成物層の厚みが5μmである接着層付き銅箔を形成した。
【0117】
<銅張積層板の作製>
上記の接着層付き銅箔及び市販のプリプレグ(日立化成(株)製の「GEA−679FG」、厚み:0.1μm)を340mm×500mmの大きさに裁断機で裁断した。その後、2枚の銅箔付きフィルムの間に2枚のプリプレグを設置し、(株)名機製作所製真空プレス機(MNPC−V−750−750−5−200)によって、減圧度を1×10−3MPaとし、圧力10kgf/cmで、昇温速度3℃/分で室温から130℃迄上昇させて、30分保持した後、圧力を30kgf/cmとし、昇温速度3℃/分で190℃まで昇温させて90分保持して、銅張積層板前駆物を作製し、その後、実施例1と同様の方法にて、銅張積層板及び回路基板を作製した。
【0118】
〔実施例4〕
実施例1で作製した銅張積層板前駆物に対し、ドリル加工を行い、穴径0.105μmのスルーホールの形成を行った。ドリル加工は、日立ビアメカニクス製、「ND−1V212」を用いて行った。そして下記に示したデスミア処理を行って、その後実施例1と同様にして、銅箔を除去し、無電解銅めっきを行い、電解銅めっきを行って、合計30μm厚の導体層を形成して回路基板を得た。
【0119】
<デスミア処理>
アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)により、60℃5分間の条件で膨潤処理を行った。その後水洗し、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP(アルカリ性過マンガン酸溶液)により、80℃10分間の条件で粗化処理を行った。水洗後、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)により、40℃5分間の条件で中和処理を行った。
【0120】
〔実施例5〕
銅箔の除去処理後に、さらに下記の銅合金めっき層の除去処理を行った以外は実施例1と同様の方法にて、銅張積層板及び回路基板を作製した。銅合金めっき層の除去処理後の露出面には銅合金めっき層及び防錆処理の残存物は存在していなかった。
【0121】
<銅合金めっき層の除去>
アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)により、膨潤を行った。条件は40℃で1分間。その後、水洗し、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP(アルカリ性過マンガン酸溶液)により、粗化処理を行った。条件は40℃で1分間。水洗後、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)により、中和を行った。条件は40℃で1分間。
【0122】
〔比較例1〕
実施例1で使用した銅箔の代わりに、電解銅箔((株)日鉱マテリアルズ製「JTC箔」、厚み:18μm、マット面のRa値(算術平均粗さ):1200nm)を使用し、銅箔のマット面にプリプレグが接触するように、2枚の銅箔の間にプリプレグを設置し、その他は実施例1と同様にして銅張積層板前駆物を作製した。その後、実施例1と同様にして銅張積層板前駆物の銅箔を除去し、無電解銅めっきプロセスにより銅層を形成して銅張積層板を作製し、さらに実施例1と同様の方法にて回路基板を作製した。
【0123】
〔比較例2〕
実施例1で使用した銅箔の代わりに、電解銅箔((株)日鉱マテリアルズ製「JTC−LP箔」、厚み:18μm、シャイニー面のRa値(算術平均粗さ):350nm)を使用し、銅箔のシャイニー面にプリプレグが接触するように、2枚の銅箔の間にプリプレグを設置し、その他は実施例1と同様にして銅張積層板前駆物を作製した。その後、実施例1と同様にして銅張積層板前駆物の銅箔を除去し、無電解銅めっきプロセスにより銅層を形成して銅張積層板を作製し、さらに実施例1と同様の方法にて回路基板を作製した。
【0124】
下記表1は実施例1〜5及び比較例1、2で作製した回路基板の評価結果である。
【0125】
【表1】

【0126】
表1から、実施例1〜5では、表面粗さ(Ra値)が小さい絶縁層表面に高剥離強度の導体層を有する回路基板を製造できることが分かった。一方、表面が未処理の電解銅箔のマット面をプリプレグに積層させた積層物を経て、銅張積層板及び回路基板を作製した比較例1においては、剥離強度は約1.20kgf/cmと高い値であったが、絶縁層表面粗さ(Ra値)は1000nm以上で、極めて大きな値となった。また、表面が未処理の電解銅箔のシャイニー面をプリプレグに積層させた銅張積層板を経て、銅張積層板及び回路基板を作製した比較例2においては、無電解銅めっきと樹脂間での密着が得られず、その界面で無電解銅めっきが浮き上がって膨れてしまった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
特定の条件で銅合金めっき層を絶縁層に向けて熱圧着する工程、銅箔を除去する工程、銅層を再形成する工程によって、絶縁層の表面粗さが極めて小さいにもかかわらず、絶縁層に対して高い密着強度で銅層が積層された銅張積層板を得ることができるようになった。この銅張積層板は、エッチングによるめっきシード層の除去を温和な条件で行え、配線パターンの溶解を抑制することができるため、微細配線形成が要求される回路基板の製造に最適な材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする、銅張積層板の製造方法;
(A)電気めっきにより銅合金めっき層が表面に形成された2枚の銅箔の間に、1枚以上のプリプレグを銅合金めっき層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して銅箔をプリプレグに熱圧着する工程、
(B)銅箔を銅エッチング液で除去する工程、
(C)プリプレグ表面に無電解めっきによりに銅層を形成する工程。
【請求項2】
銅合金めっき層の表面粗さ(Ra)が300nm以下であることを特徴とする、請求項1記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項3】
プリプレグ表面の表面粗さ(Ra)が300nm以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項4】
更に(D)銅合金めっき層を除去する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項5】
更に(E)スルーホールを形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項6】
更に(F)デスミア工程を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項7】
更に(G)電気めっきにより導体層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項8】
工程(A)における銅箔として、銅合金めっき層の表面にさらに接着層が積層された銅箔を使用するか、及び/又は、プリプレグとして、表面に接着層を形成したプリプレグを使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項9】
銅合金が、Ni−Co−Cu、Ni−Cu、Co−Cuのいずれかから選ばれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項10】
プリプレグによる絶縁層表面の表面粗さ(Ra)が5nm以上、300nm以下であり、該絶縁層と銅層の剥離強度(kgf/cm)が0.50以上、10以下であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造された銅張積層板。

【公開番号】特開2011−40728(P2011−40728A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158934(P2010−158934)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】