鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材及びこれを備える鋏
【課題】
鋏をシザーケースのポケット等から取り出したり収納したりする際に、ボルトやナットが引っ掛かることを防止して、スムーズな収納及び取り出し操作を可能とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を提供すること。
【解決手段】
鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材200を、鋏刃体11とボルト若しくはナット20との間に取り付け可能とする基部210と、この基部210の一端から延設されて、ナット20の上面から鋏刃体11の刃部側11aの表面に向かって下降傾斜する刃部側傾斜面部220と、ボルト若しくはナット20の上面から鋏刃体11の柄部側11bの表面に向かって下降傾斜する柄部側傾斜面部とを備えて形成する。
鋏をシザーケースのポケット等から取り出したり収納したりする際に、ボルトやナットが引っ掛かることを防止して、スムーズな収納及び取り出し操作を可能とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を提供すること。
【解決手段】
鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材200を、鋏刃体11とボルト若しくはナット20との間に取り付け可能とする基部210と、この基部210の一端から延設されて、ナット20の上面から鋏刃体11の刃部側11aの表面に向かって下降傾斜する刃部側傾斜面部220と、ボルト若しくはナット20の上面から鋏刃体11の柄部側11bの表面に向かって下降傾斜する柄部側傾斜面部とを備えて形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋏のうち特に理美容用の鋏をシザーケース等に収納するとき若しくはシザーケース等から取り出すときに、二本の鋏刃体を回動自在に軸着するボルト若しくはナットがシザーケース等のポケットの入口に引っ掛かることを防止する鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
理美容支は、髪をカットする作業は行うときに、例えば直線刃を有する通常のカット鋏や、櫛歯状の刃を有する梳き鋏等、カットの仕方に応じて鋏を使い分けて行なっている。そして、理美容師は、このような鋏の使い分けを作業中に手早く行えるように、図30に示すような複数のポケットPを備えるシザーケースSを腰に装着し、このシザーケースSのポケットPに鋏を収納することによって、複数の鋏を携帯できるようにしている。
【0003】
図31には、一般的な理美容用の鋏10が示されている。この鋏10は、ボルト30とナット20とを用いて二本の鋏刃体11、11を軸着するものである。この鋏10では、図32に示すように、ナット20が鋏刃体の表面から突出しており、この突出したナット20を指先で摘んで締めたり緩めたりすることで、二本の鋏刃体11、11の締結力を簡単に調整することができる。
【0004】
ところが、ナット20が鋏刃体11の表面から突出した鋏10では、図32に示すように、鋏刃体11の表面とナット20の上面との間に段差Dが生じる。このため、シザーケースのポケットに鋏10を収納したり、シザーケースから取り出したりする場合に、図33に示すようにナット20がシザーケースSのポケットPの入り口に引っ掛かってしまい、鋏10のスムーズな収納、取り出しの妨げとなっていたのである。
【0005】
一方で、図34及び図35に示すように、ナット20の突出量を抑えた鋏が提案されている。図34及び図35に示す鋏10は、二本の鋏刃体をボルト30とナット20で軸着する点で上記の鋏と共通するが、ナット20が大きく突出しないように、鋏刃体11にザグリ穴を設けて、このザグリ穴にナット20が収まるようになっている。この鋏10によれば、ナット20が鋏刃体11の表面から大きく突出しないため、鋏10をシザーケースSに収納したり、シザーケースSから取り出したりする際にナット20が引っ掛かることはなくなるが、指で緩締操作を行うことができず、別途専用の工具が必要となり、締結力の調整操作が煩雑となっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−8376号公報、図10乃至図12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、二本の鋏刃体を軸着するボルト・ナットの緩締操作を容易に行えることができるようにしながら、鋏をシザーケースのポケット等から取り出したり収納したりする際にもボルトやナットの引っ掛かりがなく、スムーズな収納及び取り出し操作を可能とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、まず、請求項1に記載の発明が採った手段は、二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の、前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、該基部の一端より延設され、前記ボルト若しくは前記ナットの上面から前記鋏刃体の刃部側に向かって下降傾斜して、前記鋏刃体の表面と前記ボルト若しくはナットの上面とを連続させる面を有する刃部側傾斜面部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0008】
この鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材(以下、単に「引っ掛かり防止部材」という)は、鋏刃体の表面と、これより突出するボルト若しくはナットとの間に生じる段差をなくし、鋏をシザーケースのポケット等に収納するときにナットがポケットの入り口に引っ掛かることなく、スムーズな収納操作を行えるようにするものである。すなわち、請求項1に記載の引っ掛かり防止部材は、鋏刃体とボルト若しくはナットとの間に取り付け可能とする基部と、この基部の一端から延設されて、ナットの上面側から鋏刃体の刃部側表面に向かって傾斜する刃部側傾斜面部とを備えて形成される。そして、この刃部側傾斜面部が、鋏刃体の刃部側の表面とボルト若しくはナットの上面との間の段差を埋めて、両者が連続した面をなすように機能する。この引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けることにより、鋏をシザーケースのポケットに収納するときに生じるボルト若しくの引っ掛かりを解消することができる。
【0009】
また、請求項2に記載した発明が採った手段は、基部の他端より延設されて、前記ボルト若しくは前記ナットの上面から前記鋏刃体の柄部側に向かって下降傾斜し、前記鋏刃体の柄部側表面と前記ボルト若しくは前記ナットの上面とを連続させる面を有する柄部側傾斜面部を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0010】
請求項2に係る引っ掛かり防止部材は、請求項1に係る引っ掛かり防止部材に、さらに柄部側傾斜面部を設けたものである。つまり、ボルト若しくはナットの上面と、鋏刃体の柄部側表面との間に生じる段差をなくして、両者が一連の面をなすようにする柄部側傾斜面部を設けることにより、鋏をシザーケースのポケット等から取り出す際においてもボルトもしくはナットが引っ掛かることを防止できるようにしたものである。
【0011】
また、請求項3に記載した発明が採った手段は、刃部側傾斜面部の上面と柄部側傾斜面部の上面とを連設して形成され、ボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を備えることを特徴とする請求項2に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0012】
請求項3に係る引っ掛かり防止部材は、請求項2に係る引っ掛かり防止部材に改良を加えたものであって、刃部側傾斜面部及び柄部側傾斜面部に加えて、ボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を形成したものである。この被覆部は、刃部側傾斜面部の上面と柄部側傾斜面部の上面とを連設することにより形成される。これにより、鋏に取り付けたときに、鋏全体の美感を向上させることができる。また、被覆部の表面に、宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を施したりすることも可能となるので、アクセサリーとしての機能を持たせることもできるようになる。
【0013】
また、請求項4に記載した発明が採った手段は、二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の、前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、該基部に開閉自在若しくは着脱自在に配設されて、前記ボルト若しくは前記ナットを被覆するカバー部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0014】
この引っ掛かり防止部材は、カバー部により鋏刃体の表面から突出するボルト若しくはナットの全体を被覆することによって、シザーケースのポケット等からの鋏の取り出し時及び収納時にボルト若しくはナットが引っ掛からないようにしたものである。また、カバー部が開閉自在若しくは着脱自在に配設されるので、引っ掛かり防止部材の全部を取り外さずに、カバー部を開けて又はカバー部のみを取り外してボルト若しくはナットの緩締操作を行えるようにしている。
【0015】
また、請求項5に記載した発明が採った手段は、カバー部が、開閉自在に配設される場合において、基部との間に配設されるバネによって付勢されることを特徴とする請求項4に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0016】
すなわち、カバー部をバネで付勢することで、カバー部の開閉操作を容易にしたものである。
【0017】
また、請求項6に記載した発明が採った手段は、基部の一端には爪部が形成され、カバー部は、前記基部の長手方向に沿ってスライド自在に配設されるとともに、その内側に前記爪部が係止される係止部が形成されており、前記カバー部を閉じた状態でスライドさせることにより、前記爪部と前記係止部とを係止させて前記カバー部の開閉をロックできるようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0018】
すなわち、この引っ掛かり防止部材は、カバー部と基部との間にロック機構を設けることにより、カバー部が不意に開くことを防止するものである。
【0019】
また、請求項7に記載した発明が採った手段は、請求項1から6のいずれかに記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を備えることを特徴とする鋏、である。請求項1から6のいずれかに記載の引っ掛かり防止部材を備えることにより、シザーケースのポケット等から鋏を取り出したり、収納したりするときに、ボルト若しくはナットが引っ掛かることが防止されるので、取り出し操作及び収納操作をスムーズに行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載した引っ掛かり防止部材によれば、刃部側傾斜面部を備えることにより、鋏刃体の表面から突出するボルト若しくはナットと鋏刃体の刃部の表面とを連続させる面を形成することができるので、両者の間に段差がなくなり、鋏をシザーケースのポケット等に収納する際にボルトもしくはナットの引っ掛かりが防止されて、収納操作をスムーズに行うことができるようになる。また、二本の鋏刃体を軸着するボルト若しくはナットと鋏刃体との間に基部を介在させるだけ取り付けが可能なので、既存の鋏に簡単に取り付けることができる。
【0021】
また、請求項2に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項1に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、柄部側傾斜面部を備えることにより、鋏刃体より突出するボルト若しくはナットと鋏の柄部の表面とを連続させる面を形成することができるので、両者の間に段差がなくなり、シザーケースのポケット等に収納された鋏を取り出す際にもボルト若しくはナットの引っ掛かりが防止されて、取り出し操作をスムーズに行うことができるようになる。
【0022】
また、請求項3に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項2に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、刃部側傾斜面部の上面と柄側傾斜面部の上面とを連設してボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を形成するので、鋏の美感をより向上させることができる。また、被覆部に宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を描いたりすることができるので、アクセサリーとしても使用も可能となる。
【0023】
また、請求項4に記載した引っ掛かり防止部材によれば、鋏刃体から突出するボルト若しくはナットを被覆するカバー部により、鋏をシザーケースに収納したり、シザーケースのポケット等から取り出したりするときに、ボルト若しくはナットが引っ掛かることを防止することができる。また、カバー部に宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を描いたりすることができるので、アクセサリーとしても使用も可能となる。
【0024】
また、請求項5に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項4に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、カバー部を基部との間に配設したバネによって付勢することにより、カバー部の開閉操作を容易に行うことができる。
【0025】
また、請求項6に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項4又は5に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、基部の一端に形成された爪部とカバー部の内側に形成された係止部とを係止させることにより、カバー部の開閉を確実にロックすることができる。また、カバー部をスライド自在に配設し、これを長手方向にスライドさせることによって爪部と係止部との係止及び解除ができるので、ロック操作を容易に行うことができる。
【0026】
また、請求項7に記載した鋏によれば、請求項1から6のいずれかに記載した引っ掛かり防止部材を備えることにより、鋏をシザーケースのポケット等に収納したり、シザーケースのポケット等から取り出したりする際に、鋏刃体から突出するボルト若しくはナットが引っ掛かることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1から図4には、実施例1に係る引っ掛かり防止部材100について示されている。図1に示すように、引っ掛かり防止部材100は、基部110と刃部側傾斜面部120とからなる。この引っ掛かり防止部材100の材質は特に限定されるものではないが、鋏の操作性に支障をきたさないよう、例えばプラスチック等の軽量な材質から作成することが好ましい。
【0029】
基部110は、引っ掛かり防止部材100の鋏10への取り付けに際し、鋏刃体10とナット20との間に介在される部分である。このため、基部11には、二本の鋏刃体11、11を枢着するボルト20が挿通される穴部111が形成されている。
【0030】
刃部側傾斜面部120は、基部110の一端側から延設された部分であり、その形状は表面が曲面からなる側面視山型に形成されている。この刃部側傾斜面部120は、図2及び図3に示すように、引っ掛かり防止部材100が鋏10に取り付けられたときに、ナット20の上面と鋏刃体10の表面との間の段差Dを埋めるように配設されて、ナット20の上面と鋏刃体10の表面とが連続した面をなすようにするものである。
【0031】
図4には、引っ掛かり防止部材100を鋏に取り付ける方法を説明する鋏の分解斜視図が示されている。図4に示すように、引っ掛かり防止部材100の鋏への取り付けは、まず、基部の穴部に2本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30を挿通させ、次いで、ボルトにナットを締め付けることによって行う。つまり、引っ掛かり防止部材100は、基部111が鋏刃体11とナット20との間に挟まれるようにして取着される。
【0032】
尚、図4に示されている皿バネ40は、ボルト30に螺合させたナット20を上方に付勢するものである。これにより、二本の鋏刃体11、11の締結力の微調整が行うことができるようになる。また、皿バネ40には、凸部41が形成されており、この凸部41がナット20の裏面に形成される凹凸部と係止することで、ナット20の回り止めとしても機能する。
【0033】
このようにして、実施例1に係る引っ掛かり防止部材100を鋏に取り付けることにより、鋏刃体11の刃部側表面11aとナット20の上面とが、刃部側傾斜面部230を介して連続した面をなすようになる。これにより、鋏刃体11の刃部側表面11aとナット10の上面との間の段差Dがなくなるので、シザーケースのポケット等に収納された鋏10を取り出すときにもナット20が引っ掛かることがなくなり、収納操作をスムーズに行うことができるようになる。
【実施例2】
【0034】
図5から図7には、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200について示されている。図5に示すように、引っ掛かり防止部材200は、基部210と、刃部側傾斜面部220と、柄部側傾斜面部230とからなる。基部210と刃部側傾斜面部220とは、それぞれ実施例1の引っ掛かり防止部材100における基部110と刃部側傾斜面部120と同様に構成されている。よって、ここでは、基部210及び刃部側傾斜面部220についての説明は省略し、柄部側傾斜面部230について詳述する。
【0035】
図5に示すように、柄部側傾斜面部230は、基部210のうち刃部側傾斜面部220が形成される側と対向する側より延設され、刃部側傾斜面部220の長さよりやや長さを有して形成されている。そして、図6に示すように、柄部側傾斜面部230は、引っ掛かり防止部材200を鋏10に取り付けた状態で、鋏刃体11の柄部側11bに配置される。
【0036】
図7には、引っ掛かり防止部材200を鋏に取り付ける方法を説明する分解斜視図が示されている。引っ掛かり防止部材200の鋏への取り付け方法は、実施例1における引っ掛かり防止部材100の取り付け方法と同様に、2本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30を基部210の穴部211に挿通させ、その後、ボルト30にナット20を螺合させて締めつけることによって、引っ掛かり防止部材200の基部211が鋏刃体11とナット20との間に挟まれるようにして取着される。
【0037】
そして、図8に示すように、引っ掛かり防止部材200が鋏10に取り付けられることにより、鋏刃体11の柄部側11bの表面とナット20の上面との間の段差Dがなくなり、両者が柄部側傾斜面部230を介して連続した面をなすようになる。これにより、シザーケースのポケット等に収納された鋏10を取り出すときにもナット20が引っ掛かることを防止できるので、刃部側傾斜面部220と相俟って、鋏の取り出し及び収納操作をスムーズに行うことができるようになる。
【実施例3】
【0038】
図9から図12には、実施例3に係る引っ掛かり防止部材300について示されている。ここで、図9から図12に示す引っ掛かり防止部材300は、説明の便宜上、二本の鋏刃体11、11を軸着するためのナット20が組み込まれた状態で記載されている。
【0039】
引っ掛かり防止部材300は、図9及び図10に示すように、基部310と、刃部側傾斜面部320と、柄部側傾斜面部330とを備えており、その基本的な構成は、実施例2の引っ掛かり防止部材200と同様である。しかし、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200は、二本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30とナット20との間に皿バネ40を介在させた鋏に取り付けられるものであるところ、本実施例に係る引っ掛かり防止部材300は、皿バネ40にかえて板バネ50を使用する鋏に取り付けられるようにしたものである。
【0040】
図11及び図12に示すように、引っ掛かり防止部材300には、基部310とナット20との間に板バネ50が収容できるように、基部310と刃部側傾斜面部320との間及び基部210と柄部側傾斜面部330との間に、それぞれ空隙Xが形成されている。そして、刃部側傾斜面部320及び柄部側傾斜面部330の一方の側面には、それぞれ空隙Xに連通する開口部Yが形成されている。そして、引っ掛かり防止部材300を鋏に取り付ける際には、この開口部Yから空隙X内に板バネ50を差し込んで収納し、その後、実施例1及び2と同様に、二本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30を挿通し、これにナット20を螺合させて締め付けることによって行う。
【0041】
また、板バネ50を備える鋏では、髪をカットしている際に、板バネ50と鋏刃体11との間に生じる隙間に、カットされた髪の毛が詰まるという問題があった。そこで、引っ掛かり防止部材300では、板バネ50と基部310との間に髪の毛の詰まりが生じないよう図12に示すように、開口部Yが形成される側面と反対側の側面を閉塞して形成している。
【実施例4】
【0042】
図13から図17には、実施例4に係る引っ掛かり防止部材400について示されている。ここで、図13から図17に記載の引っ掛かり防止部材400は、説明の便宜上、二本の鋏刃体を軸着するためのナット20が組み込まれた状態で記載されている。
【0043】
実施例4に係る引っ掛かり防止部材400は、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200に改良を加えたものであって、さらに被覆部440を形成したものである。従って、ここでは基部410と、刃部側傾斜面部420と、柄部側傾斜面部430とについては、説明を省略し、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200との相違点である被覆部440についてのみ説明する。
【0044】
図13から図15に示すように、被覆部440は、引っ掛かり防止部材400のうち、二本の鋏刃体11、11を軸着するナット20の上面を覆う部分であって、刃部側傾斜面部420の上面と柄部側傾斜面部430の上面とを連設することによって形成されている。しかし、被覆部440によりナット20の上面を全て覆ってしまうと、二本の鋏刃体11、11の締結力を調整するためナット20の緩締操作をするときに、指でナット20を摘むことが困難となる。このため、引っ掛かり防止部材400では、図16及び図17に示すように、被覆部440の幅W1がナット20の幅W2よりもやや狭くなるように形成することでナットを摘み易くして、緩締操作に支障をきたさないようにしている。
【0045】
実施例4に係る引っ掛かり防止部材400によれば、刃部側傾斜面部420及び柄部側傾斜面部430を備えることにより、シザーケースのポケット等からの鋏を取り出し、収納の際に、ナットが引っ掛かることがなくなって出し入れをスムーズに行えるようになる。さらに、被覆部440によりナット20の上面を被覆することによって、鋏の外観を向上させることができる。また、被覆部440に、例えば、宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を施したり等して、アクセサリーとしても使用することもできる。
【実施例5】
【0046】
図18から図21には、実施例5に係る引っ掛かり防止部材500について示されている。この引っ掛かり防止部材500は、実施例2と同様に、基部510と、刃部側傾斜面部520と柄部側傾斜面部530とを備えるが、柄部側傾斜面部530が、第一柄部傾斜面部530aと、第二柄部側傾斜面部530bとに二分割して形成されている点で相違している。
【0047】
第二柄部側傾斜面部530bは、図18から図21に示すように、基部510に長手方向(図20及び図21にそれぞれ示す矢印A、B方向)にスライド自在に配設される。そして、第二柄部傾斜面部530bには、第一柄部側傾斜面部530aに設けられたロックピン531が嵌合されるピン孔532が形成されている。すなわち、第二柄部傾斜面部530bを図20に示す矢印A方向にスライドさせると、ロックピン531とピン孔532とが嵌合し、これにより第一柄部側傾斜面部530aと第二柄部側傾斜面部530bとが一体となるようになっている。
【0048】
さらに、第二柄部傾斜面部530bには、その内面下方から舌片533が延設されている。この舌片533は、第二柄部側傾斜面部530bを、図20に示す矢印A方向にスライドさせたときに、皿バネ40と基部510との間に入り込んで、皿バネ40を上方に押し上げる。すると、皿バネの凸部41がナット20の下面の凹凸部21に押しつけられて、凸部41と凹凸部21との係止がより確実に行わることとなる。
【実施例6】
【0049】
図22から図26には、実施例6に係る引っ掛かり防止部材600について示されている。引っ掛かり防止部材600は、図23に示すように、鋏10において二本の鋏刃体11、11を軸着するナットの全部を覆うことにより、シザーケースのポケット等への収納、取り出しを行う際に、ナットが引っ掛からないようにするものである。この引っ掛かり防止部材600は、基部610と、カバー部620とを備える。
【0050】
基部610は、引っ掛かり防止部材600を鋏10に取り付ける際に、鋏刃体11とナットとの間に介在される部分である。基部610は、穴部611と、爪部612と、カバー部取付片613と、柄部側傾斜面部614と、バネ615とを備える。
【0051】
穴部611は、二本の鋏刃体11、11を軸着するボルトを挿通させるために形成されるものである。爪部612は、基部610の一端側、すなわち、カバー部600を鋏10に取り付けた際に鋏刃体11の刃部側11aを向く側に形成され、後述するカバー部620に形成される係止部621が係止される部分である。カバー部取付片613は、後述するカバー部620が上下方向に開閉自在に取り付けられる部分であり、その外側面にはカバー部620に設けられるピン622が係止されるスライド溝613aが形成されている。柄部側傾斜面部614は、基部610の他端側、すなわちカバープレート600を鋏10に取り付けた際に鋏刃体11の柄部側11bを向く側に形成されて、カバー部620の上面と鋏刃体11の柄部側の表面11bとが連続した面をなすようにするものである。バネ615は、カバー部取付片613に取り付けられたカバー部620を上方に付勢して開閉操作を容易にするものである。
【0052】
カバー部620は、引っ掛かり防止部材600が鋏10に取り付けられたときに、二本の鋏刃体11、11を軸着するナット全体を被覆するものであり、その表面は曲面をなして形成されている。カバー部620は、ピン621と係止部622とを備える。ピン622は、カバー部620の内側面に対向して二つ設けられている。そして、このピン622を、基部610に形成されるカバー部取付片613のスライド溝613aに係止することにより、カバー部620が基部610に上下方向に開閉自在に取り付けられる。係止部622は、カバー部620の先端の内側に形成されており、基部610に形成される爪部611が係止される部分である。
【0053】
次に、図25に基づいて、引っ掛かり防止部材600におけるカバー部620の開閉操作について説明する。図25(a)には、カバー部620を閉じた状態の引っ掛かり防止部材600が示されている。図25(a)において、カバー部620の係止部622は、カバー部620が開かないように基部610の爪部612と係止状態にある。そして、カバー部620を開く場合には、図25(b)に示すように、カバー部620を矢印C方向にスライドさせて係止部622と爪部612との係止を解除する。すると、図25(c)に示すように、カバー部620は、バネ615によって上方へと付勢されて、ピン621とスライド溝613aとの係止部分を支点として上方に開くこととなる。このとき、図26に示すように、ナット20は露出した状態となり、ナットの緩締操作が行なえるようになる。尚、開いたカバー部620を閉める場合には、開く操作と逆の手順で操作を行えばよい。
【0054】
実施例6に係る引っ掛かり防止部材600によれば、二本の鋏刃体11、11を軸着するナット20全体を被覆するカバー部620によって、鋏10をシザーケースのポケット等に収納したり、取り出したりするときに、ナットが引っ掛かることが防止されるので、収納、取り出し操作をスムーズに行うことができるようになる。また、カバー部620の表面に、例えば、宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を描くことによって、アクセサリーとしても使用することができる。
【0055】
尚、本実施例に係る引っ掛かり防止部材600では、基部610とカバー部620との間にバネ615を配設し、このバネ615によりカバー部620を上方へ付勢して開く構成を採っているが、バネ615を配設せずに、手動で開く構成としてもよい。また、カバー部620は、ナット20の緩締操作を行うときに、取り外しができるように基部610に対して着脱自在に配設してもよい。
【0056】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、上記実施例は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形をすることが可能であり、本発明の技術的範囲には、これらの改良変形が含まれる。例えば、上記実施例では、刃部側傾斜面部及び柄部側傾斜面部の表面は曲面を描いて形成されているがこれを平面としてもよいし、図27に示すように柄部側傾斜面部の変わりに指当てFを形成してもよい。尚、上記実施例は、基部をナットと鋏刃体との間に介在させた例を示しているが、ボルトが鋏刃体の表面から突出している鋏についても同様に適用することができることは勿論である。
【参考例】
【0057】
図28及び図29には、本発明に係る引っ掛かり防止部材の応用例が示されている。図28及び図29に示す応用例は、本発明に係る引っ掛かり防止部材が基部を備え、この基部を二本の鋏刃体を軸着するボルト若しくはナットの間に介在させて取り付ける点に着目したものであり、図28に示すレザー701や、図29に示す櫛702等の鋏以外の理美容具を鋏に取り付けできるようにするアタッチメント700としたものである。
【0058】
理美容師が髪をカットする際には、鋏を使ったカットとレザーを使ったカットを交互に行ったり、あるいはカットと櫛通しを交互に行ったりすることが頻繁に行われている。この場合、理美容師は、鋏と櫛又は鋏とレザーとを交互に持ち替えなければならないところ、図28及び図29に示すように、レザーや櫛をアタッチメント化して鋏と一体にすれば、このような持ち替えが不要となるので、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図2】実施例1に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図3】実施例1に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図4】実施例1に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付ける方法を説明するための鋏の分解斜視図である。
【図5】実施例2に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図6】実施例2に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図7】実施例2に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付ける方法を説明するための鋏の分解斜視図である。
【図8】実施例2に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図9】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図10】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の平面図である。
【図11】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の側面図である。
【図12】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の背面図である。
【図13】実施例4に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図14】実施例4に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図15】実施例4に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図16】実施例4に係る引っ掛かり防止部材の平面図である。
【図17】実施例4に係る引っ掛かり防止部材の背面図である。
【図18】実施例5に係る引っ掛かり防止部材の側面図である。
【図19】実施例5に係る引っ掛かり防止部材の平面図である。
【図20】図19のX−X断面図である。
【図21】図19のXーX断面図である。
【図22】実施例6に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図23】実施例6に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図24】実施例6に係る引っ掛かり防止部材の分解斜視図である。
【図25】実施例6に係る引っ掛かり防止部材の側面図であって、カバー部を開くときの操作方法を説明する図である。
【図26】実施例6に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏であって、引っ掛かり防止部材のカバー部が開いた状態を示す斜視図である。
【図27】他の実施形態の引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図28】本発明に係る引っ掛かり防止部材の応用例を示す図である。
【図29】本発明に係る引っ掛かり防止部材の応用例を示す図である。
【図30】シザーケースのポケットに鋏が収納された状態を示す図である。
【図31】一般的な理美容鋏の斜視図である。
【図32】図31に示す理美容鋏のナット部分の拡大側面図である。
【図33】シザーケースを側面から見た図であって、シザーケースのポケットに鋏を収納する際に、鋏のナットがポケットの入口に引っ掛かる様子を説明する図である。
【図34】二本の鋏刃体を軸着するナット部分に改良が加えられた鋏の斜視図である。
【図35】図34に示す理美容鋏のナット部分の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 鋏
11 鋏刃体
20 ナット
30 ボルト
100、200、300、400、500、600 引っ掛かり防止部材
110、210、310、410、510、610 基部
120、220、320、420、520 刃部側傾斜面部
230、330、430、530 柄部側傾斜面部
440 被覆部
620 カバー部
612 爪部
615 バネ
621 ピン
622 係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋏のうち特に理美容用の鋏をシザーケース等に収納するとき若しくはシザーケース等から取り出すときに、二本の鋏刃体を回動自在に軸着するボルト若しくはナットがシザーケース等のポケットの入口に引っ掛かることを防止する鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
理美容支は、髪をカットする作業は行うときに、例えば直線刃を有する通常のカット鋏や、櫛歯状の刃を有する梳き鋏等、カットの仕方に応じて鋏を使い分けて行なっている。そして、理美容師は、このような鋏の使い分けを作業中に手早く行えるように、図30に示すような複数のポケットPを備えるシザーケースSを腰に装着し、このシザーケースSのポケットPに鋏を収納することによって、複数の鋏を携帯できるようにしている。
【0003】
図31には、一般的な理美容用の鋏10が示されている。この鋏10は、ボルト30とナット20とを用いて二本の鋏刃体11、11を軸着するものである。この鋏10では、図32に示すように、ナット20が鋏刃体の表面から突出しており、この突出したナット20を指先で摘んで締めたり緩めたりすることで、二本の鋏刃体11、11の締結力を簡単に調整することができる。
【0004】
ところが、ナット20が鋏刃体11の表面から突出した鋏10では、図32に示すように、鋏刃体11の表面とナット20の上面との間に段差Dが生じる。このため、シザーケースのポケットに鋏10を収納したり、シザーケースから取り出したりする場合に、図33に示すようにナット20がシザーケースSのポケットPの入り口に引っ掛かってしまい、鋏10のスムーズな収納、取り出しの妨げとなっていたのである。
【0005】
一方で、図34及び図35に示すように、ナット20の突出量を抑えた鋏が提案されている。図34及び図35に示す鋏10は、二本の鋏刃体をボルト30とナット20で軸着する点で上記の鋏と共通するが、ナット20が大きく突出しないように、鋏刃体11にザグリ穴を設けて、このザグリ穴にナット20が収まるようになっている。この鋏10によれば、ナット20が鋏刃体11の表面から大きく突出しないため、鋏10をシザーケースSに収納したり、シザーケースSから取り出したりする際にナット20が引っ掛かることはなくなるが、指で緩締操作を行うことができず、別途専用の工具が必要となり、締結力の調整操作が煩雑となっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−8376号公報、図10乃至図12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、二本の鋏刃体を軸着するボルト・ナットの緩締操作を容易に行えることができるようにしながら、鋏をシザーケースのポケット等から取り出したり収納したりする際にもボルトやナットの引っ掛かりがなく、スムーズな収納及び取り出し操作を可能とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、まず、請求項1に記載の発明が採った手段は、二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の、前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、該基部の一端より延設され、前記ボルト若しくは前記ナットの上面から前記鋏刃体の刃部側に向かって下降傾斜して、前記鋏刃体の表面と前記ボルト若しくはナットの上面とを連続させる面を有する刃部側傾斜面部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0008】
この鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材(以下、単に「引っ掛かり防止部材」という)は、鋏刃体の表面と、これより突出するボルト若しくはナットとの間に生じる段差をなくし、鋏をシザーケースのポケット等に収納するときにナットがポケットの入り口に引っ掛かることなく、スムーズな収納操作を行えるようにするものである。すなわち、請求項1に記載の引っ掛かり防止部材は、鋏刃体とボルト若しくはナットとの間に取り付け可能とする基部と、この基部の一端から延設されて、ナットの上面側から鋏刃体の刃部側表面に向かって傾斜する刃部側傾斜面部とを備えて形成される。そして、この刃部側傾斜面部が、鋏刃体の刃部側の表面とボルト若しくはナットの上面との間の段差を埋めて、両者が連続した面をなすように機能する。この引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けることにより、鋏をシザーケースのポケットに収納するときに生じるボルト若しくの引っ掛かりを解消することができる。
【0009】
また、請求項2に記載した発明が採った手段は、基部の他端より延設されて、前記ボルト若しくは前記ナットの上面から前記鋏刃体の柄部側に向かって下降傾斜し、前記鋏刃体の柄部側表面と前記ボルト若しくは前記ナットの上面とを連続させる面を有する柄部側傾斜面部を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0010】
請求項2に係る引っ掛かり防止部材は、請求項1に係る引っ掛かり防止部材に、さらに柄部側傾斜面部を設けたものである。つまり、ボルト若しくはナットの上面と、鋏刃体の柄部側表面との間に生じる段差をなくして、両者が一連の面をなすようにする柄部側傾斜面部を設けることにより、鋏をシザーケースのポケット等から取り出す際においてもボルトもしくはナットが引っ掛かることを防止できるようにしたものである。
【0011】
また、請求項3に記載した発明が採った手段は、刃部側傾斜面部の上面と柄部側傾斜面部の上面とを連設して形成され、ボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を備えることを特徴とする請求項2に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0012】
請求項3に係る引っ掛かり防止部材は、請求項2に係る引っ掛かり防止部材に改良を加えたものであって、刃部側傾斜面部及び柄部側傾斜面部に加えて、ボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を形成したものである。この被覆部は、刃部側傾斜面部の上面と柄部側傾斜面部の上面とを連設することにより形成される。これにより、鋏に取り付けたときに、鋏全体の美感を向上させることができる。また、被覆部の表面に、宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を施したりすることも可能となるので、アクセサリーとしての機能を持たせることもできるようになる。
【0013】
また、請求項4に記載した発明が採った手段は、二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の、前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、該基部に開閉自在若しくは着脱自在に配設されて、前記ボルト若しくは前記ナットを被覆するカバー部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0014】
この引っ掛かり防止部材は、カバー部により鋏刃体の表面から突出するボルト若しくはナットの全体を被覆することによって、シザーケースのポケット等からの鋏の取り出し時及び収納時にボルト若しくはナットが引っ掛からないようにしたものである。また、カバー部が開閉自在若しくは着脱自在に配設されるので、引っ掛かり防止部材の全部を取り外さずに、カバー部を開けて又はカバー部のみを取り外してボルト若しくはナットの緩締操作を行えるようにしている。
【0015】
また、請求項5に記載した発明が採った手段は、カバー部が、開閉自在に配設される場合において、基部との間に配設されるバネによって付勢されることを特徴とする請求項4に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0016】
すなわち、カバー部をバネで付勢することで、カバー部の開閉操作を容易にしたものである。
【0017】
また、請求項6に記載した発明が採った手段は、基部の一端には爪部が形成され、カバー部は、前記基部の長手方向に沿ってスライド自在に配設されるとともに、その内側に前記爪部が係止される係止部が形成されており、前記カバー部を閉じた状態でスライドさせることにより、前記爪部と前記係止部とを係止させて前記カバー部の開閉をロックできるようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材、である。
【0018】
すなわち、この引っ掛かり防止部材は、カバー部と基部との間にロック機構を設けることにより、カバー部が不意に開くことを防止するものである。
【0019】
また、請求項7に記載した発明が採った手段は、請求項1から6のいずれかに記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を備えることを特徴とする鋏、である。請求項1から6のいずれかに記載の引っ掛かり防止部材を備えることにより、シザーケースのポケット等から鋏を取り出したり、収納したりするときに、ボルト若しくはナットが引っ掛かることが防止されるので、取り出し操作及び収納操作をスムーズに行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載した引っ掛かり防止部材によれば、刃部側傾斜面部を備えることにより、鋏刃体の表面から突出するボルト若しくはナットと鋏刃体の刃部の表面とを連続させる面を形成することができるので、両者の間に段差がなくなり、鋏をシザーケースのポケット等に収納する際にボルトもしくはナットの引っ掛かりが防止されて、収納操作をスムーズに行うことができるようになる。また、二本の鋏刃体を軸着するボルト若しくはナットと鋏刃体との間に基部を介在させるだけ取り付けが可能なので、既存の鋏に簡単に取り付けることができる。
【0021】
また、請求項2に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項1に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、柄部側傾斜面部を備えることにより、鋏刃体より突出するボルト若しくはナットと鋏の柄部の表面とを連続させる面を形成することができるので、両者の間に段差がなくなり、シザーケースのポケット等に収納された鋏を取り出す際にもボルト若しくはナットの引っ掛かりが防止されて、取り出し操作をスムーズに行うことができるようになる。
【0022】
また、請求項3に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項2に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、刃部側傾斜面部の上面と柄側傾斜面部の上面とを連設してボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を形成するので、鋏の美感をより向上させることができる。また、被覆部に宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を描いたりすることができるので、アクセサリーとしても使用も可能となる。
【0023】
また、請求項4に記載した引っ掛かり防止部材によれば、鋏刃体から突出するボルト若しくはナットを被覆するカバー部により、鋏をシザーケースに収納したり、シザーケースのポケット等から取り出したりするときに、ボルト若しくはナットが引っ掛かることを防止することができる。また、カバー部に宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を描いたりすることができるので、アクセサリーとしても使用も可能となる。
【0024】
また、請求項5に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項4に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、カバー部を基部との間に配設したバネによって付勢することにより、カバー部の開閉操作を容易に行うことができる。
【0025】
また、請求項6に記載した引っ掛かり防止部材によれば、請求項4又は5に記載の引っ掛かり防止部材の効果に加えて、基部の一端に形成された爪部とカバー部の内側に形成された係止部とを係止させることにより、カバー部の開閉を確実にロックすることができる。また、カバー部をスライド自在に配設し、これを長手方向にスライドさせることによって爪部と係止部との係止及び解除ができるので、ロック操作を容易に行うことができる。
【0026】
また、請求項7に記載した鋏によれば、請求項1から6のいずれかに記載した引っ掛かり防止部材を備えることにより、鋏をシザーケースのポケット等に収納したり、シザーケースのポケット等から取り出したりする際に、鋏刃体から突出するボルト若しくはナットが引っ掛かることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1から図4には、実施例1に係る引っ掛かり防止部材100について示されている。図1に示すように、引っ掛かり防止部材100は、基部110と刃部側傾斜面部120とからなる。この引っ掛かり防止部材100の材質は特に限定されるものではないが、鋏の操作性に支障をきたさないよう、例えばプラスチック等の軽量な材質から作成することが好ましい。
【0029】
基部110は、引っ掛かり防止部材100の鋏10への取り付けに際し、鋏刃体10とナット20との間に介在される部分である。このため、基部11には、二本の鋏刃体11、11を枢着するボルト20が挿通される穴部111が形成されている。
【0030】
刃部側傾斜面部120は、基部110の一端側から延設された部分であり、その形状は表面が曲面からなる側面視山型に形成されている。この刃部側傾斜面部120は、図2及び図3に示すように、引っ掛かり防止部材100が鋏10に取り付けられたときに、ナット20の上面と鋏刃体10の表面との間の段差Dを埋めるように配設されて、ナット20の上面と鋏刃体10の表面とが連続した面をなすようにするものである。
【0031】
図4には、引っ掛かり防止部材100を鋏に取り付ける方法を説明する鋏の分解斜視図が示されている。図4に示すように、引っ掛かり防止部材100の鋏への取り付けは、まず、基部の穴部に2本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30を挿通させ、次いで、ボルトにナットを締め付けることによって行う。つまり、引っ掛かり防止部材100は、基部111が鋏刃体11とナット20との間に挟まれるようにして取着される。
【0032】
尚、図4に示されている皿バネ40は、ボルト30に螺合させたナット20を上方に付勢するものである。これにより、二本の鋏刃体11、11の締結力の微調整が行うことができるようになる。また、皿バネ40には、凸部41が形成されており、この凸部41がナット20の裏面に形成される凹凸部と係止することで、ナット20の回り止めとしても機能する。
【0033】
このようにして、実施例1に係る引っ掛かり防止部材100を鋏に取り付けることにより、鋏刃体11の刃部側表面11aとナット20の上面とが、刃部側傾斜面部230を介して連続した面をなすようになる。これにより、鋏刃体11の刃部側表面11aとナット10の上面との間の段差Dがなくなるので、シザーケースのポケット等に収納された鋏10を取り出すときにもナット20が引っ掛かることがなくなり、収納操作をスムーズに行うことができるようになる。
【実施例2】
【0034】
図5から図7には、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200について示されている。図5に示すように、引っ掛かり防止部材200は、基部210と、刃部側傾斜面部220と、柄部側傾斜面部230とからなる。基部210と刃部側傾斜面部220とは、それぞれ実施例1の引っ掛かり防止部材100における基部110と刃部側傾斜面部120と同様に構成されている。よって、ここでは、基部210及び刃部側傾斜面部220についての説明は省略し、柄部側傾斜面部230について詳述する。
【0035】
図5に示すように、柄部側傾斜面部230は、基部210のうち刃部側傾斜面部220が形成される側と対向する側より延設され、刃部側傾斜面部220の長さよりやや長さを有して形成されている。そして、図6に示すように、柄部側傾斜面部230は、引っ掛かり防止部材200を鋏10に取り付けた状態で、鋏刃体11の柄部側11bに配置される。
【0036】
図7には、引っ掛かり防止部材200を鋏に取り付ける方法を説明する分解斜視図が示されている。引っ掛かり防止部材200の鋏への取り付け方法は、実施例1における引っ掛かり防止部材100の取り付け方法と同様に、2本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30を基部210の穴部211に挿通させ、その後、ボルト30にナット20を螺合させて締めつけることによって、引っ掛かり防止部材200の基部211が鋏刃体11とナット20との間に挟まれるようにして取着される。
【0037】
そして、図8に示すように、引っ掛かり防止部材200が鋏10に取り付けられることにより、鋏刃体11の柄部側11bの表面とナット20の上面との間の段差Dがなくなり、両者が柄部側傾斜面部230を介して連続した面をなすようになる。これにより、シザーケースのポケット等に収納された鋏10を取り出すときにもナット20が引っ掛かることを防止できるので、刃部側傾斜面部220と相俟って、鋏の取り出し及び収納操作をスムーズに行うことができるようになる。
【実施例3】
【0038】
図9から図12には、実施例3に係る引っ掛かり防止部材300について示されている。ここで、図9から図12に示す引っ掛かり防止部材300は、説明の便宜上、二本の鋏刃体11、11を軸着するためのナット20が組み込まれた状態で記載されている。
【0039】
引っ掛かり防止部材300は、図9及び図10に示すように、基部310と、刃部側傾斜面部320と、柄部側傾斜面部330とを備えており、その基本的な構成は、実施例2の引っ掛かり防止部材200と同様である。しかし、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200は、二本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30とナット20との間に皿バネ40を介在させた鋏に取り付けられるものであるところ、本実施例に係る引っ掛かり防止部材300は、皿バネ40にかえて板バネ50を使用する鋏に取り付けられるようにしたものである。
【0040】
図11及び図12に示すように、引っ掛かり防止部材300には、基部310とナット20との間に板バネ50が収容できるように、基部310と刃部側傾斜面部320との間及び基部210と柄部側傾斜面部330との間に、それぞれ空隙Xが形成されている。そして、刃部側傾斜面部320及び柄部側傾斜面部330の一方の側面には、それぞれ空隙Xに連通する開口部Yが形成されている。そして、引っ掛かり防止部材300を鋏に取り付ける際には、この開口部Yから空隙X内に板バネ50を差し込んで収納し、その後、実施例1及び2と同様に、二本の鋏刃体11、11を軸着するボルト30を挿通し、これにナット20を螺合させて締め付けることによって行う。
【0041】
また、板バネ50を備える鋏では、髪をカットしている際に、板バネ50と鋏刃体11との間に生じる隙間に、カットされた髪の毛が詰まるという問題があった。そこで、引っ掛かり防止部材300では、板バネ50と基部310との間に髪の毛の詰まりが生じないよう図12に示すように、開口部Yが形成される側面と反対側の側面を閉塞して形成している。
【実施例4】
【0042】
図13から図17には、実施例4に係る引っ掛かり防止部材400について示されている。ここで、図13から図17に記載の引っ掛かり防止部材400は、説明の便宜上、二本の鋏刃体を軸着するためのナット20が組み込まれた状態で記載されている。
【0043】
実施例4に係る引っ掛かり防止部材400は、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200に改良を加えたものであって、さらに被覆部440を形成したものである。従って、ここでは基部410と、刃部側傾斜面部420と、柄部側傾斜面部430とについては、説明を省略し、実施例2に係る引っ掛かり防止部材200との相違点である被覆部440についてのみ説明する。
【0044】
図13から図15に示すように、被覆部440は、引っ掛かり防止部材400のうち、二本の鋏刃体11、11を軸着するナット20の上面を覆う部分であって、刃部側傾斜面部420の上面と柄部側傾斜面部430の上面とを連設することによって形成されている。しかし、被覆部440によりナット20の上面を全て覆ってしまうと、二本の鋏刃体11、11の締結力を調整するためナット20の緩締操作をするときに、指でナット20を摘むことが困難となる。このため、引っ掛かり防止部材400では、図16及び図17に示すように、被覆部440の幅W1がナット20の幅W2よりもやや狭くなるように形成することでナットを摘み易くして、緩締操作に支障をきたさないようにしている。
【0045】
実施例4に係る引っ掛かり防止部材400によれば、刃部側傾斜面部420及び柄部側傾斜面部430を備えることにより、シザーケースのポケット等からの鋏を取り出し、収納の際に、ナットが引っ掛かることがなくなって出し入れをスムーズに行えるようになる。さらに、被覆部440によりナット20の上面を被覆することによって、鋏の外観を向上させることができる。また、被覆部440に、例えば、宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を施したり等して、アクセサリーとしても使用することもできる。
【実施例5】
【0046】
図18から図21には、実施例5に係る引っ掛かり防止部材500について示されている。この引っ掛かり防止部材500は、実施例2と同様に、基部510と、刃部側傾斜面部520と柄部側傾斜面部530とを備えるが、柄部側傾斜面部530が、第一柄部傾斜面部530aと、第二柄部側傾斜面部530bとに二分割して形成されている点で相違している。
【0047】
第二柄部側傾斜面部530bは、図18から図21に示すように、基部510に長手方向(図20及び図21にそれぞれ示す矢印A、B方向)にスライド自在に配設される。そして、第二柄部傾斜面部530bには、第一柄部側傾斜面部530aに設けられたロックピン531が嵌合されるピン孔532が形成されている。すなわち、第二柄部傾斜面部530bを図20に示す矢印A方向にスライドさせると、ロックピン531とピン孔532とが嵌合し、これにより第一柄部側傾斜面部530aと第二柄部側傾斜面部530bとが一体となるようになっている。
【0048】
さらに、第二柄部傾斜面部530bには、その内面下方から舌片533が延設されている。この舌片533は、第二柄部側傾斜面部530bを、図20に示す矢印A方向にスライドさせたときに、皿バネ40と基部510との間に入り込んで、皿バネ40を上方に押し上げる。すると、皿バネの凸部41がナット20の下面の凹凸部21に押しつけられて、凸部41と凹凸部21との係止がより確実に行わることとなる。
【実施例6】
【0049】
図22から図26には、実施例6に係る引っ掛かり防止部材600について示されている。引っ掛かり防止部材600は、図23に示すように、鋏10において二本の鋏刃体11、11を軸着するナットの全部を覆うことにより、シザーケースのポケット等への収納、取り出しを行う際に、ナットが引っ掛からないようにするものである。この引っ掛かり防止部材600は、基部610と、カバー部620とを備える。
【0050】
基部610は、引っ掛かり防止部材600を鋏10に取り付ける際に、鋏刃体11とナットとの間に介在される部分である。基部610は、穴部611と、爪部612と、カバー部取付片613と、柄部側傾斜面部614と、バネ615とを備える。
【0051】
穴部611は、二本の鋏刃体11、11を軸着するボルトを挿通させるために形成されるものである。爪部612は、基部610の一端側、すなわち、カバー部600を鋏10に取り付けた際に鋏刃体11の刃部側11aを向く側に形成され、後述するカバー部620に形成される係止部621が係止される部分である。カバー部取付片613は、後述するカバー部620が上下方向に開閉自在に取り付けられる部分であり、その外側面にはカバー部620に設けられるピン622が係止されるスライド溝613aが形成されている。柄部側傾斜面部614は、基部610の他端側、すなわちカバープレート600を鋏10に取り付けた際に鋏刃体11の柄部側11bを向く側に形成されて、カバー部620の上面と鋏刃体11の柄部側の表面11bとが連続した面をなすようにするものである。バネ615は、カバー部取付片613に取り付けられたカバー部620を上方に付勢して開閉操作を容易にするものである。
【0052】
カバー部620は、引っ掛かり防止部材600が鋏10に取り付けられたときに、二本の鋏刃体11、11を軸着するナット全体を被覆するものであり、その表面は曲面をなして形成されている。カバー部620は、ピン621と係止部622とを備える。ピン622は、カバー部620の内側面に対向して二つ設けられている。そして、このピン622を、基部610に形成されるカバー部取付片613のスライド溝613aに係止することにより、カバー部620が基部610に上下方向に開閉自在に取り付けられる。係止部622は、カバー部620の先端の内側に形成されており、基部610に形成される爪部611が係止される部分である。
【0053】
次に、図25に基づいて、引っ掛かり防止部材600におけるカバー部620の開閉操作について説明する。図25(a)には、カバー部620を閉じた状態の引っ掛かり防止部材600が示されている。図25(a)において、カバー部620の係止部622は、カバー部620が開かないように基部610の爪部612と係止状態にある。そして、カバー部620を開く場合には、図25(b)に示すように、カバー部620を矢印C方向にスライドさせて係止部622と爪部612との係止を解除する。すると、図25(c)に示すように、カバー部620は、バネ615によって上方へと付勢されて、ピン621とスライド溝613aとの係止部分を支点として上方に開くこととなる。このとき、図26に示すように、ナット20は露出した状態となり、ナットの緩締操作が行なえるようになる。尚、開いたカバー部620を閉める場合には、開く操作と逆の手順で操作を行えばよい。
【0054】
実施例6に係る引っ掛かり防止部材600によれば、二本の鋏刃体11、11を軸着するナット20全体を被覆するカバー部620によって、鋏10をシザーケースのポケット等に収納したり、取り出したりするときに、ナットが引っ掛かることが防止されるので、収納、取り出し操作をスムーズに行うことができるようになる。また、カバー部620の表面に、例えば、宝石やビーズ等の装飾品を取り付けたり、絵や模様を描くことによって、アクセサリーとしても使用することができる。
【0055】
尚、本実施例に係る引っ掛かり防止部材600では、基部610とカバー部620との間にバネ615を配設し、このバネ615によりカバー部620を上方へ付勢して開く構成を採っているが、バネ615を配設せずに、手動で開く構成としてもよい。また、カバー部620は、ナット20の緩締操作を行うときに、取り外しができるように基部610に対して着脱自在に配設してもよい。
【0056】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、上記実施例は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形をすることが可能であり、本発明の技術的範囲には、これらの改良変形が含まれる。例えば、上記実施例では、刃部側傾斜面部及び柄部側傾斜面部の表面は曲面を描いて形成されているがこれを平面としてもよいし、図27に示すように柄部側傾斜面部の変わりに指当てFを形成してもよい。尚、上記実施例は、基部をナットと鋏刃体との間に介在させた例を示しているが、ボルトが鋏刃体の表面から突出している鋏についても同様に適用することができることは勿論である。
【参考例】
【0057】
図28及び図29には、本発明に係る引っ掛かり防止部材の応用例が示されている。図28及び図29に示す応用例は、本発明に係る引っ掛かり防止部材が基部を備え、この基部を二本の鋏刃体を軸着するボルト若しくはナットの間に介在させて取り付ける点に着目したものであり、図28に示すレザー701や、図29に示す櫛702等の鋏以外の理美容具を鋏に取り付けできるようにするアタッチメント700としたものである。
【0058】
理美容師が髪をカットする際には、鋏を使ったカットとレザーを使ったカットを交互に行ったり、あるいはカットと櫛通しを交互に行ったりすることが頻繁に行われている。この場合、理美容師は、鋏と櫛又は鋏とレザーとを交互に持ち替えなければならないところ、図28及び図29に示すように、レザーや櫛をアタッチメント化して鋏と一体にすれば、このような持ち替えが不要となるので、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図2】実施例1に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図3】実施例1に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図4】実施例1に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付ける方法を説明するための鋏の分解斜視図である。
【図5】実施例2に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図6】実施例2に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図7】実施例2に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付ける方法を説明するための鋏の分解斜視図である。
【図8】実施例2に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図9】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図10】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の平面図である。
【図11】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の側面図である。
【図12】実施例3に係る引っ掛かり防止部材の背面図である。
【図13】実施例4に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図14】実施例4に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図15】実施例4に係る引っ掛かり防止部材を鋏に取り付けた状態を示す拡大側面図である。
【図16】実施例4に係る引っ掛かり防止部材の平面図である。
【図17】実施例4に係る引っ掛かり防止部材の背面図である。
【図18】実施例5に係る引っ掛かり防止部材の側面図である。
【図19】実施例5に係る引っ掛かり防止部材の平面図である。
【図20】図19のX−X断面図である。
【図21】図19のXーX断面図である。
【図22】実施例6に係る引っ掛かり防止部材の斜視図である。
【図23】実施例6に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図24】実施例6に係る引っ掛かり防止部材の分解斜視図である。
【図25】実施例6に係る引っ掛かり防止部材の側面図であって、カバー部を開くときの操作方法を説明する図である。
【図26】実施例6に係る引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏であって、引っ掛かり防止部材のカバー部が開いた状態を示す斜視図である。
【図27】他の実施形態の引っ掛かり防止部材が取り付けられた鋏の斜視図である。
【図28】本発明に係る引っ掛かり防止部材の応用例を示す図である。
【図29】本発明に係る引っ掛かり防止部材の応用例を示す図である。
【図30】シザーケースのポケットに鋏が収納された状態を示す図である。
【図31】一般的な理美容鋏の斜視図である。
【図32】図31に示す理美容鋏のナット部分の拡大側面図である。
【図33】シザーケースを側面から見た図であって、シザーケースのポケットに鋏を収納する際に、鋏のナットがポケットの入口に引っ掛かる様子を説明する図である。
【図34】二本の鋏刃体を軸着するナット部分に改良が加えられた鋏の斜視図である。
【図35】図34に示す理美容鋏のナット部分の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 鋏
11 鋏刃体
20 ナット
30 ボルト
100、200、300、400、500、600 引っ掛かり防止部材
110、210、310、410、510、610 基部
120、220、320、420、520 刃部側傾斜面部
230、330、430、530 柄部側傾斜面部
440 被覆部
620 カバー部
612 爪部
615 バネ
621 ピン
622 係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の、前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、
該基部の一端より延設され、前記ボルト若しくは前記ナットの上面から前記鋏刃体の刃部側に向かって下降傾斜して、前記鋏刃体の表面と前記ボルト若しくはナットの上面とを連続させる面を有する刃部側傾斜面部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項2】
基部の他端より延設されて、ボルト若しくはナットの上面から鋏刃体の柄部側に向かって下降傾斜し、前記鋏刃体の柄部側表面と前記ボルト若しくは前記ナットの上面とを連続させる面を有する柄部側傾斜面部を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項3】
刃部側傾斜面部の上面と柄部側傾斜面部の上面とを連設して形成され、ボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を備えることを特徴とする請求項2に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項4】
二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、
該基部に開閉自在若しくは着脱自在に配設されて、前記ボルト若しくは前記ナットを被覆するカバー部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項5】
カバー部が、開閉自在に配設される場合において、基部との間に配設されるバネによって付勢されることを特徴とする請求項4に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項6】
基部の一端には爪部が形成され、
カバー部は、前記基部の長手方向に沿ってスライド自在に配設されるとともに、その内側に前記爪部が係止される係止部が形成されており、
前記カバー部を閉じた状態でスライドさせることにより、前記爪部と前記係止部とを係止させて前記カバー部の開閉をロックできるようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を備えることを特徴とする鋏。
【請求項1】
二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の、前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、
該基部の一端より延設され、前記ボルト若しくは前記ナットの上面から前記鋏刃体の刃部側に向かって下降傾斜して、前記鋏刃体の表面と前記ボルト若しくはナットの上面とを連続させる面を有する刃部側傾斜面部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項2】
基部の他端より延設されて、ボルト若しくはナットの上面から鋏刃体の柄部側に向かって下降傾斜し、前記鋏刃体の柄部側表面と前記ボルト若しくは前記ナットの上面とを連続させる面を有する柄部側傾斜面部を備えることを特徴とする請求項1に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項3】
刃部側傾斜面部の上面と柄部側傾斜面部の上面とを連設して形成され、ボルト若しくはナットの上面を被覆する被覆部を備えることを特徴とする請求項2に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項4】
二本の鋏刃体がボルトとナットとからなる支軸部により回動自在に軸着される鋏の前記ボルトと前記鋏刃体との間若しくは前記ナットと前記鋏刃体との間に介在される基部と、
該基部に開閉自在若しくは着脱自在に配設されて、前記ボルト若しくは前記ナットを被覆するカバー部とを備えることを特徴とする鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項5】
カバー部が、開閉自在に配設される場合において、基部との間に配設されるバネによって付勢されることを特徴とする請求項4に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項6】
基部の一端には爪部が形成され、
カバー部は、前記基部の長手方向に沿ってスライド自在に配設されるとともに、その内側に前記爪部が係止される係止部が形成されており、
前記カバー部を閉じた状態でスライドさせることにより、前記爪部と前記係止部とを係止させて前記カバー部の開閉をロックできるようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の鋏の支軸部の引っ掛かり防止部材を備えることを特徴とする鋏。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2008−29481(P2008−29481A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204645(P2006−204645)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
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