説明

鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置

【課題】金型に充填する前の溶湯から酸化物を速やかかつ安定的に除去して溶湯を清浄し、酸化物の混入が少なく機械的特性に優れた鋳造品を提供する。
【解決手段】射出スリーブ7内に溶湯8を注湯した後、給湯機とは別体の操作機に取り付けられた専用治具10を溶湯8の液面に向けて挿入して液面上の酸化膜Xをすくい取り、射出スリーブ7を金型に嵌合させて溶湯8を射出し鋳造品を成型加工する。専用治具10は、本体部11および柄部を備え、溶湯8とともに本体部11によりすくい取った酸化膜Xは窪み部に集められるとともに、余分な溶湯8は本体部の複数の孔部から射出スリーブ7内に落下して戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型射出鋳造機を用いて鋳造品を製造する鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置に関し、特に鋳造品への酸化物の混入を防止して鋳造品の品質を向上させることができる鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高品質の鋳造品を得るためには、溶湯内に空気などのガスを巻き込まないようにして金型内部に溶湯を充填することが必須である。また、これと同時に、金型内部に充填される溶湯の清浄度が高い(すなわち、酸化物などの混合が少ない)ことが求められる。
【0003】
このような溶湯の清浄化に関する技術として、例えば次のようなものが知られている。すなわち、下記特許文献1に開示されている溶湯給湯方法では、溶湯を射出スリーブに給湯した後、ラドル(とりべ)の先端に設けられた酸化物除去装置により溶湯の液面上に浮遊する酸化膜を捕捉して酸化膜を溶湯内から除去することにより、鋳造品内に混入する不純物を低減するようにしている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示されている給湯方法では、あらかじめ射出スリーブ内に設けた溶湯緩衝板を用い、溶湯の注湯後にこの溶湯緩衝板を上昇させて溶湯の液面上に浮遊する酸化物を捕捉して酸化膜を溶湯内から除去することにより、溶湯内へのガスの巻き込みを防止するようにしている。
【0005】
さらに、下記特許文献3に開示されている酸化物流出防止方法では、射出スリーブへの溶湯の注湯時に溶湯の落下高さを低くするために、あらかじめ射出スリーブの底部を上昇させておき、注湯に連動して底部を下げていくことで液面上に浮遊する酸化物の発生量を抑制し、鋳造品内部への酸化物の混入量を少なくするようにしている。
【特許文献1】特開2006−110569号公報
【特許文献2】特開平8−39226号公報
【特許文献3】特開平2−187241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1に開示されている溶湯給湯方法では、ラドルの先端に取り付けられた酸化物除去装置によっては、その形状等に起因して十分に溶湯の液面上の酸化膜を除去できるとは言い難く、特に鋳造機を連続運転した場合の捕捉した酸化物の酸化物除去装置からの除去については問題がある。
【0007】
また、例えば特許文献2に開示されている給湯方法では、射出スリーブ内の溶湯の液面上の酸化物を除去することはできるが、射出スリーブに注湯する溶湯の注入速度には限界があるとともに、溶湯緩衝板への溶湯の付着の問題があるため、鋳造加工工程の効率化には必ずしも繋がらないという問題がある。
【0008】
さらに、例えば特許文献3に開示されている酸化物流出防止方法では、射出スリーブ内への溶湯の給湯時および給湯直後に発生する溶湯の液面上の酸化物については対応できないため、鋳造品内部への混合物の混入を問題のないレベルまで低減するには限界があるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、鋳造機の連続運転中においても金型に充填する前の溶湯から酸化物を速やかかつ安定的に除去することで溶湯を清浄し、酸化物の混入が少なく機械的特性に優れた鋳造品を得ることができる鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鋳造方法は、竪型射出鋳造機を用いて鋳造品を製造するに際して、前記竪型射出鋳造機の金型内部に溶湯を射出するに先立って、前記溶湯の保持容器内に給湯機によって前記溶湯を注湯する注湯工程と、前記注湯工程によって前記保持容器内に注湯され貯留された前記溶湯の液面に向けて前記給湯機とは別体の操作機に取り付けられた専用治具を挿入し、前記溶湯の液面上に形成された酸化膜を前記専用治具によってすくい取るように捕捉しつつ前記酸化膜と同時にすくい取られた溶湯を前記専用治具から落下させて前記保持容器内に戻す捕捉工程と、前記捕捉工程によって前記酸化膜が捕捉された前記保持容器内の溶湯を前記金型内部に射出して鋳造品を成形加工する加工工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る鋳造方法は、上記のように構成されることにより、金型内部に溶湯を射出するに先立って、保持容器内の液面上に形成された酸化膜を給湯機とは別体の操作機に取り付けられた専用治具によって除去するようにしているので、溶湯の注湯と酸化膜の除去を効率よく行うことができる。これにより、鋳造機の連続運転中においても金型に充填する前の溶湯から酸化物を速やかかつ安定的に除去することで溶湯を清浄し、酸化物の混入が少なく機械的特性に優れた鋳造品を得ることができる。
【0012】
また、前記捕捉工程の後に、前記本体部に付着した前記酸化膜を前記専用治具から除去する除去工程をさらに備えるようにしてもよい。
【0013】
前記除去工程では、例えば、(a)前記専用治具を振動させる、(b)前記専用治具に空気を吹き付ける、および(c)前記専用治具に機械的衝撃を与えることのうち、少なくとも一つによって前記酸化膜を除去するようにしてもよい。
【0014】
本発明に係る鋳造機は、鋳造品を成形するための金型と、前記鋳造品の材料となる溶湯を保持する保持容器と、前記金型内部に前記溶湯を射出するに先立って、前記保持容器内に前記溶湯を注湯する注湯手段と、前記注湯手段とは別体に構成され、前記保持容器内に注湯され貯留された前記溶湯の液面に向けて専用治具を挿入し、前記溶湯の液面上に形成された酸化膜を前記専用治具によってすくい取るように捕捉しつつ前記酸化膜と同時にすくい取られた溶湯を前記専用治具から落下させて前記保持容器内に戻す捕捉手段と、前記保持容器を前記金型に嵌合させ、前記捕捉手段により前記酸化膜が捕捉された前記溶湯を前記金型内部に射出する射出手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
前記専用治具は、例えば先端側が前記保持容器内に挿入可能な大きさの杓文字状あるいはお玉状の外観を有する形状で形成され、前記先端側が前記溶湯に漬かり、前記先端側の少なくとも一部が前記酸化膜をすくい取るように曲面で構成されて、すくい取った前記溶湯を前記保持容器内に落下させる複数の孔部が形成された本体部と、基端側に前記本体部の後端から延びて前記操作機に取り付けられる柄部とを備えてなるように構成されている。
【0016】
また、前記専用治具は、前記本体部の外周縁部上に前記酸化膜の前記外周縁部からの流出を防ぐ堰部が立設されていてもよい。
【0017】
なお、前記保持容器は、例えば前記金型の溶湯注入口に嵌合可能な開口部を有する射出スリーブである。また、前記操作機は、例えば前記専用治具との接続部分が回動可能に構成されたマニピュレータである。
【0018】
本発明に係る鋳造機用酸化膜除去装置は、先端側が鋳造品の材料となる溶湯を保持する保持容器内に挿入可能な大きさの杓文字状あるいはお玉状の外観を有する形状で形成され、前記先端側が前記溶湯に漬かり、前記先端側の少なくとも一部が前記溶湯の液面上に形成された酸化膜をすくい取るように曲面で構成されて、すくい取った前記溶湯を前記保持容器内に落下させる複数の孔部が形成された本体部と、基端側に前記本体部の後端から延びる柄部とを備えた専用治具と、前記保持容器内に注湯され貯留された前記溶湯の液面に向けて前記専用治具を挿入し、前記酸化膜を前記専用治具によってすくい取るように捕捉しつつ前記酸化膜と同時にすくい取られた溶湯を前記専用治具から落下させて前記保持容器内に戻す捕捉手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、酸化物の混入が少なく機械的特性に優れた鋳造品を得ることができる鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る鋳造方法にて酸化膜の除去に用いられる専用治具の正面図、図2は図1のA−A’断面図、図3は同専用治具を操作機に接続した鋳造機用酸化膜除去装置を示す概略図である。
【0022】
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る鋳造方法にて図示しない竪型鋳造機の保持容器である射出スリーブ内に注湯された溶湯から酸化膜を除去するための専用治具10は、先端側が射出スリーブ内に挿入可能な大きさの杓文字状あるいはお玉状の外観を有する形状で形成されている。なお、射出スリーブは、図示しない金型の溶湯注入口に嵌合可能な開口部39(図3参照)を有する中空構造の保持容器であるが、保持容器としては、溶湯を保持可能な構造の容器であればこの射出スリーブに限定されるものではなく、種々の容器を採用することができる。
【0023】
この専用治具10は、先端側が溶湯に漬かり、この先端側の少なくとも一部が射出スリーブ内の溶湯とともに酸化膜をすくい取るように曲面で構成された本体部11と、基端側に本体部11の後端から延びて給湯機とは別体の操作機30(図3参照)の先端アーム部31に取り付けられる柄部12とを備えて構成されている。なお、本体部11の底部15における中心付近は、本体部11によりすくい取られた酸化膜を保持するように最も窪んだ窪み部13となっている。
【0024】
また、専用治具10の本体部11には、外周縁部上にすくい取った酸化膜の外周縁部からの流出を防止するための堰部14が立設され、この本体部11の底部15にはすくい取った溶湯を射出スリーブ内に落下させるための複数の孔部16が形成されている。なお、本体部11に対して柄部12は、所定の傾斜を有するように接続されている。すなわち、具体的には、例えば本体部11の窪み部13の頂点に対する接線と柄部12の板面とが、所定の傾斜を有するように接続されている。また、本体部11が板金叩き出し加工などにより形成されている場合は、柄部12は本体部11に対して溶接などにより接続される。複数の孔部16は、その孔径や数などは任意に設定されて形成される。
【0025】
このように本体部11の底部15に複数の孔部16が形成されることにより、専用治具10によって溶湯の液面から酸化膜を優先的にすくい取りつつ、溶湯は射出スリーブ内に落下させて戻し、すくい取った酸化膜(酸化物)を窪み部13付近に効果的に集めて保持することが可能となる。また、本体部11に対して柄部12が傾斜を有することにより、専用治具10のすくい取り動作に関連する操作機30の先端アーム部31による回動範囲を傾斜を有しない場合に比べて少なくすることが可能となる。
【0026】
このように構成された専用治具10は、例えばステンレスや鉄系の材料からなる。具体的には、金属の溶湯としてアルミニウムを使用した場合には、アルミニウムの付着を考慮して濡れ性の悪い黒鉛、セラミック、BN(Boron Nitride:窒化硼素)等をステンレスや鉄系の材料表面にコーティングしたものを用いると、溶湯からの酸化膜の除去が容易となるため好適である。
【0027】
操作機30は、ロボットあるいは自動機からなり、例えば、上述した先端アーム部31から続く中間アーム部32および基端アーム部33を有するマニピュレータを備えてなる。先端アーム部31は、その先端部が専用治具10の柄部12の後端と接続され、専用治具10を接続部分を中心として図3中曲線矢印で示す方向に回動可能に支持する。
【0028】
次に、このように構成された専用治具10を用いて溶湯から酸化膜を除去しつつ鋳造品を製造するための鋳造処理における酸化膜除去処理について説明する。図4は、本発明の一実施の形態に係る鋳造方法による酸化膜除去処理手順の例を示すフローチャート、図5および図6は同酸化膜除去処理における各種工程を説明するための工程説明図である。
【0029】
図4に示すように、酸化膜除去処理において、まず、図示しない制御装置からの制御により、給湯機から溶湯を射出スリーブ内に注湯する(ステップS101)。このステップS101の処理では、具体的には、例えば図5(a)に示すように、傾けられた射出スリーブ7に対して、その開口部39に向けて溶湯8が溜められた給湯機のラドル9の先端を傾けることにより、溶湯8を射出スリーブ7内に注湯する。
【0030】
注湯が完了した後、直ちに射出スリーブ7の開口部39近傍からラドル9を後退移動させて、専用治具10を射出スリーブ7内の溶湯8の液面に向けて挿入する(ステップS102)。
【0031】
このステップS102の処理では、具体的には、図5(b)に示すように、射出スリーブ7の内面側のある位置において、この射出スリーブ7内に溜められた溶湯8の液面(酸化膜X)に向けて、操作機30のマニピュレータによって専用治具10の本体部11の先端側を先頭にして挿入する。このとき、ラドル9は、傾きが元に戻された状態(開口面が水平となる状態)で後退移動され、専用治具10の動きを妨げない位置に配置される。なお、このラドル9と専用治具10の動作は、別体の給湯機と操作機30により同時並行的に行われるため、専用治具10をラドル9に一体的に配置した場合と比較して、より速やかかつ効率よく注湯(給湯)と酸化物の除去とを連続動作にて行うことができる。
【0032】
専用治具10を射出スリーブ7内に挿入したら、専用治具10によって射出スリーブ7内の溶湯8を液面の酸化膜Xを掻き取るようにすくう(ステップS103)。このステップS103の処理では、具体的には、図5(c)に示すように、専用治具10の本体部11を、射出スリーブ7の内面側のある位置から直線的に離れた位置の内面側まで溶湯8の液面下に浸した状態で移動させて酸化膜Xをすくい取る。
【0033】
こうして溶湯8を専用治具10ですくったら、速やかに操作機30のマニピュレータによって専用治具10を射出スリーブ7内から取り出して、酸化物収集容器40の上に移動させ、射出スリーブ7を金型(図示せず)に嵌合し、射出スリーブ7内の溶湯8を金型内部(図示せず)に射出して鋳造品を成形加工する(ステップS104)。
【0034】
最後に、射出スリーブ7内から取り出した専用治具10から酸化膜Xを除去し(ステップS105)、酸化膜除去処理を終了するか否かを判断する(ステップS106)。酸化膜除去処理を終了しないと判断した場合(ステップS106のN)は、上記ステップS101に移行して処理を繰り返す。酸化膜除去処理を終了すると判断した場合(ステップS106のY)は、本フローチャートによる一連の酸化膜除去処理を終了する。
【0035】
なお、上記ステップS105の処理では、具体的には、図6に示すように、操作機30のマニピュレータによって酸化膜Xをすくい取った専用治具10を、酸化物収集容器40の開口上方にて酸化膜Xが下方に向くように180°回転させる。そして、昇降シリンダ42によって回転軸43を中心として回動する衝撃アーム44を上昇させ、衝撃アーム44を落下させてその先端に設けられた衝撃部41を専用治具10に当接し、酸化膜Xを専用治具10から除去して酸化物収集容器40内に落下させる。
【0036】
このステップS105の処理では、上述した方式の他、専用治具10自体を振動させて酸化膜Xを除去したり、専用治具10に図示しないブロアから圧縮空気を吹き付けて除去したりしてもよく、これらの方式を組み合わせて酸化膜Xを除去するようにしてもよい。
【0037】
本出願人による試験によると、上述したような専用治具10を用いて溶湯8の酸化膜Xを除去して製造された鋳造品と比較例の鋳造品とを比較した場合に、次の表1に示すような結果が得られた。なお、使用した合金は、アルミニウム(Al)7%、シリコン(Si)0.35%のマグネシウム(Mg)合金(AC4CH)である。また、熱処理は、530℃での加熱を2.5時間行い、水焼き入れを行った後、再び160℃での加熱を2.5時間行った。試験サンプル数としては、各20ずつ実施した。
【0038】
【表1】

【0039】
この表1に示す試験結果によると、試料としての比較例の鋳造品(比較例)は、平均値で引張強さ293MPaおよび伸び11%となり、最低値で引張強さ272MPaおよび伸び6%となった。一方、試料としての実施例の鋳造品(実施例)は、平均値で引張強さ297MPaおよび伸び14%となり、最低値で引張強さ280MPaおよび伸び9%となった。以上により、本発明の一実施の形態に係る鋳造方法にて溶湯8を清浄化した製造された鋳造品は、比較例と比べて引張強さおよび伸びのいずれをも良好な結果を得ることができた。
【0040】
なお、本発明に係る鋳造方法および鋳造機ならびに鋳造機用酸化膜除去装置は、上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上記実施の形態では、溶湯8が注がれる保持容器が射出スリーブ7であったが、溶湯8を一旦保持して、その後金型に注湯可能な構成であれば他の保持容器であってもよい。また、上述したように金型に保持容器を嵌合させた後に、保持容器の底部の上昇により溶湯8を金型内部に射出する方式に限定されるものではなく、金型と保持容器とが嵌合した後に、保持容器内部の液面を押えて金型内部に溶湯8を注ぐ方式や、金型内部を減圧して溶湯8を金型内部に注ぐ方式でもよい。
【0041】
さらに、専用治具10は、溶湯8と酸化物(酸化膜X)とをできるだけ分離して除去(清浄化)するための治具であるが、溶湯8の温度の低下や鋳造サイクルにおける許容範囲内においては、複数の孔部16の大きさや数、専用治具10自体のサイズおよび専用治具10の形状は適宜設定することが可能である。
【0042】
以上のように、上述した本発明の一実施の形態によれば、金型内部に溶湯8を射出スリーブ7から射出するに先立って、射出スリーブ7内の溶湯8の液面上に形成された酸化膜Xを給湯機とは別体の操作機30に取り付けられた専用治具10によって除去するようにしているので、鋳造機の連続運転中においても金型に充填する前の溶湯8から酸化膜Xを速やかかつ安定的に除去することで溶湯8を清浄することができる。これにより、酸化物の混入が少なく機械的特性に優れた鋳造品を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鋳造方法にて酸化膜の除去に用いられる専用治具の正面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】同専用治具を操作機に接続した鋳造機用酸化膜除去装置を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る鋳造方法による酸化膜除去処理手順の例を示すフローチャートである。
【図5】同酸化膜除去処理における各種工程を説明するための工程説明図である。
【図6】同酸化膜除去処理における各種工程を説明するための工程説明図である。
【符号の説明】
【0044】
7…射出スリーブ、8…溶湯、9…ラドル、10…専用治具、11…本体部、12…柄部、13…窪み部、14…堰部、15…底部、16…孔部、30…操作機、31…先端アーム部、32…中間アーム部、33…基端アーム部、39…開口部、40…酸化物収集容器、41…衝撃部、42…昇降シリンダ、43…回転軸、44…衝撃アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型射出鋳造機を用いて鋳造品を製造するに際して、前記竪型射出鋳造機の金型内部に溶湯を射出するに先立って、前記溶湯の保持容器内に給湯機によって前記溶湯を注湯する注湯工程と、
前記注湯工程によって前記保持容器内に注湯され貯留された前記溶湯の液面に向けて前記給湯機と別体の操作機に取り付けられた専用治具を挿入し、前記溶湯の液面上に形成された酸化膜を前記専用治具によってすくい取るように捕捉しつつ前記酸化膜と同時にすくい取られた溶湯を前記専用治具から落下させて前記保持容器内に戻す捕捉工程と、
前記捕捉工程によって前記酸化膜が捕捉された前記保持容器内の溶湯を前記金型内部に射出して鋳造品を成形加工する加工工程と
を備えたことを特徴とする鋳造方法。
【請求項2】
前記捕捉工程の後に、前記本体部に付着した前記酸化膜を前記専用治具から除去する除去工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の鋳造方法。
【請求項3】
前記除去工程では、(a)前記専用治具を振動させる、(b)前記専用治具に空気を吹き付ける、および(c)前記専用治具に機械的衝撃を与えることのうち、少なくとも一つによって前記酸化膜を除去することを特徴とする請求項2記載の鋳造方法。
【請求項4】
鋳造品を成形するための金型と、
前記鋳造品の材料となる溶湯を保持する保持容器と、
前記金型内部に前記溶湯を射出するに先立って、前記保持容器内に前記溶湯を注湯する注湯手段と、
前記注湯手段とは別体に構成され、前記保持容器内に注湯され貯留された前記溶湯の液面に向けて専用治具を挿入し、前記溶湯の液面上に形成された酸化膜を前記専用治具によってすくい取るように捕捉しつつ前記酸化膜と同時にすくい取られた溶湯を前記専用治具から落下させて前記保持容器内に戻す捕捉手段と、
前記保持容器を前記金型に嵌合させ、前記捕捉手段により前記酸化膜が捕捉された前記溶湯を前記金型内部に射出する射出手段と
を備えたことを特徴とする鋳造機。
【請求項5】
前記専用治具は、先端側が前記保持容器内に挿入可能な大きさの杓文字状あるいはお玉状の外観を有する形状で形成され、前記先端側が前記溶湯に漬かり、前記先端側の少なくとも一部が前記酸化膜をすくい取るように曲面で構成されて、すくい取った前記溶湯を前記保持容器内に落下させる複数の孔部が形成された本体部と、基端側に前記本体部の後端から延びて前記操作機に取り付けられる柄部とを備えてなることを特徴とする請求項4記載の鋳造機。
【請求項6】
前記専用治具は、前記本体部の外周縁部上に前記酸化膜の前記外周縁部からの流出を防ぐ堰部が立設されていることを特徴とする請求項5記載の鋳造機。
【請求項7】
前記保持容器は、前記金型の溶湯注入口に嵌合可能な開口部を有する射出スリーブであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の鋳造機。
【請求項8】
前記操作機は、前記専用治具との接続部分が回動可能に構成されたマニピュレータであることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の鋳造機。
【請求項9】
先端側が鋳造品の材料となる溶湯を保持する保持容器内に挿入可能な大きさの杓文字状あるいはお玉状の外観を有する形状で形成され、前記先端側が前記溶湯に漬かり、前記先端側の少なくとも一部が前記溶湯の液面上に形成された酸化膜をすくい取るように曲面で構成されて、すくい取った前記溶湯を前記保持容器内に落下させる複数の孔部が形成された本体部と、基端側に前記本体部の後端から延びる柄部とを備えた専用治具と、
前記保持容器内に注湯され貯留された前記溶湯の液面に向けて前記専用治具を挿入し、前記酸化膜を前記専用治具によってすくい取るように捕捉しつつ前記酸化膜と同時にすくい取られた溶湯を前記専用治具から落下させて前記保持容器内に戻す捕捉手段とを備えた
ことを特徴とする鋳造機用酸化膜除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−142844(P2009−142844A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321639(P2007−321639)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】