説明

鋳造装置

【課題】比較的コンパクトで且つ低コストにより製作できると共に、複数の鋳型ごとに鋳込まれたアルミニウムなどのインゴットを確実に当該鋳型から脱型できる鋳造装置を提供する。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯をインゴットに連続して鋳造する装置であって、軸方向が水平である回転軸2と、係る回転軸2と共に回転する回転体10と、係る回転体10の外周面における円周方向および軸方向の双方に沿って形成された複数の鋳型部cと、上記回転体10の内部に配置され且つ上記鋳型部cを冷却する冷却手段と、上記回転体10の上方に配置された注湯手段30と、を含む、鋳造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を所定サイズのインゴット(鋳塊)に連続して鋳造する鋳造装置に関し、特に重量が1kg以下の小形塊の鋳造に適した鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルミニウムなどのダイカスト鋳造などに用いる多数のインゴットを連続して鋳造し、得られた多数のインゴットを冷却しつつ搬出するため、次述するようなインゴットの製造ラインが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
係るインゴットの製造ラインは、ほぼ箱形を呈する多数の鋳型をエンドレスにして連結した成形コンベアと、係る成形コンベアの下方に沿って配置された受渡しコンベアと、係る受渡しコンベアの下方に配置され且つ一部が冷却水槽内を通過する冷却コンベアと、を備えている。
【特許文献1】実開平5−39738号公報 (第1〜11頁、図1〜6)
【0003】
そして、前記成形コンベアにおける個々の鋳型に順次鋳込まれた多数のインゴットを確実に受け渡すため、下向きに開口する姿勢となった鋳型の裏面をハンマーで打設して強制的に受渡しコンベア上に落下させると共に、係るコンベアの端部に取り付けたインゴット押え部材と、これに隣接して配置した複数のローラとによって、上記インゴットの姿勢を上下逆転させることにより、多数のインゴットを前記冷却コンベアの係止爪上に順次受け渡させている。係る冷却コンベアの係止爪上に受け渡されたインゴットは、当該コンベアが前記冷却水槽を通過する際に、常温付近の温度にまで冷却される。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたインゴットの製造ラインは、成形コンベア、受渡しコンベア、および一部が冷却水槽内を通過する冷却コンベアを備えているため、設備自体が大型となり、且つ広いスペースを必要とする。更に、鋳型の裏面を打接する前記ハンマー、受渡しコンベアの端部に取り付けた前記インゴット押え部材、係る押え部材に隣接し且つ前記冷却コンベアの斜め上方に配置した複数の前記ローラ、および係る複数のローラの姿勢を変更する油圧シリンダなども必要となる。このため、設備コストが嵩み、且つ複雑な操作に伴う運転を行わざるを得ないと共に、多大のメンテナンスも必要である。しかも、前記ハンマーによる生じる騒音により、作業環境も劣悪となる、などの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、比較的コンパクトで且つ低コストにより製作できると共に、複数の鋳型ごとに鋳込まれたアルミニウムなどのインゴットを確実に当該鋳型から脱型できる鋳造装置を提供する、ことを課題とする。尚、本明細書においては、アルミニウムとアルミニウム合金とを含めて、これらを単に「アルミニウム」または「アルミニウムなど」と称する。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、発明者らによる鋭意研究および試験の結果、ロール形状などを呈し且つ垂直方向に沿って回転する冷却可能な回転体の外周面に複数の鋳型を設け、係る回転体の頂部付近に位置する鋳型にアルミニウムなどの溶湯を鋳込むと共に、当該回転体で最低位置付近に達した鋳型から先に鋳込まれたインゴットを自重で落下させる、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の鋳造装置(請求項1)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯をインゴットに連続して鋳造する装置であって、軸方向が水平である回転軸と、係る回転軸と共に回転する回転体と、係る回転体の外周面における少なくとも円周方向に沿って形成された複数の鋳型部と、上記回転体の内部に配置され且つ上記鋳型部を冷却する冷却手段と、上記回転体の上方に配置された注湯手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、注湯手段から前記回転体の頂部付近に位置する鋳型に注湯されたアルミニウムの溶湯は、当該回転体自体が前記冷却手段によって内部から冷却されているため、当該鋳型が垂直方向に沿って回転する間に、鋳型の内面付近側から順次に凝固して、当該鋳型の形状に倣ったインゴット(鋳塊)となる。係るインゴットは、その鋳型が上記回転体の最低位置付近に達した際に、その凝固収縮および自重によって脱型し、且つ回転体の下方に落下する。このため、鋳造装置の構成が簡素で且つ全体をコンパクトにできると共に、比較的狭いスペースでも容易に設置できる。従って、設備コストを低減でき且つ操作も容易に行えると共に、メンテナンスも最小限にすることが可能となる。しかも、従来の前記ハンマーなどによる騒音を生じにくいため、作業環境も良好にすることができる。
【0008】
尚、本発明の鋳造装置により鋳造されるインゴットには、全体がほぼ半球体または半楕円球体を呈するものに限らず、全体がほぼ三角錐、ほぼ四角錐、あるいは六角錐などの多角錐、多角錐台形、または、ほぼ円錐形を呈するインゴットも含まれる。係るインゴットのサイズは、一般的な形状のインゴットよりも比較的小さく、例えば、一般的なアルミニウム合金からなり、約100〜数100gの比較的小さな小形塊も含まれる。
また、前記回転体に形成される複数の鋳型は、当該回転体の外周面側の開口部とこれよりも狭い底部とをそれぞれ有している。そのため、係る鋳型が上記回転体の最低位置付近に達した際に、当該鋳型に鋳込まれたインゴットをその自重によって当該回転体の下方に落下させることができる。
更に、前記回転体に形成される複数の鋳型の鋳込部には、酸化チタンなどの一般的な離型剤が塗布されている。
【0009】
また、前記回転体は、前記回転軸を回転させる回転手段によって回転され、例えば、回転軸に取り付けたスプロケット、別のスプロケットを回転させるモータ、および前記2つのスプロケットに架け渡したチェーンの組み合わせ、あるいは、前記回転軸に取り付けたギア、これに噛み合う減速ギア、および係る減速ギアを回転させる油圧モータなどの組み合わせなどからなる回転手段が挙げられる。
更に、前記注湯手段には、例えば、溶解炉から出湯したアルミニウムの溶湯を受け入れる耐火物からなる分流樋、および係る分流樋の先端側の底面に設けた単数または複数の出湯孔が挙げられる。
加えて、前記回転体の下方には、落下するインゴットを受け入れる冷却水槽、あるいは、当該水槽を載置した搬送台車を配置することが望ましい。
【0010】
また、本発明には、前記回転体は、全体がほぼ円筒形を呈している、鋳造装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、全体がほぼ円筒形(ロール形状ないし円盤形状)を呈する回転体の外周面における少なくとも円周方向に沿って複数の前記鋳型が形成されているので、前記回転軸と共に当該回転体を回転させることで、頂部付近に位置する鋳型にアルミニウムの溶湯を鋳込むと共に、最低位置付近に位置する鋳型から冷却されたインゴットを確実に落下させることが可能となる。
尚、前記回転体は、ほぼ円筒形の外周面における軸方向にも複数に区画された複数の鋳型を形成した形態や、全体がほぼ円筒形またはほぼ円盤形を呈し、その外周面の円周方向のみに沿って複数の鋳型部を形成した形態としても良い。あるいは、円周方向に沿って形成する複数の鋳型の数を辺数とする正多角柱体の回転体としても良い。また、前記回転体の鋳型部分は、熱伝導性の良い銅製やグラファイト製が好ましいが、比較的安価な鋳鉄または鋳鋼などの鋳物としても良い。
【0011】
更に、本発明には、前記冷却手段は、前記回転軸の内側を貫通して前記回転体の中空部に挿入される給水管および排水管と、係る給水管に連通する噴射管と、を含み、係る噴射管には、回転体の頂部付近に位置する前記鋳型部の裏面に対し、冷却水を噴射する複数の噴射孔が形成されている、鋳造装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、アルミニウムの溶湯が注下された直後である回転体の頂部付近に位置する前記鋳型部の裏面における軸方向のほぼ全体に対し、噴射管に形成された複数の噴射孔から冷却水が噴射される。その結果、係る鋳型に鋳込まれたアルミニウムの溶湯は、迅速に冷却されて当該鋳型の形状に倣った形状のインゴットに凝固し始める。
【0012】
しかも、噴射された前記冷却水は、回転体の内側で滞留するため、回転体の回転に伴って上記鋳型が頂部から側方および最低位置付近に至る間に、アルミニウムの溶湯全体をほぼ凝固したインゴットに冷却すると共に、その凝固収縮によって、脱型を確実に成さしめることができる。従って、多数のインゴットを連続して鋳造し且つ確実に取り出すことが可能となる。
尚、回転体の内側に滞留した冷却水は、前記噴射管とほぼ同じレベルに位置する環流管に設けた水平方向に細長い開口部から、前記排水管に排出される。あるいは、回転体内の排水管自体に設けた開口部から排出するようにしても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明における一形態の鋳造装置1を示す正面図、図2は、その垂直断面図、図3は、係る鋳造装置1に用いる冷却手段15の概略を示す斜視図、図4は、図2中のX−X線の矢視に沿った断面図である。
鋳造装置1は、図1,2,4に示すように、軸方向が水平な回転軸2、係る回転軸2の中間から径方向に拡がり且つ当該回転軸2回転し、全体がほぼ円筒形を呈する回転体10、係る回転体10の外周面における円周方向と軸方向との双方に沿って格子状に形成された複数の鋳型部c、回転体10の内部に配置された冷却手段15、および回転体10の上方に配置された注湯手段30を備えている。
回転軸2は、中空部3を有する左右一対の金属製管材からなり、それらの一端にフランジ4とボス5とが設けられている。係るボス5は、回転体10における左右一対のフランジ11に明けた貫通孔12内に進入すると共に、各ボス5に隣接する各フランジ4と上記フランジ11とが面接触し且つ両者を図示しないボルトにより結合することで、回転体10の両側面の中心部に一対の回転軸2を同軸で且つ対称に固定している。
【0014】
図1,2に示すように、左右一対の回転軸2は、フロアFから立設する一対の基礎kごとの上面に取り付けた各軸受6を介して回転可能に支持され、且つ係る回転軸2と共に回転体10も回転可能としている。図1,2で右側の回転軸2には、比較的大径のスプロケット8が取り付けられ、係るスプロケット8とモータの回転軸に連結された比較的小径のスプロケット(何れも図示せず)との間に、チェーン9が掛け渡されている。即ち、上記モータを駆動することで、チェーン9およびスプロケット8などを介して、回転軸2および回転体10を垂直方向に沿って、比較的緩やかな速度(例えば、約1rpm)で回転可能としている。尚、回転体10の下側には、凝固収縮および自重により各鋳型cから落下するインゴット(小形塊)Cを受け入れる冷却水wを充填して水槽Bが配置されている。
図1,2,4に示すように、回転体10の外周面における円周方向と軸方向との双方に沿って形成された複数の鋳型部cは、開口部が円形で且つ奥側に向かって狭くなるほぼ半球形状の内面を有している。
【0015】
また、図2,4に示すように、回転体10の内側には、ほぼ円柱形の中空部(内部)13が形成され、係る中空部13内には、左右の回転軸2の中空部3を個別に貫通した給水管16および排水管18が同軸で進入している。係る給水管16と排水管18の端面壁17,19は、中空部13の中央部で接続されている。更に、給水管16および排水管18は、左右の各回転軸2の外側で図示しない支持体により、回転不能に固定されている。尚、各回転軸2の外端面と給水管16および排水管18の外周面との間には、図示しないシール材が配置されている。
図2,3に示すように、回転体10の中空部13内には、本発明の冷却手段15を構成する給水管16と排水管18、これらと平行で且つ回転体10の頂部付近に位置する鋳型部cの裏面に近接する噴射管20と環流管24、およびこれらの間を接続する斜めの枝管22,25が挿入されている。
【0016】
上記噴射管20は、その上面の軸方向に沿って複数の噴射孔21を開設しており、図2,3中の矢印で示すように、給水管16および枝管22を介して、圧送された冷却水wを複数の噴射孔21から、回転体10の頂部付近に位置する鋳型部cの裏面に対し噴射可能としている。
一方、環流管24には、図3,4に示すように、その上面の軸方向に沿って細長い開口部23が開設され、回転体10の中空部13内に滞留した冷却水wが、当該中空部13のほぼ大半を占めるレベルで保たれるように、係る冷却水wの一部を開口部23から取り入れ、枝管25および排水管18を介して、外部へ排水可能としている。尚、上記給水管16は、図示しないポンプを介して、冷却水wのタンクに連通しており、上記排水管18は、鋳型cの裏面に接触したことによって、比較的温かくなった冷却水wを再度冷却させる水槽に連通している。
【0017】
図1,2,4に示すように、注湯手段30は、図示しない溶解炉の出湯口から出湯されたアルミニウムの溶湯Mを流す耐火性の樋28、および分流樋26からなる。上記樋28の先端側の底面に設けた出湯口29から分流樋26に流れた溶湯Mは、分流樋26の先端側の底面に設けた複数(図示では5個)の出湯口27から、回転体10の頂部付近に位置する複数(図示では5個)の鋳型部c内に個別に注下可能とされている。
尚、図4に示すように、分流樋26の出湯口27は、回転体10の頂部よりも1個〜数個前の鋳型部c内に溶湯Mを注下する位置にあり、その結果、係る溶湯Mを鋳型cの容積よりも小さくして鋳込むと共に、鋳込まれた溶湯Mの冷却を、可及的に速めるようにしている。但し、条件によって、分流樋26の出湯口27を、回転体10の頂部に位置する鋳型部c内に溶湯Mが注下するような位置にしても良い。
【0018】
ここで、前述した鋳造装置1の操業方法について、図4,5を基に説明する。
予め、図示しないモータを駆動して、前記チェーン9およびスプロケット8などを介して、回転軸2および回転体10を垂直方向に沿って、比較的緩やかな速度(約1rpm)で回転させる。尚、回転体10における左右のフランジ11間の各鋳型cを含む外周面には、例えば、酸化チタン系の離型剤がほぼ均一な厚みで塗布されている。
平行して、図示しないポンプを駆動し、給水管16および枝管22を介して、冷却水wを噴射管20に圧送し、係る噴射管20の各噴射孔21から、冷却水wを回転体10の頂部付近に位置する鋳型部cの裏面に向かって噴射する。
図4に示すように、回転体10の中空部13内にある程度のレベルで冷却水wが溜まった際に、注湯手段30の樋28および分流樋26から、アルミニウムの溶湯Mを回転体10の頂部よりも1個分直前の鋳型部c内に溶湯Mを注下する。
【0019】
注下される溶湯Mは、鋳型cの全容積の約60〜約80%程度で鋳込まれる。係る注湯(鋳込み)作業は、回転体10の外周面における軸方向に沿った複数の鋳型cに対して、同時に行われると共に、図4に示すように、回転体10の外周面における円周方向に沿った複数の鋳型cに対して、順次連続して行われる。
回転体10の頂部付近で各鋳型cに鋳込まれた溶湯Mは、前記冷却水wにより冷却された当該鋳型cの内面に接触する外周側から急速に冷却され、求心状に凝固し始め、上記鋳型cの内面形状に倣った形状のインゴット(小形塊)Cとなる。同時に、係るインゴットCには、上記凝固の進行と共に、鋳型cの内面に接触する外周側から中心部に向かって、凝固に伴う収縮が生じる。
【0020】
その結果、図5に示すように、各鋳型c内のインゴットCは、当該鋳型cが回転体10の頂部付近から右側に約90〜約140度回転した位置に達した際に、前記離型剤および凝固収縮によって、当該鋳型cの内面から僅かずつ離れ始める。そして、各鋳型cが回転体10の最低位置の付近に達した際に、各インゴットCは、その自重により上記鋳型cから抜け出し、水槽Bの冷却水w中に落下する。
図5中の白抜きの矢印の左側に拡大して示すように、上記インゴットCは、ほぼ半球面の頂部hおよび円形の底面bを有する全体がほぼ半球形を呈する。
因みに、前記回転体10における各筏cを含む外周面の直径を約500mmとし、各鋳型cの容積が約80mで且つその約80%にアルミニウムの溶湯Mを注下した場合、約150gの小さなインゴットCを同時に複数個ずつ連続して鋳造することができた。この際、窒素ガスやArガスなどの不活性ガス雰囲気中、あるいは減圧雰囲気中で、前記鋳造を行うことで、インゴットの表面に生成される酸化被膜の量(厚み)を少なくすることができる。
【0021】
尚、インゴットCが脱型した各鋳型cは、図5に示すように、回転体10の左側を上向きに上昇し、頂部付近に達した際に、前記同様にアルミニウムの溶湯Mが注下される。
以上のような鋳造装置1によれば、注湯手段30から前記回転体10の頂部付近に位置する鋳型cに注湯されたアルミニウムの溶湯Mは、当該回転体10自体が前記冷却手段15によって内部から冷却されているため、当該鋳型cが垂直方向に沿って回転する間に、鋳型cの内面付近側から順次に凝固して、当該鋳型cの形状に倣ったインゴットCとされる。係るインゴットCは、その鋳型cが回転体10の最低位置付近に達した際に、その凝固収縮および自重によって脱型し且つ回転体10の下方に落下する。従って、鋳造装置1の構成が簡素で且つ全体をコンパクトにできると共に、比較的狭いスペースでも容易に設置できるので、設備コストを低減でき且つ操作も容易に行え、且つメンテナンスも最小限にすることが可能となる。しかも、従来のハンマーなどによる騒音を生じにくいため、作業環境も良好となる。
【0022】
図6は、異なる冷却手段15aを示す斜視図である。
係る冷却手段15aは、図6に示すように、前記同様の給水管16と排水管18とを同軸にして、前記回転軸2の中空部3を貫通すると共に、係る給・排水管16,18の端面壁17,19を回転体10の中空部13の中央付近に位置させている。給水管16の端面壁17付近には、前記同様の枝管22を介して、中空部13の上方に複数の噴射孔21を有する噴射管20が前記同様に取り付けられている。
一方、排水管18の端面壁19付近には、回転体10の中空部13内に開口する細長い開口部18aが形成され、前記のような環流管(20)を省略している。
上記冷却手段15aによれば、前記同様に回転体10の頂部付近に位置する鋳型cの裏面を、これに噴射される冷却水wによって冷却でき、且つ冷却水wの給・排水経路が簡素なため、回転体10の中空部13内に納めることも容易となる。
【0023】
図7は、異なる形態の鋳造装置31を示す正面図、図8は、図7中Y−Y線の矢視に沿った垂直断面図である。
鋳造装置31は、図7,8に示すように、前記同様の回転軸2、係る回転軸2と共に回転し且つ全体がほぼ円筒形を呈する回転体32、係る回転体32の外周面における円周方向のみに沿って形成された複数の鋳型部c′、回転体32の中空部(内部)34に配置された前記同様の冷却手段15、および回転体32の上方に配置された前記同様の注湯手段30を備えている。
回転体32は、左右一対のフランジ33間の外周面における円周方向のみに沿って複数の鋳型部c′が形成され、係る鋳型部c′は、開口部がほぼ長方形で且つ奥側に向かって僅かに狭くなる全体がほぼ直方体形状を呈し、垂直断面がほぼ逆台形の一般的なインゴットとほぼ相似形の内面を有する。
【0024】
図8に示すように、回転体32の内側には、ほぼ円柱形の中空部34が形成され、係る中空部34内には、前記同様の給水管16、排水管18、噴射管20、環流管24、および枝管22,25からなる冷却手段15が配置されている。尚、回転体32の下側には、前記同様の水槽Bが配置されている。また、注湯手段30の分流樋26は、3個の出湯口27を有しているが、1個のみとしても良い。
前記同様に、左右一対の回転軸2と共に回転体32を一定速度で回転させると共に、冷却手段15の給・排水管16,18や噴射管20および環流管24に冷却水wを循環させ、回転体32の頂部付近に位置する鋳型c′の裏面に冷却水wを噴射する。係る状態で、図8に示すように、アルミニウムの溶湯Mを、分流樋26の出湯口27から、回転する回転体32の頂部付近に順次達した各鋳型c′内に、その約70〜80%の容積で注湯する。
【0025】
図8に示すように、前記注湯(鋳込み)作業は、回転体32の外周面における円周方向に沿った複数の鋳型c′に対して、順次連続して行われる。
上記回転体32の頂部付近で各鋳型c′に鋳込まれた溶湯Mは、前記冷却水wにより冷却された当該鋳型c′の内面に接触する外周側から急速に冷却され、求心状に凝固し始め、上記鋳型c′の内面形状に倣った形状のインゴットC′となる。同時に、係るインゴットC′には、上記凝固の進行と共に、鋳型c′の内面に接触する外周側から中心部に向かって、凝固に伴う収縮が生じる。
【0026】
更に、図8に示すように、各鋳型c′内のインゴットC′は、当該鋳型c′が回転体32の頂部付近から右側に約90〜約140度回転した位置に達した際に、前記離型剤および凝固収縮によって、当該鋳型c′の内面から僅かずつ離れ始める。そして、各鋳型c′が回転体32の最低位置の付近に達した際に、各インゴットC′は、その自重により、上記鋳型c′から脱型し、水槽Bの冷却水w中に落下する。その結果、図8の水槽B中で示すように、全体がほぼ直方体で且つ断面が台形である一般的な形状のインゴットC′を連続して得ることができる。
尚、回転体32内の冷却手段15は、前記冷却手段15aに置き換えても良い。
以上のような鋳造装置31によっても、その構成が簡素で且つ全体をコンパクトにできると共に、比較的狭いスペースでも容易に設置できるので、設備コストを低減でき且つ操作も容易に行え、且つメンテナンスも最小限にすることが可能となる。
【0027】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、回転体を縦長のほぼ円盤形状とし、その外周面の円周方向に沿って前記鋳型cを1列で形成したものとしても良い。
また、回転体の外周面に形成する複数の鋳型は、底部がほぼ平坦面で且つ全体が緩いテーパの円錐形状、長円錐形状、楕円錐形状、あるいは、多角錐形状、多角錐台形状などの形態としても良い。
更に、冷却手段は、前記冷却手段15,15aに限らず、前記給水管16の端面壁17がなく、その開口部が回転体10,32の中空部13,34の上部に位置するように端部が曲がっていると共に、端面壁19のない排水管18で且つその開口部が上記同様な位置となるように端部を曲げたものを用いても良い。
加えて、前記回転体および回転軸を回転させる回転手段には、油圧モータと減速ギアの組み合わせを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における一形態の鋳造装置を示す正面図。
【図2】上記鋳造装置の垂直断面図。
【図3】上記鋳造装置に用いる冷却手段の概略を示す斜視図。
【図4】図2中のX−X線の矢視に沿った垂直断面図。
【図5】上記鋳造装置の使用状態を示す垂直断面図。
【図6】異なる形態の冷却手段の概略を示す斜視図。
【図7】異なる形態の鋳造装置を示す正面図。
【図8】図7中のY−Y線の矢視に沿った垂直断面図。
【符号の説明】
【0029】
1,31………鋳造装置
2………………回転軸
10,32……回転体
13,34……内部/中空部
15,15a…冷却手段
16……………給水管
18……………排水管
20……………噴射管
21……………噴射孔
30……………注湯手段
c,c′………鋳型
C,C′………インゴット(鋳塊/小形塊)
w………………冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯をインゴットに連続して鋳造する装置であって、
軸方向が水平である回転軸と、
上記回転軸と共に回転する回転体と、
上記回転体の外周面における少なくとも円周方向に沿って形成された複数の鋳型部と、
上記回転体の内部に配置され且つ上記鋳型部を冷却する冷却手段と、
上記回転体の上方に配置された注湯手段と、を含む、
ことを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
前記回転体は、全体がほぼ円筒形を呈している、
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳造装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記回転軸の内側を貫通して前記回転体の中空部に挿入される給水管および排水管と、係る給水管に連通する噴射管と、を含み、
上記噴射管には、回転体の頂部付近に位置する前記鋳型部の裏面に対し、冷却水を噴射する複数の噴射孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−34714(P2009−34714A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202541(P2007−202541)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(507073859)日軽エムシーアルミ株式会社 (3)