説明

鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材

【課題】 鋼材、鋼管の製造過程から出荷に至るまでの搬送、特に枠などの柱との鋼材・鋼管製品との接触による当たり疵を防止するための緩衝材を提供する。
【解決手段】 鋼材の搬送ラインにおいて枠と鋼材とが接触し、該鋼材に当たり疵を作 る箇所に柔軟性を有する素材を固定することを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。上記に記載の緩衝材として、ゴム、合成樹脂であることを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材・鋼管の製造過程から出荷に至るまでの搬送に関し、特に枠などの柱との鋼材・鋼管製品との接触による当たり疵を防止するための緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に鋼材は成形されてから製品検査・出荷されるに至るまでに、矯正・切断・酸洗等の工程を通過する。この鋼材を搬送する際には鋼材の表面が枠などと当たることで鋼材表面に当たり疵を発生させるという問題がある。
【0003】
一方、製造工程のそれぞれの設備が離れた場所にある時などは一度クレードルに材料を落とし込んで結束し、クレーンで吊って搬送する。その際クレードルへの落とし込み時や、仮置枠、次工程のテーブルへの玉掛け搬送時に材料が枠にぶつかることで材料に当たり疵が発生する。
【0004】
そこで、従来方法では鋼材・鋼管の当たり疵防止を目的としたものとして、例えば特開平11−302884号公報(特許文献1)に開示されている。この方法は酸洗作業時の搬送における酸洗槽の底面と材料とのスリ疵を、酸洗槽に緩衝材としてボールを入れるといった方法で防止するものである。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている方法は、酸洗槽の底面との接触に関する対策であって、例えば材料を落とし込むクレードルの緩衝材には適用できない。仮置き枠やテーブル、クレードルに取り付ける緩衝材としては、例えば図5に示すような、各種の接触部材の疵防止のための緩衝材が開示されている。すなわち、図5(a)は、ポリウレタン樹脂11を薄い金属板12に溶着したものである。また、図5(b)は、これを仮置枠3に溶接止め13をしたものである。さらに、図6は、従来の方法でMCナイロン等の固形樹脂板14を仮置枠3にボルト止めしたものを示す。
【0006】
上述した図5に示す従来の方法は、緩衝材を強固に固定できるが、しかし、取り付け・取り外し時に溶接作業が必要である。また、図6のMCナイロンなどの固形樹脂14を取り付ける方法では、緩衝材をボルト等で固定する必要があり、その場合枠そのものにボルト穴15をあける必要があるうえに、緩衝材が摩耗するとボルトがむきだしになって当たり疵の原因となる。さらに曲線的な箇所16に取り付けるためには緩衝材をそれに合わせて加工する必要がある等の問題がある。
【特許文献1】特開平11−302884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記図5および図6のような従来の方法よりも容易に、溶接やボルト止めすることなく取り付け、取り外しができ、さらに曲線的な形状の箇所にも取り付けを可能とする緩衝材によって、仮置枠やテーブル、クレードルと鋼材・鋼管製品との間の当たり疵を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための手段として、鋼材に当たり疵を作る箇所に取り付ける緩衝材の素材として柔軟性のあるゴム、合成樹脂等にし、取り付け方法に関しては、溶接やボルト止めすることなく強固に固定できる方法として、緩衝材に溝を加工し、鉄線等で巻き付けることにより固着させるものである。
【0009】
その発明の要旨とするところは、
(1)鋼材の搬送ラインにおいて枠と鋼材とが接触し、該鋼材に当たり疵を作る箇所に柔軟性を有する素材を固定することを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。
(2)前記(1)に記載の緩衝材として、ゴム、合成樹脂であることを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。
(3)前記(1)に記載の緩衝材として、鉄線等でくくりつけるための溝を加工することを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材にある。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明によるゴム板の取り付けは鉄線等でくくりつけて固定するだけであるため、取り付け作業が容易である。また、くくりつけた鉄線を切断することで容易に取り外しができる。また、柔軟性のあるゴム板であるので、湾曲した箇所にも取り付けが可能である等極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
鋼材は圧延などで成形されてから出荷されるに至るまでに、矯正・切断・酸洗・検査等の工程を通過する。それぞれ次工程に送る際の搬送設備において、クレーンで吊り上げて搬送したり枠入れするときに、枠などの接触部に当たることで鋼材表面に当たり疵を発生させる。
【0012】
本発明では、鋼材と接触し疵を発生させる箇所である仮置枠やテーブル、クレードルの表面にゴム板を巻きつける方法によって行われる。その取り付け方法としては、鉄線などで巻きつける。その際鉄線などが鋼材に触れることのないよう、ゴム板に深さ8mm〜12mmの溝を加工し、巻き付け箇所とする。
【実施例】
【0013】
以下、本発明について実施例によって詳細に説明する。
図1は、本発明にて使用するゴム板等の緩衝材を示す図である。この図1に示すように、ゴム、合成樹脂等の板からなる緩衝材1は鉄線4を巻き付けるための溝2を形成する。図2は、図1のように溝2を加工したゴム板からなる緩衝材1を仮置枠3に固着したものを示す。図2に示す仮置枠柱の先端部5のような湾曲した箇所にも取り付けが可能である。符号6は鋼管を示す。
【0014】
図3は、テーブル8のテーブルの柱7に緩衝材1を鉄線4で固着したものを示す。図4は、圧延や矯正といった機械から一時鋼材を結束し、クレーンで吊り上げて搬送するため、機械からスキッド9を通じてクレードル10に鋼材を落とし込む図であり、このクレードル10に緩衝材1を固着したものを示す。それぞれ緩衝材1を鉄線等4でくくりつけ固着する。
【0015】
ゴム板の厚さは耐久性を考慮すると厚いほうが良いが、曲線部への取り付けの際には柔軟性も必要とされるため、厚すぎると柔軟性が悪くなる。以上を考慮すると、ゴム板の厚さは10mm〜20mmが適当である。また、取り付けは、被覆鉄線等を巻き付けて固着するのみであり、溶接やボルトを必要としない。取り外しは、巻き付けた被覆鉄線等をほどくか切断するだけで取り外しが可能である。
【0016】
本方法における緩衝材は、上述した従来方法と同様の疵防止効果があり、図4に示すクレードル(高さ800mm)に緩衝材なしの状態で重量300kgの鋼材を落としこんだ場合深さ0.3mm程度の当たり疵が発生したが、本方法における緩衝材を固着したクレードルに同条件で落としこむと、疵は全く発生しなかった。また寿命に関しては、上述した従来の方法と同等の寿命を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る緩衝材の図である。
【図2】本発明に係る緩衝材を仮置枠に固着した図である。
【図3】本発明に係る緩衝材をテーブル柱に固着した図である。
【図4】本発明に係る緩衝材をクレードルに固着した図である。
【図5】従来のポリウレタン樹脂を薄い金属板に溶着した緩衝材および緩衝材を仮置枠に溶接にて固着した図である。
【図6】従来の固形樹脂にボルト穴を空け、仮置枠にボルトにて固着した図である。
【符号の説明】
【0018】
1 緩衝材
2 鉄線を巻き付けるための溝
3 仮置枠
4 鉄線
5 仮置枠先端
6 鋼管
7 テーブルの柱
8 テーブル
9 クレードル前スキッド
10 クレードル
11 ポリウレタン樹脂
12 金属板
13 溶接止め
14 MCナイロン等の固形樹脂板
15 ボルト止め箇所
16 曲線的な箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の搬送ラインにおいて枠と鋼材とが接触し、該鋼材に当たり疵を作る箇所に柔軟性を有する素材を固定することを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝材として、ゴム、合成樹脂であることを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝材として、鉄線等でくくりつけるための溝を加工することを特徴とする、鋼材との接触部の疵を防止するための緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−163171(P2010−163171A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4630(P2009−4630)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】