説明

鋼材の簡易成分判定方法

【課題】 鋼種を熟練者でなくても簡単容易にかつ自動的に照合して判定できる鋼材の簡易成分判定方法を提供する。
【解決手段】 各種成分の鋼材の標準試験片を一定条件の下でグラインダー3に押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、鋼特有の火花形状や色や破裂具合などを写真機又はビデオカメラにより各種採取して、その画像をコンピューターに取り込みかつ各種成分の火花形状や色や破裂具合などの特性をもとに分類し、分類した画像をもとに成分判定用の登録テンプレートを多数作成する。判定すべき実際の鋼製品5を先の標準試験片と同一条件下で火花試験を行い、その火花形状や破裂具合などをビデオカメラ5により撮影し、その画像をコンピューター1に取り込みかつ画像解析を行って特徴点部分の画像を抽出した照合テンプレートを作成する。その特徴点部分の照合テンプレートと、先の登録テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合して一致するものが実際の鋼製品の成分と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の簡易成分判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鋼材では、各種成分の鋼材が開発され、その用途も多技にわたってきている。これらの成分については、素材メーカーの成分シート及び素材に添付されたラベルによってのみ区分されている。しかし、小量多品種の生産体制にかわりつつある現在、その鋼種の区分もますます複雑になり重要度も増してきている現状にある。また、小量多品種になることにより、素材メーカーから入った1枚のラベル付き素材からさまざまな形状の加工品へと付加価値を高めていく工程において、製品そのものの成分についての管理を行うことが必要で、その管理シートの紛失などによるトラブルも発生する。その場合、この鋼種の推定、異材の鑑別についてはあまり時間を要せず、簡易的に試験する方法として、JIS G 0566で火花試験方法が規定されている。この方法は図6に示すように調べたい鋼製品(鋼片)HをグラインダーGに一定条件のもとで押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、そのグラインダーGから飛び出る火花形状や色、破裂具合などをその現場にて直接目視により観察しその特徴から鋼種を見分けるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記した従来の花火試験方法は、その現場にて直接目視により観察しそのグラインダーGから飛び出る火花形状や色、破裂具合などから鋼種を見分けるために、非常に高度な熟練度を必要とする。そのため、従来各社ではこの職人と呼ばれる熟練者がいたが、現在ではこの技術の伝承が途絶えつつあるという問題が生じていた。
【0004】
そこで、本発明は、鋼種を熟練者でなくても簡単容易に判定できる鋼材の簡易成分判定方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した問題を解決するために、本発明は、各種成分の鋼材の標準試験片を一定条件の下でグラインダーに押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、各種成分の鋼特有の火花形状や色や破裂具合などを写真機又はビデオカメラにより各種採取して、その採取した画像をコンピューターの記憶装置に取り込むと共に、コンピューターにて各種成分の火花形状や色や破裂具合などの特性をもとに分類し、その分類した画像をもとに成分判定用の登録テンプレートを多数作成する一方、判定しようとする実際の鋼製品を先の標準試験片の場合と同一条件下でグラインダーに押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、その場合の火花形状や破裂具合などを写真機又はビデオカメラにより撮影し、実際に火花試験をした鋼製品の火花形状の撮影画像をコンピューターに取り込み、その取り込んだ撮影画像をもとに画像解析を行って特徴点部分の画像を抽出した照合テンプレートを作成し、その後、その特徴点部分の照合テンプレートと、先の登録テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合して、その照合において一致した標準試験片の成分が判定しようとする実際の鋼製品の成分と同じであると判定するようにしたことを特徴とする。
なお、テンプレートとは数学的にデジタル変換された画像の記述のことをいう。
【発明の効果】
【0006】
上記した本発明の鋼材の簡易成分判定方法によれば、熟練者でなくとも予めコンピュータの記憶装置に多数登録された成分判定用の登録テンプレートと、撮影された実際の鋼製品の花火試験の撮影画像をもとに画像解析を行って特徴点部分の画像を抽出した照合テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合して、その照合において一致した標準試験片の成分が判定しようとする実際の鋼製品の成分と同じであると判定できるので、熟練者でなくても簡単容易にかつ自動的に照合して成分を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、鋼材の簡易成分判定方法に用いる器材を示すもので、1はコンピューター、2は各種成分の鋼材の標準試験片を一定条件の下でグラインダーに押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、各種成分の鋼特有の火花形状や色や破裂具合などをカメラにより各種採取し、その採取した画像をコンピューター1による成分判定の照合画像として記録させた照合用記録媒体、3はグラインダー、4はビデオカメラ、5は判定しようとする実際の鋼製品(鋼片)である。
【0008】
具体的には、照合用記録媒体2は、各種成分の鋼特有の火花形状や色や破裂具合などを記録させる場合、火花の根元、中央、先端の各部にわたり、動画や静止画、拡大画像、スロー動画などで記録させる一方、各種成分の火花を観察したときの特徴、流線の色、明るさ、長さ、角度、太さ、数、また、破裂を観察したときの特徴、形状、大きさ、花粉の有無、流線の角度などを、上記した動画や静止画、拡大画像と共に音声や画面への文字表示などと合わせて記録されている。
【0009】
そして、この照合用記録媒体2に採取した画像をコンピューター1の記憶装置(図示せず)に取り込むと共に、コンピューター1にて各種成分の火花形状や色や破裂具合などの特性をもとに分類し、その分類した画像をもとに成分判定用の登録テンプレートを多数作成する。その場合、コンピューター1によりそのディスプレーに各種成分の火花形状や色や破裂具合やその特性を映像化し、その映像化された動画や静止画、拡大画像と共に音声や画面への文字表示にて、各種成分の火花形状や色や破裂具合などを熟練者でなくとも簡単に学習できるようになされている。
【0010】
一方、判定しようとする実際の鋼製品5を先の標準試験片の場合と同一条件下でグラインダー3に押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、その場合の火花形状や色や破裂具合などをビデオカメラ4(写真機でもよい。)により撮影する。
【0011】
そして、鋼材の成分を判定するには、まず、実際に火花試験をした鋼製品5における火花形状の撮影画像をコンピューター1内に取り込む。次に、その取り込んだ撮影画像をもとに画像解析(解明化処理)を行って特徴点部分の画像を抽出した照合テンプレートを作成する。その後、その特徴点部分の照合テンプレートと、先の登録テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合して、その照合において一致した標準試験片の成分が判定しようとする実際の鋼製品5の成分と同じであると判定するようにしたのである。
【0012】
ここで、実際に火花試験をした鋼製品5の照合テンプレートと、先の登録テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合する場合、図2に示すように火花の全体、図3に示すように火花の根元、図4に示すように中央、図5に示すように先端の各部にわたり、流線の色、明るさ、長さ、太さ、数を照合し、また、破裂については形状、大きさ、花粉の有無、流線の角度、音声などの特徴点部分をもとに照合する。なお、必要に応じて照合テンプレートの画像と一致した登録テンプレートの画像をディスプレーにそれぞれ映像画像として映し出し、作業者が最終的に目視により確認することもできる。
【0013】
以上のように、本発明の鋼材の簡易成分判定方法によれば、熟練者でなくとも予めコンピュータ1に多数登録された成分判定用の登録テンプレートと、撮影された実際の鋼製品の花火試験の撮影画像をもとに画像解析を行って特徴点部分の画像を抽出した照合テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合して、その照合において一致した標準試験片の成分が判定しようとする実際の鋼製品の成分と同じであると判定できるので、熟練者でなくても簡単容易にかつ自動的に照合して成分を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明に係る鋼材の簡易成分判定方法の概要を示す説明図である。
【図2】 同判定方法による火花試験の火花の全体の映像説明図である。
【図3】 同火花の根元部分の各部火花試験の映像説明図である。
【図4】 同火花の中央部分の映像説明図である。
【図5】 同火花の先端部分の映像説明図である。
【図6】 従来の説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 コンピューター
2 照合用記録媒体
3 グラインダー
4 ビデオカメラ
5 判定すべき実際の鋼製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種成分の鋼材の標準試験片を一定条件の下でグラインダーに押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、各種成分の鋼特有の火花形状や色や破裂具合などを写真機又はビデオカメラにより各種採取して、その採取した画像をコンピューターの記憶装置に取り込むと共に、コンピューターにて各種成分の火花形状や色や破裂具合などの特性をもとに分類し、その分類した画像をもとに成分判定用の登録テンプレートを多数作成する一方、判定しようとする実際の鋼製品を先の標準試験片の場合と同一条件下でグラインダーに押し付けて火花を飛ばす火花試験を行い、その場合の火花形状や破裂具合などを写真機又はビデオカメラにより撮影し、実際に火花試験をした鋼製品の火花形状の撮影画像をコンピューターに取り込み、その取り込んだ撮影画像をもとに画像解析を行って特徴点部分の画像を抽出した照合テンプレートを作成し、その後、その特徴点部分の照合テンプレートと、先の登録テンプレートとを自動特徴点照合システムにより照合して、その照合において一致した標準試験片の成分が判定しようとする実際の鋼製品の成分と同じであると判定するようにしたことを特徴とする鋼材の簡易成分判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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