説明

鋼板のアライニング方法

【課題】 エンドシャーのアライニング作業時間を短縮する。
【解決手段】 サイドガイド3bを、搬送ライン4の幅方向に移動可能に設ける。搬送ライン4を搬送されてくる鋼板1の幅寸法に基づいて、サイドガイド3bを移動させる位置を求め、求めた位置までサイドガイド3bをあらかじめ移動しておく。鋼板1a、1bを、サイドガイド3a、3bまで搬送し停止し、移送装置2によってサイドガイド3a、3bに押し当ててアライニングを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の剪断ラインにおいて、エンドシャーのアライニング作業時間を短縮することがきる鋼板のアライニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板の圧延、剪断工程において、圧延が終了した鋼板は、剪断ラインにおいて所定の寸法に剪断される。図2は、スリット鋼板のエンドシャーアライニング設備を示す平面図、図3は、鋼板の剪断ラインの概略を示す工程図である。図3に示すように、圧延された鋼板1は、クロップシャー(CS)5において先端および後端(トップおよびボトム)をライン搬送可能な長さに粗切断され、次いで、ダブルサイドシャー(DSS)およびローリングスリットシャー(RSS)(「DSS/RSS」)からなるスリッター6によって鋼板の側面(サイド)および中央(センター)を切断され、次いで、エンドシャー(ES)7によって所定の大きさに剪断される。その後剪断検査設備9により検査が行われる。
【0003】
図2、図3に示すように、エンドシャー7においては、スリッター6によって切断された鋼板(スリット鋼板)をサイドガイド3に押し当てて直角度を出すアライニング作業が、搬送ライン4のエンドシャー7の手前において行われる。
【0004】
従来のアライニングにおいては、現行の鋼板(次の鋼板の前の当該鋼板)1のアライニングが完了してから、次の鋼板1をアライニングのためにサイドガイド3まで搬送する。これを引き込みという。サイドガイド3は、固定側およびフリー側の両ライン端に設けられており、引き込んだ固定側の鋼板(スリット鋼板)1aおよびフリー側の鋼板1bを、移送装置2によってそれぞれ下から持ち上げ、ライン端の両側に設けられているサイドガイド3a、3bまで移送装置2によって移送し、鋼板1a、1bをそれぞれサイドガイド3a、3bに押し当て、直角度が確認されたらアライニングが完了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図2に示すように、鋼板1(1a、1b)は、鋼板搬送ライン4の固定側に沿った状態で搬送されてくるため、フリー側の鋼板1bにおいては、フリー側のライン端に設けられているサイドガイド3bまで移送しなければならず、その距離はかなりの長さである。従って、鋼板1bがサイドガイド3bに到達するまで時間がかかってしまう問題がある。
【0006】
鋼板の搬送ライン4の幅方向長さ(ライン幅)は、通常約5500mm(5.5m)ほどあるため、例えば2500mmと板幅の大きい鋼板1を剪断した2枚の鋼板1a、1bは、固定側1aとフリー側1bとが同幅サイズの場合、鋼板1a、1bの幅方向長さは各々1250mmであり、フリー側1bのアライニングのためのサイドガイド3bまでの移送距離は3000mmとなる。移送装置2の移送速度は150mm/秒前後程度と遅く、この寸法の鋼板の場合ではサイドガイド3bまでの移送時間が約20秒以上もかかり、エンドシャーサイクルのネック工程となっていた。このように、従来は、固定側鋼板1aのアライニングが完了してもフリー側鋼板1bのそれが未了のため待ち時間が発生する。従来のアライニング方式では、固定側とフリー側とのアライニング時間の差は平均で19秒近くもあった。
【0007】
従って、本発明の目的は、上述の課題を解決し、エンドシャーのアライニングにかかる時間を大幅に短縮して作業能率を向上することができる鋼板のアライニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は下記の特徴を有している。
【0009】
[1]鋼板を所定長さに剪断するに際し、前記鋼板の側面が剪断刃に対し直交するように調整する鋼板のアライニング方法であって、
前記鋼板側面の位置情報に基づいて、前記剪断刃に対して直交するように配置したサイドガイドを予め前記鋼板側面から所定距離を隔てる位置に待機させ、次いで、前記鋼板を水平移動させ鋼板側面を前記サイドガイドに押し当てることを特徴とする鋼板のアライニング方法。
【0010】
コンピュータにより、次の鋼板の鋼板側面の位置情報や鋼板幅寸法などの鋼板の幅情報が伝送される。搬送ラインの幅方向(搬送ライン上の搬送方向に対して直交する方向)に移動可能なサイドガイドの搬送ライン内の移動が、現行の鋼板の処理作業に干渉するかどうかを判断する。干渉とは、サイドガイドが移動中に現行の鋼板との接触が発生する場合をいう。
【0011】
干渉がある場合は、現行の鋼板の処理作業が完了した後にサイドガイドの移動を行う。一方、干渉が無い場合は、現行の鋼板の処理作業中に、サイドガイドの移動を行う。
【0012】
移動可能なサイドガイドの移動量は、固定側のサイドガイドから鋼板の幅寸法に更に50〜200mmほど加えた距離の位置とする。
【0013】
サイドガイドは予めエンドシャー剪断刃に対して直交するように配置する。サイドガイドの手前に、次の鋼板を引き込み、搬送ラインを停止させる。同時に移送装置により鋼板を搬送ライン上をサイドガイド側へ移送する。鋼板の側面をサイドガイドへ押し当て、鋼板の直角度が確保される。直角度が確認され、アライニング作業が完了する。
【0014】
なお、次の鋼板の幅が現行の鋼板の幅より広い場合は、コンピュータから鋼板の幅情報が受信されたら、現行の鋼板が通過する前にサイドガイドの移動(位置の設定)がなされる。一方、次の鋼板の幅が現行の鋼板の幅よりも狭い場合は、現行の鋼板が通過した後に位置の設定が行われる。すなわち、次の鋼板が引き込まれたときには、サイドガイドは常に位置の設定がなされた状態となる。
【発明の効果】
【0015】
(1)アライニング作業でのネック工程である、アライニング位置においてフリー側のスリット鋼板をサイドガイドまで移送する従来の方式を、サイドガイドをライン内へ移動させる方式にすることにより、サイドガイドまで鋼板を移送するためにかかっていた時間を大幅に短縮することができる。
【0016】
(2)次の鋼板についての幅情報は、コンピュータから次の鋼板をアライニング位置まで引き込む前に伝送することができるので、あらかじめサイドガイドを鋼板が搬送されてくる位置まで移動して位置設定をしておくことが可能であり(プリセット方式)、常に、サイドガイドを鋼板引き込み前に設定した位置に待機させることができ、サイドガイドの移送時間による時間のロスはほとんど発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態を示す鋼板のアライニング設備を示す平面図である。図1に示すように、鋼板の搬送ライン4に設けられているダブルサイドスリッター(DSS/RSS)6の下流には、サイドガイド3(3a、3b)が、ライン7の幅方向両側端に設けられている。サイドガイド3aと3bとの間には、移送装置2が設けられている。サイドガイド3の下流には、エンドシャー(ES)7が設けられている。
【0019】
移送装置2は、下方から鋼板を持ち上げ、持ち上げた鋼板を搬送ライン4の幅方向に移送し、且つ、鋼板1をサイドガイド3に押し当てる鋼板移送装置である。
【0020】
サイドガイド3は、鋼板の搬送ライン4の長手方向に配された所定長さの鋼板との当接部を備えており、サイドガイド3aは、搬送ライン4の固定側に固定されて設けられており、一方、サイドガイド3bは搬送ライン4のフリー側に設けられ、搬送ライン4の幅方向に移動可能となっている。また、鋼板の長さに対応できるように、サイドガイド3a、3bとも搬送ライン4の長手方向に所定間隔をあけて2機設けられている。鋼板の長さに応じて両方または片方を用いればよい。
【0021】
次に、図1に示す鋼板のアライニング設備により、搬送ライン上を併走する2枚の鋼板1a、1bのアライニング方法を説明する。
【0022】
エンドシャー7内においては、搬送されてきた鋼板を、予め所定位置に固定されたシャーゲージ8に鋼板1(スリット鋼板1a、1b)を当てることにより切断長さを確定し、シャーによる剪断を行うようになっている。
【0023】
ところで、スリッター6で剪断された鋼板1(1a、1b)は、搬送ライン4の固定側に沿って搬送されてくるため、鋼板1aの固定側端の位置は常に一定である。従って、鋼板1(1a、1b)の幅寸法の値をあらかじめ情報として入手しておけば、サイドガイド3bを移動させる位置を求めることができる。
【0024】
アライニングの実施においては、搬送されてくる鋼板(当該現行の鋼板の次の鋼板)の幅寸法に基づき、フリー側のサイドガイド3bの位置を決定する。すなわち、鋼板の幅寸法に、更に50〜200mm加えた距離を求め、サイドガイド3a(搬送ライン4の固定側端)から求めた距離だけ離れた位置を、サイドガイド3bの設定位置とする。この位置までサイドガイド3bをあらかじめ移動しておいてから、鋼板1(1a、1b)をサイドガイド3(3a、3b)の位置(アライニング位置)まで引き込み、停止させると同時に、移送装置2により鋼板1(1a、1b)をサイドガイド3a、3bの方向へそれぞれ移送させてサイドガイド3a、3bに押し当ててアライニングを実施する。このように、鋼板1がアライニング位置(サイドガイド3の位置)に搬送されてくる以前にあらかじめサイドガイド3bを移動しておくため、鋼板1bはサイドガイド3bと距離の近い位置に引き込まれ、アライニングのために鋼板1bをサイドガイド3bまで移送する時間がほとんど無くなり、作業時間が大幅に短縮される。サイドガイド3bと鋼板1bとの間の距離は50〜200mm程度とすればよい。両者があまり接近しすぎるとサイドガイドと鋼板とが接触する恐れがあり、離れすぎるとアライニング時間短縮効果が小さくなる。
【実施例1】
【0025】
次に、本発明を実施例により説明する。
【0026】
図1に示す本発明のアライニング設備を用い、幅が3000mmおよび4000mmの鋼板の供試体1、2に対して、エンドシャーにおけるアライニングを実施した。移動可能なフリー側のサイドガイド3bと引き込んだ鋼板1bとの間隔は200mmとなるようにした。鋼板搬送ラインのライン幅は6000mmであった。移送装置の移送速度、移送距離、移送時間等の実施条件を表1に示す。
【0027】
比較のため、図2に示す従来のアライニング設備を用い、上記寸法の鋼板に対してアライニングを実施した。実施条件を表1に併せて示す。
【0028】
表1に示すように、本発明は、移送装置の移送距離、移送時間が従来例よりも減少し、アライニング時間が大幅に短縮されることがわかる。
【0029】
【表1】

【実施例2】
【0030】
図1に示す本発明のアライニング設備を用い、実施時間を1時間に設定して複数の鋼板に対してアライニングを実施した。アライニングを実施した鋼板は、通常の鋼板であり、鋼板幅は、1.5〜5.5mの間で数種類あった。搬送されてくる鋼板の幅情報によりフリー側サイドガイドを移動させる位置を求め、アライニングを実施した。実施した全鋼板のアライニング時間を調べた結果を図4に示す。
【0031】
比較のため、図2に示す従来のアライニング設備を用い、同時間(1時間)アライニングを実施し、全鋼板のアライニング時間を調べた。その結果を図4に併せて示す。
【0032】
図4に示すように、本発明によれば、剪断ラインにおける剪断能率は、従来例に対して5%向上した。アライニングを実施した全鋼板の平均値を比較すると、実施例の従来例に対する短縮時間は12秒であった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼板のアライニング実施設備を示す平面図である。
【図2】従来の鋼板のアライニング実施設備を示す平面図である。
【図3】鋼板の剪断ラインの概略を示す工程図である。
【図4】本発明の実施例2に係る剪断能率向上効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1、1a、1b 鋼板
2 移送装置
3、3a、3b サイドガイド
4 鋼板の搬送ライン
5 クロップシャー
6 スリッター
7 エンドシャー
8 シャーゲージ
9 剪断検査設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を所定長さに剪断するに際し、前記鋼板の側面が剪断刃に対し直交するように調整する鋼板のアライニング方法であって、
前記鋼板側面の位置情報に基づいて、前記剪断刃に対して直交するように配置したサイドガイドを予め前記鋼板側面から所定距離を隔てる位置に待機させ、次いで、前記鋼板を水平移動させ鋼板側面を前記サイドガイドに押し当てることを特徴とする鋼板のアライニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281357(P2006−281357A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103797(P2005−103797)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】