説明

鋼管杭連結用キャップ及び鋼管杭の施工方法

【課題】地盤改良仕様の杭打機で鋼管杭の埋設作業を行う際に一般的な定尺長さの鋼管杭を使用することを可能とする鋼管杭連結用キャップ及び施工方法を提供する。
【解決手段】回転駆動装置16と鋼管杭22とを連結する鋼管杭連結用キャップ21であって、鋼管杭を下方から挿入可能な鋼管杭挿入筒21aと、鋼管杭挿入筒の上端に設けられた回転駆動装置連結部21bと、鋼管杭挿入筒の内周面に設けられて鋼管杭の上部外周に突設した係合突起22aが通過可能な突起挿通溝21cと、突起挿通溝の上部及び下部にそれぞれ設けられた上部係合部21d及び下部係合部21eとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭連結用キャップ及び鋼管杭の施工方法に関し、詳しくは、杭打機のリーダに沿って昇降可能に設けられた回転駆動装置と鋼管杭とを連結するための鋼管杭連結用キャップ及び該鋼管杭連結用キャップを使用した鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リーダの下端の位置が高く設定されている地盤改良仕様の杭打機を使用して鋼管杭を圧入すると、回転駆動装置をリーダの下端まで下降させても地面からの鋼管杭の突出高さが高くなるため、先に圧入した鋼管杭の上端に次の鋼管杭の下端を連結できなくなることがある。このため、杭打機のフロントブラケットに対するリーダの取付高さを変更可能に形成し、鋼管杭を圧入して地中に埋設する作業を行うときにはリーダを低い位置に、セメントミルクを注入して地盤改良を行うときにはリーダを高い位置にそれぞれ付け替え、1台の杭打機で鋼管埋設と地盤改良とを行えるようにした杭打機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、地盤の状態に応じて鋼管杭の回転速度及びトルクを変更するため、回転駆動装置と鋼管杭との間に変速装置を設けることもある(例えば、特許文献2参照。)。なお、鋼管杭を回転駆動装置の出力軸に連結する際には、出力軸と鋼管杭との間に連結用のキャップを介在させることが広く行われている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−132118号公報
【特許文献2】特許第4624285号公報
【特許文献3】特開平11−256577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のように、リーダの取付高さを変更する際には、リーダを吊り上げて保持するためのクレーンが必要であり、高さ変更に要する作業量が多いという問題がある。また、特許文献2のように、変速装置を使用すると、鋼管杭の長さを変速装置の寸法分だけ短くしなければならず、一般的な定尺長さの鋼管杭を使用できないことがある。この場合、リーダを通常より長くすることによってリーダの取付高さを変更することなく、また、変速装置を使用しても、定尺長さの鋼管杭を使用可能とすることは可能であるが、杭打機の安定度や全装備重量などの制約があることから、単にリーダを長くすればよいというものではなく、地盤改良と鋼管埋設とを兼用する一部の杭打機のみの特殊なものとなり、コストアップの要因となったり、製作納期が長くなったりするなどの問題がある。
【0005】
そこで本発明は、地盤改良仕様の杭打機で鋼管杭を埋設したり、変速装置を使用して鋼管杭を埋設したりする際に一般的な定尺長さの鋼管杭を使用することを可能とする鋼管杭連結用キャップ及びこの鋼管杭連結用キャップを用いた鋼管杭の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の鋼管杭連結用キャップは、杭打機のリーダに沿って昇降可能に設けた回転駆動装置と鋼管杭とを連結するための鋼管杭連結用キャップであって、該鋼管杭連結用キャップは、前記鋼管杭を下方から軸線方向に挿入可能な内径を有する鋼管杭挿入筒と、該鋼管杭挿入筒の上端に設けられた回転駆動装置連結部と、前記鋼管杭挿入筒の内周面に設けられて前記鋼管杭の上部外周に突設した係合突起が鋼管杭挿入筒の軸線方向に通過可能な突起挿通溝と、該突起挿通溝の軸線方向上部及び軸線方向下部に該突起挿通溝の周方向に隣接して設けられて前記係合突起がそれぞれ係合可能な上部係合部及び下部係合部とを備えていることを特徴としている。さらに、本発明の鋼管杭連結用キャップは、前記回転駆動装置連結部を、変速装置を介して前記回転駆動装置に連結することもできる。
【0007】
また、本発明の鋼管杭の施工方法は、前記鋼管杭連結用キャップを使用し、複数の鋼管杭を連結して地中に埋設する鋼管杭の施工方法であって、前記鋼管杭連結用キャップの下方から鋼管杭挿入筒の内部に挿入した第1の鋼管杭の前記係合突起を前記下部係合部に係合させた状態で、回転駆動装置を下降させて第1の鋼管杭を地中に圧入した後、鋼管杭連結用キャップを軸線を中心にして回動させることにより第1の鋼管杭の係合突起と下部係合部との係合を解除するとともに第1の鋼管杭の係合突起を前記突起挿通溝内に位置させた状態で、第1の鋼管杭を圧入状態に保ったまま回転駆動装置を上昇させた状態で、鋼管杭連結用キャップの下方から第2の鋼管杭の上部外周に突設した係合突起を突起挿通溝内に挿入しながら第2の鋼管杭の上部を鋼管杭挿入筒の内部に挿入し、係合突起の位置が前記上部係合部に係合可能な位置になったときに、鋼管杭連結用キャップと第2の鋼管杭とを相対的に軸線を中心にして回動させることにより係合突起と上部係合部とを係合させ、該第2の鋼管杭と第1の鋼管杭とを連結した後、回転駆動装置で第2の鋼管杭を回転させながら回転駆動装置を下降させて第1の鋼管杭に連結した第2の鋼管杭を地中に圧入し、次いで、鋼管杭連結用キャップを軸線を中心にして回動させることにより係合突起と上部係合部との係合を解除するとともに係合突起を突起挿通溝内に位置させた状態で回転駆動装置を上昇させ、係合突起の位置が前記下部係合部に係合可能な位置になったときに、鋼管杭連結用キャップを軸線を中心にして回動させることにより係合突起と下部係合部とを係合させた後、回転駆動装置で第2の鋼管杭を回転させながら回転駆動装置を下降させて第2の鋼管杭を第1の鋼管杭に連結した状態で地中に圧入することを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の鋼管杭の施工方法は、前記第1の鋼管杭と前記第2の鋼管杭とを連結した状態で地中に圧入した後、前記第2の鋼管杭を第1の鋼管杭に連結して圧入する操作と同じ操作を繰り返して第3番目以降の鋼管杭を先に連結状態で埋設した鋼管杭に連結して地中に圧入することにより、複数本の鋼管杭を地中に埋設することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転駆動装置の出力軸と鋼管杭とを連結するための鋼管杭連結用キャップに上部係合部及び下部係合部を設けているので、上下の各係合部に所定の順序で鋼管杭の係合突起を係合させた状態で鋼管杭の圧入を行うことにより、地盤改良仕様の杭打機で鋼管杭を埋設する場合でも、回転駆動装置と鋼管杭との間に変速装置を介在させた場合でも、圧入後の鋼管杭の突出高さを低くすることができるので、リーダの取付高さを変更したり、通常より長い特殊なリーダを使用したりすることなく、一般的な定尺長さの鋼管杭を複数本連結して埋設することが可能となる。特に、本発明の鋼管杭連結用キャップは、上部に設けた回転駆動装置連結部を直接あるいは変速装置を介して回転駆動装置に連結するだけでよいため、作業量をほとんど増加させることなく、鋼管杭の圧入、埋設を効率よく行うことができる。
【0010】
したがって、地盤改良仕様の杭打機の回転駆動装置に本発明の鋼管杭連結用キャップを連結するだけで鋼管杭を埋設することができるので、地盤改良仕様の杭打機を鋼管杭埋設仕様に変更する必要がなく、鋼管杭連結用キャップを用意しておくだけで地盤改良作業と鋼管杭埋設作業とに対応することができ、杭打機の使用効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の鋼管杭連結用キャップを使用して地盤改良仕様の杭打機で鋼管杭の埋設作業を行う状態を示す杭打機の側面図である。
【図2】鋼管杭連結用キャップの一形態例を示す一部断面正面図である。
【図3】図2のIII-III断面図である。
【図4】地盤改良仕様の杭打機で地盤改良作業を行う状態を示す杭打機の側面図である。
【図5】本発明の鋼管杭連結用キャップを使用した本発明方法により鋼管杭を埋設する手順の一例を示す説明図である。
【図6】変速装置を使用して鋼管杭の埋設作業を行う状態を示す杭打機の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、図1乃至図4において、本形態例に示す杭打機11は、図4に示すように、主として地盤改良を行う仕様で製作されたものであって、下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13と、該上部旋回体13の前部にフロントブラケットを介して起伏可能に設けられたリーダ14と、該リーダ14を後方から支持するバックステー15と、前記リーダ14に昇降可能に設けられた回転駆動装置16と、該回転駆動装置16をリーダ14に沿って昇降させるチェーン&スプロケット駆動式の昇降装置17と、該駆動装置17の前面に設けられた振れ止め部材18とを備えている。リーダ14は、長手方向に沿って一対のガイドレール19を備えており、このガイドレール19にガイドギブ16aを介して前記回転駆動装置16が昇降可能に取り付けられている。
【0013】
回転駆動装置16は、前記ガイドギブ16aを有する取付部16bと、上部に油圧モータ16cを配置し、内部に減速機構を収容した本体部16dとを備えており、本体部16dの下方には、油圧モータ16cにより回転駆動される出力軸16eが突設され、該出力軸16eの下部には、連結用アタッチメント20が装着されている。
【0014】
前記連結用アタッチメント20は、下方が開口した断面六角形状の連結用凹部(図示せず)を有する連結筒20aと、該連結筒20aの上端部に設けられたフランジ部20bとを備えており、該フランジ部20bが前記出力軸16eの下部フランジに複数のボルトにて着脱可能に連結されている。この連結用アタッチメント20に鋼管杭連結用キャップ21を介して鋼管杭22を連結することによって鋼管杭埋設作業を行う状態となり(図1参照)、ロッド連結部材23を介して掘削ヘッド24a及び撹拌翼24bを備えた中空ロッド24を連結するとともに、回転駆動装置16の上部にスイベルジョイント25を介してグラウトホース(図示せず)を接続することによって地盤改良作業を行う状態となる。
【0015】
図2及び図3に示すように、鋼管杭連結用キャップ21は、前記鋼管杭22を下方から軸線方向に挿入可能な内径を有する鋼管杭挿入筒21aと、該鋼管杭挿入筒21aの上端に溶接により固設され、上方に突出して連結用アタッチメント20の連結用凹部内に挿入される六角柱状の回転駆動装置連結部21bと、鋼管杭挿入筒21aの内周面対向位置にそれぞれ設けられて前記鋼管杭22の上部外周の対向位置にそれぞれ突設した一対の係合突起22aが鋼管杭挿入筒21aの軸線方向に通過可能な突起挿通溝21cと、該突起挿通溝21cの軸線方向上部及び軸線方向下部に、該突起挿通溝21cの周方向に隣接して設けられて前記係合突起22aがそれぞれ係合可能な上部係合部21d及び下部係合部21eとを備えている。上部係合部21d及び下部係合部21eは、鋼管杭挿入筒21aの周壁を内外に貫通した状態で形成されており、鋼管杭挿入筒21aの下端部内周面には、下方に向けて拡開した円錐形のガイド面21fが設けられている。
【0016】
一方、ロッド連結部材23は、筒体23aの下部が中空ロッド24の上端に固着され、筒体23aの上部に、前記回転駆動装置連結部21bと同じ外形の中空の連結部(図示せず)を有するもので、この連結部を前記連結用アタッチメント20の連結用凹部内に挿入することにより、中空ロッド24が回転駆動装置16の出力軸16eに対して同一軸線上に装着された状態となる。
【0017】
また、前記振れ止め部材18は、駆動装置17の前面に設けられたブラケットに左右一対のアームを開閉可能に設けたものであって、両アームを閉じて先端係合部にピン18aを挿入することにより、鋼管杭22や中空ロッド24を回転可能かつ軸線方向に移動可能に保持した状態となる。
【0018】
地盤改良仕様での前記リーダ14は、前記回転駆動装置16をリーダ14に対する上昇限まで上昇させ、中空ロッド24の下端に設けた掘削ヘッド24aを地面から浮かせた状態で、掘削ヘッド24aの上方に位置する撹拌翼24bが、振れ止め部材18及び昇降装置17を含めたリーダ14に干渉しないように、鋼管杭埋設仕様の杭打機におけるリーダ(図6参照)より高い位置に配置されている。
【0019】
地盤改良仕様の杭打機11を使用して地盤改良を行う際には、図4に示すように、回転駆動装置16の出力軸16eに取り付けた連結用アタッチメント20に、中空ロッド24の上端に取り付けたロッド連結部材23を連結し、中空ロッド24を振れ止め部材18で保持するとともに、回転駆動装置16の上部にスイベルジョイント25を介してグラウトホースを接続した状態とする。この状態で、回転駆動装置16により中空ロッド24を回転させながら、昇降装置17により回転駆動装置16をリーダ14に沿って下降させ、スイベルジョイント25から中空ロッド24内に供給されて中空ロッド24の先端から流出するセメントミルクと掘削ヘッド24aで掘削した土砂とを撹拌翼24bで撹拌することにより、所定の地盤改良作業が行われる。
【0020】
一方、地盤改良仕様の杭打機11を使用して鋼管杭22の埋設作業を行う際には、連結用アタッチメント20からロッド連結部材23を抜き取って中空ロッド24を取り外し、連結用アタッチメント20に鋼管杭連結用キャップ21を連結する。このとき、ロッド連結部材23の連結部の外面形状と鋼管杭連結用キャップ21の回転駆動装置連結部21bの外面形状とを同じ形状に形成しておくことにより、連結用アタッチメント20を交換することなく、ロッド連結部材23と鋼管杭連結用キャップ21との交換を、回転駆動装置16をリーダ14の下端に下降させた状態で容易に行うことができる。また、スイベルジョイント25は、回転駆動装置16から取り外してもよい。さらに、鋼管杭22には、上部外周面に前記係合突起22aをあらかじめ溶着したものを使用する。
【0021】
まず、図1に示すように、昇降装置17によって前記回転駆動装置16を前記リーダ14の上端に上昇させた状態で、前記鋼管杭連結用キャップ21の下方から第1の鋼管杭22の上部外周に突設した前記係合突起22aを突起挿通溝21c内に挿入しながら第1の鋼管杭22の上部を鋼管杭挿入筒21aの内部に挿入する。第1の鋼管杭22を上昇させて係合突起22aが上部係合部21dに係合可能な位置になったときに、回転駆動装置16によって鋼管杭連結用キャップ21を僅かに正方向に回動させて係合突起22aを上部係合部21dに移動させ、係合突起22aと上部係合部21dとを係合状態とする。これにより、回転駆動装置16の出力軸16e、連結用アタッチメント20、鋼管杭連結用キャップ21及び鋼管杭22が回転軸線を一致させて連結された状態となる。
【0022】
係合突起22aと上部係合部21dとを係合させる際、上部係合部21dが鋼管杭挿入筒21aの周壁を内外に貫通してるので、係合突起22aの上昇位置や上部係合部21dとの係合状態を、鋼管杭連結用キャップ21の外部から目視で確認することができる。また、鋼管杭22を回動させることができれば、鋼管杭連結用キャップ21を回動させずに鋼管杭22を回動させて係合突起22aと上部係合部21dとを係合させるようにしてもよい。
【0023】
係合突起22aと上部係合部21dとの係合によって第1の鋼管杭22の上部を鋼管杭連結用キャップ21で保持するとともに、振れ止め部材18のアームを閉じてピン18aでアームを固定し、第1の鋼管杭22の下部を振れ止め部材18で保持した状態で、回転駆動装置16により第1の鋼管杭22を正方向に回転させながら、昇降装置17により回転駆動装置16をリーダ14に沿って下降させると、上部係合部21dの回転方向後方側の側面が係合突起22aの側面を回転方向に押動し、上部係合部21dの上面が係合突起22aの上面を下方に押動することにより、第1の鋼管杭22を回転させながら地中に圧入していく。振れ止め部材18は、下降してくる鋼管杭連結用キャップ21が当たる前にピン18aを抜いてアームを全開状態とする。
【0024】
図5(a)に示すように、回転駆動装置16がリーダ14の最下端(下降限)まで下降したときに回転駆動装置16及び昇降装置17を一旦停止させ、続いて回転駆動装置16を僅かに逆方向に回転させて係合突起22aと上部係合部21dとの係合を解除して係合突起22aを突起挿通溝21c内に位置させる。次に、第1の鋼管杭22を地中に圧入した状態に保ったまま昇降装置17により回転駆動装置16をリーダ14に沿って僅かに上昇させ、係合突起22aと下部係合部21eとが係合可能な位置まで鋼管杭連結用キャップ21を上昇させた後、回転駆動装置16によって鋼管杭連結用キャップ21を僅かに正方向に回動させて係合突起22aを下部係合部21eに係合させる。
【0025】
図5(b)に示すように、係合突起22aと下部係合部21eとを係合させた状態で、再び回転駆動装置16により第1の鋼管杭22を正方向に回転させながら、昇降装置17により回転駆動装置16をリーダ14の下端まで下降させ、第1の鋼管杭22を更に地中に圧入していく。これにより、図5(c)に示すように、第1の鋼管杭22は、上部係合部21dと下部係合部21eとの距離に応じた寸法だけ地中に圧入された状態となり、地面からの鋼管杭22の突出高さを、図5(a)に示す状態における突出高さより低くすることができる。
【0026】
第1の鋼管杭22を所定の位置まで圧入した後、回転駆動装置16を僅かに逆方向に回転させて係合突起22aと下部係合部21eとの係合を解除して係合突起22aを突起挿通溝21c内に位置させ、第1の鋼管杭22を地中に圧入した状態に保ったまま昇降装置17により回転駆動装置16をリーダ14の上端まで上昇させる。
【0027】
そして、図5(d)に示すように、鋼管杭連結用キャップ21の下方から第2の鋼管杭22Nの係合突起22aを突起挿通溝21c内に挿入しながら第2の鋼管杭22Nの上部を鋼管杭挿入筒21aの内部に挿入し、係合突起22aが上部係合部21dに係合可能な位置になったときに回転駆動装置16で鋼管杭連結用キャップ21を僅かに正方向に回動させ、係合突起22aを上部係合部21dに係合させる。次に、回転駆動装置16を僅かに下降させて第1の鋼管杭22の上端22bと第2の鋼管杭22Nの下端22cとを溶接するなどして連結した後、回転駆動装置16により第1の鋼管杭22と第2の鋼管杭22Nとを連結した状態の鋼管杭を正方向に回転させながら、昇降装置17により回転駆動装置16をリーダ14の最下端まで下降させる。
【0028】
これにより、第2の鋼管杭22Nは、図5(a)に示した第1の鋼管杭22と同じ状態になるので、前記同様に、係合突起22aの係合を上部係合部21dから下部係合部21eに変更して地中に更に圧入する操作を繰り返すことにより、第2の鋼管杭22Nの上部が地面から所定量突出した状態になる。したがって、図5(a)〜図5(d)に示す操作を3番目以降の鋼管杭について繰り返すことにより、複数本の鋼管杭を先に圧入した鋼管杭に連結した状態で地中のあらかじめ設定された深さまで圧入して埋設することができる。
【0029】
このように、地盤改良仕様の杭打機11における回転駆動装置16の出力軸16eに連結されている連結用アタッチメント20に、地盤改良を行う中空ロッド24に代えて鋼管杭連結用キャップ21を連結することにより、一般的な定尺長さの鋼管杭22を使用した鋼管杭埋設施工に対応することができる。
【0030】
図6は、鋼管埋設仕様の杭打機で回転駆動装置16と鋼管杭22との間に変速装置26を介在させ、地盤の状態に応じて鋼管杭22の回転速度を変更して鋼管杭22を圧入する作業手順の一部を示している。なお、図1乃至図5に示した前記形態例の杭打機と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0031】
回転駆動装置16の下方に配置される変速装置26は、後部側にガイドレール19を保持する一対のガイドギブ26aを備えており、取り付け状態で変速機本体26bの上方に位置する連結部26cに回転駆動装置16の出力軸16eが、取り付け状態で変速機本体26bの下方に位置する連結部26dに鋼管杭連結用キャップ21の回転駆動装置連結部21bが、それぞれ挿入されて連結される。これにより、鋼管杭連結用キャップ21が変速装置26を介して回転駆動装置16に連結した状態となり、昇降装置17によって回転駆動装置16と一体にリーダ14を昇降する。なお、変速装置26に対する回転駆動装置16及び鋼管杭連結用キャップ21の連結は、必要に応じて適宜な連結用アタッチメントを介して行うことができる。また、鋼管埋設仕様の杭打機では、中空ロッド24の掘削ヘッド24aや撹拌翼24bを避ける必要がないことから、駆動装置17の下部に振れ止め部材18を設け、回転駆動装置16を低い位置まで下降できるように形成している。
【0032】
このように変速装置26を使用した鋼管埋設仕様の杭打機においても、前述の地盤改良仕様の杭打機11で鋼管杭連結用キャップ21を使用したときの作業手順と同様の作業手順を繰り返すことにより、複数の鋼管杭22を連結して地中に埋設することができる。
【0033】
すなわち、前記図1から図5(a)を経て図5(c)に至る手順と同様の手順を行い、図6(a)に示すように、鋼管杭22の上部外周に突設した係合突起22aと鋼管杭連結用キャップ21の下部係合部21eとを係合させた状態で第1の鋼管杭22を地中に圧入する。これにより、変速装置26の下方に連結した鋼管杭連結用キャップ21の下部で第1の鋼管杭22を圧入することになるので、鋼管杭連結用キャップ21を用いずに変速装置26に鋼管杭22を連結して鋼管杭22を圧入したときの第1の鋼管杭22の突出高さより低くすることができる。
【0034】
次いで、係合突起22aと下部係合部21eとの係合を解除して回転駆動装置16をリーダ14の上端まで上昇させ、前記図5(d)と同様に、第2の鋼管杭22Nの係合突起22aを鋼管杭連結用キャップ21の上部係合部21dに係合させる。このとき、第1の鋼管杭22の突出高さが低くなっているので、図6(b)に示すように、第1の鋼管杭22の上端22bと第2の鋼管杭22Nの下端22cとが干渉することはなく、第1の鋼管杭22と第2の鋼管杭22Nとを上方に離れた位置にすることができる。以下、前記同様の手順を繰り返すことにより、3番目以降の鋼管杭を先に圧入した鋼管杭に連結して地中に圧入することができる。
【0035】
したがって、地盤改良仕様の杭打機11を使用した場合も、鋼管埋設仕様の杭打機に変速装置26を使用した場合も、鋼管杭連結用キャップ21に設けた上部係合部21d及び下部係合部21eを順番に利用して鋼管杭22を圧入することにより、鋼管杭連結用キャップ21を使用しないときに比べて鋼管杭22を深く圧入することができ、圧入後の鋼管杭の上部突出高さを低くできるので、一般的な定尺長さの鋼管杭を使用することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は、上述の各形態例に限るものではなく、回転駆動装置の昇降は任意の駆動手段を採用することができ、鋼管杭同士の連結は、溶接や螺合などで行うことができる。また、ベースマシンの構成も任意である。
【符号の説明】
【0037】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…リーダ、15…バックステー、16…回転駆動装置、16a…ガイドギブ、16b…取付部、16c…油圧モータ、16d…本体部、16e…出力軸、17…昇降装置、18…振れ止め部材、18a…ピン、19…ガイドレール、20…連結用アタッチメント、20a…連結筒、20b…フランジ部、21…鋼管杭連結用キャップ、21a…鋼管杭挿入筒、21b…回転駆動装置連結部、21c…突起挿通溝、21d…上部係合部、21e…下部係合部、21f…ガイド面、22…鋼管杭、22a…係合突起、23…ロッド連結部材、24…中空ロッド、24a…掘削ヘッド、24b…撹拌翼、25…スイベルジョイント、26…変速装置、26a…ガイドギブ、26b…変速機、26c,26d…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機のリーダに沿って昇降可能に設けた回転駆動装置と鋼管杭とを連結するための鋼管杭連結用キャップであって、該鋼管杭連結用キャップは、前記鋼管杭を下方から軸線方向に挿入可能な内径を有する鋼管杭挿入筒と、該鋼管杭挿入筒の上端に設けられた回転駆動装置連結部と、前記鋼管杭挿入筒の内周面に設けられて前記鋼管杭の上部外周に突設した係合突起が鋼管杭挿入筒の軸線方向に通過可能な突起挿通溝と、該突起挿通溝の軸線方向上部及び軸線方向下部に該突起挿通溝の周方向に隣接して設けられて前記係合突起がそれぞれ係合可能な上部係合部及び下部係合部とを備えていることを特徴とする鋼管杭連結用キャップ。
【請求項2】
前記回転駆動装置連結部は、変速装置を介して前記回転駆動装置に連結されることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭連結用キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鋼管杭連結用キャップを使用し、複数の鋼管杭を連結して地中に埋設する鋼管杭の施工方法であって、前記鋼管杭連結用キャップの下方から鋼管杭挿入筒の内部に挿入した第1の鋼管杭の前記係合突起を前記下部係合部に係合させた状態で、回転駆動装置を下降させて第1の鋼管杭を地中に圧入した後、鋼管杭連結用キャップを軸線を中心にして回動させることにより第1の鋼管杭の係合突起と下部係合部との係合を解除するとともに第1の鋼管杭の係合突起を前記突起挿通溝内に位置させた状態で、第1の鋼管杭を圧入状態に保ったまま回転駆動装置を上昇させた状態で、鋼管杭連結用キャップの下方から第2の鋼管杭の上部外周に突設した係合突起を突起挿通溝内に挿入しながら第2の鋼管杭の上部を鋼管杭挿入筒の内部に挿入し、係合突起の位置が前記上部係合部に係合可能な位置になったときに、鋼管杭連結用キャップと第2の鋼管杭とを相対的に軸線を中心にして回動させることにより係合突起と上部係合部とを係合させ、該第2の鋼管杭と第1の鋼管杭とを連結した後、回転駆動装置で第2の鋼管杭を回転させながら回転駆動装置を下降させて第1の鋼管杭に連結した第2の鋼管杭を地中に圧入し、次いで、鋼管杭連結用キャップを軸線を中心にして回動させることにより係合突起と上部係合部との係合を解除するとともに係合突起を突起挿通溝内に位置させた状態で回転駆動装置を上昇させ、係合突起の位置が前記下部係合部に係合可能な位置になったときに、鋼管杭連結用キャップを軸線を中心にして回動させることにより係合突起と下部係合部とを係合させた後、回転駆動装置で第2の鋼管杭を回転させながら回転駆動装置を下降させて第2の鋼管杭を第1の鋼管杭に連結した状態で地中に圧入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
前記第1の鋼管杭と前記第2の鋼管杭とを連結した状態で地中に圧入した後、前記第2の鋼管杭を第1の鋼管杭に連結して圧入する操作と同じ操作を繰り返して第3番目以降の鋼管杭を先に連結状態で埋設した鋼管杭に連結して地中に圧入して複数本の鋼管杭を地中に埋設することを特徴とする請求項3記載の鋼管杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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