鋼製高欄
【課題】施工の手間とコストを低減でき、補修の手間とコストが少なく、さらに、十分な強度が得られる鋼製高欄を提供する。
【解決手段】床版10の端部に延長方向に所定間隔をおいてアンカーボルトを介して固定されたベースプレート1と、ベースプレート1に溶接された支柱2と、支柱2の外側のフランジ21bにボルト48で端部が固定された外パネル4と、支柱2の内側のフランジ21aにボルト38で端部が固定された内パネル3とで鋼製高欄を形成する。床版10表面に施すハツリ面を、ベースプレート1の配置位置に対応して鋼製高欄の延長方向に所定間隔おきに施工する。外パネル4に予めボルト48を固定することにより、容易に外パネル4を支柱2に固定することができると共に、高架橋の下方にボルト48が落下する不都合を確実に防止できる。
【解決手段】床版10の端部に延長方向に所定間隔をおいてアンカーボルトを介して固定されたベースプレート1と、ベースプレート1に溶接された支柱2と、支柱2の外側のフランジ21bにボルト48で端部が固定された外パネル4と、支柱2の内側のフランジ21aにボルト38で端部が固定された内パネル3とで鋼製高欄を形成する。床版10表面に施すハツリ面を、ベースプレート1の配置位置に対応して鋼製高欄の延長方向に所定間隔おきに施工する。外パネル4に予めボルト48を固定することにより、容易に外パネル4を支柱2に固定することができると共に、高架橋の下方にボルト48が落下する不都合を確実に防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路の高架橋に用いられる鋼製高欄に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路の高架橋では、床版の両端部に高欄を設け、この高欄の頂部に照明柱や遮音壁等を固定している。従来の高欄は、多くが鉄筋コンクリート製であり、床版に鉄筋が定着されて床版と一体に形成されている。
【0003】
高欄が老朽化すると、剥離コンクリートの落下等の危険が生じる可能性があるため、高欄の取り替えが行われる。高欄の取り替え方法は、既存の高欄の基部をコンクリートカッター等で切断し、高欄を床版から分離して撤去した後、撤去位置に新たな高欄を構築する。新たな高欄として鉄筋コンクリート製の高欄を構築する場合、現場打ちコンクリートによる方法や、プレキャスト製品を用いる方法がある。
【0004】
しかしながら、現場打ちコンクリートの施工には型枠工程が必要であり、手間の増大と工期の長期化を招くという問題がある。また、プレキャスト製品は重量が比較的大きいため、製造工場から現場までの運搬や、現場における取り扱いに手間とコストがかかるという問題がある。さらに、現場打ち及びプレキャスト製品のいずれの鉄筋コンクリートも、重量が大きいので、既存の床版に十分に結合させるのが難しいという問題がある。
【0005】
これらの問題を解決するには、新たな高欄として、重量が比較的小さい鋼製高欄を設置するのが効果的である。従来、鋼製高欄としては、床版上に箱状のユニットを連ねて形成されるものがある(例えば、特開平09‐177029号公報参照)。この種の鋼製高欄は、床版上にアンカーボルトを介して固定されるベース部と、このベース部にボルトで固定されるフェース部とで構成される。ベース部は上端が開口した箱体からなり、箱体の底面にアンカーボルトの挿通孔が設けられている。フェース部は下端が開口した箱体からなり、ベース部の外側面に嵌まり合うように形成されている。
【0006】
上記鋼製高欄を用いた高欄の取り替え方法は、既存の高欄を撤去した後、床版の表面に、高欄の設置延長に亘ってハツリを行う。このハツリ面に、高欄の設置延長に亘って略等間隔にアンカーボルトを埋設する。このアンカーボルトに、底面の貫通孔を挿通させてベース部を設置し、ベース部の内側からナット締めを行ってベース部をアンカーボルトに固定する。この後、ベース部の上方からフェース部を嵌め合わせ、ベース部とフェース部とをボルトで固定して、箱状のユニットを構築する。このユニットを高欄の延長方向に順次構築し、ユニットを互いに連結して鋼製高欄が完成する。このように、新たな高欄として、鋼製の箱体からなる軽量な高欄を構築することにより、床版の過重負担を少なくし、しかも、少ない手間で容易に高欄の取り替えを行うようにしている。
【特許文献1】特開平09‐177029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の鋼製高欄は、床版上にベース部を固定するために、高欄の設置延長に亘って連続してハツ面を施工する必要がある。このハツリ面は、ベース部の設置高さに影響を与えないように、不陸を抑える必要がある。したがって、ハツリ面積が大きい上に高度な作業が必要となるので、施工の手間とコストが嵩むという問題がある。さらに、高欄の設置延長に形成したハツリ面に、略等間隔にアンカーボルトを埋設する必要があるので、アンカーボルトの埋設本数が多く、施工の手間とコストが嵩むという問題がある。
【0008】
また、上記従来の鋼製高欄の設置後、床版上を走行する車両が鋼製高欄に衝突した場合、フェース部は内外の両壁面が天面及び側面と共に一体に形成されているので、外壁面は破損してなくても、フェース部全体を交換する必要がある。したがって、補修に手間とコストがかかる問題がある。さらに、鋼製高欄のユニットは、ベース部とフェース部とが互いに固定された一体の箱体であるので、車両のフェース部への衝突に伴ってベース部も破損しやすい。ベース部が破損した場合、ベース部の底面に略等間隔に固定された複数のアンカーボルトについて、ベース部との取り外し又は取り付け作業や補修作業を行う必要があり、補修の手間とコストが更に増大するという問題がある。
【0009】
また、上記従来の鋼製高欄は、鋼板の箱体で形成されているので強度が比較的小さく、大型の照明柱や遮音壁等を設置するには強度不足になり易いという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、施工の手間とコストを低減でき、補修の手間とコストが少なく、さらに、十分な強度が得られる鋼製高欄を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の鋼製高欄は、床版の端部に延長方向に所定間隔をおいて配置され、アンカーボルトを介して上記床版に固定されるベースプレートと、上記ベースプレート上に固定された支柱と、隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記床版の幅方向中央を臨む側に固定される内パネルと、隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記内パネルが固定された側と反対側の面に固定される外パネルとを備え、上記外パネルは、この外パネルを上記支柱に固定するためのボルトが予め固定されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、鋼製高欄は、床版上に固定されるベースプレートと、このベースプレート上に固定された支柱と、この支柱間に掛け渡される内パネル及び外パネルで形成される。この鋼製高欄の設置工事においては、床版のベースプレートを配置する位置にハツリを行い、ハツリ面にアンカーボルトを埋設し、アンカーボルトにベースプレートを固定する。ハツリ面は、ベースプレート及び支柱の配置位置であって、床版の延長方向に所定間隔をおいた位置に形成すればよい。したがって、従来の鋼製高欄のように、ベース部を配置するために高欄の設置延長に連続してハツリ面を形成するよりも、ハツリ面の施工面積を大幅に縮小できる。また、アンカーボルトは、所定間隔おきに配置されるベースプレートを固定する本数であればよい。したがって、従来の鋼製高欄のように、高欄の設置延長に亘ってアンカーボルトを略等間隔に固定するよりも、アンカーボルトの埋設本数を削減できる。このように、ハツリ面の施工面積を縮小でき、しかも、アンカーボルトの埋設本数を削減できるので、施工の手間を効果的に削減でき、工期を短縮でき、また、施工費を削減できる。
【0013】
また、上記アンカーボルト及びベースプレートを介して床版に固定された支柱は、床版の延長方向に所定間隔をおいて配置されるので、床版上を走行する車両が鋼製高欄に衝突しても、アンカーボルトの補修が必要となる可能性が従来よりも低い。したがって、鋼製高欄の補修の手間とコストを従来よりも削減することができる。
【0014】
また、上記支柱を型鋼を用いて形成することにより、この支柱によって大型の照明柱や遮音壁等を支持することができる。
【0015】
また、上記ベースプレート及び支柱と、内パネルと、外パネルは、互いに分離できるので、箱体のベース部及びフェース部で構成された従来の鋼製高欄よりも搬入や積み下ろしを容易にでき、従来よりも小型の重機によって設置作業を行うことができる。
【0016】
また、上記外パネルは、この外パネルを上記支柱に固定するためのボルトが予め固定されているので、予め固定されたボルトに内パネル側からナットを螺合することにより、容易に外パネルを支柱に固定することができる。また、外パネルからのボルトの脱落を確実に防止でき、例えば鋼製高欄を高架橋の床版に取り付ける場合、高架橋の下方にボルトが落下する不都合を確実に防止できる。
【0017】
一実施形態の鋼製高欄は、上記外パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記内パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、上記内パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記外パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、上記外パネル及び内パネルのうちの一方の天面部の端縁に支持プレートが固定され、この支持プレート上に配置された弾性部材を介して、上記外パネル及び内パネルのうちの他方の天面部の端縁が支持されている。
【0018】
上記実施形態によれば、外パネルの壁面部の縁部と、内パネルの壁面部の縁部とが支柱に固定されることにより、中空の壁体が形成される。この壁体の天面は、内パネルの天面部と外パネルの天面部とで形成される。壁体の天面では、内外パネルの一方の天面部に固定された支持プレートにより、弾性部材を介して他方の天面部が支持されている。このように、内パネルと外パネルとが互いに直接固定されない状態で接続されるので、内パネルの壁面部に床版上の車両が衝突しても、破損を内パネルのみに止めて、外パネルの損傷を防止できる。したがって、内パネルを交換するのみによって補修を行うことができるので、従来の鋼製高欄のように箱体のフェース部を交換するよりも、補修の手間とコストを大幅に削減できる。
【0019】
また、内パネルの天面部と外パネルの天面部との間に、支持プレート上の弾性部材が介在されているので、この弾性部材によって内外パネルの天面部の間が密閉され、これにより、壁体内への雨水の浸入を防止して、鋼製高欄の劣化を防止できる。なお、壁体内への雨水の浸入を効果的に防止する点で、内パネルの天面部と外パネルの天面部との間に、コーキング剤を配置するのが好ましい。
【0020】
一実施形態の鋼製高欄は、順次隣り合う複数の支柱に係合されると共に、上記複数の支柱のうちの両端の支柱に接続され、上記複数の支柱の落下を防止する支柱落下防止部材を備える。
【0021】
上記実施形態によれば、鋼製高欄への車両の衝突等に起因して、所定の支柱が床版から離脱しても、この支柱が支柱落下防止部材を介して係合される支柱で支持されることにより、離脱した支柱の落下を防止できる。この支柱落下防止部材は、例えばワイヤー等のような線状部材と、線状部材の両端に連なる接続部材とで形成し、支柱に設けられた例えば貫通孔に上記線状部材を挿通させて複数の支柱に係合すると共に、複数の支柱のうちの両端の支柱に上記接続部材を接続するように構成することができる。なお、上記線状部材は、支柱の貫通孔に挿通させる以外に、例えば支柱に固定された金具に係合させてもよい。
【0022】
一実施形態の鋼製高欄は、上記支柱に係合されると共に、この支柱の両側の2つの外パネルに接続され、上記2つの外パネルの落下を防止する外パネル落下防止部材を備える。
【0023】
上記実施形態によれば、鋼製高欄への車両の衝突等に起因して、外パネルが支柱から離脱しても、この外パネルが外パネル落下防止部材を介して係合される支柱で支持されることにより、離脱した外パネルの落下を防止できる。この外パネル落下防止部材は、例えばワイヤー等のような線状部材と、線状部材の両端に連なる接続部材とで形成し、支柱に設けられた例えば貫通孔に上記線状部材を挿通させて上記支柱に係合すると共に、この支柱の両側の外パネルに上記接続部材を接続するように構成することができる。なお、上記線状部材は、支柱の貫通孔に挿通させる以外に、例えば支柱に固定された金具に係合させてもよい。
【0024】
参考例の高欄の取り替え方法は、既存の鉄筋コンクリート製高欄を鋼製高欄に取り替える高欄の取り替え方法であって、床版と一体の鉄筋コンクリート製高欄を、上記床版から切り離して撤去する工程と、上記床版上の鋼製高欄の設置位置に沿って、所定間隔おきにハツリ面を形成する工程と、上記ハツリ面にアンカーボルトを設置する工程と、上記アンカーボルトの突出端部に、支柱のベースプレートを連結する工程と、隣り合う上記支柱の間に外パネルを固定する工程と、隣り合う上記支柱の間に内パネルを固定する工程とを備えることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、床版上に形成するハツリ面は、ベースプレート及び支柱の配置位置であって、床版の延長方向に所定間隔をおいた位置に形成すればよいので、従来の鋼製高欄に取り替える場合よりも、ハツリ面の施工面積を大幅に縮小できる。また、アンカーボルトは、所定間隔おきに配置されるベースプレートを固定する本数であればよいので、従来の鋼製高欄に取り替える場合よりも、アンカーボルトの埋設本数を削減できる。このように、本発明の高欄の取り替え方法によれば、ハツリ面の施工面積を縮小し、しかも、少アンカーボルトの埋設本数を削減することにより、少ない施工の手間により、短い工期で、また、低廉な施工費で、高欄を取り替えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の鋼製高欄によれば、高欄を設置する床版上のハツリ面積を縮小でき、しかも、アンカーボルトの埋設本数を削減できるので、施工の手間を効果的に削減でき、工期を短縮でき、また、施工費を削減できる。また、床版上を走行する車両が衝突した場合、補修の手間とコストを削減できる。また、大型の照明柱や遮音壁を設置するための十分な強度が得られる。また、容易に外パネルを支柱に固定することができ、高架橋の下方にボルトが落下する不都合を確実に防止できる。また、参考例の高欄の取り替え方法によれば、少ない施工の手間により、短い工期で、また、低廉な施工費で、高欄を取り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の鋼製高欄を床版の端部に設置した様子を示す斜視図である。
【図2】鋼製高欄を支柱位置で床版の幅方向に切断した様子を示す横断面図である。
【図3】鋼製高欄を支柱位置で床版の延長方向に切断した様子を示す縦断面図である。
【図4】鋼製高欄の天面を示す図である。
【図5】支柱間に形成される壁体を示す横断面図である。
【図6】外パネル落下防止部材の近傍部分を示す平断面図である。
【図7】壁体の天面の近傍部分を示す横断面図である。
【図8】支柱を内壁面側から見た様子を示す正面図である。
【図9】支柱を外壁面側から見た様子を示す背面図である。
【図10】支柱を鋼製高欄の延長方向から見た左側面図である。
【図11】支柱を上方から見た様子を示す平面図である。
【図12】支柱を下方から見た様子を示す底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の鋼製高欄を床版の端部に設置した様子を示す斜視図である。図2は床版上の鋼製高欄を支柱位置で床版の幅方向に切断した様子を示す横断面図であり、図3は床版上の鋼製高欄を支柱位置で床版の延長方向に切断した様子を示す縦断面図であり、図4は鋼製高欄の天面を示す図であり、図5は支柱間に形成される壁体を示す横断面図である。図6は外パネル落下防止部材の近傍部分を示す平断面図であり、図7は壁体の天面の近傍部分を示す横断面図である。図8は支柱を内壁面側から見た様子を示す正面図であり、図9は支柱を外壁面側から見た様子を示す背面図であり、図10は支柱を鋼製高欄の延長方向から見た左側面図である。右側面図は、図10と左右対称の形状を有する。図11は支柱を上方から見た様子を示す平面図であり、図12は支柱を下方から見た様子を示す底面図である。
【0029】
この鋼製高欄は、図1及び2に示すように、床版10上にアンカーボルト11によって固定されたベースプレート1と、このベースプレート1上に溶接により固定された支柱2と、この支柱2に高欄の延長方向の両側にボルトで固定された内パネル3及び外パネル4とで大略構成されている。この鋼製高欄は、高速道路の高架橋に設置され、床版10の幅方向の両端部に、この床版10の縁に沿って延設されている。この鋼製高欄は、床版10に一体に形成されていた鉄筋コンクリート製の高欄が撤去された後、その撤去位置に新たに設置されたものである。床版10はPC(プレキャスト)梁15によって支持されており、また、床版10上には車両用のアスファルト舗装16が敷設されている。
【0030】
上記ベースプレート1は、鋼製の板状材料で形成されており、床版10内に埋設されたアンカーボルト11の上端部に、このアンカーボルト11に螺合するナット12,13で表裏両面から挟まれて固定されている。
【0031】
上記支柱2は、ベースプレート1上に溶接により下端が固定されたH型鋼(以下、H鋼という)21を有する。このH鋼21の上端には、鋼製の板状材料からなる天板22が溶接で固定されており、この天板22には、照明柱等を連結するための貫通孔221,221,・・・が設けられている。本実施形態の鋼製高欄は、強度が比較的高いH鋼21により、従来の箱体の鋼製高欄では支持が不可能であった大型の照明柱や遮音壁等を支持することができる。上記ベースプレート1上には、H鋼21の高欄延長方向における両側に、このベースプレート1に対して直角に延びる2つの五角形の保護プレート23,23が固定されている。各保護プレート23は、L型鋼によって形成された固定部材25でH鋼21の内側のフランジ21aに固定されている。この保護プレート23は、床版10幅方向における内側と外側の縁が、内パネル3と外パネル4の内側面に沿った形状を有している。さらに、上記ベースプレート1上に、H鋼21のフランジ21aの幅方向中央に位置する台形の補強部材24が固定されている。この補強部材24の床版10側の縁は、内パネル3の内側面に沿った形状に形成されている。上記保護プレート23,23によって、ベースプレート1と支柱2との溶接部が、車両の接触等で衝撃を直接受けることを防止している。また、上記補強部材24によって曲げ補強をしている。支柱のH鋼21のウェブ21cには、後述する落下防止部材8,9のワイヤー81,91が挿通される円形の貫通孔214と、照明用等の電力線や通信電線等が挿通される配線管27が内嵌された配線用貫通孔215と、支柱落下防止部材8の固定金具82が係止される止め孔216が設けられている。
【0032】
上記内パネル3は、略鉛直方向に延びる壁面部31と、この壁面部31の下端に連なり、下側が床版10の幅方向内側に向かって傾斜する傾斜面部32と、この傾斜面部32の下端に連なり、略鉛直方向に延びて床版10表面に達する裾部33を有する。この壁面部31と、傾斜面部32と、裾部33とで高欄1の内側壁面を形成している。内パネル3の壁面部31の上端には、この壁面部31に対して直角に屈曲して床版10の幅方向外側に延びる天面部35が連なっている。内パネル3の壁面部31の内側面には、L型鋼で形成され、高欄1の延長方向に延びると共に鉛直方向に互いに平行に配置された複数の補強部材36,36,・・・が固定されている。内パネル3の裾部33の外側面には、床版10上のアスファルト舗装16が接している。
【0033】
上記外パネル4は、略鉛直方向に延びる壁面部41と、この壁面部41の上端に直角に屈曲して連なり、床版の幅方向内側に延びる天面部42とを有する。外パネル4の壁面部41によって高欄1の外側壁面を形成している。外パネル4の壁面部41の内側面には、L型鋼で形成され、高欄1の延長方向に延びると共に鉛直方向に互いに平行に配置された複数の補強部材44,44,・・・が固定されている。外パネル4の壁面部41は、床版10の縁よりも幅方向外側に位置していると共に、下端縁が床版10の表面よりも下方に位置している。床版10の外側面の上端近傍にL型鋼18が固定されており、このL型鋼18により、床版10の側面と外パネル4の壁面部41の内側面との間の隙間を埋めている。
【0034】
上記内パネル3は、延長方向の両側の縁部が、ボルト38によってH鋼21の内側のフランジ21aの表面に固定されている。このボルト38は、H鋼21のフランジ21aに設けられたボルト孔211に挿通され、このフランジ21aの裏面に予め固定されたナットに螺合している。このように、フランジ21aの裏面にナットを予め固定することにより、内パネル3の取り付けの際に、高欄1の内壁面側からボルト38を容易に締結可能にしている。
【0035】
上記外パネル4は、延長方向の両側の縁部が、ボルト48によってH鋼21の外側のフランジ21bの表面に固定されている。このボルト48は、外パネル4に予め固定されており、H鋼21のフランジ21bに設けられた長孔状のボルト孔212に挿通され、このフランジ21bの裏面のナットに締結されている。このように、外パネル4にボルト48を予め固定することにより、外パネル4の取り付けの際に、ボルト48が外パネル4から離脱して落下する不都合を防止しつつ支柱2に設置でき、また、高欄1の内壁面側からナットを容易に締結可能にしている。
【0036】
上記内パネル3と外パネル4とが夫々支柱2に固定されることにより、中空の壁体を形成している。この壁体の天面は、図4及び5に示すように、内パネル3の天面部35と外パネル4の天面部42とで形成され、各パネル3,4の天面部35,42は、互いに直接固定されない状態で接続されている。すなわち、上記外パネル4の天面部42の端縁の内側面に、支持プレート6がボルト61で固定されている。この支持プレート6は、天面部42の端縁に沿って高欄1の延長方向に延びている。この支持プレート6の上側面に、弾性部材としてのゴム製シート62が貼り付けられており、このゴム製シート62の表面に、内パネル3の天面部35の端縁部の内側面が密着している。各天面部35,42の端縁の間は、コーキング剤で目止めされている。このように、内パネル3と外パネル4とが互いに直接固定されない状態で接続されているので、内パネル3の壁面部に車両が衝突しても、破損を内パネル3のみに止めて、外パネル4の損傷を防止できる。したがって、内パネル3を交換するのみによって補修を行うことができるので、従来の鋼製高欄のように箱体のフェース部を交換するよりも、補修の手間とコストを大幅に削減できる。また、内パネル3の天面部35の端縁の内側面がゴム製シート62に密着し、また、各天面部35,42の端縁の間にコーキング剤が配置されているので、雨水の壁体内への浸入を効果的に防止できる。
【0037】
この鋼製高欄には、車両の衝突等に起因する支柱2と外パネル4の落下を防止するために、支柱落下防止部材8及び外パネル落下防止部材9が設けられている。
【0038】
支柱落下防止部材8は、図3に一部を示すように、線状部材としてのワイヤー81と、このワイヤー81の両端に固定された接続部材としての円筒形状の固定金具82とで形成されている。この支柱落下防止部材8のワイヤー81が、互いに隣り合う複数の支柱2の貫通孔214に挿通されている。ワイヤー81の両端の固定金具82は、複数の支柱2によって互いに隔てられた2つの支柱2のH鋼21に接続されている。固定金具82が接続されるH鋼21には、ウェブ21cに止め孔216が設けられている。この止め孔216は、図10に示すように、上端に形成された大径部216aと、この大径部216aの下部に連なる小幅の長孔部216bとで形成されている。支柱落下防止部材8の取り付けの際、止め孔216の大径部216aに固定金具82を挿通させた後、ワイヤー81を長孔部216bの下端に移動させて、長孔部216bの縁部に固定金具82を係止させる。こうして、支柱落下防止部材8の固定金具82を支柱2に接続している。
【0039】
この支柱落下防止部材8により、支柱2が高架橋から落下する危険を効果的に防止できる。例えば、アスファルト舗装16上を走行する車両が鋼製高欄に衝突すること等により、支柱2が床版10から離脱しても、この離脱した支柱2がワイヤー81を介して隣り合う支柱2に支持される。これにより、離脱した支柱2が高架橋から落下する危険を防止できる。なお、落下防止部材8は、鋼製高欄の延長方向に互いに重複するように複数本設置するのが好ましい。例えば、1つの支柱落下防止部材8のワイヤー81を10本の支柱2の貫通孔214に挿通させる場合、両端の2本の支柱2に、隣接して配置する支柱落下防止部材8のワイヤー81を重複して挿通させる。これにより、固定金具82が接続された支柱2が脱落した場合、重複した2本のワイヤー81で脱落した支柱2を両側から支持できるので、ワイヤー81に作用する負担を緩和できる。
【0040】
外パネル落下防止部材9は、図6に示すように、線状部材としてのワイヤー91と、このワイヤー91の両端に固定された接続部材としての円筒形状の固定金具92とで形成されている。H鋼21の両側の外パネル4には、最上段の補強部材44の端部に止め孔441が設けられている。この止め孔441は、L型鋼からなる補強部材44の水平部に設けられており、大径部441aと、この大径部441aに連なって支柱2に近づく方向に延びる小幅の長孔部441bとで形成されている。外パネル落下防止部材9の取り付けの際、止め孔441の大径部441aに固定金具92を挿通させた後、ワイヤー91を長孔部441bの支柱2側の端に移動させて、長孔部441bの縁部に固定金具92を係止させる。こうして、外パネル落下防止部材9の固定金具92を外パネル4に接続している。
【0041】
この外パネル落下防止部材9により、外パネル4が高架橋から落下する危険を効果的に防止できる。例えば、アスファルト舗装16上を走行する車両が鋼製高欄に衝突すること等により、外パネル4が支柱2から離脱しても、この離脱した外パネル4がワイヤー91を介して支柱2に支持される。これにより、離脱した外パネル4が高架橋から落下する危険を防止できる。
【0042】
上記支柱落下防止部材8と外パネル落下防止部材9は、内パネル3と外パネル4で形成される壁体の内部に配置しているので、ワイヤー81,91や固定金具82,92が外部に露出して美観を損なうこと無く、支柱2と外パネル4の落下防止効果を発揮することができる。
【0043】
次に、この鋼製高欄を、鉄筋コンクリート製の高欄と取り替える方法について説明する。
【0044】
まず、床版10と一体に構築された鉄筋コンクリート製高欄を、延長方向に所定間隔おきに垂直に切断して、所定長さに分割する。次いで、分割された鉄筋コンクリート製高欄の基部を水平に切断して床版10から分離する。床版10から分離された高欄片を、重機で吊り下げて撤去し、トラックで搬出する。
【0045】
次に、床版10表面の支柱2を設置する部分と、床版10の側面とにブレーカ等でハツリを行う。ハツリ面に露出した鉄筋は、ガス切断機等で切断して撤去する。続いて、床版10表面のハツリ面に、ドリルによってアンカー設置孔を形成し、アンカー設置孔内にアンカーボルト11を挿入して接着剤によって固定する。アンカーボルト11が床版10に定着した後、高さ調整用のナット12をアンカーボルト11に螺合し、このナット12を所定の高さに設定する。この後、重機を用いてベースプレート1及び支柱2を設置する。このとき、ベースプレート1の長孔19にアンカーボルト11を挿通させて、ナット12によりベースプレート1を支持する。ベースプレート1の長孔19から突出するアンカーボルト11にナット13を螺着し、締結することにより、ベースプレート1をアンカーボルト11に固定する。アンカーボルト11に固定されたベースプレート1の底面側には、ハツリ面との間に空間が存在するので、ベースプレート1と床版10側面との間にL型鋼18を固定した後、上記空間を無収縮モルタルで埋める。
【0046】
こうして床版10の端部に、延長方向に所定間隔おきに支柱2を立設した後、この支柱2の間に外パネル4を固定する。詳しくは、外パネル4の壁面部41の縁部に予め固定されたボルト48が支柱2のH鋼21のフランジ21bのボルト孔212に挿通するように、外パネル4を支柱2に設置する。この後、フランジ21bの裏面に突出したボルト48の軸に、高欄の内壁面側からナットを螺合させて、外パネル4を支柱2に固定する。引き続いて、隣り合う複数の支柱2の貫通穴214に支柱落下防止部材8のワイヤー81を挿通させて、このワイヤー81の両端の固定金具82を所定の支柱2に夫々接続する。また、各支柱2の貫通孔214に外パネル落下防止部材9のワイヤー91を挿通させて、このワイヤー91の両端の固定金具92を支柱2の両側の外パネル4に夫々接続する。また、照明用等の電力線や通信電線を、各支柱2の配線管27内を通して配線する。外パネル4の天面部42の端縁に支持プレート6をボルト61で固定した後、支柱2の間に内パネル3を固定する。詳しくは、内パネル3の壁面部31の縁部を、支柱2のH鋼21のフランジ21aに位置合わせすると共に、内パネル3の天面部35の端縁を支持プレート6表面のゴム製シート62上に配置する。この後、内パネル3の縁部のボルト孔とH鋼21のフランジ21aのボルト孔211にボルト38を挿通し、このボルト38をフランジ21aの裏面に予め固定されたナットに螺合させて、内パネル3を支柱2に固定する。最後に、内パネル3の天面部35の端縁と外パネル4の天面部42の端縁との間に、コーキング剤を塗布して目止めを行う。
【0047】
このようにして鉄筋コンクリート製高欄と取り替えられた鋼製高欄は、鉄筋コンクリート製高欄よりも重量が大幅に小さいので、短いアンカーボルト11によって十分な強度を発揮して床版10と結合することができる。
【0048】
また、床版10表面のハツリ作業において、床版10の延長方向に所定間隔をおいたベースプレート1の配置位置にハツリ面を形成すればよいので、従来の鋼製高欄のように、ベース部を配置するために高欄の設置延長に連続してハツリ面を形成するよりも、ハツリ面の施工面積を大幅に縮小できる。また、アンカーボルト11は、所定間隔おきに配置されるベースプレート1を固定する本数であればよい。したがって、従来の鋼製高欄のように、高欄の設置延長に亘ってアンカーボルトを略等間隔に固定するよりも、アンカーボルト11の埋設本数を削減できる。このように、ハツリ面の施工面積を縮小でき、しかも、アンカーボルト11の埋設本数を削減できるので、少ない手間により、短い工期で、また、低廉な施工費で、鉄筋コンクリート製高欄を鋼製高欄1に取り替えることができる。
【0049】
また、ベースプレート1及び支柱2と、内パネル3と、外パネル4は、互いに分離した状態で搬入できるので、比較的大型のベース部及びフェース部で構成された従来の鋼製高欄よりも、搬入や積み下ろし作業を容易に行うことができる。したがって、従来よりも小型の重機を用いて、簡単かつ安価に鋼製高欄の設置作業を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、落下防止部材8,9のワイヤー81,91は、支柱2の貫通孔214に挿通させる以外に、例えば、支柱2に固定した環状の金具等に挿通させてもよい。また、本発明の鋼製高欄は、高速道路に限らず、一般道に用いることもできる。また、本発明の鋼製高欄は、既存の高架橋の鉄筋コンクリート製高欄に対する取り替えに用いるのみでなく、新設の高架橋に用いることもできる。また、本発明の鋼製高欄は、コンクリート床版に限られず、鋼製床版に設置することもできる。また、本発明の鋼製高欄は、高架橋に限られず、河川や海峡等の橋梁に用いることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 ベースプレート
2 支柱
3 内パネル
4 外パネル
10 床版
16 アスファルト舗装
31 内パネルの壁面部
35 内パネルの天面部
41 外パネルの壁面部
42 外パネルの天面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路の高架橋に用いられる鋼製高欄に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路の高架橋では、床版の両端部に高欄を設け、この高欄の頂部に照明柱や遮音壁等を固定している。従来の高欄は、多くが鉄筋コンクリート製であり、床版に鉄筋が定着されて床版と一体に形成されている。
【0003】
高欄が老朽化すると、剥離コンクリートの落下等の危険が生じる可能性があるため、高欄の取り替えが行われる。高欄の取り替え方法は、既存の高欄の基部をコンクリートカッター等で切断し、高欄を床版から分離して撤去した後、撤去位置に新たな高欄を構築する。新たな高欄として鉄筋コンクリート製の高欄を構築する場合、現場打ちコンクリートによる方法や、プレキャスト製品を用いる方法がある。
【0004】
しかしながら、現場打ちコンクリートの施工には型枠工程が必要であり、手間の増大と工期の長期化を招くという問題がある。また、プレキャスト製品は重量が比較的大きいため、製造工場から現場までの運搬や、現場における取り扱いに手間とコストがかかるという問題がある。さらに、現場打ち及びプレキャスト製品のいずれの鉄筋コンクリートも、重量が大きいので、既存の床版に十分に結合させるのが難しいという問題がある。
【0005】
これらの問題を解決するには、新たな高欄として、重量が比較的小さい鋼製高欄を設置するのが効果的である。従来、鋼製高欄としては、床版上に箱状のユニットを連ねて形成されるものがある(例えば、特開平09‐177029号公報参照)。この種の鋼製高欄は、床版上にアンカーボルトを介して固定されるベース部と、このベース部にボルトで固定されるフェース部とで構成される。ベース部は上端が開口した箱体からなり、箱体の底面にアンカーボルトの挿通孔が設けられている。フェース部は下端が開口した箱体からなり、ベース部の外側面に嵌まり合うように形成されている。
【0006】
上記鋼製高欄を用いた高欄の取り替え方法は、既存の高欄を撤去した後、床版の表面に、高欄の設置延長に亘ってハツリを行う。このハツリ面に、高欄の設置延長に亘って略等間隔にアンカーボルトを埋設する。このアンカーボルトに、底面の貫通孔を挿通させてベース部を設置し、ベース部の内側からナット締めを行ってベース部をアンカーボルトに固定する。この後、ベース部の上方からフェース部を嵌め合わせ、ベース部とフェース部とをボルトで固定して、箱状のユニットを構築する。このユニットを高欄の延長方向に順次構築し、ユニットを互いに連結して鋼製高欄が完成する。このように、新たな高欄として、鋼製の箱体からなる軽量な高欄を構築することにより、床版の過重負担を少なくし、しかも、少ない手間で容易に高欄の取り替えを行うようにしている。
【特許文献1】特開平09‐177029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の鋼製高欄は、床版上にベース部を固定するために、高欄の設置延長に亘って連続してハツ面を施工する必要がある。このハツリ面は、ベース部の設置高さに影響を与えないように、不陸を抑える必要がある。したがって、ハツリ面積が大きい上に高度な作業が必要となるので、施工の手間とコストが嵩むという問題がある。さらに、高欄の設置延長に形成したハツリ面に、略等間隔にアンカーボルトを埋設する必要があるので、アンカーボルトの埋設本数が多く、施工の手間とコストが嵩むという問題がある。
【0008】
また、上記従来の鋼製高欄の設置後、床版上を走行する車両が鋼製高欄に衝突した場合、フェース部は内外の両壁面が天面及び側面と共に一体に形成されているので、外壁面は破損してなくても、フェース部全体を交換する必要がある。したがって、補修に手間とコストがかかる問題がある。さらに、鋼製高欄のユニットは、ベース部とフェース部とが互いに固定された一体の箱体であるので、車両のフェース部への衝突に伴ってベース部も破損しやすい。ベース部が破損した場合、ベース部の底面に略等間隔に固定された複数のアンカーボルトについて、ベース部との取り外し又は取り付け作業や補修作業を行う必要があり、補修の手間とコストが更に増大するという問題がある。
【0009】
また、上記従来の鋼製高欄は、鋼板の箱体で形成されているので強度が比較的小さく、大型の照明柱や遮音壁等を設置するには強度不足になり易いという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、施工の手間とコストを低減でき、補修の手間とコストが少なく、さらに、十分な強度が得られる鋼製高欄を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の鋼製高欄は、床版の端部に延長方向に所定間隔をおいて配置され、アンカーボルトを介して上記床版に固定されるベースプレートと、上記ベースプレート上に固定された支柱と、隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記床版の幅方向中央を臨む側に固定される内パネルと、隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記内パネルが固定された側と反対側の面に固定される外パネルとを備え、上記外パネルは、この外パネルを上記支柱に固定するためのボルトが予め固定されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、鋼製高欄は、床版上に固定されるベースプレートと、このベースプレート上に固定された支柱と、この支柱間に掛け渡される内パネル及び外パネルで形成される。この鋼製高欄の設置工事においては、床版のベースプレートを配置する位置にハツリを行い、ハツリ面にアンカーボルトを埋設し、アンカーボルトにベースプレートを固定する。ハツリ面は、ベースプレート及び支柱の配置位置であって、床版の延長方向に所定間隔をおいた位置に形成すればよい。したがって、従来の鋼製高欄のように、ベース部を配置するために高欄の設置延長に連続してハツリ面を形成するよりも、ハツリ面の施工面積を大幅に縮小できる。また、アンカーボルトは、所定間隔おきに配置されるベースプレートを固定する本数であればよい。したがって、従来の鋼製高欄のように、高欄の設置延長に亘ってアンカーボルトを略等間隔に固定するよりも、アンカーボルトの埋設本数を削減できる。このように、ハツリ面の施工面積を縮小でき、しかも、アンカーボルトの埋設本数を削減できるので、施工の手間を効果的に削減でき、工期を短縮でき、また、施工費を削減できる。
【0013】
また、上記アンカーボルト及びベースプレートを介して床版に固定された支柱は、床版の延長方向に所定間隔をおいて配置されるので、床版上を走行する車両が鋼製高欄に衝突しても、アンカーボルトの補修が必要となる可能性が従来よりも低い。したがって、鋼製高欄の補修の手間とコストを従来よりも削減することができる。
【0014】
また、上記支柱を型鋼を用いて形成することにより、この支柱によって大型の照明柱や遮音壁等を支持することができる。
【0015】
また、上記ベースプレート及び支柱と、内パネルと、外パネルは、互いに分離できるので、箱体のベース部及びフェース部で構成された従来の鋼製高欄よりも搬入や積み下ろしを容易にでき、従来よりも小型の重機によって設置作業を行うことができる。
【0016】
また、上記外パネルは、この外パネルを上記支柱に固定するためのボルトが予め固定されているので、予め固定されたボルトに内パネル側からナットを螺合することにより、容易に外パネルを支柱に固定することができる。また、外パネルからのボルトの脱落を確実に防止でき、例えば鋼製高欄を高架橋の床版に取り付ける場合、高架橋の下方にボルトが落下する不都合を確実に防止できる。
【0017】
一実施形態の鋼製高欄は、上記外パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記内パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、上記内パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記外パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、上記外パネル及び内パネルのうちの一方の天面部の端縁に支持プレートが固定され、この支持プレート上に配置された弾性部材を介して、上記外パネル及び内パネルのうちの他方の天面部の端縁が支持されている。
【0018】
上記実施形態によれば、外パネルの壁面部の縁部と、内パネルの壁面部の縁部とが支柱に固定されることにより、中空の壁体が形成される。この壁体の天面は、内パネルの天面部と外パネルの天面部とで形成される。壁体の天面では、内外パネルの一方の天面部に固定された支持プレートにより、弾性部材を介して他方の天面部が支持されている。このように、内パネルと外パネルとが互いに直接固定されない状態で接続されるので、内パネルの壁面部に床版上の車両が衝突しても、破損を内パネルのみに止めて、外パネルの損傷を防止できる。したがって、内パネルを交換するのみによって補修を行うことができるので、従来の鋼製高欄のように箱体のフェース部を交換するよりも、補修の手間とコストを大幅に削減できる。
【0019】
また、内パネルの天面部と外パネルの天面部との間に、支持プレート上の弾性部材が介在されているので、この弾性部材によって内外パネルの天面部の間が密閉され、これにより、壁体内への雨水の浸入を防止して、鋼製高欄の劣化を防止できる。なお、壁体内への雨水の浸入を効果的に防止する点で、内パネルの天面部と外パネルの天面部との間に、コーキング剤を配置するのが好ましい。
【0020】
一実施形態の鋼製高欄は、順次隣り合う複数の支柱に係合されると共に、上記複数の支柱のうちの両端の支柱に接続され、上記複数の支柱の落下を防止する支柱落下防止部材を備える。
【0021】
上記実施形態によれば、鋼製高欄への車両の衝突等に起因して、所定の支柱が床版から離脱しても、この支柱が支柱落下防止部材を介して係合される支柱で支持されることにより、離脱した支柱の落下を防止できる。この支柱落下防止部材は、例えばワイヤー等のような線状部材と、線状部材の両端に連なる接続部材とで形成し、支柱に設けられた例えば貫通孔に上記線状部材を挿通させて複数の支柱に係合すると共に、複数の支柱のうちの両端の支柱に上記接続部材を接続するように構成することができる。なお、上記線状部材は、支柱の貫通孔に挿通させる以外に、例えば支柱に固定された金具に係合させてもよい。
【0022】
一実施形態の鋼製高欄は、上記支柱に係合されると共に、この支柱の両側の2つの外パネルに接続され、上記2つの外パネルの落下を防止する外パネル落下防止部材を備える。
【0023】
上記実施形態によれば、鋼製高欄への車両の衝突等に起因して、外パネルが支柱から離脱しても、この外パネルが外パネル落下防止部材を介して係合される支柱で支持されることにより、離脱した外パネルの落下を防止できる。この外パネル落下防止部材は、例えばワイヤー等のような線状部材と、線状部材の両端に連なる接続部材とで形成し、支柱に設けられた例えば貫通孔に上記線状部材を挿通させて上記支柱に係合すると共に、この支柱の両側の外パネルに上記接続部材を接続するように構成することができる。なお、上記線状部材は、支柱の貫通孔に挿通させる以外に、例えば支柱に固定された金具に係合させてもよい。
【0024】
参考例の高欄の取り替え方法は、既存の鉄筋コンクリート製高欄を鋼製高欄に取り替える高欄の取り替え方法であって、床版と一体の鉄筋コンクリート製高欄を、上記床版から切り離して撤去する工程と、上記床版上の鋼製高欄の設置位置に沿って、所定間隔おきにハツリ面を形成する工程と、上記ハツリ面にアンカーボルトを設置する工程と、上記アンカーボルトの突出端部に、支柱のベースプレートを連結する工程と、隣り合う上記支柱の間に外パネルを固定する工程と、隣り合う上記支柱の間に内パネルを固定する工程とを備えることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、床版上に形成するハツリ面は、ベースプレート及び支柱の配置位置であって、床版の延長方向に所定間隔をおいた位置に形成すればよいので、従来の鋼製高欄に取り替える場合よりも、ハツリ面の施工面積を大幅に縮小できる。また、アンカーボルトは、所定間隔おきに配置されるベースプレートを固定する本数であればよいので、従来の鋼製高欄に取り替える場合よりも、アンカーボルトの埋設本数を削減できる。このように、本発明の高欄の取り替え方法によれば、ハツリ面の施工面積を縮小し、しかも、少アンカーボルトの埋設本数を削減することにより、少ない施工の手間により、短い工期で、また、低廉な施工費で、高欄を取り替えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の鋼製高欄によれば、高欄を設置する床版上のハツリ面積を縮小でき、しかも、アンカーボルトの埋設本数を削減できるので、施工の手間を効果的に削減でき、工期を短縮でき、また、施工費を削減できる。また、床版上を走行する車両が衝突した場合、補修の手間とコストを削減できる。また、大型の照明柱や遮音壁を設置するための十分な強度が得られる。また、容易に外パネルを支柱に固定することができ、高架橋の下方にボルトが落下する不都合を確実に防止できる。また、参考例の高欄の取り替え方法によれば、少ない施工の手間により、短い工期で、また、低廉な施工費で、高欄を取り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の鋼製高欄を床版の端部に設置した様子を示す斜視図である。
【図2】鋼製高欄を支柱位置で床版の幅方向に切断した様子を示す横断面図である。
【図3】鋼製高欄を支柱位置で床版の延長方向に切断した様子を示す縦断面図である。
【図4】鋼製高欄の天面を示す図である。
【図5】支柱間に形成される壁体を示す横断面図である。
【図6】外パネル落下防止部材の近傍部分を示す平断面図である。
【図7】壁体の天面の近傍部分を示す横断面図である。
【図8】支柱を内壁面側から見た様子を示す正面図である。
【図9】支柱を外壁面側から見た様子を示す背面図である。
【図10】支柱を鋼製高欄の延長方向から見た左側面図である。
【図11】支柱を上方から見た様子を示す平面図である。
【図12】支柱を下方から見た様子を示す底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の鋼製高欄を床版の端部に設置した様子を示す斜視図である。図2は床版上の鋼製高欄を支柱位置で床版の幅方向に切断した様子を示す横断面図であり、図3は床版上の鋼製高欄を支柱位置で床版の延長方向に切断した様子を示す縦断面図であり、図4は鋼製高欄の天面を示す図であり、図5は支柱間に形成される壁体を示す横断面図である。図6は外パネル落下防止部材の近傍部分を示す平断面図であり、図7は壁体の天面の近傍部分を示す横断面図である。図8は支柱を内壁面側から見た様子を示す正面図であり、図9は支柱を外壁面側から見た様子を示す背面図であり、図10は支柱を鋼製高欄の延長方向から見た左側面図である。右側面図は、図10と左右対称の形状を有する。図11は支柱を上方から見た様子を示す平面図であり、図12は支柱を下方から見た様子を示す底面図である。
【0029】
この鋼製高欄は、図1及び2に示すように、床版10上にアンカーボルト11によって固定されたベースプレート1と、このベースプレート1上に溶接により固定された支柱2と、この支柱2に高欄の延長方向の両側にボルトで固定された内パネル3及び外パネル4とで大略構成されている。この鋼製高欄は、高速道路の高架橋に設置され、床版10の幅方向の両端部に、この床版10の縁に沿って延設されている。この鋼製高欄は、床版10に一体に形成されていた鉄筋コンクリート製の高欄が撤去された後、その撤去位置に新たに設置されたものである。床版10はPC(プレキャスト)梁15によって支持されており、また、床版10上には車両用のアスファルト舗装16が敷設されている。
【0030】
上記ベースプレート1は、鋼製の板状材料で形成されており、床版10内に埋設されたアンカーボルト11の上端部に、このアンカーボルト11に螺合するナット12,13で表裏両面から挟まれて固定されている。
【0031】
上記支柱2は、ベースプレート1上に溶接により下端が固定されたH型鋼(以下、H鋼という)21を有する。このH鋼21の上端には、鋼製の板状材料からなる天板22が溶接で固定されており、この天板22には、照明柱等を連結するための貫通孔221,221,・・・が設けられている。本実施形態の鋼製高欄は、強度が比較的高いH鋼21により、従来の箱体の鋼製高欄では支持が不可能であった大型の照明柱や遮音壁等を支持することができる。上記ベースプレート1上には、H鋼21の高欄延長方向における両側に、このベースプレート1に対して直角に延びる2つの五角形の保護プレート23,23が固定されている。各保護プレート23は、L型鋼によって形成された固定部材25でH鋼21の内側のフランジ21aに固定されている。この保護プレート23は、床版10幅方向における内側と外側の縁が、内パネル3と外パネル4の内側面に沿った形状を有している。さらに、上記ベースプレート1上に、H鋼21のフランジ21aの幅方向中央に位置する台形の補強部材24が固定されている。この補強部材24の床版10側の縁は、内パネル3の内側面に沿った形状に形成されている。上記保護プレート23,23によって、ベースプレート1と支柱2との溶接部が、車両の接触等で衝撃を直接受けることを防止している。また、上記補強部材24によって曲げ補強をしている。支柱のH鋼21のウェブ21cには、後述する落下防止部材8,9のワイヤー81,91が挿通される円形の貫通孔214と、照明用等の電力線や通信電線等が挿通される配線管27が内嵌された配線用貫通孔215と、支柱落下防止部材8の固定金具82が係止される止め孔216が設けられている。
【0032】
上記内パネル3は、略鉛直方向に延びる壁面部31と、この壁面部31の下端に連なり、下側が床版10の幅方向内側に向かって傾斜する傾斜面部32と、この傾斜面部32の下端に連なり、略鉛直方向に延びて床版10表面に達する裾部33を有する。この壁面部31と、傾斜面部32と、裾部33とで高欄1の内側壁面を形成している。内パネル3の壁面部31の上端には、この壁面部31に対して直角に屈曲して床版10の幅方向外側に延びる天面部35が連なっている。内パネル3の壁面部31の内側面には、L型鋼で形成され、高欄1の延長方向に延びると共に鉛直方向に互いに平行に配置された複数の補強部材36,36,・・・が固定されている。内パネル3の裾部33の外側面には、床版10上のアスファルト舗装16が接している。
【0033】
上記外パネル4は、略鉛直方向に延びる壁面部41と、この壁面部41の上端に直角に屈曲して連なり、床版の幅方向内側に延びる天面部42とを有する。外パネル4の壁面部41によって高欄1の外側壁面を形成している。外パネル4の壁面部41の内側面には、L型鋼で形成され、高欄1の延長方向に延びると共に鉛直方向に互いに平行に配置された複数の補強部材44,44,・・・が固定されている。外パネル4の壁面部41は、床版10の縁よりも幅方向外側に位置していると共に、下端縁が床版10の表面よりも下方に位置している。床版10の外側面の上端近傍にL型鋼18が固定されており、このL型鋼18により、床版10の側面と外パネル4の壁面部41の内側面との間の隙間を埋めている。
【0034】
上記内パネル3は、延長方向の両側の縁部が、ボルト38によってH鋼21の内側のフランジ21aの表面に固定されている。このボルト38は、H鋼21のフランジ21aに設けられたボルト孔211に挿通され、このフランジ21aの裏面に予め固定されたナットに螺合している。このように、フランジ21aの裏面にナットを予め固定することにより、内パネル3の取り付けの際に、高欄1の内壁面側からボルト38を容易に締結可能にしている。
【0035】
上記外パネル4は、延長方向の両側の縁部が、ボルト48によってH鋼21の外側のフランジ21bの表面に固定されている。このボルト48は、外パネル4に予め固定されており、H鋼21のフランジ21bに設けられた長孔状のボルト孔212に挿通され、このフランジ21bの裏面のナットに締結されている。このように、外パネル4にボルト48を予め固定することにより、外パネル4の取り付けの際に、ボルト48が外パネル4から離脱して落下する不都合を防止しつつ支柱2に設置でき、また、高欄1の内壁面側からナットを容易に締結可能にしている。
【0036】
上記内パネル3と外パネル4とが夫々支柱2に固定されることにより、中空の壁体を形成している。この壁体の天面は、図4及び5に示すように、内パネル3の天面部35と外パネル4の天面部42とで形成され、各パネル3,4の天面部35,42は、互いに直接固定されない状態で接続されている。すなわち、上記外パネル4の天面部42の端縁の内側面に、支持プレート6がボルト61で固定されている。この支持プレート6は、天面部42の端縁に沿って高欄1の延長方向に延びている。この支持プレート6の上側面に、弾性部材としてのゴム製シート62が貼り付けられており、このゴム製シート62の表面に、内パネル3の天面部35の端縁部の内側面が密着している。各天面部35,42の端縁の間は、コーキング剤で目止めされている。このように、内パネル3と外パネル4とが互いに直接固定されない状態で接続されているので、内パネル3の壁面部に車両が衝突しても、破損を内パネル3のみに止めて、外パネル4の損傷を防止できる。したがって、内パネル3を交換するのみによって補修を行うことができるので、従来の鋼製高欄のように箱体のフェース部を交換するよりも、補修の手間とコストを大幅に削減できる。また、内パネル3の天面部35の端縁の内側面がゴム製シート62に密着し、また、各天面部35,42の端縁の間にコーキング剤が配置されているので、雨水の壁体内への浸入を効果的に防止できる。
【0037】
この鋼製高欄には、車両の衝突等に起因する支柱2と外パネル4の落下を防止するために、支柱落下防止部材8及び外パネル落下防止部材9が設けられている。
【0038】
支柱落下防止部材8は、図3に一部を示すように、線状部材としてのワイヤー81と、このワイヤー81の両端に固定された接続部材としての円筒形状の固定金具82とで形成されている。この支柱落下防止部材8のワイヤー81が、互いに隣り合う複数の支柱2の貫通孔214に挿通されている。ワイヤー81の両端の固定金具82は、複数の支柱2によって互いに隔てられた2つの支柱2のH鋼21に接続されている。固定金具82が接続されるH鋼21には、ウェブ21cに止め孔216が設けられている。この止め孔216は、図10に示すように、上端に形成された大径部216aと、この大径部216aの下部に連なる小幅の長孔部216bとで形成されている。支柱落下防止部材8の取り付けの際、止め孔216の大径部216aに固定金具82を挿通させた後、ワイヤー81を長孔部216bの下端に移動させて、長孔部216bの縁部に固定金具82を係止させる。こうして、支柱落下防止部材8の固定金具82を支柱2に接続している。
【0039】
この支柱落下防止部材8により、支柱2が高架橋から落下する危険を効果的に防止できる。例えば、アスファルト舗装16上を走行する車両が鋼製高欄に衝突すること等により、支柱2が床版10から離脱しても、この離脱した支柱2がワイヤー81を介して隣り合う支柱2に支持される。これにより、離脱した支柱2が高架橋から落下する危険を防止できる。なお、落下防止部材8は、鋼製高欄の延長方向に互いに重複するように複数本設置するのが好ましい。例えば、1つの支柱落下防止部材8のワイヤー81を10本の支柱2の貫通孔214に挿通させる場合、両端の2本の支柱2に、隣接して配置する支柱落下防止部材8のワイヤー81を重複して挿通させる。これにより、固定金具82が接続された支柱2が脱落した場合、重複した2本のワイヤー81で脱落した支柱2を両側から支持できるので、ワイヤー81に作用する負担を緩和できる。
【0040】
外パネル落下防止部材9は、図6に示すように、線状部材としてのワイヤー91と、このワイヤー91の両端に固定された接続部材としての円筒形状の固定金具92とで形成されている。H鋼21の両側の外パネル4には、最上段の補強部材44の端部に止め孔441が設けられている。この止め孔441は、L型鋼からなる補強部材44の水平部に設けられており、大径部441aと、この大径部441aに連なって支柱2に近づく方向に延びる小幅の長孔部441bとで形成されている。外パネル落下防止部材9の取り付けの際、止め孔441の大径部441aに固定金具92を挿通させた後、ワイヤー91を長孔部441bの支柱2側の端に移動させて、長孔部441bの縁部に固定金具92を係止させる。こうして、外パネル落下防止部材9の固定金具92を外パネル4に接続している。
【0041】
この外パネル落下防止部材9により、外パネル4が高架橋から落下する危険を効果的に防止できる。例えば、アスファルト舗装16上を走行する車両が鋼製高欄に衝突すること等により、外パネル4が支柱2から離脱しても、この離脱した外パネル4がワイヤー91を介して支柱2に支持される。これにより、離脱した外パネル4が高架橋から落下する危険を防止できる。
【0042】
上記支柱落下防止部材8と外パネル落下防止部材9は、内パネル3と外パネル4で形成される壁体の内部に配置しているので、ワイヤー81,91や固定金具82,92が外部に露出して美観を損なうこと無く、支柱2と外パネル4の落下防止効果を発揮することができる。
【0043】
次に、この鋼製高欄を、鉄筋コンクリート製の高欄と取り替える方法について説明する。
【0044】
まず、床版10と一体に構築された鉄筋コンクリート製高欄を、延長方向に所定間隔おきに垂直に切断して、所定長さに分割する。次いで、分割された鉄筋コンクリート製高欄の基部を水平に切断して床版10から分離する。床版10から分離された高欄片を、重機で吊り下げて撤去し、トラックで搬出する。
【0045】
次に、床版10表面の支柱2を設置する部分と、床版10の側面とにブレーカ等でハツリを行う。ハツリ面に露出した鉄筋は、ガス切断機等で切断して撤去する。続いて、床版10表面のハツリ面に、ドリルによってアンカー設置孔を形成し、アンカー設置孔内にアンカーボルト11を挿入して接着剤によって固定する。アンカーボルト11が床版10に定着した後、高さ調整用のナット12をアンカーボルト11に螺合し、このナット12を所定の高さに設定する。この後、重機を用いてベースプレート1及び支柱2を設置する。このとき、ベースプレート1の長孔19にアンカーボルト11を挿通させて、ナット12によりベースプレート1を支持する。ベースプレート1の長孔19から突出するアンカーボルト11にナット13を螺着し、締結することにより、ベースプレート1をアンカーボルト11に固定する。アンカーボルト11に固定されたベースプレート1の底面側には、ハツリ面との間に空間が存在するので、ベースプレート1と床版10側面との間にL型鋼18を固定した後、上記空間を無収縮モルタルで埋める。
【0046】
こうして床版10の端部に、延長方向に所定間隔おきに支柱2を立設した後、この支柱2の間に外パネル4を固定する。詳しくは、外パネル4の壁面部41の縁部に予め固定されたボルト48が支柱2のH鋼21のフランジ21bのボルト孔212に挿通するように、外パネル4を支柱2に設置する。この後、フランジ21bの裏面に突出したボルト48の軸に、高欄の内壁面側からナットを螺合させて、外パネル4を支柱2に固定する。引き続いて、隣り合う複数の支柱2の貫通穴214に支柱落下防止部材8のワイヤー81を挿通させて、このワイヤー81の両端の固定金具82を所定の支柱2に夫々接続する。また、各支柱2の貫通孔214に外パネル落下防止部材9のワイヤー91を挿通させて、このワイヤー91の両端の固定金具92を支柱2の両側の外パネル4に夫々接続する。また、照明用等の電力線や通信電線を、各支柱2の配線管27内を通して配線する。外パネル4の天面部42の端縁に支持プレート6をボルト61で固定した後、支柱2の間に内パネル3を固定する。詳しくは、内パネル3の壁面部31の縁部を、支柱2のH鋼21のフランジ21aに位置合わせすると共に、内パネル3の天面部35の端縁を支持プレート6表面のゴム製シート62上に配置する。この後、内パネル3の縁部のボルト孔とH鋼21のフランジ21aのボルト孔211にボルト38を挿通し、このボルト38をフランジ21aの裏面に予め固定されたナットに螺合させて、内パネル3を支柱2に固定する。最後に、内パネル3の天面部35の端縁と外パネル4の天面部42の端縁との間に、コーキング剤を塗布して目止めを行う。
【0047】
このようにして鉄筋コンクリート製高欄と取り替えられた鋼製高欄は、鉄筋コンクリート製高欄よりも重量が大幅に小さいので、短いアンカーボルト11によって十分な強度を発揮して床版10と結合することができる。
【0048】
また、床版10表面のハツリ作業において、床版10の延長方向に所定間隔をおいたベースプレート1の配置位置にハツリ面を形成すればよいので、従来の鋼製高欄のように、ベース部を配置するために高欄の設置延長に連続してハツリ面を形成するよりも、ハツリ面の施工面積を大幅に縮小できる。また、アンカーボルト11は、所定間隔おきに配置されるベースプレート1を固定する本数であればよい。したがって、従来の鋼製高欄のように、高欄の設置延長に亘ってアンカーボルトを略等間隔に固定するよりも、アンカーボルト11の埋設本数を削減できる。このように、ハツリ面の施工面積を縮小でき、しかも、アンカーボルト11の埋設本数を削減できるので、少ない手間により、短い工期で、また、低廉な施工費で、鉄筋コンクリート製高欄を鋼製高欄1に取り替えることができる。
【0049】
また、ベースプレート1及び支柱2と、内パネル3と、外パネル4は、互いに分離した状態で搬入できるので、比較的大型のベース部及びフェース部で構成された従来の鋼製高欄よりも、搬入や積み下ろし作業を容易に行うことができる。したがって、従来よりも小型の重機を用いて、簡単かつ安価に鋼製高欄の設置作業を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、落下防止部材8,9のワイヤー81,91は、支柱2の貫通孔214に挿通させる以外に、例えば、支柱2に固定した環状の金具等に挿通させてもよい。また、本発明の鋼製高欄は、高速道路に限らず、一般道に用いることもできる。また、本発明の鋼製高欄は、既存の高架橋の鉄筋コンクリート製高欄に対する取り替えに用いるのみでなく、新設の高架橋に用いることもできる。また、本発明の鋼製高欄は、コンクリート床版に限られず、鋼製床版に設置することもできる。また、本発明の鋼製高欄は、高架橋に限られず、河川や海峡等の橋梁に用いることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 ベースプレート
2 支柱
3 内パネル
4 外パネル
10 床版
16 アスファルト舗装
31 内パネルの壁面部
35 内パネルの天面部
41 外パネルの壁面部
42 外パネルの天面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版の端部に延長方向に所定間隔をおいて配置され、アンカーボルトを介して上記床版に固定されるベースプレートと、
上記ベースプレート上に固定された支柱と、
隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記床版の幅方向中央を臨む面に固定される内パネルと、
隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記内パネルが固定される側と反対側の面に固定される外パネルと
を備え、上記外パネルは、この外パネルを上記支柱に固定するためのボルトが予め固定されていることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼製高欄において、
上記外パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記内パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、
上記内パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記外パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、
上記外パネル及び内パネルのうちの一方の天面部の端縁に支持プレートが固定され、この支持プレート上に配置された弾性部材を介して、上記外パネル及び内パネルのうちの他方の天面部の端縁が支持されていることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鋼製高欄において、
順次隣り合う複数の支柱に係合されると共に、上記複数の支柱のうちの両端の支柱に接続され、上記複数の支柱の落下を防止する支柱落下防止部材を備えることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の鋼製高欄において、
上記支柱に係合されると共に、この支柱の両側の2つの外パネルに接続され、上記2つの外パネルの落下を防止する外パネル落下防止部材を備えることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項1】
床版の端部に延長方向に所定間隔をおいて配置され、アンカーボルトを介して上記床版に固定されるベースプレートと、
上記ベースプレート上に固定された支柱と、
隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記床版の幅方向中央を臨む面に固定される内パネルと、
隣り合う上記支柱間に掛け渡され、上記支柱の上記内パネルが固定される側と反対側の面に固定される外パネルと
を備え、上記外パネルは、この外パネルを上記支柱に固定するためのボルトが予め固定されていることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼製高欄において、
上記外パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記内パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、
上記内パネルは、縁部が上記支柱に固定される壁面部と、この壁面部の上端に連なると共に、上記外パネル側に略直角に屈曲した天面部とを有し、
上記外パネル及び内パネルのうちの一方の天面部の端縁に支持プレートが固定され、この支持プレート上に配置された弾性部材を介して、上記外パネル及び内パネルのうちの他方の天面部の端縁が支持されていることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鋼製高欄において、
順次隣り合う複数の支柱に係合されると共に、上記複数の支柱のうちの両端の支柱に接続され、上記複数の支柱の落下を防止する支柱落下防止部材を備えることを特徴とする鋼製高欄。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の鋼製高欄において、
上記支柱に係合されると共に、この支柱の両側の2つの外パネルに接続され、上記2つの外パネルの落下を防止する外パネル落下防止部材を備えることを特徴とする鋼製高欄。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−174372(P2011−174372A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102747(P2011−102747)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−148677(P2007−148677)の分割
【原出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(507183088)株式会社ケイアールティ (2)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−148677(P2007−148677)の分割
【原出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(507183088)株式会社ケイアールティ (2)
【出願人】(505413255)阪神高速道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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