説明

錘具付きのネット及びシート

【課題】容易に折り曲げて形状を変形させることができ、かつ変形後の形状に安定に保つことができるネットやシートの固定用の錘具及びその錘具を備えたネットやシートを提供する。
【解決手段】平均粒子径が15〜150μmの範囲にある球状鉄酸化物粒子を、可撓性長尺チューブの内部に充填してなる可撓性長尺錘具、及び該可撓性長尺錘具を端部に備えた錘具付きネットまたはシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ごみ集積場への動物侵入防止用、マルチング材用、ビニールハウスの外壁材用として有用な錘具付きのネット及びシートに関する。本発明はまた、ネットやシートの固定用の可撓性長尺錘具に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ集積場では、ごみ袋がカラス、犬、猫などの動物によって食い破られて、ごみが散乱するのを防止するために、ごみ袋をネットやシートで覆うことが行われている。この動物侵入防止用のネットやシートには、動物が持ち上げたり、風でめくれたりしないように、ネットやシートの端部に長尺状の錘具を付設するのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、ネット用の錘具に可撓性長尺、天然砂粒子群や廃棄砂粒子群などの砂粒子群を内蔵する不織布製コードを用いることが記載されている。この特許文献1に記載されている不織布製コードは、低融点成分と高融点成分とからなる複合繊維を含有するテープ状不織布と砂粒子群とからなり、テープ状不織布はその長手方向に直列に配置している小室群を備えており、各小室内には砂粒子群が収納されていて、該小室群以外の箇所は、該複合繊維の低融点成分が融着固化して、各小室を区画していることにより、該砂粒子群の移動を阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3131413号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネットやシートを固定するために用いる長尺状の固定用錘具は、種々の場所でネットやシートを固定できるように、任意の形状に変形させることができることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載されている錘具では、錘具内の各小室に収納する砂粒子は一般に粒子形状が不均一で、嵩密度が1.3〜1.7g/cm3と小さいため、ネットやシートの固定用として実用的な重さとなるように砂粒子を収納するには各小室のサイズを大きくする必要があり、また各小室に収容されている砂粒子群は移動を阻止されているため、折り曲げにくく任意の形状に変形させることが難しい。
従って、本発明の目的は、容易に折り曲げて形状を変形させることができ、かつ変形後の形状に安定に保つことができるネットやシートの固定用の錘具及びその錘具を備えたネットやシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、電子写真方式の複写機やレーザープリンターの現像剤に用いられている電子写真用キャリアのような平均粒子径が15〜150μmの範囲にある微細な球状鉄酸化物粒子であると、ネットやシートの固定用として実用的な重さとなる量に、可撓性長尺チューブの内部に充填しても、容易に折り曲げることができ、かつ折り曲げた状態での形状安定性が高く、ネットやシートの固定用の錘具として有利に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
従って、本発明は、平均粒子径が15〜150μmの範囲にある球状鉄酸化物粒子を、可撓性長尺チューブの内部に充填してなる可撓性長尺錘具を端部に備える錘具付きネットまたはシートにある。
【0008】
本発明の錘具付きネットまたはシートの好ましい態様は、次の通りである。
(1)球状鉄酸化物粒子が、可撓性長尺チューブの内部に2.0〜4.0g/cm3の密度で充填されている。
(2)球状鉄酸化物粒子が、使用済み電子写真用キャリアもしくは電子写真用キャリアの製造工程で発生する規格外品である。
(3)球状鉄酸化物粒子が使用済み電子写真用キャリアであって、該キャリア100質量部に対してカーボンブラック粉末もしくは色材粉末を0.5〜2.0質量部の量にて含む。
【0009】
本発明はさらに、平均粒子径が15〜150μmの範囲にある球状鉄酸化物粒子を、可撓性長尺チューブの内部に充填してなるネットまたはシートの固定用の可撓性長尺錘具にもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明で用いる微細な球状鉄酸化物粒子は、砂粒子と比較して嵩密度が大きく、少量でネットやシートの固定用として実用的な重さとすることができるため、球状鉄酸化物粒子を充填する可撓性長尺チューブのサイズを小さくすることができる。また、微細な球状鉄酸化物粒子は、粒子同士の接触による摩擦力が少ない。これらの理由から、本発明の可撓性長尺錘具は、人の力で容易に長さ方向に折り曲げることができ、種々の場所でネットやシートを固定できる。また、球状鉄酸化物粒子は空気や水に触れても溶解したり変質しにくいため、可撓性チューブが破れて球状鉄酸化物粒子が外部に漏れ出ても外部の環境を汚染することが殆どない。
従って、本発明の錘具付きのネット及びシートは、ごみ集積場への動物侵入防止用、マルチング材用、ビニールハウスの外壁材用などの用途に有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う錘具付きネットをごみ集積場への動物侵入防止用ネットに使用する例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した可撓性長尺錘具の長手方向に沿った断面図である。
【図3】本発明に従う錘具付きネットをごみ集積場への動物侵入防止用ネットに使用する別の例を示す斜視図である。
【図4】本発明に従う錘具付きシートをマルチング材に使用する例を示す斜視図である。
【図5】本発明に従う錘具付きシートをビニールハウスの外壁材に使用する例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に従う錘具付きネットをごみ集積場への動物侵入防止用ネットとして使用する例を示す斜視図であり、図2は、図1に示した可撓性長尺錘具の長手方向に沿った断面図である。
図1において、ごみ袋1を覆うネット2は矩形状であり、一方の端部はネット吊下げ糸3を介して、ごみ集積場の壁4に付設されたフック5に吊り下げられている。ごみ集積場の地面6に接しているネット2の周縁端部には、錘具結束糸7によって可撓性長尺錘具8が結び付けられている。
【0013】
ネット2の網目サイズは、1〜50mmの範囲にあることが好ましい。ネットの材料の例としては、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができる。
【0014】
ネット吊下げ糸3及び錘具結束糸7には、銅線や針金などの金属線、ポリアミドロープ、ポリエチレンロープ、ポリプロピレンロープなどの樹脂製ロープ、麻ロープを用いることができる。
【0015】
可撓性長尺錘具8は、図2に示すように、可撓性長尺チューブ9と、可撓性長尺チューブ9の内部に充填されている球状鉄酸化物粒子10と、球状鉄酸化物粒子10が外部に漏れ出さないようにするために、可撓性長尺チューブ9の両端の開口部に挿入された栓11とから構成されている。可撓性長尺錘具8は長さ当たりの重さが200〜2000g/mの範囲にあることが好ましく、500〜1200g/mの範囲にあることがより好ましく、700〜900g/mの範囲にあることが最も好ましい。
【0016】
可撓性長尺チューブ9は、人力によって容易に折り曲げ可能なチューブである。可撓性長尺チューブ9の材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びこれらの変性物を挙げることができる。可撓性長尺チューブ9には、例えば市販の散水用ホースを用いることができる。可撓性長尺チューブ9は、外径が14〜30mmの範囲にあって、厚みが1〜10mmの範囲にあることが好ましい。可撓性長尺チューブ9の長さには特に制限はないが、通常は500〜5000mmの範囲である。
【0017】
球状鉄酸化物粒子10は、可撓性長尺チューブ9の内部に2.0〜4.0g/cm3の密度で充填されていることが好ましい。
【0018】
球状鉄酸化物粒子10は平均粒子径が15〜150μmの範囲にあり、好ましくは15〜100μmの範囲にある。平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定した値である。
【0019】
球状鉄酸化物粒子10は、フェライト粒子であることが好ましい。フェライト粒子は、下記式(I)にて示されるスピネル型フェライトからなる粒子であることが好ましい。
MO・Fe23・・・(I)
[但し、Mは、Mg、Ca、Sr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znからなる群より選ばれる一種以上の金属である。]
【0020】
球状鉄酸化物粒子10には、使用済み電子写真用キャリアもしくは電子写真用キャリアの製造工程で発生する規格外品を用いることができる。
【0021】
電子写真用キャリアとは、電子写真方式の複写機やレーザープリンターにおいて、トナーと共に現像剤(デベともいう)に用いられる材料の一種であり、トナーを搬送したり、トナーに電荷を与えて、トナーを帯電させる役目を果たすものである。電子写真用キャリアには、一般にスピネル型フェライト粒子が用いられている。電子写真用キャリアは、粒子表面が樹脂でコートされていてもよい。電子写真用キャリアは、トナー粒子を効率良く帯電させるために、磁化率や電気抵抗などの特性が規格化されている。
【0022】
使用済み電子写真用キャリアとは、複写機や印刷機で使用された後の現像剤から回収した電子写真用キャリアを意味する。使用後の現像剤は、通常は電子写真用キャリア以外に黒色トナー(カーボンブラック)やカラートナー(色材粒子)が残留している。使用後の現像剤から電子写真用キャリアを回収する方法としては、ふるい分け、水洗、遠心分離などによって電子写真用キャリアとトナーとを分離する方法、磁気力で電子写真用キャリアを選択的に取り出す方法、現像剤を加熱してトナーを蒸発除去する方法などを用いることができる。
【0023】
現像剤から回収した使用済み電子写真用キャリアは、トナー(カーボンブラックあるいは色材粒子)を、電子写真用キャリア100質量部に対して0.5〜2.0質量部の範囲の量にて含むことが好ましい。使用済み電子写真用キャリアがトナーを含んでいると、キャリア粒子同士の摩擦が低減して可撓性長尺チューブの内部でキャリア粒子が移動し易くなるため、可撓性長尺錘具が折り曲げやすくなる。
【0024】
電子写真用キャリアの製造工程で発生する規格外品とは、電子写真用キャリアとして製造されたが、磁化率や電気抵抗などの特性が規格値から外れているために、電子写真用キャリアとしての使用に適さないとされたものを意味する。
【0025】
栓11の材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーンなどの樹脂及び木を挙げることができる。栓11が可撓性長尺チューブ9から抜け出ないように、栓を挿入した部位の周囲には銅線や針金などの金属線を巻き付けて、栓を固定しておくことが好ましい。
【0026】
図3は、本発明に従う錘具付きネットのごみ集積場への動物侵入防止用ネットとしての別の使用例を示す斜視図である。
図3において、ごみ袋1を覆うネット12は円形状であり、ネット12の中央部(ごみ袋1を覆っている部分)がネット吊下げ糸3を介して、ごみ集積場の壁4に付設されたフック5に吊り下げられている。可撓性長尺錘具8は、円形状のネット12の端部周縁に沿って湾曲した状態で錘具結束糸7によって結び付けられている。
【0027】
図4は、本発明に従う錘具付きシートのマルチング材としての使用例を示す斜視図である。
図4において、錘具付きのシートは、樹脂製シート13と、樹脂製シートの両端に錘具結束糸7によって結び付けられた可撓性長尺錘具8とからなる。樹脂製シート13には複数個の孔14が設けられていて、その孔14に苗15が植えられている。樹脂製シート13の材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができる。錘具結束糸7及び可撓性長尺錘具8は図1及び2に示したものと同じであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
図5は、本発明に従う錘具付きシートのビニールハウスの外壁材としての使用例を示す分解斜視図である。
図5において、ビニールハウスは、苗15が植えられた地面の四隅に配置された支柱16と、支柱16の上部に接続する矩形状の梁17とからなる枠体18、及び枠体18を覆ってビニールハウスの外壁材を形成する二枚の錘具付き長尺樹脂製シート19a、19bから構成される。二枚の錘具付き長尺樹脂製シート19a、19bは、それぞれ長手方向が互いに直交する位置関係で枠体18を覆うように配置され、一方の錘具付き長尺樹脂製シート19aで枠体18の上面と互いに対向する一組の側面の外壁を、他方の錘具付き長尺樹脂製シート19bで枠体18の上面と互いに対向する他方の一組の側面の外壁材を形成する。
【0029】
錘具付き長尺樹脂製シート19a、19bはそれぞれ長尺樹脂製シート20と、長尺樹脂製シート20の長さ方向の両端に錘具結束糸7によって結び付けられた可撓性長尺錘具8とからなる。長尺樹脂製シート20の材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができる。錘具結束糸7及び可撓性長尺錘具8は、図1及び2に示したものと同じであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
本発明の錘具付きのネット及びシートの代表的な使用例について添付図面を参照しながら説明したが、本発明の錘具付きのネット及びシートは上述の使用例以外の用途にも使用することができる。例えば、本発明の錘具付きネットは、漁網として利用することができる。また、本発明の錘具付きシートは、段ボールやベニヤ板などの板状物の覆いとしても利用することができる。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
ポリ塩化ビニル製黄色チューブ3本[長さ2mのもの1本、長さ1mのもの2本、(各、外径23mm、内径18mm)]を用意し、それぞれの一方の開口部にポリエチレン製の栓を挿入して、開口部を封止した。次いで、該チューブの他方の開口部から、チューブの内部に、使用済みのレーザープリンター用現像材(テベ)をサイクロンにてトナー等の軽量物をあら篩いして回収した使用済み電子写真用キャリア(キャリア100質量部に対して黒色トナーを1.0質量部含む)を投入し、チューブの内部に使用済み電子写真用キャリアを充填したのち、該開口部にポリエチレン製の栓を挿入して封止した。そして、最後に、チューブ両端の開口部に挿入した栓を、チューブ外周にステンレス製の針金を巻き付けて固定して、3本の可撓性長尺錘具を製造した。各使用済み電子写真用キャリアの充填密度は、3.2g/cm3であった。
この3本の可撓性長尺錘具をネットの端部にポリアミドロープで結び付けて、図1に示すような錘具付きネットを作成し、これをごみ集積場への動物侵入防止用ネットとして使用した。1ヶ月経過後もごみ袋がカラス、犬、猫などの動物によって食い破られた形跡は認められなかった。
【符号の説明】
【0032】
1 ごみ袋
2 ネット
3 ネット吊下げ糸
4 壁
5 フック
6 地面
7 錘具結束糸
8 可撓性長尺錘具
9 可撓性長尺チューブ
10 球状鉄酸化物粒子
11 栓
12 ネット
13 樹脂製シート
14 孔
15 苗
16 支柱
17 梁
18 枠体
19a、19b 錘具付き長尺樹脂製シート
20 長尺樹脂製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が15〜150μmの範囲にある球状鉄酸化物粒子を、可撓性長尺チューブの内部に充填してなる可撓性長尺錘具を端部に備える錘具付きネットまたはシート。
【請求項2】
球状鉄酸化物粒子が、可撓性長尺チューブの内部に2.0〜4.0g/cm3の密度で充填されている請求項1に記載の錘具付きネットまたはシート。
【請求項3】
球状鉄酸化物粒子が、使用済み電子写真用キャリアもしくは電子写真用キャリアの製造工程で発生する規格外品である請求項1に記載の錘具付きネットまたはシート。
【請求項4】
球状鉄酸化物粒子が使用済み電子写真用キャリアであって、該キャリア100質量部に対してカーボンブラック粉末もしくは色材粉末を0.5〜2.0質量部の量にて含む請求項1に記載の錘具付きネットまたはシート。
【請求項5】
平均粒子径が15〜150μmの範囲にある球状鉄酸化物粒子を、可撓性長尺チューブの内部に充填してなるネットまたはシートの固定用の可撓性長尺錘具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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