説明

錠剤破砕装置

【課題】破砕した錠剤の刃部への付着と飛散を抑制することが可能な錠剤破砕装置を提供する。また、錠剤を一度に大量に破砕処理するのに適した錠剤破砕装置を提供する。
【解決手段】錠剤破砕装置は、錠剤1に機械的な圧力を加えて破砕する破砕部5と、錠剤1を破砕部5に投入する錠剤投入部と、破砕部5に水Wを噴射する液体噴射部7と、破砕された錠剤1を回収する錠剤回収部と、を主に備える。前記破砕部5は、水平軸周りに互いに逆向きに回転する一対の回転刃51同士の間に前記錠剤を挟みこんで破砕するように構成され、前記液体噴射部7は、前記一対の回転刃51のうち、前記錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側にそれぞれ液体を噴射するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を破砕する錠剤破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤など(以下、単に「錠剤」という。)を製造する過程において、製造ロットの初期に生産される錠剤の成分(配合)にばらつきが生じることがある。錠剤は、各成分が正確に配合されている必要があるため、製造ロットの初期に生産される錠剤を廃棄することが行われている。
錠剤は、原型のままでは一般廃棄物として扱えないので、廃棄物処理業者に引き渡して処分することになる。このとき、ロットの初期に製造された廃棄すべき錠剤は、成分が正確に配合された製品と外観上区別できないので、誤って市場に流通することがないように、薬品製造会社の担当者が廃棄物処理業者に同行して、確実に廃棄処分されたことを確認するようにしている。そのため、廃棄に関する費用や手間が増大していた。
そこで、破砕装置を用いて錠剤を破砕してから一般廃棄物として処理することが考えられる。
【0003】
なお、錠剤を服用し易くするために粉砕する装置としては、例えば、粉砕手段により錠剤に機械的な圧力を加えて粉砕した後、粉砕容器に貯留するようにした錠剤粉砕装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。この錠剤粉砕装置においては、粉砕容器に、フッ素系複合メッキからなる非付着メッキ層を形成して錠剤の粉末が付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−53208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、錠剤には、糖衣がコーティングされていることが多く、錠剤に圧力を加えて破砕する際に、摩擦熱によって糖衣が軟化或いは溶解して刃部に付着することがあった。また、錠剤を、いわゆる錠剤シートに収容したままの状態で破砕装置に投入すると、錠剤シートの蓋部に用いられているアルミ箔が、摩擦熱によって軟化或いは溶解し、刃部に付着することがあった。
破砕した錠剤が刃部に付着又は堆積すると、装置が作動不能になるおそれがある。また、刃部のメンテナンス頻度が増大し、コストの増加を招く。
【0006】
また、大量の錠剤を破砕処理すると、薬品成分を含んだ粉末が飛散し、作業環境の悪化を招くおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に記載の錠剤粉砕装置は、錠剤を粉末状にして服用し易くするための装置であるため、廃棄すべき錠剤を一度に大量に破砕処理することに適していない。
【0008】
本発明は、これらの問題に鑑みて成されたものであり、破砕した錠剤の刃部への付着と飛散を抑制することが可能な錠剤破砕装置を提供することを主な課題とする。
また、本発明は、錠剤を一度に大量に破砕処理するのに適した錠剤破砕装置を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る錠剤破砕装置は、錠剤に機械的な圧力を加えて破砕する破砕部と、前記破砕部に液体を噴射する液体噴射部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、破砕部の表面に液体が付着するので、破砕された錠剤が破砕部の表面に付着し難くなる。また、破砕部の表面に液体が付着することにより、破砕部の表面の温度が低下するので、摩擦熱の発生が抑えられ、錠剤の糖衣や錠剤シートに含まれるアルミ箔の軟化・溶解が抑制される。これにより、破砕された錠剤の破砕部への付着がさらに抑制される。また、破砕された錠剤が湿気を帯びるので、破砕された錠剤の飛散が抑制される。
【0011】
また、前記破砕部は、水平軸周りに互いに逆向きに回転する一対の回転刃同士の間に前記錠剤を挟みこんで破砕するように構成され、前記液体噴射部は、前記一対の回転刃のうち、前記錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側にそれぞれ液体を噴射するように構成するのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、一対の回転刃のうち、錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側にそれぞれ液体が噴射されるので、錠剤が挟みこまれる部分に確実に液体を供給して、錠剤の付着抑制効果及び飛散抑制効果を向上させることができる。
【0013】
また、前記液体噴射部は、前記液体を貯留するメインタンクと、前記メインタンクの下流側に設けられたサブタンクと、前記サブタンクの下流側に設けられた複数の噴射ノズルと、前記サブタンクにエアを供給するエア供給手段と、前記メインタンクとサブタンクとの間に設けられた逆止弁と、を有し、前記複数の噴射ノズルは、前記一対の回転刃のうち、前記錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側にそれぞれ液体を噴射するように配置されている構成とするのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、サブタンクにエアを供給することによって、前記一対の回転刃のうち錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側に、複数の噴射ノズルから液体を噴射して、錠剤が挟みこまれる部分に液体を確実に供給することができる。また、メインタンクとサブタンクとの間に逆止弁を備えているので、液体の噴射中でもメインタンクに液体を補充することができる。
【0015】
また、本発明に係る錠剤破砕装置は、前記破砕部に前記錠剤を投入する錠剤投入部をさらに有し、前記錠剤投入部は、前記破砕部よりも下方において破砕すべき前記錠剤を貯蔵するバケットと、前記バケットを傾動自在に保持する保持部と、前記保持部を上下方向に移動自在に支持する本体部と、前記保持部を上下方向に移動させる移動手段と、前記破砕部の上方に設置され、前記バケットに貯蔵された前記錠剤を受け取って前記破砕部に供給するホッパと、を備え、前記バケットは、前記保持部に対して傾動自在に連結された傾動部と、前記傾動部よりも前記ホッパ側に設けられた被押圧部と、を有し、前記本体部は、前記保持部の上昇に伴って、前記被押圧部を下方に向かって押圧する押圧部を有する構成とするのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、バケットに錠剤を大量に貯蔵することができるとともに、バケットを上昇させることによって大量の錠剤をホッパを介して破砕部に供給することができるので、大量の錠剤を効率よく破砕処理することができる。また、バケットを上昇させることによってバケットのホッパ側の被押圧部を下方に押圧して、バケットをホッパ側に傾けることができるので、バケットを傾けるための駆動装置を別途設ける必要がなく、錠剤投入部の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、破砕した錠剤の刃部への付着と飛散を抑制することが可能な錠剤破砕装置を提供することができる。
また、本発明によれば、錠剤を一度に大量に破砕処理するのに適した錠剤破砕装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、錠剤の斜視図であり、(b)は、錠剤シートの斜視図である。
【図2】錠剤破砕装置の右側面図である。
【図3】錠剤投入部を拡大して示した右側面図である。
【図4】錠剤投入部を拡大して示した正面図である。
【図5】破砕部及び錠剤回収部の正面図である。
【図6】(a)は、破砕部の図5に示すI−I矢視平面図であり、(b)は(a)に示すA部の拡大平面図である。
【図7】破砕部の図6に示すII−II矢視断面図である。
【図8】液体噴射部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。説明において方向を示すときは、図に示す前後左右上下を基準にして説明する。
【0020】
錠剤破砕装置の説明に先立って、処理対象物である錠剤および錠剤シートについて図1を参照して説明する。
図1の(a)は、錠剤の斜視図であり、(b)は、錠剤シートの斜視図である。
図1(a)に示すように、錠剤1は、医薬品を一定の形状に加工したものである。錠剤1は、医薬品を圧縮加工して固めてもよいし、粉末状又は液体状の医薬品をカプセル(図示省略)に封入して形成してもよい。錠剤1の表面には糖衣1aがコーティングされており、飲み易くなっている。
製造ロットの初期に生産された錠剤1は、成分(配合)にばらつきが生じていることがあるため、一定の割合で廃棄処分される。
【0021】
図1(b)に示すように、錠剤1は、錠剤シート10に収容された状態で製品化される。錠剤シート10は、複数の収容部11aを有するシート本体11と、収容部11aを閉塞するためのアルミ箔12と、を有している。シート本体11は、透明な樹脂製の板状部材であり、収容部11aに収容された錠剤1を目視可能に構成されている。収容部11aは、シート本体11を一面側から凹ませるとともに他面側に膨出させて形成されている。本実施形態では、収容部11aは2列×4段に形成されている。アルミ箔12は、シート本体11の一面側に貼り付けられて、収容部11aを閉塞している。
錠剤1を破砕処理する場合は、錠剤シート10から錠剤1を取り出すことなく、錠剤シート10に収容されたままの状態で、錠剤破砕装置2(図2参照)に投入してもよい。
【0022】
<錠剤破砕装置2>
図2は、錠剤破砕装置の右側面図である。
錠剤破砕装置2は、投入された錠剤1(図1参照)を細かく破砕する装置である。本実施形態では、錠剤1が錠剤シート10に収容された状態で投入されることを想定している。錠剤破砕装置2は、図2に示すように、錠剤1や錠剤シート10を投入する錠剤投入部3と、投入された錠剤1を破砕する破砕部5と、破砕部5に液体を噴射する液体噴射部7と、破砕された錠剤1を回収する錠剤回収部9と、を主に有している。
【0023】
また、錠剤破砕装置2は、その全体を箱状の筐体21に覆われている。説明の便宜のため、図2では筐体21を二点鎖線で描いている。筐体21の前面21aには、作業台22が設けられており、作業台22の上方には錠剤投入部3に通じる投入用扉(図示省略)が設けられている。さらに、筐体21の前面21aには錠剤破砕装置2の操作盤(図示省略)が設置されている。また、筐体21の後面21bには、換気装置23が設置されている。なお、筐体21の後面21bの下部には、破砕した錠剤1を取り出すための回収用扉(図示量略)が設けられている。
【0024】
<錠剤投入部3>
図3は、錠剤投入部を拡大して示した右側面図である。図4は、錠剤投入部を拡大して示した正面図である。
図2乃至図4に示すように、錠剤投入部3は、破砕すべき錠剤1を貯蔵するバケット31と、バケット31を傾動自在に保持する保持部32と、保持部32を上下方向に移動自在に支持する本体部33と、保持部32を上下方向に移動させる移動手段34(図4参照)と、バケット31に貯蔵された錠剤1を受け取って破砕部5に供給するホッパ35と、を備えている。
【0025】
バケット31は、上部が開口した箱状の容器であり、破砕すべき錠剤1や錠剤シート10を貯蔵するとともに、後記するホッパ35に錠剤1を供給する機能を有している。
バケット31は、図3に示すように、側面視で、上辺よりも下辺が短い台形状を呈しており、後側(破砕部5側)の傾斜面31aは、傾動軸31bを介して保持部32に傾動自在に固定されている。バケット31は、傾動軸31bよりも後側の位置に被押圧部31cを有している。被押圧部31cは、バケット31が上昇したときに後記する押圧部33dによって相対的に下方に押圧されることで、バケット31を破砕部5側に傾ける機能を有している。被押圧部31cは、図4に示すように、バケット31の側面から突出しており、押圧部33dに対して前後方向に移動可能なように例えばローラなどで構成されている。バケット31の開口部の左右側部には、フランジ部31d、31dが斜め上方に向かって延出形成されており、バケット31を傾けたときに錠剤1が左右にこぼれ難いようになっている。
【0026】
保持部32は、図3、図4に示すように、バケット31の下方に配置されてバケット31を傾動自在に保持する凹溝状の部材である。保持部32の左右の側壁32a,32aの上面の後寄りの部分には、軸受32b、32bが設けられており、この軸受32bには、バケット31の傾動軸31bが傾動自在に固定されている。
また、保持部32の左右の側面(図3では右側の側面のみ図示)の前寄りの位置及び後寄りの位置には、後記する4本のガイド部材33aにスライド自在にそれぞれ外嵌するスライド部32cが設けられている。
【0027】
本体部33は、図2乃至図4に示すように、保持部32を上下に移動自在に支持するガイド部材33aと、このガイド部材33aを支持する支持枠33bと、を備えている。
【0028】
ガイド部材33aは、垂直に立設された円柱状の部材であり、保持部32の左右側方に、互いに前後に離間して2本ずつ(合計4本)配置されている。ガイド部材33aは、保持部32の各スライド部32cに挿通されており、保持部32の上下の移動を許容しながら、水平方向の移動を制限している。ガイド部材33aの上端及び下端は、支持枠33bに固定されている。
【0029】
支持枠33bは、例えば軽量形鋼などを組み合わせて構成された骨組部材である。支持枠33bの形状は、必要に応じて適宜に構成すればよい。
支持枠33bは、図3、図4に示すように、バケット31及び保持部32の左右側方であって後方寄りの位置に、2本の縦枠33cを有している。2本の縦枠33cの上部には、バケット31の被押圧部31cを下向きに押圧する押圧部33dが、バケット31に向かって突設されている。押圧部33dは、後記するホッパ35の投入部35aよりも若干高い位置に設けられている(図2参照)。
【0030】
移動手段34は、保持部32を上下に移動させる装置であり、図4に示すように、駆動モータ34aと、ボールねじ34bと、移動部34cと、を有している。
駆動モータ34aは、保持部32の左側であって支持枠33bの上部に固定されている。ボールねじ34bの上端は、駆動モータ34aの出力軸に固定されており、ボールねじ34bの下端は、ブラケット34dを介して支持枠33bの下部に回転自在に固定されている。移動部34cは、保持部32の左側の側面に固定されている。移動部34cは、ボールねじ34bを挿通するねじ孔34eを有しており、ボールねじ34bの回転に伴って上下に移動するようになっている。
【0031】
また、移動手段34を補助する装置として、保持部32の右側に、バランスシリンダ37が設置されている。バランスシリンダ37は、シリンダ37aと、ロッド37bと、を備えている。シリンダ37aは、保持部32の右側であって支持枠33bの上部に固定されている。ロッド37bの上端側は、シリンダ37aに挿入されており、ロッド37bの下端側は、保持部32の右側の側面に固定されている。シリンダ37aには、例えば高圧エアが供給されており、ロッド37bに上向きの力を付与している。そのため、バケット31及び保持部32を上方に移動する際に、移動手段34が負担すべき荷重が軽減される。
【0032】
ホッパ35は、図2及び図5に示すように、四角筒状かつテーパ状の部材である。ホッパ35は、図示しないブラケット等を介して支持枠33bに固定されて、破砕部5の上方に配置されている。
ホッパ35は、バケット31から錠剤1を投入するための開口である投入部35aと、錠剤1を破砕部5に供給するための開口である供給部35bと、投入部35aと供給部35bとを連結するテーパ部35cと、投入部35aの周縁に立設された壁部35dと、を有している。
投入部35aは、供給部35bよりも前後方向の幅が大きく形成されており、バケット31側に大きく張り出している。テーパ部35cは、投入部35aから供給部35bに向かって下り傾斜となっている。供給部35bの左右の側面は、後記する破砕部5の一対の回転刃51の外形に合わせて円弧状に切り欠かれている。壁部35dは、平面視で略コ字状に形成されており、投入部35aの後縁と、左右両縁の後ろ寄りの部分に立設されている。
【0033】
<破砕部5>
図5は、破砕部及び錠剤回収部の正面図である。図6の(a)は、破砕部の図5に示すI−I矢視平面図であり、(b)は(a)に示すA部の拡大平面図である。図7は、破砕部の図6に示すII−II矢視断面図である。なお、図5においては、説明の便宜のため、液体噴射部7を省略して描いている。
破砕部5は、錠剤1や錠剤シート10に機械的な圧力を加えて破砕する装置であり、図2に示すように、バケット31の後方であってホッパ35の下方に設置されている。破砕部5は、錠剤投入部3用の支持枠33bの後方に連結された破砕部5用の支持枠56に固定されている。
破砕部5は、図5、図6に示すように、水平軸周りに回転する一対の回転刃51,51と、一対の回転刃51を回転自在にそれぞれ支持する軸受部52,52と、一対の回転刃51,51を回転させるための駆動部53,53と、駆動部53,53の回転力を一対の回転刃にそれぞれ伝達するギア部54,54と、を有している。
【0034】
各回転刃51は、図6(b)に示すように、水平に配置された回転軸51aに、円盤状の刃部51bと、刃部51bよりも直径の小さいカラー51cと、を交互に嵌装して構成されている。なお、複数の刃部51bは、同じ形状のものを用いてもよいし、用途に応じて異なる形状のものを組み合わせて用いてもよい。
一対の回転刃51は、互いに対向して並列配置されており、一方の回転刃51の刃部51b同士の間に、他方の回転刃51の刃部51bの外周縁が配置されている。互いの刃部51bとカラー51cとの最小間隔は、錠剤1の寸法よりも十分小さく設定されており、錠剤1を細かく破砕できるようになっている。
各回転刃51は、錠剤1を挟み込む部分(回転刃51同士が対向する部分)51eにおいて、上から下に向かって回転するように、互いに逆向きに回転している。
【0035】
軸受部52は、例えば滑り軸受などで構成されており、破砕部5用の支持枠56に固定されている。
駆動部53は、例えば電動モータなどで構成されており、一対の回転刃51の左右両側にそれぞれ配置されている。駆動部53の出力軸53aは、水平に配置されている。
ギア部54は、回転刃51の回転軸51aの一端部に連結された第1ギア54aと、第1ギア54aに噛み合うとともに駆動部53の出力軸53aに連結された第2ギア54bと、を有しており、第1ギア54aと第2ギア54bのギア比を調節することにより、一対の回転刃51,51が所定の速度とトルクで回転するようになっている。
【0036】
<液体噴射部7>
図8は、液体噴射部の概略構成図である。
液体噴射部7は、一対の回転刃51,51に液体である水Wを噴射するものである。なお、本実施形態では、液体として水Wを用いたが、他の液体であってもよい。
液体噴射部7は、図6乃至図8に示すように、水Wを貯留するメインタンク71(図8参照)と、メインタンク71の下流側に設けられた一対のサブタンク72,72と、サブタンク72の下流側に設けられた複数の噴射ノズル73と、各サブタンク72にエアを供給するエア供給部74(図8参照)と、メインタンク71とサブタンク72との間に設けられた逆止弁75(図8参照)と、を主に備えている。
【0037】
メインタンク71は、図8に示すように、水Wの水位を計測するフロート71aとフロート71aに連動して開閉する開閉弁71cとを備えている。フロート71a及び開閉弁71cは、いわゆるボールタップを構成しており、水Wの水位が高いときは、フロート71aが上昇して開閉弁71cが閉じた状態となり、水Wの水位が低くなると、フロート71aが降下して開閉弁71cが開き、水源71bから水Wが供給されるようになっている。また、メインタンク71は、ドレン弁71dを有している。
【0038】
サブタンク72,72は、図6、図7に示すように、中空部を有する円筒状の容器であり、一対の回転刃51,51の前後に水平に配置されている。サブタンク72は、図7に示すように、ブラケット72aを介して支持枠56に固定されている。
【0039】
噴射ノズル73は、図6、図7に示すように、一対の回転刃51の前後に4つずつ配置されている。噴射ノズル73は、一対の回転刃51のうち、錠剤1を挟み込む部分51eの直近の回転方向上流側の部分(符号51f)に対向して配置されている。各噴射ノズル73は、配管78を介してサブタンク72に接続されている。
【0040】
エア供給部74は、図8に示すように、エア供給源74aと、レギュレータ74bと、を備えて構成されている。エア供給源74aから送られたエアは、レギュレータ74bによって適切な圧力に減圧されてサブタンク72に供給される。
【0041】
図8に示すように、各サブタンク72は、配管76を介してメインタンク71に接続されている。配管76は、途中で分岐されており、分岐点よりも上流側に開閉弁76aと逆止弁75とを有している。また、各サブタンク72は、配管77を介してエア供給部74に接続されている。配管77は、途中で二股に分岐されており、分岐点の上流側に開閉弁77aを有している。また、各サブタンク72は、配管79を介してドレン弁79aに接続されている。
【0042】
エア供給部74からサブタンク72にエアが供給されると、サブタンク72内の圧力が上昇し、サブタンク72に貯留された水Wが配管78を通って噴射ノズル73から噴射される。これにより、回転刃51に水Wが付着し、破砕された錠剤1の付着が抑制されることとなる。なお、配管76には、逆止弁75が設置されているので、サブタンク72の水Wが、配管76側に戻ることがない。
【0043】
<錠剤回収部9>
錠剤回収部9は、図2及び図5に示すように、破砕部5から落下する錠剤1を案内するシュート91と、破砕された錠剤1を収集する容器92と、容器92を固定するための固定用治具93と、を備えている。
【0044】
シュート91は、下方に向かうほど左右方向の幅が狭くなるように形成された筒状部材である。シュート91は、一対の回転刃51の直下に設置されている。
容器92は、上端が開口した有底四角筒状の部材である。容器92は、シュート91の下方に配置されている。
固定用治具93は、矢倉状に骨組みされたフレーム部93aと、容器92の上縁を挟んで把持する把持部93bと、を有している。把持部93bは、フレーム部93aの下端部に設けられている。フレーム部93aは、図示しない固定具を介して支持枠56に固定されている。
【0045】
本実施形態に係る錠剤破砕装置2の構成は、以上説明した通りであり、次に、本実施形態に係る錠剤破砕装置2の動作及び作用効果について、図1乃至図8を適宜参照して説明する。
【0046】
初めに、図2に示すように、錠剤破砕装置2の操作者は、筐体21の前面21aにある投入用扉(図示省略)を開けて、バケット31に錠剤1や錠剤シート10を投入する。なお、初期状態では、バケット31は破砕部5よりも下方に配置されているので、錠剤1を容易に投入することができる。バケット31が一杯になったら、操作者は、操作盤を操作して、錠剤破砕装置2の運転を開始する。
【0047】
錠剤破砕装置2の運転が開始されると、図4に示すように、移動手段34の駆動モータ34aによってボールねじ34bが回転し、移動部34cが上昇するとともに、移動部34cに固定された保持部32及びこの保持部32に保持されたバケット31が上昇する。このとき、保持部32の右側面にはバランスシリンダ37が取り付けられており、保持部32にロッド37bを介して上向きの力が加えられているので、移動手段34が負担する荷重が軽減される。
【0048】
図3に示すように、バケット31及び保持部32が上昇すると、バケット31の後端部に設けた被押圧部31cが、縦枠33cに設けた押圧部33dに当接する(図3の二点鎖線参照)。この状態で、さらに保持部32が上昇すると、バケット31の被押圧部31cは相対的に下向きに押圧される。これにより、バケット31は、保持部32の上昇に伴って傾動軸31bを中心にして後端側が下を向くように傾動を開始する。なお、被押圧部31cは、ローラで構成されているので、バケット31の傾動に伴って押圧部33dの下面に沿って前後に滑らかに移動することができる。
【0049】
図7に示すように、バケット31が傾動すると、バケット31に貯蔵されていた錠剤1が、投入部35aからホッパ35内に落下する。ホッパ35に落下した錠剤1は、テーパ部35cに案内されて供給部35bから一対の回転刃51,51の上に供給される。これにより、大量の錠剤1を一度に容易に破砕部5に供給することができる。
【0050】
図7に示すように、一対の回転刃51,51は、錠剤1を挟み込む部分(回転刃51同士が対向する部分)51eにおいて、上から下に向かって回転するように、互いに逆向きに回転している。そして、一対の回転刃51,51のうち、錠剤1を挟みこむ部分51eの直近の回転方向上流側の部分51fには、液体噴射部7によって、液体である水Wが吹き付けられている。
【0051】
このような一対の回転刃51,51の上に供給された錠剤1は、回転刃51,51同士の間に挟み込まれて細かく破砕される。このとき、回転刃51,51には水Wが付着しているので、破砕された錠剤1が回転刃51,51の表面に付着しにくい。また、水Wによって回転刃51,51の表面が冷却されるので、錠剤1の糖衣1aや錠剤シート10のアルミ箔12(図1参照)の摩擦熱による軟化・溶解が抑制され、回転刃51,51に付着し難くなる。また、破砕された錠剤1には、水Wが付着しているので、粉砕した錠剤1の飛散を抑制することができる。
【0052】
破砕された錠剤1は、シュート91を通って容器92の内部に堆積する。すべての錠剤1の破砕が完了したら、操作者は、筐体21の後面21bに設けられた回収用扉(図示省略)を開き、容器92を取り出し、破砕した錠剤1を回収して一般廃棄物として廃棄する。これにより、錠剤1を産業廃棄物として処理するコストを削減することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
例えば、本実施形態では、液体として水Wを用いたが、錠剤が回転刃に付着することを防止できる液体であれば水W以外の液体でもよい。また、液体にインクや顔料等を含有させて、破砕した錠剤1を着色するようにしてもよい。
また、本実施形態では、一対の回転刃51,51を用いて錠剤1を破砕したが、いわゆるロールミルなどを用いて錠剤1を破砕してもよい。
また、本実施形態では、錠剤投入部3を設けたが、錠剤1を大量に破砕処理する必要がなければ、錠剤投入部3を省略して、破砕部5に錠剤1を逐次投入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 錠剤
10 錠剤シート
2 錠剤破砕装置
3 錠剤投入部
31 バケット
32 保持部
33 本体部
33d 押圧部
34 移動手段
35 ホッパ
5 破砕部
51 回転刃
7 液体噴射部
71 メインタンク
72 サブタンク
73 噴射ノズル
74 エア供給部
75 逆止弁
9 錠剤回収部
91 シュート
92 容器
93 固定用治具
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤に機械的な圧力を加えて破砕する破砕部と、前記破砕部に液体を噴射する液体噴射部と、を備えることを特徴とする錠剤破砕装置。
【請求項2】
前記破砕部は、水平軸周りに互いに逆向きに回転する一対の回転刃同士の間に前記錠剤を挟みこんで破砕するように構成され、
前記液体噴射部は、前記一対の回転刃のうち、前記錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側にそれぞれ液体を噴射することを特徴とする請求項1に記載の錠剤破砕装置。
【請求項3】
前記液体噴射部は、
前記液体を貯留するメインタンクと、
前記メインタンクの下流側に設けられたサブタンクと、
前記サブタンクの下流側に設けられた複数の噴射ノズルと、
前記サブタンクにエアを供給するエア供給手段と、
前記メインタンクとサブタンクとの間に設けられた逆止弁と、を有し、
前記複数の噴射ノズルは、前記一対の回転刃のうち、前記錠剤が挟みこまれる部分の回転方向上流側にそれぞれ液体を噴射するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の錠剤破砕装置。
【請求項4】
前記破砕部に前記錠剤を投入する錠剤投入部をさらに有し、
前記錠剤投入部は、
前記破砕部よりも下方において破砕すべき前記錠剤を貯蔵するバケットと、
前記バケットを傾動自在に保持する保持部と、
前記保持部を上下方向に移動自在に支持する本体部と、
前記保持部を上下方向に移動させる移動手段と、
前記破砕部の上方に設置され、前記バケットに貯蔵された前記錠剤を受け取って前記破砕部に供給するホッパと、を備え、
前記バケットは、前記保持部に対して傾動自在に連結された傾動部と、前記傾動部よりも前記ホッパ側に設けられた被押圧部と、を有し、
前記本体部は、前記保持部の上昇に伴って、前記被押圧部を下方に向かって押圧する押圧部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の錠剤破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245402(P2011−245402A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120120(P2010−120120)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(596101679)株式会社管製作所 (4)
【出願人】(510145990)有限会社シズカ技研 (2)
【Fターム(参考)】