説明

錠装置付引手

【課題】扉のシリンダ錠が外面に表われないようにカバーし、かつ扉を開閉する際の引手となる錠装置付引手を提供する。
【解決手段】扉の背面に設けた中板(17)に内部リング(11)を取り付け、この内部リング(11)の底板(10)に鍵挿入口(24)が存するようにシリンダ錠(20)を内部リング(11)に固定する。扉の前面側から、外部リング(9)を扉の開口部(4)に嵌合し、上記内部リング(11)にねじ着する。内部リング(11)と外部リング(9)により、引手凹部(5)が形成され、シリンダ錠(20)はその内方に隠される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤、電気機器用パイプスペース、点検口等の扉に好適に使用される錠装置付引手に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器用パイプスペースや配電盤等の扉の引手としては、頻繁に開閉されるものではないので、堀込引手や平面ハンドル等を用いていることが多い。この平面ハンドルは、点検時等にハンドルを引き起こして使用すればよいが、扉は施錠されないから、いたずら等を防止するためには、別にシリンダ錠等の錠装置を設けて扉を施錠しなければならない。そのような構成にすると、扉に上述の如きハンドルと錠装置を別々に設置する必要があるから、構成が複雑となり、経済的にも得にくい。
【0003】
ロッカーや家具等には、錠装置を有する引手が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この種の引手は、一般に、引手凹部の側方や上下位置にシリンダ錠を設け、該シリンダ錠の鍵挿入口を前面パネル側に露出させているから、手指を差し込むための引手凹部の大きさはシリンダ錠を設置したことにより狭められ、手指を確実に引手凹部に差し込むようにするには引手全体を大きく形成しなければならない。また、前面パネルに鍵挿入口が露出しているから、体裁もよくないし、引手凹部にドライバーやバール等を差し込んで錠装置が壊されるおそれもある。
【特許文献1】実開昭49−131293号公報(第2図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決課題は、扉に錠装置やハンドルを別々に設置する必要がなく、構成が簡単で経済的に得られ、また体裁も良く、壊されるおそれも少なく、手指を差し込む引手凹部を広く形成することができる錠装置付引手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、扉の前面に形成した開口部に嵌合し引手凹部を有する引手本体を設け、該引手凹部内の底面に鍵挿入口が存するように錠装置を引手本体内に設けた錠装置付引手が提供され、上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記のように構成され、引手本体に形成した引手凹部の底面に鍵挿入口が存するように錠装置を引手本体内に設けたから、引手と錠装置を別々に設ける必要がなく、経済的であり、また錠装置は引手本体によりカバーされ、該鍵挿入口が引手凹部内に隠されて扉の前面に顕れないようにでき、体裁が良く、いたずらされたり壊されたりしにくい。その上、引手凹部内には錠装置の本体部分が存在しないので、該引手凹部内が広くなり、引手本体を小さく形成しても手指を差し込むのに充分な大きさの引手凹部を確保することができ、使いやすい。したがって、配電盤、電気機器用パイプスペース、点検口等に好適に使用できるのは勿論、ロッカー、家具、抽き出し、建物用の各種扉、ドア等に適宜使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上述したように、本発明は種々の扉等に使用することができるが、図面は、本発明を配電盤、電気機器用パイプスペース、点検口等に適用した実施例を示している。図1を参照し、配電盤等のボックス本体(1)に開閉可能に設けた扉(2)の前面(3)には、開口部(4)が形成され、該開口部(4)に嵌合するように引手凹部(5)を形成した引手本体(6)が設けられている。
【0008】
上記引手本体(6)は、手指挿入口(7)を形成したフランジ(8)を前面に有する外部リング(9)と、引手凹部(5)の底面を形成する底板(10)を有する内部リング(11)を具備し、該外部リング(9)と内部リング(11)はそれぞれ略筒状に形成され、該筒状部を嵌合した状態で連結される。この筒状部の連結は、図に示す実施例では、外部リング(9)の筒状部(12)に雄ねじ(13)を設け、内部リング(11)の筒状部(14)に雌ねじ(15)を設けて内部リング(11)の筒状部(14)の内側に外部リング(9)の筒状部(12)をねじ係合するようにしてあるが、内部リング(11)の筒状部(14)の外側に外部リング(9)の筒状部(12)をねじ係合させたり、ねじ係合に替えて密嵌状態に嵌合したり、ピン等の止着具を用いて連結したり、その他適宜の手段で連結することもできる。また、外部リング(9)と内部リング(11)を一体成形して全体が略ハット形の引手本体としてもよい(図示略)。
【0009】
図に示す実施例では、引手凹部(5)やフランジ(8)の形状は、正面からみて、図1に示すように円形に表われるように形成してあるが、だ円形、四角形その他の多角形等適宜の形状に構成することもできる。なお、上記外部リング(9)のフランジ(8)の手指挿入口(7)の周縁に、引手凹部(5)の前面に突出するよう内方縁(16)を形成すると、扉を開く際に手指をかけやすくなり、かつ引手凹部(5)の内部を一層隠すことができる。
【0010】
上記扉(2)の裏側には、間隔をあけて中板(17)が固定されており、上記内部リング(11)には、該中板(17)にねじ(18)で固定するための取付孔(19)が設けられている。該内部リング(11)の底板(10)には、種々の錠装置、図に示す実施例ではシリンダ錠(20)を取り付けるための装着孔(21)を形成してあり、上記中板(17)には該シリンダ錠(20)の錠本体部(22)を回り止め状態で挿入するよう挿通孔(23)が形成されている。
【0011】
上記シリンダ錠(20)は、鍵挿入口(24)が引手凹部(5)の底面に存するように上記内部リング(11)の装着孔(21)及び中板(17)の挿通孔(23)に挿入され、中板(17)の背面から固定ナット(25)を該錠本体部(22)にねじ着して固定される。
【0012】
また、該シリンダ錠(20)には、公知のように鍵挿入口(24)に差し込んだ鍵(図示略)により回転されるカム軸(図示略)があり、該カム軸にカム(26)がワッシャ(27)及びねじ(28)により取り付けられている。該カム(26)は鍵の操作により解錠状態(29)と施錠状態(30)に回転され、施錠状態でボックス本体(1)に設けた受け孔(31)に入る。上記カムは使用態様により種々の形状に構成することができ、図に示す実施例では、扉が一端に設けた枢軸を中心に回転する開き扉であるので、上記カム(26)の先端は、上記受け孔(31)に挿入されるよう略板状に形成してあるが、例えば扉が引戸の場合には、該カムの先端に適宜形状の掛止部を形成し受け孔の縁部に係合するようにしてもよい(図示略)。
【0013】
上記引手本体(6)は、先ず内部リング(11)を中板(17)にねじ(18)で固定し、シリンダ錠(20)を内部リングの装着孔(21)及び中板(17)の挿通孔(23)に差し込んで固定ナット(25)で固定し、カム(26)をねじ(28)で固定し、外部リング(9)をフランジ(8)が扉の前面(3)に当接する位置まで上記内部リング(11)にねじ着すれば、簡単に扉に取り付けることができる。
【0014】
上記のように引手本体(6)を扉に取り付けると、上記シリンダ錠(20)の鍵挿入口(24)は引手凹部(5)の内方に隠され、外部に露出しないようにできる。該シリンダ錠(20)を操作する際は、引手凹部(5)の正面から鍵を鍵挿入口(24)に差し込んで、通常のように施錠、解錠すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示す正面図。
【図2】カムが解錠位置にある状態で引手本体のみを断面して示すA−A線断面図。
【図3】カムが施錠位置にある状態で引手本体のみを断面して示すB−B線断面図。
【図4】分解斜視図。
【符号の説明】
【0016】
2 扉
3 扉の前面
4 開口部
5 引手凹部
6 引手本体
8 フランジ
9 外部リング
10 底板
11 内部リング
16 内方縁
17 中板
20 シリンダ錠
24 鍵挿入口
26 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の前面に形成した開口部に嵌合し引手凹部を有する引手本体を設け、該引手凹部内の底面に鍵挿入口が存するように錠装置を引手本体内に設けた錠装置付引手。
【請求項2】
上記扉は裏側に中板を有し、上記引手本体の底面は該中板に固定され、上記錠装置は中板に回り止め状態で嵌挿している請求項1に記載の錠装置付引手。
【請求項3】
上記引手本体は、錠装置の装着孔を形成した底板を有する略筒状の内部リングと、該内部リングに嵌合し前面に手指挿込口を形成するフランジを有する外部リングを具備している請求項1または2に記載の錠装置付引手。
【請求項4】
上記内部リングと外部リングはねじ係合する請求項3に記載の錠装置付引手。
【請求項5】
上記外部リングのフランジは、手指挿入口の周縁に引手凹部の前面に突出する内方縁を有する請求項3に記載の錠装置付引手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−31666(P2008−31666A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204048(P2006−204048)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000138613)株式会社ユニオン (42)