説明

錠装置

【課題】 空掛けを防止して障子と枠との間を確実に施錠することが可能な錠装置を提供する。
【解決手段】 本発明の錠装置20によれば、障子12を閉めたつもりでも、半開き状態であると、ストライカ63がラッチ34に係合可能な係合可能領域に進入せず、トリガー35がラッチ34に係合した状態に保持されて、解錠位置から施錠位置へのラッチ34の回動操作が禁止される。そして、ストライカ63がラッチ34に係合可能な係合可能領域に進入した位置まで障子12を閉めると、トリガー35とラッチ34との係合が解除されて、解錠位置から施錠位置へのラッチ34の回動操作が許容され、施錠を行うことができる。これにより、空掛けが防止され、障子12と枠との間を確実に施錠することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子を閉めてから手動操作を行って施錠する錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の錠装置の代表例としてクレセント錠が知られている。クレセント錠は1対の障子の間を施錠する錠装置である。このクレセント錠では、施錠操作はしたが障子が半開き状態であるために施錠はされていない、所謂、「空掛け」が従来より問題になっていた。これに対し、空掛け防止機能を備えたクレセント錠が種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、上記クレセント錠が1対の障子の間を施錠するものであるのに対し、手動操作により障子と枠との間を施錠する錠装置も従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−158585号公報(段落[0007],[0008]図4)
【特許文献2】特開平10−220090号公報(段落[0027][0028]、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、障子と枠との間を施錠する錠装置では、クレセント錠に比べて空掛けが生じ難いため、空掛け防止機能を備えた錠装置が開発されていなかった。しかしながら、治安の悪化が進むに連れ、障子と枠との間を施錠する錠装置においても、空掛け防止機能を備えたものの開発が強く求められるようになってきている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、空掛けを防止して障子と枠との間を確実に施錠することが可能な錠装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る錠装置は、障子又はその障子を内側に備えた枠の一方に組み付けられ、他方に備えたストライカに対向配置される錠装置であって、施錠位置と解錠位置との間を回動可能なラッチと、そのラッチを手動で回動操作するためのラッチ操作部とを有し、障子が閉じた状態で、ラッチを解錠位置から施錠位置に回動操作してストライカに係合させて施錠する錠装置において、障子が開いた状態でラッチに係合して解錠位置から施錠位置へのラッチの回動操作を禁止すると共に、障子が閉じられる過程で、ストライカがラッチに係合可能な係合可能領域に進入したときに、障子又は枠のうちストライカを備えた側に設けられたトリガー当接部に押されて作動することでラッチとの係合を解除し、ラッチの回動操作を許容するトリガーを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の錠装置において、ラッチは、解錠位置から施錠位置に回動する過程で、係合可能領域内のストライカを錠装置側に引き寄せるように構成されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の錠装置において、ラッチが解錠位置から施錠位置に回動することを許容する第1位置と、施錠位置のラッチに係合してラッチを固定する第2位置との間で回動可能なポールと、ラッチが解錠位置から施錠位置に回動したことに連動して、ポールを第1位置から第2位置に回動させるラッチポール連動機構と、施錠位置のラッチとポールとの係合を手動操作により解除するためのポール操作部とを備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の錠装置において、ポール操作部を、直動可能とし、押圧操作されたポール操作部に押されて回動する回動アームをポールに設け、その回動アームと共にポール全体が回動してラッチとの係合が解除されるようにしたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の錠装置において、ラッチ、トリガー及びポールは、共通した板金ベースの一の面に回動可能に組み付けられ、板金ベースには、ラッチ用、トリガー用及びポール用の3種類の各取付部が線対称の2つの位置にそれぞれ設けられ、それら2つの位置の何れか一方を選択してラッチ、トリガー及びポールを組み付け可能としたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3乃至5の何れかに記載の錠装置において、ラッチ、トリガー及びポールを、共通した板金ベースの一の面に回動可能に組み付けると共に、一の面に直交して、障子又は枠の一方に備えた錠固定面に重ねて固定されるベース固定部を設け、ラッチ操作部は、錠固定面から突出するようにラッチの回動中心から一の面と略平行に延びたところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の錠装置において、板金ベースに、ラッチ操作部の回動領域を覆った筐体状のカバーを設け、カバーには、ラッチ操作部の回動軌跡に対応した円弧形状部が備えられ、その円弧形状部の先端円弧壁に形成されたスリットを通してラッチ操作部の先端部がカバーの外部に露出されたところに特徴を有する。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載の錠装置において、先端円弧壁に内側から重ねられた可動円弧部材をラッチ操作部に固定して設け、可動円弧部材は、ラッチ操作部の回動位置に拘わらず常時スリットを閉塞する長さに形成されたところに特徴を有する。
【0013】
請求項9の発明は、請求項8に記載の錠装置において、ラッチ操作部の先端に冠着された樹脂キャップを設け、樹脂キャップの基端部に可動円弧部材を一体形成したところに特徴を有する。
【0014】
請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかに記載の錠装置において、ポール操作部の側方をカバーで覆い、ポール操作部の先端部をカバーから外部に露出させたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
[請求項1の発明]
請求項1の錠装置によれば、障子を閉めたつもりでも、半開き状態であると、ストライカがラッチに係合可能な係合可能領域に進入せず、トリガーがラッチに係合した状態に保持されて、解錠位置から施錠位置へのラッチの回動操作が禁止される。そして、ストライカがラッチに係合可能な係合可能領域に進入した位置まで障子を閉めると、トリガーとラッチとの係合が解除されて、解錠位置から施錠位置へのラッチの回動操作が許容され、施錠を行うことができる。これにより、空掛けが防止され、障子と枠との間を確実に施錠することができる。
【0016】
[請求項2の発明]
請求項2の錠装置によれば、ラッチが、解錠位置から施錠位置に回動する過程で、係合可能領域内のストライカが錠装置側に引き寄せられ、これにより障子と枠との間で隙間風防止等を目的とした弾性部材を押し潰すことができる。
【0017】
[請求項3,4の発明]
請求項3の錠装置によれば、障子を閉めてラッチを解錠位置から施錠位置に回動操作すると、これに連動してポールが回動してラッチに係合し、ラッチを施錠位置に固定する。また、解錠するときには、ポール操作部を操作することで、施錠位置のラッチとポールとの係合が解除され、ラッチを施錠位置から解錠位置に戻すことができるようになる。ここで、請求項4の錠装置によれば、ポール操作部の押圧操作によりポールを回動させて、ポールとラッチとの係合を解除することができる。
【0018】
[請求項5の発明]
請求項5の錠装置によれば、板金ベースのうち線対称の2つの位置に、ラッチ用、トリガー用及びポール用の3種類の各取付部をそれぞれ設けたので、錠装置が取り付けられる位置に応じて、板金ベースにおける2つの位置の何れか一方を選択してラッチ、トリガー及びポールを組み付けることができる。即ち、板金ベース、ラッチ等の各部品を流用して、錠装置の取付位置に応じた仕様に錠装置を組み替えることができる。
【0019】
[請求項6の発明]
請求項6の錠装置は、障子又は枠の錠固定面に形成した孔に錠装置を挿入した状態にしてベース固定部を錠固定面に重ねて固定することで、障子又は枠に錠装置を固定することができる。
【0020】
[請求項7の発明]
請求項7の錠装置によれば、ラッチ操作部のうち操作に必要な先端部以外をカバーにより覆って見栄えを向上させることができる。
【0021】
[請求項8,9の発明]
請求項8の錠装置によれば、ラッチ操作部の回動位置に拘わらず、常時、スリットを可動円弧部材によって閉塞することができるので、見栄えがさらに向上する。ここで、可動円弧部材は、ラッチ操作部の先端に冠着された樹脂キャップの基端部に一体形成することが好ましい(請求項9の発明)。
【0022】
[請求項10の発明]
請求項10の錠装置によれば、ポール操作部のうち操作に必要な先端部以外をカバーにより覆って見栄えを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
図1に示した窓用サッシ10は、縦長矩形状の窓枠11(本発明の「枠」に相当する)の内側に障子12を備えてなり、その障子12は、縦長の矩形枠形状をなした框12Wの内側にガラス板12Gを張った構造になっている。また、障子12及び窓枠11の上辺部同士の間と下辺部同士の間には、障子支持アーム13,13(図1には、下辺部の障子支持アーム13のみが示されている)がそれぞれ差し渡されている。そして、窓枠11の室内面に取り付けられた開閉ハンドル14の操作によって障子支持アーム13,13が回動し、障子12が水平にスライドしながら回転して開閉される。また、障子12は開いた状態になると、障子12の両側部が室内側と室外とに分かれて突出する。なお、このような構造は、一般に、「縦辷り出し構造」と呼ばれている。
【0024】
本発明に係る錠装置20は、図1において窓枠11の右側の縦枠部材11Tに取り付けられている。これに対応して障子12の右側の縦框12Tにストライカベース60(図2参照)が取り付けられている。なお、これら錠装置20及びストライカベース60は、共に縦枠部材11T及び縦框12Tにおける上下方向の略中央に配置されている。
【0025】
図2には、縦枠部材11T及び縦框12Tの水平面で断面した断面図が示されている。縦枠部材11Tのうち障子12側を向いた内向壁部11Aからは障子接合壁11Bが垂直に起立している。そして、錠装置20は、障子接合壁11Bの基端側に形成された錠組付孔11Cに組み付けられている。また、障子接合壁11Bには、先端縁部に沿って隙間風防止等を目的とした帯状弾性部材11Dが取り付けられている。なお、障子接合壁11Bにおける室内側を向いた面(図2において下方を向いた面)が、本発明に係る「錠固定面」になっている。
【0026】
一方、縦框12Tは、中空の角柱形状をなし、縦框12Tの内向壁部12Aにはガラス板12Gの縁部を収容したガラス板収容溝12Mが形成されている。そして、縦框12Tの外向壁部12Bにストライカベース60が取り付けられている。また、縦框12Tの室外壁部12Cは、外向壁部12Bより縦枠部材11Tの内向壁部11A側に延長されて張り出し、ストライカベース60の室外側を覆っている。さらに、縦框12Tの室内壁部12Dは、図3に示すように、障子12を閉めた状態で縦枠部材11Tの障子接合壁11Bと対向して帯状弾性部材11Dに密着する。
【0027】
図4に示すように、ストライカベース60は、板金を扁平な「コ」の字形状に屈曲させてなり、水平方向で対向した1対の対向壁61,61を備えている。そして、これら対向壁61,61の先端間にストライカ63が差し渡されている。図2に示すように、ストライカ63は、円柱形状をなしかつその一端には扁平円板状のヘッド63Hが備えられている。そして、ストライカ63は、両対向壁61,61を貫通した状態にして、ヘッド部63Hと反対側の他端に螺子66を螺合することでストライカベース60に固定されている。
【0028】
図4に示すように、ストライカベース60のうち一方の対向壁61における基端部分からは、上方と下方とに向けて突片62,62が張り出している。また、各突片62の錠装置20側の縁部からはトリガー当接部64が直角曲げされている。さらに、各突片62には、水平方向に長くなった長孔65H,65Hがそれぞれ形成されている。そして、図2に示すように、一方の対向壁61を縦框12Tの外向壁部12Bに宛い、かつ、ストライカベース60の屈曲部側を室外壁部12C側に配置した状態にして、長孔65H,65Hに通した螺子65によりストライカベース60が縦框12Tに固定されている。これにより、障子12を閉じたときに、ストライカ63及びトリガー当接部64,64が、縦枠部材11Tの障子接合壁11Bに対向する。また、ストライカ63に螺合された螺子66は、縦框12Tの外向壁部12Bに覆われ、ストライカベース60を縦框12Tから外さない限り、ストライカベース60からストライカ63を離脱することができないようになっている。
【0029】
さて、錠装置20には、障子接合壁11Bに螺子止めされた板金ベース33が備えられ、この板金ベース33に、ラッチ34、トリガー35、ポール36及び樹脂製のカバー40が組み付けられている。図4に示すように、板金ベース33は、板金を所定の形状に打ち抜きかつ折り曲げてなり、上下方向で対称形状になっている。具体的には以下の通りである。板金ベース33は、全体的には窓枠11の内向壁部11A側と平行になった平板状をなし、錠組付孔11Cを貫通した状態で障子接合壁11Bに組み付けられている。以下、錠装置20に関しては、錠組付孔11Cを貫通する方向を「前後方向」といい、この方向における室外側を前側、室内側を後側という。
【0030】
図2に示すように、板金ベース33は、前後方向(図2の上下方向)における中間部分でクランク状に折り曲げられると共に、板金ベース33の後端縁は、全体に亘って直角曲げされ、錠組付孔11Cの開口全体を後方から覆う後端壁33Aを備えている。また、後端壁33Aの幅方向(図2の左右方向)の中央にはスリット33Bが形成され、このスリット33Bは、図5に示すように、後端壁33Aの上下の両端部寄り位置まで延びている。さらに、同図に示すように、後端壁33Aの上下の両端部は、前方に向けてクランク状に折り曲げられてベース固定部33C,33Cになっている。そして、障子接合壁11Bの室内面側から錠組付孔11Cに、板金ベース33の前側部分を挿入し、ベース固定部33C,33Cを障子接合壁11Bにおける開口縁に重ねて螺子止めすることで、板金ベース33が障子接合壁11Bに固定されている。また、上下の各ベース固定部33Cの上端部又は下端部からは、障子接合壁11Bから離れる側にカバー固定部33Dが直角曲げされており、このカバー固定部33Dにはカバー係止孔33Eが形成されている。
【0031】
板金ベース33の先端部には、上下方向の中央にストライカ受容凹部33Sが形成されている。また、板金ベース33には、円形座部51と長円形座部50とがストライカ受容凹部33Sを挟んで上下対称に2つずつ形成されている。これら円形座部51及び長円形座部50は、板金ベース33の一部を縦枠部材11Tの内向壁部11A側と反対側に隆起させてなる。また、円形座部51,51は、板金ベース33の上下の両端部における前寄り位置に配置され、各円形座部51の中心部分には取付孔51Aが形成されている。
【0032】
長円形座部50,50は、ストライカ受容凹部33Sの上部近傍と下部近傍とに配置され、長円形をなしかつその長軸が板金ベース33の後方に向かうに従ってストライカ受容凹部33Sから離れる側に傾斜している。そして、1対の取付孔50A,50Bが長円形座部50における長軸方向の両端に形成されている。
【0033】
トリガー35は、上側の円形座部51における取付孔51Aに支持ピン35Pにて回動可能に軸支され、図5に示したラッチ係合位置と図8に示したラッチ係合解除位置との間を回動する。トリガー35は、平板構造をなし、回動中心から障子検知アーム35T、バネ係止アーム35S及びラッチ係止アーム35Kを張り出して備えている。図5に示すように、バネ係止アーム35Sは、トリガー35がラッチ係合位置に位置したときに、斜め後側上方に向かって延びた状態になる。また、バネ係止アーム35Sの先端と板金ベース33から起立した突起TK1との間にはコイルバネ38が差し渡され、バネ係止アーム35Sの後方には、板金ベース33に一体形成されたストッパST2が起立している。そして、トリガー35は、コイルバネ38の弾発力によって図5の時計回り方向に付勢され、バネ係止アーム35SとストッパST2との当接によりラッチ係合位置に位置決めされている。
【0034】
障子検知アーム35Tは、トリガー35がラッチ係合位置に位置すると、斜め前側下方に向かって延びた状態になる。障子検知アーム35Tの先端部は半円形状をなし、障子12が閉じられると、障子12側の前記トリガー当接部64に障子検知アーム35Tの先端部が当接し、トリガー35が反時計回り方向に回動する。
【0035】
ラッチ係止アーム35Kは、トリガー35がラッチ係合位置に位置すると、斜め後側下方に向かって延びた状態になって、次述するラッチ34のトリガー係合部34Jに突き合わされる。また、ラッチ係止アーム35Kから板金ベース33に向けて可動ピン39Pが突出しており、この可動ピン39Pが板金ベース33に形成された円弧孔39H内に挿入されている。そして、トリガー35がラッチ係合位置からラッチ係合解除位置に回動すると、可動ピン39Pが円弧孔39H内を一端から他端に移動する。
【0036】
ラッチ34は、上側の長円形座部50における前側の取付孔50Aに、支持ピン34Pにて回動可能に軸支され、図5に示した解錠位置と図8に示した施錠位置との間を回動する。ラッチ34は、平板構造をなし、回動中心或いは回動中心の近傍からストライカ係合片34A、ポール係合片34B、ラッチ操作レバー34R(本発明の「ラッチ操作部」に相当する)を張り出して備えている。図5に示すように、ストライカ係合片34Aは、ラッチ34が解錠位置に位置すると、斜め前側下方に向かって延びた状態になり、ストライカ係合片34Aの先端部がストライカ63より上方に位置してストライカ受容凹部33Sの開口を開放する。また、ストライカ係合片34Aの上縁部は、板金ベース33から起立したストッパST1に当接し、これによりラッチ34が施錠位置に位置決めされている。
【0037】
ポール係合片34Bは、ラッチ34が解錠位置に位置すると、鉛直下方に向かって延びた状態になる。また、ポール係合片34Bには、先端部の後側半分を前側半分より回動半径を大きくする側に延長して、前向きの段差面を備えた先端係止部34Kが形成されている。
【0038】
ラッチ操作レバー34Rは、ラッチ34が解錠位置に位置すると、水平後方に延びた状態になる。また、ラッチ操作レバー34Rの長手方向の中間部分には、フック部34Fが形成されている。
【0039】
ラッチ34には、回動中心を挟んでポール係合片34Bと反対側にトリガー係合部34Jが形成されている。ここで、図5に示すように、ラッチ34が解錠位置に位置した状態で、トリガー35がラッチ係合位置に位置すると、トリガー35のラッチ係止アーム35Kと、ラッチ34のトリガー係合部34Jとが突き合わされた状態になって係合する。これにより、ラッチ操作レバー34Rの回動が禁止され、ラッチ34が解錠位置に保持される。これに対し、図7に示すように、トリガー35がトリガー当接部64との当接によりラッチ係合解除位置まで回動すると、ラッチ係止アーム35Kとトリガー係合部34Jとの係合が解除され、これによりラッチ34が解錠位置から施錠位置への回動を許容された状態になる。
【0040】
ポール36は、下側の長円形座部50における後側の取付孔50Bに、支持ピン36Pにて回動可能に軸支されている。ポール36は、平板構造をなし、回動中心からラッチ係合片36T、バネ係止片36S、ポール被操作レバー36R(本発明の「回動アーム」に相当する)を張り出して備えている。図5に示すように、バネ係止片36Sは、ラッチ34が解錠位置に位置すると、水平方向に延びた状態になり、そのバネ係止片36Sの先端と、前記したラッチ操作レバー34Rのフック34Fとの間にコイルバネ37が差し渡されている。そして、このコイルバネ37の弾発力によりポール36が図5における反時計回り方向に付勢されている。
【0041】
ラッチ係合片36Tの前縁部分は、後側上方に向かって延びた構造をなし、ラッチ34が解錠位置に位置すると、そのラッチ係合片36Tの前縁部分が、ラッチ34におけるポール係合片34Bの回動領域内に僅かに入った状態になる。また、このときポール係合片34Bの先端はラッチ係合片36Tの基端部に当接している。そして、ラッチ34が解錠位置から施錠位置に向かって回動する過程で、ラッチ係合片36Tは、先端係止部34Kに押されて時計回り方向に僅かに回動し、これに伴いラッチ操作レバー34Rとバネ係止アーム35Sとの間が広がってコイルバネ37が伸ばされる。また、ラッチ34が施錠位置に至ると、図8に示すように、先端係止部34Kがラッチ係合片36Tを乗り越え、ラッチ係合片36Tが反時計回り方向に僅かに回動して、ラッチ34の先端係止部34Kに係止する。これにより、ラッチ34が施錠位置に保持されると共にポール36もラッチ34への押し付けにより回動不能に固定される。この機構が、本発明に係る「ラッチポール連動機構」である。
【0042】
また、図5に示すように、ポール係合片34Bの先端がラッチ係合片36Tの基端部に当接した状態と、図8に示すように、ラッチ係合片36Tがラッチ34の先端係止部34Kに係止した状態とでは、ポール36の回動姿勢は同じになり、ポール被操作レバー36Rは、斜め後側下方に延びた状態になっている。ここで、ポール係合片34Bの先端がラッチ係合片36Tの基端部に当接した状態のポール36の位置は、本発明の「第1位置」に相当し、ラッチ係合片36Tがラッチ34の先端係止部34Kに係止した状態のポール36の位置は、本発明の「第2位置」に相当する。
【0043】
図4に示すように、板金ベース33の後部には、筐体状のカバー40が取り付けられている。カバー40は、図2に示すように、水平横方向(図2の左右方向)に扁平になっており、板金ベース33の後端壁33Aを内側に丁度収容可能な幅をなしている。そして、図5に示すように、カバー40の上面壁と下面壁とから内側に突出させた係止突起40T,40Tを、板金ベース33に備えた前記カバー固定部33Dのカバー係止孔33Eに係止して、カバー40が板金ベース33に固定されている。
【0044】
図4に示すように、カバー40には、ラッチ操作レバー34Rの回動軌跡に対応した円弧形状部40Aが備えられ、その円弧形状部40Aの先端円弧壁40Bに形成されたスリット41を通してラッチ操作レバー34Rの先端部がカバー40の外部に露出されている。そして、図5に示すようにラッチ34が解錠位置に位置すると、ラッチ操作レバー34Rがスリット41の下端部に配置され、図8に示すようにラッチ34が施錠位置に位置すると、ラッチ操作レバー34Rがスリット41の上端部に配置される。
【0045】
カバー40を板金ベース33に組み付ける前に、ラッチ操作レバー34Rの先端部には樹脂キャップ45が冠着されている。図5に示すように、樹脂キャップ45には、カバー40の先端円弧壁40Bに内側から重ねられる可動円弧部材46が一体形成されている。可動円弧部材46は、樹脂キャップ45の上下両方向に延び、ラッチ操作レバー34Rの回動位置に拘わらず、常時、スリット41全体を内側から閉塞している。
【0046】
カバー40の下端部における内部には、筒体47が前後方向に延びた状態で収容されている。筒体47の後端部がカバー40の壁部に固定されて、その壁部に貫通形成された孔を介して筒体47の内部空間が連通している。筒体47の前端部は、板金ベース33における後端壁33Aに突き当てられ、スリット33Bを介して筒体47の内部空間が後端壁33Aより前方に開放している。そして、筒体47内にポール操作部材42が挿通されている。
【0047】
ポール操作部材42は、円柱棒体の前端部に溝壁42Mを備えた構造になっている。溝壁42Mは、前方と上方とに開放した凹部を有し、その凹部にポール36におけるポール被操作レバー36Rの先端が収容されている。ポール操作部材42の後端寄り位置には、フランジ42Fが設けられ、ポール操作部材42の中間部分に挿通したコイルバネ43がフランジ42Fと後端壁33Aとの間に挟まれている。ポール操作部材42の後端部は、ポール操作部材42の中間部分より小径になっており、カバー40の外側に露出している。そして、図8に示すようにポール36とラッチ34とが係合して共に回動不能となった場合に、ポール操作部材42におけるカバー40からの露出部分を押圧操作することで、ポール36が回動して、ポール36とラッチ34とが係合が解除される。
【0048】
次に、上記構成からなる本実施形態の動作を説明する。
障子12が開いた状態では、図5に示すように、ラッチ34が解錠位置に位置すると共にトリガー35がラッチ係合位置に位置する。そして、トリガー35のラッチ係止アーム35Kと、ラッチ34のトリガー係合部34Jとが係合し、これによりラッチ操作レバー34Rの回動操作が禁止され、ラッチ34の解錠位置に保持される。
【0049】
錠装置20を施錠するには、障子12を閉じてから、ラッチ操作レバー34Rを上方に引き上げるように回動操作する。詳細には、障子12が閉じられていくと、その途中で図6に示すようにストライカ63がストライカ係合片34Aを通過して、板金ベース33のストライカ受容凹部33S内に進入する。板金ベース33がストライカ受容凹部33Sに進入した直後の状態で、仮にラッチ34が回動されたとすると、ストライカ係合片34Aの先端がストライカ63に例えば摺接して通過し、「空掛け」になり得る。すると、ラッチ操作レバー34Rが上端に移動していることにより、障子12が施錠されたと誤解され得る。
【0050】
しかしながら、本実施形態の錠装置20によれば、板金ベース33がストライカ受容凹部33Sに進入した直後の状態では、トリガー35のラッチ係止アーム35Kと、ラッチ34のトリガー係合部34Jとの係合により、ラッチ操作レバー34Rの回動操作が禁止されているので、操作者は障子12が半開き状態であることに気付く。そして、障子12を閉じる操作がさらに行われると、図7に示すように、ストライカ63がラッチ34に係合可能な係合可能領域に進入すると共に、トリガー当接部64がトリガー35の障子検知アーム35Tを押圧し、トリガー35がラッチ係合位置からラッチ係合解除位置に回動する。これにより、トリガー35のラッチ係止アーム35Kと、ラッチ34のトリガー係合部34Jとの係合が解除され、ラッチ操作レバー34Rの回動操作が許容された状態になる。
【0051】
この状態で、図8に示すように、ラッチ操作レバー34Rを上方に向けて回動操作し、ラッチ34を解錠位置から施錠位置に回動させると、その過程でストライカ係合片34Aによりストライカ63が錠装置20側に引き寄せられる。この引き寄せ作用により、障子12の縦框12Tが窓枠11の縦枠部材11Tに接近し、図3に示すようにそれら縦框12Tと縦枠部材11Tとの間で帯状弾性部材11Dが押し潰される。そして、ラッチ34が施錠位置に至ると、図8に示すように、ラッチ34のポール係合片34Bとポール36のラッチ係合片36Tとが係合し、ラッチ34が施錠位置に保持される。以上により、錠装置20の施錠操作が完了する。
【0052】
一方、錠装置20を解錠するには、ポール操作部材42を押圧操作すればよい。これにより、図9に示すように、ラッチ34のポール係合片34Bとポール36のラッチ係合片36Tとの係合が解除される。すると、コイルバネ37の弾発力によってラッチ34が解錠位置に向かって回動し、ラッチ34とストッパST1とが当接して、ラッチ34が解錠位置に位置決めされる。これにより、錠装置20の解錠操作は完了する。なお、この状態で障子12を開けば、トリガー当接部64がトリガー35から離れ、トリガー35がコイルバネ38の弾発力によってラッチ係合位置に戻される。
【0053】
このように本実施形態の錠装置20によれば、障子12を閉めたつもりでも、半開き状態であると、ストライカ63がラッチ34に係合可能な係合可能領域に進入せず、トリガー35がラッチ34に係合した状態に保持されて、解錠位置から施錠位置へのラッチ34の回動操作が禁止される。そして、ストライカ63がラッチ34に係合可能な係合可能領域に進入した位置まで障子12を閉めると、トリガー35とラッチ34との係合が解除されて、解錠位置から施錠位置へのラッチ34の回動操作が許容され、施錠を行うことができる。これにより、空掛けが防止され、障子12と窓枠11との間を確実に施錠することができる。また、本実施形態の錠装置20によれば、板金ベース33のうち縦枠部材11Tの内向壁部11Aと反対側の一の面にラッチ34,トリガー35およびポール36等の各部品を配置したので、図3に示すように、障子12と窓枠11との間の隙間における外部の開放口R1(以下、「障子隙間開口R1」という)に対し、ラッチ34等が板金ベース33によって隠され、これにより不正解錠を防止することができる。
【0054】
ところで、上記した窓用サッシ10とは逆方向に障子12が回動する窓用サッシ10に錠装置20を取り付ける場合には、窓枠11において錠装置20の取り付け位置が左右逆になる。このような場合も、本実施形態の錠装置20によれば、障子隙間開口R1に対してラッチ34等が板金ベース33によって隠される配置にすることができる。即ち、本実施形態の錠装置20によれば、板金ベース33のうち線対称の2つの位置に、ラッチ34用、トリガー35用及びポール36用の3種類の各取付孔50A,50B,51Aをそれぞれ設け、さらに、トリガー35、ラッチ34及びポール36が何れも平板構造をなしているので、図10に示すように、上述した錠装置20に対し、所定の鉛直面を基準にして面対称になるように錠装置20を構成部品の全てを組み替えることができる。即ち、左右が逆の仕様の錠装置20を共通部品で構成することができ、コストを低減することが可能になる。
【0055】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0056】
(1)前記実施形態の錠装置20は、縦辷り出し構造の障子12の施錠に用いられていたが、図11に示すように、スライド構造の障子12Xの施錠に錠装置20を用いてもよい。この場合、同図に示すように、錠装置20を障子12Xに取り付け、ストライカ63を枠11Xに設けてもよいし、逆に錠装置20を枠11Xに取り付け、ストライカ63を障子12Xに取り付けてもよい。
【0057】
(2)本発明の技術的範囲には含まれないが、本発明の原理を利用し、障子を閉じたときに、ラッチがストライカに押されることで解錠位置から施錠位置に回動する構成にしてもよい。具体的には、図12及び図13に示した錠装置20Xのように、ラッチ34にバネ係止片34Cを設けて前記実施形態のラッチ操作レバー34Rの代わりとし、このバネ係止片34Cとポール36のバネ係止片36Sとの間にコイルバネ37を差し渡した構成にする。そして、第1実施形態のラッチ34に比べて、ポール係合片34Bの前縁部をストライカ係合片34A側に接近させた構造にしておく。この構成により、障子を閉じたときに、ストライカ63がストライカ係合片34Aとポール係合片34Bとの間に受容され、その状態でストライカ63が錠装置20に接近することで、ラッチ34を解錠位置から施錠位置に回動させ、ポール36が回動してラッチ34と係合することにより障子と枠との間を施錠することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を適用した実施形態に係る縦辷り出し構造のサッシの斜視図
【図2】障子を開いた状態における縦框と縦枠部材の断面図
【図3】障子を閉じた状態における縦框と縦枠部材の断面図
【図4】錠装置の斜視図
【図5】解錠状態の錠装置の側断面図
【図6】解錠状態の錠装置の側断面図
【図7】解錠状態の錠装置の側断面図
【図8】施錠状態の錠装置の側断面図
【図9】施錠状態の錠装置の側断面図
【図10】左右を逆にした仕様の錠装置の斜視図
【図11】本発明に係る錠装置が取り付けられたスライド構造の障子の正面図
【図12】本発明の原理を利用した錠装置における解錠状態の断面図
【図13】その錠装置における施錠状態の断面図
【符号の説明】
【0059】
11 窓枠(枠)
12,12X 障子
20,20X 錠装置
33 板金ベース
33C ベース固定部
34 ラッチ
34J トリガー係合部
34R ラッチ操作レバー(ラッチ操作部)
35 トリガー
35T 障子検知アーム
36 ポール
36R ポール被操作レバー(回動アーム)
40 カバー
42 ポール操作部材
45 樹脂キャップ
46 可動円弧部材
50A,50B,51A 取付孔
63 ストライカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子又はその障子を内側に備えた枠の一方に組み付けられ、他方に備えたストライカに対向配置される錠装置であって、施錠位置と解錠位置との間を回動可能なラッチと、そのラッチを手動で回動操作するためのラッチ操作部とを有し、前記障子が閉じた状態で、前記ラッチを前記解錠位置から前記施錠位置に回動操作してストライカに係合させて施錠する錠装置において、
前記障子が開いた状態で前記ラッチに係合して前記解錠位置から前記施錠位置への前記ラッチの回動操作を禁止すると共に、前記障子が閉じられる過程で、前記ストライカが前記ラッチに係合可能な係合可能領域に進入したときに、前記障子又は前記枠のうち前記ストライカを備えた側に設けられたトリガー当接部に押されて作動することで前記ラッチとの係合を解除し、前記ラッチの回動操作を許容するトリガーを備えたことを特徴とする錠装置。
【請求項2】
前記ラッチは、前記解錠位置から前記施錠位置に回動する過程で、前記係合可能領域内のストライカを前記錠装置側に引き寄せるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記ラッチが前記解錠位置から前記施錠位置に回動することを許容する第1位置と、前記施錠位置の前記ラッチに係合して前記ラッチを固定する第2位置との間で回動可能なポールと、
前記ラッチが前記解錠位置から前記施錠位置に回動したことに連動して、前記ポールを前記第1位置から前記第2位置に回動させるラッチポール連動機構と、
前記施錠位置の前記ラッチと前記ポールとの係合を手動操作により解除するためのポール操作部とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠装置。
【請求項4】
前記ポール操作部を、直動可能とし、押圧操作された前記ポール操作部に押されて回動する回動アームを前記ポールに設け、その回動アームと共に前記ポール全体が回動して前記ラッチとの係合が解除されるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の錠装置。
【請求項5】
前記ラッチ、前記トリガー及び前記ポールは、共通した板金ベースの一の面に回動可能に組み付けられ、前記板金ベースには、前記ラッチ用、前記トリガー用及び前記ポール用の3種類の各取付部が線対称の2つの位置にそれぞれ設けられ、それら2つの位置の何れか一方を選択して前記ラッチ、前記トリガー及び前記ポールを組み付け可能としたことを特徴とする請求項3又は4に記載の錠装置。
【請求項6】
前記ラッチ、前記トリガー及び前記ポールを、共通した板金ベースの一の面に回動可能に組み付けると共に、前記一の面に直交して、前記障子又は前記枠の一方に備えた錠固定面に重ねて固定されるベース固定部を設け、
前記ラッチ操作部は、前記錠固定面から突出するように前記ラッチの回動中心から前記一の面と略平行に延びたことを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の錠装置。
【請求項7】
前記板金ベースに、前記ラッチ操作部の回動領域を覆った筐体状のカバーを設け、前記カバーには、前記ラッチ操作部の回動軌跡に対応した円弧形状部が備えられ、その円弧形状部の先端円弧壁に形成されたスリットを通して前記ラッチ操作部の先端部が前記カバーの外部に露出されたことを特徴とする請求項6に記載の錠装置。
【請求項8】
前記先端円弧壁に内側から重ねられた可動円弧部材を前記ラッチ操作部に固定して設け、前記可動円弧部材は、前記ラッチ操作部の回動位置に拘わらず常時前記スリットを閉塞する長さに形成されたことを特徴とする請求項7に記載の錠装置。
【請求項9】
前記ラッチ操作部の先端に冠着された樹脂キャップを設け、
前記樹脂キャップの基端部に前記可動円弧部材を一体形成したことを特徴とする請求項8に記載の錠装置。
【請求項10】
前記ポール操作部の側方を前記カバーで覆い、前記ポール操作部の先端部を前記カバーから外部に露出させたことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−214081(P2006−214081A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24766(P2005−24766)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)