説明

錠装置

【課題】 施解錠時に発生する騒音を低減し得る錠装置を提供する。
【解決手段】 錠箱内で水平方向に移動可能に案内されたデッドボルト3と、一端を錠箱1内に枢支され、デッドボルト3と共にストライクの係入孔に共に係入できるように併設されたカマ片とを有し、上記デッドボルト3は、その長さ方向に沿って形成された案内長孔4と、錠箱の厚さ方向に延在するガイド杆5との係合によって、錠箱内でフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されたものにおいて、デッドボルト3に、案内長孔4と同幅のガイド溝を有する支持ブロック21を案内長孔4とガイド溝23とが重なり合うように装着し、このガイド溝の両端に、一部が案内長孔内に覗く緩衝体25を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠装置に係り、特に、施解錠時に発生する騒音を低減し得る錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、後記特許文献1を以て、新規な建具用錠箱を提案した。
この特許文献1に記載された建具用錠箱には錠装置が組込まれているが、この錠装置は、錠箱内で水平方向に移動可能に案内されたデッドボルトと、一端を錠箱内に枢支され、デッドボルトと共にストライクの係入孔に共に係入できるように併設された鎌片とを有するもので、この錠装置は従来周知である。
【特許文献1】特開2008−002058
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記錠装置におけるデッドボルトは、その長さ方向に沿って形成された案内長孔(図2に符号4で示す)と、錠箱の支柱を兼ねるガイド杆5との係合による案内機構、及び、フロント板に開口したデッドボルトの出没孔に案内されてフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されている。
【0004】
ところが、上記錠装置は、施解錠毎に、上記案内長孔の端部とガイド杆とが衝突し、騒音が発生する、という不都合がある。
【0005】
そこで、この発明は、施解錠時に騒音が発生しない錠装置を提供し、以て上記した不都合を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、デッドボルトと、一端を錠箱内に枢支され、デッドボルトと共にストライクの係入孔に共に係入できるように併設されたカマ片とを有し、上記デッドボルトは、その長さ方向に沿って形成された案内長孔と、錠箱の厚さ方向に延在するガイド杆との係合によって、錠箱内でフロント板に垂直な前後方向に移動可能に支承されると共に、シリンダ錠又はサムターンによって回動操作されるデッドカムの作動に伴って、その先端が錠箱のフロント板から突出入され、また、デッドボルトとカマ片はデッドボルトに突設した作動ピンとカマ片に設けた長孔の組でなる連係手段で連結されたものにおいて、デッドボルトに、案内長孔と同幅のガイド溝を有する支持ブロックを案内長孔とガイド溝とが重なり合うように装着し、このガイド溝の両端に、一部が案内長孔内に覗く緩衝体を装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成された請求項1に記載の発明は、錠装置の施解錠毎に、ガイド溝の両端に装着された一対の緩衝体の何れか一方がガイド杆と衝突するが、この衝突の際緩衝体の弾性変形や振動、或いは振動に起因する緩衝体内の内部摩擦により衝撃が緩衝され、騒音の発生を無くし、或いは低減させ得る、という所期の効果を奏する。
【0008】
また、ガイド杆に緩衝体を巻装する、という構成と比較して、デッドボルトの行程の最後においてのみガイド杆と緩衝体が接触するのみで、作動中は両者が接触しないので、両者の接触による摩擦の発生がなく、デッドボルトの作動の円滑性が損われない、等種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
デッドボルトに、案内長孔と同幅のガイド溝を有する支持ブロックを案内長孔とガイド溝とが重なり合うように装着し、このガイド溝の両端に、一部が案内長孔内に覗く緩衝体を装着したので、デッドボルトの作動に悪影響を及ぼさないデッドボルトの緩衝装置を構成することができた。
【実施例1】
【0010】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1及び図2において符号1は錠箱を、符号2はフロント板をそれぞれ示す。
【0011】
上記錠箱1内にはデッドボルト3が、フロント板2な垂直な前後方向(図2で左右方向)に移動可能に案内されている。
【0012】
図示の実施例では、図1及び図3に示すように、デッドボルト3は厚板を断面が上に開いた略コ字形に折曲して形成した枠材で、フロント板2に開口した付番しないデッドボルト開口と、デッドボルトの内端部にその長さ方向に沿って形成された案内長孔4(図2及び図4参照)及び錠箱の支柱を兼ねるガイド杆5(図2参照)との係合による案内手段とによって前後方向に移動可能に案内されている。
【0013】
一方、カマ片6は3枚の板材を重合させて形成してあり(図1参照)、図2に示すように、その一端(上端)は錠箱1内に枢軸7で枢支してあり、他端は該カマ片6の前方への揺動により錠箱1の開口から突出し図示しないストライクの係入孔に同時に突出するデッドボルト3と共に係入するようにしてある。
【0014】
カマ片6の大部分は横断面コ字状のデッドボルト3の空間部内に嵌まり合うように収納されており、デッドボルト3とカマ片6とは、デッドボルト3に突設した作動ピン8とカマ片6に設けた長孔9で構成された連係手段により連結されている。
【0015】
他方、符号11は錠箱1内の後方部に支承されたデッドカムで、その一端部の作動アーム12はデッドボルト3の後端部に形成された従動切欠13に係合させてある。そして、デッドカム11は錠箱1の側板に突設した前後で対をなすストッパ14、14の間を揺動する。
【0016】
更に、デッドカム11は、錠箱1に装着されたシリンダ錠の内筒及びサムターン(いずれも図示しない)に連係させてあり、シリンダ錠に差し込んだ鍵又はサムターンを時計方向或いは半時計方向に回動させると、デッドカム11はこれに従動して回動し、図2で時計方向に回動してデッドボルト3をフロント板から突出させて施錠し、或いは反時計方向に回動して解錠する。
【0017】
同時に、デッドボルト3に連係手段を介して連結されているカマ片6は、枢軸7を中心として揺動し、その他端(自由端)を錠箱1のフロント板から同様に突出入する。
【0018】
なお、図2において符号15はクリックレバーを示し、このクリックレバー15はデッドカム11の揺動の終端においてこれにクリック感を付与するものであるが、この発明と関係がないので、更に詳細な説明は省略する。
【0019】
また、図2において符号16は前後方向に延在するトリガー杆を示し、このトリガー杆16は、後端部に前後方向に延在するカム溝17を開口させる共に、錠箱1内において前後方向に移動可能に案内されている。
【0020】
一方、上記トリガー杆16と重合するようにして、前端を揺動可能に支持案内された係止杆18が設けられていて、この係止杆に植設された従動ピン19が上記カム穴17に摺動可能に係合している。
【0021】
上記した構成により、開扉時トリガー杆16がフロント板2から突出しているときには、従動ピン19がカム穴17によって上方に押上げられ、係止杆18の後端が付番しないデッドボルト3の切欠に係合するので、合鍵又はサムターンによるデッドボルトの突出を防止できる。
【0022】
なお、このトリガー装置は本願発明の要旨ではないので、更に詳細な説明は省略する。
【0023】
本願発明による錠装置の特徴的な構成は、次に述べるように、デッドボルト3に緩衝体が装着されていることである。
【0024】
図示の実施例では、緩衝体は支持ブロックを介してデッドボルト3に装着されている。
【0025】
上記支持ブロック21は、図4乃至図6に示すように、略コ字形に折曲された板材よりなるデッドボルト3(図3参照)の内部空間に収納できる厚さの直方体で、その材質を例えば合成樹脂とすれば、成形加工が簡単である。
【0026】
図4に示す支持ブロック21の正面には、結合ピンを通すためのピン穴22と、前記案内長孔4と同幅のガイド溝23とが夫々形成されている。なお、ピン穴22及びガイド溝23は夫々支持ブロックを厚さ方向に貫通している。
【0027】
また、上記ガイド溝23の両端には夫々切欠24が形成されており、この切欠24に、例えばゴム材で構成された緩衝体25(図7及び図8参照)が嵌め込まれている。
【0028】
なお、四角いブロック状の緩衝体には、図7に示す正面の上下面に係合溝26、26が形成されており、これらの係合溝26、26を図4に示す支持ブロックの切欠24を保つ上下の端縁に摺接させるようにして緩衝体25、25を支持ブロックに嵌め込む。
【0029】
上記のようにして緩衝体25、25を装着した支持ブロック21をデッドボルトの内部空間に嵌め込み、固定ピン27(図9参照)をデッドボルトにかしめ付けることにより、支持ブロック21を介してデッドボルト3に緩衝体25、25を装着する。
【0030】
なお、このとき緩衝体25の一部が案内長孔4内に覗くように、緩衝体の寸法を定めるものとする。具体的には、図7に示す緩衝体25の左右方向の寸法を適切に設定する。
【0031】
また、図6に示すように支持ブロック21の下面に位置決め突起28、28を突設し、これらをデッドボルトの下面に開口した位置決め孔29、29(図10参照)の夫々に嵌め合せると、支持ブロック21が確りとデッドボルト3に装着される。
【0032】
更にまた、緩衝体25の図8における左右方向の寸法を適切に設定することにより、緩衝体25が支持ブロックの切欠24から抜け出ようとする動きがデッドボルト3の内面により防止される。
【0033】
上記のように構成されたこの発明の一実施例による錠装置は、図2に示す解錠状態から図9に示す施錠状態に致る施錠行程の終端においても、また、解錠行程の終端においても、デッドボルト3の急激な停止時、ガイド杆5が緩衝体25と衝突するので、後者の弾性変形、或いは粘弾性変形により衝突エネルギーの大部分が吸収され、衝突に起因する騒音の発生が無くなり、或いは大幅に緩和される。
【0034】
なお、本発明においては、緩衝体25を接着ではなく、係合溝26と支持ブロックの切欠24との形状係合によってデッドボルトに装着するようにしたので、組立が簡単になるばかりでなく、緩衝体の弾性変形が拘束されないので緩衝効率が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】錠箱の正面図。
【図2】この発明の一実施例による錠装置の側面図で、解錠状態を示す。
【図3】デッドボルトの横断面図。
【図4】支持ブロックの正面図。
【図5】支持ブロックの断面図。
【図6】支持ブロックの下面図。
【図7】緩衝体の正面図。
【図8】緩衝体の側面図。
【図9】図2と同様の錠装置の側面図で、施錠状態を示す。
【図10】デッドボルトの下面図。
【符号の説明】
【0036】
1 錠箱
2 フロント板
3 デッドボルト
4 案内長孔
5 ガイド杆
6 カマ片
7 枢軸
8 作動ピン
9 長孔
11 デッドカム
12 作動アーム
13 従動切欠
14 ストッパ
15 クリックレバー
16 トリガー杆
17 カム穴
18 係止杆
19 従動ピン
21 支持ブロック
22 ピン穴
23 ガイド溝
24 切欠
25 緩衝体
26 係合溝
27 固定ピン
28 位置決め突起
29 位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッドボルトと、一端を錠箱内に枢支され、デッドボルトと共にストライクの係入孔に共に係入できるように併設されたカマ片とを有し、上記デッドボルトは、その長さ方向に沿って形成された案内長孔と、錠箱の厚さ方向に延在するガイド杆との係合によって、錠箱内でフロント板に垂直な前後方向に移動可能に支承されると共に、シリンダ錠又はサムターンによって回動操作されるデッドカムの作動に伴って、その先端が錠箱のフロント板から突出入され、また、デッドボルトとカマ片はデッドボルトに突設した作動ピンとカマ片に設けた長孔の組でなる連係手段で連結されたものにおいて、デッドボルトに、案内長孔と同幅のガイド溝を有する緩衝ブロックを案内長孔とガイド溝とが重なり合うように装着し、このガイド溝の両端に、一部が案内長孔内に覗く緩衝体を装着したことを特徴とする錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−191498(P2009−191498A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32380(P2008−32380)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)