説明

錠装置

【課題】ハンドルを操作せずに障子を閉めた際に、従来と比較して錠装置を解錠状態に保持することができ、締め出しの発生を抑制することが可能な錠装置を提供する。
【解決手段】本発明の錠装置20は、締め出しの発生を抑制するために、ハンドル35を操作しない限り、第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとの当接とによってポール43の回動が規制されるようになっている。そして、部品の加工形状のばらつきにより、第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとの当接が不十分であったとしても、ラッチ42が係合解除位置から係合位置に回動する間に、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vに備えたクリアランス生成突起42Xに乗り上がって第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとの間にクリアランスC1を発生させ、第2回動規制レバー45Aを第2回動規制面43Wと十分に当接可能な位置まで移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子の戸先框の内向き面に取り付けられ、障子支持枠に固定されたストライカに係合して施錠される錠装置に関し、特に、上下方向に延びたレバー構造のハンドルを回動可能に備え、ハンドルを障子が閉じる側に傾けた閉操作位置に保持して障子を閉じたことを条件にして施錠される一方、ハンドルを障子が開く側に傾けた開操作位置に向かって回動させたことを条件にして解錠されると共に、常には、ハンドルが開操作位置と閉操作位置との間の中立位置に配置されるように付勢された錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の錠装置は、図19〜図23に示すように、互いに平行な回動軸を中心に回動可能なラッチ1、ポール2及びハンドル連動盤3を備えている。ラッチ1は、ストライカ4に係合した係合位置(図23参照)とその係合を解除した係合解除位置(図19〜図21参照)との間を回動する。ポール2は、ラッチ1の回動を許容するラッチ回動許容位置(図19参照)と、ラッチ1の回動を規制するラッチロック位置(図23参照)との間を回動する。ハンドル連動盤3は、ハンドル5と連動して中立位置(図19参照)と閉操作位置(図20参照)との間を回動する。そして、ラッチ1は、引っ張りバネ6によって係合解除位置に付勢され、ポール2は、引っ張りバネ6によってラッチロック位置に付勢され、ハンドル5及びハンドル連動盤3は、トーションバネ7によって中立位置に付勢されている。
【0003】
また、ポール2の側面には、ラッチ1側に第1回動規制面2A、ハンドル連動盤3側に第2回動規制面2Bが備えられている。
【0004】
ラッチ1には、ポール2に向かって突出した第1回動規制レバー1Aが備えられている。この第1回動規制レバー1Aは、ラッチ1が係合解除位置から係合位置の手前まで回動する間は、図19及び図22に示すように第1回動規制面2Aに突き合わされてポール2をラッチ回動許容位置に保持し、ラッチ1が係合位置に至ったときに、図23に示すように、第1回動規制面2Aから外れて、ポール2がラッチロック位置へと回動することを許容する。
【0005】
ハンドル連動盤3には、ポール2に向かって突出した第2回動規制レバー3Aが備えられている。この第2回動規制レバー3Aは、ハンドル連動盤3が中立位置から閉操作位置の手前まで回動する間は、図19に示すように、第2回動規制面2Bに突き合わされてポール2がラッチロック位置へと回動することを規制し、ハンドル連動盤3が閉操作位置に至ったときに、図20に示すように、第2回動規制面2Bから外れて、ポール2がラッチロック位置へと回動することを許容する。
【0006】
この錠装置は、障子を開けた状態では、ハンドル5とハンドル連動盤3は中立位置に保持され、ラッチ1は係合解除位置に配置され、ポールは第1と第2の回動規制レバー1A,3Aにより回動を規制されてラッチ回動許容位置に保持される。そして、ハンドル5とハンドル連動盤3とを閉操作位置に傾けて保持して障子を閉じると、ハンドル連動盤3の第2回動規制レバー3Aがポール2の第2回動規制面2Bから外れ、先ずは、第2回動規制レバー3Aによるポール2の回動規制が解除された状態になる。この状態で、ラッチ1がストライカ4に押されて係合解除位置から係合位置まで回動し、ラッチ1の第1回動規制レバー1Aがポール2の第1回動規制面2Aから外れると、第2回動規制レバー3Aによるポール2の回動規制も解除され、ラッチロック位置に回動し、錠装置が施錠される。
【0007】
これに対し、ハンドル5を操作せずに、ハンドル5及びハンドル連動盤3を中立位置に保持して障子を閉じると、第2回動規制レバー3Aによるポール2の回動規制が解除されない状態で、第1回動規制レバー1Aによるポールの回動規制のみが解除されることになる。このため、ラッチ1がストライカ4に押されて係合解除位置から係合位置まで回動しても、ポール2がラッチロック位置に回動することはなく、錠装置は施錠されない(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−303183号公報(請求項1、第1図、第5図、第6図、第10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した錠装置では、障子を開けた状態で、図20に示すように、ハンドル5を閉操作位置に回動操作してから手を離すと、図19に示すように、トーションバネ7の付勢力によってハンドル5及びハンドル連動盤3が中立位置に戻るように設計されている。ところが、ラッチ1、ポール2、ハンドル連動盤3等の部品形状のばらつきにより、図21及び図22に示すように、ハンドル連動盤3の第2回動規制レバー3Aがポール2の第2回動規制面2Bにおける端部といった不正規位置に係止し、トーションバネ7の付勢力では、ハンドル5及びハンドル連動盤3が中立位置に戻り切らない場合がある。このような錠装置では、障子の外側でハンドル5を操作せずに障子を閉めたときに、図23に示すようにポール2がラッチロック位置に回動して錠装置が施錠され、室内に入ることができなくなるという、所謂、締め出しが起こり得た。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ハンドルを操作せずに障子を閉めた際に、従来と比較して錠装置を解錠状態に保持することができ、締め出しの発生を抑制することが可能な錠装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る錠装置は、障子の戸先框の内向き面に取り付けられ、ストライカに係合して施錠される錠装置であって、上下方向に延びたレバー構造のハンドルを回動可能に備え、ハンドルを障子が閉じる側に傾けた閉操作位置に保持して障子を閉じたことを条件にして施錠される一方、ハンドルを障子が開く側に傾けた開操作位置に向かって回動させたことを条件にして解錠されると共に、常には、ハンドルが開操作位置と閉操作位置との間の中立位置に配置されるように付勢された錠装置において、互いに平行な回動軸を中心に回動可能なラッチ、ポール及びハンドル連動盤を備えると共に、ラッチとハンドル連動盤との間にポールが配置され、ラッチは、ストライカに係合した係合位置とその係合を解除した係合解除位置との間を回動し、ポールは、ラッチの回動を許容するラッチ回動許容位置と、ラッチの回動を規制するラッチロック位置との間を回動しかつポール付勢手段によってラッチロック位置に付勢され、ハンドル連動盤は、ハンドルと共に中立位置と閉操作位置との間を回動しかつハンドル付勢手段によって中立位置に付勢され、ポールには、ラッチ側の側部に第1回動規制面、ハンドル連動盤側の側部に第2回動規制面が設けられ、ラッチには、ラッチが係合解除位置から係合位置の手前まで回動する間は、第1回動規制面に突き合わされてポールがラッチロック位置へと回動することを規制し、ラッチが係合位置に至ったときに第1回動規制面から外れて、ポールがラッチロック位置へと回動することを許容する第1回動規制レバーが突出形成され、ハンドル連動盤には、ハンドル連動盤が中立位置から閉操作位置の手前まで回動する間は、第2回動規制面に突き合わされてポールがラッチロック位置へと回動することを規制し、ハンドル連動盤が閉操作位置に至ったときに第2回動規制面から外れて、ポールがラッチロック位置へと回動することを許容する第2回動規制レバーが突出形成され、第1回動規制面は、ラッチが係合解除位置から係合位置に回動する間に、第1回動規制レバーとの摺接によりポール付勢手段に抗してポールを回動させて、第2回動規制面と第2回動規制レバーとの間にクリアランスを発生させるところに特徴を有する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の錠装置において、第1回動規制面には、ラッチが係合解除位置から係合位置に回動する間に、第1回動規制レバーが乗り上がり、第2回動規制面と第2回動規制レバーとの間にクリアランスを発生させるためのクリアランス生成突起が備えられたところに特徴を有する。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載の錠装置において、第1回動規制面は湾曲面であり、ラッチが係合解除位置に配置された状態で、第1回動規制レバーの先端位置で、第1回動規制レバーの先端回動軌跡円と第1回動規制面とが交差し、かつその交点から離れるに従って第1回動規制面が先端回動軌跡円の内側に徐々に入り込むように構成されたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1の発明]
請求項1の錠装置は、障子を開けた状態では、ハンドル及びハンドル連動盤はハンドル付勢手段によって中立位置に保持され、ラッチはストライカとの係合が解除された係合解除位置に配置され、ポールはラッチに備えた第1回動規制レバーとハンドル連動盤に備えた第2回動規制レバーとにより回動を規制されてラッチ回動許容位置に保持される。
【0014】
そして、ハンドルとハンドル連動盤とを閉操作位置に傾けて障子を閉じると、ハンドル連動盤の第2回動規制レバーがポールの第2回動規制面から外れ、先ずは、第2回動規制レバーによるポールの回動規制が解除された状態になる。この状態で、ラッチがストライカに押されて係合解除位置から係合位置まで回動すると、第1回動規制レバーによるポールの回動規制も解除され、ポールがポール付勢手段の付勢力によってラッチロック位置に回動し、錠装置が施錠される。
【0015】
これに対し、ハンドルを操作せずに、ハンドル及びハンドル連動盤が中立位置に保持された状態で障子を閉じると、第2回動規制レバーによるポールの回動規制が解除されない状態で、第1回動規制レバーによるポールの回動規制のみが解除されることになる。このため、ラッチがストライカに押されて係合解除位置から係合位置まで回動しても、ポールがラッチロック位置に回動することはなく、錠装置は施錠されない。
【0016】
さて、錠装置を構成する部品形状のばらつきにより、第2回動規制レバーが第2回動規制面の端部に係止し、ハンドル連動盤がハンドル付勢手段の付勢力では中立位置に戻り切らない状態が生じ得る。本発明の錠装置では、この状態でハンドルを操作せずに障子を閉じた場合、ラッチがストライカに押されて係合解除位置から係合位置まで回動する間に、第1回動規制面と第1回動規制レバーとの摺接によりポール付勢手段に抗してポールが回動し、第2回動規制面と第2回動規制レバーとの間にクリアランスが発生する。このクリアランスにより、例えば、部品形状のばらつきにより第2回動規制レバーが第2回動規制面の端部といった不正規位置に係止されても、その係止が好適に解除され、ハンドル連動盤がハンドル付勢手段の付勢力によって中立位置に戻り切ることができる。そして、ラッチが係合位置まで回動し、第1回動規制レバーが第1回動規制面から外れたときには、第2回動規制レバーがポールの回動を規制した状態になっている。これにより、ラッチがストライカに押されて係合解除位置から係合位置まで回動しても、ポールがラッチロック位置に回動することはなく、錠装置は施錠されない。即ち、本発明の錠装置によれば、ハンドルを操作せずに障子を閉めた場合に、錠装置を解錠状態に保持することができ、締め出しの発生を抑制することができる。
【0017】
[請求項2の発明]
上記したようにハンドル連動盤がハンドル付勢手段の付勢力によって中立位置に戻り切らない状態において、ハンドル及びハンドル連動盤を中立位置に保持した状態で障子を閉じた場合、請求項2の本発明に係る錠装置では、第1回動規制面におけるクリアランス生成突起に第1回動規制レバーが乗り上がることでポールがポール付勢手段の付勢方向に抗して回動し、第2回動規制面と第2回動規制レバーとの間にクリアランスが発生する。この結果、第1回動規制レバーが第1回動規制面から外れる前に、第2回動規制レバーが第2回動規制面の端部との係止から解放されて、ハンドル連動盤が中立位置に戻り切る。これにより、ラッチがストライカに押されて係合解除位置から係合位置まで回動しても、ポールがラッチロック位置に回動することはなく、錠装置は施錠されない。即ち、本発明の錠装置によれば、ハンドルを操作せずに障子を閉めた場合に、錠装置を解錠状態に保持することができ、締め出しの発生を抑制することができる。
【0018】
[請求項3の発明]
上記したようにハンドル連動盤がハンドル付勢手段の付勢力によって中立位置に戻り切らない状態において、ハンドル及びハンドル連動盤を中立位置に保持した状態で障子を閉じた場合、請求項3の本発明に係る錠装置では、ラッチが係合解除位置から係合位置に回動する間に、第1回動規制レバーの先端回動軌跡円の内側に入り込んだ第1回動規制面を、第1回動規制レバーが先端回動軌跡円の外側に押し出すようにしてポールをポール付勢手段の付勢力に抗して回動させ、第2回動規制面と第2回動規制レバーとの間にクリアランスを発生させる。この結果、第1回動規制レバーが第1回動規制面から外れる前に、第2回動規制レバーが第2回動規制面の端部との係止から解放されて、ハンドル連動盤が中立位置に戻り切る。これにより、ラッチがストライカに押されて係合解除位置から係合位置まで回動しても、ポールがラッチロック位置に回動することはなく、錠装置は施錠されない。即ち、本発明の錠装置によれば、ハンドルを操作せずに障子を閉めた場合に、錠装置を解錠状態に保持することができ、締め出しの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図16に基づいて説明する。図1に示した障子12は、矩形枠状の框12Kの内側にガラス板12Gを張った構造をなし、建物の壁に形成された障子支持枠11の内側に対をなして設けられている。それら対になった障子12,12は、障子支持枠11内で互いに擦れ違うようにスライドして開閉される。
【0020】
図2に示すように、框12Kのうち戸先框12Aの先端面12Sからは、障子支持枠11に向けて1対の突壁12T,12Tが突出している。ここで、「戸先框」とは、框12Kのうち障子12を閉めたときに、その障子支持枠11の内面11Aに接合される側の端部をいう。その障子支持枠11の内面11Aには、図3に示すように、縦溝11Mが形成されている。そして、障子12が閉じられると、突壁12T,12Tが、障子支持枠11の縦溝11M内に突入する。
【0021】
障子支持枠11の内面11Aのうち縦溝11Mより室内側に位置した部分には、ストライカ60が取り付けられている。ストライカ60は、板金製のストライカ本体61に樹脂製のストライカカバー62を組み付けてなる。ストライカ本体61は、上下方向に延びた帯形板金を中間部分で密着曲げして水平突部61Sを形成した構造になっている。また、ストライカ本体61のうち上下方向の両端部には、螺子孔61N,61Nが形成され、ここに通した螺子を障子支持枠11にねじ込むことでストライカ60が障子支持枠11に固定されている。さらに、水平突部61Sには先端部と両側部とを残して四角形の貫通孔61Kが形成されている。そして、水平突部61Sの先端部に残された係合部60Aが後述するラッチ42に係合する。
【0022】
一方、ストライカカバー62は、縦長の枠体62Wの両側部から略半円形の1対の対向壁62T,62Tを突出して備えている。また、両対向壁62T,62Tにおける湾曲した縁部からは、互いに接近する側にアーチ壁62A,62Aが張り出している。そして、枠体62Wがストライカ本体61の外縁部に嵌合し、対向壁62T,62Tが水平突部61Sの両側部を覆っている。
【0023】
図1に示すように、錠装置20は、各障子12の戸先框12Aのうち室内側を向いた内向き面12Vに取り付けられている。図2に示すように、錠装置20は、錠装置本体40にハンドル35を回動可能に備えている。ハンドル35は上下方向に延び、ハンドル35の下端寄り位置からストライカ60側に向かって突部35Tが突出している。これに対し、錠装置本体40の上端寄り位置からは、室内側に向かってハンドル連結軸51Pが突出しており、そのハンドル連結軸51Pにハンドル35の突部35Tは固定されている。そして、ハンドル35のうち回動軸J1より上側部分が、錠装置本体40より上方に延び、戸先框12Aの内向き面12Vとの間に手を差し込む隙間を有して、把持可能になっている。これに対し、ハンドル35のうち回動軸J1より下側部分は、錠装置本体40に重なっているため、把持不能になっている。
【0024】
錠装置本体40は、図2に示した縦長箱状の固定ベース41の内部に図4に示したラッチ42、ポール43等の複数の可動部品を組み付けて備えている。その固定ベース41の上下の両端部からは、図2に示すように、固定片20K,20Kが張り出しており、各固定片20Kが戸先框12Aに螺子止めされている。なお、固定ベース41は、金属製のベース本体41Bを樹脂製のカバー41A(図2参照)で覆ってなり、ベース本体41B側にラッチ42,ポール43等が組み付けられている。
【0025】
図2に示すように、固定ベース41のうち上下方向の中間部には、ストライカ60側を向いた側面にアシスト窓41Wが形成されている。そして、このアシスト窓41Wから後述するアシスト連結盤49及び当接ローラ53が突き出るようになっている。また、固定ベース41の下端寄り位置には、ストライカカバー62(図3参照)の対向壁62T,62T間に突入可能なストライカ係合部41Tが形成され、そのストライカ係合部41Tにストライカ受容溝41Sが形成されている。ストライカ受容溝41Sは、水平方向に延びた溝状をなしかつ、ストライカ60に向かって開放している。そして、障子12を閉めると、図6及び図10に示すように、ストライカ60の係合部60Aが、ストライカ受容溝41Sに受容される(以下、単に、ストライカ60がストライカ受容溝41Sに受容されるという)。
【0026】
図4に示すように、固定ベース41のうちストライカ受容溝41Sより下側部分には、第1支持ピン42Pが起立しており、その第1支持ピン42Pにラッチ42が回動可能に軸支されている。この第1支持ピン42Pを始め、後述する第2支持ピン43P、第3支持ピン45P、連結ピン47P1、摺動ピン47P2,49T等のピンは、何れも中心軸がハンドル35の回動軸J1と平行になっている。
【0027】
ラッチ42の上縁部には、前側係合爪42A1、後側係合爪42A2及び第1回動規制レバー42Bが、ストライカ60に近い側(以下、これを「前側」という)から遠い側(以下、これを「後側」という)に向かって順番に並べて形成されている。これらのうち第1回動規制レバー42Bは、第1支持ピン42Pから最も大きく突出し、第1回動規制レバー42Bの先端部は先細り状になりかつ、先端面は丸みを帯びている。そして、後側係合爪42A2が第1回動規制レバー42Bの側面から突出し、後側係合爪42A2と第1回動規制レバー42Bの先端部との間がロック凹部42Kになっている。また、ラッチ42における後端部には、バネ取付片42Cが形成されている。バネ取付片42Cには、引張コイルバネ構造のラッチポール付勢バネ44(本発明の「ポール付勢手段」に相当する)の一端が取り付けられ、このラッチポール付勢バネ44の弾発力によりラッチ42が次述する係合解除位置に向けて付勢されている。
【0028】
障子12を開いた状態では、図4に示すように、ラッチ42は、固定ベース41に形成された下ストッパ41Gに当接し、係合解除位置に位置決めされる。ラッチ42が、この係合解除位置に位置決めされると、前側係合爪42A1は、ストライカ受容溝41Sにおける受容口の下方に退避し、後側係合爪42A2が、ストライカ受容溝41Sの中間部分に突入し、さらに、第1回動規制レバー42Bが、ストライカ受容溝41Sより上方に突出した状態になる。この状態で、障子12を閉めて、ストライカ受容溝41Sにストライカ60が受容されると、図5及び図9に示すように、ストライカ60によって後側係合爪42A2が押されてラッチ42が係合位置に移動し、ラッチ42が係合位置に至ると、図6及び図10に示すように、前側係合爪42A1がストライカ受容溝41Sのうちストライカ60より受容口側を遮蔽する。
【0029】
図4に示すように、固定ベース41のうちストライカ受容溝41Sより上側部分には、第2支持ピン43Pが起立しており、その第2支持ピン43Pにポール43が回動可能に軸支されている。このポール43は、ラッチ42側にラッチロック片43Aを備え、図6に示すように、ラッチロック片43Aがラッチ42における第1回動規制レバー42Bと後側係合爪42A2との間のロック凹部42Kに係合したラッチロック位置と、図4、図5,図7〜図11に示すようにラッチロック片43Aがラッチ42のロック凹部42Kから離脱して、ラッチ42の回動を許容したロック解除位置との間を回動する。
【0030】
具体的には、図13に示すように、ポール43には、第2支持ピン43Pを中心にした円板部43Eが備えられ、ラッチロック片43Aは円板部43Eから後方(図13の左方)に向けて張り出されている。そのラッチロック片43Aのうち第2支持ピン43Pから離れた外縁部は、その第2支持ピン43Pを中心とした円弧形状になっている。そして、ポール43の側面のうちラッチロック片43Aの外縁部の側面である外周円弧面43Fと円板部43Eの外周面との間が、本発明に係る第1回動規制面43Vになっている。
【0031】
第1回動規制面43Vは、中央にクリアランス生成突起43Xを有し、そのクリアランス生成突起43Xの両側がそれぞれラッチ42から離れる側に僅かに湾曲した1対の円弧面43V1,43V2になっている。そして、図13に示すように、ラッチ42が係合解除位置に配置されたときには、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vのうち円板部43E側の端部に突き合わされて、ラッチロック片43Aの下方への回動を禁止する。この状態で、クリアランス生成突起43Xは、第1回動規制レバー42Bの先端の回動軌跡円42Xの内側に位置している。そして、ラッチ42が係合解除位置から係合位置の手前まで移動する間は、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vに摺接してポール43がラッチ42側に回動することを規制すると共に、その第1回動規制面43Vの中間位置で図14に示すように第1回動規制レバー42Bがクリアランス生成突起43Xに乗り上がり、そのクリアランス生成突起43Xを第1回動規制レバー42Bの先端の回動軌跡円42Xから外側に押し出すようにして、ポール43をラッチ42から離す側に僅かに回動させる。そして、図6に示すように、ラッチ42が係合位置に位置したときには、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vの後端部から外周円弧面43F側に外れて、ラッチロック片43Aの下方への回動を許容する。
【0032】
図13に示すように、ラッチロック片43Aの後端部の上端寄り位置からは、後方に向かってパイロット突起43Bが突出している。パイロット突起43Bには、前記ラッチポール付勢バネ44の他端が取り付けられている。このラッチポール付勢バネ44によってポール43が、ラッチロック位置(図6参照)に付勢されると共に、ラッチ42が係合解除位置に付勢されている。
【0033】
ポール43には、回動中心から上方に向けてレバー当接片43Cが張り出されている。レバー当接片43Cの先端部には、本発明に係る第2回動規制面43Wが形成されている。詳細には、図13に示すように、レバー当接片43Cのうち第2回動規制面43Wより前側(図13の右側)の側面43W1は、ポール43がラッチ回動許容位置に配置された状態で円板部43Eから上方に立ち上がって延び、その側面43W1の上端部から第2回動規制面43Wが斜め後側下方に向かって延びている。また、第2回動規制面43Wは、後述する第2回動規制レバー45Aの先端面に当接した状態で、後述する第3支持ピン45Pを中心とした円に重なる円弧状になっている。なお、レバー当接片43Cのうち第2回動規制面43Wより後側(図13の左側)の側面43W2は、第2回動規制面43Wより急斜面になって第2回動規制面43Wの下端部から斜め後ろ側下方に延びている。
【0034】
ポール43のうちラッチロック片43Aの中間部分には、引上リンク47が連結ピン47P1にて回動可能に連結されている。引上リンク47は、ポール43から斜め後側上方に向かって延び、その引上リンク47の上端部にはその引上リンク47の長手方向に沿って延びた長円孔47Aが形成されている。
【0035】
図5に示すように、固定ベース41のうち第2支持ピン43Pが起立した部分より上側部分には、第3支持ピン45Pが起立しており、この第3支持ピン45Pには、図12に示したハンドル連動盤45と中継盤46とが重ねられた状態で回動可能に軸支されている。中継盤46は、回動中心から互いに略120度異なる方向に延びたオープンレバー46Aと連結レバー46Bとを備えている。そして、図5に示すように、連結レバー46Bが第3支持ピン45Pに対して上方に向かって延び、オープンレバー46Aが第3支持ピン45Pに対して斜め後側下方に向かって延びている。また、オープンレバー46Aから起立した摺動ピン47P2が、前記引上リンク47の長円孔47A内に直動可能に係合している。さらに、中継盤46における連結レバー46Bの先端部からは摺動ピン49Tが起立している。
【0036】
図12に示すように、ハンドル連動盤45は、回動中心から互いに略120度異なる方向に延びた第2回動規制レバー45Aと連結アーム45Bとを備え、連結アーム45Bから中継盤46に向かって連結突起45Cが起立している。また、第2回動規制レバー45Aの先端面は、第3支持ピン45Pを中心として湾曲した円弧形状になっている。そして、図5に示すように、第2回動規制レバー45Aが第3支持ピン45Pに対して斜め前側下方に向かって延び、連結アーム45Bが第3支持ピン45Pに対して上方に突出し、連結突起45Cが中継盤46における連結レバー46Bより後側に配置されている。また、ハンドル連動盤45と中継盤46との間にはトーションコイルバネ54が組み付けられ、そのトーションコイルバネ54の付勢力によって連結突起45Cが連結レバー46Bの側面に押し付けられている。さらに、第2回動規制レバー45Aは、ハンドル連動盤45の回動位置に応じて、ポール43におけるレバー当接片43Cの回動可能領域の内側に配置された状態(図4,図7,図8,図9,図10,図11参照)と、その回動可能領域の外側に配置された状態(図5及び図6参照)とに変更される。
【0037】
図4に示すように、固定ベース41のうち上端寄り位置には、トルク伝達シャフト51Jが回動可能に軸支されている。トルク伝達シャフト51Jは、円柱形状をなし、そのトルク伝達シャフト51Jの一端面から角柱状のハンドル連結軸51Pが突出している。そして、前記したようにハンドル連結軸51Pにハンドル35が一体回転可能に固定されている。また、トルク伝達シャフト51Jの外周面からアシスト連結盤49が側方に張り出している。詳細には、アシスト連結盤49は、トルク伝達シャフト51Jと一体回転するようにトルク伝達シャフト51Jの外周面に固定又は一体形成され、固定ベース41における上下方向の中間位置まで延び、トルク伝達シャフト51Jの中心軸方向でハンドル連動盤45、中継盤46等に重ねて配置されている。
【0038】
アシスト連結盤49には、トルク伝達シャフト51Jの外周面から前方に突出した上係止部49Aと下係止部49Bが備えられている。また、固定ベース41から突出したハンドル回動ストッパ41Jが、上係止部49Aと下係止部49Bとの間に配置されている。そして、ハンドル35を障子12(図1参照)が閉じる側に傾けると、そのハンドル35と共にアシスト連結盤49が図4における時計回り方向に回動して、図5に示すように上係止部49Aがハンドル回動ストッパ41Jに当接し、ハンドル35及びアシスト連結盤49が本発明に係る閉操作位置に位置決めされる。
【0039】
一方、ハンドル35を障子12(図1参照)が開く側に傾けると、ハンドル35と共にアシスト連結盤49が図1における反時計回り方向に回動して、図8に示すように下係止部49Bがハンドル回動ストッパ41Jに当接し、ハンドル35及びアシスト連結盤49が本発明に係る開操作位置に位置決めされる。
【0040】
ハンドル35及びアシスト連結盤49は、ハンドル付勢バネ52(本発明の「ハンドル付勢手段」に相当する)により、通常は、開操作位置と閉操作位置との間の中立位置に配置されている。具体的には、ハンドル付勢バネ52は、トルク伝達シャフト51Jを中心に巻回されたコイル部52Aと、そのコイル部52Aの両端末をトルク伝達シャフト51Jの後方に直線状に延ばして対峙させた1対の直線部52B,52Bとを備えている。それら1対の直線部52B,52Bの間には、固定ベース41から起立した固定突片41Hとアシスト連結盤49から起立した可動突片49Hと配置されている。また、固定突片41Hと可動突片49Hは、コイル部52Aの径方向に並べられ、通常は、両方の直線部52B,52Bが、固定突片41Hの両側部と可動突片49Hの両側部とにそれぞれ当接することで、ハンドル35及びアシスト連結盤49が中立位置に位置決めされている。そして、ハンドル35及びアシスト連結盤49を閉操作位置側に回動すると、図5に示すように可動突片49Hが同図の上方側の直線部52Bを上方に押し上げてハンドル付勢バネ52が弾性変形し、ハンドル35及びアシスト連結盤49を中立位置に戻す付勢力が作用する。一方、ハンドル35及びアシスト連結盤49を開操作位置側に回動すると、図8に示すように、可動突片49Hが同図の下方に直線部52Bを下方に押し下げてハンドル付勢バネ52が弾性変形し、ハンドル35及びアシスト連結盤49を中立位置に戻す付勢力が作用する。
【0041】
図4に示すように、アシスト連結盤49のうち上下方向の中間部分には係合溝50が形成されている。その係合溝50は、略水平方向に延びかつ緩やかに湾曲した円弧部50Aと、その円弧部50Aの前側端部を上方に屈曲させたピン保持部50Bとからなり、この係合溝50に中継盤46の前記摺動ピン49Tが収容されている。そして、図4に示すように、ハンドル35及びアシスト連結盤49が中立位置に配置された状態では、摺動ピン49Tはピン保持部50B内に配置されて、前後方向でピン保持部50Bの1対の内側面に挟まれ、ハンドル35及びアシスト連結盤49と共に中継盤46及びハンドル連動盤45も中立位置に位置決めされる。
【0042】
ハンドル35及びアシスト連結盤49を、図4に示した中立位置から図5に示した閉操作位置に回動したときには、摺動ピン49Tがピン保持部50B内に配置された状態で、ピン保持部50Bの前側の内側面によって摺動ピン49Tが後方に押されて、中継盤46及びハンドル連動盤45が図4の反時計回り方向に回動する。そして、ハンドル35及びアシスト連結盤49が、上係止部49Aとハンドル回動ストッパ41Jとの当接によって閉操作位置に位置決めされたときには、中継盤46及びハンドル連動盤45も閉操作位置に位置決めされる。このとき、ハンドル連動盤45の第2回動規制レバー45Aは、レバー当接片43Cの回動領域から上方に退避した状態になる。
【0043】
ハンドル35及びアシスト連結盤49を、図6に示した中立位置から図8に示した開操作位置に回動したときには、その回動途中で摺動ピン49Tがピン保持部50Bから円弧部50Aの一端部に移動する。すると、円弧部50Aのうちピン保持部50B側の端部から反対側の端部に摺動ピン49Tが進むに従って、摺動ピン49Tが前側下方に押され、中継盤46及びハンドル連動盤45が図4における時計方向に回動する。そして、その中継盤46の回動途中で、図7に示すように摺動ピン47P2が引上リンク47の長円孔47Aにおける端部に当接し、その状態で中継盤46がハンドル35及びアシスト連結盤49と共に図8に示した開操作位置まで回動すると、ポール43の後端部が引上リンク47を介して中継盤46のオープンレバー46Aによって引き上げられ、ポール43がラッチロック位置からラッチ回動許容位置に戻される。
【0044】
また、ポール43がラッチロック位置からラッチ回動許容位置に戻る間に、第2回動規制レバー45Aとレバー当接片43Cの先端とが干渉し、トーションコイルバネ54の付勢力に抗してハンドル連動盤45が中継盤46に対して図7における反時計回り方向に相対的に回動する。また、ポール43がラッチ回動許容位置に戻ったときに、第2回動規制レバー45Aはレバー当接片43Cとの干渉から解放され、トーションコイルバネ54の付勢力によってハンドル連動盤45が逆回転し、連結突起45Cが中継盤46の側面に当接した位置に復帰する。そして、第2回動規制レバー45Aの先端部がレバー当接片43Cの回動領域内に配置される。その後、ハンドル35から手を離すと、ハンドル付勢バネ52の付勢力によってハンドル35、アシスト連結盤49、中継盤46及びハンドル連動盤45が中立位置に戻り、ポール43がラッチポール付勢バネ44の付勢力によって引上リンク47を引き寄せるように若干回動して第2回動規制面43Wが第3支持ピン45Pを中心とした円と重なる位置まで戻る。すると、図4に示すように、第2回動規制レバー45Aがポール43の第2回動規制面43Wに突き合わされた状態になる。
【0045】
図8に示すように、アシスト連結盤49の下端部には、その前縁部から支持ピン53Pが起立しており、その支持ピン53Pに当接ローラ53が回転可能に軸支されている。当接ローラ53は、アシスト連結盤49の前縁部より前側に張り出す大きさになっている。また、当接ローラ53は、ハンドル35及びアシスト連結盤49が中立位置に配置された状態では(図4参照)、固定ベース41の内部に収容され、固定ベース41のアシスト窓41Wに臨んでいる。そして、ハンドル35及びアシスト連結盤49を開操作位置に向けて回動すると、図7及び図8に示すように、アシスト連結盤49の一部がアシスト窓41W(図2参照)から前方に突き出て、当接ローラ53が障子支持枠11の内面11Aに当接する。
【0046】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。障子12を開けた状態では、ハンドル35及びハンドル連動盤45は、ハンドル付勢バネ52によって図4に示すように中立位置に保持されている。このとき、ラッチ42はストライカ60との係合が解除された係合解除位置に配置される。また、ポール43は、ラッチ42の第1回動規制レバー42Bとポール43の第1回動規制面43Vとの当接と、ハンドル連動盤45の第2回動規制レバー45Aとポール43の第2回動規制面43Wとの当接により、回動を規制されてラッチ回動許容位置に保持される。即ち、障子12が開かれ、ハンドル35及が中立位置に配置された状態では、ポール43は、第1と第2の回動規制レバー42B,45Aの両方によって回動を規制されてラッチ回動許容位置に保持される。
【0047】
図5に示すように、障子12の内側に居る者が障子12を閉じて施錠(ロック)する場合には、ハンドル35に手を掛けて障子12を閉塞側に押す又は引く。これにより、ハンドル35と共にハンドル連動盤45が閉操作位置に回動して第2回動規制レバー45Aがポール43の第2回動規制面43Wから外れ、先ずは、第2回動規制レバー45Aによるポール43の回動規制が解除される。この状態で、障子12が閉じられると、ラッチ42がストライカ60に押されて係合解除位置から係合位置まで回動する。すると、第1回動規制レバー42Bによるポール43の回動規制も解除され、図6に示すように、ポール43がラッチポール付勢バネ44の付勢力によってラッチロック位置に回動し、ラッチロック片43Aがラッチ42のロック凹部42Kに係合する。これにより、ラッチ42が係合解除位置に逆回転できなくなり、錠装置20が施錠された状態になる。
【0048】
施錠された状態でハンドル35から手を離すと、図6に示すように、ハンドル35は、ハンドル付勢バネ52の付勢力によって中立位置に戻り、これに伴い、アシスト連結盤49、中継盤46及びハンドル連動盤45も中立位置に戻る。
【0049】
障子12の内側に居る者が錠装置20を解錠して障子12を開ける場合には、ハンドル35に手を掛けて障子12を開放側に押す又は引く。これにより、図7に示すように、ハンドル35と共にアシスト連結盤49が中立位置から開操作位置に向かって回動する。すると、アシスト連結盤49の回動力が摺動ピン49Tを介してハンドル連動盤45に伝達され、ハンドル連動盤45は図7の時計回り方向に回動する。すると、ハンドル連動盤45の回動力が摺動ピン47P2を介して引上リンク47に伝達され、引上リンク47が上方向に引き上げられる。そして、引上リンク47の引き上げ力が連結ピン47P1を介してポール43を上方向に引き上げ、ポール43はラッチロック位置からラッチ回動許容位置に回動してラッチ42との係合を解除する。このとき、ハンドル連動盤45の第2回動規制レバー45Aが、ポール43におけるレバー当接片43Cの回動領域内に配置された状態に戻ると共に、ラッチポール付勢バネ44の付勢力により、ラッチ42が係合位置から係合解除位置に回動する。
【0050】
さらに、ハンドル35が回動されると、図8に示すように、アシスト連結盤49の下端部の当接ローラ53が、固定ベース41のアシスト窓41W(図2参照)から外側に移動して障子支持枠11の内面11A(図3)を押すことになる。これにより障子12の初動時の負荷が軽減される。そして、障子12を開放後にハンドル35から手を離すと、ハンドル35、アシスト連結盤49、中継盤46、ハンドル連動盤45が中立位置に戻ると共に、ハンドル連動盤45の第2回動規制レバー45Aがポール43の第2回動規制面43Wに突き合わされ、ラッチ42の第1回動規制レバー42Bがポール43の第1回動規制面43Vに突き合わされた状態に戻る。即ち、障子12が開かれ、ハンドル35が中立位置に配置された状態で、ポール43が、第1と第2の回動規制レバー42B,45Aの両方によって回動を規制されてラッチ回動許容位置に保持された状態に戻る。
【0051】
障子12の外側に出て、外側から障子12を閉めた場合には、障子12の外向き面にはハンドル35がないので、ハンドル35が中立位置に位置した状態で障子12が閉められる。すると、図4から図9、図10の変化に示すように、第2回動規制レバー45Aによるポール43の回動規制が維持された状態で、ラッチ42が係合解除位置から係合位置に回動し、第1回動規制レバー42Bによるポール43の回動規制のみが解除されることになる。このため、ラッチ42がストライカ60と噛み合って係合位置に配置されても、第2回動規制レバー45Aがポール43の回動規制を行っているので、ポール43がラッチロック位置に回動することはなく、錠装置20は施錠されない。これにより、締め出しの発生を抑制することができる。
【0052】
ところで、障子を開けた状態で、ハンドル35を閉操作位置に回動操作してから手を離すと、ハンドル連動盤45の第2回動規制レバー45Aが、図11の二点鎖線で示したようにポール43のレバー当接片43Cから上方に離間してから、ハンドル付勢バネ52の付勢力によってレバー当接片43C側に戻る。このとき、錠装置20を構成する部品形状のばらつきにより、ハンドル付勢バネ52の付勢力、又は、ハンドル付勢バネ52の付勢力をハンドル連動盤45に伝達するトーションコイルバネ54の付勢力が、第2回動規制レバー45Aとレバー当接片43Cの第2回動規制面43Wとの摩擦抵抗に負けて、図11の実線で示すように、ハンドル連動盤45が中立位置に戻り切らない場合が生じ得る。このため、第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとの突き合わせの対向面積が極めて小さくなり、障子12が開いた状態で第2回動規制レバー45Aによるポール43の回動規制が機能しなくなる場合が生じ得る。
【0053】
また、図示しないが、錠装置20を構成する部品形状のばらつきにより、ロック解除位置に位置したポール43の第1回動規制面43Vと係合解除位置に位置したラッチ42の第1回動規制レバー42Bとの間に僅かな隙間が生じている場合には、第2回動規制レバー45Aがレバー当接片43Cから上方に離間した際に、ラッチポール付勢バネ44の付勢力によってポール43がラッチ42側に回動し、レバー当接片43Cの先端が第2回動規制レバー45Aの回動領域の内側に進入する。このため、ハンドル35から手を離したときに、レバー当接片43Cの先端が第2回動規制レバー45Aの先端寄り側面に当接し、障子12が開いた状態で、ハンドル連動盤45が中立位置に戻り切らなくなり、第2回動規制レバー45Aによるポール43の回動規制が機能しなくなる場合が生じ得る。
【0054】
しかしながら、このような場合、本実施形態の錠装置20では、ハンドル35を操作せずに障子12を閉じても、以下、詳説するように、締め出しの発生は抑制される。即ち、図13に拡大して示すように、ハンドル連動盤45が中立位置に戻り切らないために、第2回動規制レバー45Aによるポール43の回動規制が機能していない状態でハンドル35を操作せずに障子12を閉じると、ラッチ42がストライカ60に押されて係合解除位置から係合位置まで回動し、その回動に伴って第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vを摺接移動する。すると、その摺動移動の途中で、図14に示すように、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vに備えたクリアランス生成突起43Xに乗り上がり、ポール43がラッチポール付勢バネ44に抗して回動する。これにより、第2回動規制面43Wと第2回動規制レバー45Aとの間にクリアランスC1が発生し、そのクリアランスC1により第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wの端部との不正規位置での係止が解除される。
【0055】
また、第1回動規制レバー42Bが、クリアランス生成突起43Xを乗り越えた後、第1回動規制面43Vにおける円弧面43V2を摺接移動する間に、第2回動規制面43Wと第2回動規制レバー45Aの先端面が接近する。そして、ラッチ42が係合位置まで回動し、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vから外れたときには、第2回動規制レバー45Aがポール43の回動を規制した状態になる。これにより、締め出しの発生を抑制することができる。
【0056】
このように本実施形態の錠装置20によれば、ハンドル35を操作せずに障子12を閉めた場合に、錠装置20を解錠状態に保持することができ、締め出しの発生を抑制することができる。また、部品の加工精度を上げずに第2回動規制面43Wと第2回動規制レバー45Aとの間にクリアランスC1を設けたことで、締め出し発生の抑制度を向上させたので、製造コストを抑えることができる。また、本実施形態の錠装置20では、第1回動規制レバー42Bがクリアランス生成突起43Xを乗り越えた後、第1回動規制面43Vにおける円弧面43V2を摺接移動することでクリアランスC1が徐々に小さくなる。そして、クリアランスC1が小さくなってから第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vから外れるので、第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとの間の衝突による異音の発生が抑えられる。
【0057】
なお、図15に示すように、ハンドル連動盤45が中立位置に配置され、ラッチ42の第1回動規制レバー42Bによってポール43がラッチ回動許容位置に保持された状態で、第2回動規制面43Wと第2回動規制レバー45Aの先端面との間にクリアランスC2が形成される構造によっても、上記した第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとが不正規位置での係止を防止することができる。しかしながら、この構造では、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Vから外れて、第2回動規制レバー45Aと第2回動規制面43Wとの当接のみによってポール43の回動を規制した状態で、図16に示すように、第2回動規制レバー45Aの第2回動規制面43Wに対する突き合わせの対向面積が極めて小さくなり、第2回動規制レバー45Aによるポール43の回動規制の機能が低下するという問題も生じる。しかしながら、本実施形態の錠装置20では、上記問題は生じない。
【0058】
[第2実施形態]
本実施形態の錠装置20Uは、図17及び図18に示されており、第1回動規制面43Uの形状が前記第1実施形態の第1回動規制面43Vとは異なる。即ち、本実施形態の第1回動規制面43Uは、ラッチ42から離れる側に僅かに湾曲した円弧状になっている。また、第1回動規制面43Uと外周円弧面43Fとの間の角部は丸みを帯びた形状になっている。そして、図17に示すように、ラッチ42が係合解除位置に配置されたときには、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Uのうち円板部43E側の端部に突き合わされた状態で、第1回動規制レバー42Bの先端の回動軌跡円42Xと、第1回動規制レバー42Bの先端位置で交差すると共に、その交点から離れるに従って先端回動軌跡円42Xの内側に徐々に入り込むように構成されている。その他の構成に関しては、第1実施形態と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0059】
本実施形態の錠装置20Uによれば、上記したようにハンドル連動盤45がハンドル付勢バネ52の付勢力によって中立位置に戻り切らない状態で障子12を閉じた場合、ラッチ42が係合解除位置から係合位置に回動する間に、第1回動規制レバー42Bの先端の回動軌跡円42Xの内側に入り込んだ第1回動規制面43Uを、第1回動規制レバー42Bが先端の回動軌跡円42Xの外側に押し出すようにしてポール43をラッチポール付勢バネ44の付勢力に抗して回動させ、図18に示すように、第2回動規制面43Wと第2回動規制レバー45Aとの間にクリアランスC1を発生させる。この結果、第1実施形態の錠装置20と同様に、第1回動規制レバー42Bが第1回動規制面43Uから外れる前に、第2回動規制レバー45Aが第2回動規制面43Wの端部との係止から解放されて、ハンドル連動盤45が中立位置に戻り切り、締め出しの発生を抑制することができる。
【0060】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0061】
(1)前記実施形態では、障子支持枠11内で互いにすれ違うようにスライドする1対の障子12,12に本発明の錠装置20が取り付けられていたが、障子支持枠11内に1つだけ設けられた障子に本発明の錠装置20を取り付けてもよい。また、障子支持枠11の同一直線上に並べられて、観音開きされる1対の障子12,12のうち一方の障子12の戸先框に錠装置を備え、他方の障子の戸先框にストライカを設けてもよい。
【0062】
(2)前記実施形態の障子12は、ガラス板12Gを張った所謂ガラス戸であったが、障子は、木戸又は金属製の戸であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る障子ユニットの正面図
【図2】錠装置と戸先框の斜視図
【図3】ストライカの斜視図
【図4】障子が開いた状態における錠装置の正断面図
【図5】ハンドルが閉操作位置に配置された状態の錠装置の部分正断面図
【図6】施錠状態で障子が閉じた状態の錠装置の部分正断面図
【図7】ハンドルが開操作位置に移動する過程の錠装置の部分正断面図
【図8】ハンドルが開操作位置に配置された状態の錠装置の部分正断面図
【図9】ハンドルが中立位置のまま障子が閉じる過程の錠装置の部分正断面図
【図10】非施錠状態で障子が閉じた状態の錠装置の部分正断面図
【図11】ハンドルが中立位置に移動する過程の錠装置の部分正断面図
【図12】中継盤とコントロールレバーの斜視図
【図13】障子が開いた状態における錠装置の部分正断面図
【図14】ハンドルが中立位置のまま障子が閉じる過程の錠装置の部分正断面図
【図15】障子が開いた状態における錠装置の部分正断面図
【図16】ハンドルが中立位置のまま障子が閉じる過程の錠装置の部分正断面図
【図17】第2実施形態の障子が開いた状態における錠装置の部分正断面図
【図18】ハンドルが中立位置のまま障子が閉じる過程の錠装置の部分正断面図
【図19】従来の障子が開いた状態における錠装置の部分正断面図
【図20】ハンドルが開操作位置に配置された状態の錠装置の部分正断面図
【図21】ハンドルが中立位置に移動する過程の錠装置の部分正断面図
【図22】ハンドルが中立位置に戻り切らないまま障子が閉じる過程の錠装置の部分正断面図
【図23】施錠状態で障子が閉じた状態の錠装置の部分正断面図
【符号の説明】
【0064】
1 ラッチ
1A 第1回動規制レバー
2 ポール
2A 第1回動規制面
2B 第2回動規制面
3 ハンドル連動盤
3A 第2回動規制レバー
4 ストライカ
5 ハンドル
6 バネ
7 トーションバネ
11 障子支持枠
12 障子
12A 戸先框
20,20U 錠装置
35 ハンドル
40 錠装置本体
41 固定ベース
41S ストライカ受容溝
42 ラッチ
42B 第1回動規制レバー
42K ロック凹部
42X 先端回動軌跡円
43 ポール
43A ラッチロック片
43C レバー当接片
43V,43U 第1回動規制面
43W 第2回動規制面
43X クリアランス生成突起
44 ラッチポール付勢バネ(ポール付勢手段)
45 ハンドル連動盤
45A 第2回動規制レバー
45B 連結アーム
45C 連結突起
46 中継盤
47 引上リンク
49 アシスト連結盤
50 係合溝
52 ハンドル付勢バネ(ハンドル付勢手段)
54 トーションコイルバネ
60 ストライカ
C1,C2 クリアランス
J1 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子の戸先框の内向き面に取り付けられ、ストライカに係合して施錠される錠装置であって、上下方向に延びたレバー構造のハンドルを回動可能に備え、前記ハンドルを前記障子が閉じる側に傾けた閉操作位置に保持して前記障子を閉じたことを条件にして施錠される一方、前記ハンドルを前記障子が開く側に傾けた開操作位置に向かって回動させたことを条件にして解錠されると共に、常には、前記ハンドルが前記開操作位置と前記閉操作位置との間の中立位置に配置されるように付勢された錠装置において、
互いに平行な回動軸を中心に回動可能なラッチ、ポール及びハンドル連動盤を備えると共に、前記ラッチと前記ハンドル連動盤との間に前記ポールが配置され、
前記ラッチは、前記ストライカに係合した係合位置とその係合を解除した係合解除位置との間を回動し、
前記ポールは、前記ラッチの回動を許容するラッチ回動許容位置と、前記ラッチの回動を規制するラッチロック位置との間を回動しかつポール付勢手段によって前記ラッチロック位置に付勢され、
前記ハンドル連動盤は、前記ハンドルと共に中立位置と閉操作位置との間を回動しかつハンドル付勢手段によって前記中立位置に付勢され、
前記ポールには、前記ラッチ側の側部に第1回動規制面、前記ハンドル連動盤側の側部に第2回動規制面が設けられ、
前記ラッチには、前記ラッチが前記係合解除位置から前記係合位置の手前まで回動する間は、前記第1回動規制面に突き合わされて前記ポールが前記ラッチロック位置へと回動することを規制し、前記ラッチが前記係合位置に至ったときに前記第1回動規制面から外れて、前記ポールが前記ラッチロック位置へと回動することを許容する第1回動規制レバーが突出形成され、
前記ハンドル連動盤には、前記ハンドル連動盤が前記中立位置から前記閉操作位置の手前まで回動する間は、前記第2回動規制面に突き合わされて前記ポールが前記ラッチロック位置へと回動することを規制し、前記ハンドル連動盤が前記閉操作位置に至ったときに前記第2回動規制面から外れて、前記ポールが前記ラッチロック位置へと回動することを許容する第2回動規制レバーが突出形成され、
前記第1回動規制面は、前記ラッチが前記係合解除位置から前記係合位置に回動する間に、前記第1回動規制レバーとの摺接により前記ポール付勢手段に抗して前記ポールを回動させて、前記第2回動規制面と前記第2回動規制レバーとの間にクリアランスを発生させることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
前記第1回動規制面には、前記ラッチが前記係合解除位置から前記係合位置に回動する間に、前記第1回動規制レバーが乗り上がり、前記第2回動規制面と前記第2回動規制レバーとの間に前記クリアランスを発生させるためのクリアランス生成突起が備えられたことを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記第1回動規制面は湾曲面であり、前記ラッチが前記係合解除位置に配置された状態で、前記第1回動規制レバーの先端位置で、前記第1回動規制レバーの先端回動軌跡円と前記第1回動規制面とが交差し、かつその交点から離れるに従って前記第1回動規制面が前記先端回動軌跡円の内側に徐々に入り込むように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−53630(P2010−53630A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221418(P2008−221418)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)