説明

鍛造プレスのノックアウト装置

【課題】ノックアウトピン及びノックアウトレバー周辺のメンテナンスを容易にする。
【解決手段】ノックアウトレバー6を介してノックアウトピン7を上昇させる機械駆動機構Aと、油圧によりノックアウトピン7を上昇させる油圧駆動機構Bとを備え、前記ノックアウトピン7を上部ノックアウトピン7aと下部ノックアウトピン7bに分割して同一軸上に配置して、下部ノックアウトピン7bをノックアウトレバー6に係合する。前記油圧駆動機構Bは、揺動アーム13とその一端を押圧する油圧シリンダ14とを備え、その揺動アーム他端13bを上部ノックアウトピン7aに形成した係合面17bに係合する。油圧駆動機構Bは、上部ノックアウトピン7aを動作させれば足りるので油圧シリンダ14を小さくでき、また、その油圧シリンダ14は、ノックアウトピン7等から離れて設けることができるので、シリンダ14が、装置のメンテナンス性能を損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鍛造プレスのワークを金型から取り外す際に使用するノックアウト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のノックアウト装置は、例えば、特許文献1に示すように、固定のフレームにノックアウトレバーを上下方向揺動自在に設け、そのノックアウトレバーには、機械駆動機構及び油圧駆動機構(油圧シリンダ)が接続されている。そのノックアウトレバーの一端に、上下方向のノックアウトピンが取り付けられており、前記ノックアウトレバーの揺動とともに、ノックアウトピンが昇降して、その上端で金型に嵌っているワークを押し上げ(突き上げ)るようになっている。
【0003】
そして、金型からワークを外す際には、まず機械駆動機構によりノックアウトレバーを動作させてノックアウトピンで成型品を押し上げ、金型からワークを分離した(一次ノックアウト)後、油圧駆動機構によりノックアウトレバーを動作させてノックアウトピンをさらに上昇させ、ワークを所定のストロークだけ押し上げる(二次ノックアウト)ようにしている。このように、一次ノックアウトに機械駆動機構を用いることにより、金型からワークを外す際に必要とされる大きな剥離力に対応するとともに、二次ノックアウトに油圧駆動機構を用いることにより、成型品をソフトにノックアウトし、金型からワークが飛び跳ねることを防止している。
【0004】
また、特許文献2に記載のノックアウト装置では、前記ノックアウトレバーを揺動させる機械駆動機構がそのノックアウトレバー(アーム)に接続されており、そのノックアウトレバーとノックアウトピンとの間に空気圧駆動機構(エアシリンダ)を備えている。この構成によれば、ノックアウトピンは、機械駆動機構による昇降ストロークに加えて、エアシリンダのピストンロッドによるストロークに相当する高さだけ成型品を上昇させることができるので、ノックアウトピンの昇降ストロークを大きくすることができる。また、そのピストンロッドの伸縮量を調整することにより、合計ストロークを簡単に調整できるとしている。
【特許文献1】実開昭64−42737号公報
【特許文献2】実開昭58−51842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のノックアウト装置では、二次ノックアウトに用いる油圧シリンダが、ノックアウトレバーを動作させている。ノックアウトレバーの重量は大きいので、それを動作させるシリンダは大きなものが必要となる。大きなシリンダがノックアウトレバー周辺に介在すると、そのシリンダ等が、ノックアウトレバー周辺の部品交換等、装置のメンテナンスの際に作業の障害となる。このため、特許文献1に記載のノックアウト装置は、メンテナンスが煩雑であるので好ましくない。
【0006】
また、上記特許文献2に記載のノックアウト装置は、エアシリンダが、ノックアウトレバーとノックアウトピンとの間に取り付けられているので、そのシリンダが、特許文献1のようにノックアウトレバーを直接動作させることはない。しかし、エアシリンダを、ノックアウトレバーとノックアウトピンとの間に介在させると、そのシリンダが、ノックアウトピンの部品交換等、装置のメンテナンスの際に作業の障害となる。このため、特許文献2に記載のノックアウト装置は、メンテナンスが繁雑であるので好ましくない。
特に、並列する複数の金型からワークをノックアウトする場合は、隣接するノックアウトピン同士の間隔が狭い場合が多いので、その狭いスペース内にシリンダが介在すると、さらに作業を煩雑にする。
【0007】
そこで、この発明は、ノックアウトピンやノックアウトレバー周辺のメンテナンスを容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、ノックアウトピンに油圧駆動機構で揺動するアームを係合させ、その油圧駆動機構によるノックアウトピンの上昇を、前記アームを介して行うようにしたのである。このようにすれば、油圧駆動機構のシリンダは、ノックアウトレバーを直接動作させることはないので、そのシリンダを小さくできる。また、その油圧駆動機構のシリンダは、ノックアウトレバー及びノックアウトピンから離れた位置に設けることができるので、シリンダが、そのノックアウトレバー及びノックアウトピンの部品交換等、メンテナンスの際に作業の障害とならない。このため、ノックアウトピンやノックアウトレバー周辺のメンテナンスを容易にし得る。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のようにしたので、ノックアウトピンやノックアウトレバー周辺のメンテナンスが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記手段の具体的実施形態として、鍛造プレスのワークを突き上げる昇降自在のノックアウトピンと、前記鍛造プレスのスライド駆動軸に連動して揺動するノックアウトレバーを介して前記ノックアウトピンを上昇させる機械駆動機構と、前記ノックアウトピンを上昇させる油圧駆動機構とを備えた鍛造プレスのノックアウト装置において、前記油圧駆動機構は、揺動アームと該揺動アームの一端を押圧する油圧シリンダを備え、前記ノックアウトピンは、その下端よりも上方に前記揺動アームの他端と係合する係合部を有し、前記機械駆動機構によりノックアウトピンを上昇させ、さらに、前記油圧駆動機構によりノックアウトピンを上昇させるようにしたのである。
【0011】
このようにすれば、油圧駆動機構は、ノックアウトピンのみを上昇させればよく、ノックアウトレバーを動作させないので、その油圧シリンダは小さなもので足りる。小さなシリンダは、設置に広い場所を必要とせず、また、作業の邪魔になりにくい。したがって、上記構成によれば、ノックアウトピン及びノックアウトレバー周辺のメンテナンスを容易にし得る。
また、油圧シリンダは、揺動アームの一端、すなわちノックアウトレバー及びノックアウトピンから離れた位置に設けられるので、そのシリンダが、ノックアウトレバー及びノックアウトピンのメンテナンスや部品交換の際に作業の障害となりにくい。このため、ノックアウトピンやノックアウトレバー周辺のメンテナンスを容易にし得る。
【0012】
上記の構成において、前記ノックアウトピンを、上部ノックアウトピンと、下端が前記ノックアウトレバーに係合する下部ノックアウトピンに分割し、前記上部ノックアウトピンの下部に前記揺動アームの他端と係合する係合部を形成した構成を採用し得る。
【0013】
このようにすれば、油圧駆動機構は、上部ノックアウトピンのみを上昇させればよいので、その油圧シリンダをさらに小さなものとし得る。このため、シリンダが介在することによる前記作業への障害をさらに軽減し、メンテナンスをさらに容易にし得る。
【実施例】
【0014】
一実施例を図1乃至図5に基づいて説明する。図1に示すように、鍛造プレスの金型10内のワークWを突き上げる昇降自在のノックアウトピン7が、前記金型10を支持するダイホルダ9及びボルスタ8を貫通して昇降自在に設けられており、前記ノックアウトピン7は、機械駆動機構Aの動作によって上昇するようになっている。
【0015】
その機械駆動機構Aは、図1に示すように、鍛造プレスのスライド駆動軸(図示せず)と同調して駆動されるカム1と、その外周に係合するローラ2を有し、一端を軸支された上レバー3と、この上レバー3の他端にピンを介して回転自在に接続された上下方向の連結棒4を備えている。
また、機械駆動機構Aは、前記ボルスタ8の下方において、水平に配置された揺動軸6aと、その一端に上下方向揺動自在に支持された下レバー5を備えており(図2参照)、その下レバー5の先端部と前記連結棒4とが、ピンを介して回転自在に接続されている(図3参照)。さらに、前記揺動軸6aには、その軸方向中程から他端に向かって、前記下レバー5と一体に揺動するノックアウトレバー(タイミングレバー)6が設けられており、このノックアウトレバー6が、前記各ノックアウトピン7の下端をそれぞれ支持している(図4参照)。
なお、このノックアウトレバー6の例として、「特開2002−102992号公報」にその内容が記載されている。
【0016】
前記連結棒4と下レバー5とは、図1及び図3に示すように、オーバーロード防止用の油圧シリンダ11を介して接続されており、下レバー5には、その下レバー5を下方に付勢する空気シリンダ12が取り付けられている。前記油圧シリンダ11は、その油圧が上限値を超えると、リリーフ弁が作動してシリンダ内の油圧を開放し、前記スライド駆動軸からの機械的駆動力が下レバー5に伝達されないように機能する。また、前記空気シリンダ12は、下レバー5を下方に付勢することにより、前記ローラ2がカム1に当接した状態を維持できるように機能する。
【0017】
前記ノックアウトピン7は、上部ノックアウトピン7aと、下端が前記ノックアウトレバー6に係合する下部ノックアウトピン7bに分割されており、この上部ノックアウトピン7aと下部ノックアウトピン7bは、図2に示すガイド18,18により、それぞれガイドされている。
上部ノックアウトピン7aは、図1に示すように、鍛造プレスの前記金型10、ダイホルダ9及びボルスタ8を上下方向に貫通する穴19内に挿通されている。また、上部ノックアウトピン7aは、上側の上端部材24と下側の本体部材25とに分割されており(図5参照)、ノックアウトの繰り返しにより上端部材24が摩耗した際には、上端部材24のみを容易に取り替えできる。
上部ノックアウトピン7aは、その下端面17aからやや上方に至る両側が切り欠かれ、この対の切欠き最上部の下向き面が、係合面(係合部)17bを成している。
【0018】
その係合面17bには、固定のフレーム(図示せず)に揺動軸13aを介して上下方向に揺動自在に設けられた揺動アーム13の他端13bが係合されている。図6に示すように、揺動アーム13の他端13bは二股に分かれており、その二股部分に二股形状のライナー23が取り付けられている。この他端13bの二股部分に、前記上部ノックアウトピン7aの下部が遊嵌されており、前記ライナー23の弧状の上面23aが、上部ノックアウトピン7aの前記係合面17bに当接する。
【0019】
また、その揺動アーム13の一端には、図1に示すように、フレームに固定の油圧シリンダ14が設けられており、その油圧シリンダ14のロッド14aが、揺動アーム13の一端を下方へ向かって押圧するようになっている。この油圧シリンダ14のロッド14aが、揺動アーム13の一端を下方へ向かって押圧することにより、揺動アーム13が揺動し、その揺動により前記揺動アーム13が、前記上面23a及び係合面17bを介して上部ノックアウトピン7aのみを上昇させる。
なお、その油圧シリンダ14に併設して、空気シリンダ15が設けられており、同じく、その空気シリンダ15のロッド15aが、揺動アーム13一端を下方へ向かって押圧するようになっている(図5参照)。
【0020】
このノックアウト装置の作用を図7に基づいて説明すると、金型10内でワークWがプレス加工されると、まず、機械駆動機構AによるワークWの一次ノックアウトを行う。
【0021】
一次ノックアウトは、図7(a)に示す状態において、鍛造プレスの機械的動力により作動する機械駆動機構Aがノックアウトピン7の下部ノックアウトピン7bを、図7(b)に示す矢印のように上昇させる。その下部ノックアウトピン7bの上昇に伴い上部ノックアウトピン7aも上昇して、金型10内のワークWを突き上げてノックアウトする。このとき、金型10の上方において、図7(b)に示すように、スライド(図示せず)に固定された別の空気シリンダ16のロッド16aが伸びて、その先端が、ワークWの上面に当接することにより、そのワークWの飛び出しを防止している。
【0022】
次に、前記油圧駆動機構BによるワークWの二次ノックアウトを行う。
【0023】
前記一次ノックアウト終了後の状態において、図7(c)に示すように、油圧シリンダ14を動作させて、ロッド14aを下方に向かって伸ばして揺動アーム13を揺動させ、その他端13bを上昇させる。この他端13bの上昇により、前記ライナー23の上面23aが、上部ノックアウトピン7aの係合面17bに当接し、その後、他端13bがさらに上昇することにより、上部ノックアウトピン7aを押し上げてワークWをノックアウトする。なお、油圧シリンダ14とともに、空気シリンダ15も一緒に動作させる。
このとき、揺動アーム13は、上部ノックアウトピン7aのみを上昇させ、下部ノックアウトピン7b及びノックアウトレバー6、揺動軸6a、下レバー5を動作させないので、油圧シリンダ14は、上部ノックアウトピン7aを押し上げる出力があれば足り、大きな出力を必要としない。
【0024】
また、前記ライナー23は、図6に示す断面弧状(断面蒲鉾型)の上面23aでもって前記係合面17bに当接するので、前記揺動アーム13の揺動の際に、その上面23aと前記係合面17bとの摩擦が少なく、スムースに上部ノックアウトピン7aを上昇させることができる。
【0025】
前述の二次ノックアウトが完了し、ワークWが上限位置に達すると、油圧シリンダ14のロッド14aを縮める。このとき、空気シリンダ15のロッド15aは伸びた状態であり、揺動アーム13の揺動が規制され、ワークWは上限位置で保持されている。
また、前記金型10の上方において、図7(c)に示すように、スライドの上昇とともに前記空気シリンダ16も上昇するので、その上昇に合わせて、空気シリンダ16のロッド16aが伸びて、その先端が、ワークWの上面への当接を維持する。
【0026】
そして、そのワークWは、図8に示すように、トランスファフィーダのフィンガFに保持されて移送、又は搬出される。
なお、フィンガFがワークWを保持した後、前記空気シリンダ16は、図7(d)に示すように、スライドとともにさらに上方へ移動するので、空気シリンダ16は、ワークWの移送、搬出には支障しないようになっている。
【0027】
ワークWが移送、搬出された後、空気シリンダ15のロッド15aを後退させれば、揺動アーム13は、図7(a)に示す元の状態へと復帰する。
また、鍛造プレスのスライドの動きとともに、前記機械駆動機構Aも同調して動作しており、前記一次ノックアウトの終了後に、下レバー5が下方へ揺動している。
その後、その金型10において、次なるワークWが載置されることにより、ワークWが穴19内の上部ノックアウトピン7aを完全に押し下げ、この上部ノックアウトピン7aの押し下げにより、下部ノックアウトピン7bも押し下げられて、図7(a)に示す元の状態へと復帰させる。
【0028】
なお、この実施例では、前記ノックアウトピン7を、上部ノックアウトピン7aと下部ノックアウトピン7bとに分割したが、分割することなく一体のノックアウトピン7としてもよい。ノックアウトピン7を一体とする場合には、そのノックアウトピン7の下端を前記ノックアウトレバー6に係合するとともに、そのノックアウトピン7の下端よりも上方の位置において前記係合面17bを形成し、前記揺動アーム13の他端13bを係合させればよい。
【0029】
また、揺動アーム13は、鍛造工程の流れ方向に沿って併設された複数のノックアウトピン7に対し、そのノックアウトピン7毎に一個づつ別々に設けることができるので、その揺動角度を調整すれば、各ノックアウトピン7のノックアウト量を個々に設定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施例の構成を示す全体正面図
【図2】図1の要部拡大側面図
【図3】図1の機械駆動機構を示す要部拡大正面図
【図4】図1の油圧駆動機構を示す要部拡大正面図
【図5】油圧駆動機構の構成を示す説明図
【図6】揺動レバーの要部拡大図
【図7】ノックアウトの動作順序を示す説明図
【図8】図7の要部拡大図で、フィンガによるワークの搬出状況を示す
【符号の説明】
【0031】
1 カム
2 ローラ
3 上レバー
4 連結棒
5 下レバー
6 ノックアウトレバー(タイミングレバー)
6a,13a 揺動軸
7 ノックアウトピン
7a 上部ノックアウトピン
7b 下部ノックアウトピン
8 ボルスタ
9 ダイホルダ
10 金型
11,14 油圧シリンダ
12,15,16 空気シリンダ
13 揺動アーム
13b 他端
17a 下端面
17b 係合部(係合面)
18 ガイド
19 穴
23 ライナー
23a ライナー上面
24 上端部材
25 本体部材
F フィンガ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造プレスのワークWを突き上げる昇降自在のノックアウトピン7と、前記鍛造プレスのスライド駆動軸に連動して揺動するノックアウトレバー6を介して前記ノックアウトピン7を上昇させる機械駆動機構Aと、前記ノックアウトピン7を上昇させる油圧駆動機構Bとを備えた鍛造プレスのノックアウト装置において、
前記油圧駆動機構Bは、揺動アーム13と該揺動アーム13の一端を押圧する油圧シリンダ14を備え、前記ノックアウトピン7は、その下端よりも上方に前記揺動アーム13の他端と係合する係合部を有し、前記機械駆動機構Aによりノックアウトピン7を上昇させ、さらに、前記油圧駆動機構Bによりノックアウトピン7を上昇させることを特徴とする鍛造プレスのノッアウト装置。
【請求項2】
前記ノックアウトピン7は、上部ノックアウトピン7aと、下端が前記ノックアウトレバー6に係合する下部ノックアウトピン7bに分割されており、前記上部ノックアウトピン7aの下部に前記揺動アーム13の他端と係合する係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鍛造プレスのノックアウト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218533(P2006−218533A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36318(P2005−36318)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】