鍛造用金型
【課題】複雑な金型形状であっても成形孔内に閉じ込められたガスをスムーズに逃がし、欠肉の発生を抑えた寸法精度の良好な鍛造成形品を製造する。
【解決手段】成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有し、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられ、前記第1段部の開口部面積より大きく、前記第2段部の開口部面積より小さい径を有する制御ピンが備えられているので、ガス抜き通路に進入した鍛造用素材が製品排出時に折れても、次の鍛造時にガスの圧力により次段まで押され、ガス抜き通路が塞がれることがない。
【解決手段】成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有し、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられ、前記第1段部の開口部面積より大きく、前記第2段部の開口部面積より小さい径を有する制御ピンが備えられているので、ガス抜き通路に進入した鍛造用素材が製品排出時に折れても、次の鍛造時にガスの圧力により次段まで押され、ガス抜き通路が塞がれることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑形状をもつ鍛造成形品を欠肉なく製造する鍛造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造により、複雑形状の製品を製造する場合、製品各部の肉や寸法が十分に確保することが重要である。
【0003】
たとえば、複雑形状の製品の一例である、アルミ合金製のスクロールを鍛造成形する場合、特に渦巻状の羽根の成形に困難性があり、均一な高さ及び肉厚をもつ渦巻状の羽根を成形することが課題となっていた。その困難性の原因として、キャビティに閉じ込められた空気により鍛造用素材の流入が阻止された結果、寸法精度の良好な鍛造品を得ることが困難と考えられていた。
【0004】
そこで、日本特開平10−118734号公報には、キャビティに閉じ込められた空気によって鍛造用素材の流入が阻止されることを防止し、寸法精度の良好な鍛造品を得ることを目的として、金型にエアベントを設ける方法が開示されている。
【0005】
また、エアベットの孔径、開口位置などについては次のように開示している。
孔径は、直径1mm以上が好ましく、最大その位置の肉厚の幅までとることができる。エアベントの孔径が直径1mmに達しないと、鍛造中に孔内に押し込まれた鍛造用素材が鍛造品を金型から取り出す際に折れ、孔内に残留する虞れがある。その結果、次の鍛造時にキャビティ内の空気を逃がすエアベントの作用が期待できなくなる。しかし、肉厚よりも大きな直径の孔では、流入する鍛造用素材の容積が大きくなりすぎ、孔の近傍で欠肉が生じ易くなる。また、比較的大きな突起部が形成されるため、鍛造後に製品から突起部を削り取る作業が困難になり、製品歩留りも低下する。
【0006】
エアベントを開口させる位置は、製品形状に応じて決定されるが、空気溜りが生じ易い箇所である限り、製品のコーナー部,行き止まり部,肉厚の大きな部分,肉厚変化の大きな部分等の何れであっても良い。また、製品に対して対称的にエアベントを開口させるとき、鍛造用素材の流動がスムーズになり、鍛造品の寸法精度が一層向上する。更に、各部における鍛造用素材の塑性流動が一定になるように、エアベントの孔部を鍛造用素材溜めとしても利用できる。エアベントは、ポンチ速度(鍛造速度)にもよるが、キャビティ内の空気が圧縮されることなくスムーズに外部に逃げる程度の個数及び大きさが必要である。エアベントを設けた金型を使用して鍛造しているので、得られる鍛造品には、エアベントの開口位置に対応してイボのように鍛造用素材が突出している。この突起部は、ベルトサンダー、機械加工等によって鍛造品から取り除かれる。
【0007】
また、上記の問題に対する対策として、日本特開平10−272532号公報には、型分割部(但しヤキバメ等で固定されており摺動しない。)の嵌め合わせ部、当接部のクリアランスをガス抜き通路として利用する場合もある。また、日本特開昭61−154727号公報には、ダイスとノックアウトピンとから構成される型摺動部をガス抜き穴として併用する方法も開示されている。型分割部とは、金型を複数の分割体に分割したときの分割体の境界部を示す。また、型摺動部とは、分割体の少なくとも一つが摺動しており、摺動する型の境界部を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−118734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の鍛造用金型のようなエアベント用孔を設けると、孔径を単にΦ1mm以上としたものであるので、その結果、エアベント用孔に押し込まれた鍛造用素材の量が多くなり、その結果、製品にピン状の形状(以後、エアーピンと呼ぶ)が付与されてしまうという点で不具合が発生した。特に高い鍛造荷重を必要とする製品を鍛造するとき、また型分割位置に近い箇所に設置したときに発生し易い。
【0010】
また、型摺動部であるノックアウトピンとのクリアランスをガス抜き通路として利用した場合は、クリアランス部に鍛造用素材が侵入しやすくなる。その結果バリが発生しやすくなるために、ノックアウト時にその侵入したバリが取れてクリアランス部に堆積するのでノックアウトピンが摺動しづらくなるという点で不具合が生じ、積極的にガス抜きとして利用するには問題が多かった。また、ガス抜き穴を併用した場合は、その傾向は顕著となる。さらに、摺動部を利用する場合は、摺動部を配置する場所に制約があるので金型設計に自由度がない。
【0011】
また、型分割部(ヤキバメ等により摺動しない部位)を利用した場合は、型同士のクリアランスが小さい又はヤキバメ量(締め代)が大きい場合は、必要な通路が確保できずに充分なガス抜き効果が得られなくガスが残るために、欠肉が発生し成形が不良になる可能性がある。逆に、型同士のクリアランスが大きい又はヤキバメ量(締め代)が小さい場合は、鍛造用素材が侵入しやすくなるので、バリの発生が大きくなってしまう。
【0012】
そこで、特に、高い鍛造荷重を必要とする製品および型分割位置に近い箇所にガス抜き穴を設ける必要があるような形状を、精度よく成形する際に設けるに適したガス抜き通路が求められている。なお、本明細書においてガスとは、鍛造工程の雰囲気の気体、例えば、空気、不活性ガス、または潤滑剤の気化したもの、例えば、水蒸気、気化した油などを含むものとする。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑み完成されたもので、複雑な形状であっても金型の成形孔内に閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑え、成形孔内に十分に鍛造用素材を流動させ、寸法精度の良好な鍛造成形品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(1)成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有して成形順序で最後に成形される箇所に設けられ、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられ、前記第1段部の開口部面積より大きく、前記第2段部の開口部面積より小さい径を有して鍛造用素材が前記ガス抜き通路内の前記第2段部まで侵入するのを阻止する制御ピンが備えられていることを特徴とする鍛造用金型である。
なお、上記の型分割部とは、金型を複数の分割体に分割したときの分割体の境界部の部位であってヤキバメ等によりその分割体が摺動しないように固定された部位のことである。また、上記の一体型部とは、分割されていない金型構成部品で構成された部位のことである。金型全体が一体物で製作された場合を含む。
また、上記ガス抜き通路の向きは、主鍛造方向又は金型の移動方向に対して斜め方向であるとよい。
上記ガス抜き通路は、前記成形孔内に塗布する潤滑剤の排出通路を兼ねるとよい。
上記成形孔壁面に形成された開口部のガス抜き通路の次の段以降の面積が、開口部側の面積の1.04倍以上であるとよい。
上記成形孔壁面に形成された開口部側の形状部の長さが、開口部側の面積値の1〜15倍であるとよい。
前記開口部を成形孔の金型壁面と鍛造用素材により閉空間となった凹部及び/又は溝部に閉じ込められたガス溜りが発生する位置に設けるとよい。
上記鍛造用金型を使用し、成形孔内に鍛造用素材を投入し、成形孔の凹部及び/又は溝部に閉じ込められるガスをガス抜き通路を介して逃がしながら鍛造するとよい。
上記鍛造用素材は、アルミニウム、鉄、マグネシウム、チタンから選ばれる何れか1種の金属または、これらを主成分とする合金であるとよい。
上記鍛造用金型を有する鍛造装置がよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有して成形順序で最後に成形される箇所に設けられ、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられているので、ガス抜き通路に進入した鍛造用素材の一部が製品排出時にガス抜き通路内で折れても、次の鍛造時にガスの圧力により次段部まで押され、詰りが解消されガス抜き通路が塞がれない。したがって、複雑な形状であっても金型の成形孔内に閉じ込められたガスをスムーズに逃がし、成形孔内に十分に鍛造用素材を流動させることができる。その結果、閉じ込められたガスによる欠肉の発生を抑えた寸法精度の良好な鍛造成形品を製造することができる。第1段部の開口部面積より大きく、第2段部の開口部面積より小さい径を有する制御ピンが備えられているので、鍛造用素材がガス抜き通路内の第2段部まで侵入するのを阻止することができる。
【0016】
また、成形孔壁面に形成された開口部の面積を小さくしてあるので、エアーピンの形状が細く短くなるため、製品からの除去作業を軽減することができる。
【0017】
また、成形孔壁面に形成された開口部の断面積が0.01〜1mm2であるのでエアーピンの形状が細く短くなるため、製品からの除去作業を軽減することができる。また、成形孔壁面に形成された開口部の断面形状の内接円の直径が0.1〜1mmであるので、エアーピンの形状が細く短くなり、製品からの除去作業を軽減できる。また、成形孔壁面に形成された開口部のガス抜き通路の次の段以降の面積が、開口部側の面積の1.04倍以上であるので、通路壁面がエアピンと接触することなく目詰まり解消時に低抵抗とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1図は、本発明の鍛造用金型によって製造するのに適した鍛造製品の一例を示す斜視図である。
【図2】第2図は、本発明の鍛造用金型によって製造するのに適した鍛造製品の他の例を示す斜視図である。
【図3】第3図は、本発明の鋳造用金型によって製造するのに適した鋳造品の他の例を示す斜視図である。
【図4】第4図は、本発明の鍛造用金型の一例を示す縦断面図である。
【図5】第5図(A)〜(E)は、同鍛造用金型に使用されるガス抜き通路の例を示す拡大縦断面図である。
【図6】第6図(A)〜(D)は、同鍛造用金型に使用されるガス抜き通路の要部平面図、断面図である。
【図7】第7図は、第4図に示す鍛造用金型のガス溜り部の拡大断面図である。
【図8】第8図(A)〜(C)は、本発明の鍛造用金型を使用した鍛造用素材の各成形工程を示す説明図である。
【図9】第9図(A)〜(F)は、本発明の鍛造用金型を使用した鍛造用素材の各成形工程を示す説明図である。
【図10】第10図(A)〜(E)は、本発明の鍛造用金型を使用した鍛造用素材の各成形工程を示す説明図である。
【図11】第11図は、本発明に用いる鍛造装置の一実施例を示す説明図である。
【図12】第12図は、制御ピンを備えたガス抜き通路の一例を示す拡大縦断面図である。
【図13】第13図は、第2図の鍛造品を鍛造するための金型の一例を示す縦断面図である。
【図14】第14図は、第3図の鍛造品を鍛造するための金型の一例を示す縦断面図である。
【図15】第15図は、第14図に示す金型の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の鍛造用金型は、断面積が異なる複数の段部を有し、成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられているガス抜き通路を備えたことにより、ガス抜き通路の目詰まりを防止して、欠肉の発生を抑えた寸法精度の良好な鍛造成形品を製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下にこの発明の実施の形態の一例を説明する。
【0021】
<成形品の説明>
本発明で対象としている成形品の有する複雑な形状とは、第1図に示したような、リブ11が高くなっている形状、第2図に示したような、周囲が凹部であるために実質的に凸12が高くなっている形状、或いは、第3図に示したような内燃機関のピストンのような形状を有しているものである。
【0022】
このような形状に対応した金型の部位は、金型壁面と鍛造用素材により閉空間となった凹部及び/又は溝部となり、そこにガスが閉じ込められ、ガス溜りが発生し易くなるからである。そのような形状を有する製品としては、たとえば、斜板式コンプレッサーの双頭ピストン、スクロール式コンプレッサーの渦巻体、内燃機関ピストンなどがある。本発明は、それらの形状を有する製品を直接成形する場合、それらの形状を有する一次加工成形品を成形する場合も対象としている。
【0023】
第13図は、金属素材から鍛造形成品を鍛造する為の鍛造用金型の第2実施例を示し、第4図の金型と同様に金型30は、下金型31と上金型32および形成品を下金型31内から取り出すためのノックアウトピン33、またはガス抜き通路34を含んで構成される。また、下金型31及び上金型32は、中心部に鍛造成形孔35がそれぞれ設けられている。
【0024】
この鍛造用金型は第2図に示すような、ベースプレート面13と羽根部14から成るスクロール式コンプレッサーの渦巻体を成形するのに好的に用いられる。
【0025】
第14図は、本発明による鍛造用金型の第3実施例を示し、第13図の金型と同様に、本実施例の金型30は、下金型31にガス抜き通路34が設けられている。
【0026】
この鍛造用金型30は第3図に示すようなヘッド面15、スカート部16、リブ部17、ピンボス部18を有する内燃機関のピストンを成形するのに好的に用いられる。
【0027】
<鍛造用金型の説明>
ガス抜き通路を設ける金型の一実施例について第4図を基に説明する。
【0028】
本発明の鍛造用金型30は、金属素材から鍛造成形品を鍛造するための下金型31と上金型32および成形品を下金型31内から取り出すためのノックアウトピン33、またガス抜き通路34を含んで構成されている。また、金型31、32は、中心部に鍛造成形孔35がそれぞれ設けられている。
【0029】
この鍛造用金型は、例えば、第1図に示すような上金型の動作方向軸に対し平行なリブ11を有している鍛造成形品として双頭ピストンを鍛造するのに用いる鍛造用金型である。以降、この双頭ピストンの鍛造に基づいて説明する。鍛造用金型30の材質は、例えば、ダイス鋼等を使用することができる。
【0030】
<ガス抜き通路の説明>
ガス抜き通路の形状
本発明のガス抜き通路34は、例えば、第5図(A)に示すようにガス流方向に、少なくとも第1段部X、第2段部Yの2部構成を有している。さらに多段の構成とすることも可能である。第1段部X1は、成形孔35側に設けられる部位である。ここで、第1段部X1と第2段部Y1の接続部Z1は、第1段部X1の断面積より第2段部Y1の断面積が大きくなるよう接続されていれば良い。また、部分的に第2段部Y1より大きい断面積を有していても良い。
【0031】
鍛造用金型30の成形孔壁面に形成された開口部36の断面積は、例えば、0.01〜1mm2に形成する。また、開口部36の直径を0.1〜1mmとしてもよい。
【0032】
本発明に係る金型の加工、組上げは従来公知の方法を用いることができる。ここで、ガス抜き通路34は、分割型を合体させる前でも後でも、何れの時に形成しても良いが、ガス抜き通路の精度を考慮すると、合体後に形成するのが好ましい。更に、一体型においても、ガス抜き通路34は、鍛造成形孔35を作製する前に作成しても、後に作成してもよいが、ガス抜き通路の精度を考慮すると、鍛造成形孔35を作製した後に形成した方が好ましい。
【0033】
第2段部Y1の形状は特に限定されない。例えば、後述するような動作においてエアーピンを押出したガスを一時的に溜め込むガスダンパーとして充分な長さを有し、押出されたエアーピンを溜め込むに充分な長さを有している形状、または、ガスを大気中に放出すると同時に、排出されたエアーピンを除去するための開放口が設けられている形状とすることができる。例えば、鍛造金型30を貫通して外面に開放口を有している形状とすることができる。
【0034】
<ガス抜き通路の断面積>
第1段部X1の断面積は、0.01〜1mm2(より好ましくは0.03〜0.2mm2)であることが好ましい。一方、第2段部Y1の断面積は、第1段部の断面積の1.04倍以上(より好ましくは1.3〜3倍)であることが好ましい。
【0035】
第1段部X1の断面積をこのように構成することで孔径が小さくなり、鍛造用素材の進入を抑制できるので好ましい。
【0036】
第2段部Y1の断面積を第1段部X1の断面積の1.04倍以上にすることにより、侵入した鍛造用素材に接触しないので、ガス抜き通路内でエアーピンが折れた後の鍛造時、ガスの圧力によりエアーピンが押されて動く際の(摩擦)抵抗とならない。
【0037】
また、開口部36の断面の外接円の直径が1mm以下、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.2mm〜0.5mmです。それ未満では孔開け加工が困難。それを超えると鍛造用素材の流入が多くなるため、鍛造後のエアーピンが長くなりすぎる可能性があるからである。
【0038】
<ガス抜き通路の長さ>
第1段部X1の長さは、第1段部X1の面積値の1〜15倍(より好ましくは5〜10倍)であることが好ましい。例えば、第1段部X1の長さは、1〜10mmであることが好ましい。また、第2段部Y1の長さは、下金型31の下側或いは上金型32の上まで貫通した長さであることが好ましい。
【0039】
第1段部X1の長さをこのようにすることにより、エアーピンが折れた後の鍛造時、ガスの圧力によりエアーピンが押されて動く際の(摩擦)抵抗を小さく制御できる点から好ましい。また、第1段部X1の長さを第1段部X1の面積値の1倍未満にすると、長さが短く鍛造用金型が欠ける可能性がある。更に、第1段部X1の面積値の15倍以上にすると、(摩擦)抵抗が大きく、エアーピンが抜けない可能性があるからである。
【0040】
第2段部Y1の長さをこのようにするのは、有効長さが決まっていると詰まったエアーピンが第1段部X1まで堆積してしまう可能性があり、エアーピン詰まりの解消の効果がなくなるからである。
【0041】
このような形状としたので、連続的に成形品を製造した際、進入した鍛造用素材が製品排出時にガス抜き通路34内で折れても、次の鍛造時、ガスの圧力により次段部まで押され、詰りが解消されガス抜き孔が塞がれない。したがって、複雑な形状であっても金型の鍛造成形孔35内に閉じ込められた空気をスムーズに逃がし、成形孔内に充分に鍛造用素材39を流動させることができる。
【0042】
次に、ガス抜き通路の形状の具体例を図で説明する。
【0043】
第5図は、通路形状の例のガスの流れる方向に略平行な断面の例を示す。
【0044】
第5図(A)は、前述したように成形孔側の第1段部X1の断面積を第2段部Y1の断面積より小さく形成し、第1段部X1と第2段部Y1の接続部Z1を、直角な段部としたものである。
【0045】
第5図(B)は、別の実施例を示すもので、第1段部X2と第2段部Y2の接続部Z2の角度条件(θ)を付与したものである(0度<θ≦90度)。より好ましくは、1度以上である。後述する第5図(C)と同効果でエアーピンを折れやすくすることができるからである。さらに、目詰まり解消時には抵抗とならない。また、10度以上がさらにより好ましい。
【0046】
角度条件(θ)を10度以上を好ましいとした理由は、10度以上だと接続部Z2でも流入した鍛造用素材がガス抜き通路34の壁面に接触しない状態とすることができ、接触した場合でも、その結果、目詰まりした後の鍛造工程で排除がより容易となるからである。
【0047】
第5図(C)は、他の実施例を示すもので、第1段部X3を先太りのテーパ状に形成した例である。本実施例のように角度違いの、先太りに形成した場合、製品排出時に開口部37でエアーピンが折れやすく、製品側にエアーピンが残りにくく、積極的に目詰まりさせた形状である。
【0048】
第5図(D)は、他の実施例を示すもので、第1段部X4の形成を先細りのテーパ状に形成した例である。本実施例のように角度違いの、先細りに形成した場合、製品排出時に第2段部Y4でエアーピンが折れやすくピン長さの制御を意図している。また、開口部38側での根本を太くしているので第1段部X4では目詰まりし難く、好ましい結果を得ることができる。
【0049】
第5図(E)は、本発明の他の実施例を示すもので、第1段部X5の形状を径の異なる凹凸として、ガス抜き通路の断面形状を途中で変化させたものである。
本実施例のように構成した場合、第1段部X5への鍛造用素材の侵入の抑制するとともに、侵入した鍛造用素材を切れやすくする。
【0050】
また、第1段部X5の凹凸量を0.01〜0.3mmとしたのでガスの圧力により侵入した鍛造用素材が下段まで押し出されるのを阻害することなく、目詰りが解消できる。更に、凹凸とした形状の輪郭は、矩形状、三角状、のこぎり歯状などにすることもできる。
【0051】
第6図(A)、(C)、(D)は、本発明の鍛造用金型に使用されるガス抜き通路34の要部平面図である。ここで断面形状は、ガスの通り道が確保できれば良く、特に断面形状の制限はないが、作製し易さの点からは円形状が好ましい。
【0052】
第6図(A)は、断面形状を円形状としたものである。第1段部Xと第2段部Yの中心Oを一致させている。また、第1段部Xと第2段部Yの大きさの差は半径で0.2〜1mmが好ましい。0.2mm未満では、差が小さく、エアーピンが第2段部Y内周と接触する可能性があり、ガスの圧力によりエアーピンが押されて動く際の(摩擦)抵抗となる虞れがある為である。
【0053】
また、第6図(B)に示す様に、径が1mmを超える差を有する場合では、第1段部Xと第2段部Yの差が大きい。つまり、第1段部Xの張り出し量が大きく、破損しまう可能性があるからである。
【0054】
第6図(C)は、ガス抜き通路34の断面形状を四角とした場合である。第2段部Yは、第1段部Xの形状を0.2〜1mm外側にオフセットした形状である。
【0055】
第6図(D)は、第1段部Xの断面形状を円形状、第2段部Yの断面形状を四角にした場合である。第1段部Xと第2段部Yの断面形状の距離は0.2〜1mmである。
【0056】
第6図(C)、(D)では断面形状を四角としたが多角形でも楕円でも可能である。つまり、第1段部Xと第2段部Yの形状は、大きさの差(距離)が好ましい範囲である0.2〜1mmの範囲であれば、円、多角形、楕円のどの組み合わせでも可能である。
【0057】
<ガス抜き通路の位置>
金型の鍛造成形孔35に対して、ガス抜き通路34の開口部36の位置は、製品形状に応じて決定されるが、空気溜りが生じ易い箇所である限り、製品のコーナー部,行き止まり部,肉厚の大きな部分,肉厚変化の大きな部分等の何れであっても良い。特に、成形順序で最後に成形される箇所に設けるのが、そのような箇所は閉じ込められた空気による欠肉の発生度合いが大きいので、その発生を解消できる点から好ましい。
【0058】
ガス抜き通路34の設置部位は、例えば、次のように考えて決めることが出来る。
【0059】
1)成形時、鍛造用金型30と鍛造用素材によって密閉されるような場所でガス溜りが発生すると予想される箇所。ガス溜りは、鍛造欠陥(未成形)の原因となるからである。例えば、第1図に示す成形品に対応した第4図に示した鍛造用金型30では、符号(a)〜(h)で示す8部位にその可能性がある。
【0060】
2)ノックアウトピン33の位置が設置される箇所(型摺動部)は、型のノック穴とノックアウトピン33にクリアランス(ノックアウトピンが摺動するために必要)があるため、そこからガスが抜けて、ガス溜りとなりにくい。そこで、鍛造欠陥の発生を検討、考慮した上で、まずはガス溜りになりそうな位置にノックアウトピン33を設ける。第4図では、ノックアウトピン33を4箇所設置することで、対象のガス溜り部を8部位から4部位(b)、(c)、(f)、(g)に絞り込むことができる。
【0061】
3)次に、ガス抜き通路34をガス溜り部のどこに配置するかを検討する。先ず、鍛造用素材のフローを考慮し、ガス溜り部の内どこが最後に成形されるかを判断基準とする。
【0062】
第7図に第4図に示す鍛造用金型30のガス溜り部の拡大図を示す。図中、最後に成形される部位は(I)、(J)となることが予想される。したがって、この2箇所(I)、(J)に設けるのが好ましい。
【0063】
以上の結果、第1図に示した製品に対する鍛造用金型30では8箇所(=2箇所/部位×4部位)にガス抜き通路34を設置する必要がある。
【0064】
その結果、開口部を成形孔の凹部及び/又は溝部に閉じ込められるガス溜り(型と鍛造用素材により閉空間となった箇所)が発生する位置に設置された金型となる。
【0065】
なお、本発明のガス抜き通路34は、鍛造用金型の型分割部(図示せず)に配置しても良い。但し、本発明のガス抜き通路34は、開口部36が分割体の少なくとも一つが摺動している摺動型の境界部に設ける必要はない。
【0066】
<ガス抜き通路の向き>
本発明のガス抜き通路34の向きは、鍛造方向(金型の移動方向)に平行であることに限定されない。そのために、金型設計の自由度が大きくなるので、複雑な形状の金型を容易に設計できる。
【0067】
特に、製品排出方向に平行でない場合は、エアーピンを容易に切断することができるので好ましい。
【0068】
また、素材進入の抑制する効果をより高める場合には、斜め方向(例えば、主鍛造方向、もしくは金型の移動方向に対して45〜90度、好ましくは45〜70度の範囲)に設定することが好ましい。
【0069】
<ガス抜き通路内に制御ピンを入れる実施例>
第12図に示すように、鍛造成形時に目詰まりを排出した後に第2段部Yに制御ピン90を挿入する機構を設けてもよい。制御ピン90とは、目詰まり時に第2段部Yから退避してエアーピン排出の妨げにならないとともに、通常(目詰まりしていない)時に第2段部Yに進入(上昇)することにより鍛造用素材がガス抜き通路34内の次段(第2段部Y)まで侵入するのを阻止する。また、制御ピン径は、上段穴径より大きく下段穴より小さいものとし、長さは、下段長さより短く、好ましくは小数点第一位のレベルで短く、例えば、好ましくは下段部長さより0.01〜1mm短くする。
【0070】
第1段部Xに鍛造用素材が進入しても制御ピン90が存在することにより差込ピン長さ及び差込み量を制御、抑制できるからである。
【0071】
第5図(D)に示すガス抜き通路の形状と併用すれば、制御ピン90の移動なしでも使用できる。開口部が広くエアーピンが折れにくいからである。
【0072】
<潤滑剤排出との関係>
ガス抜き通路34は、金型成形孔内に塗布した潤滑剤を排出させる通路としても機能させることが出来る。潤滑カス溜りによる欠肉の解消目的にも使える可能性があるので相乗的に成形品の形状精度が向上する。
【0073】
<ガス抜き通路が詰まらない成形工程の説明>
第8図〜第10図に本発明の鍛造用金型を使用した、素材投入〜成形〜差込バリ状況〜排出〜次の成形の各工程を示す。
【0074】
先ず、第8図(A)では、鍛造成形孔(キャビティ)35内に鍛造用素材39を置き、プレス鍛造する工程を示す。上金型32が下降し成形が実施される。
【0075】
第8図(B)、(C)では、金型割に近い形状部より成形されて行く。ガス抜き穴周辺の凹形状部では、鍛造用素材39と型により閉空間が形成される。閉空間には、ガスは圧縮されながら充満することになる。
【0076】
第9図(A)、(B)、(C)では、鍛造用金型30と鍛造用素材39により形成された閉空間内のガスは、ガス抜き通路34より排出されながら成形される。
【0077】
第9図(D)では、成形された製品を鍛造用金型からノックアウトピンによって排出する。その時、差込張り(エアーピン)40が折れ、ガス抜き通路34の第1段部X内に滞在し目詰まりが発生する。
【0078】
第9図(E)、(F)、第10図(A)では、次の鍛造時、ガス圧により目詰まりが回避される場合を示す。
【0079】
目詰まりにより、閉空間内のガスは排出されない状態で残っているが、成形工程が進行するにつれて、さらにガスが圧縮されていく。成形終了の直前の時点でついに、エアーピン40とガス抜き通路34との(摩擦)抵抗力より大きな圧縮力が発生し、その力で先に目詰まりしているエアーピン40を第2段部Yまで押し動かし、そこでエアーピン40は排出され、目詰まりは解消され、ガスが抜ける。
【0080】
また、第10図(B)、(C)、(D)、(E)では、次の鍛造時、ガス圧と素材成形による力により目詰まりが回避される場合を示す。
【0081】
前述の第9図(E)、(F)、第10図(A)に示す、圧縮空気圧では、下段までエアーピン40を移動できなくても、2回目の成形時の鍛造用素材がフローすることによりガスの圧縮率がより上がるので下段まで先のエアーピン(目詰まりピン)40は押し動かされる。さらに、鍛造用素材自体がガス抜通路34へ侵入することにより、直接、下段まで先のエアーピン(目詰まりピン)40が押し動かされる。
【0082】
本発明の鍛造成形品の製造方法では、以上の操作を繰り返すことにより安定して鍛造成形品を連続して製造することができる。
【0083】
ここで、第1段部Xの長さは、上記した第10図(B)、(C)、(D)、(E)に示すパターンで解消されるように設定することにより、目詰まり解消がより安定する。
【0084】
<他の実施例>
本発明の鍛造用金型30は、上記説明したガス抜き通路34を少なくとも1つ有するものである。他に従来公知のガス抜き通路を組み合わせて有していても良い。そのような場合でも、上記説明したガス抜き通路を有していることにより、本発明の目的は達せられるからである。
【0085】
<鍛造用素材の説明>
本発明に用いる鍛造用素材39の製法は、連続鋳造、押出、圧延等いずれであっても良い。
【0086】
アルミニウムやアルミニウム合金の場合、連続鋳造された丸棒材が安価で好ましい。例えば、昭和電工株式会社製SHOTIC材(登録商標)が挙げられる。アルミニウム合金においては、気体加圧式ホットトップ鋳造法で連続鋳造された丸棒材が、優れた内部健全性を持ち、結晶粒が微細であり、かつ、塑性加工による結晶粒の異方性がないため、摩擦抵抗部の抵抗効果を安定的に得ることができるので好ましい。
【0087】
棒状材は、さらに所定の長さに切断され、必要に応じて面削処理を施して、次工程に送られる。
【0088】
<鍛造成形工程>
本発明での鍛造は型鍛造であり、本発明に用いる鍛造装置の構成の一例を、第11図をもとに説明する。鍛造装置は、鍛造機81と、上ボルスター82に取りつけられた上金型83と、下ボルスター84に取り付けられた下金型85とを含むものである。また、本発明に用いる金型の一例を第4図に示す。鍛造用金型30は、金属素材から鍛造成形品を鍛造するための下金型31と上金型32および成形品を下金型32内から取り出すためのノックアウトピン33、またガス抜き通路34を含んで構成されている。
【0089】
前記金型31、32は、中心部に鍛造成形孔35が設けられている。また、鍛造成形品は第1図に示すような上金型の動作方向軸に対し平行なリブ11形状を有している。そして、必要に応じて、スプレー前後移送装置(表示せず)スプレー回転装置(表示せず)を備えシャフト(表示せず)を介して、スプレー前後装置に取りつけられた潤滑剤スプレーノズル(表示せず)を有している潤滑剤塗布装置を設置することができる。
【0090】
ここでガス抜き通路34は、鍛造方向(金型の移動方向)と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有するガス抜き通路である。
【0091】
本発明は、熱間、温間、冷間を問わないで適用することができる。一般には、鍛造の温度条件により、鍛造用素材の流動性が変わり、差込バリや、ガス抜き通路への鍛造用素材の侵入の挙動が変わるので、それに合わせた金型の設計をする必要があるが、本発明では、鍛造用素材の進入の挙動の如何によらずに、目詰まり現象を解消できる。
【0092】
準備した鍛造用素材39を上金型32、下金型31により形成される空間(成形孔)35に押し込み、成形品を鍛造成形する。また、成形された素形材はノックアウトピン33により下金型32から取出される。なお、鍛造に際しては金型内周に潤滑剤を塗布してから実施するのが好ましい。
【0093】
鍛造用素材39には、必要に応じて、潤滑剤処理を施すのが好ましい。更に、ガス抜き通路34を設けているので、ガス抜き通路34が潤滑剤抜きとしても機能する。したがって、焼き付きまたは潤滑カス溜りによる欠肉が懸念される箇所にガス抜き通路34を設置しても相乗的な効果的を有する。
【0094】
<成形品の特徴>
また、本発明の鍛造用金型により鍛造した場合、形成されるエアーピン40の形状が細く短くなる。このため、後処理工程で除去する際に、不良品の発生率を低減できる。また、除去作業の作業工数が軽減できる。
【0095】
以下、具体例を示して本発明の作用効果を明確にするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
第1図のリブ11の形状を有した成形品を、本発明に係る鍛造用金型を用いて製造した例である。また、ガス抜き通路34は、第5図(A)、(B)に示したものを用いた。
【0097】
鍛造用素材の潤滑処理、金型の潤滑剤、金型温度、鍛造用素材の温度の各条件は、表1に示すように鍛造用素材の潤滑処理はなし、金型の潤滑剤は油性潤滑剤、金型温度は180℃、鍛造用素材の温度は410℃とした。また、鍛造用素材は、4000系AL合金を用いた。
【0098】
【表1】
【0099】
鍛造結果は、表2に示す。
【0100】
表2より明らかなように、実施例1では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.3mm、第1段部Xの長さは5.0mm、第2段部Yの径はφ1.0mm、接続部Zの角度90度、エアーピン長さ1.5mm、目詰まり現象は無しであった。
【0101】
実施例2では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.5mm、第1段部Xの長さは5.0mm、第2段部Yの径はφ1.0mm、接続部Zの角度90度、エアーピン長さ3.0mm、目詰まり現象は無しであった。
【0102】
実施例3では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.5mm、第1段部Xの長さは12.0mm、第2段部Yの径はφ1.0mm、接続部Zの角度90度、エアーピン長さ3mm、目詰まり直後の鍛造工程では解消されず、その次の3回目の鍛造工程で解消した。
【0103】
比較例1(従来)では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.5mm、第2段部Yの径はφ0.5mm(段部を有していない。)、接続部Zの角度0度、エアーピン長さ3mm、目詰まり現象は存在した。
【0104】
比較例2(従来)では、荷重280t、第1段部Xの径はφ1.1mm、第2段部Yの径はφ1.1mm(段部を有していない。)、接続部Zの角度0度、エアーピン長さ14mm、目詰まり現象は無しであった。しかし、エアーピンが長く、次のトリム工程で不良品が発生した。
【0105】
【表2】
【0106】
第13図は、金属素材かつ鍛造成形品を鍛造するための鍛造用金型の第2実施例を示し、第4図の金型と同様に金型30は、下金型31と上金型32および成形品を下金型31内から取り出すためのノックアウトピン33、またはガス抜き通路34を含んで構成されている。また、下金型31及び上金型32は、中心部に鍛造成形孔35がそれぞれ設けられている。
【0107】
この鍛造用金型は、第2図に示すようなベースプレートド面13と羽根部14から成るスクロール式コンプレッサーの渦巻体を成形するのに好的に用いられる。
【0108】
この渦巻体の成形は、凸部12を有するベースプレート面13が成形された後に、羽根部14に素材が塑性流動して成形が完了する。この凸部12の成形時に、その部位にガスが閉じ込められる。ガス抜き通路は、ガスが閉じ込められる箇所に設けるのが好ましい。その結果、閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑えることが出来るからである。
【0109】
従って、本実施例ではガス抜き通路34は、ガスの閉じ込められる部位である、凸部12に対応した位置に設置している。
【0110】
第14図は本発明による鍛造用金型の第3実施例を示し、第13図の金型と同様に、本実施例の金型30は、下金型31にガス抜き通路34が設けられている。
【0111】
この鍛造用金型30は、第3図に示すようなヘッド面15,スカート部16,リブ部17、ピンボス部18を有する内燃機関のピストンを成形するのに好的に用いられる。
【0112】
第15図は、上記内燃機関のピストンのリブ部17、スカート部16でのガス抜き通路付近の成形時の空気の溜まり部の拡大断面図であって、空気溜まりの発生する様子を模式的にしたものである。
【0113】
内燃機関ピストンの成形は、ヘッド面15が成形された後に、リブ部17、スカート部16、ピンボス部18に素材が塑性流動して成形が完了する。ガス抜き通路34は成形順序で最後に成形される箇所に設けるのが好ましい。その結果、閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑えることが出来るからである。
【0114】
従って、本実施例ではガス抜き通路34は、最後に成形される部位である。リブ部、スカート部、ピンボス部に設置している。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、この発明にかかわる鍛造成形品は、複雑な形状であっても金型の成形孔内に閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑え、成形孔内に十分に鍛造用素材を流動させ、寸法精度の良好な成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0116】
30・・・・・・鍛造用金型
34・・・・・・ガス抜き通路
35・・・・・・鍛造成形孔
36・・・・・・開口部
39・・・・・・鍛造用素材
40・・・・・・エアーピン(目詰まりピン)
90・・・・・・制御ピン
X,X1〜X5・第1段部
Y,Y1〜Y5・第2段部
Z,Z1〜Z5・接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑形状をもつ鍛造成形品を欠肉なく製造する鍛造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造により、複雑形状の製品を製造する場合、製品各部の肉や寸法が十分に確保することが重要である。
【0003】
たとえば、複雑形状の製品の一例である、アルミ合金製のスクロールを鍛造成形する場合、特に渦巻状の羽根の成形に困難性があり、均一な高さ及び肉厚をもつ渦巻状の羽根を成形することが課題となっていた。その困難性の原因として、キャビティに閉じ込められた空気により鍛造用素材の流入が阻止された結果、寸法精度の良好な鍛造品を得ることが困難と考えられていた。
【0004】
そこで、日本特開平10−118734号公報には、キャビティに閉じ込められた空気によって鍛造用素材の流入が阻止されることを防止し、寸法精度の良好な鍛造品を得ることを目的として、金型にエアベントを設ける方法が開示されている。
【0005】
また、エアベットの孔径、開口位置などについては次のように開示している。
孔径は、直径1mm以上が好ましく、最大その位置の肉厚の幅までとることができる。エアベントの孔径が直径1mmに達しないと、鍛造中に孔内に押し込まれた鍛造用素材が鍛造品を金型から取り出す際に折れ、孔内に残留する虞れがある。その結果、次の鍛造時にキャビティ内の空気を逃がすエアベントの作用が期待できなくなる。しかし、肉厚よりも大きな直径の孔では、流入する鍛造用素材の容積が大きくなりすぎ、孔の近傍で欠肉が生じ易くなる。また、比較的大きな突起部が形成されるため、鍛造後に製品から突起部を削り取る作業が困難になり、製品歩留りも低下する。
【0006】
エアベントを開口させる位置は、製品形状に応じて決定されるが、空気溜りが生じ易い箇所である限り、製品のコーナー部,行き止まり部,肉厚の大きな部分,肉厚変化の大きな部分等の何れであっても良い。また、製品に対して対称的にエアベントを開口させるとき、鍛造用素材の流動がスムーズになり、鍛造品の寸法精度が一層向上する。更に、各部における鍛造用素材の塑性流動が一定になるように、エアベントの孔部を鍛造用素材溜めとしても利用できる。エアベントは、ポンチ速度(鍛造速度)にもよるが、キャビティ内の空気が圧縮されることなくスムーズに外部に逃げる程度の個数及び大きさが必要である。エアベントを設けた金型を使用して鍛造しているので、得られる鍛造品には、エアベントの開口位置に対応してイボのように鍛造用素材が突出している。この突起部は、ベルトサンダー、機械加工等によって鍛造品から取り除かれる。
【0007】
また、上記の問題に対する対策として、日本特開平10−272532号公報には、型分割部(但しヤキバメ等で固定されており摺動しない。)の嵌め合わせ部、当接部のクリアランスをガス抜き通路として利用する場合もある。また、日本特開昭61−154727号公報には、ダイスとノックアウトピンとから構成される型摺動部をガス抜き穴として併用する方法も開示されている。型分割部とは、金型を複数の分割体に分割したときの分割体の境界部を示す。また、型摺動部とは、分割体の少なくとも一つが摺動しており、摺動する型の境界部を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−118734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の鍛造用金型のようなエアベント用孔を設けると、孔径を単にΦ1mm以上としたものであるので、その結果、エアベント用孔に押し込まれた鍛造用素材の量が多くなり、その結果、製品にピン状の形状(以後、エアーピンと呼ぶ)が付与されてしまうという点で不具合が発生した。特に高い鍛造荷重を必要とする製品を鍛造するとき、また型分割位置に近い箇所に設置したときに発生し易い。
【0010】
また、型摺動部であるノックアウトピンとのクリアランスをガス抜き通路として利用した場合は、クリアランス部に鍛造用素材が侵入しやすくなる。その結果バリが発生しやすくなるために、ノックアウト時にその侵入したバリが取れてクリアランス部に堆積するのでノックアウトピンが摺動しづらくなるという点で不具合が生じ、積極的にガス抜きとして利用するには問題が多かった。また、ガス抜き穴を併用した場合は、その傾向は顕著となる。さらに、摺動部を利用する場合は、摺動部を配置する場所に制約があるので金型設計に自由度がない。
【0011】
また、型分割部(ヤキバメ等により摺動しない部位)を利用した場合は、型同士のクリアランスが小さい又はヤキバメ量(締め代)が大きい場合は、必要な通路が確保できずに充分なガス抜き効果が得られなくガスが残るために、欠肉が発生し成形が不良になる可能性がある。逆に、型同士のクリアランスが大きい又はヤキバメ量(締め代)が小さい場合は、鍛造用素材が侵入しやすくなるので、バリの発生が大きくなってしまう。
【0012】
そこで、特に、高い鍛造荷重を必要とする製品および型分割位置に近い箇所にガス抜き穴を設ける必要があるような形状を、精度よく成形する際に設けるに適したガス抜き通路が求められている。なお、本明細書においてガスとは、鍛造工程の雰囲気の気体、例えば、空気、不活性ガス、または潤滑剤の気化したもの、例えば、水蒸気、気化した油などを含むものとする。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑み完成されたもので、複雑な形状であっても金型の成形孔内に閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑え、成形孔内に十分に鍛造用素材を流動させ、寸法精度の良好な鍛造成形品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(1)成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有して成形順序で最後に成形される箇所に設けられ、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられ、前記第1段部の開口部面積より大きく、前記第2段部の開口部面積より小さい径を有して鍛造用素材が前記ガス抜き通路内の前記第2段部まで侵入するのを阻止する制御ピンが備えられていることを特徴とする鍛造用金型である。
なお、上記の型分割部とは、金型を複数の分割体に分割したときの分割体の境界部の部位であってヤキバメ等によりその分割体が摺動しないように固定された部位のことである。また、上記の一体型部とは、分割されていない金型構成部品で構成された部位のことである。金型全体が一体物で製作された場合を含む。
また、上記ガス抜き通路の向きは、主鍛造方向又は金型の移動方向に対して斜め方向であるとよい。
上記ガス抜き通路は、前記成形孔内に塗布する潤滑剤の排出通路を兼ねるとよい。
上記成形孔壁面に形成された開口部のガス抜き通路の次の段以降の面積が、開口部側の面積の1.04倍以上であるとよい。
上記成形孔壁面に形成された開口部側の形状部の長さが、開口部側の面積値の1〜15倍であるとよい。
前記開口部を成形孔の金型壁面と鍛造用素材により閉空間となった凹部及び/又は溝部に閉じ込められたガス溜りが発生する位置に設けるとよい。
上記鍛造用金型を使用し、成形孔内に鍛造用素材を投入し、成形孔の凹部及び/又は溝部に閉じ込められるガスをガス抜き通路を介して逃がしながら鍛造するとよい。
上記鍛造用素材は、アルミニウム、鉄、マグネシウム、チタンから選ばれる何れか1種の金属または、これらを主成分とする合金であるとよい。
上記鍛造用金型を有する鍛造装置がよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有して成形順序で最後に成形される箇所に設けられ、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられているので、ガス抜き通路に進入した鍛造用素材の一部が製品排出時にガス抜き通路内で折れても、次の鍛造時にガスの圧力により次段部まで押され、詰りが解消されガス抜き通路が塞がれない。したがって、複雑な形状であっても金型の成形孔内に閉じ込められたガスをスムーズに逃がし、成形孔内に十分に鍛造用素材を流動させることができる。その結果、閉じ込められたガスによる欠肉の発生を抑えた寸法精度の良好な鍛造成形品を製造することができる。第1段部の開口部面積より大きく、第2段部の開口部面積より小さい径を有する制御ピンが備えられているので、鍛造用素材がガス抜き通路内の第2段部まで侵入するのを阻止することができる。
【0016】
また、成形孔壁面に形成された開口部の面積を小さくしてあるので、エアーピンの形状が細く短くなるため、製品からの除去作業を軽減することができる。
【0017】
また、成形孔壁面に形成された開口部の断面積が0.01〜1mm2であるのでエアーピンの形状が細く短くなるため、製品からの除去作業を軽減することができる。また、成形孔壁面に形成された開口部の断面形状の内接円の直径が0.1〜1mmであるので、エアーピンの形状が細く短くなり、製品からの除去作業を軽減できる。また、成形孔壁面に形成された開口部のガス抜き通路の次の段以降の面積が、開口部側の面積の1.04倍以上であるので、通路壁面がエアピンと接触することなく目詰まり解消時に低抵抗とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1図は、本発明の鍛造用金型によって製造するのに適した鍛造製品の一例を示す斜視図である。
【図2】第2図は、本発明の鍛造用金型によって製造するのに適した鍛造製品の他の例を示す斜視図である。
【図3】第3図は、本発明の鋳造用金型によって製造するのに適した鋳造品の他の例を示す斜視図である。
【図4】第4図は、本発明の鍛造用金型の一例を示す縦断面図である。
【図5】第5図(A)〜(E)は、同鍛造用金型に使用されるガス抜き通路の例を示す拡大縦断面図である。
【図6】第6図(A)〜(D)は、同鍛造用金型に使用されるガス抜き通路の要部平面図、断面図である。
【図7】第7図は、第4図に示す鍛造用金型のガス溜り部の拡大断面図である。
【図8】第8図(A)〜(C)は、本発明の鍛造用金型を使用した鍛造用素材の各成形工程を示す説明図である。
【図9】第9図(A)〜(F)は、本発明の鍛造用金型を使用した鍛造用素材の各成形工程を示す説明図である。
【図10】第10図(A)〜(E)は、本発明の鍛造用金型を使用した鍛造用素材の各成形工程を示す説明図である。
【図11】第11図は、本発明に用いる鍛造装置の一実施例を示す説明図である。
【図12】第12図は、制御ピンを備えたガス抜き通路の一例を示す拡大縦断面図である。
【図13】第13図は、第2図の鍛造品を鍛造するための金型の一例を示す縦断面図である。
【図14】第14図は、第3図の鍛造品を鍛造するための金型の一例を示す縦断面図である。
【図15】第15図は、第14図に示す金型の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の鍛造用金型は、断面積が異なる複数の段部を有し、成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられているガス抜き通路を備えたことにより、ガス抜き通路の目詰まりを防止して、欠肉の発生を抑えた寸法精度の良好な鍛造成形品を製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下にこの発明の実施の形態の一例を説明する。
【0021】
<成形品の説明>
本発明で対象としている成形品の有する複雑な形状とは、第1図に示したような、リブ11が高くなっている形状、第2図に示したような、周囲が凹部であるために実質的に凸12が高くなっている形状、或いは、第3図に示したような内燃機関のピストンのような形状を有しているものである。
【0022】
このような形状に対応した金型の部位は、金型壁面と鍛造用素材により閉空間となった凹部及び/又は溝部となり、そこにガスが閉じ込められ、ガス溜りが発生し易くなるからである。そのような形状を有する製品としては、たとえば、斜板式コンプレッサーの双頭ピストン、スクロール式コンプレッサーの渦巻体、内燃機関ピストンなどがある。本発明は、それらの形状を有する製品を直接成形する場合、それらの形状を有する一次加工成形品を成形する場合も対象としている。
【0023】
第13図は、金属素材から鍛造形成品を鍛造する為の鍛造用金型の第2実施例を示し、第4図の金型と同様に金型30は、下金型31と上金型32および形成品を下金型31内から取り出すためのノックアウトピン33、またはガス抜き通路34を含んで構成される。また、下金型31及び上金型32は、中心部に鍛造成形孔35がそれぞれ設けられている。
【0024】
この鍛造用金型は第2図に示すような、ベースプレート面13と羽根部14から成るスクロール式コンプレッサーの渦巻体を成形するのに好的に用いられる。
【0025】
第14図は、本発明による鍛造用金型の第3実施例を示し、第13図の金型と同様に、本実施例の金型30は、下金型31にガス抜き通路34が設けられている。
【0026】
この鍛造用金型30は第3図に示すようなヘッド面15、スカート部16、リブ部17、ピンボス部18を有する内燃機関のピストンを成形するのに好的に用いられる。
【0027】
<鍛造用金型の説明>
ガス抜き通路を設ける金型の一実施例について第4図を基に説明する。
【0028】
本発明の鍛造用金型30は、金属素材から鍛造成形品を鍛造するための下金型31と上金型32および成形品を下金型31内から取り出すためのノックアウトピン33、またガス抜き通路34を含んで構成されている。また、金型31、32は、中心部に鍛造成形孔35がそれぞれ設けられている。
【0029】
この鍛造用金型は、例えば、第1図に示すような上金型の動作方向軸に対し平行なリブ11を有している鍛造成形品として双頭ピストンを鍛造するのに用いる鍛造用金型である。以降、この双頭ピストンの鍛造に基づいて説明する。鍛造用金型30の材質は、例えば、ダイス鋼等を使用することができる。
【0030】
<ガス抜き通路の説明>
ガス抜き通路の形状
本発明のガス抜き通路34は、例えば、第5図(A)に示すようにガス流方向に、少なくとも第1段部X、第2段部Yの2部構成を有している。さらに多段の構成とすることも可能である。第1段部X1は、成形孔35側に設けられる部位である。ここで、第1段部X1と第2段部Y1の接続部Z1は、第1段部X1の断面積より第2段部Y1の断面積が大きくなるよう接続されていれば良い。また、部分的に第2段部Y1より大きい断面積を有していても良い。
【0031】
鍛造用金型30の成形孔壁面に形成された開口部36の断面積は、例えば、0.01〜1mm2に形成する。また、開口部36の直径を0.1〜1mmとしてもよい。
【0032】
本発明に係る金型の加工、組上げは従来公知の方法を用いることができる。ここで、ガス抜き通路34は、分割型を合体させる前でも後でも、何れの時に形成しても良いが、ガス抜き通路の精度を考慮すると、合体後に形成するのが好ましい。更に、一体型においても、ガス抜き通路34は、鍛造成形孔35を作製する前に作成しても、後に作成してもよいが、ガス抜き通路の精度を考慮すると、鍛造成形孔35を作製した後に形成した方が好ましい。
【0033】
第2段部Y1の形状は特に限定されない。例えば、後述するような動作においてエアーピンを押出したガスを一時的に溜め込むガスダンパーとして充分な長さを有し、押出されたエアーピンを溜め込むに充分な長さを有している形状、または、ガスを大気中に放出すると同時に、排出されたエアーピンを除去するための開放口が設けられている形状とすることができる。例えば、鍛造金型30を貫通して外面に開放口を有している形状とすることができる。
【0034】
<ガス抜き通路の断面積>
第1段部X1の断面積は、0.01〜1mm2(より好ましくは0.03〜0.2mm2)であることが好ましい。一方、第2段部Y1の断面積は、第1段部の断面積の1.04倍以上(より好ましくは1.3〜3倍)であることが好ましい。
【0035】
第1段部X1の断面積をこのように構成することで孔径が小さくなり、鍛造用素材の進入を抑制できるので好ましい。
【0036】
第2段部Y1の断面積を第1段部X1の断面積の1.04倍以上にすることにより、侵入した鍛造用素材に接触しないので、ガス抜き通路内でエアーピンが折れた後の鍛造時、ガスの圧力によりエアーピンが押されて動く際の(摩擦)抵抗とならない。
【0037】
また、開口部36の断面の外接円の直径が1mm以下、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.2mm〜0.5mmです。それ未満では孔開け加工が困難。それを超えると鍛造用素材の流入が多くなるため、鍛造後のエアーピンが長くなりすぎる可能性があるからである。
【0038】
<ガス抜き通路の長さ>
第1段部X1の長さは、第1段部X1の面積値の1〜15倍(より好ましくは5〜10倍)であることが好ましい。例えば、第1段部X1の長さは、1〜10mmであることが好ましい。また、第2段部Y1の長さは、下金型31の下側或いは上金型32の上まで貫通した長さであることが好ましい。
【0039】
第1段部X1の長さをこのようにすることにより、エアーピンが折れた後の鍛造時、ガスの圧力によりエアーピンが押されて動く際の(摩擦)抵抗を小さく制御できる点から好ましい。また、第1段部X1の長さを第1段部X1の面積値の1倍未満にすると、長さが短く鍛造用金型が欠ける可能性がある。更に、第1段部X1の面積値の15倍以上にすると、(摩擦)抵抗が大きく、エアーピンが抜けない可能性があるからである。
【0040】
第2段部Y1の長さをこのようにするのは、有効長さが決まっていると詰まったエアーピンが第1段部X1まで堆積してしまう可能性があり、エアーピン詰まりの解消の効果がなくなるからである。
【0041】
このような形状としたので、連続的に成形品を製造した際、進入した鍛造用素材が製品排出時にガス抜き通路34内で折れても、次の鍛造時、ガスの圧力により次段部まで押され、詰りが解消されガス抜き孔が塞がれない。したがって、複雑な形状であっても金型の鍛造成形孔35内に閉じ込められた空気をスムーズに逃がし、成形孔内に充分に鍛造用素材39を流動させることができる。
【0042】
次に、ガス抜き通路の形状の具体例を図で説明する。
【0043】
第5図は、通路形状の例のガスの流れる方向に略平行な断面の例を示す。
【0044】
第5図(A)は、前述したように成形孔側の第1段部X1の断面積を第2段部Y1の断面積より小さく形成し、第1段部X1と第2段部Y1の接続部Z1を、直角な段部としたものである。
【0045】
第5図(B)は、別の実施例を示すもので、第1段部X2と第2段部Y2の接続部Z2の角度条件(θ)を付与したものである(0度<θ≦90度)。より好ましくは、1度以上である。後述する第5図(C)と同効果でエアーピンを折れやすくすることができるからである。さらに、目詰まり解消時には抵抗とならない。また、10度以上がさらにより好ましい。
【0046】
角度条件(θ)を10度以上を好ましいとした理由は、10度以上だと接続部Z2でも流入した鍛造用素材がガス抜き通路34の壁面に接触しない状態とすることができ、接触した場合でも、その結果、目詰まりした後の鍛造工程で排除がより容易となるからである。
【0047】
第5図(C)は、他の実施例を示すもので、第1段部X3を先太りのテーパ状に形成した例である。本実施例のように角度違いの、先太りに形成した場合、製品排出時に開口部37でエアーピンが折れやすく、製品側にエアーピンが残りにくく、積極的に目詰まりさせた形状である。
【0048】
第5図(D)は、他の実施例を示すもので、第1段部X4の形成を先細りのテーパ状に形成した例である。本実施例のように角度違いの、先細りに形成した場合、製品排出時に第2段部Y4でエアーピンが折れやすくピン長さの制御を意図している。また、開口部38側での根本を太くしているので第1段部X4では目詰まりし難く、好ましい結果を得ることができる。
【0049】
第5図(E)は、本発明の他の実施例を示すもので、第1段部X5の形状を径の異なる凹凸として、ガス抜き通路の断面形状を途中で変化させたものである。
本実施例のように構成した場合、第1段部X5への鍛造用素材の侵入の抑制するとともに、侵入した鍛造用素材を切れやすくする。
【0050】
また、第1段部X5の凹凸量を0.01〜0.3mmとしたのでガスの圧力により侵入した鍛造用素材が下段まで押し出されるのを阻害することなく、目詰りが解消できる。更に、凹凸とした形状の輪郭は、矩形状、三角状、のこぎり歯状などにすることもできる。
【0051】
第6図(A)、(C)、(D)は、本発明の鍛造用金型に使用されるガス抜き通路34の要部平面図である。ここで断面形状は、ガスの通り道が確保できれば良く、特に断面形状の制限はないが、作製し易さの点からは円形状が好ましい。
【0052】
第6図(A)は、断面形状を円形状としたものである。第1段部Xと第2段部Yの中心Oを一致させている。また、第1段部Xと第2段部Yの大きさの差は半径で0.2〜1mmが好ましい。0.2mm未満では、差が小さく、エアーピンが第2段部Y内周と接触する可能性があり、ガスの圧力によりエアーピンが押されて動く際の(摩擦)抵抗となる虞れがある為である。
【0053】
また、第6図(B)に示す様に、径が1mmを超える差を有する場合では、第1段部Xと第2段部Yの差が大きい。つまり、第1段部Xの張り出し量が大きく、破損しまう可能性があるからである。
【0054】
第6図(C)は、ガス抜き通路34の断面形状を四角とした場合である。第2段部Yは、第1段部Xの形状を0.2〜1mm外側にオフセットした形状である。
【0055】
第6図(D)は、第1段部Xの断面形状を円形状、第2段部Yの断面形状を四角にした場合である。第1段部Xと第2段部Yの断面形状の距離は0.2〜1mmである。
【0056】
第6図(C)、(D)では断面形状を四角としたが多角形でも楕円でも可能である。つまり、第1段部Xと第2段部Yの形状は、大きさの差(距離)が好ましい範囲である0.2〜1mmの範囲であれば、円、多角形、楕円のどの組み合わせでも可能である。
【0057】
<ガス抜き通路の位置>
金型の鍛造成形孔35に対して、ガス抜き通路34の開口部36の位置は、製品形状に応じて決定されるが、空気溜りが生じ易い箇所である限り、製品のコーナー部,行き止まり部,肉厚の大きな部分,肉厚変化の大きな部分等の何れであっても良い。特に、成形順序で最後に成形される箇所に設けるのが、そのような箇所は閉じ込められた空気による欠肉の発生度合いが大きいので、その発生を解消できる点から好ましい。
【0058】
ガス抜き通路34の設置部位は、例えば、次のように考えて決めることが出来る。
【0059】
1)成形時、鍛造用金型30と鍛造用素材によって密閉されるような場所でガス溜りが発生すると予想される箇所。ガス溜りは、鍛造欠陥(未成形)の原因となるからである。例えば、第1図に示す成形品に対応した第4図に示した鍛造用金型30では、符号(a)〜(h)で示す8部位にその可能性がある。
【0060】
2)ノックアウトピン33の位置が設置される箇所(型摺動部)は、型のノック穴とノックアウトピン33にクリアランス(ノックアウトピンが摺動するために必要)があるため、そこからガスが抜けて、ガス溜りとなりにくい。そこで、鍛造欠陥の発生を検討、考慮した上で、まずはガス溜りになりそうな位置にノックアウトピン33を設ける。第4図では、ノックアウトピン33を4箇所設置することで、対象のガス溜り部を8部位から4部位(b)、(c)、(f)、(g)に絞り込むことができる。
【0061】
3)次に、ガス抜き通路34をガス溜り部のどこに配置するかを検討する。先ず、鍛造用素材のフローを考慮し、ガス溜り部の内どこが最後に成形されるかを判断基準とする。
【0062】
第7図に第4図に示す鍛造用金型30のガス溜り部の拡大図を示す。図中、最後に成形される部位は(I)、(J)となることが予想される。したがって、この2箇所(I)、(J)に設けるのが好ましい。
【0063】
以上の結果、第1図に示した製品に対する鍛造用金型30では8箇所(=2箇所/部位×4部位)にガス抜き通路34を設置する必要がある。
【0064】
その結果、開口部を成形孔の凹部及び/又は溝部に閉じ込められるガス溜り(型と鍛造用素材により閉空間となった箇所)が発生する位置に設置された金型となる。
【0065】
なお、本発明のガス抜き通路34は、鍛造用金型の型分割部(図示せず)に配置しても良い。但し、本発明のガス抜き通路34は、開口部36が分割体の少なくとも一つが摺動している摺動型の境界部に設ける必要はない。
【0066】
<ガス抜き通路の向き>
本発明のガス抜き通路34の向きは、鍛造方向(金型の移動方向)に平行であることに限定されない。そのために、金型設計の自由度が大きくなるので、複雑な形状の金型を容易に設計できる。
【0067】
特に、製品排出方向に平行でない場合は、エアーピンを容易に切断することができるので好ましい。
【0068】
また、素材進入の抑制する効果をより高める場合には、斜め方向(例えば、主鍛造方向、もしくは金型の移動方向に対して45〜90度、好ましくは45〜70度の範囲)に設定することが好ましい。
【0069】
<ガス抜き通路内に制御ピンを入れる実施例>
第12図に示すように、鍛造成形時に目詰まりを排出した後に第2段部Yに制御ピン90を挿入する機構を設けてもよい。制御ピン90とは、目詰まり時に第2段部Yから退避してエアーピン排出の妨げにならないとともに、通常(目詰まりしていない)時に第2段部Yに進入(上昇)することにより鍛造用素材がガス抜き通路34内の次段(第2段部Y)まで侵入するのを阻止する。また、制御ピン径は、上段穴径より大きく下段穴より小さいものとし、長さは、下段長さより短く、好ましくは小数点第一位のレベルで短く、例えば、好ましくは下段部長さより0.01〜1mm短くする。
【0070】
第1段部Xに鍛造用素材が進入しても制御ピン90が存在することにより差込ピン長さ及び差込み量を制御、抑制できるからである。
【0071】
第5図(D)に示すガス抜き通路の形状と併用すれば、制御ピン90の移動なしでも使用できる。開口部が広くエアーピンが折れにくいからである。
【0072】
<潤滑剤排出との関係>
ガス抜き通路34は、金型成形孔内に塗布した潤滑剤を排出させる通路としても機能させることが出来る。潤滑カス溜りによる欠肉の解消目的にも使える可能性があるので相乗的に成形品の形状精度が向上する。
【0073】
<ガス抜き通路が詰まらない成形工程の説明>
第8図〜第10図に本発明の鍛造用金型を使用した、素材投入〜成形〜差込バリ状況〜排出〜次の成形の各工程を示す。
【0074】
先ず、第8図(A)では、鍛造成形孔(キャビティ)35内に鍛造用素材39を置き、プレス鍛造する工程を示す。上金型32が下降し成形が実施される。
【0075】
第8図(B)、(C)では、金型割に近い形状部より成形されて行く。ガス抜き穴周辺の凹形状部では、鍛造用素材39と型により閉空間が形成される。閉空間には、ガスは圧縮されながら充満することになる。
【0076】
第9図(A)、(B)、(C)では、鍛造用金型30と鍛造用素材39により形成された閉空間内のガスは、ガス抜き通路34より排出されながら成形される。
【0077】
第9図(D)では、成形された製品を鍛造用金型からノックアウトピンによって排出する。その時、差込張り(エアーピン)40が折れ、ガス抜き通路34の第1段部X内に滞在し目詰まりが発生する。
【0078】
第9図(E)、(F)、第10図(A)では、次の鍛造時、ガス圧により目詰まりが回避される場合を示す。
【0079】
目詰まりにより、閉空間内のガスは排出されない状態で残っているが、成形工程が進行するにつれて、さらにガスが圧縮されていく。成形終了の直前の時点でついに、エアーピン40とガス抜き通路34との(摩擦)抵抗力より大きな圧縮力が発生し、その力で先に目詰まりしているエアーピン40を第2段部Yまで押し動かし、そこでエアーピン40は排出され、目詰まりは解消され、ガスが抜ける。
【0080】
また、第10図(B)、(C)、(D)、(E)では、次の鍛造時、ガス圧と素材成形による力により目詰まりが回避される場合を示す。
【0081】
前述の第9図(E)、(F)、第10図(A)に示す、圧縮空気圧では、下段までエアーピン40を移動できなくても、2回目の成形時の鍛造用素材がフローすることによりガスの圧縮率がより上がるので下段まで先のエアーピン(目詰まりピン)40は押し動かされる。さらに、鍛造用素材自体がガス抜通路34へ侵入することにより、直接、下段まで先のエアーピン(目詰まりピン)40が押し動かされる。
【0082】
本発明の鍛造成形品の製造方法では、以上の操作を繰り返すことにより安定して鍛造成形品を連続して製造することができる。
【0083】
ここで、第1段部Xの長さは、上記した第10図(B)、(C)、(D)、(E)に示すパターンで解消されるように設定することにより、目詰まり解消がより安定する。
【0084】
<他の実施例>
本発明の鍛造用金型30は、上記説明したガス抜き通路34を少なくとも1つ有するものである。他に従来公知のガス抜き通路を組み合わせて有していても良い。そのような場合でも、上記説明したガス抜き通路を有していることにより、本発明の目的は達せられるからである。
【0085】
<鍛造用素材の説明>
本発明に用いる鍛造用素材39の製法は、連続鋳造、押出、圧延等いずれであっても良い。
【0086】
アルミニウムやアルミニウム合金の場合、連続鋳造された丸棒材が安価で好ましい。例えば、昭和電工株式会社製SHOTIC材(登録商標)が挙げられる。アルミニウム合金においては、気体加圧式ホットトップ鋳造法で連続鋳造された丸棒材が、優れた内部健全性を持ち、結晶粒が微細であり、かつ、塑性加工による結晶粒の異方性がないため、摩擦抵抗部の抵抗効果を安定的に得ることができるので好ましい。
【0087】
棒状材は、さらに所定の長さに切断され、必要に応じて面削処理を施して、次工程に送られる。
【0088】
<鍛造成形工程>
本発明での鍛造は型鍛造であり、本発明に用いる鍛造装置の構成の一例を、第11図をもとに説明する。鍛造装置は、鍛造機81と、上ボルスター82に取りつけられた上金型83と、下ボルスター84に取り付けられた下金型85とを含むものである。また、本発明に用いる金型の一例を第4図に示す。鍛造用金型30は、金属素材から鍛造成形品を鍛造するための下金型31と上金型32および成形品を下金型32内から取り出すためのノックアウトピン33、またガス抜き通路34を含んで構成されている。
【0089】
前記金型31、32は、中心部に鍛造成形孔35が設けられている。また、鍛造成形品は第1図に示すような上金型の動作方向軸に対し平行なリブ11形状を有している。そして、必要に応じて、スプレー前後移送装置(表示せず)スプレー回転装置(表示せず)を備えシャフト(表示せず)を介して、スプレー前後装置に取りつけられた潤滑剤スプレーノズル(表示せず)を有している潤滑剤塗布装置を設置することができる。
【0090】
ここでガス抜き通路34は、鍛造方向(金型の移動方向)と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有するガス抜き通路である。
【0091】
本発明は、熱間、温間、冷間を問わないで適用することができる。一般には、鍛造の温度条件により、鍛造用素材の流動性が変わり、差込バリや、ガス抜き通路への鍛造用素材の侵入の挙動が変わるので、それに合わせた金型の設計をする必要があるが、本発明では、鍛造用素材の進入の挙動の如何によらずに、目詰まり現象を解消できる。
【0092】
準備した鍛造用素材39を上金型32、下金型31により形成される空間(成形孔)35に押し込み、成形品を鍛造成形する。また、成形された素形材はノックアウトピン33により下金型32から取出される。なお、鍛造に際しては金型内周に潤滑剤を塗布してから実施するのが好ましい。
【0093】
鍛造用素材39には、必要に応じて、潤滑剤処理を施すのが好ましい。更に、ガス抜き通路34を設けているので、ガス抜き通路34が潤滑剤抜きとしても機能する。したがって、焼き付きまたは潤滑カス溜りによる欠肉が懸念される箇所にガス抜き通路34を設置しても相乗的な効果的を有する。
【0094】
<成形品の特徴>
また、本発明の鍛造用金型により鍛造した場合、形成されるエアーピン40の形状が細く短くなる。このため、後処理工程で除去する際に、不良品の発生率を低減できる。また、除去作業の作業工数が軽減できる。
【0095】
以下、具体例を示して本発明の作用効果を明確にするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
第1図のリブ11の形状を有した成形品を、本発明に係る鍛造用金型を用いて製造した例である。また、ガス抜き通路34は、第5図(A)、(B)に示したものを用いた。
【0097】
鍛造用素材の潤滑処理、金型の潤滑剤、金型温度、鍛造用素材の温度の各条件は、表1に示すように鍛造用素材の潤滑処理はなし、金型の潤滑剤は油性潤滑剤、金型温度は180℃、鍛造用素材の温度は410℃とした。また、鍛造用素材は、4000系AL合金を用いた。
【0098】
【表1】
【0099】
鍛造結果は、表2に示す。
【0100】
表2より明らかなように、実施例1では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.3mm、第1段部Xの長さは5.0mm、第2段部Yの径はφ1.0mm、接続部Zの角度90度、エアーピン長さ1.5mm、目詰まり現象は無しであった。
【0101】
実施例2では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.5mm、第1段部Xの長さは5.0mm、第2段部Yの径はφ1.0mm、接続部Zの角度90度、エアーピン長さ3.0mm、目詰まり現象は無しであった。
【0102】
実施例3では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.5mm、第1段部Xの長さは12.0mm、第2段部Yの径はφ1.0mm、接続部Zの角度90度、エアーピン長さ3mm、目詰まり直後の鍛造工程では解消されず、その次の3回目の鍛造工程で解消した。
【0103】
比較例1(従来)では、荷重280t、第1段部Xの径はφ0.5mm、第2段部Yの径はφ0.5mm(段部を有していない。)、接続部Zの角度0度、エアーピン長さ3mm、目詰まり現象は存在した。
【0104】
比較例2(従来)では、荷重280t、第1段部Xの径はφ1.1mm、第2段部Yの径はφ1.1mm(段部を有していない。)、接続部Zの角度0度、エアーピン長さ14mm、目詰まり現象は無しであった。しかし、エアーピンが長く、次のトリム工程で不良品が発生した。
【0105】
【表2】
【0106】
第13図は、金属素材かつ鍛造成形品を鍛造するための鍛造用金型の第2実施例を示し、第4図の金型と同様に金型30は、下金型31と上金型32および成形品を下金型31内から取り出すためのノックアウトピン33、またはガス抜き通路34を含んで構成されている。また、下金型31及び上金型32は、中心部に鍛造成形孔35がそれぞれ設けられている。
【0107】
この鍛造用金型は、第2図に示すようなベースプレートド面13と羽根部14から成るスクロール式コンプレッサーの渦巻体を成形するのに好的に用いられる。
【0108】
この渦巻体の成形は、凸部12を有するベースプレート面13が成形された後に、羽根部14に素材が塑性流動して成形が完了する。この凸部12の成形時に、その部位にガスが閉じ込められる。ガス抜き通路は、ガスが閉じ込められる箇所に設けるのが好ましい。その結果、閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑えることが出来るからである。
【0109】
従って、本実施例ではガス抜き通路34は、ガスの閉じ込められる部位である、凸部12に対応した位置に設置している。
【0110】
第14図は本発明による鍛造用金型の第3実施例を示し、第13図の金型と同様に、本実施例の金型30は、下金型31にガス抜き通路34が設けられている。
【0111】
この鍛造用金型30は、第3図に示すようなヘッド面15,スカート部16,リブ部17、ピンボス部18を有する内燃機関のピストンを成形するのに好的に用いられる。
【0112】
第15図は、上記内燃機関のピストンのリブ部17、スカート部16でのガス抜き通路付近の成形時の空気の溜まり部の拡大断面図であって、空気溜まりの発生する様子を模式的にしたものである。
【0113】
内燃機関ピストンの成形は、ヘッド面15が成形された後に、リブ部17、スカート部16、ピンボス部18に素材が塑性流動して成形が完了する。ガス抜き通路34は成形順序で最後に成形される箇所に設けるのが好ましい。その結果、閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑えることが出来るからである。
【0114】
従って、本実施例ではガス抜き通路34は、最後に成形される部位である。リブ部、スカート部、ピンボス部に設置している。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、この発明にかかわる鍛造成形品は、複雑な形状であっても金型の成形孔内に閉じ込められた空気による欠肉の発生を抑え、成形孔内に十分に鍛造用素材を流動させ、寸法精度の良好な成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0116】
30・・・・・・鍛造用金型
34・・・・・・ガス抜き通路
35・・・・・・鍛造成形孔
36・・・・・・開口部
39・・・・・・鍛造用素材
40・・・・・・エアーピン(目詰まりピン)
90・・・・・・制御ピン
X,X1〜X5・第1段部
Y,Y1〜Y5・第2段部
Z,Z1〜Z5・接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、
前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有して成形順序で最後に成形される箇所に設けられ、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられ、
前記第1段部の開口部面積より大きく、前記第2段部の開口部面積より小さい径を有して鍛造用素材が前記ガス抜き通路内の前記第2段部まで侵入するのを阻止する制御ピンが備えられていることを特徴とする鍛造用金型。
【請求項1】
成形時に鍛造金型の成形孔内に閉じ込められたガスを排出するためのガス抜き通路を有する鍛造用金型において、
前記ガス抜き通路は、ガス流方向と垂直方向の断面積が異なる複数の段部を有して成形順序で最後に成形される箇所に設けられ、前記成形孔壁面に臨む第1段部の開口部面積がこれに接続する第2段部の開口部面積より小さく、かつ、その開口部が型分割部からなる壁面又は一体型部からなる壁面に設けられ、
前記第1段部の開口部面積より大きく、前記第2段部の開口部面積より小さい径を有して鍛造用素材が前記ガス抜き通路内の前記第2段部まで侵入するのを阻止する制御ピンが備えられていることを特徴とする鍛造用金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−232347(P2012−232347A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196852(P2012−196852)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2007−526945(P2007−526945)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2007−526945(P2007−526945)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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