説明

鍵盤楽器の蓋開閉装置

【課題】 楽器ケース内の空間を広く利用して実装密度を高めることができる鍵盤楽器の蓋開閉装置を提供する。
【解決手段】 外周に噛合歯18aを有するピニオンギア18を楽器ケース1内の後側上部に回転自在に設け、鍵盤蓋13の後部に設けられた屈曲自在のラックギア19をピニオンギア18に噛み合わせて鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動させるように構成した。従って、ピニオンギア18を回転自在に支持するシャフト17を楽器ケース1内に設けても、シャフト17が鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動することがないため、楽器ケース内の空間を広く利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器の蓋開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器の蓋開閉装置として、特許文献1に記載されているように、鍵盤部が内部に設けられた楽器ケースに、その鍵盤部を開閉自在に覆う鍵盤蓋をスライド可能に設けた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−272354号公報
【0004】
この種の蓋開閉装置は、鍵盤蓋を前蓋と後蓋とに分割し、前蓋と後蓋とをシャフトで相対的に移動可能に連結し、前蓋の前部を前側ガイド部でガイドすると共に、後蓋を後側ガイド部でガイドするように構成されている。この場合、前蓋と後蓋とを連結するシャフトは、前蓋の後端部に設けられている。後蓋は、シャフトによって前蓋に対して移動可能に連結された状態で、前蓋の下側を相対的に移動するように構成されている。
【0005】
また、シャフトには、楽器ケース内にその中間から後部に亘って設けられた後側ガイド部である第1ラックギアに噛み合って転動する第1ピニオンギアと、後蓋にその前部から後部に亘って設けられた第2ラックギアに噛み合って転動する第2ピニオンギアとが設けられている。この場合、第2ピニオンギアは、第1ピニオンギアの1/2のピッチ円直径比に形成されている。このため、第2ピニオンギアは、前蓋が移動する際に、前蓋の1/2の移動量で後蓋を追従させるように構成されている。
【0006】
このような蓋開閉装置では、鍵盤蓋を閉じた状態から開く際に、前蓋の前部を持ち上げながら後方に向けて移動させると、前蓋の前部が前側ガイド部によってガイドされながら前蓋が後方に移動すると共に、この前蓋の移動に伴ってシャフトが後方に向けて移動する。このときには、第1ピニオンギアが楽器ケースの第1ラックギアに噛み合って転動すると共に、第2ピニオンギアが後蓋の第2ラックギアに噛み合って転動する。このため、後蓋は、前蓋の1/2の移動量で前蓋に追従する。これにより、鍵盤蓋は、前蓋が鍵盤部の後方における楽器ケース内に収納されると共に、この前蓋の下側に後蓋が重なった状態で収納される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の鍵盤楽器の蓋開閉装置では、鍵盤蓋を開閉する際に、前蓋の移動に伴ってシャフトおよび後蓋が楽器ケース内を移動するため、楽器ケース内におけるシャフトおよび後蓋の移動範囲がデッドスペースとなり、スピーカなどの他の部品を十分に実装することができないという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、楽器ケース内の空間を広く利用して実装密度を高めることができる鍵盤楽器の蓋開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤部が内部設けられた楽器ケースと、この楽器ケースにスライド可能に設けられて前記鍵盤部を開閉自在に覆う鍵盤蓋と、この鍵盤蓋の前部をガイドする前側ガイド部と、前記鍵盤蓋の後部をガイドする後側ガイド部とを備えた鍵盤楽器の蓋開閉装置において、外周に噛合歯を有して前記楽器ケース内の後側上部に回転自在に設けられた回転支持体と、この回転支持体の前記噛合歯に噛み合う噛合歯を有して前記鍵盤蓋の後部に設けられ、前記鍵盤蓋のスライド動作に連動して前記回転支持体の前記噛合歯にこれと噛み合う前記噛合歯が噛み合って移動する屈曲自在のガイド移動体と、このガイド移動体の撓みを規制しながら前記ガイド移動体をガイドするガイド規制部と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の蓋開閉装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ガイド規制部が、前記ガイド移動体を前記回転支持体の外周に沿って屈曲させるための屈曲ガイド部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の蓋開閉装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記回転支持体が、前記楽器ケース内の後側上部に設けられたシャフトに回転自在に取り付けられたピニオンギアであり、前記ガイド移動体は、前記ピニオンギアに噛み合って移動する屈曲可能なラックギアであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器の蓋開閉装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、鍵盤蓋をスライドさせて開閉する際に、鍵盤蓋のスライド動作に伴って屈曲可能なガイド移動体がガイド規制部で撓むことなくガイドされながら移動すると、回転支持体が楽器ケース内を移動することがなく、回転支持体がガイド移動体に噛み合って回転し、鍵盤蓋を円滑に且つ良好に開閉させることができる。このため、回転支持体を回転自在に支持するシャフトを楽器ケース内に設けても、シャフトが楽器ケース内を移動しないため、楽器ケース内の空間を広く利用することができ、スピーカなどの他の部品を組み込むことができるので、楽器ケース内を有効に利用して楽器ケース内の実装密度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1を示した断面図である。
【図2】図1の鍵盤楽器において鍵盤蓋を開いた状態を示した断面図である。
【図3】図1の鍵盤楽器における鍵盤蓋およびラックギアを示した平面図である。
【図4】図3のA−A矢視における断面図である。
【図5】図1の鍵盤楽器のB−B矢視における拡大断面図である。
【図6】図1の鍵盤楽器におけるピニオンギアとラックギアとの噛み合い状態を示した要部の拡大断面図である。
【図7】図6のC−C矢視における拡大断面図である。
【図8】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2を示した断面図である。
【図9】図8の鍵盤楽器において鍵盤蓋を開いた状態を示した断面図である。
【図10】図8の鍵盤楽器のD−D矢視における拡大断面図である。
【図11】図8の鍵盤楽器におけるピニオンギアとラックギアとの噛み合い状態を示した要部の拡大断面図である。
【図12】図11のE−E矢視における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、図1〜図7を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、楽器ケース1を備えている。
【0015】
この楽器ケース1は、複数のゴム足2aを有する底板2と、この底板2の前端部(図1では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図1では右端部)に起立して設けられた後板4と、底板2の両端部(図1では紙面の表裏側の端部)に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板5の前後方向(図1では左右方向)における中間部よりも後側に位置する後部と後板4との上部に設けられた天板6とを備えている。これにより、楽器ケース1は、天板6の前側が上方に開放されたほぼ箱形状に形成されている。
【0016】
この楽器ケース1内には、図1および図2に示すように、鍵盤部7および第1、第2の各スピーカ8、9が設けられている。鍵盤部7は、楽器ケース1内の底板2における前部側(図1では左側)に配置された鍵盤シャーシ10と、この鍵盤シャーシ10上に配列された複数の鍵11とを備えている。この場合、複数の鍵11は、複数の白鍵と複数の黒鍵とからなり、これらが鍵盤シャーシ10上に上下方向に回転可能に取り付けられている。
【0017】
また、第1スピーカ8は、低音用のスピーカであり、図1および図2に示すように、楽器ケース1内の底板2上における後部側(図1では右側)、つまり鍵盤部7の後方に位置する底板2上に配置されている。第2スピーカ9は、高音用のスピーカ(ツイータ)であり、鍵盤部7の後部上方に位置する箇所に配置されている。なお、第2スピーカ9の前側に位置する鍵盤部7の後部上側は、コンソール部12が設けられている。
【0018】
さらに、この楽器ケース1には、図1および図2に示すように、鍵盤部7の上側を開閉可能に覆う鍵盤蓋13がスライド可能に設けられている。この鍵盤蓋13の蓋開閉装置14は、鍵盤蓋13の前部をガイドする前側ガイド部15と、鍵盤蓋13の後部をガイドする後側ガイド部16と、楽器ケース1内の後側上部に設けられたシャフト17と、このシャフト17に回転自在に設けられた回転支持体であるピニオンギア18と、鍵盤蓋13の後部に設けられてピニオンギア18に噛み合って移動する屈曲自在のガイド移動体であるラックギア19と、このラックギア19の撓みを規制しながらガイドするガイド規制部20とを備えている。
【0019】
前側ガイド部15は、図1および図2に示すように、鍵盤蓋13の前端部に設けられた取手部21と、この取手部21の両側に設けられた一対の前側支持ピン22と、楽器ケース1の一対の側板5における各内面に設けられて一対の前支持ピン22をそれぞれガイドする一対の前側ガイド溝23とを備えている。この一対の前側ガイド溝23は、鍵盤部7の前端部から斜め上方に向けて円弧状に緩やかに湾曲して鍵盤部7の後部上方、つまり天板6の前端部の下側に位置する箇所に亘って設けられている。
【0020】
後側ガイド部16は、図1〜図5に示すように、鍵盤蓋13の後端部における両側に設けられた一対の後側支持ピン24と、楽器ケース1の一対の側板5における各内面に設けられて一対の後側支持ピン24をそれぞれガイドする一対の後側ガイド溝25とを備えている。この一対の後側ガイド溝25は、図1および図2に示すように、鍵盤部7の後部上方から斜め下方に向けて緩やかに傾斜して楽器ケース1の側板5の後端部に亘って設けられている。
【0021】
シャフト17は、図1および図7に示すように、楽器ケース1内における後側上部に位置する箇所、つまり後側ガイド溝25の後端部の下側に位置する箇所における一対の側板5間に架け渡されている。ピニオンギア18は、図1、図2、図6、および図7に示すように、シャフト17の両側にそれぞれ軸受26を介して回転自在に取り付けられている。このピニオンギア18は、ポリアセタール樹脂(POM)などの合成樹脂からなり、その外周に噛合歯18aが形成されている。
【0022】
ラックギア19は、図1〜図4に示すように、ポリアミド樹脂(PA)などの合成樹脂からなり、全体が帯状に形成され、任意の位置で自由に屈曲するように構成されている。このラックギア19は、図3に示すように、その一端部(図3では左端部)が鍵盤蓋13の後端部における両側にそれぞれ側方に突出した状態で取り付けられ、鍵盤蓋13の後方に向けて長く延出されている。
【0023】
また、このラックギア19は、図6および図7に示すように、その下面にピニオンギア18の噛合歯18aに噛み合う噛合歯19aが連続して形成されている。これにより、ラックギア19は、その噛合歯18aの一部がピニオンギア18の噛合歯18aに噛み合いながら、鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動するように構成されている。
【0024】
ガイド規制部20は、図5〜図7に示すように、屈曲可能なラックギア19を上下方向に挟んでガイドする水平ガイド溝27と、この水平ガイド溝27の後端部に設けられてピニオンギア18を配置するギア配置凹部28と、このギア配置凹部28から下側に垂下されてラックギア19をガイドする垂直ガイド溝29とを備えている。水平ガイド溝27は、図1、図2、および図5に示すように、ラックギア19が前後方向に移動可能に挿入する溝であり、楽器ケース1の一対の側板5の各内面に後側ガイド溝25に沿って設けられている。
【0025】
すなわち、この水平ガイド溝27は、後側ガイド溝25と同様、鍵盤部7の後部上方から斜め下方に向けて緩やかに傾斜して楽器ケース1の側板5の後端部、つまりピニオンギア18に対応する位置に亘って設けられている。これにより、水平ガイド溝27は、その間にラックギア19を上下方向に撓むことなく挟んだ状態で、ラックギア19が楽器ケース1の前後方向に移動するように構成されている。ギア配置凹部28は、楽器ケース1の側板5の後端部に水平ガイド溝27と連続してほぼ円形状に設けられている。垂直ガイド溝29は、楽器ケース1の側板5の後端部にギア配置凹部28から底板2上に亘って連続して設けられている。
【0026】
この場合、ガイド規制部20のギア配置凹部28には、図6に示すように、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させるための屈曲ガイド部30が設けられている。この屈曲ガイド部30は、ギア配置凹部28の上辺部をピニオンギア18の外周に沿って円弧状に湾曲させたものである。この屈曲ガイド部30は、ラックギア19の噛合歯19aをピニオンギア18の噛合歯18aに噛み合わせた状態で、ラックギア19の上面をピニオンギア18の外周面に向けて押し付けることにより、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させるように構成されている。
【0027】
次に、この鍵盤楽器の蓋開閉装置14の作用について説明する。
まず、鍵盤蓋13を閉じた状態から開く際には、図1に示すように、鍵盤蓋13の前端部に設けられた取手部21を持ち上げながら、鍵盤蓋13を後方に向けて移動させる。すると、鍵盤蓋13の前部が前側ガイド部15にガイドされると共に、鍵盤蓋13の前部が後側ガイド部16にガイドされる。
【0028】
すなわち、取手部21を持ち上げながら、鍵盤蓋13を後方に向けて移動させると、取手部21の両側に設けられた一対の前側支持ピン22が一対の側板5の各前側ガイド溝23に沿ってそれぞれガイドされると共に、鍵盤蓋13の後端部における両側に設けられた一対の後側支持ピン24が一対の側板5の各後側ガイド溝25に沿ってそれぞれガイドされる。
【0029】
このときには、鍵盤蓋13の後端部における両側に設けられた一対のラックギア19の噛合歯19aがシャフト17の両側に設けられた一対のピニオンギア18の噛合歯18aに噛み合っているので、一対のラックギア19が鍵盤蓋13の移動と共にピニオンギア18を回転させながら楽器ケース1の後方に向けて移動する。すなわち、ラックギア19は、ガイド規制部20の水平ガイド溝27によって上下に挟まれているので、屈曲可能なラックギア19が撓むことなく、ピニオンギア18を回転させながら楽器ケース1の後方に向けて移動する。
【0030】
また、このときには、ガイド規制部20の水平ガイド溝27に連続するギア配置凹部28の屈曲ガイド部30が、ラックギア19の噛合歯19aをピニオンギア18の噛合歯18aに噛み合わせた状態で、ラックギア19の上面をピニオンギア18の外周面に向けて押し付けると共に、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させる。これにより、ラックギア19は、その後端部側が鍵盤蓋13の移動に伴って楽器ケース1の側板5に設けられた垂直ガイド溝29に沿って下側に移動する。
【0031】
そして、鍵盤蓋13が後方に向けて移動し、一対の前側支持ピン22が一対の前側ガイド溝23の各後端部に当接すると共に、鍵盤蓋13の一対の後側支持ピン24が一対の後側ガイド溝25の各後端部に当接すると、鍵盤蓋13が楽器ケース1内における天板6の下側に収納され、鍵盤部7が上方に露出する。この状態では、鍵盤蓋13の後端部が一対のピニオンギア18の上側に位置するので、一対のラックギア19はそのほぼ全体が楽器ケース1の側板5に設けられた垂直ガイド溝29に沿って垂下される。なお、鍵盤蓋13を閉じる場合には、上述した動作の逆の動作を行う。
【0032】
このように、この鍵盤楽器の蓋開閉装置14によれば、外周に噛合歯18aを有するピニオンギア18を楽器ケース1内の後側上部に回転自在に設け、鍵盤蓋13の後部に設けられた屈曲自在のラックギア19をピニオンギア18に噛み合わせて鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動するように構成したので、ピニオンギア18を回転自在に支持するシャフト17を楽器ケース1内に設けても、シャフト17が鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動することがないため、楽器ケース内の空間を広く利用することができる。
【0033】
すなわち、この鍵盤楽器の蓋開閉装置14では、鍵盤蓋13をスライドさせて開閉する際に、鍵盤蓋13のスライド動作に伴って屈曲可能なラックギア19がガイド規制部20の水平ガイド溝27によって撓むことなくガイドされながら移動すると、ピニオンギア18が楽器ケース1内を移動することがなく、ピニオンギア18がラックギア19に噛み合って所定位置で回転することにより、鍵盤蓋13を円滑に且つ良好に開閉させることができる。
【0034】
このため、ピニオンギア18を支持するシャフト17が鍵盤蓋13のスライド動作に伴って楽器ケース1内を移動することがないので、楽器ケース1内の空間を広く利用することができる。すなわち、第1、第2の各スピーカ8、9のうち、特に高音用の第2スピーカ9を鍵盤部7の後部上方、つまり天板6の前部の下側に設けることにより、鍵盤部7の後部上側から鍵盤部7の前側上方に向けて放音することができる。これにより、第1スピーカ8以外に第2スピーカ9などの他の部品を楽器ケース1内に良好に組み込むことができるので、楽器ケース1内を有効に利用して楽器ケース1内の実装密度を高めることができる。
【0035】
また、この鍵盤楽器の蓋開閉装置14によれば、ガイド規制部20のギア配置凹部28に、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させるための屈曲ガイド部30が設けられているので、鍵盤蓋13をスライドさせて開閉する際に、ラックギア19の噛合歯19aの一部をピニオンギア18の噛合歯18aに順次、確実に噛み合わせることができる。これにより、鍵盤蓋13のスライド動作に伴ってラックギア19を確実に移動させることができる共に、鍵盤蓋13を開く際にラックギア19を円滑に屈曲させて楽器ケース1の側板5の垂直ガイド溝29に沿って良好に垂下させることができる。
【0036】
(実施形態2)
次に、図8〜図12を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図7に示しされた実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器の蓋開閉装置35は、図8および図9に示すように、前側ガイド部36、後側ガイド部37、およびガイド規制部38が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0037】
すなわち、前側ガイド部36は、図8および図9に示すように、鍵盤蓋13の前端部に設けられた取手部21と、この取手部21の両側に設けられた一対の前側支持ピン22と、楽器ケース1の一対の側板5における各内面に設けられて一対の前支持ピン22をそれぞれガイドする一対の前側ガイドレール40とを備えている。この一対の前側ガイドレール40は、断面がコ字形状に形成され、鍵盤部7の前側から斜め上方に向けて円弧状に緩やかに湾曲して鍵盤部7の後部上方、つまり天板6の前端部の下側に位置する箇所に亘って設けられている。
【0038】
後側ガイド部37は、図8〜図12に示すように、鍵盤蓋13の後端部における両側に設けられた一対の後側支持ピン24と、楽器ケース1の一対の側板5における各内面に設けられて一対の後側支持ピン24をそれぞれガイドする一対の共通ガイドレール41とを備えている。この共通ガイドレール41には、図10に示すように、後側支持ピン24をガイドするピンガイド溝42が設けられている。また、この共通ガイドレール41は、図8および図9に示すように、鍵盤部7の後部上方から斜め下方に向けて緩やかに傾斜して楽器ケース1の側板5の後端部に亘って設けられている。
【0039】
ガイド規制部38は、図8〜図12に示すように、屈曲可能なラックギア19を上下方向に挟んでガイドするガイドレールであり、後側ガイド部37の共通ガイドレール41と兼用されている。このガイド規制部20は、ラックギア19を移動可能に挟むラックガイド溝43と、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させるための屈曲ガイド部44とを備えている。
【0040】
ラックガイド溝43は、ピンガイド溝42に沿って共通ガイドレール41に設けられている。すなわち、このラックガイド溝43は、後側ガイド溝25と同様、鍵盤部7の後部上方から斜め下方に向けて緩やかに傾斜して楽器ケース1の側板5の後端部、つまりピニオンギア18に接近する位置に亘って設けられている。また、このラックガイド溝43は、その間にラックギア19を上下方向に撓むことなく挟んだ状態で、ラックギア19が楽器ケース1の前後方向に移動するように構成されている。
【0041】
屈曲ガイド部44は、共通ガイドレール41の後端下部をピニオンギア18の外周に沿って円弧状に湾曲させた部分である。この屈曲ガイド部44は、実施形態1の屈曲ガイド部30と同様、ラックギア19の噛合歯19aをピニオンギア18の噛合歯18aに噛み合わせた状態で、ラックギア19の上面をピニオンギア18の外周面に向けて押し付けることにより、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させるように構成されている。
【0042】
このような鍵盤楽器の蓋開閉装置35においても、実施形態1と同様の作用効果がある。すなわち、外周に噛合歯18aを有するピニオンギア18を楽器ケース1内の後側上部に回転自在に設け、鍵盤蓋13の後部に設けられた屈曲自在のラックギア19をピニオンギア18に噛み合わせて鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動するように構成したので、ピニオンギア18を回転自在に支持するシャフト17を楽器ケース1内に設けても、シャフト17が鍵盤蓋13のスライド動作に連動して移動することがないため、楽器ケース内の空間を広く利用することができる。
【0043】
すなわち、この鍵盤楽器の蓋開閉装置35では、鍵盤蓋13をスライドさせて開閉する際に、鍵盤蓋13のスライド動作に伴って屈曲可能なラックギア19がガイド規制部38のラックガイド溝43によって撓むことなくガイドされながら移動すると、ピニオンギア18が楽器ケース1内を移動することがなく、ピニオンギア18がラックギア19に噛み合って所定位置で回転することにより、鍵盤蓋13を円滑に且つ良好に開閉させることができる。
【0044】
このため、ピニオンギア18を支持するシャフト17が鍵盤蓋13のスライド動作に伴って楽器ケース1内を移動することがないので、楽器ケース1内の空間を広く利用することができる。すなわち、第1、第2の各スピーカ8、9のうち、特に高音用の第2スピーカ9を鍵盤部7の後部上方、つまり天板6の前部の下側に設けることにより、鍵盤部7の後部上側から鍵盤部7の前側上方に向けて放音することができる。これにより、第1スピーカ8以外に第2スピーカ9などの他の部品を楽器ケース1内に良好に組み込むことができるので、楽器ケース1内を有効に利用して楽器ケース1内の実装密度を高めることができる。
【0045】
また、この鍵盤楽器の蓋開閉装置35によれば、ガイド規制部38の共通ガイドレール41に、ラックギア19をピニオンギア18の外周に沿って屈曲させるための屈曲ガイド部44が設けられているので、鍵盤蓋13をスライドさせて開閉する際に、ラックギア19の噛合歯19aの一部をピニオンギア18の噛合歯18aに順次、確実に噛み合わせることができる。これにより、鍵盤蓋13のスライド動作に伴ってラックギア19を確実に移動させることができる共に、鍵盤蓋13を開く際にラックギア19を円滑に屈曲させて楽器ケース1の後板4および側板5に沿って良好に垂下させることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態1、2では、回転移動体としてピニオンギア18を用い、ガイド移動体としてラックギア19を用いた場合について述べたが、これに限らず、回転移動体としてスプロケットを用い、ガイド移動体としてチェーンを用いても良い。このような構成でも、上述した実施形態1、2と同様の作用効果がある。
【符号の説明】
【0047】
1 楽器ケース
7 鍵盤部
8、9 第1、第2の各スピーカ
13 鍵盤蓋
14、35 蓋開閉装置
15、36 前側ガイド部
16、37 後側ガイド部
17 シャフト
18 ピニオンギア
18a ピニオンギアの噛合歯
19 ラックギア
19a ラックギアの噛合歯
20、38 ガイド規制部
22 前側支持ピン
23、40 前側ガイド溝
24 後側支持ピン
25、42 後側ガイド溝
27 水平ガイド溝
28 ギア配置凹部
29 垂直ガイド溝
30、44 屈曲ガイド部
41 共通ガイドレール
43 ラックガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤部が内部に設けられた楽器ケースと、この楽器ケースにスライド可能に設けられて前記鍵盤部を開閉自在に覆う鍵盤蓋と、この鍵盤蓋の前部をガイドする前側ガイド部と、前記鍵盤蓋の後部をガイドする後側ガイド部とを備えた鍵盤楽器の蓋開閉装置において、
外周に噛合歯を有して前記楽器ケース内の後側上部に回転自在に設けられた回転支持体と、
この回転支持体の前記噛合歯に噛み合う噛合歯を有して前記鍵盤蓋の後部に設けられ、前記鍵盤蓋のスライド動作に連動して前記回転支持体の前記噛合歯にこれと噛み合う前記噛合歯が噛み合って移動する屈曲自在のガイド移動体と、
このガイド移動体の撓みを規制しながら前記ガイド移動体をガイドするガイド規制部と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の蓋開閉装置。
【請求項2】
前記ガイド規制部は、前記ガイド移動体を前記回転支持体の外周に沿って屈曲させるための屈曲ガイド部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の蓋開閉装置。
【請求項3】
前記回転支持体は、前記楽器ケース内の後側上部に設けられたシャフトに回転自在に取り付けられたピニオンギアであり、前記ガイド移動体は、前記ピニオンギアに噛み合って移動する屈曲可能なラックギアであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器の蓋開閉装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−27840(P2011−27840A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171242(P2009−171242)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】