説明

鍵盤楽器の鍵盤蓋構造

【課題】 鍵盤蓋の撓みを抑制して鍵盤蓋の撓みによる変形を防ぐことができる鍵盤楽器の鍵盤蓋構造を提供する。
【解決手段】 鍵盤蓋10に、この鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、楽器本体1の上面に当接可能な状態で接近する突起部18を設けた。従って、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓むと、鍵盤蓋10の突起部18が楽器本体1の上面に当接して、鍵盤蓋10の撓みを抑制することができる。このため、鍵盤蓋10の上に荷物などの物を載せても、鍵盤蓋10が大きく撓んで変形するのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器の鍵盤蓋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、楽器本体内に設けられた鍵盤部を覆うための鍵盤蓋の後部における両側に、一対の腕部材を鍵盤蓋の後方に延出させて設け、この一対の腕部材を楽器本体内の両側に設けられた一対の取付軸に回転可能に取り付けることにより、この一対の取付軸を中心に鍵盤蓋を上下方向に回転させて鍵盤部を開閉するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−313653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤楽器における鍵盤蓋構造では、楽器本体内の両側に設けられた一対の取付軸によって鍵盤蓋を回転可能に支持している構成であるから、鍵盤蓋を閉じた際に、一対の取付軸の間で鍵盤蓋が撓みやすい。このため、鍵盤蓋を閉じた状態で、鍵盤蓋の上に荷物などの物を載せると、鍵盤蓋が大きく撓んで変形してしまうという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、鍵盤蓋の撓みを抑制して鍵盤蓋の撓みによる変形を防ぐことができる鍵盤楽器の鍵盤蓋構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤部を収容した楽器本体に、前記鍵盤部を覆うための鍵盤蓋を上下方向に回転可能に取り付けた鍵盤楽器の鍵盤蓋構造において、前記鍵盤蓋に、当該鍵盤蓋が回転して前記鍵盤部を覆って閉じた際に、前記楽器本体の上面に当接可能な状態で接近する突起部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤蓋構造である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記楽器本体の前記上面とこれに対向する前記突起部の先端面との間に、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部を覆って閉じた状態で前記鍵盤蓋が撓んだ際に、前記突起部を前記楽器本体に当接可能にするための隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤蓋構造である
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記突起部に、前記鍵盤蓋を回転させて前記鍵盤部を開放した際に、譜面を立て掛けるための譜面受け部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器の鍵盤蓋構造である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記楽器本体の内面に、補強部が前記鍵盤蓋の前記突起部に対応して設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器の鍵盤蓋構造である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、鍵盤蓋が鍵盤部を覆って閉じた際に、鍵盤蓋が撓むと、鍵盤蓋に設けられた突起部が楽器本体の上面に当接して、鍵盤蓋の撓みを抑制することができる。このため、鍵盤蓋の上に荷物などの物を載せても、鍵盤蓋が大きく撓んで変形するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1において鍵盤蓋を開いた状態を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A矢視において鍵盤蓋を閉じた状態を示した拡大断面図である。
【図3】図2において鍵盤蓋を開いた状態を示した拡大断面図である。
【図4】図1の鍵盤楽器において鍵盤蓋を閉じた状態における一部を破断して示した拡大側面図である。
【図5】図1の鍵盤楽器において一部を破断して示した拡大側面図である。
【図6】図4の鍵盤楽器において突起部の先端面と楽器本体の上面との間の隙間を示した要部の拡大断面図である。
【図7】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2において鍵盤蓋を開いた状態を示した斜視図である。
【図8】図7の鍵盤楽器において鍵盤蓋を閉じた状態における一部を破断して示した拡大側面図である。
【図9】図7の鍵盤楽器において一部を破断して示した拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、図1〜図6を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、楽器本体1を備えている。この楽器本体1は、底板部2と、この底板部2の前端部(図2では左端部)に起立して設けられた前板部3と、底板部2の後端部(図2では右端部)に起立して設けられた後板部4と、底板部2の両側(図1では左右の両側)に起立して設けられた一対の側板部5と、この一対の側板部5上および後板部4上に配置された上板部6とを備えている。
【0013】
この場合、上板部6は、図1に示すように、その前側(図1では手前側)のほぼ半分程度が切り欠かれて開放されている。この楽器本体1の上板部6には、スイッチ部9aおよびスピーカ部9bが設けられている。これにより、楽器本体1は、前部側が上方に開放された箱形状に形成されている。
【0014】
この楽器本体1の内部には、図1〜図3に示すように、鍵盤部7が設けられている。この鍵盤部7は、白鍵8aおよび黒鍵8bを備え、これら白鍵8aおよび黒鍵8bが鍵盤シャーシ(図示せず)上に上下方向に回転可能に取り付けられた状態で多数配列された構成になっている。また、この楽器本体1には、図1〜図3に示すように、鍵盤部7を開閉自在に覆う鍵盤蓋10が蓋開閉装置11によって開閉可能に取り付けられている。
【0015】
この鍵盤蓋10は、蓋開閉装置11によって上下方向に回転することにより、図2に示すように、楽器本体1の上部に配置されて楽器本体1を閉じた際に鍵盤部7を覆い隠し、また図3に示すように、楽器本体1の後方(図2では右側)に少し傾いた状態で起立して楽器本体1を開いた際に鍵盤部7を上方に露出させるように構成されている。
【0016】
この鍵盤蓋10の蓋開閉装置11は、図1〜図3に示すように、楽器本体1内の後端部に位置する一対の側板部5間に架け渡された支持軸12と、鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられて支持軸12にそれぞれ回転自在に取り付けられたアーム部材13と、このアーム部材13にそれぞれ取り付けられて支持軸12を中心に鍵盤蓋10と共に回転する連動歯車14と、楽器本体1の側板部5の内面にそれぞれ設けられて鍵盤蓋10の開閉動作を制動するダンパ装置15とを備えている。
【0017】
これにより、鍵盤蓋10は、図2および図3に示すように、支持軸12を中心にアーム部材13および連動歯車14と共に上下方向に回転するように構成されている。この場合、連動歯車14は、図2および図3に示すように、支持軸12を中心に鍵盤蓋10がアーム部材13と共に回転する際に、鍵盤蓋10の開閉動作をダンパ装置15に伝達するように構成されている。
【0018】
すなわち、この連動歯車14は、図2および図3に示すように、全体がほぼ扇形状に形成されており、その外周面には、歯部14aが設けられている。また、この連動歯車14は、その要となる部分が支持軸12に回転可能に取り付けられている。これにより、連動歯車14は、鍵盤蓋10と共に回転するアーム部材13の回転に伴って支持軸12を中心に回転するように構成されている。
【0019】
ダンパ装置15は、図2および図3に示すように、一対の側板部5の内面に取り付けられた装置本体16を備えている。この装置本体16の内部には、図示しないが、鍵盤蓋10と共に回転する回転体と、この回転体の回転を制動する制動ばねとが設けられている。この場合、回転体には、連動歯車14の歯部14aに噛み合って回転する歯車部17が装置本体16の外部に露出して設けられている。
【0020】
また、制動ばねは、コイルばねであり、一端部が回転体に取り付けられ、他端部が装置本体に取り付けられている。これにより、制動ばねは、自由状態のときにニュートラル状態となり、このニュートラル状態を境にして回転体が一方向に回転すると、収縮変形して回転体に負荷を付与し、またニュートラル状態を境にして回転体が逆方向に回転すると、膨張変形して回転体に負荷を付与するように構成されている。
【0021】
これにより、ダンパ装置15は、鍵盤蓋10が閉じた状態から完全に開くまでの中間位置で、制動ばねがニュートラル状態となり、この中間位置から鍵盤蓋10が閉じる際に制動ばねが収縮変形して鍵盤蓋10に負荷を付与し、また中間位置から鍵盤蓋10が開く際に制動ばねが膨張変形して鍵盤蓋10に負荷を付与するように構成されている。
【0022】
ところで、この鍵盤蓋10には、図1、図4〜図6に示すように、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、楽器本体1の上板部6の上面に当接可能な状態で接近する突起部18がビス18aによって取り付けられている。この突起部18は、シリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムで形成されていても良く、またアルミニウムなどの金属や硬質の合成樹脂で形成されていても良い。
【0023】
この場合、突起部18は、図1に示すように、鍵盤蓋10の内面(図4では下面)の後部側における左右方向のほぼ中間位置に鍵盤蓋10の長手方向(つまり鍵盤部7の白鍵8aおよび黒鍵8bの配列方向)に沿って細長く設けられている。また、この突起部18の先端面(図6では下端面)とこれに対向する楽器本体1の上板部6の上面との間には、図6に示すように、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、僅かな隙間Sが設けられている。
【0024】
この隙間Sは、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓んだ際に、突起部18を楽器本体1の上板部6の上面に当接可能にするためのものであり、例えば1mm程度に設けられている。これにより、突起部18は、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓んだ際に、突起部18の下端部が楽器本体1の上板部6の上面に当接するように構成されている。
【0025】
この場合、楽器本体1の上板部6の内面(図4では下面)には、図4に示すように、上板部6を補強するための補強リブ19が鍵盤蓋10の突起部18に対応して設けられている。また、突起部18には、図1に示すように、鍵盤蓋10を上方に回転させて鍵盤部7を開放した際に、譜面20を立てるための譜面受け部21が設けられている。この譜面受け部21は、図6に示すように、突起部18の前側面(図6では左側面)に設けられており、この前側面の下部には、譜面20の下端部を係止するためのエッジ部21aが設けられている。
【0026】
これにより、譜面受け部21は、図1に示すように、鍵盤蓋10が後方(図5では右側)に少し傾いて起立した際に、突起部18が鍵盤蓋10の前面における下部に位置して鍵盤蓋10の前側に向けて突出することにより、突起部18の上面側に位置することになり、この状態で譜面20の下端部を支持して鍵盤蓋10の前面に立て掛けられるように構成されている。
【0027】
次に、このような鍵盤楽器を使用する場合について説明する。
この場合には、まず、鍵盤蓋10を上方に回転させて鍵盤部7を開放させて露出させる。このときには、鍵盤蓋10の前端部を持ち上げて蓋開閉装置11の支持軸12を中心に鍵盤蓋10を上方に回転させる。すると、蓋開閉装置11のアーム部材13が支持軸12を中心に連動歯車14と共に回転し、この連動歯車14の回転に伴ってダンパ装置15の歯車部17が回転する。
【0028】
このときには、ダンパ装置15の制動ばねが収縮している状態から膨張するように変形するため、鍵盤蓋10を軽い力で開く始めることができる。そして、鍵盤蓋10が中間位置まで開くと、ダンパ装置15の制動ばねがニュートラル状態になる。この後、鍵盤蓋10を更に開く際には、ダンパ装置15の制動ばねが徐々に膨張するように変形し、鍵盤蓋10に負荷を付与するので、鍵盤蓋10の回転動作が徐々に重くなる。
【0029】
そして、鍵盤蓋10が回転して完全に開くと、図1および図3に示すように、鍵盤蓋10の両側に設けられた一対のアーム部材13が楽器本体1内の支持軸12に支持された状態で、図3に示すように、楽器本体1の後方に少し傾いた状態で起立する。これにより、図1および図3に示すように、鍵盤部7が開放されるので、鍵盤部7を押鍵操作して演奏することができる。
【0030】
このときには、図1に示すように、鍵盤蓋10の前面側に向けて突起部18が突出した状態になり、この突出した状態の突起部18の上部側に譜面受け部21が位置するので、この譜面受け部21に譜面20を乗せて鍵盤蓋10に立て掛けることができる。このため、譜面20を見ながら演奏することができる。
【0031】
また、鍵盤蓋10を閉じる際には、図3において鍵盤蓋10の上部を手前側(図3では左側)に引き寄せて蓋開閉装置11の支持軸12を中心に鍵盤蓋10を下方に回転させる。すると、蓋開閉装置11のアーム部材13が支持軸12を中心に連動歯車14と共に回転し、この連動歯車14の回転に伴ってダンパ装置15の歯車部17が回転する。
【0032】
このときには、ダンパ装置15の制動ばねが膨張している状態から収縮するように変形するため、鍵盤蓋10を軽い力で閉じ始めることができる。そして、鍵盤蓋10が中間位置まで開くと、ダンパ装置15の制動ばねがニュートラル状態になる。この後、鍵盤蓋10を更に閉じる際には、ダンパ装置15の制動ばねが徐々に収縮するように変形し、鍵盤蓋10に負荷を付与するので、鍵盤蓋10の回転動作が徐々に重くなる。
【0033】
そして、鍵盤蓋10が回転して完全に閉じると、図1および図3に示すように、鍵盤蓋10の両側に設けられた一対のアーム部材13が楽器本体1内の支持軸12に支持された状態で、図2および図4に示すように、鍵盤蓋10が楽器本体1の上部に配置される。このときには、鍵盤蓋10に設けられた突起部18が楽器本体1の上板部6の上面に僅かな隙間Sを有して接近する。
【0034】
この状態で、鍵盤蓋10の上に荷物などの物を載せて鍵盤蓋10が一対のアーム部材13の間で撓むと、鍵盤蓋10の突起部18が楽器本体1の上板部6に当接する。このため、鍵盤蓋10は鍵盤蓋10の突起部18と楽器本体1の上板部6との間の隙間Sに応じて僅かに撓むだけであるから、鍵盤蓋10の撓みを抑制することができ、これにより鍵盤蓋10が大きく撓んで変形するのを阻止することができる。
【0035】
このように、この鍵盤楽器の鍵盤蓋構造によれば、鍵盤蓋10に、この鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、楽器本体1の上面に当接可能な状態で接近する突起部18を設けた構成であるから、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で、鍵盤蓋10が撓むと、鍵盤蓋10の突起部18が楽器本体1の上面に当接して、鍵盤蓋10の撓みを抑制することができ、これにより鍵盤蓋10の上に荷物などの物を載せても、鍵盤蓋10が大きく撓んで変形するのを防ぐことができる。
【0036】
この場合、突起部18がシリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムで形成されていれば、鍵盤蓋10の変形によって突起部18が楽器本体1の上板部6の上面に当接しても、楽器本体1の上面を傷付けることがない。また、突起部18がアルミニウムなどの金属や硬質の合成樹脂で形成されていれば、突起部18を鍵盤蓋10の長手方向(つまり鍵盤部7の白鍵8aおよび黒鍵8bの配列方向)に沿って細長く形成することにより、この突起部18の剛性によっても鍵盤蓋10の撓みを抑制することができる。
【0037】
また、楽器本体1の上面とこれに対向する突起部18の先端面との間には、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓んだ際に、突起部18を楽器本体1の上面に当接可能にするための僅かな隙間Sが設けられているので、鍵盤蓋10を閉じた際に突起部18が楽器本体1の上面に当接するのを防ぐことができる。このため、鍵盤蓋10を開閉する際に、突起部18によって楽器本体1の上面を傷付けることがないほか、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓む際に、隙間Sに応じて僅かに撓むだけであるから、鍵盤蓋10の撓みを確実に抑制することができる。
【0038】
また、突起部18には、鍵盤蓋10を上方に回転させて鍵盤部7を開放した際に、譜面を立て掛けるための譜面受け部21が設けられているので、鍵盤蓋10を開いて鍵盤部7を露出させ、この状態で鍵盤部7を押鍵操作して演奏する際に、突起部18の譜面受け部21に譜面20を乗せて鍵盤蓋10に立て掛けることができる。このため、譜面20を見ながら鍵盤部7を良好に押鍵操作して演奏することができる。この場合、譜面受け部21には、譜面20の下端部を係止するためのエッジ部21aが設けられているので、譜面受け部21に譜面20を確実に且つ良好に乗せて鍵盤蓋10に立て掛けることができる。
【0039】
さらに、楽器本体1の内面には、補強リブ19が鍵盤蓋10の突起部18に対応して設けられているので、鍵盤蓋10を閉じた状態で鍵盤蓋10の上に荷物などの物を載せた際に、鍵盤蓋10に大きな荷重が加わって突起部18が楽器本体1の上面に強く押し当てられても、補強リブ19によって突起部18を楽器本体1の上板部6上に確実に支持することができると共に、補強リブ19によって楽器本体1が変形したり破損したりするのを防ぐことができる。
【0040】
(実施形態2)
次に、図7〜図9を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2について説明する。なお、図1〜図6に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図7に示すように、鍵盤蓋10に第1、第2の各突起部25、26を設けると共に、楽器本体1の上板部6の内面に補強ボス27を設けた構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0041】
すなわち、第1の突起部25は、実施形態1と同様、鍵盤蓋10の内面における下部のほぼ中間部に鍵盤蓋10の長手方向(つまり鍵盤部7の白鍵8aおよび黒鍵8bの配列方向)に沿って細長く設けられている。また、第2の突起部26は、第1の突起部25と同様、鍵盤蓋10の内面における下部のほぼ中間部に第1の突起部25よりも短い長さで設けられている。
【0042】
この場合にも、第1、第2の各突起部25、26は、図8に示すように、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、楽器本体1の上板部6の上面に当接可能な状態で接近するように構成されている。また、この第1、第2の各突起部25、26も、実施形態1と同様、シリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムで形成されていても良く、またアルミニウムなどの金属や硬質の合成樹脂で形成されていても良い。
【0043】
また、この第1、第2の各突起部25、26の各先端面(図8では各下端面)とこれに対向する楽器本体1の上板部6の上面との間には、実施形態1の図6に示したように、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、僅かな隙間Sがそれぞれ設けられている。この隙間Sは、実施形態1と同様、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓んだ際に、第1、第2の各突起部25、26を楽器本体1の上板部6の上面に当接可能にするためのものであり、例えば1mm程度に設けられている。
【0044】
これにより、第1、第2の各突起部25、26は、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓んだ際に、第1、第2の各突起部25、26の各先端部が楽器本体1の上板部6の上面に当接するように構成されている。この場合、第1の突起部25は、実施形態1と同様、鍵盤蓋10を上方に回転させて鍵盤部7を開放した際に、譜面20を立てるための譜面受け部21が設けられている。
【0045】
また、楽器本体1の上板部6の内面(図8では下面)には、実施形態1と同様、上板部6を補強するための補強リブ19が鍵盤蓋10の第1の突起部25に対応して設けられているほか、図8に示すように、補強ボス27が第2の突起部26に対応して設けられている。この補強ボス27は、上板部6の上面に開放された円筒状に形成され、その下端部が楽器本体1内に設けられた鍵盤シャーシの後端部28に当接し、この状態でビス27aが上方から挿入して鍵盤シャーシの後端部28上に取り付けられるように構成されている。
【0046】
このような鍵盤楽器の鍵盤蓋構造によれば、鍵盤蓋10に、この鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた際に、楽器本体1の上面に当接可能な状態で接近する第1、第2の各突起部25、26を設けた構成であるから、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で、鍵盤蓋10が撓むと、鍵盤蓋10の第1、第2の各突起部25、26が楽器本体1の上面に当接して、鍵盤蓋10の撓みを抑制することができる。このため、実施形態1と同様、鍵盤蓋10の上に荷物などの物を載せても、鍵盤蓋10が大きく撓んで変形するのを防ぐことができる。
【0047】
この場合にも、第1、第2の各突起部25、26がシリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムで形成されていれば、鍵盤蓋10の変形によって第1、第2の各突起部25、26が楽器本体1の上板部6の上面に当接しても、楽器本体1を傷付けることがない。また、第1、第2の各突起部25、26がアルミニウムなどの金属や硬質の合成樹脂で形成されていれば、第1、第2の各突起部25、26を鍵盤蓋10の長手方向(つまり鍵盤部7の白鍵8aおよび黒鍵8bの配列方向)に沿って細長く形成することにより、各突起部25、26の剛性によっても鍵盤蓋10の撓みを抑制することができる。
【0048】
また、楽器本体1の上板部6の上面とこれに対向する第1、第2の各突起部25、26の各先端面との間には、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓んだ際に、第1、第2の各突起部25、26を楽器本体1の上面に当接可能にするための僅かな隙間Sが設けられているので、実施形態1と同様、鍵盤蓋10を閉じた際に第1、第2の各突起部25、26が楽器本体1の上面に当接するのを防ぐことができる。
【0049】
このため、実施形態1と同様、鍵盤蓋10を開閉する際に、第1、第2の各突起部25、26によって楽器本体1の上面を傷付けることがないほか、鍵盤蓋10が鍵盤部7を覆って閉じた状態で鍵盤蓋10が撓む際に、隙間Sに応じて僅かに撓むだけであるから、鍵盤蓋10の撓みを確実に抑制することができる。
【0050】
また、楽器本体1の内面には、補強リブ19と補強ボス27とが鍵盤蓋10の第1、第2の各突起部25、26に対応して設けられているので、鍵盤蓋10を閉じた状態で鍵盤蓋10の上に荷物などの物を載せた際に、鍵盤蓋10に大きな荷重が加わって第1、第2の各突起部25、26が楽器本体1の上面に強く押し当てられても、補強リブ19と補強ボス27によって第1、第2の各突起部25、26を楽器本体1の上板部6上に確実に支持することができると共に、補強リブ19および補強ボス27によって楽器本体1が変形したり破損したりするのを防ぐことができる。
【0051】
この場合、補強ボス27は、楽器本体1内に設けられた鍵盤シャーシの後端部28上にビス27aによって固定されているので、楽器本体1の上板部6を強固に支持することができる。このため、鍵盤蓋10に大きな荷重が加わって鍵盤蓋10が撓んで、補強ボス27に対応する上板部6の上面に第2の突起部26が強く押し当てられても、鍵盤蓋10の変形を確実に防ぐことができると共に、楽器本体1が変形したり破損したりするのを確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 楽器本体
6 上板部
7 鍵盤部
10 鍵盤蓋
11 蓋開閉装置
12 支持軸
13 アーム部材
18 突起部
19 補強リブ
20 譜面
21 譜面受け部
25、26 第1、第2の各突起部
27 補強ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤部を収容した楽器本体に、前記鍵盤部を覆うための鍵盤蓋を上下方向に回転可能に取り付けた鍵盤楽器の鍵盤蓋構造において、
前記鍵盤蓋に、当該鍵盤蓋が回転して前記鍵盤部を覆って閉じた際に、前記楽器本体の上面に当接可能な状態で接近する突起部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤蓋構造。
【請求項2】
前記楽器本体の前記上面とこれに対向する前記突起部の先端面との間には、前記鍵盤蓋が前記鍵盤部を覆って閉じた状態で前記鍵盤蓋が撓んだ際に、前記突起部を前記楽器本体に当接可能にするための隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤蓋構造。
【請求項3】
前記突起部には、前記鍵盤蓋を回転させて前記鍵盤部を開放した際に、譜面を立て掛けるための譜面受け部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器の鍵盤蓋構造。
【請求項4】
前記楽器本体の内面には、補強部が前記鍵盤蓋の前記突起部に対応して設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器の鍵盤蓋構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−59503(P2011−59503A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210568(P2009−210568)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】