説明

鍵盤装置

【課題】 複数の鍵を開閉可能に覆うための鍵盤蓋の取付作業性の向上を図ることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 複数の鍵4が上下方向に回転可能に取り付けられて配列された鍵盤シャーシ2に、複数の鍵4を覆うための鍵盤蓋3を開閉可能に取り付けた。従って、複数の鍵4が配列された鍵盤シャーシ2に鍵盤蓋3を取り付ける際に、鍵盤蓋3の取付位置を複数の鍵4に対して調整するだけで良いので、複数の鍵4を開閉可能に覆うための鍵盤蓋3の取付作業性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤装置においては、特許文献1に記載されているように、複数の鍵を鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能に取り付けられて配列された鍵盤部と、この鍵盤部を収容する楽器本体と、この楽器本体に取り付けられて鍵盤部を開閉自在に覆う鍵盤蓋とを備えた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−210149号公報
【0004】
この種の鍵盤楽器は、楽器本体の両側に位置する腕木に軸受部を設けると共に、鍵盤蓋の両側にダンパ部材を設け、このダンパ部材の軸部を楽器本体の軸受部に回転可能に取り付け、この状態でダンパ部材の軸部を中心に鍵盤蓋を回転させることにより、鍵盤蓋が開閉するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の鍵盤装置では、楽器本体内に鍵盤部を組み込み、この状態で楽器本体に鍵盤蓋を取り付ける際に、鍵盤部と鍵盤蓋との相互の取付位置を調整する必要がある。例えば、鍵盤部を収容した楽器本体に鍵盤蓋を取り付ける際に、鍵盤部に対して鍵盤蓋の取付位置が合っていない場合には、楽器本体に対する鍵盤蓋の取付位置を調整すると共に、楽器本体に対する鍵盤部の取付位置を調整しなければならないため、楽器本体に対する鍵盤部および鍵盤蓋の取付作業が煩雑で面倒であるという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、複数の鍵を開閉可能に覆うための鍵盤蓋の取付作業性の向上を図ることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、複数の鍵が上下方向に回転可能に取り付けられて配列された鍵盤シャーシに、前記複数の鍵を覆うための鍵盤蓋を開閉可能に取り付けたことを特徴とする鍵盤装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記鍵盤シャーシと前記鍵盤蓋とが、その一方の両側部に設けられた一対の支持軸と、その他方の両側部に設けられて前記一対の支持軸をそれぞれ回転自在に保持する一対の軸受部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記複数の鍵および前記鍵盤蓋を除いて、前記鍵盤シャーシの外側面を覆う楽器ケースを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記鍵盤シャーシが、楽器ケースを兼ねた構成であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数の鍵が配列された鍵盤シャーシに鍵盤蓋を取り付ける際に、鍵盤蓋の取付位置を複数の鍵に対して調整するだけで良いので、複数の鍵を開閉可能に覆うための鍵盤蓋の取付作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を適用した鍵盤装置の実施形態1において鍵盤蓋を開いた状態を示した側面図である。
【図2】図1の鍵盤装置を示した平面図である。
【図3】図1の鍵盤装置において鍵盤蓋を閉じた状態を示した側面図である。
【図4】図3の鍵盤装置を一部省略して示した平面図である。
【図5】図1の鍵盤装置において複数の鍵が配列された状態の鍵盤シャーシの一部を示した拡大斜視図である。
【図6】図5のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図7】図2のB−B矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図8】図5の鍵盤シャーシを楽器ケース内に収容する状態を示した分解図である。
【図9】この発明を適用した鍵盤装置の実施形態2において鍵盤蓋を開いた状態を示した側面図である。
【図10】図9の鍵盤装置を示した平面図である。
【図11】図9の鍵盤装置において鍵盤シャーシとその後部を覆う化粧パネルとの各一部を拡大して示した分解斜視図である。
【図12】図10のC−C矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図13】この発明を適用した鍵盤装置の実施形態3において鍵盤蓋を閉じた状態を示した側面図である。
【図14】図13の鍵盤装置において鍵盤蓋を開く際に鍵盤蓋を後方にスライドさせた状態を示した側面図である。
【図15】図14の状態の鍵盤装置において鍵盤蓋を回転させて開いた状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、図1〜図8を参照して、この発明を適用した鍵盤装置の実施形態1について説明する。
この鍵盤装置は、図1および図2に示すように、楽器ケース1と、鍵盤シャーシ2と、鍵盤蓋3とを備えている。鍵盤シャーシ2は、図1〜図5に示すように、その上面に複数の鍵4が配列された状態で、楽器ケース1内に配置されるように構成されている。
【0014】
すなわち、この鍵盤シャーシ2は、合成樹脂によって形成されており、この鍵盤シャーシ2の後部(図5では左上側)には、図5に示すように、鍵4を支持する鍵支持部5が設けられている。また、この鍵盤シャーシ2の前後方向における中間部には、スイッチ基板6が配置されており、鍵盤シャーシ2の前端部(図5では右下側)には、鍵4を上下方向にガイドして鍵4の横振れを防ぐための鍵ガイド部7が設けられている。
【0015】
複数の鍵4は、図5に示すように、複数の白鍵8と複数の黒鍵9とからなっている。この場合、複数の白鍵8は、その各後端部に肉厚の薄い屈曲部8aがそれぞれ設けられ、この屈曲部8aが白鍵8の配列方向に沿って連続する連続部8bにそれぞれ連結形成された構成になっている。同様に、複数の黒鍵9は、その各後端部に肉厚の薄い屈曲部9aがそれぞれ設けられ、この屈曲部9aが黒鍵9の配列方向に沿って連続する連続部9bにそれぞれ連結形成された構成になっている。
【0016】
この複数の鍵4は、図5に示すように、複数の白鍵8間に複数の黒鍵9が配置されて白鍵8の連結部8bと黒鍵9の連結部9bとが重ね合わされ、この重ね合わされた各連結部8b、9bが鍵盤シャーシ2の後部における鍵支持部5上に配置されることにより、複数の白鍵8と複数の黒鍵9とが鍵盤シャーシ2上に配列され、この状態で重ね合わされた各連結部8b、9bが鍵盤シャーシ2の後部における鍵支持部5上に締結部材10によって取り付けられるように構成されている。
【0017】
この場合、締結部材10は、図5および図6に示すように、鍵盤シャーシ2の鍵支持部5の所定箇所に取り付けられたブッシュ10aと、このブッシュ10aに螺着するねじ部材10bとからなっている。この締結部材10は、鍵盤シャーシ2の鍵支持部5に取り付けられたブッシュ10a上に、互いに重ね合わされた各連結部8b、9bを配置した状態で、ねじ部材10bを各連結部8b、9bのねじ挿入孔(図示せず)に挿入させて各ブッシュ10aに螺着することにより、各連結部8b、9bを鍵盤シャーシ2の鍵支持部5上に取り付けるように構成されている。
【0018】
これにより、複数の鍵4は、図5に示すように、白鍵8が上方から押鍵操作されると、後部の屈曲部8aが下側に向けて撓むように弾性変形して、白鍵8が鍵ガイド部7によってガイドされながら下側に変位し、この変位した白鍵8が初期位置に向けて復帰する際に、屈曲部8aが元の形状に弾性復帰することにより、白鍵8aが鍵ガイド部7によってガイドされながら上側に変位するように構成されている。
【0019】
同様に、この複数の鍵4は、黒鍵9が上方から押鍵操作されると、後部の屈曲部9aが下側に向けて撓むように弾性変形して、黒鍵9が鍵ガイド部7によってガイドされながら下側に変位し、この変位した黒鍵9が初期位置に向けて復帰する際に、屈曲部9aが元の形状に弾性復帰することにより、黒鍵9aが鍵ガイド部7によってガイドされながら上側に変位するように構成されている。
【0020】
また、鍵盤シャーシ2の中間部に配置されたスイッチ基板6の上面には、図5に示すように、ゴムスイッチ11が設けられている。このゴムスイッチ11は、ゴムシート11aにドーム状の膨出部11bを各鍵4に対応させて設けた構成になっている。この場合、ドーム状の膨出部11b内には、可動接点(図示せず)が設けられており、スイッチ基板6の上面には、可動接点が接離可能に接触する固定接点(図示せず)が設けられている。
【0021】
これにより、ゴムスイッチ11は、鍵4が押鍵操作されて下側に変位した際に、ドーム状の膨出部11bが押されて弾性変形し、この弾性変形した膨出部11b内の可動接点がスイッチ基板6の固定接点に接触することにより、楽音を発音させるためのスイッチ信号を出力するように構成されている。また、このゴムスイッチ11は、押鍵操作された鍵4が初期位置に復帰する際に、ドーム状の膨出部11bが元の形状に復帰し、可動接点が固定接点から離れることにより、楽音の発音を停止させるスイッチ信号を出力するように構成されている。
【0022】
ところで、この鍵盤シャーシ2には、図1〜図4に示すように、複数の鍵4を開閉可能に覆う鍵盤蓋3が取り付けられている。すなわち、この鍵盤シャーシ2の左右の両側部2aにおける上部には、図5〜図7に示すように、一対の軸受部12が設けられている。この一対の軸受部12は、それぞれ鍵盤シャーシ2の外部から内部に貫通する孔部である。この一対の軸受部12の上側に位置する鍵盤シャーシ2の両側部2aには、軸受部12から鍵盤シャーシ2の上端部に亘ってガイド溝13がそれぞれ設けられている。
【0023】
また、鍵盤蓋3は、合成樹脂からなり、図1〜図4に示すように、複数の鍵4が配列された鍵盤シャーシ2の上側を覆う横長の平板状に形成されている。この鍵盤蓋3の左右の両側部には、一対の取付部14が鍵盤シャーシ2の両側部2aの各外面に沿って下側に向けて延出された状態で一体に形成されている。この一対の取付部14は、図1および図7に示すように、鍵盤シャーシ2の両側部2aに設けられた一対の軸受部12およびその各ガイド溝13にほぼ対応する形状に形成されている。
【0024】
この一対の取付部14には、図7に示すように、鍵盤シャーシ2の各軸受部12に挿入して回転自在に取り付けられる支持軸15がそれぞれ一体に形成されている。この場合、一対の取付部14と鍵盤蓋3との境界部分には、図7に示すように、スリット溝16がそれぞれ取付部4の内面に沿って設けられている。
【0025】
すなわち、このスリット溝16は、図3および図4において取付部14の後端部から取付部14の前側中間部つまり支持軸15に対応する箇所に亘って設けられている。これにより、一対の取付部14は、各スリット溝16によって鍵盤蓋3に対して接近する方向または離れる方向に撓み変形するように構成されている。
【0026】
従って、一対の支持軸15は、図7に示すように、鍵盤シャーシ2の各軸受部12に挿入する際に、一対の取付部14が互いに離れる方向に弾力的に押し広げられた状態で、一対の支持軸15の各先端部15aが鍵盤シャーシ2の両側部2aに設けられた各ガイド溝13内に上方から挿入し、この各ガイド溝13に沿って各先端部15aが下側に移動して軸受部12に対応すると、一対の取付部14の弾性復帰力によって一対の支持軸15の各先端部15aが各軸受部12に挿入するように構成されている。
【0027】
これにより、鍵盤蓋3は、鍵盤シャーシ2の各軸受部12にそれぞれ挿入された一対の支持軸15を中心に上下方向に回転可能に鍵盤シャーシ2に取り付けられている。このため、この鍵盤蓋3は、図1に示すように、一対の支持軸15を中心に反時計回りに回転して、鍵盤シャーシ2の後方に傾いて起立することにより、鍵盤シャーシ2の上部を開放して開くように構成されている。
【0028】
また、この鍵盤蓋3は、図3に示すように、一対の支持軸15を中心に時計回りに回転して、鍵盤蓋3の先端側下面に設けられたストッパ部3aが後述する楽器ケース1の側板部19上に当接して鍵盤シャーシ2の上側に配置されることにより、鍵盤シャーシ2の上部を覆って閉じるように構成されている。
【0029】
また、この鍵盤シャーシ2の後端部には、図5に示すように、鍵盤蓋3の開閉状態を検出する蓋検出スイッチ24が設けられている。この蓋検出スイッチ24は、フォトダイオードからなり、鍵盤蓋3が鍵盤シャーシ2上を覆って閉じている状態のときに、外部光が遮断されてオフとなり、鍵盤蓋3が開いた状態のときに、外部光を受光してオンになるように構成されている。また、この蓋検出スイッチ24は、接続線24aによって鍵盤シャーシ2上に配置されたスイッチ基板6と電気的に接続されている。
【0030】
これにより、蓋検出スイッチ24は、鍵盤蓋3を開いて使用する際に、オン信号を出力してスイッチ基板6のゴムスイッチ11をオン状態にし、押鍵操作に応じた楽音の発音を可能な状態にするように構成されている。また、この蓋検出スイッチ24は、鍵盤蓋3を閉じた際に、オフ信号を出力してスイッチ基板6のゴムスイッチ11をオフ状態にし、楽音の発音を停止させるように構成されている。
【0031】
一方、鍵盤シャーシ2を収容する楽器ケース1は、図8に示すように、鍵盤シャーシ2を載置する底板部17と、この底板部17の前端部(図8では右端部)に設けられた鍵盤シャーシ2の前端部を覆う前板部18と、底板部17の両側部(図8では紙面の表裏方向における両側部)に設けられて鍵盤シャーシ2の両側部を覆う一対の側板部19と、この一対の側板部19における後部上に設けられて鍵盤シャーシ2の後部上を覆う上板部20とを備え、これらが合成樹脂によって一体に形成されている。
【0032】
この場合、一対の側板部19の後端部(図1では左端部)には、図1、図3および図7に示すように、鍵盤蓋3の両側部に設けられた一対の取付部14がそれぞれ移動可能に挿入する装着凹部21が設けられている。この装着凹部21は、図7に示すように、側板部19の外面から鍵盤シャーシ2側に向けて窪んだ状態で、側板部19の後端部と側板部19の上端部との間に、取付部14が支持軸15を中心に回転移動可能な範囲の広を有するほぼ三角形状に設けられている。これにより、装着凹部21は、側板部19の後端部と上端部とに開放されている。
【0033】
この装着凹部21の後側下部(図1では左側下部)には、図1および図3に示すように、鍵盤蓋3の取付部14が支持軸15を中心に回転して鍵盤蓋3が後方に傾いた状態で起立した際に、取付部14の後端部(図1では下端部)が当接する第1当接部21aが設けられている。また、この装着凹部21の前部(図1では右側部)には、図1および図3に示すように、鍵盤蓋3の取付部14が支持軸15を中心に回転して鍵盤蓋3が鍵盤シャーシ2上を覆った際に、取付部14の前端部(図3では右端部)が当接する第2当接部21bが設けられている。
【0034】
また、この装着凹部21には、図7に示すように、鍵盤蓋3の一対の取付部14に設けられた支持軸15がスライド可能に挿入するスライド取付溝22が設けられている。このスライド取付溝22は、鍵盤シャーシ2を楽器ケース1内に収容する際に、鍵盤蓋3の取付部14に設けられた支持軸15が挿入してスライドすることにより、鍵盤シャーシ2を楽器ケース1内の所定位置に配置するように構成されている。
【0035】
そして、この楽器ケース1内に鍵盤シャーシ2を挿入させて取り付ける場合には、図8に示すように、楽器ケース1の後部側(図8では左側)から鍵盤シャーシ2の前部側を挿入する。すると、鍵盤シャーシ2の底部が楽器ケース1の底致部17上を移動する。この後、楽器ケース1の上板部20が鍵盤シャーシ2の後部上側に位置すると、鍵盤蓋3の両側に設けられた一対の取付部14が一対の側板部19に設けられた各装着凹部21の後端部にそれぞれ対応すると共に、この各装着凹部21に設けられた各スライド取付溝22の後端部に一対の取付部14の各支持軸15がそれぞれ対応する。
【0036】
この状態で、鍵盤シャーシ2を楽器本体1の前側に向けて更に移動させると、図7に示すように、鍵盤蓋3の取付部14が側板部19の装着凹部21内にその後端部側から挿入すると共に、この装着凹部21のスライド取付溝22内にその後部側から取付部14の支持軸15が挿入し、鍵盤シャーシ2が楽器ケース1内の所定位置に位置する。
【0037】
これにより、図1および図3に示すように、鍵盤シャーシ2の前端部が前板部18に接近または接触し、鍵盤シャーシ2の後端部が楽器ケース1の後端部に位置する。この状態で、図1および図3に示すように、鍵盤シャーシ2を楽器ケース1にビス23によって固定する。この場合、鍵盤シャーシ2の後端部がむき出しになるため、楽器ケース1の後端部に目隠し板(図示せず)を取り付けるようにしても良い。
【0038】
このように、この鍵盤装置によれば、複数の鍵4が上下方向に回転可能に取り付けられて配列された鍵盤シャーシ2に、複数の鍵4を覆うための鍵盤蓋3を開閉可能に取り付けた構成であるから、複数の鍵4が配列された鍵盤シャーシ2に鍵盤蓋3を取り付ける際に、鍵盤蓋3の取付位置を複数の鍵4に対して調整するだけで良いので、複数の鍵4を開閉可能に覆うための鍵盤蓋3の取付作業性の向上を図ることができる。
【0039】
すなわち、鍵盤シャーシ2の両側部2aには、軸受部12がそれぞれ設けられており、鍵盤蓋3の両側部には、支持軸15が設けられた取付部14がそれぞれ設けられているので、鍵盤蓋3を鍵盤シャーシ2上に配置する際に、鍵盤蓋3の取付部14に設けられた支持軸15を鍵盤シャーシ2の軸受部12に挿入することにより、簡単に鍵盤蓋3を鍵盤シャーシ2に回転可能に取り付けることができる。
【0040】
この場合、鍵盤シャーシ2の両側部2aには、鍵盤蓋3の取付部14に設けられた支持軸15を鍵盤シャーシ2の軸受部12にガイドするガイド溝13が設けられているので、鍵盤シャーシ2の各軸受部12に取付部14の支持軸15を挿入させる際に、支持軸15の先端部15aを鍵盤シャーシ2のガイド溝13に沿ってガイドすることができ、これにより簡単に且つ容易に鍵盤蓋3の支持軸15を鍵盤シャーシ2の軸受部12に挿入させて確実に取り付けることができる。
【0041】
また、鍵盤蓋3の取付部14と鍵盤蓋3との境界部分には、取付部14を互いに離れる方向に弾性変形させるためのスリット溝16がそれぞれ設けられているので、鍵盤シャーシ2の各軸受部12に取付部14の支持軸15を挿入させる際に、一対の取付部14を互いに離れる方向に弾力的に押し広げることができ、これにより支持軸15の先端部15aを鍵盤シャーシ2のガイド溝13に沿って円滑にガイドすることができる。
【0042】
このため、鍵盤蓋3の支持軸15を鍵盤シャーシ2の軸受部12に簡単に且つ容易に挿入させて取り付けることができるので、鍵盤シャーシ2に対する鍵盤蓋3の取付作業性が良い。この場合、鍵盤シャーシ2は合成樹脂によって形成されているので、この鍵盤シャーシ2に軸受部12およびガイド溝13を鍵盤シャーシ2の成形時に一体に形成することができ、また鍵盤蓋3も合成樹脂によって形成されているので、取付部14および支持軸15を鍵盤蓋3の成形時に一体に形成することができる。これにより、部品点数を削減することができると共に、切削加工などの2次加工が不要であるから、生産性が高い。
【0043】
また、この鍵盤装置では、複数の鍵4および鍵盤蓋3を除いて、鍵盤シャーシ2の外側面を覆う楽器ケース1を備えているので、この楽器ケース1によって鍵盤シャーシ2の外側面を覆うことにより、外観的にもデザイン的にも好ましく、商品価値の高いものを提供することができる。この場合、鍵盤シャーシ2に鍵盤蓋3を取り付けた状態で、鍵盤シャーシ2を楽器ケース1に組み込むことができるので、取付作業性が良いばかりか、コンパクトに収容することができる。
【0044】
すなわち、楽器ケース1は、鍵盤シャーシ2を載置する底板部17と、鍵盤シャーシ2の前端部を覆う前板部18と、鍵盤シャーシ2の両側部を覆う一対の側板部19と、鍵盤シャーシ2の後部上を覆う上板部20とを備えた構成であるから、鍵盤シャーシ2に鍵盤蓋3を取り付けた状態でも、鍵盤シャーシ2を楽器ケース1内にスライドさせるだけで、簡単に且つ容易に収容することができる。
【0045】
この場合、楽器ケース1の側板部19の後部には、鍵盤蓋3の取付部14が挿入する装着凹部21が設けられており、この装着凹部21には、鍵盤蓋3の取付部14に設けられた支持軸15がスライド可能に挿入するスライド取付溝22が設けられていることにより、楽器ケース1内に鍵盤シャーシ2を収容する際に、鍵盤蓋3の取付部14を側板部19の装着凹部21内に後端部側から挿入させることができると共に、この装着凹部21のスライド取付溝22内に取付部14の支持軸15を後部側から挿入させることができるので、鍵盤シャーシ2を楽器ケース1内にスライドさせるだけで、簡単に収容することができる。
【0046】
また、この装着凹部21の後側下部には、鍵盤蓋3の取付部14が支持軸15を中心に回転して鍵盤蓋3が後方に傾いた状態で起立した際に、取付部14の後端部が当接する第1当接部21aが設けられているので、鍵盤蓋3を回転させて開いた際に、取付部14の後端部が第1当接部21aに当接することにより、鍵盤蓋3を後方に傾けた状態で安定して起立させることができる。
【0047】
また、この装着凹部21の前部には、鍵盤蓋3の取付部14が支持軸15を中心に回転して鍵盤蓋3が鍵盤シャーシ2上を覆った際に、取付部14の前端部が当接する第2当接部21bが設けられているので、鍵盤蓋3を回転させて閉じた際に、取付部14の後端部が第2当接部21bに当接することにより、鍵盤蓋3を楽器ケース1上に安定させて配置することができる。この場合には、鍵盤蓋3の先端側の下面に設けられたストッパ部3aが楽器ケース1の側板部19上に当接するので、これによっても鍵盤蓋3を楽器ケース1上に安定させて配置することができる。
【0048】
さらに、この鍵盤装置では、鍵盤シャーシ2の後端部に、鍵盤蓋3の開閉状態を検出する蓋検出スイッチ24が設けられていることにより、鍵盤蓋3の開閉状態に応じて鍵盤シャーシ2に組み込まれた電子回路を自動的にオンーオフさせることができる。すなわち、この蓋検出スイッチ24は、鍵盤蓋3を開いて使用する際に、オン信号を出力してスイッチ基板6のゴムスイッチ11をオン状態にし、自動的に押鍵操作に応じた楽音の発音を可能な状態にすることができる。また、この蓋検出スイッチ24は、鍵盤蓋3を閉じた際に、オフ信号を出力してスイッチ基板6のゴムスイッチ11をオフ状態にし、自動的に楽音の発音を停止させることができる。
【0049】
(実施形態2)
次に、図9〜図12を参照して、この発明を適用した鍵盤装置の実施形態2について説明する。なお、図1〜図8に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤装置は、図11に示すように、鍵盤シャーシ30が楽器ケースを兼ねた構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0050】
すなわち、この鍵盤シャーシ30は、図11に示すように、複数の鍵4を配列して搭載する鍵搭載部31と、この鍵搭載部31の両側に形成された一対のケース部32とを備えた構成になっている。鍵搭載部31は、実施形態1と同様、後部側(図11で羽左上側)から前部側(図11では右下側)に向けて順に、鍵支持部5、スイッチ基板6を搭載する基板搭載部33、および鍵ガイド部7が一体に形成されているほか、この鍵ガイド部7の前側(図11では右下側)に複数の鍵4の前端下部を覆う鍵カバー部34が更に一体に形成された構成になっている。
【0051】
また、一対のケース部32は、図9〜図12に示すように、鍵搭載部31の両側をそれぞれ覆い隠すためのものであり、鍵搭載部31とほぼ同じ高さで、鍵搭載部31の後端部から前カバー部34の前端部に亘って鍵搭載部31の両側にそれぞれ一体に形成されている。この場合、一対のケース部32の高さは、それぞれ鍵搭載部31の底部から後部の鍵支持部5の上端面よりも高い位置、つまり白鍵8の連結部8bと黒鍵9の連結部9bとが重なり合った高さ、および黒鍵9の高さだけ、鍵搭載部31よりも高く形成されている。
【0052】
また、この一対のケース部32の各後端上部には、実施形態1と同様、鍵盤蓋3の取付部14に設けられた支持軸15が挿入する軸受部12がそれぞれ設けられており、この軸受部12の上側に位置するケース部32の箇所には、鍵盤蓋3を鍵盤シャーシ30に取り付ける際に、鍵盤蓋3の支持軸15をケース部32の軸受部12にガイドするためのガイド溝13が軸受部12からケース部32の上端部に亘ってそれぞれ設けられている。
【0053】
これにより、鍵盤蓋3は、実施形態1と同様、鍵盤シャーシ30の各軸受部12にそれぞれ挿入された一対の支持軸15を中心に上下方向に回転可能に鍵盤シャーシ30に取り付けられている。このため、この鍵盤蓋3は、一対の支持軸15を中心に回転して、鍵盤シャーシ30の後方に傾いて起立することにより、鍵盤シャーシ2の上部を開放して開くように構成されている。また、この鍵盤蓋3は、一対の支持軸15を中心に回転して、鍵盤蓋3のストッパ部3aが鍵盤シャーシ30の各ケース部32上に当接して、鍵盤シャーシ30の上部に配置されることにより、鍵盤シャーシ30の上部を覆って閉じるように構成されている。
【0054】
また、この鍵盤シャーシ30の後側上部には、図9〜図11に示すように、複数の鍵4の後側上部および鍵盤シャーシ30の後側上部を覆い隠すための化粧パネル35が取り付けられている。この化粧パネル35は、鍵搭載部31の両側に形成された一対のケース部32上に取り付けられることにより、鍵支持部5上に配置された白鍵8および黒鍵9の各連結部8b、9bおよび各屈曲部8a、9aを覆い隠すように形成されている。この場合、化粧パネル35には、鍵盤シャーシ30上に設けられた蓋検出スイッチ24を上方に露出させるための切欠部35aが設けられている。
【0055】
このような鍵盤装置によれば、実施形態1と同様の作用効果があるほか、鍵盤シャーシ30が楽器ケースを兼ねているので、実施形態1のような楽器ケース1が不要となり、実施形態1よりも低価格なものを提供することができる。すなわち、この鍵盤シャーシ30は、複数の鍵4を配列して搭載する鍵搭載部31と、この鍵搭載部31の両側に形成された一対のケース部32とを備え、鍵搭載部31に複数の鍵4の前端下部を覆う前カバー部34が形成された構成であるから、実施形態1のような楽器ケース1を用いなくても、実施形態1と同様、外観的にもデザイン的にも好ましく、商品価値の高いものを提供することができると共に、実施形態1よりも、コンパクトなものを提供することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態1、2では、鍵盤シャーシ2または30の両側部に一対の軸受部12を設け、鍵盤蓋3の両側部に一対の取付部14を設け、この一対の取付部14に、軸受部12に挿入する支持軸15をそれぞれ設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば鍵盤シャーシ2または30の両側部に一対の支持軸15を設け、鍵盤蓋3の両側部に一対の取付部14を設け、この一対の取付部14に支持軸15が挿入する軸受部12をそれぞれ設けた構成でも良い。
【0057】
また、上述した実施形態1、2では、鍵盤シャーシ2または30に軸受部12を設け、この軸受部12に鍵盤蓋3の支持軸15を回転可能に挿入させることにより、鍵盤蓋3が軸受部12に保持された支持軸15を中心に回転して鍵盤シャーシ2または30を開閉するように構成した場合について述べたが、これに限らず、例えば図13〜図15に示す変形例のように、鍵盤シャーシ40にガイドレール部41を設け、このガイドレール部41で鍵盤蓋3の支持軸15を移動可能にガイドすることにより、鍵盤蓋3を開閉するように構成しても良い。
【0058】
すなわち、ガイドレール部41は、図13に示すように、鍵盤シャーシ40の両側面(図13では片面のみを示す)における前後方向のほぼ中間部から鍵盤シャーシ40の後部に亘って設けられた溝部である。このガイドレール部41は、鍵盤蓋3の支持軸15を鍵盤シャーシ40の前後方向に移動可能にガイドすると共に、その後端部において鍵盤蓋3の支持軸15を回転可能に保持するように構成されている。この場合、鍵盤蓋3における前後方向のほぼ中間部には、取付部14が設けられており、この取付部14には、支持軸15が設けられている。
【0059】
これにより、鍵盤蓋3は、その支持軸15がガイドレール部41の前端部に位置した状態のときに、図13に示すように、鍵盤シャーシ40上に配置されて鍵盤シャーシ1の上部を覆って閉じるように構成されている。また、この鍵盤蓋3は、鍵盤シャーシ40上に配置された状態で、図14に示すように、鍵盤シャーシ40の後方(図14では左側)に向けてスライドされると、支持軸15がガイドレール部41に沿って鍵盤シャーシ40の後部側に向けて移動し、この支持軸15がガイドレール部41の後端部に当接すると、支持軸15の移動が停止されるように構成されている。
【0060】
また、この鍵盤蓋3は、図14に示すように、支持軸15がガイドレール部41の後端部に当接すると、支持軸15がガイドレール部41の後端部に回転可能に保持され、この状態で、図15に示すように、支持軸15を中心に上下方向に回転するように構成されている。この場合、鍵盤蓋3は、図15に示すように、その後端部(図15では下端部)が鍵盤シャーシ40の後端面に当接すると、鍵盤シャーシ40の後方に傾いて起立し、鍵盤シャーシ40の上部を開放して開くように構成されている。
【0061】
このような変形例の鍵盤装置によれば、鍵盤シャーシ40にガイドレール部41を設け、このガイドレール部41で鍵盤蓋3の支持軸15を移動可能にガイドすることにより、鍵盤蓋3を開閉するように構成したので、実施形態1、2と同様、複数の鍵4が配列された鍵盤シャーシ40に鍵盤蓋3を取り付ける際に、鍵盤蓋3の取付位置を複数の鍵4に対して調整するだけで良いので、複数の鍵4を開閉可能に覆うための鍵盤蓋3の取付作業性の向上を図ることができる。
【0062】
この場合、鍵盤蓋3を開く際には、鍵盤蓋3を鍵盤シャーシ40の後方に向けてスライドされて支持軸15をガイドレール部41に沿って移動させた後、この支持軸15を中心に鍵盤蓋3を回転させることにより、容易に鍵盤蓋3を開くことができる。また、鍵盤蓋3を閉じる際には、支持軸15を中心に鍵盤蓋3を回転させて鍵盤シャーシ40上に配置し、この状態で鍵盤蓋3を鍵盤シャーシ40の前側にスライドさせるだけで、容易に鍵盤蓋3を閉じることができる。
【0063】
なおまた、上述した実施形態1、2およびその変形例では、複数の鍵4が白鍵8および黒鍵9を有すると共に、白鍵8および黒鍵9がそれぞれ各屈曲部8a、9aを各連結部8b、9bに連結した簡易型の鍵盤装置に適用した場合について述べたが、これに限らず、例えば複数の鍵4の各後端部をそれぞれ支持軸に回転自在に取り付けた構成の鍵盤装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 楽器ケース
2、30、40 鍵盤シャーシ
2a 鍵盤シャーシの両側部
3 鍵盤蓋
4 鍵
5 鍵支持部
12 軸受部
13 ガイド溝
14 取付部
15 支持軸
16 スリット溝
17 底板部
18 前板部
19 側板部
20 上板部
21 装着凹部
22 スライド取付溝
31 鍵搭載部
32 ケース部
34 前カバー部
41 ガイドレール部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵が上下方向に回転可能に取り付けられて配列された鍵盤シャーシに、前記複数の鍵を覆うための鍵盤蓋を開閉可能に取り付けたことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記鍵盤シャーシと前記鍵盤蓋とは、その一方の両側部に設けられた一対の支持軸と、その他方の両側に設けられて前記一対の支持軸をそれぞれ回転自在に保持する一対の軸受部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記複数の鍵および前記鍵盤蓋を除いて、前記鍵盤シャーシの外側面を覆う楽器ケースを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記鍵盤シャーシは、楽器ケースを兼ねた構成であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−53433(P2011−53433A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202191(P2009−202191)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】