説明

鏡板を用いた閉止フランジ。

【課題】通常の閉止フランジとしてはもとより、大型スパイラル式熱交換器の渦巻状に巻回された帯状伝熱板の開口端縁を閉じる閉止フランジの重量を、JIS規格の平板製閉止フランジの重量の50%以下に軽量化する。
【解決手段】大型スパイラル式熱交換器等の筐体3と、その開口端縁11を閉じる蓋板13の外側に伏椀状等の鏡板9を設け、該伏椀状の鏡板9と蓋板13とで構成される内腔10の少なくとも一部に、アルミニウムなどの発泡金属22を充填、或いは多数のリブを渡して成る補強部材8を介在させて前記蓋板13と鏡板9とを一体に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通常の閉止フランジ。
或いは少なくとも二枚の帯状伝熱板を渦巻状に巻回して、それぞれの流路に流体を流すようになされた帯状伝熱板が、筒状の筐体の中に収められように構成されたスパイラル式熱交換器の閉止フランジにおいて、該筒状の筐体と渦巻状に巻回された帯状伝熱板の開口端縁を閉じる蓋板に、伏椀状、円錐状等の鏡板とを一体に構成して成る閉止フランジに関するものである。
【0002】
詳しくは、大型、例えば直径が1m以上の筒状の伝熱板等の開口端縁を閉じる閉止フランジを蓋板と鏡板で構成し、この蓋板と鏡板で構成された内腔の少なくとも一部に補強部材を充満せしめることによって、必要な強度を低下することなく大幅に軽量化される閉止フランジに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、対向流型のスパイラル式熱交換器は、図1に示すように片方の流路の帯状伝熱板5の両端を直径方向に折り曲げてから、もう片方の帯状伝熱板4と所定の間隔をあけて一緒に渦巻状に多数回巻き回したのち溶接6して構成されている。
そして渦巻状に巻回された帯状伝熱板4と、曲げた帯状伝熱板5、及びこれらを収容した円筒状の筐体3の開口端縁11を閉じるために、板状ガスケット7を挟んで平板の閉止フランジ2が蓋板13として使用されている。(特許文献1)
スパイラル式熱交換器1の直径が比較的に小径(例えば直径が500mm以下)であれば問題はがないが、これが大型のものになると直径に比例して当然厚いフランジが要求される。
【0004】
即ち、図2(イ)の平板の蓋板13を閉止フランジ2とした場合、例えば図9に示すように、(参考文献1)JIS(日本工業規格)B2220:2004.呼び圧力10kgのフランジでは、呼び径1500Aのとき、フランジの外径は1795mm.厚さTは82mm(アンダーライン)と規定されている。
而して重量はこの平板の閉止フランジだけで一枚、約1.500kgにもなる。
【0005】
このうち図2(イ)、(ロ)に示すように、蓋板13の直径に相当する筐体3の直径aは1524mmであるから、フランジの厚さTが82mmとして、必要とされる蓋板13の重量は約1.170kgにもなる。
【0006】
処でこの例で実際に必要な蓋板13の厚さは図3に示す。(特許文献2)特開2002−213706号で説明されているように、鏡板9の厚さt’が強度上、円筒状の筐体3の厚さと略同じ強度であるための必要厚さである。
即ちこれらから、平面状の蓋板13に相当する伏椀状の鏡板9の厚さt’は円筒状の筐体3の厚さtよりも大幅に薄くてもよいことになる。
【0007】
因みに、前記(参考文献1).呼び圧力10kgフランジで記載された筐体3に相当する胴部の厚さtは、図2(イ)、(ロ)で示す管の外径aではJIS(日本工業規格)B2220:2004では28mmとなっている。
【0008】
更に図2(ロ)に示す点線cは、筐体3と同じ厚さtで、伏椀状の鏡板9を設けた例を示す説明図である。
【0009】
一方補強部材8として発泡金属をエンジンのマウント装置の内腔に充填して軽量化に利用することが知られている(例えば特許文献3参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平06−82179号
【特許文献2】特開2002−213706号
【特許文献3】特開2008−303916号
【非特許文献1】JIS(日本工業規格)B2220:2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、従来スパイラル式熱交換器の渦巻状に巻回された帯状伝熱板4の開口端縁11と筐体3を閉じる蓋板13には平板の閉止フランジ2が用いられている。
しかしながら、平板の閉止フランジ2を用いた場合、閉止フランジ2のボルト27を締めると、通常平板の閉止フランジ2が円筒状の頑丈な筐体3の開口端縁11で、曲げ作用を生じることから、閉止フランジ2が薄いと、閉止フランジ2の中央付近は太鼓や天秤のように膨れ、均一に締まらない問題があった。
而して閉止フランジ2の板状ガスケット7を均一に締めると同時に、内圧などに対しても充分な強度を維持させるためには、蓋板13の厚さは、JISB2220:2004.の例からも円筒状の筐体3の約2.5倍かそれ以上の板厚が必要とされるため過大に重くならざるを得ない問題がある。
【0012】
これを改良するものとして図4(イ)、(ロ)に示すように平板の閉止フランジ2に補強部材8として(金属薄板を形切りしたもの・以下リブと呼ぶ)リブ23を溶接6するものがあるが、平板の閉止フランジ2に頑丈なリブ23を溶接するときには溶接歪を生じることから、使用する平板の閉止フランジ2をあまり薄くできない問題がある。
即ち、溶接などして平板の閉止フランジ2に狂いが生じると、巨大な平板の閉止フランジ2のシール面を全面に亘って切削等修整して仕上げなければならないため、大きなコストが掛かる問題がある
そしてこの歪は時間が経つと、残留応力で捩れ等の不都合となって現れるため、全体を焼き鈍しなどの後処理をしなくてはならない問題がある。
【0013】
この発明は、上記した従来例に鑑み、通常の閉止フランジ2及び、スパイラル式熱交換器全体の強度を損なうことなく、組合わされた閉止フランジ2の大幅な軽量化とコストダウンができるスパイラル式熱交換器等に用いる閉止フランジを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
大型スパイラル式熱交換器等の閉止フランジとして、筒状の筐体と、その開口端縁を閉じる蓋板の外側に伏椀状等の鏡板を設け、該鏡板と蓋板とで構成される内腔にアルミニウムなどの発泡金属を充填する。
或は該内腔に多数のリブ等を設けて成る軽量化された補強部材を介在させて前記蓋板と鏡板とを一体に構成することである。
【0015】
この発明の閉止フランジ2では、図5(イ)、(ロ)に示すように平板の蓋板13と鏡板9とで構成される内腔10に、発泡金属(例えばアルミニウムの発泡体)の補強部材8を充填し、蓋板13との鏡板9とが完全に一体化されることによって、強度を落とすことなく閉止フランジ2を大幅に軽量化することに成功したものである。
【発明の効果】
【0016】
図3(特許文献3)に示されているように、円弧の鏡板t’は強度上、外筒筐体3の厚さtより大幅に必要厚さが軽減されるものであるが、例え外筒3と同じ厚さt’のものを使用したとしても、この対比効果は歴然としている。
即ち蓋板13のバックアップに鏡板9を用いることで、蓋板13の剛性が確保され、閉止フランジ2が大幅に軽量化される。
【0017】
従来、大型の閉止フランジ2を作るとき。厚いステンレス板等から大口径の平板の閉止フランジ2材をガス切断等で切り出し、そして仕上げは旋盤などで削り出さなければならない為に、大型のスパイラル式熱交換器を作ることが困難であったが、図5〜7に示すようにこの発明の伏椀状の鏡板9を用いた蓋板13によると、従来の平板の厚さの10〜30%程度の平板からプレス、へら絞りなど多品種少量生産の技術で、任意の形状、直径で伏椀状の鏡板9を作ることができるため、この鏡板9と蓋板13を組み合わせた閉止フランジ2は大幅なコストダウンと軽量化ができると同時に、従来困難であった大型のスパイラル式熱交換器等を廉価に提供することができる。
【0018】
即ち図5(イ)(ロ)に示すように蓋板13と組合される鏡板9は、その縁が曲げられて外周21を構成して蓋板13の端部に一体に溶接6され、そして構成された内腔10に補強部材8、例えば発泡金属22を充填することで一体化され閉止フランジ2ができる。
【0019】
或いは、図6に示すように平板の蓋板13と伏椀状の鏡板9との間に構成される内腔10に補強のリブ23を軸方向に複数設置し、前記蓋板13と伏椀状の鏡板9とを完全に一体化することによって、強度を落とすことなく蓋板13を大幅に軽量化することである。
【0020】
また図7に示すように鏡板9と組合される蓋板13は、軽量で剛性に優れたハニカムサンドイッチパネル15がリブ23を介して一体化できる。そしてこのハニカムサンドイッチパネル15は鏡板9と組合せられる前に、必要に応じて例えばリブ23の中央付近を少し凸に脹らませた態様で構成する等によって、蓋板13の中央付近を少し凸に脹らませる等、従来切削でなければできなかった仕様が容易に実現できる。
鏡板9とハニカムサンドイッチパネル15を一体化する補強部材8は、図6(ハ).図7(ハ)に示すように薄くて(例えば厚さが1mm)、内腔10の形状に適合したリブ23を軸方向に放射状に多数配設して構成される。
而して伏椀状の鏡板9は、最も耐圧力に優れた半球状から半楕円、円錐状、皿状等自由に組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
以下実施例によって本発明の詳細を図面について説明するが、本発明がこれらの実施例やスパイラル式熱交換器の閉止フランジに限定するものではなく同一又は類似の目的で他の用途の閉止フランジ2として適用できることは当然である。
以下、この実施例では、同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
更に、軸方向及び直径方向の流体の出入口の記載は全て省略している。
【実施例1】
【0022】
この実施例では図5(イ)(ロ)に示すように、伏椀状の鏡板9の外周は鍔状に曲げられて成る外周21と、蓋板13の外周とが組み合わせられ、且つ溶接6されて鏡板フランジ19が構成されている。
そして図5(ロ)に示すように、内腔10にアルミニウムの発泡金属22が補強部材8として充填され、これらが一体化される。
この鏡板フランジ19にはボルト孔25が連設される。
前記伏椀状の鏡板9と蓋板13には必要に応じて流体の流路である配管26が溶接される。
【0023】
補強部材8である発泡金属22を鏡板9と蓋板13の内腔10に一体に構成する方法の一例として、内腔10が空の状態の鏡板9と蓋板13を、所定の金型に収容すると共に、該内腔10の体積に相当する発泡剤を含む金属材料を充填する。そして金型を加熱して発泡剤を発泡させると、内腔10に発泡金属22が形成されると共に、鏡板9と蓋板13の内腔10に該発泡金属22が強固に密着結合して一体になる。而してこれらが金型に収容されて加熱処理されることによって、加熱されることで当然生じる、発泡金属22及び蓋板13の歪が制御され、蓋板13の精度を維持することができる。
【0024】
前記鏡板9と蓋板13の内腔10に発泡金属22を強固に且つ一体に構成する方法の一例として、内腔10を構成する鏡板9と蓋板13との内面を粗面及び又は、抜け止めの凹凸を及び又は横穴(図示しない)等を設けた、或いは設けないスタッドボルト、スタッドリベット28等を多数設けることである。
【0025】
そして図5(ロ)に示す、紐状中空ガスケット14によって所定の間隔をあけて渦巻状に多数回巻き回されて構成された帯状伝熱板4と帯状伝熱板5、及びこれらを収容した円筒状の筐体3の開口端縁11が密封される。
この例では鏡板フランジ19と筐体3のフランジ17とをボルト27で締めた後、紐状中空ガスケット14の中に液圧を加えて該紐状中空ガスケット14を拡張し、確実に封止することができる。
【実施例2】
【0026】
この実施例では図6(イ)は伏椀状の鏡板9に、蓋板13とリングフランジ24を組み合わせて溶接6、そして図6(ロ)に示すように、その内腔10に図6(ハ)に示すリブ23(形切りにした薄板)を放射状に配設してこれらを一体化したものである。
この実施例において蓋板13は、図6(ロ)に示すように、帯状伝熱板4.5の端部に配設されたスタッドピン20の上に置かれた紐状中空ガスケット14によって所定の間隔をあけて渦巻状に多数回巻き回されて構成された帯状伝熱板4と帯状伝熱板5、及びこれらを収容した円筒状の筐体3の開口端縁11が密封できる。
この例では鏡板9に溶接されたリングフランジ24と、筐体3のフランジ17をボルト締めした後、紐状中空ガスケット14の中に液圧を加えて紐状中空ガスケット14を拡張し、確実に封止することができる。
【実施例3】
【0027】
この実施例は図7に示すように蓋板13にハニカムサンドイッチパネル15を利用したものである。
ハニカム18はステンレス薄板(例えば厚さが0.5mm)をスリットして幅70mmのコイルにし、図7(イ)に示すように一つは波状に成型してから、平板と波板とを組合せて渦巻状に巻回、これを厚さ6mmのステンレス薄板で作られた上パネル16をハニカム18の上縁部と、ハニカム18の下縁部は蓋板13に接着して一体化されたハニカムサンドイッチパネル15を蓋板13とする。
【0028】
伏椀状の鏡板9の内腔10は、図6(イ)、図7(イ)のように該内腔10に内接し、且つ前記ハニカムサンドイッチパネル15の上パネル16に放射状に緊密に嵌合せしめられた複数のリブ23が配設され、このリブ23を介して、伏椀状の鏡板9と蓋板13の全体が固く一体にされた閉止フランジ2あることを特徴とする。
【実施例4】
【0029】
この実施例は図8に示す。蓋板13にはハニカムサンドイッチパネル15の代わりに、ステンレス薄板(例えば厚さ1mm幅50mmにスリットされた)を、粗いゼンマイ12状に渦巻き成型してから図7(ロ)に示す、厚さ6mmのステンレス薄板で作られた上パネル16をゼンマイ12の上縁部と、粗いピッチのゼンマイ12の下縁部は蓋板13に接着して一体化されたゼンマイサンドイッチのパネル15を蓋板13としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は(特許文献1・特開平06−82179号)の一部を縦断した側面図である。
【図2】図2は(参考文献1)JIS(日本工業規格)B2220:2004.を基にした説明図で、図2(イ)は平板閉止フランジ2。図2(ロ)は溶接フランジ(斜線部)を示す断面図である。点線cは溶接フランジのパイプの厚さtに相当する伏椀状の鏡板9を示す。
【図3】図3は(特許文献2・特開2002−213706号)に記載された説明図である。
【図4】図4(イ)はリブを設けた従来例の一部を縦断した側面図である。(ロ)はこの例の斜視図である。
【図5】図5〜8はこの発明の実施例を示し 図5(イ)実施例1の平面図。(ロ)は(イ)のA−A線断面図である。
【図6】図6(イ)実施例2の平面図。(ロ)は(イ)のA−A線断面図。(ハ)リブ23の斜視図である。
【図7】図7(イ)は実施例3で、伏椀状の鏡板9の一部を裁除した説明図である。(ロ)は(イ)のA−A線断面図。(ハ)はリブ23の斜視図である。
【図8】図8は実施例4の説明図で、渦巻状に巻回されたサンドイッチ材、ゼンマイ12の説明図である。
【図9】図9は(参考文献1)JIS(日本工業規格)B2220:2004.付表5 呼び圧力 10K フランジの寸法 (続き) の写しである。
【符号の説明】
【0031】
T.フランジの厚さ
a.管の外径
d.管の内径
t.管の厚さ(筒状の筐体の厚さ)
t’.伏椀状鏡板の厚さ
c.(点線)鏡板
g.流路(旋回流)
1.スパイラル式熱交換器
2.閉止フランジ
3.筐体(筒状)
4.帯状伝熱板
5.端が曲げられた帯状伝熱板
6.溶接
7.板状ガスケット
8.補強部材
9.鏡板
10.内腔
11.開口端縁
12.ゼンマイ
13.蓋板
14.紐状中空ガスケット
15.ハニカムサンドイッチパネル
16.上プレート
17.フランジ
18.ハニカム
19.鏡板フランジ
20.スタッドピン
21.鍔状外周
22.発泡金属
23.リブ(形切り薄板)
24.リングフランジ
25.ボルト穴
26.配管
27.ボルト
28.スタッドリベット
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体3と、その開口端縁11を閉じる蓋板13の外側に鏡板9を設け、該鏡板9と蓋板13とで構成される内腔10の一部又は全部に補強部材8を充填し、前記蓋板13と鏡板9とを一体に構成したことを特徴とする閉止フランジ。
【請求項2】
前記補強部材8の少なくとも一部がアルミニウムなどの発泡金属22であることを特徴とする請求項1に記載の閉止フランジ。
【請求項3】
前記鏡板9及び又は蓋板13との内腔面10の少なくとも一部に、スタッドボルト、スタッドリベット28等を多数設けたことを特徴とする請求項1〜請求項2に記載の閉止フランジ。
【請求項4】
前記補強部材8の少なくとも一部がメタルハニカム18、粗いピッチのゼンマイ12、或いはリブ23で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の閉止フランジ。
【請求項5】
前記鏡板9の外周21は折曲られ、必要に応じてボルト穴25が設けられた鏡板フランジ19が構成されることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の閉止フランジ。
【請求項6】
前記鏡板9と蓋板13には、必要に応じて配管26が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項5に記載の閉止フランジ。






























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate