説明

鑑賞魚用の餌の孵化方法及び孵化用容器

【課題】 鑑賞魚用の餌として、一般家庭等で簡易にブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させる技術の提供。
【解決手段】 孵化用容器内にブラインシュリンプの卵を入れて、ミネラル成分を調整した培養液を注ぎ、該孵化用容器を内部に空気層を形成して密閉し、密閉した該孵化用容器を、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊させて孵化させる。また、前記培養液のミネラル成分は、塩化ナトリウムを20〜40g/mlの割合で含み、さらにその他の海水ミネラル成分を含むようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞魚用の餌として有用なブラインシュリンプを、簡易に卵から幼生に孵化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金魚、熱帯魚、海水魚等の観賞魚に与えるための生餌として、ブラインシュリンプが知られる。
ブラインシュリンプ(brine shrinp/学名:Artemia salina)とは、世界各国の塩水湖に生息する甲殻類(えび)の一種である。通常、鑑賞魚用の餌としては、卵の状態で市販されており、食塩を溶かした塩水で幼生に孵化させて用いられる。ブラインシュリンプの幼生は栄養価が高く、観賞魚用の餌として今や不可欠なものとなっている。
【0003】
通常、ブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させる場合には、孵化器が必要となるが、一般家庭等においては費用を抑えるために、ペットボトルを加工した自作の孵化器が用いられることが多かった。
すなわち、ペットボトルのキャップ部分に穴あけ加工を施してエアチューブを挿入し、ブラインシュリンプの卵と塩水を入れたペットボトル内に、エアポンプで空気を送り込んで孵化させるというものである。そして、このような方法であれば、塩水の温度を一定に保つために、ペットボトルごと保温ケースに入れるか、ペットボトルがすっぽり入る容器に水を張って専用のヒーターをセットする等の必要があるが、実際にはそのような保温設備を持っている人は少なく、また一般人には保温が必要であることの知識すら普及していなかった。
【0004】
一方で、ブラインシュリンプの幼生を、効率よく生体にまで養成する養成装置及び養成具を提供するものとして、例えば、特許文献1がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−42740
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法によれば、ペットボトルを加工する手間がかかる上、加工の出来具合等によっては孵化率にばらつきが生じ、孵化率自体も低かった。また、空気を送り込むためのエアポンプやエアチューブ等が必要となるため、設備の維持管理が難しく、費用もかかっていた。さらに、保温ケースや専用のヒーターを使用しなければ、孵化に失敗することも多かった。
従って、従来の方法では、一般家庭等において簡易にブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させることができないという問題があった。
また、特許文献1では、孵化させた幼生をいかに効率良く生体にまで養成するかという点に着目したものであり、かかる問題を解消することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、鑑賞魚用の餌として、一般家庭等で簡易にブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載の孵化方法は、観賞魚の餌として用いるブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させる方法であって、孵化用容器内にブラインシュリンプの卵を入れて、ミネラル成分を調整した培養液を注ぎ、該孵化用容器を、内部に空気層を形成して密閉し、密閉した該孵化用容器を、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊させて、孵化させるようにしたことを要旨とする。
【0009】
また、請求項2記載の孵化方法は、請求項1記載の方法において、前記培養液のミネラル成分は、塩化ナトリウムを20〜40g/1000mlの割合で含み、さらにその他の海水ミネラル成分を含んでいることを要旨とする。
【0010】
また、請求項3記載の孵化方法は、請求項1又は2記載の方法において、前記水槽における水面の揺れや対流によって、前記孵化用容器を揺動させ、該孵化用容器の揺動に伴って、前記培養液内で前記ブラインシュリンプの卵を泳動させて、孵化を促進するようにしたことを要旨とする。
【0011】
また、請求項4記載の孵化方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、前記水槽は、観賞魚の飼育水槽であることを要旨とする。
【0012】
また、請求項5記載の孵化用容器は、観賞魚の餌として用いるブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させるために使用する孵化用容器であって、当該孵化用容器は、
ブラインシュリンプの卵を入れて培養液を注いだ状態で、内部に空気層を形成して密閉可能とされ、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊可能で、且つ該培養液に該水槽の水温を伝搬可能な構造とされたことを要旨とする。
【0013】
また、請求項6記載の孵化用容器は、請求項5記載の構成において、前記培養液内で前記ブラインシュリンプの卵を泳動させて孵化を促進するべく、前記水槽における水面の揺れや対流によって揺動自在な形状とされたことを要旨とする。
【0014】
また、請求項7記載の孵化飼料セットは、孵化用容器内にブラインシュリンプの卵及びミネラル成分をセットして、観賞魚の餌として用いるブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させるためのセットであって、該孵化用容器内に観賞魚の飼育水を注ぐことにより、ミネラル成分が調整された培養液を生成し、該孵化用容器を、内部に空気層を形成して密閉し、密閉した該孵化用容器を、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊させて、孵化させるようにしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、孵化用容器内にブラインシュリンプの卵と培養液を入れて、当該容器を所定の水温に保たれた水槽に浮遊させておくだけで、ブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させることができる。
従って、面倒な材料加工や、高価なエアポンプ、エアチューブ等の設置も不要で、非常に安価であり、維持管理も容易であるため、特に一般家庭等において簡易にブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ブラインシュリンプの卵、及びそれを幼生に孵化させるための培養液を一の孵化用容器に入れ、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に孵化用容器を浮遊させることによって、ブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させるものである。
従って、本発明で用いる孵化用容器は、ブラインシュリンプの卵と培養液を入れた状態で水槽に浮遊可能であり、且つ培養液に水槽の水温を伝搬可能な構造を有していれば、大きさ、形状、素材等はいかなるものであってもよい。
また本発明は、孵化用容器が水に浮遊しているときに生じる水面の揺れや対流によって、孵化用容器を揺動させ、それに伴って培養液内でブラインシュリンプの卵を泳動させて孵化を促進するものである。容器が揺動しない場合でも孵化させることは可能であるが、孵化を促進し孵化率を向上させるためには、容器が揺動し易い形状であることが好ましい。
【0017】
孵化用容器内には、ブラインシュリンプの卵と培養液を入れるが、培養液1000mlに対して、ブラインシュリンプの卵は約13,000〜17,000個程度の量が適している。
培養液は、塩化ナトリウムを主成分とする水溶液であるが、孵化に適するようにミネラル成分の含有量、組成率を調整したものである。
塩化ナトリウム濃度は、培養液1000mlに対して30gを基準とし、20〜40g/1000mlの範囲内とする。濃度が40g/1000mlを超えると、急激に孵化率が低下する。
ミネラル成分としては、ナトリウム、塩素の他に、カルシウム、硫黄、カリウム、マグネシウム等の海水に含まれるミネラル成分、すなわち海水ミネラル成分を含むものとする。
通常、海水の塩分濃度は約3.45%であり、その成分は、塩化ナトリウム77.9%、塩化マグネシウム9.6%、硫酸マグネシウム6.1%、硫酸カルシウム4.0%、塩化カリウム2.1%、その他0.3%であるが、本発明のミネラル成分の含有量、組成率も、海水ミネラル成分のものに近いほど孵化率は向上する。
培養液を生成する水は水道水ではなく、観賞魚の飼育水を用いることが好ましい。水道水には、殺菌のための塩素、水道管内に塗布される防錆剤、浮遊物を沈殿させるための凝集剤等が含まれており、培養液を生成するのに適当ではない。これに対して、観賞魚の飼育水であれば、塩素が抜かれ、濾過により浄化され、かつ溶存酸素量も高い状態にある。また、生体の肌にやさしい親水性コロイドも増えており、適切に調整処理された水であり、孵化に最適である。
また、塩化ナトリウム濃度が上記範囲内に調整されたものであれば、培養液として天然の海水、あるいは海水ミネラル成分を含有した人工海水を用いることとしてもよい。天然海水を用いることとすれば、数十種類以上にも及ぶさまざまな海水ミネラル成分を含有することとなって好ましい。
【0018】
本発明は、孵化用容器を水を張った水槽に浮かべて、ブラインシュリンプの卵を孵化させるものであるが、水槽の水温が低すぎたり高すぎたりすると、孵化までに時間がかかったり、孵化しないことがあるため、水温を孵化に適した温度に保つ必要がある。水温は、25℃〜30℃程度に保つことが好ましく、水温を一定に保つ方法は、ヒーター等の既知の技術を用いることができる。
また、孵化用容器を、水温が一定に保たれた観賞魚の飼育水槽に浮かべて孵化させることとすれば、専用の保温設備を設ける必要がなく好ましい。例えば、熱帯魚を飼育する飼育水槽であれば、水温は通常25〜27℃程度に設定されている。
【0019】
ブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させる場合には酸素が必要となるが、従来はエアポンプ設備によって孵化器に空気を送り込んでいた。
本発明では、孵化用容器内を培養液で一杯に満たすのではなく、容器内に空気層を1/3程度形成することによって、空気層中の酸素と培養液中の酸素とを用いて孵化させるものである。そして、本発明では、培養液に栄養分としてのミネラル成分を所定量含有させることによって、従来のようなポンプ設備を不要としながら、高い孵化率を達成することを可能としたものである。
【0020】
ブラインシュリンプの幼生は、孵化した途端に酸素及びミネラル成分の摂取量が上がるため、容器内での生存時間を延ばすためには、容器の蓋体を開放して空気を入れ替えたり、酸素を発生又は含有する鉱物を容器内に入れたり、追加のミネラル成分を培養液中に添加したり、ミネラル成分を放出する麦飯石等の鉱物の粉末等を容器内に入れたりすればよい。これらの鉱物やミネラル成分等は、最初に加えておいてもよい。
ブラインシュリンプの幼生は、体が大きくなるとその分栄養価が下がるため、孵化後はなるべく早く餌として用いることが好ましい。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1の実施例を図面に基づいて説明する。
本実施例は、図1、図2に示すように、円筒形の形状をした孵化用容器(3)を用いて、ブラインシュリンプの卵を孵化させるものである。孵化用容器(3)は、直径4cm、高さ5cmで、容積60mlを有するものである。
孵化用容器(3)は蓋体(4)と容器本体(5)とに分離可能で、容器本体(5)上部の首部(6)に螺設された雄螺子(6a)を、蓋体(4)内側面に設けられた雌螺子(6b)に螺着することによって、蓋体(4)を容器本体(5)に装着可能に構成されている。
孵化用容器(3)は、図1に示すように口部(7)をなるべく広径とすることで、ブラインシュリンプの卵・幼生や培養液の出し入れが容易になる。
また、本実施例では孵化用容器(3)を透明プラスチックで形成しているため、軽くて水に浮遊しやすく、ブラインシュリンプの孵化の状況を外から容易に確認できる。
【0022】
ブラインシュリンプの卵を孵化させるにあたっては、上記のごとく構成された孵化用容器(3)の容器本体(5)内にブラインシュリンプの卵(1)を入れ、次いで図1に示すように、容器本体(5)の肩部(8)の位置まで培養液(2)を注ぐ。本実施例では、肩部(8)の位置がちょうど容積40mlであることを示すようになっている。本実施例においては、培養液(2)40mlに対し、ブラインシュリンプの卵(1)を約600個だけ入れている。
本実施例では、海水ミネラル成分を含有した、いわゆる天然塩(自然塩)に、観賞魚の水槽内の飼育水を注ぐことによって培養液(2)を生成する。また、塩化ナトリウム濃度は、20〜40g/1000mlとなるように調整する。このように、高純度に精製された食塩ではなく、海水ミネラル成分が海水に近い組成で残されたものを用いることで、孵化に適した培養液(2)を生成することが可能となる。本実施においては、培養液(2)1000ml当たり、表1に示すごとくのミネラル成分が含有されている。
なお、本実施例では、培養液(2)を計量カップ等で別途生成した上で、容器本体(5)内にブラインシュリンプの卵(1)とともに注ぎ入れることとする。
【表1】

【0023】
容器本体(5)にブラインシュリンプの卵(1)と培養液(2)を入れた後は、蓋体(4)を容器本体(5)に装着して、それをそのまま図3に示すように観賞魚の飼育水槽(13)に浮遊させる。本実施例では、水槽内の水温を27.9℃に保つものとする。
図3に示すように、孵化用容器(3)の内部には、容器本体(5)の肩部(8)の位置まで培養液(2)が注がれ、その上部には空気層(9)が形成されている。本実施例では容器(3)の2/3(40ml)まで培養液(2)が注がれ、残りの1/3(20ml)が空気層(9)となっている。
また、水槽の水面(12)は、孵化用容器(3)の蓋体(4)のほぼ中間辺りに位置している。このように、孵化用容器(3)内の培養液(2)の液面を水槽の水面(12)よりも低く位置させると、適温に保たれた水槽の水温が培養液(2)全体に効率良く伝搬されることとなって好ましい。
さらに、孵化用容器(3)は、蓋体(4)を容器本体(5)に装着して密閉可能とされているため、水槽に浮遊させている間、水槽の水が容器(3)内に流入することがなく、容器(3)内の培養液(2)が水槽内に流出することがない。従って、容器内(3)の塩化ナトリウム濃度が適切に保持されるとともに、水槽内の塩化ナトリウム濃度の上昇が抑制されることとなる。
【0024】
水槽に浮かべられた孵化用容器(3)は、水槽の水面(12)の波打ちによる揺れや対流等によって、上下動したり、水平方向に回転したり、あるいは前後左右に傾いたり、といったように常時揺動することとなる。そして、ブラインシュリンプの卵(1)は、孵化用容器(3)内では下の方に位置しているが、容器(3)の揺動に伴って、培養液(2)中でゆっくりと泳動する。
さらに、孵化用容器(3)の揺動により、容器内の空気層(9)が培養液(2)と混ぜ合わされ、培養液(2)中の溶存酸素量がある程度高い状態に保たれることとなって、孵化率が向上することとなる。
また、ブラインシュリンプの卵(1)の孵化が促進される別の条件として、光が当てられていることと、光に強弱が付けられている(昼夜のリズムが明確である)ことが挙げられる。本実施例は、鑑賞魚用の水槽に透明の孵化用容器(3)を浮遊させるものであるため、水槽の照明設備(蛍光灯等)を有効に活用できる。すなわち、水槽の照明設備は、昼間(8〜10時間)は点灯され、夜間は消灯されるものであるため、十分な光が供給されるとともに昼夜のリズムが明確となって、孵化に適した環境を提供することが可能となる。
孵化用容器(3)を水槽に浮かべて、約18時間経過後には、容器(3)内の培養液(2)がオレンジ色を帯びてきて、ブラインシュリンプが幼生(10)に孵化していることが認めらる。図3に示すように、ブラインシュリンプの卵の殻(11)が培養液(2)の水面に浮かび、孵化した幼生(10)は、容器(3)内の下方に集まる。本実施例によれば、孵化率はほぼ90%以上であった。
孵化した幼生(10)は、蓋体(4)を開けてスポイト等で採集し、水槽内の観賞魚に餌として与えることができる。スポイトを使うと、水槽中の塩化ナトリウム濃度の上昇を抑制することができ、卵の殻(11)が水槽内に混入するのを防止できるため好ましい。
本実施例では、孵化した幼生(10)は40時間経過しても容器(3)内でほぼ全数生存しており、65時間経過後でも大半が生存していた。
【0025】
以上、本実施例によれば、ブラインシュリンプの卵(1)と培養液(2)を入れた孵化用容器(3)を鑑賞魚用の飼育水槽(13)に浮かべるだけで、幼生(10)に孵化させることができるため、非常に簡易である上、従来の方法に比べ孵化率も高い。
また、水温が一定に維持された既存の鑑賞魚用の水槽(13)を利用するため、孵化用容器(3)のために専用の保温設備を別途設ける必要がなく、余分な場所、費用を使わなくて済む。
【実施例2】
【0026】
本発明の第2の実施例を図面を参照しながら説明する。
本実施例は、図4に示すように、球形の形状の孵化用容器(3)を用いて、ブラインシュリンプの卵を孵化させるものである。孵化用容器(3)は、直径4.5cmで、容積45mlを有するものである。
図4に示すように、孵化用容器(3)は蓋体(4)と容器本体(5)とから構成されるが、本実施例では、蓋体(4)をヒンジ軸(21)を支点として開閉可能に構成したものである。
ヒンジ軸(21)は、蓋体(4)を容器本体(5)のヒンジ部(20)に回動可能に連結するものであり、ヒンジ部(20)は、容器本体(5)の一端に設けられて、蓋体(4)を回動可能に支持するものである。蓋体(4)、容器本体(5)には、それぞれ係止片(22)、係止部(23)が形成されて、係止片(22)を係止部(23)に係脱させることによって、蓋体(4)を開閉自在としている。
また、容器本体(5)上部の首部(7)には、ゴムパッキン等のシール手段が設けられ、蓋体(4)を閉じて密閉可能なように構成されている。
【0027】
本実施例では、容器本体(5)に、塩化ナトリウムその他のミネラル成分の分量を示すライン(24)、及び培養液の分量を示すライン(25)が設けられている。
従って、まず塩化ナトリウムその他のミネラル成分を下のライン(24)まで入れ、次いでブラインシュリンプの卵を適量入れて、最後に観賞魚の飼育水を上のライン(25)まで注げばよい。
培養液の分量を示すライン(25)の位置は30mlを示すように設定され、また塩化ナトリウムその他のミネラル成分の分量を示すライン(24)は、塩化ナトリウム濃度が20〜40g/1000mlとなるように設定されている。そして、容器本体(5)に培養液(2)を注ぎ入れて蓋体(4)を閉じると、上のライン(25)から上方の部分には、15ml分の空気層が形成されることとなる。
本実施例では、下のライン(24)を塩化ナトリウムその他のミネラル成分の分量を示すものとしたが、塩化ナトリウムその他のミネラル成分に、酸素やミネラル成分を発生又は含有する鉱物の粉末等を加えたものの分量を示すラインとして設定してもよい。
さらに本実施例では、培養液(2)30mlに対して、ブラインシュリンプの卵(1)を約400個だけ入れるものとするが、ブラインシュリンプの卵及び/又は塩化ナトリウムその他のミネラル成分をあらかじめ容器本体(5)内に適量入れてセットしておき、孵化飼料セットとして提供してもよい。また、酸素やミネラル成分を発生又は含有する鉱物の粉末等も併せて適量入れてセットしておくこととしてもよい。このような孵化飼料セットによれば、観賞魚の飼育水を、所定のラインまで注ぎ入れるだけで、ミネラル成分等が調整された培養液を容易に生成することが可能となる。
【0028】
本実施例でも、ブラインシュリンプの卵(1)と培養液(2)を入れた孵化用容器(3)を、水を張った水槽(13)に浮かべるだけで、約18時間経過後には、ブラインシュリンプの卵(1)が幼生に孵化していることが認められた。孵化率はほぼ95%以上であった。
【0029】
以上、本実施例によれば、孵化用容器(3)を球形の形状で形成したため、水槽内の水のより細かな動きにも反応して容器(3)が揺動し、それによって培養液(2)内のブライシュリンプの卵(1)が絶えず泳動させられることとなり孵化が一層促進される。
また、容器(3)内に回転自在のボール状の物体を入れたり、容器(3)外に魚が餌と間違えて突付くような物体(発光体など)を取り付けることとすれば、より大きく孵化用容器(3)を揺動させて培養液(2)を攪乱させることが可能となる。
さらに、容器(3)に塩化ナトリウムその他のミネラル成分の分量を示すライン(24)、及び培養液の分量を示すライン(25)が表示されるため、電子秤等を用いることなく誰でも簡単に培養液の調整を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、鑑賞魚用の餌として人気の高いブラインシュリンプを、一般家庭等において非常に簡易に卵から幼生に孵化させることを可能とするものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施例に係る孵化用容器の側面図である。
【図2】第1の実施例に係る孵化用容器の底面図である。
【図3】第1の実施例に係る孵化用容器を水槽に浮かべた状態を示す図である。
【図4】第2の実施例に係る孵化用容器の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ブラインシュリンプの卵
2 培養液
3 孵化用容器
4 蓋体
5 容器本体
6 首部
7 口部
8 肩部
9 空気層
10 ブラインシュリンプの幼生
11 ブラインシュリンプの卵の殻
12 水面
13 水槽
20 ヒンジ部
21 ヒンジ軸
22 係止片
23 係止部
24 塩化ナトリウムその他のミネラルの分量を示すライン
25 培養液の分量を示すライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観賞魚の餌として用いるブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させ
る方法であって、
孵化用容器内にブラインシュリンプの卵を入れて、ミネラル成分を調整した培養液を注ぎ、
該孵化用容器を、内部に空気層を形成して密閉し、
密閉した該孵化用容器を、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊させて、
孵化させるようにしたことを特徴とする孵化方法。
【請求項2】
前記培養液のミネラル成分は、塩化ナトリウムを20〜40g/1000mlの割合で含み、さらにその他の海水ミネラル成分を含んでいることを特徴とする請求項1記載の孵化方法。
【請求項3】
前記水槽における水面の揺れや対流によって、前記孵化用容器を揺動させ、
該孵化用容器の揺動に伴って、前記培養液内で前記ブラインシュリンプの卵を泳動させて、
孵化を促進するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の孵化方法。
【請求項4】
前記水槽は、観賞魚の飼育水槽であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の孵化方法。
【請求項5】
観賞魚の餌として用いるブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させるために使用する孵化用容器であって、
当該孵化用容器は、
ブラインシュリンプの卵を入れて培養液を注いだ状態で、内部に空気層を形成して密閉可能とされ、
水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊可能で、且つ該培養液に該水槽の水温を伝搬可能な構造とされたことを特徴とする孵化用容器。
【請求項6】
前記培養液内で前記ブラインシュリンプの卵を泳動させて孵化を促進するべく、前記水槽における水面の揺れや対流によって揺動自在な形状とされたことを特徴とする請求項5記載の孵化用容器。
【請求項7】
孵化用容器内にブラインシュリンプの卵及びミネラル成分をセットして、観賞魚の餌として用いるブラインシュリンプを卵から幼生に孵化させるためのセットであって、
該孵化用容器内に観賞魚の飼育水を注ぐことにより、ミネラル成分が調整された培養液を生成し、
該孵化用容器を、内部に空気層を形成して密閉し、
密閉した該孵化用容器を、水温が孵化に適した温度に保たれた水槽に浮遊させて、
孵化させるようにしたことを特徴とする孵化飼料セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−6150(P2006−6150A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185551(P2004−185551)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(504243028)
【Fターム(参考)】