説明

長尺体用スプール

【課題】長尺体の太さや厚みにかかわらず、始端部をスプールへ簡単に固定して長尺体を巻装部へ容易に巻付けることができ、しかも簡単な構造で安価に実施できるようにする。
【解決手段】円筒状に形成された胴部(2)と、胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、両フランジ部(3)間で胴部(2)の周囲に巻装部(5)を形成する。巻装部(5)に臨む胴部(2)に挿通孔(10)を透設し、長尺体(4)の始端部(4a)を巻装部(5)の内側から巻装部(5)の外方へ挿通する。挿通孔(10)の開口形状は長尺体(4)の巻付け方向(D)に沿って長く形成する。挿通孔(10)の開口に、開口幅(W)が長尺体(4)の太さ又は厚みよりも広い広幅開口部(12)を形成する。広幅開口部(12)より巻付け方向下手側ほど開口幅(W)を狭くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸や手芸糸、金属線などの糸条体のほか、包装用テープなどの帯状体を巻付ける長尺体用スプールに関し、さらに詳しくは、長尺体の太さや厚みにかかわらず、始端部をスプールへ簡単に固定して長尺体を巻装部へ容易に巻付けることができ、しかも簡単な構造で安価に実施できる、長尺体用スプールに関する。
【背景技術】
【0002】
釣糸等の長尺体を巻付けるスプールには、例えば、円筒状の胴部とこの胴部の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、長尺体が巻回される巻装部をこの両フランジ部間で上記の胴部の周囲に形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のスプールへ長尺体を巻付ける際、長尺体の始端部を、長尺体に加わる張力に抗して所定位置に固定する必要がある。特に、ポリエチレン繊維やポリアミド繊維などの合成繊維からなる釣糸は、表面が滑らかで摩擦抵抗が小さいことから、例えば巻装部の胴部などに透設した挿通孔へこの始端部を挿通するだけでは、この始端部をスプールの所定位置に固定することが容易でない。
【0004】
そこで、長尺体の始端部をスプールの所定位置へ確実に固定するため、上記の胴部に巻装部内から巻装部の外側へ長尺体の始端部が挿通される挿通孔を透設し、この挿通孔へ着脱自在に装着される係止部材を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2参照、以下、従来技術という。)。即ちこの従来技術では、上記の挿通孔の断面が円形状に形成してあり、上記の係止部材は、この挿通孔に嵌合可能な円筒部と、この円筒部の一端の外面に形成された、上記の挿通孔より大径の鍔部とを備え、この円筒部内に長尺体の外径より大径の貫通孔が形成してある。
【0005】
上記の従来技術では、次のように操作されて長尺体の始端部がスプールに固定される。最初に、上記の係止部材をスプールの挿通孔から取外しておく。次に、上記の長尺体の始端部を巻装部内から上記の挿通孔へ挿通し、巻装部の外側へ引き出す。次いでこの始端部を、上記の係止部材の円筒部から鍔部に向けて上記の貫通孔へ挿通し、係止部材から引き出された始端部に、上記の貫通孔の内径よりも大きな結び目を作る。そして、この係止部材に上記の始端部が係止された状態で、この係止部材の円筒部を上記の挿通孔へ嵌挿し、鍔部をスプールのフランジ部に受け止める。
【0006】
【特許文献1】特開2002−153189号公報
【特許文献2】特開2004−222668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術は、上記の係止部材を介して、長尺体の始端部がスプールへ確実に固定されるので、表面が滑りやすい長尺体であっても、この長尺体を巻装部へ容易に巻付けることができる。しかしながらこの従来技術では、長尺体の始端部に上記の係止部材を装着しなければならず、挿通孔と貫通孔との両者に挿通したのち、始端部に結び目を形成する必要があるので、長尺体の巻き始めの操作が煩雑である。また、上記の係止部材は挿通孔から取外し自在であるため、紛失する虞がある。しかも、スプールごとにこの係止部材が必要であるうえ、係止部材の貫通孔の内径は、長尺体の外径よりも大きく、且つ、長尺体の結び目よりも小さくなければならない。このためこの従来技術は、長尺体の太さに応じて、貫通孔の内径が異なる複数種の係止部材を揃えておかなければならず、安価に実施できない問題がある。
【0008】
本発明の技術的課題は、上記の問題点を解消し、長尺体の太さや厚みにかかわらず、始端部をスプールへ簡単に固定して長尺体を巻装部へ容易に巻付けることができ、しかも簡単な構造で安価に実施できる、長尺体用スプールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば、本発明の実施の形態を示す図1から図6に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明は長尺体用スプールに関し、円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、長尺体(4)が巻回される巻装部(5)をこの両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に形成した長尺体用スプールであって、上記の巻装部(5)に臨む上記の胴部(2)とフランジ部(3)との少なくともいずれかに、上記の巻装部(5)の内側から巻装部(5)の外方へ長尺体(4)の始端部(4a)が挿通される挿通孔(10)を透設し、この挿通孔(10)の開口形状を、長尺体(4)の巻付け方向(D)に沿って長く形成し、その挿通孔(10)の開口に、その開口幅(W)が長尺体(4)の太さ又は厚みよりも広い広幅開口部(12)を形成し、この広幅開口部(12)より巻付け方向下手側ほど開口幅(W)を狭めたことを特徴とする。
【0010】
上記の挿通孔の開口には、長尺体の太さや厚みよりも広い広幅開口部が形成してあるので、長尺体の先端部はこの挿通孔へ簡単に挿通される。なお上記の長尺体の太さ又は厚みとは、長尺体が糸条体である場合はその太さ、即ち外径をいい、長尺体が帯状体である場合はその厚みをいう。この挿通孔の開口は長尺体の巻付け方向に長く形成してあるので、この挿通孔に挿入された始端部は、長尺体を巻装部へ巻付ける際に加わる張力等で、挿通孔内を上記の広幅開口部から巻付け方向下手側へ移動する。この巻付け方向下手側は開口幅が狭いことから、この巻付け方向下手側へ移動した長尺体の始端部は、長尺体の太さや厚みに応じた位置で挿通孔の内面により両側から挟持され、或いは挿通孔に係止される。これにより長尺体の始端部がスプールに固定され、長尺体は所定の張力を加えた状態で巻装部へ容易に巻付けられる。
【0011】
上記の挿通孔の断面形状は特定の形状に限定されないが、少なくとも広幅開口部より巻付け方向下手側の開口周縁は、挿通方向の断面形状を鋭角状に形成すると、挿通した長尺体がこのエッジ状に形成した開口周縁に係止され易く好ましい。このエッジ状の開口周縁は、上記の挿通孔の少なくとも広幅開口部より巻付け方向下手側の内面を、巻装部内面との直交方向に対し傾斜させることで容易に形成することができる。なお、この鋭角状に形成した開口周縁は、巻装部に臨む側の開口であってもよく、或いは反対側の開口であってもよい。
【0012】
上記の挿通孔の内面を巻装部内面との直交方向に対し傾斜させるには、この挿通孔の挿通方向を、巻装部の内面との直交方向に対し傾斜させてもよいが、巻装部に臨む開口を反対側の開口よりも大きく形成することで、挿通孔の内面を傾斜させてもよく、特にこの場合には、巻装部側の開口が大きいので、長尺体の始端部を巻装部の内側から挿通孔内へ容易に挿通できて好ましい。
【0013】
上記の挿通孔は、巻装部に臨む位置であれば上記の胴部とフランジ部のいずれの部位に形成してもよいが、この胴部の一側端に、上記の一方のフランジ部に沿って長く形成すると、フランジ部に阻害されることなく、挿通孔の開口全体を外方から容易に目視できるうえ、長尺体の始端部をフランジ部の内面に沿って案内できるので、挿通孔へ容易に案内することができて好ましい。
【0014】
ここで、上記の長尺体とは、上記の胴部へ捲回可能な糸条体や帯状体をいう。この糸条体とは、例えば釣糸や手芸糸などの繊維製品のほか、金属線などをも含む。また上記の帯状体とは、いわゆるビニタイなどの結束に用いる帯状体のほか、包装、装飾などに用いられるリボン、テープなどをいい、特定の材質や構造、用途のものに限定されない。またこの長尺体の始端部は、長尺体を切断しただけの切断端部であってもよいが、結び目や接着剤等の塗布などにより、長尺体の太さ又は厚みよりも大きな係止部を形成しておいてもよい。この場合、上記の挿通孔の外側開口にこの係止部が係止されて、長尺体の始端部がスプールに固定される。
【0015】
上記の係止部は、上記の挿通孔へ始端部を挿通したのち形成することも可能であるが、上記の広幅開口部の開口幅を上記の係止部よりも広くしておくと、挿通前の始端部に上記の係止部をあらかじめ形成しておいても、この係止部を備えた始端部を挿通孔へ容易に挿通できて好ましい。
【0016】
上記の挿通孔は、長尺体の太さや厚みよりも広い広幅開口部を備え、この広幅開口部より巻付け方向下手側ほど開口幅を狭めてあればよく、広幅開口部は挿通孔の開口の中間部より巻付け方向上手側のいずれの部位に設けてもよい。しかしこの広幅開口部を上記の挿通孔の開口の中間部に形成し、この広幅開口部から挿通孔の開口の両端側ほど上記の開口幅をそれぞれ狭めてあると、長尺体の巻付け方向がいずれの方向であっても、上記の広幅開口部より巻付け方向下手側ほど開口幅が狭く形成されることとなる。このためこの場合には、長尺体をいずれの方向に巻付けても、その始端部をスプールに固定することができるので好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0018】
(1)上記の挿通孔の開口には、その開口幅が長尺体の太さ又は厚みよりも広い広幅開口部を形成してあるので、長尺体の先端部をこの挿通孔へ簡単に挿通できるものでありながら、広幅開口部より巻付け方向下手側ほど狭いことから、この巻付け方向下手側へ長尺体の始端部を移動させることにより、この始端部をその太さや厚みに応じた位置で挟持し、或いは係止することができる。これにより本発明の長尺体用スプールは、長尺体の太さや厚みにかかわらず、始端部をスプールへ簡単に固定して長尺体を巻装部へ容易に巻付けることができる。
(2)上記の始端部は、長尺体の太さや厚みに応じた位置で挿通孔の内面に挟持され、或いは挿通孔に係止されるので、前記の従来技術と異なって別途の係止部材などを必要とせず、挿通孔を形成しただけの簡単な構造で実施できるうえ、長尺体の太さや厚みが異なっても挿通孔の開口を同じ大きさに形成することができ、スプールの種類数を多くする必要がないので安価に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は本発明の第1実施形態を示し、図1は長尺体である釣糸に用いるスプールの一部破断斜視図、図2は挿通孔近傍の要部拡大図、図3は図2のC−C線矢視断面図である。
【0020】
図1と図2に示すように、この釣糸用スプール(1)は円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、この両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に巻装部(5)を形成してあり、この巻装部(5)に長尺体である釣糸(4)が巻回される。
【0021】
上記のフランジ部(3)は、一方のフランジ部(3a)を他方のフランジ部(3b)よりも大径に形成してあり、この小径フランジ部(3b)の外周縁部(6b)に、環状の扉部(7)が延設してある。この扉部(7)と上記の両フランジ部(3)と胴部(2)とは、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂材料で一体に成形してあり、扉部(7)の肉厚は、小径フランジ部(3b)の肉厚の70%以上に、好ましくは75%以上に形成してある。
【0022】
上記の扉部(7)の基端側には薄肉の凹溝部(8)が環状に形成してある。この凹溝部(8)は上記の小径フランジ部(3b)や扉部(7)に比べて薄肉に形成されているので、あたかもヒンジのように屈曲することができる。そしてこの凹溝部(8)で屈曲させることにより、上記の扉部(7)は、先端側を大径フランジ部(3a)側へ変位させた、図1に示す閉じ姿勢(X)と、この大径フランジ部(3a)から離隔させて巻装部(5)を外方へ開放した開き姿勢とに切換られる。
【0023】
上記の大径フランジ部(3a)は、外周縁部(6a)が薄肉に形成してあり、この薄肉外周縁部(6a)の外径は、上記の閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)へ単に当接する大きさよりもやや大径に形成してある。一方、上記の扉部(7)の外径は、上記の大径フランジ部(3a)の外径よりも大径に形成してある。このため、上記の閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)は、大径フランジ部(3a)を包み込むように取り囲み、その先端周縁(9)から内方へ入り込んだ位置で、上記の大径フランジ部(3a)の外周縁部(6a)へ押付けるように当接する。このときの押圧力は、上記の外周縁部(6a)が薄肉であるので良好に緩衝される。この結果、この閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)は、大径フランジ部(3a)の薄肉外周縁部(6a)に沿った形状となり、この薄肉外周縁部(6a)との間に隙間を生じることなく、均一に押し付けた状態で当接する。
【0024】
上記の扉部(7)の肉厚は、小径フランジ部(3b)の肉厚の70%以上に、好ましくは75%以上に形成してあるので、大径フランジ部(3a)の薄肉外周縁部(6a)へ確りと、周方向の全域にわたって均一に押付けられる。この結果、釣糸(4)の引き出し側の端部が巻装部(5)の周方向のいずれの位置にあっても、この閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)と大径フランジ部(3a)との間の任意の位置で確実に保持される。
【0025】
また上記の閉じ姿勢(X)に切換えた扉部(7)の先端周縁(9)は、大径フランジ部(3a)との当接位置よりも外方へ突出した状態となっている。このため、作業者はこの突出した部分に指先を引っ掛ける等により、扉部(7)を大径フランジ部(3a)から簡単に分離でき、上記の凹溝部(8)で屈曲させることで、この扉部(7)を開き姿勢へ容易に切換えて、上記の巻装部(5)を外側空間へ開放することができる。
【0026】
上記の巻装部(5)に臨む上記の胴部(2)には、上記の大径フランジ部(3a)側の端部に挿通孔(10)が透設してある。図2と図3に示すように、この挿通孔(10)へ上記の釣糸(4)の巻き始めの始端部(4a)が、巻装部(5)の内側から巻装部(5)の外方へ挿通される。この挿通孔(10)の開口形状は、平面視でクサビ形あるいは涙滴形に形成されている。即ち、図2に示すように、この挿通孔(10)は上記の大径フランジ部(3a)に沿って長く形成してあり、釣糸(4)の巻付け方向(D)における上手側端部に、開口幅(W)が釣糸(4)の太さよりも広い広幅開口部(12)が形成してある。そしてこの広幅開口部(12)より巻付け方向下手側ほど挿通孔(10)の開口幅(W)を狭めてある。なお、上記の釣糸(4)の巻付け方向(D)は、回転しない釣糸用スプール(1)に対し釣糸(4)を巻回する方向である。これに対し、所定の位置から供給される釣糸(4)を、釣糸用スプール(1)の回転により巻付ける場合には、この釣糸用スプール(1)は上記の巻付け方向(D)と反対方向へ回転される。
【0027】
上記の挿通孔(10)は、上記の巻装部(5)に臨む開口を反対側の開口よりも大きく形成してあり、釣糸(4)の始端部(4a)をこの挿通孔(10)へ挿通し易くしてある。またこの構成により、この挿通孔(10)の内面は巻装部(5)内面との直交方向に対し傾斜しており、巻装部(5)とは反対側の開口周縁は、挿通方向の断面形状が鋭角状に形成されている。
上記の構成から、この挿通孔(10)へ挿通された釣糸(4)の始端部(4a)は、巻付け時の張力などにより巻付け方向下手側へ移動すると、上記の徐々に狭くなる挿通孔(10)のエッジ状の開口周縁に両側から挟持されて、釣糸用スプール(1)に確りと固定される。これにより、釣糸(4)は巻装部(5)へ容易に巻きつけられる。
【0028】
図4は本発明の第2実施形態を示す、挿通孔近傍の要部拡大図である。
この第2実施形態では、釣糸(4)の始端部(4a)に結び目からなる係止部(11)が形成してある。また胴部(2)に形成された挿通孔(10)には、釣糸(4)の巻付け方向(D)の上手側端部に広幅開口部(12)が形成してあるが、この広幅開口部(12)の開口幅(W)は、上記の係止部(11)よりも広くしてある。
【0029】
上記の挿通孔(10)は、巻付け方向(D)の上手側端部に形成された上記の広幅開口部(12)の開口幅(W)が係止部(11)よりも広いことから、釣糸(4)の始端部(4a)はこの係止部(11)が形成された状態のまま、この挿通孔(10)へ容易に挿通される。そして挿通孔(10)の外側に引き出された係止部(11)は、始端部(4a)が巻付け方向下手側へ移動すると、挿通孔(10)の開口幅(W)が狭くなっているので、この挿通孔(10)の外側の開口周縁に係止され、これにより始端部(4a)がスプールに固定される。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0030】
図5は本発明の第3実施形態を示す、挿通孔近傍の要部拡大図である。
この第3実施形態では、上記の第1実施形態と同様、巻装部(5)に臨む胴部(2)の端部に、挿通孔(10)がフランジ部(3)に沿って設けてある。この挿通孔(10)の開口の中間部には、開口幅(W)が釣糸(4)の太さよりも広い広幅開口部(12)が形成してあり、この広幅開口部(12)から挿通孔(10)の開口の両端側ほど開口幅(W)がそれぞれ狭めてある。従ってこの挿通孔(10)の開口形状は、平面視で菱形状に形成されている。
【0031】
この第3実施形態では、上記の広幅開口部(12)に釣糸(4)の始端部(4a)が挿通されたのち、この釣糸(4)を、例えば図5の実線で示す第1巻付け方向(D1)へ巻きつけると、上記の始端部(4a)はその第1巻付け方向(D1)の下手側に移動し、徐々に狭くなる挿通孔(10)の開口周縁に挟持されて、釣糸用スプール(1)に確りと固定される。これとは逆に、上記の釣糸(4)を、例えば図5の仮想線に示す第2巻付け方向(D2)へ巻付けると、上記の始端部(4a)はその第2巻付け方向(D2)の下手側に移動し、徐々に狭くなる挿通孔(10)の開口周縁に挟持されて、釣糸用スプール(1)に確りと固定される。即ち、上記の釣糸(4)は、いずれの方向に巻付けたとしても、上記の始端部(4a)は巻付け方向(D)の下手側に移動して、徐々に狭くなる挿通孔(10)の開口周縁に挟持され、釣糸用スプール(1)に確りと固定されることとなる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0032】
上記の挿通孔(10)の開口形状は、上記の各実施形態のものや特定の形状のものに限定されない。例えば図6に示す第4実施形態では、上記の第3実施形態と同様、挿通孔(10)の開口の中間部に広幅開口部(12)を形成し、この広幅開口部(12)から挿通孔(10)の開口の両端側ほど開口幅(W)をそれぞれ狭めてあるが、挿通孔(10)の開口形状は、第3実施形態と異なって、平面視で略三角形に形成したものである。その他の構成は上記の第3実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0033】
上記の各実施形態で説明した長尺体用スプールは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や寸法、材質などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0034】
例えば、上記の実施形態では挿通孔を胴部の端部に形成したので、釣糸の始端部をこの挿通孔へ容易に挿通することができて好ましい。しかし本発明では、この挿通孔を胴部の他の部位や、巻装部に臨むフランジ部に透設することも可能である。
また上記の第1実施形態では、一方のフランジ部に扉部を延設した場合について説明した。しかし本発明では、両方のフランジ部に扉部を延設したものであってもよく、或いは扉部に代えて環状のカバーを備えたものや、これらを省略したものであってもよい。
【0035】
また上記の実施形態では長尺体が釣糸である場合について説明したが、本発明に用いる上記の長尺体は、手芸糸など他の糸条体や、ビニタイ、包装用テープなどの帯状体等であってもよい。また上記の糸条体は、モノフィラメントからなるものやマルチフィラメントからなるもののほか、組紐状のものであってもよい。さらに上記の長尺体の材質は、合成樹脂材料や天然繊維材料、金属材料のほか、これらを組み合わせたものであってもよく、特定の材料に限定されないことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の長尺体用スプールは、長尺体の太さや厚みにかかわらず、始端部をスプールへ簡単に固定して長尺体を巻装部へ容易に巻付けることができ、しかも簡単な構造で安価に実施できるので、特に釣糸用スプールに好適であるが、手芸糸や包装用テープなど、他の長尺体に用いるスプールにも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、釣糸用スプールの一部破断斜視図である。
【図2】第1実施形態の、挿通孔近傍の要部拡大図である。
【図3】図2のC−C線矢視断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す、挿通孔近傍の要部拡大図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す、挿通孔近傍の要部拡大図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示す、挿通孔近傍の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
1…長尺体用スプール(釣糸用スプール)
2…胴部
3…フランジ部
4…長尺体(釣糸)
4a…始端部
5…巻装部
10…挿通孔
11…係止部
12…広幅開口部
D…長尺体(4)の巻付け方向
W…挿通孔(10)の開口幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された胴部(2)と、この胴部(2)の両側端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部(3)とを備え、長尺体(4)が巻回される巻装部(5)をこの両フランジ部(3)間で上記の胴部(2)の周囲に形成した長尺体用スプールであって、
上記の巻装部(5)に臨む上記の胴部(2)とフランジ部(3)との少なくともいずれかに、上記の巻装部(5)の内側から巻装部(5)の外方へ長尺体(4)の始端部(4a)が挿通される挿通孔(10)を透設し、
この挿通孔(10)の開口形状を、長尺体(4)の巻付け方向(D)に沿って長く形成し、その挿通孔(10)の開口に、その開口幅(W)が長尺体(4)の太さ又は厚みよりも広い広幅開口部(12)を形成し、この広幅開口部(12)より巻付け方向下手側ほど開口幅(W)を狭めたことを特徴とする、長尺体用スプール。
【請求項2】
上記の挿通孔(10)の少なくとも上記の広幅開口部(12)より巻付け方向下手側の、上記の巻装部(5)に臨む開口周縁またはこれと反対側の開口周縁は、挿通方向の断面形状を鋭角状に形成した、請求項1に記載の長尺体用スプール。
【請求項3】
上記の挿通孔(10)の少なくとも上記の広幅開口部(12)より巻付け方向下手側の内面は、巻装部(5)内面との直交方向に対し傾斜している、請求項1または請求項2に記載の長尺体用スプール。
【請求項4】
上記の挿通孔(10)は、上記の巻装部(5)に臨む開口を反対側の開口よりも大きく形成した、請求項1から3のいずれか1項に記載の長尺体用スプール。
【請求項5】
上記の挿通孔(10)は、上記の胴部(2)の一側端に、上記の一方のフランジ部(3)に沿って長く形成した、請求項1から4のいずれか1項に記載の長尺体用スプール。
【請求項6】
上記の長尺体(4)の始端部(4a)に、長尺体(4)の太さ又は厚みよりも大きい係止部(11)を形成しておき、上記の広幅開口部(12)の開口幅(W)を、上記の係止部(11)よりも広くした、請求項1から5のいずれか1項に記載の長尺体用スプール。
【請求項7】
上記の広幅開口部(12)は、上記の挿通孔(10)の開口の中間部に形成し、この広幅開口部(12)から挿通孔(10)の開口の両端側ほど上記の開口幅(W)をそれぞれ狭めた、請求項1から6のいずれか1項に記載の長尺体用スプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−63428(P2010−63428A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234719(P2008−234719)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(506269149)株式会社ワイ・ジー・ケー (21)
【出願人】(505430975)株式会社ヤシマ精工 (9)
【Fターム(参考)】