説明

長時間加熱果汁含有アルコール飲料

【課題】アルコール飲料において、その設計品質を大きく変えずにアルコールに起因する苦味を低減する手段を提供すること。
【解決手段】アルコール飲料に、長時間加熱果汁を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常圧下で、果汁温度を100℃以上の高温で、30分間以上の長時間保持して加熱された果汁(以下、「長時間加熱果汁」とも表す)を含有するアルコール飲料に関する。詳細には、長時間加熱果汁を含有させることによって、アルコール飲料におけるアルコールに起因する苦味を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールは、その致酔効果だけでなく、芳醇な風味を有しているため、様々な酒類の形で多くの人々に愛されてきた。このようなアルコールの風味は、酒類だけでなく、各種料理などの飲食品の香味付けにも用いられてきた。しかし、消費者の中には、アルコールに苦味を感ずる人もいる。
【0003】
近年チューハイやカクテルなどの低アルコール飲料が人気を集めているが、最近では、低アルコール飲料のアルコールに起因する苦味が嫌がられ、ジュースのような清涼感や飲みやすさが一層求められる傾向にある。特にチューハイなどのような、スッキリした香味のアルコール飲料の場合、アルコールに起因する苦味が相対的に目立つことが問題となっている。
【0004】
そこで、アルコールに起因する苦味を低減・改善する技術が求められている。
特許文献1には、アルコール飲料にシュクラロースを添加することによって、アルコール飲料のアルコールに起因する苦味やバーニング感を抑え、アルコールの軽やかな風味を生かしたアルコール飲料の風味を向上させる方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された、再生使用が可能な酒類処理用活性炭フィルターに、酒類を通液させ、ろ過することによって、酒類中の苦味成分を低減することができ、脱色された香味が良好な酒質が得られる方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、果汁とアルコールとを混合して得られる果汁含有アルコール飲料において、高濃度の果汁をアルコールに混合することにより、アルコール特有の刺激を低減又は消去させたアルコール飲料及びその製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、高濃度の果汁と高濃度のアルコールとを混合して得られる果汁含有アルコール飲料ベースで、アルコールに対して特定の比率で果汁を配合することによって、アルコール特有の刺激を低減又は消去させ、さらに成熟した果実の香味を有するアルコール飲料ベース又はその希釈アルコール飲料及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−224075号公報
【特許文献2】特開2007−267695号公報
【特許文献3】WO09−17115号公報
【特許文献4】WO09−17116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、シュクラロースには、添加量によっては後味が悪くなったり、えぐみを感じたりする場合があるという問題があること、また、シュクラロース自体が砂糖とは甘味の質が異なるという問題があること、が知られている。従って、上記特許文献1に記載の方法では、該アルコール飲料の設計品質を大きく変えずにアルコールに起因する苦味を改善することは難しい。
【0010】
また、特許文献2の方法では、特殊な活性炭が必要である上、この技術は、清酒などに含有される、アミノ酸誘導体であるチロソール、β−フェネチルアルコールなどの苦味成分を除去することによって苦味を低減する技術であり、アルコール自体に起因する苦味を低減する効果は得られない。
【0011】
また、特許文献3及び4の方法では、飲用時(具体的には、口に入れた際や飲み終えた際)に、口中でピリピリと感じるアルコール特有の刺激の低減効果であって、アルコールに起因する苦味を低減する技術ではない。また、このアルコール特有の刺激の低減効果を得るにしても、アルコールに対して大過剰の果汁を添加することが必要となるため、添加する果汁によって該アルコール飲料の品質が大きく変ってしまう。
【0012】
上記のように、アルコール飲料において、該アルコール飲料全体の設計品質を大きく変えずにアルコールに起因する苦味を低減する方法は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記のような課題に鑑み、鋭意研究した結果、アルコール飲料において、通常市場に流通しているような果汁でなく、常圧下で果汁温度を100℃以上の高温で、30分間以上の長時間保持して製造された果汁を少量添加することによって、驚くべきことに、該アルコール飲料の設計品質を大きく変えることなく、アルコールに起因する苦味が低減された、品質的に優れたアルコール飲料が製造できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
従って、本発明は、以下のものに関する。
1.長時間加熱果汁を含む、アルコール飲料。
2.前記長時間加熱果汁を、ストレート果汁換算で2〜5w/v%含む、1に記載のアルコール飲料。
3.アルコール度数が3〜8v/v%である、1に記載のアルコール飲料。
4.前記長時間加熱果汁が、仁果類果実果汁、核果類果実果汁、ブドウ果汁、ベリー類果汁、イチゴ果汁由来のものである、1に記載のアルコール飲料。
5.長時間加熱果汁をアルコール飲料に含有させることを特徴とする、アルコール飲料の製造方法。
6.長時間加熱果汁をアルコール飲料に含有させることを特徴とする、アルコール飲料におけるアルコールに起因する苦味を低減する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、長時間加熱果汁を用いることによって、市場で通常流通している果汁では得られない又は得ることが難しい、アルコール飲料中のアルコールに起因する苦味を低減させる効果を得ることができる。しかも、この効果を得るためは、長時間加熱果汁を少量用いるだけでよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(長時間加熱果汁)
本明細書における「長時間加熱果汁」とは、果汁、例えばストレート果汁又は濃縮果汁を、常圧下で果汁温度を100℃以上の温度で、30分間以上保持して加熱して得たものをいう。
【0017】
アルコール飲料や、非アルコール飲料などに使用される果汁は、香味・色調等の品質変化や栄養成分の分解を抑えるため、出来る限り果汁への加熱を避け、加熱が避けられない場合はその加熱条件を最低限に抑制することが行なわれる。果汁に加熱処理が行なわれるのは、主に果汁濃縮時と殺菌時である。
【0018】
果汁は、通常、コスト削減の目的で濃縮されたものが流通しているが、非加熱の濃縮法として、逆浸透膜濃縮法が広く採用されている。この方法は、加熱を必要としないため、褐変などの色調変化や栄養成分の損失が少なく、香気の優れた濃縮果汁を生産できる。また、最近は、液相(水)から固相(氷)への相変化を利用して、氷点下の低温度領域で水のみを選択的に除去できる凍結濃縮法も開発されている。
【0019】
一方、加熱濃縮法においては、加熱濃縮時に減圧することで加熱温度を低くすることができる真空(減圧)低温加熱濃縮法が広く行われている。また、高温でも短時間で処理すれば果汁の品質変化を抑えることが可能であるため、常圧加熱濃縮法も実施されている。ただし、加熱による品質変化を最小限に抑えるため、常圧加熱濃縮法における加熱濃縮温度、装置内滞留時間は短時間に設定される。例えば、果汁関係で主に採用されているワンパス式(噴流薄膜型)では、オレンジ果汁を60°Bx以上まで濃縮するのに装置内の滞留時間を3〜4分間と設定されている。
【0020】
加熱殺菌の際にも、高温短時間処理によって加熱による品質劣化を最小限に抑えられている。例えば、リンゴ果汁では100℃以上の温度で数十秒間殺菌処理されているに過ぎない。
【0021】
しかしながら、本発明においては、果汁処理は、常圧下で果汁温度を100℃以上の高温で、30分間以上という長時間保持することによって行なわれる。この点で従来のいずれの果汁処理方法とも異なる。加熱条件は特に制限されないが、典型的には、果汁温度を100〜110℃の範囲で30分間以上保持する。このような加熱条件は、通常より過酷な条件であるので、通常の果汁加熱で問題となるような品質低下は許容されるが、2時間を超えるような加熱時間は、少量の添加でもアルコール飲料に好ましくない香味を付与する可能性があるので、加熱時間は2時間までとすることが好ましい。
【0022】
こうした長時間加熱により、従来の果汁では困難であった、アルコールに起因する苦味を低減させる効果を得ることができる。
また、本発明の長時間加熱果汁の製造の際には、果汁を糖類と共に加熱することができる。この場合、予め砂糖を加熱してカラメル化したものに果汁を添加して本発明の長時間加熱を実施すると、得られる長時間加熱果汁によってアルコールの苦味が低減するだけでなく、該アルコール飲料にまろやかな味わいが付与されるため、より好ましい。
【0023】
長時間加熱果汁は、果汁自体が有する香味を除去することにより、一層汎用性を持たせることができる。例えば、活性炭処理等を施して果汁の香味成分を除去し、長時間加熱果汁とは異なる品目の果汁を含むアルコール飲料に使用することができる。
【0024】
長時間加熱果汁は、加熱等によって濃縮されていてもよい。典型的には、その濃縮度は、好ましくは、4倍〜8倍、より好ましくは5倍〜7倍である。果汁の濃縮度は、果実を搾汁して得られるストレート果汁を基準として求められる。典型的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される各果実について、各果実固有の糖用屈折指示度の基準値(°Bx)(下記表1)又は酸度の基準値(%)(下記表2)に基づいて求めることができる。例えば、JAS規格によればリンゴの基準Bxは10°であり、したがって、例えばBx70°のリンゴ果汁は、7倍濃縮のリンゴ果汁である。酸度を利用する場合にも、表2に記載の基準値を同様に用いることによって、同様にして濃縮度を計算することができる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
本発明において用いられる長時間加熱果汁の種類は、アルコール飲料で通常使用され得るものであれば、特に制限されない。例えば、仁果類果実果汁(リンゴ果汁、ナシ果汁、等)、核果類果実果汁(モモ果汁、スモモ果汁、ウメ果汁、アンズ果汁、等)、ブドウ果汁、柑橘類果汁(オレンジ果汁、ミカン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、等)、熱帯果実果汁(パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、等)、その他果実の果汁(ベリー類果汁、キウイフルーツ果汁、等)、トマト果汁、ニンジン果汁、イチゴ果汁、メロン果汁などに由来する長時間加熱果汁が挙げられるが、特に、仁果類果実果汁、核果類果実果汁、ブドウ果汁、ベリー類果汁、イチゴ果汁に由来する長時間加熱果汁が好ましく、さらには、リンゴ果汁、モモ果汁、ウメ果汁、アンズ果汁、ブドウ果汁に由来する長時間加熱果汁がより好ましい。本発明においては、これらの果汁を1種単独で、または2種以上を併用して用いる。長時間加熱果汁の原料となる果汁は、果汁をそのまま使用するストレート果汁であっても、通常の方法で濃縮した濃縮果汁であってもよい。また、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレー、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0028】
長時間加熱果汁は、本発明のアルコール飲料に対して、ストレート果汁換算で1〜10w/v%、好ましくは2〜5w/v%含有させることができる。含有量が5w/v%を超える場合は、長時間加熱果汁自体の香味が強くなるが、本発明の効果は認められるので、アルコール飲料の香味品質を妨げない範囲で配合することができる。
【0029】
上記のアルコール飲料中に含有される長時間加熱果汁の、ストレート果汁換算の量は、該長時間加熱果汁の重量を、対応するストレート果汁の重量に換算し、その重量を飲料全体の容量で割ることによって求める。ストレート果汁の重量への換算は、典型的には、表1又は2に示される各果実に固有の糖用屈折指示度値(°Bx)又は酸度値(%)に基づいて行なうことができる。例えば、Bx70°のりんご果汁0.5gは、ストレート果汁の重量に換算すると3.5gとなる(0.5g×70°/10°)。従って、これが飲料100ml中に含有される場合には、ストレート果汁換算の含有率は、3.5w/v%となる。長時間加熱果汁が2種類以上含有される場合には、長時間加熱果汁の含有量は、それらのストレート果汁換算の含有量の総和により表すこととする。
【0030】
(アルコール飲料)
本発明におけるアルコール飲料とは、アルコール、主にエチルアルコールを含有する飲料である。当該アルコール飲料は、長時間加熱果汁を含有させることによって製造され、アルコールに起因する苦味が低減される。アルコール含有量に特に制限はないが、アルコール度数が3〜8v/v%のときに、特に優れた苦味低減効果が発揮される。
【0031】
長時間加熱果汁を含有させる具体的な方法は、特に限定されず、当業者に知られているいずれの方法を用いてもよい。通常は、長時間加熱果汁を、製造原料として製造工程の途中で加えるか、又は製造されたアルコール飲料に添加することによって、アルコール飲料中に含有させる。長時間加熱果汁を含有させる前に、果汁自体が有する香味を除去する工程を加えてもよい。例えば、活性炭処理等を施して果汁の香味成分を除去する工程を加えることができる。
【0032】
本発明において使用できるアルコール飲料の製造に用いるアルコールは特に限定されず、例えば、醸造アルコール、スピリッツ類(例えばジン、ウォッカ、ラム、テキーラ、ニュースピリッツ等のスピリッツ、および原料用アルコールなど)、リキュール類、ウイスキー類(例えばウイスキー、ブランデーなど)又は焼酎(連続式蒸留焼酎、いわゆる甲類焼酎及び単式蒸留焼酎、いわゆる乙類焼酎)等、更には清酒、ワイン、ビール等の醸造酒を用いることができる。なかでも、蒸留したアルコール、すなわちウイスキー類(例えばウイスキー、ブランデーなど)、スピリッツ類(例えばジン、ウォッカ、ラム、テキーラ等のスピリッツ、および原料用アルコールなど)、焼酎(連続式蒸留焼酎、いわゆる甲類焼酎及び単式蒸留焼酎、いわゆる乙類焼酎)は、醸造酒に比べて相対的にアルコール自体の香味が目立つため本発明の効果がより強く感じられるので、より好ましい態様である。
【0033】
なお、本発明のアルコール飲料のアルコール度数(アルコール分の含有量)は、振動式密度計によって測定することができる。下記実施例におけるアルコール分の含有量は、アルコール飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めた値である。
【0034】
(その他の成分)
本発明におけるアルコール飲料においては、長時間加熱果汁とアルコールの他にも、本件発明の性質を損なわない限り、アルコール含有飲料に通常配合する、糖類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、甘味料、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。また、本発明の性質を損なわない限り、長時間加熱されていない果汁が追加的に配合されていてもよい。
【0035】
また、本発明のアルコール飲料は、炭酸ガスを圧入することによって炭酸ガス入りアルコール飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、飲料として提供される通常の範囲に調節されるが、特に制限はない。
【0036】
(容器詰飲料)
本発明のアルコール飲料は、容器詰めとすることができる。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)長時間加熱果汁の配合による、アルコールの苦味低減効果
種々の量の長時間加熱果汁を用いてアルコール分5v/v%の果汁含有アルコール飲料を調製し、アルコールの苦味の低減効果について検討した。
【0038】
(長時間加熱果汁の調製)
10°Bxのリンゴストレート果汁を、沸騰した湯で直火にて加温し、果汁温度が100℃に逹してから30分間加熱を続け、長時間加熱リンゴ果汁を得た。この長時間加熱リンゴ果汁の糖用屈折指示度は、70°Bxであった。
【0039】
(アルコール飲料の調製)
アルコール分59v/v%の原料用アルコール85ml、果糖ブドウ糖液糖120g、無水クエン酸2.5g、クエン酸三ナトリウム0.4g、香料1.0mlを混和し、これに長時間加熱リンゴ果汁を、ストレート果汁換算で、10、20、30、50、又は100g混和した(1000mlのアルコール飲料中で、長時間加熱リンゴ果汁濃度は、ストレート果汁換算でそれぞれ1、2、3、5、又は10w/v%となる)。
【0040】
得られた混合物に汲水を必要量配合し、炭酸ガスを圧入して、長時間加熱リンゴ果汁濃度をストレート果汁換算で1、2、3、5、又は10w/v%含有する、アルコール分5v/v%・ガス圧1.5kg/cm2の果汁含有アルコール飲料1000mlを得た(実施例)。
【0041】
同様にして、上記の長時間加熱リンゴ果汁に代えて、減圧低温加熱濃縮法で得た通常の濃縮リンゴ果汁をストレート果汁換算で1、2、3、5、又は10w/v%含有する、アルコール分5v/v%・ガス圧1.5kg/cm2の果汁含有アルコール飲料1000mlを得た(比較例)。
【0042】
(官能評価)
上記によって得られた、リンゴ果汁濃度がストレート果汁換算で同一である比較例と実施例のそれぞれの組について、専門パネラー8名により、実施例のアルコールに起因する苦味の強さを以下の基準に従って評価した。
【0043】
比較例のアルコールに起因する苦味の強さを2点とし、
1点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例より強く感じられる。
2点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例と同程度である。
3点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例より弱く感じられる。
4点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例より非常に弱く感じられる。
【0044】
専門パネラーの評価点の平均値を計算した評価結果を(表−1)に示す。
この評価点の平均値が、2点を上回るとき長時間加熱果汁によるアルコールの苦味低減効果があると判断する。
【0045】
【表3】

【0046】
この結果から、長時間加熱果汁がアルコールに起因する苦味を低減することができ、その効果は、アルコール飲料中に長時間加熱果汁がストレート果汁換算で1〜10w/v%添加されるときに認められるが、特に、ストレート果汁換算で2〜5w/v%添加されるときに強く、ストレート果汁換算で3〜5w/v%添加されるときに、より強くなり、好ましいことが、明らかとなった。
【0047】
(実施例2)アルコール度数に依存した、長時間加熱果汁によるアルコールの苦味低減効果の変動
長時間加熱果汁をストレート果汁換算5w/v%含む果汁含有アルコール飲料を調製し、アルコールの配合量を変えた場合のアルコールの苦味の低減効果の変動について検討した。
【0048】
(アルコール飲料の調製)
実施例1で調製した長時間加熱リンゴ果汁を、ストレート果汁換算で50g(1000mlのアルコール飲料中で、長時間加熱リンゴ果汁濃度は、ストレート果汁換算で5w/v%となる)、アルコール分59v/v%の原料用アルコールを17、51、85、136、又は170ml(1000mlのアルコール飲料中で、1、3、5、8、又は10v/v%となる)、果糖ブドウ糖液糖120g、無水クエン酸2.5g、クエン酸三ナトリウム0.4g、香料1.0mlを混和した。
【0049】
得られた混合物に汲水を必要量配合し、炭酸ガスを圧入して、長時間加熱リンゴ果汁をストレート果汁換算で5w/v%を含有する、アルコール分1、3、5、8、又は10v/v%・ガス圧1.5kg/cm2の果汁含有アルコール飲料1000mlを得た(実施例)。
【0050】
同様にして、上記の長時間加熱リンゴ果汁に代えて、減圧低温加熱濃縮法で得た通常の濃縮リンゴ果汁をストレート果汁換算で5w/v%含有する、アルコール分1、3、5、8、又は10v/v%・ガス圧1.5kg/cm2の果汁含有アルコール飲料1000mlを得た(比較例)。
【0051】
(官能評価)
上記によって得られた、アルコール分の含有量が同一である比較例と実施例のそれぞれの組について、専門パネラー8名により、実施例のアルコールに起因する苦味の強さを以下の基準に従って評価した。
【0052】
比較例のアルコールに起因する苦味の強さを2点とし、
1点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例より強く感じられる。
2点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例と同程度である。
3点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例より弱く感じられる。
4点:アルコールに起因する苦味の強さが、比較例より非常に弱く感じられる。
【0053】
専門パネラーの評価点の平均値を計算した評価結果を(表−2)に示す。
この評価点の平均値が、2点を上回るとき長時間加熱果汁によるアルコールの苦味低減効果があると判断する。
【0054】
【表4】

【0055】
この結果から、アルコール飲料中のアルコール分が3〜8v/v%のとき、長時間加熱果汁がアルコールに起因する苦味を低減する効果が比較例より強く感じられ、好ましいことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長時間加熱果汁を含む、アルコール飲料。
【請求項2】
前記長時間加熱果汁を、ストレート果汁換算で2〜5w/v%含む、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
アルコール度数が3〜8v/v%である、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記長時間加熱果汁が、仁果類果実果汁、核果類果実果汁、ブドウ果汁、ベリー類果汁、イチゴ果汁由来のものである、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
長時間加熱果汁をアルコール飲料に含有させることを特徴とする、アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
長時間加熱果汁をアルコール飲料に含有させることを特徴とする、アルコール飲料におけるアルコールに起因する苦味を低減する方法。

【公開番号】特開2011−30517(P2011−30517A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181124(P2009−181124)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】