説明

閃光照射装置

【課題】フラッシュランプを冷却しつつ、発光管の破損を防ぐことができる閃光照射装置を提供すること
【解決手段】、発光管が石英ガラスより構成されたフラッシュランプと、フラッシュランプの冷却機構とを備えた閃光放射装置において、前記閃光放射装置は、前記発光管の表面に設けられた温度測定手段と、冷却機構を制御する制御部とを備え、発光管の表面の温度を300〜500℃に制御すること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュランプを用いた閃光照射装置に関し、より詳細には、固体レーザの励起に使用される、フラッシュランプが冷却される高出力、高負荷の閃光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、YAG レーザ等の固体レーザを用いたレーザ装置においては、前記固体レーザを励起させる励起手段としてフラッシュランプを搭載した閃光照射装置を用いている。このような閃光照射装置は例えば特許文献1等で知られるように、フラッシュランプ本体と、その冷却機構から構成されている。
フラッシュランプは、略直管状の発光管の内部に一対の電極が対向配置され、発光管の内部にクリプトンやキセノンなどの希ガスが封入されたものである。
【0003】
図5を参照して従来技術に係るフラッシュランプについて具体的に説明する。
フラッシュランプ50の発光管は高入力タイプでは、主として石英ガラスから構成されており、内部にはタングステンあるいは酸化トリウム、酸化ランタン、酸化バリウム系化合物を含有したタングステンなどから構成される一対の電極を備えている。
ランプには高負荷がかかるため、通常発光管の外周を覆う、冷却媒体流路51を設けて、冷却流体を流通させ、冷却されながら点灯される。
このように、フラッシュランプ50を冷却することにより、高い電力を入力して点灯する場合でも、発光管を構成する石英ガラスの耐熱温度以下に維持することができ、比較的長寿命とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−260795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにフラッシュランプを冷却しながら高入力で点灯していたところ、発光管が破損するといった不具合が発生した。
この原因として、入力電力が高くなったことにより、フラッシュランプから発生する紫外線の強度が大きくなっていることと、発光管の温度が低下することにより、発光管への紫外線歪が加わりやすくなっていることが推測された。
逆に、フラッシュランプを冷却しない場合には、電極の温度が過剰に高くなって蒸発による損耗が発生したり、発光管を構成する石英ガラスの内表面が高温となり還元され光透過性が低下したり、あるいは更に高温となり蒸発し白濁するようになった。
以上により、本発明は、フラッシュランプを冷却しつつ、発光管の破損を防ぐことができる閃光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、発光管が石英ガラスより構成されたフラッシュランプと、フラッシュランプの冷却機構とを備えた閃光放射装置において、前記閃光放射装置は、前記発光管の表面に設けられた温度測定手段と、冷却機構を制御する制御部とを備え、発光管の表面の温度を300〜500℃に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フラッシュランプの外表面に設けた温度測定手段により、温度情報を入手し、その温度情報に基づいて制御部が冷却機構を制御し、フラッシュランプの電極が損耗したり、発光管の光透過性が低下したりしないように冷却しつつ、紫外線歪によって発光管が破裂することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るフラッシュランプを示す図である。
【図2】本発明に係る閃光照射装置の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る閃光照射装置のフラッシュランプの温度制御について示す図である。
【図4】本発明に係る閃光照射装置に係る実験結果を示す図である。
【図5】従来例に係る閃光照射装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら、本発明の閃光放射装置について説明する。
図1は、本発明に係るフラッシュランプを示す図である。
フラッシュランプ10は、長尺な直管状の石英ガラス管の両端を封じた発光管11の内部に、例えばタングステンなどの高融点金属よりなる一対の電極である陰極12、陽極13を備えている。
陰極12、陽極13は、外部リード14、15により物理的に支持されているとともに、電気的に接続されており、この外部リード14、15に接続された不図示の給電装置より給電される。
外部リード14、15は、その外側の端部が、発光管11の両端にあるシールSに埋設されるとともに、発光管の外部に突出するように配置されている。
発光管内には、キセノンなどの希ガスが封入されている。
【0010】
このフラッシュランプ10の発光管11内の両方の端部11A、11Bには、電極12、13近傍の発光管11の径が縮径された、縮径部17、18が形成されている。
この縮径部17、18は、後述する冷却機構により、電極を発光管と密着させて冷却しやすくするために設けられている。
【0011】
図2は、本発明にかかる閃光放射装置の構成の一例を示す図である。
閃光放射装置2は、フラッシュランプ10と冷却機構とにより構成されている。
冷却機構は、この例においては水冷冷却装置であり、冷却ジャケット26と、フラッシュランプを支持する支持具2A、および2Bと、不図示の給水装置から構成されている。
そして、フラッシュランプ10と冷却機構とは、例えば以下に説明するような構造で連結されている。
フラッシュランプ10は、石英ガラスの円筒管よりなる冷却ジャケット26の内部に挿入され、その両端が冷却ジャケット26の両側から突出するように配置される。
冷却ジャケット20の両側には、支持具2A、および2Bが配置されている。この支持具2Aは、中央に貫通孔を有する略円盤状の支持具本体23Aと、この支持具本体23Aの内側に配置される締め付け板26b、および外側に配置される締め付け板26aから構成されている。なお、支持具2Bについても同様の構成であるから説明を省略する。
【0012】
支持具本体23Aの外側面と、締め付け板26aと、フラッシュランプ10の端部の外表面との間には、弾性部材からなるOリング27aが配置されている。
螺子25aを締めることにより、支持具本体23Aの外側面と、締め付け板26aとの間隔が狭まってOリング27aがフラッシュランプ10の端部の外表面に押圧され、支持具2Aとフラッシュランプ10とが水密に固定される。
同様に、支持具本体23Aの内側面と、締め付け板26bと、冷却ジャケット20の端部の外表面との間には、弾性部材からなるOリング27bが配置されている。
螺子25bを締めることにより、このOリング27bが冷却ジャケットの端部の外表面に押圧され、支持具2Aと冷却ジャケット20とが固定される。
【0013】
支持具2Aの内部には、外部に開口する孔が形成されてている。これが連結した冷却ジャケット20の内部空間と連通することにより、冷却媒体導入路28となっている。
同様に、支持具2Bの内部にも、外部に開口する孔が形成されており、連結した冷却ジャケット20の内部空間と連通することにより、冷却媒体排出路29となっている。
そして、冷却ジャケット20とフラッシュランプ20の隙間の空間が冷却媒体流路21となっている。
冷却媒体としては、水を用いることができ、水の他にはガスや空気などを用いてもよい。
【0014】
フラッシュランプ10の外表面には、温度測定手段22が設けられている。この温度測定手段22は、例えば アルメル−クロメルなどの異種金属ワイヤー対から構成される熱電対である。これにより、フラッシュランプ10の外表面の温度を測定することができる。
支持具2A、および2Bには、温度測定手段導入部231A、231Bが設けられており、冷却媒体流路21内に温度測定手段22を導入することができる。
【0015】
上記の構成の冷却機構により、不図示の給水装置から支持具2Aの冷却媒体導入路28を通して冷却媒体を導入し、冷却媒体流路21内を図示の矢印の方向に冷却媒体を流すことでフラッシュランプ10の外表面の周囲を直接冷却することができる。
そして、温度測定手段22により、フラッシュランプ10の発光管11の外表面の温度を測定することができる。
【0016】
図3は閃光放射装置のフラッシュランプの温度制御について示す図である。
フラッシュランプ10の表面に設けられた温度測定手段22は温度情報を取得し、制御部30に送る。
制御部30は、フラッシュランプ10を点灯するのに好ましい所定の温度を記憶しているので、フラッシュランプ10の外表面の温度を所定の温度となるように冷却機構31を制御する。
例えば、取得した現在の温度を所定の温度より高いと判断した場合には、冷却媒体の流速を上げるなどして冷却を強める。また、取得した現在の温度を所定の温度より低いと判断した場合には、冷却媒体の流速を下げるなどして冷却を弱める。
【0017】
次に、フラッシュランプを点灯するのに好ましい所定の温度について説明する。
図4は、図2、3に示した閃光放射装置を用いて、フラッシュランプを種々の温度にて冷却しながら点灯した実験に基づいて、点灯(ショット)回数と、その回数において発光管に加わっている歪との関係を表した図である。歪角度が大きい程、歪量が大きいことを表している。
フラッシュランプの発光管に用いられる石英ガラスには、点灯回数を重ねるごとに自らの発光に含まれる紫外線による歪が蓄積する。発光管に蓄積された紫外線歪が一定値を超えると、発光管は破裂してしまう。例えば、歪角度が約60〜70度以上となると、発光管が破裂する危険に曝される。
グラフ上に示された×印は、発光管への歪の蓄積が原因となって破裂が生じたことを表している。
【0018】
図4を参照すると、温度が100℃のときは少ないショット数でも歪が急減に増加していき、合計100ショット程度で破裂が発生した。これは、発光管の温度が低温である場合、高温であるよりも紫外線歪が蓄積されやすく、早期に破裂したものと考えられる。
また、温度が200℃、250℃のときも緩やかに歪が蓄積されていき、歪角度が約60度を超えると、その後破裂が生じた。
一方、300℃のときは、ショット数が増加しても、歪の蓄積は一定以上に伸びにくくなり、200×10ショットを超えても破裂が生じなかった。
【0019】
このように、300℃以上の、400℃、500℃などのときはショット数が増加しても、発光管の破裂は生じなかった。
しかし、発光管の温度が500℃を超えると、石英ガラスの光透過率が紫外線域から低下するという別の問題があり、温度が上昇するにつれて、光透過率の低下が可視光域まで及んでしまう。そのため、フラッシュランプを500℃を超える温度状態で点灯することは好ましくない。
【0020】
以上により、フラッシュランプの点灯温度は300〜500℃が好ましく、この温度範囲となるようにフラッシュランプを冷却することにより、フラッシュランプの電極が損耗したり、発光管の光透過性が低下したりしないように冷却しつつ、紫外線歪によって発光管が破裂を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0021】
10 フラッシュランプ
11 発光管
11A 端部
11B 端部
12 陰極
13 陽極
15 外部リード
16 外部リード
17 縮径部
18 縮径部
S シール部
2 閃光放射装置
20 水冷ジャケット
21 冷却媒体流路
22 温度測定手段
23A 支持具本体
23B 支持具本体
25a 螺子
25b 螺子
26a 締め付け板
26b 締め付け板
27a Oリング
27b Oリング
28 冷却流体導入路
29 冷却流体排出路
30 制御部
31 冷却機構
50 フラッシュランプ
51 冷却媒体流路51
56 冷却ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管が石英ガラスより構成されたフラッシュランプと、
フラッシュランプの冷却機構とを備えた閃光放射装置において、
前記閃光放射装置は、
前記発光管の表面に設けられた温度測定手段と、
冷却機構を制御する制御部とを備え、
発光管の表面の温度を300〜500℃に制御することを特徴とする閃光放射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234764(P2012−234764A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104176(P2011−104176)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】