説明

閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリン

本発明は、結合リガンドを有する単離されたアクアポリンであって、前記リガンドが、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/若しくは減じる、単離されたアクアポリン、並びに/または蛋白質構造データバンクID:1Z98として寄託された座標によって特徴づけられる、閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの高解像度構造、加えて前記座標がその結晶をも定義づける単離された前記アクアポリンの結晶、前記アクアポリンの使用、及びPDB ID:1Z98で寄託された座標によって定義される高解像度構造の使用、更に前記アクアポリンの生産方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合リガンドを有する単離されたアクアポリンであって、前記リガンドが、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/若しくは減じる、単離されたアクアポリン、並びに/または蛋白質構造データバンクID:1Z98として寄託された座標によって特徴づけられる、閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの高解像度構造、加えて前記座標がその結晶をも定義づける単離された前記アクアポリンの結晶、前記アクアポリンの使用、及びPDB ID:1Z98で寄託された座標によって定義される高解像度構造の使用、更に前記アクアポリンの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水は生命の媒体である。生体膜はごく限られているため、本質的に透水性の細胞は、アクアポリンと呼ばれる水特有の膜蛋白質チャンネルのファミリーを通じて、その細胞を出入りする水の流量を維持する(1)。アクアポリン・ファミリーのメンバーは、菌類、動植物を含む古細菌、真性細菌および真核生物で発見される。それらは実に様々な生理機能に役立ち(5-7)、生命界のすべてに渡って、配列相同性によって容易に識別される。高等真核生物において、アクアポリンの水輸送活性は、燐酸化、pHおよびオスモル濃度によってしばしば規制される(6-8)。動植物中のアクアポリンは高度に一定に保たれ、高等植物において35のメンバー(9)、人間においては13のメンバー(5,10)の大きなタンパク質ファミリーを形成する。
【0003】
系統発生解析に基づき、植物アクアポリンは、更に4つの亜科に分けられ、蘚苔類ニセツリガネゴケのような原始的な植物にもそれらは存在しており、この専門化が、古代の植物祖先においても、既に存在していたことを示唆している(11)。
【0004】
顕著に保存された13の原形質膜アクアポリン(原形質膜固有蛋白質或いはPIP)が存在し、それらはすべて規制されている。また、これらはさらに、2つの別個の系統発生のグループ(PIP1とPIP2)に分かれる。
【0005】
ほうれん草の植物アクアポリンSoPIP2;1(以前はPM28A(2)と呼ばれた)の閉鎖は、細胞質ループBにあるSer115(13 シロイヌナズナPIPの、12中のSer及び1中のThrとして保存されている。)とC末端領域にあるSer274(8 シロイヌナズナPIP2の、7中のSer及び1中のThrとして保存されている。)という2つのセリン残基の脱燐酸化が引き金となって起きることが報告されている(2,3)。両残基は、多数の燐酸化部位に位置している。更に、最近、無酸素状態でのすべてのシロイヌナズナPIPの同時閉鎖は、SoPIP2;1中のHisl93に相当する、ループD(4)に保存されたヒスチジン残基のプロトン付加に依存していることが報告された。順々に十分分離した残基に作用するそれの別個の化学信号が、PIPの中にある同一の生理反応を引き起こすことは興味ある所見である。水(12-16)およびグリセロール(17)チャンネルに対して多くの構造が報告されているが、高解像度での植物アクアポリン構造は、まだ見出されていない。Gonenらは、APQ0の低解像度構造を報告している(15)。この解像度(3オングストローム)においては水分子を見ることができず、著者らは、この構造が閉じたアクアポリンを表していることを結論付けられていない。このことは、著者らによって述べられた論説からも明らかである。(p194- 195:「しかしながら、我々の解像度は、今のところ3オングストロームまでで制限されており、たとえ閉じたコンフォーメーションに孔が出現したとしても、溶質に対する透過性があるかもしれない」)。開いたコンフォーメーションのAPQ0の高解像度構造(16)は、参照15で報告された低解像度APQ0と比べた場合、構造における全体的な変化がみられないことを示している。従って、参照15の構造は開いたアクアポリンは、開いたアクアポリンを示しているものと思われる。最近の追加的報告(35)では、参照15で報告されたAPQ0の構造は、参照16同様、水輸送に対して開いており、閉じていないという同じ結論に達している。
【0006】
加えて、Gonenら(15)で提示されたAPQ0の低解像度構造は、蛋白質分解的に開裂させたAPQ0に基づく。従って、蛋白質のN,C末端領域はともに開裂させられており、それ故、孔の閉鎖に参加できない(36)。Kukulskiら(37)は、同じ著者らによって以前公表された、開いていると示された(28)、アクアポリンの5オングストロームの低解像度構造を描写している。しかしながら、5オングストロームの低解像度構からは、孔が開いているか閉じているかを見ることは不可能である。
【0007】
さらには、明確に実証された開閉機構はない。従って、その閉じたアクアポリンの原子構造を確立することは重大である。ゲーティングの機構の理解にとって、および有機化合物、ペプチドあるいは抗体の開発にとって、いずれが開いたコンフォーメーションまたは閉じたコンフォーメーションを安定化させるかについて、閉じたコンフォーメーションの構造的情報が必要である。閉じたアクアポリンの構造を得ることによって、はじめてゲーティングを修正するためにその特定の構造を用いることも可能になるだろう。このことは、植物において、例えば耐乾燥ストレスなどのストレス耐性の改良のために、アクアポリンの遺伝子工学が直接なしうる。哺乳類種では、植物ほうれん草の原形質膜からのアクアポリンSoPIP2;1の閉じたコンフォーメーションに基づいて、アクアポリンの閉じた、或いは開いたコンフォーメーションを安定化させる医薬品が設計されうる。そのような抑制剤および活性剤は、例えば制汗薬などの医薬及び薬用化粧の候補化合物である。アクアポリンはまた、血管形成中の細胞移動、創傷治癒、腫物の広がりおよび臓器再生にとっても重要であり(27)、したがって、アクアポリンのゲーティングと相互作用し、修正する医薬品によって、プロセスはそれほど調節されうる。人間のアクアポリンの機能障害は、腎臓病中の多尿のような臨床的に重要な疾病に関係している。反対に、増大した水分保持は、うっ血性心不全、肝硬変および腎炎症候群に関係している。また、無汗症、多汗症、および経皮水分蒸散量が正常状態に反している状態のような、病的な皮膚状態は、アクアポリン抑制剤および活性剤の対象になりうる。さらには、アクアポリンの抑制剤および活性剤によって、脳浮腫、緑内障および皮膚火傷を治療することができるかもしれない。アクアポリン抑制剤および活性剤の美容薬用化粧的応用は、経皮水分蒸散量を操りたい場所の、制汗性だけでなく皮膚病変も含まれる。SoPIP2;1の閉じたコンフォーメーションの原子構造はまた、コンピューター内(in silico)や生体外において、アクアポリンのゲーティングおよび機能の調節機構として、調合薬や薬用化粧品の作用に対する新規なスクリーニング・システムの設計にも用いることができる。閉じたコンフォーメーションの原子構造についての知識は、アクアポリンのいくつかのエピトープに対して相互作用するペプチドおよび抗体に対して設計し、またスクリーニングするためにも用いることができ、それ故、活性やゲーティングをもたらす。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、アクアポリンおよびアクアポリンの開閉機構に関して上記の議論された問題を解決することである。この目的は、以下で特定されるような本発明によって達成される。
【0009】
本発明の目的はアクアポリンの単離および構造の決定であり、その結果、上記言及された問題をすべて解決する可能性を持ちうる。
【0010】
本発明の第1の側面は、結合リガンドを有する単離されたアクアポリンであって、前記リガンドが、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/若しくは減じる、単離されたアクアポリン、並びに/または蛋白質構造データバンクID:1Z98として寄託された座標によって特徴づけられる、閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの高解像度構造(high resolution structure)、前記座標がその結晶をも定義づける単離された前記アクアポリンの結晶、前記アクアポリンの使用、PDB ID:1Z98で寄託された座標によって定義される高解像度構造の使用、及び前記アクアポリンの生産方法に関する。
【0011】
第2の側面において、本発明は、蛋白質構造データバンクID:1Z98で寄託された座標によって特徴づけられる原子構造を持つ、その閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの結晶に関する。
【0012】
第3の側面において、本発明は、次の段階を含む閉じたコンフォーメーションを持つ、単離されたアクアポリンの生産方法に関する;前記アクアポリンの準備、前記アクアポリンにリガンドの添加;結晶の生産、前記アクアポリンに対してリガンド結合を持つアクアポリンの獲得、なお、前記リガンドは、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/または減じるものである。
【0013】
第4の側面において、本発明は、前記単離されたアクアポリン、または前記座標が前記結晶をも定義づける前記アクアポリンの前記結晶の使用に関する。
【0014】
最終の側面において、本発明は、アクアポリンのコンフォーメーションを閉じるために、細胞質の側面に結合するリガンドの使用に関する。
【0015】
本発明の更なる利点および目的は、とりわけ添付図面の参照により、一層詳細に記述されるだろう。
【発明の詳細な説明】
【0016】
定義
本出願と発明の文脈では、以下の定義が用いられる。
【0017】
用語「孔径」は、アクアポリンの孔の内部において、異なる位置の直径を意味することを意図される。
【0018】
用語「閉じたコンフォーメーション」は、水が通過できないほどの小さな孔径により、一方の水チャンネルから他方までの水分子の移動を許さない、閉じたアクアポリンの構造を表す。
【0019】
用語「アクアポリン」は、生体膜を横切って、水及び/または他の小さな溶質の流動を促進する、膜チャネル蛋白質を意味することを意図される。
【0020】
用語「開閉機構」は、アクアポリンが、開いたコンフォーメーションから閉じたコンフォーメーションへ進む、或いはその反対方向に進む場合に、全体的構造及び個々のアミノ酸の位置が変化する手段を表す。
【0021】
用語「リガンド」は、例えば蛋白質などの別の分子の1つ以上の特定部位に、選択的及び化学量論的に結合しているか、結合することができる、あらゆる分子(或は分子の一部)を意味することを意図される。リガンドの例としては、ペプチド、小分子、Cd2+、Ca2+、Mg2+、Mn2+、或いはあらゆる任意の2価カチオンがある。
【0022】
同義語「高解像度」「原子解像度」は、2つの最小原子間距離が、それぞれ区別でき、いまだ2つの原子として現れ、かつ2.5オングストローム未満であることを意味することを意図される。
【0023】
用語「Dループ」は、図1ではアミノ酸残基182-201で示したような、SoPIP2;1におけるアクアポリンの少なくとも第4〜第5膜貫通領域間に亘るアミノ酸残基を意味することを意図される。
【0024】
用語「相同モデリング」は、既知構造との類似点に基づいた、蛋白質の構造の決定のための計算法を意味することを意図される。未知構造のアミノ酸配列と、相同蛋白質の解決済みの構造を与えられ、前記解決済みの構造中のそれぞれのアミノ酸が、前記未知構造の対応するアミノ酸へと計算上変化させられる。相同モデリングによって決定される構造の正確性は、未知の蛋白質配列と既知の蛋白質配列との間の類似性の程度に、大部分は依存する。
【0025】
用語「原子座標」あるいは「構造座標」は、アクアポリンの結晶中の原子の位置について記述する数学的な座標を意味することを意図される。結晶から得られた回折データは、結晶の反復単位の電子密度マップを計算するために使用される。電子密度マップは単一のアクアポリン内の個々の原子の位置を確立する(つまり、X、YおよびZを調整する)ために使用される。当業者であれば、X線結晶学によって決定された1セットの構造座標が、標準誤差を排除できないことを理解する。本発明の目的のために、前記原子座標の非水素原子位置の上に重ねあわせた場合の、いずれの出所のアクアポリンの構造座標のいずれのセットも、0.75オングストローム未満の非水素原子の標準偏差の平方根を有し、the Research Collaboratory for Structural Bioinformatics (RCSB) 蛋白質構造データバンク(PDB) (Berman et al., 2000, Nucleic Acids Research, 28, 235-242; http://www.rcsb.org/pdb/)にて、受入番号PDB ID:1Z98で寄託されている。アクアポリン構造の他の例は1TM8、1YMG、1J4N、1RC2および1FX8である。
【0026】
RCSB蛋白質構造データバンクで寄託された原子座標のリストにおいて、用語「原子座標」は、X、Y、ZおよびBをそれぞれ含む蛋白質構造データバンク(PDB)フォーマットの構造中における、測定された原子の位置を表す。「原子座標」の集合も「原子座標」或いは「構造座標」と表す。用語「原子タイプ」は、その座標が測定される元素を表す。カラムの最初の文字は元素を定義する。用語「X,Y,Z」は、選ばれた結晶基点について測定された元素の結晶学的に定義された原子配置を表す。用語「B」は、その平均の位置に関して原子の位置の平均的変動を測定した温度要因を表す。
用語「分子モデリング」或いは「分子の構造的技術」は、分子のありそうな現実的モデルを描き、かつ配位子および他の作用物質の構造活動関係に関する予測を行うコンピューターの使用を意味することを意図される。前記手法は、分子グラフィックスから計算機化学まで、分子モデリングの範囲で用いられた。
【0027】
用語「分子動力学シミュレーション」は、構造変化のような分子の動的性質のコンピューターシミュレーションの使用を意味することを意図され、例えばGromacs シミュレーション・スーツや VMD (Berendsen H.J.C., van der Spoel, D. and van Drunen, R., Comp Phys Commun 91, 43 (1995) 及び Humphrey, W., Dalke, A. &Schulten, K. VDM: visual molecular dynamics. J Mol Graph 14, 33-8 (1996)を参照。)がある。
【0028】
用語「結合」、「結合する」、「結合状態」、「結合された」は、原子分子、化学基或いはリガンドのような「結合剤」の関連で言及された場合は、2以上の原子、分子或いは化学基の、いかなる物理接触や会合をも意味することを意図される(例えば、サブユニット蛋白質を持つリガンドの結合は、リガンドとサブユニット蛋白質の間の物理接触に言及している。)。そのような接触や会合には、共有結合及び非共有結合タイプの相互作用を含む。
【0029】
アクアポリン
第1の側面において、本発明は、結合リガンドを有する単離されたアクアポリンであって、前記リガンドが、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/若しくは減じる、単離されたアクアポリン、並びに/または蛋白質構造データバンクID:1Z98として寄託された座標によって特徴づけられる、閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの高解像度構造に関する。他のアクアポリンの例は、APQ0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12或いはSoPIP2;1のような、図1にリストされたものである。 前記リガンドは、上記で定義されたようなリガンドであってよい。リガンドの例は、Cd2+、Ca2+、Mg2+、Mn2+、或いはあらゆる任意の2価カチオンである。リガンドは、細胞質側においてなどのように、アクアポリンの異なるサイトと結合していてもよい。リガンドは、例えば非共有結合的な結合リガンドであってもよい。閉じたコンフォーメーションを結合するリガンドは、高解像度で構造によって定義することができる。単離して結晶化されたアクアポリンの構造を決定することによって、閉じたアクアポリン・コンフォーメーションは、原子解像度において初めて得られた。このことにより、初めてアクアポリンの開閉機構を推定する可能性を得ることができる。閉じたアクアポリンの構造は、閉じたコンフォーメーションあるいは開いたコンフォーメーションのいずれかを安定化させて、新品の医薬品(例えば利尿薬や血管形成の抑制剤)および薬用化粧(例えば制汗薬)化合物を設計する可能性を得ることができるだろう。
【0030】
アクアポリンは、十分に進化して、バクテリアから植物および哺乳動物まで保存されているので、そのような化合物は、多数あるいはすべての類のアクアポリンにおいて効果的なものになりうる。SoPIP2;1のような閉じたアクアポリンの原子構造も、アクアポリンの抑制剤および活性剤を特定するために、コンピューター内や生体外において、医薬品設計に基づく構造や、またスクリーニング法の設計に用いることができる。閉じたアクアポリンの構造を得て、次に、その特定構造物を用いることによって、遺伝子工学による植物アクアポリンのゲーティングと機能を修正し、干ばつに対する改良されたストレス耐性を備えた新品種を発生させる可能性を得ることができるだろう。
【0031】
更に、本発明は、アクアポリンが閉じている場合に、狭窄領域において約2.1オングストロームの孔径であり、かつ細胞質前庭に向かう孔にそれ未満を持つアクアポリンに関する。前記孔径は水を導く孔の境界によって定義される。前記孔径は、Smart et al., Biophys J 65, 2455-2460 (1993)によって述べられたHOLEプログラムのようなプログラムの使用によって測定されてもよい。その構造は、アクアポリンの結晶化した構造を使用して決定され、下記実施例で述べられているように、そこでは結晶化前のアクアポリンがメタノール代謝酵母、すなわち、異種の真核生物の蛋白質の生産過剰で生産された。その構造は2.1オングストロームの解像度で解決された。
【0032】
加えて、アクアポリンは、人間、植物あるいは動物からなる群より選ばれたような真核生物のアクアポリンであってもよい。植物類の例は、ほうれん草、甜菜、シロイヌナズナ、トウモロコシ、米、小麦、大麦、オートミールであり、酵母またはバクテリアのような非真核生物とともに、哺乳類種は、人間、ウシ、羊および他の哺乳動物である。本発明における一の具体例である、植物ほうれん草(SoPIP2;1)からのアクアポリンは、図2に示されるようなモノマー間の拡張疎水的相互作用を表示した四量体のように、結晶化した。SoPIP2; 1のX線の結晶構造の使用によって、そしてその後、牛のAQP0(16)やAQP1(13)のような別のアクアポリンの構造を伴うX線構造の重層によって、それらが膜貫通領域においてCa原子と標準偏差(r.m.s.d)0.8オングストロームだけ異なる「砂時計形型モデル」(19)と一致する、同一の構造的中核を持っていたことを特定する可能性があった(図3)。SoPIP2;1は緑で示され、牛のAQP0(16)(白)、AQP1(13)(灰色)である。同様に、N端末側終端でAsn-Pro-Alaアクアポリンの典型的なモチーフをもつ、ループB(細胞質)およびE(細胞外)によって形成された半‐螺旋は、細胞膜の反対側からチャンネルへ折り重なりともに、第7の膜貫通領域をいっしょに作りだすが、それは構造上完全に保存されている。7つの水分子が、SoPIP2;1チャンネルの内に観察され(図3)、連続した完全な水ネットワークが、それぞれの水の間の最大距離、たった3.1オングストロームである孔を通じて、ほぼ完全に伸びていることを明らかにした。アクアポリンのDループ或いはその部分は、アクアポリンの閉じたコンフォーメーションを含んでいる。Dループ或いはその部分は、開閉ドアのような開閉機構を含んでいる。この点で鍵となる残基は、SoPIP2;1の中のループDのLeu197に完全に保存されており、チャンネルの入口近くのキャビティーに挿入され、His99,Val104およびLeu108(図4b)と結合して、孔を閉鎖する疎水性の障壁を作り出す。HOLE(23)を用いたチャンネンル幅の計算では、Leu197の約1.4オングストロームの直径の狭孔と、Pro195とVal194近くの0.8オングストロームの更なる狭孔とが確証された(図4)。これは、SoPIP2;1狭窄領域(9)内にある2.1オングストロームの最小の孔径に匹敵し、水の通過を可能にするには不十分である。ループDとLeu197はまた、特定の生化学の信号に応じたチャンネル開口または閉鎖の分子機構を理解する鍵でもある。図4bおよびcでは、6.4オングストローム分離された2つの水分子が、Leu197に会合した疎水性障壁の一方側面において見られ、これらのひとつが、His99とPro195の主鎖の酸素へH-結合を形成する。ループDの中の構造変化が、Leu197、Pro195およびVal194を付随的に置き換えれば、その後、細胞質へ伸びる2つの水分子間の経路は開くだろう。狭窄領域の2.1オングストロームの孔径との類似性は、わずか1.3オングストロームによるこれらループD残基の置換が、チャンネルを開くのに十分であることを示唆する。アクアポリンの調節(1、2、21)および抑制(24と25)に2価カチオンが役割を果たしているだろうことが自明のものとして仮定される。図2および3において、重金属(図6において紫に色付けされたもの、異常分散差密度マップで示している)は、ループDの近くで観察され、このイオンの追加が、結晶の性質を改良していることから、Cd2+として割り当てられる。Cd2+は、別の2価カチオンと生体内で取り替えられてもよく、同様の構造モチーフ(26)の検索から、13PDBの入力がCa2+を包含することを明らかにした。そのため、我々は、この金属結合サイトが、生体内でCa2+を結合しているだろうと仮定する。このサイトは調整に関連があるとされる。というのも、短いN末端(図3)のα‐ヘリックス上で、イオン相互作用およびH-結合(図5a)を伴うネットワークを通って、ループDを固着させる役目をするからであり、したがって、SoPIP2;1を観察してループDの特異なコンフォーメーションの定義することは、決定的に重要な意味を持つように思われる。具体的には、ループDのArg190およびAsp191は、3つの水分子を含むH‐結合ネットワークを通じてArg118(PIPで厳密に保存された)およびGly30の側鎖に接続される。Arg118は、Cd2+イオンを結紮するGlu31(PIPで厳密に保存された)へのH-結合を順々に形成する。(図5a)保存された燐酸化部位Ser115の水酸基もまた、顕著にGlu31へのH-結合を形成する(図5b)。したがって、Ser115の水酸基酸素上への燐酸基の共有結合が、Glu31のコンフォーメーションを著しくかき乱すことは明白であり、それが、水が決定的に媒介している、Arg118からArg190およびAsp191までのH‐結合ネットワークの分裂をもたらすであろう(図5a)。この固着ネットワークの分裂が大いにループDのコンフォーメーションを変更し、また、その結果生じる構造変化が、Leu197,Pro195およびVal194を置き換るのに十分であり、かつそのために細胞質からのアクアポリン・チャンネルへの入り口のプラグを引き抜くのに十分であろうことを我々は、提案する。この置換が、ループDが、多少AQP0およびAQP1のそれ(コンフォーメーション)に多少近づくようなコンフォーメーションを選ぶ結果となる可能性さえありうる(図3)。
【0033】
反対に、Ser115が燐酸化され、水チャンネルが開いている場合、(厳密に保存された) His193のプロトン付加が、チャンネルを閉じる(4)。pH規制されたPIPゲーティングの機構もまた、SoPIP2;1の構造から現れる。図5cでは、His193のコンフォーメーションを示している。His193のプロトン化が生じる低いpH値では、ヒスチジン側鎖(図5c,光灰色)の単純な回転によってAsp28(AspかGluのいずれかとしてPIPに保存された)への塩橋を形成することができるだろう。この方法では、H-結合がN末端上にあるループDのアンカーと媒介し(図5a)、回復されるだろう。この点、我々はSer115燐酸化が失われると提案する。そのような、低いpH値におけるSoPIP2;1を燐酸化したSer115の構造は、ここでの報告と類似するものと予想でき、ループDおよびLeu197,Pro195,Val194によって頂部を覆われているアクアポリンの細胞質側で、効果的に水チャンネルを閉鎖する。
【0034】
アクアポリン調節のための構造的な骨組みもまた、Ser274(PIP2同族体に保存された)の燐酸化を考慮する場合に提案されてよい。しかしながら、このケースでは、Ser274はCd2+サイトから離れている。代わりに、Ser274は、四量体の4層軸の方へ伸びて、隣接したモノマーのPro199の主鎖の窒素と相互作用するSoPIP2;1のC‐末端領域に位置する(図2b、5d)、ループDの最終残基である。Ser274が、燐酸化されれば、そのとき、この相互作用は大いに影響され、ごく近傍のリン酸塩の4つの陰性電荷がクラスターを生成し、C‐末端領域の重要な構造変化を引き起こすであろう。アクアポリン四量体中の別のモノマーのループDの中の残基を備えたモノマーの1つであるSer274間の相互作用もまた、ホモ四量体内のモノマーの組織化された調節を示唆する。
【0035】
SoPIP2;1の閉じたコンフォーメーションは、開閉機構および閉じたコンフォーメーション中の特定のアミノ酸の位置の識別にとって極めて重大であり、以前の生化学及び遺伝の実験が、ゲーティングにとって重要であったといってよく、閉じた構造がどのように安定させられ、また不安定にさせられるかを直接に示唆するものであった。
【0036】
第2の側面において、本発明は、蛋白質構造データバンクID:1Z98で寄託された座標によって特徴づけられる原子構造をもつアクアポリン、および寄託された前記原子構造の座標から計算された位相に関する。当業者であれば、蛋白質構造データバンクに寄託されたID:1Z98の使用により、1以上分子構造的技術との組み合わせにおいて、新しいアクアポリンやアクアポリンへの抑制剤のような結合剤を、抑制剤を修正するかの如く、容易に開発することができる。
【0037】
前記アクアポリンの公開された単離されたアクアポリン結晶構造も、前記結晶を特徴づける座標と同様、前記前記アクアポリンの閉じたコンフォーメーションを安定させ、及び/または不安定化させる結合剤やリガンドの選別や、閉じたアクアポリンの相同モデルを作出するために用いてもよい。他の用途としては、例えばコンピューター内での技術による、結合剤(リガンド)の同定または前記アクアポリンの開閉機構に影響を与える少なくとも1つの遺伝子組み換えの検証である。いま一つの用途は、農作植物のような遺伝子組み換えの植物の開発である。
【0038】
従って、水チャンネルは、アフリカツメガエル卵母細胞中の異種過剰発現によって機能的に特徴づけられる。その方法は、参照1および2に詳細に述べられている。卵母細胞は、低い内因性の透水性を持ち、アクアポリンにより呈される透水性のどんな増加での検出が認められる。この組織において、AQP1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9及び10は、貧しい水チャンネルが乏しいと考えられるAQP0,6と比較すると、高透水性を持っている (表1;またCastle NA, Drug Discov. Today. 2005, 10, 485-93も参照。)。機能が乏しいか、機能がない水チャンネルによる変調によっては、少ない効果しか期待しうるか、或いは全く効果が期待できないので、高透水性を備えたAQPsは、閉じたコンフォーメーションを安定させて及び/または不安定にする結合剤、リガンド、第一の対象である。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明は、前記アクアポリンをどのように生産するかの方法にも関する。その方法は、前記アクアポリンを用意し、前記アクアポリンにリガンドを加え、結晶を生産し、前記アクアポリンの細胞質側にリガンド結合を持つアクアポリンを得るというステップを含むものであり、前記リガンドは、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/または減じるものである。方法は、実施例において述べられる。
【0041】
単離されたアクアポリンを使用する方法
発明された単離されたアクアポリンは、閉じたコンフォーメーションを有し、前記アクアポリンの閉じたコンフォーメーションは、上記で定義したように前記アクアポリンへの結合リガンドによって得られ、前記原子構造と同様に、前記結晶は、いくつかの応用で用いられているかもしれない。例えば、前記アクアポリンの閉じたコンフォーメーションを安定させ、及び/または不安定化させる結合剤(リガンド)の選別、PDB ID:1Z98で寄託した座標によって定義される閉じた構造を基にした閉じたアクアポリンの相同モデルの作出、真核生物か原核生物のアクアポリンの相同モデルの分子動力学シミュレーションの作出、例えばコンピューター内での技術による、結合剤(リガンド)の同定または前記アクアポリンの開閉機構に影響を与える少なくとも1つの遺伝子組み換えの検証、農作植物のような遺伝子組み換えの植物の開発である。
【0042】
別の側面によれば、本発明は、結合剤(リガンド)を得る方法に関し、下記を含む:多くの上記定義したアクアポリンまたはそれ自身の部分を固体担体上に付着させ、配列を得る。
【0043】
;前記配列に多くの作用物質を加える。;前記作用物質が前記アクアポリンまたはそれ自身の部分と結合することを許し、前記アクアポリンまたはそれ自身の部分と結合していない前記作用物質を取り除き、前記アクアポリンまたはそれ自身と結合している前記作用物質を同定して、入手する。ある側面においては、開いたコンフォーメーションを持つ多くのアクアポリンを付着させ、次に、閉じたコンフォーメーションを持つアクアポリンでのステップと同様の操作を行なうなどの1ステップ以上が用いられもよい。そのようなステップを加えることによって、開いたコンフォーメーションを持つアクアポリンに結合するこれら(作用物質)から、閉じた反対‐コンフォーメーションを持つアクアポリンと結合する、作用物質を区別することが可能となる。最も一般に用いられている検定は、ハイスループットアッセイである。ハイスループットスクリーニングの能力は、新規化合物をテストするために利用され、本発明のアクアポリンと相互作用する能力を識別し、或いは設計する。(ハイスループットスクリーニングに関する一般的情報としては、例えば、Marcel Dekker;米国特許番号5,763,263を参照のこと。)。ハイスループットアッセイは、通常、1つ以上の異なる検定技法を用いるが、下記に述べるように、制限されない。前記固体担体は、任意の固体担体でよい。例えば、カラム、配列、細胞膜、サンドイッチ・アッセイ、競合的或いは競合アッセイ、ラテックス凝集アッセイ、均質アッセイ、ミクロの滴定濃度のプレート・フォーマットおよびマイクロ粒子ベースドアッセイ。
【0044】
アクアポリンは、例えば共有結合、疎水的相互作用及び/またはイオン相互作用によって担体と結合してもよい。作用物質の数は、異なる作用物質、天然、合成、半合成、あるいはそれらの混合物自体及び有機化合物と混合物であってもよい。作用物質がアクアポリンと結合する機会を持った後、結合しなかった作用物質は、例えば、TRIS、PBSあるいはMOPSのような緩衝剤水溶液を使用して洗うなどの方法で、取り除かれる。結合しなかった作用物質を取り除いた後、結合している作用物質は、例えば、NMR、MS或いは単クローン抗体のような抗体を行うことで、識別が行われる。抗体はいろいろな状態の中で標識付けすることができ、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA);ラジオイムノアッセイ(RIA);蛍光免疫検定法(FIA);化学発光免疫測定法(CLIA);またコロイド金粒子(免疫金)で抗体にラベルを付けることが含まれる。
【0045】
更なる側面によれば、本発明は、アクアポリン結合剤を得る方法に関し、これには上記で定義した原子座標や、アクアポリンと相互作用する作用物質を決定し、前記アクアポリン結合剤を同定し、入手する、少なくとも1つ分子構造技術を用いることを含む。
【0046】
そのような方法はまた、上述のごとく、例えば、開いたそのアクアポリンが、異なるタイプのアクアポリンの一つまたは両方と結合する作用物質かを区別するため、閉じたコンフォーメーションを持つアクアポリンでのステップと同様の操作を行なうなどの、1以上の追加ステップを含んでいてもよい。分子のモデルリングについての基本的な情報については、例えば、M. Schlecht, Molecular Modelling on the PC, 1998, John Wiley & Sons; Gans et al., Fundamental Principals of Molecular Modelling, 1996, Plenum Pub. Corp.; N. C. Cohen (editor), Guidebook on Molecular Modelling in Drug Design, 1996, Academic Press; and W. B. Smith, Introduction to Theoretical Organic Chemistry and Molecular Modelling, 1996.を参照のこと。分子構造技術は、MOSFLM、SCALA、MOLREP、REFMAC5、NCSREFおよびCNSのうちの1つであろう。
【0047】
更なる側面によれば、本発明は修正された作用物質を得る方法に関し、これには、上記で定義された原子座標や、作用物質のアクアポリンとの相互作用を修正する手段の決定のための、少なくとも1つの分子のモデルリング技術の使用、ステップ(a)で得られた決定に基づいた前記作用物質の修正と、修正された作用物質の生産と入手を含む。作用物質の修正は、官能基の追加、削除、修飾或いは置換でもよい。使用できそうなソフトウェアがいくつか存在し、次のものを含む; GRID (Goodford, P. J., "A Computational Procedure for Determining Energetically Favourable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules" J. Med. Chem., 28, pp. 849-857 (1985))。
【0048】
様々な官能基特性を備えたプローブと巨大分子の表面の間の起こりうる相互作用部位を決定するプログラムである、GRIDのようなソフトウェアは、類似の遮断タンパク質或いは化合物の構造を決定する表面サイトを分析するために使用される。GRID計算は、プローブとしてグループとして分子の適当な遮断グループ(例えばプロトン付加した第一アミン)が、適切なエネルギー等高線で接近できる位置のまわりの潜在的なホットスポットを識別するために使用される。GRIDは英国オックスフォードのオックスフォード大学から利用可能である。
【0049】
MCSS (Miranker, A. and M. Karplus, "Functionality Maps of Binding Sites: A Multiple Copy Simultaneous Search Method." Proteins: Structure, Function and Genetics, 11, pp. 29-34 (1991)).MCSSはマサチューセッツ州バーリントンのMolecular Simulationsから利用可能である。
【0050】
AUTODOCK (Goodsell, D. S. and A. J. Olsen, "Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing" Proteins: Structure. Function, and Genetics, 8, pp. 195-202 (1990)).AUTODOCKは、カリフォルニア州ラ・ホーヤのスクリプス研究所から利用可能である。
【0051】
DOCK (Kuntz, I. D. et al, "A Geometric Approach to Macromolecule-Ligand Interactions" J. MoI. Biol., 161, pp. 269-288 (1982)).
プログラムDOCKは、活性部位やリガンド結合部位を分析し、かつ相補的な立体的性質を備えたリガンドを提示するために使用しうる。DOCKは、カリフォルニア州サンフランシスコのカリフォルニア大学校から利用可能である。
【0052】
一旦適切な化学成分、化合物あるいは作用物質が選択されたならば、単一リガンドか化合物か、或いは抑制剤か活性剤かを組み立てることができる。組み立ては、類似体を持つアクアポリン及び/またはその複合体の原子座標に関してのコンピューター・スクリーンに表示された立体画像上での互いのフラグメントの関係の目視検査によって進めてもよい。その後、QuantaやSybylのようなソフトウェアを使用する、マニュアル・モデル構築が、これに続くだろう。
【0053】
個々の化学成分、化合物あるいは作用物質の関連について、当業者の助けとなる有用なプログラムは含まれるが、以下に制限されるものではない;
CAVEAT (Bartlett, P. A. et al, "CAVEAT: A Program to Facilitate the Structure-Derived Design of Biologically Active Molecules". In molecular Recognition in Chemical and Biological Problems", Special Pub., Royal Chem. Soc., 78, pp. 82-196 (1989)).
活性基の仮説をテストし、スクリーニング化合物を選ぶための三次元データベースを検索するため、いくつかの手法が利用できる。これらは、CAVEAT(Bacon et al. J. MoI. Biol., 225 : 849-858 (1992))を含み、活性サイトに既に位置していたどの番号の化学のフラグメントでも接続させる「スペーサー」として働くことができる環式化合物のデータベースとして使用する。これは、当業者の一人が、堅固な結合のために必要な、既知の或いは疑っているフラグメントを接続する数百のやり方を、即座に発生することを可能にする。CAVEATはカリフォルニア州バークレーのカリフォルニア大学から利用可能である。
【0054】
MACCS-3D (カリフォルニア州サンリアンドロのMDL Information Systems)のような3Dデータベース・システム。この分野はMartin, Y. C, "3D Database Searching in Drug Design", J. Med. Chem, 35, pp. 2145-2154 (1992)で概説される。
【0055】
HOOK (マサチューセッツ州バーリントンのMolecular Simulations, から利用可能)。
【0056】
本発明のアクアポリンの結晶は、情報を得るために、上記方法を含むいくつかの目的に使用されてもよく、アクアポリンを修正すると同様に、化合物を識別するために使用することができる。閉じたアクアポリンの構造を得ることによって、ゲーティングを修正した特定構造の知識を使用することも可能になるであろう。これは、植物において、例えば、乾燥ストレスに対するストレス耐性を改良するために、アクアポリンの直接の遺伝子工学によって行うことができる。哺乳類種では、アクアポリンの閉じた、或いは開いたコンフォーメーションを安定させる医薬品が、SoPIP2;1の閉じたコンフォーメーションに基づいて、設計することができる。そのような抑制剤および活性剤は、例えば制汗薬などの候補医薬品や薬用化粧品である。
最後の側面において、本発明は、アクアポリンのコンフォーメーションを閉じるリガンドの使用に関する。使用に用いるリガンドは、上で定義され、言及されている。
【0057】
以下、実施例で、発明を説明するつもりだが、制限されるものではない。いかなるやり方、形状或いは形式についても。明示的にも黙示的にも。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
メタノール代謝酵母の発現(参照28に詳述)
SoPIP2;1 cDNA (GeneBank受入番号L77969)は、当初、フォワードプライマーEcoRI-YPM28A(5'-CGGAATTCAAAATGTCTAAGGAAGTAAGT-3')およびリバースプライマーPM28A REV (5'-GAAGATCTTTAATTGGTAGGGTTGCT-3')を使用して増幅された。フォワードプライマーにはEcoRl制限部位(下線部)および酵母読始コドンを持っている。リバースプライマーはPM28AおよびBglII制限部位(下線部)の後にオリジナル停止コドンを持っている。PCR生成物はpPICZB(Invitrogen社)でクローン化された。また、得られたプラスミドpPM28A-PICZの配列を決定した。
【0059】
PM28A構成物は、野生型メタノール代謝酵母株X-33(Invitrogen社)に形質転換され、免疫染色(TetraHis抗体、Qiagen社)に照らして最も高い発現を備えた形質転換体が選択され、大規模に育てられた。
【0060】
(実施例2)
SoPIP2;1の精製(参照28,36に詳述)
前記の株は、3Lの発酵槽で成長させ、24時間のメタノール誘導の後、典型的には230g wet cells/L得られた。破砕の前に、細胞は、破壊緩衝剤(50mMリン酸カリウム、pH 7.5、5%のグリセロール)中で再懸濁され、液体窒素中で凍らせ、X‐プレスを用いて破砕された。破砕されなかった細胞は、4℃、10000g,30分で集められた。前記10000 g浮遊物は、更に4℃、100 000 g,1.5 時間で遠心分離機にかけられ、膜画分を集めた。
【0061】
表在性膜蛋白質と細胞膜に付着する蛋白質は、尿素(4M尿素、5mM Tris-HCl、pH 9.5、2mM EDTA、2mM EGTA)/アルカリ(20mM NaOH)処理によって取り除かれた。細胞膜はそれぞれのバッファーで洗浄され、上述の各洗浄後に、遠心分離によって集められた。SoPIP2;1は、30分間室温でバッファーA(20mM HEPES-NaOH、pH 7.0、50mM NaCl、10%のグリセロール、2mMβ-メルカプト・エタノール)中の5%のOG(Anatrace社)で可溶性にされた。溶性物質は、4℃、160000g, 30minで集められた。可溶性物質は、Resource Sカラム(20mM HEPES-NaOH、pH 7.0、1%OG)、引き続きSuperdex 200カラム(20mMTris-HCl、pH 7.5、100mM NaCl、1%OG)に装着された。
【0062】
(実施例3)
結晶化
精製されたサンプルは、VivaSpin 20濃縮装置(cutoff MW 10 kDa、VivaScience社)を用いて、最終濃度15mg/mlに濃縮された。
【0063】
結晶は懸滴蒸気拡散技術によって得られた。1 :1のサンプルは、0.1M Tris-HCl pH 8.0、30%PEG400及び0.1 M NaClを含む貯蔵所溶液と1:1で混合された。0.1M CdCl2は1:10の割合で滴下された。
【0064】
結晶化装備は4℃の熱平衡で放置した。数日の内に結晶が出現し、1週以内に最大寸法0.1μmに達した。結晶は、更なる凍結防止作業をすることなく、液体窒素で直接凝固された。
【0065】
X線回折データ収集:2.1オングストローム分解能に設定された完全データが、スイスのSwiss Light Source (SLS)ビームラインX06SAで-80℃における冷凍結晶から集められた。 イメージデータはMOSFLMを使用して処理され、CCP4スーツ(29)のSCALAを使用して量られた。結晶は、非対称ユニットにおいて2つの分子を備えた空間群14に帰属する。細胞寸法は、a=b=90.0オングストローム, c=188.9 オングストロームである。
【0066】
座標によって特徴づけられた原子構造、蛋白質構造データバンクID:1Z98で寄託されている。
【0067】
【表2】

【0068】
(実施例4)
分子置換&構造的改善
分子置換は、モデルとして牛のAQP1(PDB登録1J4N)の座標を備えたCCCP4iプログラムスーツからのプログラムMOLREPを使用して実行された。分子置換検索で、2部のモデルを使用すると、相関係数とR因子がそれぞれ34.3%と53.1%の明確な解答が見つかった。結晶充てんは、プログラムO(30)を使用して、チェックされ、分子間の知重複はなかった。自動モデル構築はARP/WARP(31)を用いて実行され、得られたモデルは、GUISIDE2を用いて、正確な配列に連結された。この段階で既に、計算された電子密度マップは非常によい品質だった。水分子はARP/WARPの使用で、選別された。モデルは、REFMAC5(29)、NCSREF(29)およびCNS(32)による多重段階の洗練を受け、各段階の間には、Oによるマニュアル再構築を挟んだ。改善中に、非対称の単位(分子AおよびB)で2つの分子間のNCS拘束が使用された。現行モデルは、分子A、Bと200の水分子に対し、251の残基(24-274)と1つのCd2+を各々含んでいる。R因子とRfreeはそれぞれ18.1%と20.8%である。構造の品質はPROCHECK(33)でチェックされた。
【0069】
Cd2+の割り当て:単一金属結合部位は、異常分散差密度マップ(図6)の中で主要ピーク(10.0σでも可視)として明白に観察され、予定された配位特性である2価カチオンであると確認された。結晶への0.1MCdCl2の追加が、分解能3.7オングストロームから2.1オングストロームへの回折へと改良されので、我々はさらにCd2+としてこの陽イオンを割り当てた。この割り当ては、洗練の後、Cd2+に対する29.8のオングストローム二乗のB因子を回復することにより正当化された。すなわち、その2つのタンパク質リガンドの側鎖のそれ(B因子)と類似している(平均B因子27オングストローム二乗)。SPASM(34)を使用した、類似の結合サイトの検索は、13のヒットをもたらし(PDB登録1BQQ; 1CGE; 1CGL; 1HY7; 1JK3; 1M31; 1MMQ; 1MNC; 1Q3A; 1RM8; 1RMZ; 1ROS; 830C)、Ca2+結合サイトを含み、また、他の金属は見つからなかった。従って、我々は、Cd2+結合サイトは、生体内ではCa2+でありそうだという同定を行う。
【0070】
(実施例5)
チャンネルの特徴づけ
HOLEパッケージ(23)はSoPIP2;1に対して孔径を計算するために使用された(図4)。
【0071】
このパッケージでは、2.1オングストロームの孔径は、狭窄領域で回復され、明らかに水の粒子の有効径より小さい。この矛盾は、概算で仮定した球状の孔の平均径をHOLEが正当に評価することで解消される。
【参照文献】
【0072】
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【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、選択されたアクアポリン間の配列比較を示す。植物、動物およびバクテリアからの選択されたアクアポリンSoPIP2;1の間の配列比較は、矢印で示され、PIPまたは PIP2間の重要な保存残基は、SoPIP2;1の対応する残基の番号とともに、一番上で示される。At,シロイヌナズナ; Zm,トウモロコシ; Pa,ドイツトウヒ; Pp,ニセツリガネゴケ; So,ホウレンソウ;Hs,ヒト; Bt,ウシ; Gg,セキショクヤケイ; Xl,アフリカツメガエル; Ec,大腸菌。
【図2】図2は、SoPIP2;1四量体の構造を示す。四量体の細胞外側からみたSoPIP2;1(a)と、前記四量体の内側からみた2つの単量体。水分子の酸素部位およびCd2+イオンは、赤および紫の球体としてそれぞれ示される。
【図3】図3は、真核生物のアクアポリンの構造比較を示す。APQ0(軽い灰色)、AQPl(灰色)およびSoPIP2;1(緑)のオーバーラップ。His193およびLeu197を持つDループは、SoPIP2;1中の孔を閉鎖している;そこでAPQ0とAQP1のDループは、Ser274で終わるSoPIP2;1中のC末端領域と同じ空間を占めている;Cd2+イオンは図の左下にある紫の球体によって示されている。
【図4】図4は、SoPIP2;1の閉じたコンフォーメーションの描写を示す。SoPIP2;1の閉じたコンフォーメーションの描写。a,孔の境界をじょうご状の灰色のドットとして図示したHOLEを用いて計算された、SoPIP2;1(緑)の閉じたコンフォーメーションの孔径。b,Leu197,Pro195およびVal194によって特徴づけられるループDのゲーティング領域近傍の孔の接近図。
【図5】図5は燐酸化とpHによるSoPIP2;1制御のサイトにおける電子密度を示す。SoPIP2;1に対する燐酸化およびpHによる制御のサイトにおける電子密度。a, Cd2+イオン(紫)と、Arg118からループDのArg190とAsp191を経由し、Gly30とGlu31を連結するH-結合のネットワークの位置を示す、2価カチオン結合サイトの接近図。b, Glu31へのH-結合として図示された燐酸化残基Ser115の接近図。c,Hisl93の接近図。プロトン化した場合、His193(灰色)に対する別のコンフォーメーションが、Asp28への塩橋を形成することで、選択されることもありうる。d, SoPIP2;1四量体のモノマー近傍のPro199とLeu200と接触するSer274の電子密度。全ての2Fobs-Fcalcマップは、1.0シグマの曲線をつけてつくられている。
【図6】図6は、Cd2+イオンによる異常分散差密度マップを示す。単一金属の位置を図示した特異的密度マップ。a,長距離視野のマップ。b, 割り当てられたCd2+結合サイトの近傍のマップの接近図。このマップは、5シグマの曲線をつけてつくられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合リガンドを有する単離されたアクアポリンであって、前記リガンドが、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/若しくは減じる、単離されたアクアポリン、並びに/または蛋白質構造データバンクID:1Z98として寄託された座標によって特徴づけられる、閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの高解像度構造を有するアクアポリン。
【請求項2】
前記リガンドが、細胞質的に及び/または非共有結合的に結合するリガンドである、請求項1に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項3】
前記リガンドが2価カチオンである、請求項1または2に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項4】
前記リガンドが、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びMn2+からなる群より選ばれる、前記いずれかの請求項に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項5】
前記アクアポリンが、少なくとも50μm/sのPf値を有する、前記いずれかの請求項に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項6】
前記アクアポリンが真核生物のアクアポリンである、前記いずれかの請求項に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項7】
前記アクアポリンが、人間、動物または植物アクアポリンからなる群より選ばれる、請求項6に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項8】
前記アクアポリンが、ほうれん草、綿、甜菜、シロイヌナズナ、トウモロコシ、米、小麦、大麦およびオートミールからなる種の群より選ばれる、請求項7に記載の単離されたアクアポリン。
【請求項9】
蛋白質構造データバンクID:1Z98で寄託された座標によって特徴づけられる原子構造をもつ、閉じたコンフォーメーション状態の単離されたアクアポリンの結晶。
【請求項10】
下記段階を含む、閉じたコンフォーメーションを持つ単離されたアクアポリンの生産方法。
a)前記アクアポリンの準備
b)前記アクアポリンへのリガンドの添加
c)結晶の生産
d)前記アクアポリンに対してリガンド結合を持つアクアポリンの獲得、なお、前記リガンドは、前記アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざして、前記アクアポリンの水輸送を抑制し、及び/または減じるものである。
【請求項11】
前記リガンドが2価カチオンである、請求項10に記載の生産方法。
【請求項12】
前記リガンドが、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びMn2+からなる群より選ばれる、請求項10〜11のいずれかに記載の生産方法。
【請求項13】
前記アクアポリンが真核生物のアクアポリンである、請求項10〜12のいずれかに記載の生産方法。
【請求項14】
前記アクアポリンが、人間、動物または植物アクアポリンからなる群より選ばれる、請求項13に記載の生産方法。
【請求項15】
前記アクアポリンが、ほうれん草、綿、甜菜、シロイヌナズナ、トウモロコシ、米、小麦、大麦およびオートミールからなる種の群より選ばれる、請求項14に記載の生産方法。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれかに記載の製造方法によって得られる、蛋白質構造データバンクID:1Z98として寄託された座標によって特徴づけられる原子構造を含む、閉じたコンフォーメーションを持つ単離されたアクアポリンまたは単離されたアクアポリンの結晶
【請求項17】
請求項1〜8記載の単離されたアクアポリンまたは請求項9記載の結晶若しくは請求項9記載の原子構造の使用。
【請求項18】
閉じたコンフォーメーションの前記アクアポリンを安定化及び/若しくは不安定化させる結合剤、リガンドを選別するため、または閉じたアクアポリンの相同モデルを作出するための請求項17記載の使用。
【請求項19】
請求項9の座標によって定義される閉じたアクアポリンの高解像度構造に倣って作出する真核生物または原核生物のアクアポリン相同の、相同モデルの分子動力学シミュレーションについての請求項17記載の使用。
【請求項20】
コンピューター内での技術などによる、結合剤の同定または前記アクアポリンの開閉機構に影響を与えることのできる、少なくとも1つの遺伝子組み換えの検証についての請求項17記載の使用。
【請求項21】
農作植物などの植物の遺伝子組み換えの開発についての請求項17記載の使用。
【請求項22】
アクアポリンのコンフォーメーションを閉ざす、結合リガンドの使用。
【請求項23】
前記リガンドが2価カチオンである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記リガンドが、Cd2+、Ca2+、Mg2+及びMn2+からなる群より選ばれる、請求項23に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−507828(P2009−507828A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529958(P2008−529958)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001036
【国際公開番号】WO2007/030071
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508073748)
【氏名又は名称原語表記】KJELLBOM, Per
【住所又は居所原語表記】Soderang, Martens Falad 102, S−225 92 Lund, Sweden
【出願人】(508073760)
【氏名又は名称原語表記】HEDFALK, Kristina
【住所又は居所原語表記】Iskallareliden 3B, S−416 55 Goteborg, Sweden
【出願人】(508073771)
【氏名又は名称原語表記】TORNROTH, Susanna
【住所又は居所原語表記】Norra Agatan 5E, S−416 49 Goteborg, Sweden
【出願人】(508073483)
【氏名又は名称原語表記】EKEROT, Maria
【住所又は居所原語表記】Ulrikedalsvagen 17D, S−224 58 Lund,Sweden
【出願人】(508073782)
【氏名又は名称原語表記】JOHANSSON, Urban
【住所又は居所原語表記】Skyttelinjen 115, S−226 49 Lund, Sweden
【出願人】(508074066)
【氏名又は名称原語表記】NEUTZE, Richard
【住所又は居所原語表記】Hagenstationsvag 22, S−426 71 Vastra Frolunda, Sweden
【Fターム(参考)】