説明

閉扉検知機構

【課題】 閉扉を確実に検知でき、すなわち作動の信頼性が大きく、しかも耐久性に優れた閉扉検知機構を提供する。
【解決手段】 、錠箱のフロント板を貫通するようにして、フロント板4に垂直な前後方向に移動可能に案内されたトリガー杆5を設け、錠箱3内に固設された検磁素子7に対し、永久磁石9を検磁素子7に近接する方向に付勢すると共に、同方向に移動できるように案内し、開扉時には作動レバー11により永久磁石9を検磁素子7から離間する位置に係止し、閉扉時、トリガー杆5の錠箱内に押し込まれる動きを利用して永久磁石9の係止を解いてこれを検磁素子7に密着させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気錠の錠箱などに装着される閉扉検知機構(以下単に閉扉検知機構という)に係り、特に、閉扉を確実に検知でき、しかも耐久性に優れた閉扉検知機構に関する。
【背景技術】
【0002】
閉扉検知機構とは、扉が完全に閉まったことを電気信号として取り出すもので、通常は電気錠の機能の一部として構成する場合が多いが、機械的なシリンダ錠を備えた錠箱にも勿論装着することができる。
【0003】
上記閉扉検知機構は、例えばビルの管理室に設けた場合、管理室に居ながらにして、多数の部屋の閉扉状態を一目で見ることができ、ビル管理上大変に便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−037355
【特許文献2】特開平11−111115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の閉扉検知機構は、例えば特許文献1に記載されたものは、錠箱内のフロント板近傍に配設されたリードスイッチなどの検磁素子10と、閉扉時この検磁素子10に近接する扉枠の部位に装着された永久磁石13とを備え、閉扉時検磁素子10に近接する永久磁石13の磁束により検磁素子を駆動し、この検磁素子からの出力信号を閉扉信号とする。
【0006】
また、特許文献2に記載されたものは、扉側に装着された枠箱1内に、自由端に第1の永久磁石を備えた作用レバー5の基端を回動自在に配設し、他方、閉扉時第1の永久磁石3が近接する扉枠の部位に、第1の永久磁石3と反発する第2の永久磁石4を設け、閉扉時相互に近接することによって生じる磁気反発力を利用してマイクロスイッチ2を駆動し、その出力信号を閉扉信号とする。
【0007】
これらの閉扉検知機構は、夫々実用されているが、永久磁石およびリードスイッチなどの検磁素子は夫々磁束密度及び感度に個体差があり、特に磁束密度は扉と扉枠との間の間隙(チリ)寸法の自乗に反比例して減少することから、その作動が不安定で信頼性に欠ける、等未だ改良の余地がある。
【0008】
そこで、この発明は、閉扉を確実に検知でき、すなわち作動の信頼性が大きく、しかも耐久性に優れた閉扉検知機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、この発明は、錠箱のフロント板を貫通するようにして、フロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されたトリガー杆を設け、一方、錠箱内に検磁素子を固設し、この検磁素子の前面側に、一端部を第1回転軸により錠箱の側板に回動可能に支承され、他端部に永久磁石を装着すると共に、この永久磁石が検磁素子に近接する方向に付勢された作動レバーを配設し、他方、上記作動レバーの一端部とトリガー杆の錠箱内の部分とに跨る連結レバーを設け、この連結レバーを、その中央部を通る第2回転軸の周りを回動可能に支承すると共に、その一端をトリガー杆に、他端を作動レバーの一端部の第1回転軸近傍に夫々係合させ、トリガー杆がフロント板から突出しているとき、連結レバーの他端部が作動レバーの一端部を検磁素子側に押動して永久磁石を検磁素子から離間させ、閉扉時扉枠と係合することによりトリガー杆が少しでも錠箱内に押し込まれたとき、トリガー杆の動きを拡大して動く作動レバーの他端部を急速に永久磁石を検磁素子に近接させ、チリが大きい場合でも閉扉信号を発生させることができるようにすると共に、チリが小さい場合には、永久磁石を検磁素子に近接させた後、永久磁石を検磁素子に密着させた儘連結レバーの他端が作動レバーの一端から離間するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成されたこの発明の一実施例による閉扉検知機構は、開扉時には検磁素子に近接する方向に付勢された永久磁石を連結レバーにより検磁素子から離間するように抑圧し、閉扉時トリガー杆が錠箱内に少しでも押し込まれたとき、連結レバーの他端が作動レバーを開放してその他端の永久磁石を急速に検磁素子に近接させると共に、永久磁石が検磁素子に密着した後は、その密着状態を保持させた儘連結レバーの他端が作動レバーから離間するようにしたので、チリの大小に拘らず、また、永久磁石の磁束密度及び検磁素子の感度のバラツキに拘らず、閉扉を確実に検知できる。
【0011】
また、機構上永久磁石と検磁素子の接合部に掛かる力は作動レバーの付勢力を超えない僅かなものであるし、衝突も生じないことから、耐久性にも優れている、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による閉扉検知機構を備えた電気錠の側面図。
【図2】閉扉検知機構の要部の正面図で、トリガー杆が少し錠箱内に押し込まれた状態を示す。
【図3】図2と同様の正面図で、永久磁石が検磁素子に密着した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
錠箱内に固設された検磁素子に対し、永久磁石を検磁素子に近接する方向に付勢すると共に、同方向に移動できるように案内し、開扉時には作動レバーにより永久磁石を検磁素子から離間する位置に係止し、閉扉時、トリガー杆の錠箱内に押し込まれる動きを利用して永久磁石の係止を解くようにした。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1において符号1は電気錠のデッドボルトを、符号2はラッチボルトを夫々示し、これ等デッドボルト1及びラッチボルト2の構成及び作用は本発明の要旨ではないので、更に詳細な説明は省略する。
【0015】
錠箱3のフロント板4の近傍で、上記デッドボルト1及びラッチボルト2の間における部分にはトリガー杆5が配設されている。
【0016】
このトリガー杆5は、例えばフロント板5外に突出する部分の水平投影形状が山形の厚板材で、フロント板5を貫通してこれに垂直な前後方向(図1で左右方向)に移動可能に案内されている。
【0017】
そして、トリガーばね6の弾力により、前方(図1で左方)に突出する方向に付勢されている。
【0018】
このトリガー杆5は、閉扉時図示しない扉枠と係合して錠箱内に押し込まれ、このトリガー杆5の移動を利用して錠箱内の機能ブロックを制御するものであるが、トリガー杆5そのものの構成及び機能は周知であるから、更に詳細な説明は省略する。
【0019】
一方、上記ラッチボルト2の下方には、例えばリードスイッチなどの検磁素子7がその前面、すなわち検磁面をフロント板4の裏面に向けた状態で固設されている。
【0020】
この検磁素子7の前面とフロント板4の間の空間には、上下方向に延在し、上端部を第1回転軸8により錠箱3の側板に回動可能に支承されると共に、下端部に永久磁石9を装着した作動レバー11が配設されている。
【0021】
この作動レバー11は、第1回転軸8に卷装された捩りコイルばねとしての作動レバーばね12の弾力により、図1で反時計方向、換言すれば永久磁石9が検磁素子7に近接する方向に付勢されている。
【0022】
他方、上記作動レバーの11一端部(上端部)とトリガー杆5の錠箱内の部分とに跨るようにして、例えば上下方向に延在する連結レバー13が設けられている。
【0023】
この連結レバー13は、その中央部を通る第2回転軸14の周りを回動可能に支承されており、第2回転軸14に卷装されたねじりコイルばねとしての連結レバーばね(図面を明瞭にするため付番しない)の弾力により、図1で反時計方向に付勢されている。
【0024】
上記連結レバー13は、その一端(図1では上端)を後方からトリガー杆5に、他端を前方から作動レバー11の一端部(上端部)の第1回転軸8近傍に夫々係合させている。
【0025】
そのため、作動レバーのレバー比は大きくなっており、連結レバー13の他端の動きは作動レバー11により拡大されて永久磁石9に伝達されることになる。
【0026】
そのため、トリガー杆5がフロント板4から突出しているとき、連結レバー13の他端部が作動レバーの一端部を検磁素子7側に押動して永久磁石9を検磁素子から大きく離間させている。
【0027】
一方、閉扉時扉枠と係合することによりトリガー杆5が少しでも錠箱3内に押し込まれたとき、図2に示すように、トリガー杆5の動きを拡大して動く作動レバーの他端部が急速に永久磁石9を検磁素子7に近接させる。
【0028】
そして、トリガー杆5が更に錠箱内方に押し込まれると、図3に示すように、永久磁石9と検磁素子7とが密着するに至り、以降トリガー杆の更なる後方への移動によってもその密着状態は変化しない。
【0029】
したがって、検磁素子7からの出力信号である閉扉信号はトリガー杆5の最初の動きによって感度良く検出することができる。
【0030】
なお、開扉時には、トリガーばね6、付番しない連結レバーばね及び作動レバーばね12の弾力によって、永久磁石9と検磁素子7とは相互に離間し、閉扉信号は消失する。
【符号の説明】
【0031】
1 デッドボルト
2 ラッチボルト
3 錠箱
4 フロント板
5 トリガー杆
6 トリガーばね
7 検磁素子
8 第1回転軸
9 永久磁石
11 作動レバー
12 作動レバーばね
13 連結レバー
14 第2回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱のフロント板を貫通するようにして、フロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内されたトリガー杆を設け、一方、錠箱内に検磁素子を固設し、この検磁素子の前面側に、一端部を第1回転軸により錠箱の側板に回動可能に支承され、他端部に永久磁石を装着すると共に、この永久磁石が検磁素子に近接する方向に付勢された作動レバーを配設し、他方、上記作動レバーの一端部とトリガー杆の錠箱内の部分とに跨る連結レバーを設け、この連結レバーを、その中央部を通る第2回転軸の周りを回動可能に支承すると共に、その一端をトリガー杆に、他端を作動レバーの一端部の第1回転軸近傍に夫々係合させ、トリガー杆がフロント板から突出しているとき、連結レバーの他端部が作動レバーの一端部を検磁素子側に押動して永久磁石を検磁素子から離間させ、閉扉時扉枠と係合することによりトリガー杆が少しでも錠箱内に押し込まれたとき、トリガー杆の動きを拡大して動く作動レバーの他端部を急速に永久磁石を検磁素子に近接させ、チリが大きい場合でも閉扉信号を発生させることができるようにすると共に、チリが小さい場合には、永久磁石を検磁素子に近接させた後、永久磁石を検磁素子に密着させた儘連結レバーの他端が作動レバーの一端から離間するようにしたことを特徴とする閉扉検知機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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