説明

閉鎖性湖水に於ける浮上式シジミの養殖法

【課題】最近中国の餃子問題を始め産地偽装問題など食の安全がとりわけ求められ、食の安心安全は大きな課題となってきた。しかしわが国の食糧自給率は供給過剰気味の米の生産以外は約40%そこそこである。
【解決手段】そこで本発明はわが国各地に多く点在する遊休湖沼を有効に利活用し、高品質な淡白資源でありながら限られた産地特産品となっているシジミを手軽に毎日の食卓に載せることが出来るよう手軽な生産手段を技術的に提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
世界的な人口の急増に対して避けて通れない最も重要な案件の一つが食糧問題である。食糧問題においてその驚異的な生産量で重要なシェアを占めるトウモロコシにおいては、今アメリカでは度重なる石油ショック以後バイマスいわゆるトウモロコシを原料とするバイオエタノールへの転換が急速にクローズアップされ始めた。一方わが国においては主食の米こそ自給できるものの食糧全体では約40%の自給率に過ぎない。幸いにして全体を海に取り囲まれた我が国土の約80%は山林であり急斜面を持つ山林は豊富な河川が育ち、膨大な湖沼に恵まれている。これ等山林や河川の少ない香川県などにしても先祖からの智恵で大量の溜池が点在する。本発明はこれ等天然資源とも言うべき河川や湖沼を利用して食糧問題でもある高蛋白源とも云うべきシジミ類の養殖に関する機械的合理的技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
シジミと言えば山陰地方の宍道湖のシジミは全国的に有名である。古くは一般河川でも天然のシジミが取れたものであるが、政府の永い間の開発により天然の河川環境のほとんどはその姿を失った。セメントやコンクリートを主体とした河川改修は数千年の日時を経て形成された自然の生態系を一機に狂わし、自然界の生態系の営みは一般湖沼や河川からほとんどその姿を消した上、更に追い討ちをかけたのが最近の貿易の自由化により中国産や韓国産の安い製品が市場を押さえ国産は益々肩身の狭い市場となったものの、その反動ともいうべき世界的な保護主義貿易の台頭や、各国が個別に抱える内政問題などでやっと国産物にも人々の目が注がれ始めた今日、忘れ去られようとしていたわが国の恵まれた環境を生かし地方の各地に点在する溜池など天然の借景を利用した高蛋白源のシジミを量産する技術を提供せんとするものである。
【0003】
特産品としても有名な宍道湖のシジミ環境は特別としても、一般的にはわが国の湖沼のほとんどが利用されずに眠っているか、或いは昔から百姓の水利権などが絡んだ結果、湖沼の利用は単なる稲作用の水田利用に関する問題が大部分を占め、天然の湖沼の水による、シジミ養殖は高蛋白源と云っても、四方を海に囲まれ海洋の漁業資源に恵まれたわが国では湖沼に目を注ぐ必要性すらなかったのが実情である。しかし最近の世界は鎖国的な保護主義貿易の台頭などにより国家主義的な感触すら見え始め、今や食糧問題は地政学的にも戦略物資となる傾向が顕著となり、昨今のように世界中から自由に食料を調達してきた平和ボケした現状から一時も早く脱却し、食料の国産自給率を上げる必要性があり、地球温暖化問題など天候の異変や食糧問題に関する国際間の摩擦など、今や食糧の量産技術は貴重な資源確保の点からも重要な問題である。
【0004】
【特許文献】 先願調査をしてみたものの先願調査は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は高蛋白源であり国民には馴染まれ且つ味覚も抵抗の無いシジミを各地に存在する天然の湖沼を生かすことによって、計画的に量産し地域の活性化に繋げようとするものである。シジミは当然生物の一種であり、生物である限り成長の過程では必然的に餌を必要としその餌は天候や水質にも大きく影響されるものであるが、幸いにしてシジミは河川でも湖沼でも水分さえあればシジミの餌は植物性プランクトンや珪藻類や有機懸抱濁物(デトリタス)等を餌としている為、養殖にはほとんど人手を必要としない。その上シジミの持つたんぱく質は、全ての必須アミノ酸を含むため酒を飲んだ翌朝や、外食による脂肪系の食事が続く接待の多い会社人間にとっては、解毒作用を持つシジミ汁は天然の特効薬であり肝臓の早期快復にも大きな効果が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は[図1]に示すように
ダムや湖沼の片隅に、シジミ養殖棚の流出防止並びに湖沼に浮遊する無用の粗ゴミや浮遊物を選別する為の微細な気孔を開けた仕切り版、いわゆる浮遊物濾過用の浮揚物質遮蔽板2を二枚を並立させ、図1のように浮揚物質遮蔽板2を二枚並立型に並べその間には汚泥やシジミ糞などの排出用のコンベア、即ち汚泥搬出用ベルト4を走らせ、その排出物は汚泥搬出用ベルト4により湖沼外に排出貯留後、ヘドロ5として処理する。二枚の濾過用並立板にはそれぞれ気孔の目詰りを防止する為の自走式清掃ブラシ6を装着し、適宜、濾過用に並立された浮揚物質遮蔽板2の目詰り防止の為の掃除を自動的にする。尚これ等の動力源は通常の電源や太陽光発電による電源でも構わないが出来れば図1のような天然の風力を動力源とする電気不要の回転設備であるベルト駆動用風車1並びに清掃ブラシ駆動用風車3の動力で十分である。尚シジミ養殖棚は場所によっては多段式でなくても若干傾斜をつけた広目の棚板でも良いし、浮揚物質遮蔽板に代わる柵は対水性ポールなどでもよい。要は尚シジミ養殖棚の流出防止と養殖面積の問題である。
【発明の効果】
【0007】
ダムや湖沼では一般に主目的である水利問題がほとんどであるが、本発明により新たなビジネスの誕生を呼ぶと共に新たな産物やシジミを利用した地域特産の新たな加工食品開発の検討も可能となる。特にダムなどは人口的にジリ貧状態の田舎に多く、活性化にはほど遠い世界であったが本発明により、地方だけに許され且つ可能性があるいわゆる地方の有利性さえも強調出来て、今後は地方の時代が到来する予感さえ感じるものがあり、地方には新たな活気が生まれ地域の遊休湖水の有効利活用は将来予想される食糧不足に備えるものである。
【0008】
以下本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0009】
図において本発明の風力を動力とするシジミ養殖の全体図とその実施例を図面で説明する。
図1はシジミ養殖棚並びに廃棄物汚泥搬送装置付きシジミ養殖棚の全体のフロー図である。
図2はシジミ養殖棚の側面断面図である。
【産業上の利用可能性】
【0010】
上述したように本発明によって通常では静かで、あたかも沈黙しているかのようなダム地域がそのインフラを利用してシジミ養殖という生産性のある食品開発につながり、地域としては田舎の不利な環境が逆に有利性を持ち、田舎こそ可能性があることの証となり、地の利を生かした新産業、特に兼業農家や地方の零細企業にもチャンスの可能性を生まれ、食料資源の確保はもとより自然環境を生かす事により、少額な投資で実現可能な技術であり地方に於ける地域活性化の素材として多大な貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の全体構造概要図である。
【図2】図2は本発明の後部からの側面断面図である
【図3】図3は本発明の上面図である。
【符号の説明】
【0012】
1、 ベルト駆動用風車
2、 浮揚物質遮蔽板(閉鎖水域スカム、沈殿物、藻類などの遮蔽目的)
3、 清掃ブラシ駆動用風車
4、 汚泥搬出用ベルト
5、 ヘドロ
6、 自走式清掃ブラシ
7、 湖水の流れる方向
8、 シジミ糞
9、 シジミ養殖棚
10、酸化チタン塗装板
11、ラックアンドギア
12、養殖シジミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムや遊休湖や汽水湖や河川流域湖或いは溜池等において、板材や不織布や合成シート或いはナイロンなどの耐水性シート材、又は金網若しくは金属性シート類を素材とする棚上で砂や土壌類を環境基材とする浮上型養殖を特徴とする、シジミなど淡水産貝類の養殖システム並びに当該方式により養殖したシジミなど淡水産貝類。
【請求項2】
水田や人口プール或いは雨水や河川水を元に造った人造湖を利用した請求項1に記載のシジミなど淡水産貝類の養殖システム並びに当該方式により養殖したシジミなど淡水産貝類。
【請求項3】
当該シジミなど淡水産貝類の成長過程で環境基材となる土砂類を当該シジミなど淡水産貝類と同一環境内に内包する機能をもたせたハニカム型状の皿や袋、若しく透水性間仕切り状のシジミなど淡水産貝類の養殖システム並びに当該方式により養殖したシジミなど淡水産貝類。
【請求項4】
U字形状を横長に広げたシジミの養殖棚において一方の流入側壁面は、スカム等流入防止機能付き水流孔を持ち、他方の壁面は通常の水流孔を持ち、中央床面には風力や太陽熱など自然エネルギーを利用した回転体を動力源とする汚泥排出用コンベア付きの、シジミなど淡水産貝類の糞の受け皿機能を備えた請求項1に記載のシジミなど淡水産貝類の養殖システム並びに当該方式により養殖したシジミなど淡水産貝類。
【請求項5】
シジミなど淡水産貝類の養殖システムによるビジネスと当該養殖ビジネスによる汚濁水の水質浄化を目的としたビジネスモデル
【請求項6】
請求項4に記載の養殖棚壁面において太陽光が最も照射する側の壁面に、酸化チタンを塗布し、汚濁水を酸化分解する機能を付加した請求項1に記載のシジミなど淡水産貝類の養殖システム並びに当該方式により養殖したシジミなど淡水産貝類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−259421(P2010−259421A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129635(P2009−129635)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(592217576)中村建設株式会社 (19)
【出願人】(591273672)株式会社テラボンド (42)
【Fターム(参考)】