説明

閉鎖配電盤

【課題】複数系統の電源を供給する場合でも設置面積を増加させる必要がない閉鎖配電盤を提供する。
【解決手段】閉鎖配電盤1には、本体2内の上部に上部水平母線11が設けられ、下部に下部水平母線12が設けられている。上部水平母線11には本体2の正面側から正面側垂直母線15が接続されており、下部水平母線12には背面側垂直母線16が接続されている。これらの上部水平母線11および下部水平母線12をそれぞれ異なる系統の外部電源へ接続することにより、本体2の正面側に設けられている装置収容室4には正面側垂直母線15を介して電源が供給され、背面側に設けられている装置収容室4には背面側垂直母線16を介して別系統の電源が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば工場の設備などを稼動させるための複数の電動機を制御するために複数の単位装置を収容可能な閉鎖配電盤が知られている。このような閉鎖配電盤は、外部に設置された電源に接続されている水平母線と、その水平母線に接続され、各単位装置に電力を供給する垂直母線とを備えている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭61−113520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、閉鎖配電盤に設けられている水平母線は一系統である。そのため、各単位装置には、例えば200Vの三相交流電源などが一系統だけ供給されることになる。しかし、単位装置によって制御される電動機の多様化にともなって、単位装置に要求される電源も多様化してきている。しかしながら、従来の閉鎖配電盤では、複数系統の電源を供給するためには閉鎖配電盤そのものを複数設置することが必要であり、大きな設置面積が必要になるという問題があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数系統の電源を供給する場合でも設置面積を増加させる必要がない閉鎖配電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の閉鎖配電盤は、母線を収納する母線収納室および単位装置を収容する複数の装置収容室を有する本体と、前記母線収納室に収容された複数組の水平母線と、前記母線収納室に収納され、前記複数組の水平母線に接続された垂直母線と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の閉鎖配電盤によれば、本体の内部に設けられている複数組の水平母線にそれぞれ異なる系統の外部電源を接続することにより、複数組の単位装置に対して異なる電源を供給することが可能となる。したがって、複数系統の電源が必要な場合でも1台の閉鎖配電盤で対応することができるため、設置面積を増加させる必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の複数の実施形態による閉鎖配電盤を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付す。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による閉鎖配電盤を図1から図4に基づいて説明する。
【0008】
閉鎖配電盤1は、一般的にはコントロールセンタと称されるもので、図2に示すように、外殻を形成する本体2、単位装置3を収容する装置収容室4、配線処理室5、母線収納室6を備えている。本体2は、直方体形状を有し、閉鎖配電盤1の外殻を形成するとともに、複数の装置収容室4が設けられている。単位装置3は、例えば電動機に対する電源の供給、過電流の保護、過負荷保護などの保護機能を有したマルチモータリレーユニットなどである。単位装置3は、装置収容室4に収容されている。
【0009】
装置収容室4は、本体2の上下方向に複数(本実施形態では8個)設けられている。装置収容室4は、前方が開放しており、その開口部には扉7が開閉可能に設けられている。扉7にはパネル穴8が設けられており、扉7を閉鎖した状態でも単位装置3のスイッチの操作、あるいは単位装置3の表示部の視認が可能となっている。また、配線処理室5は、本体2の正面右側部において上下方向に長尺に設けられている。この配線処理室5には、各単位装置3と外部の電動機とを接続するためのケーブルや端子台などが納められている。配線処理室5の前方は、配線処理室扉9によって閉鎖可能となっている。
【0010】
装置収容室4および配線処理室5は、図3に示すように母線収納室6を挟んで本体2の正面側および背面側にそれぞれ設けられている。つまり、本実施形態の閉鎖配電盤1は、本体2の正面側および背面側にそれぞれ複数の単位装置3を収容することが可能である。
【0011】
母線収納室6は、本体2の前後方向における中央部分に設けられている。母線収納室6には、図1に示すように、水平母線および垂直母線が収納されている。図1(A)は、母線収納室6を本体2の正面から視た正面図であり、同図(B)は、母線収納室6を本体2の背面から視た背面図である。なお、図1では、説明の簡略化のため、本体2の外縁、水平母線、および垂直母線のみを模式的に示している。
【0012】
母線収納室6の上部には、図1(A)に示すように、上部水平母線11が設けられ、下部には下部水平母線12が設けられている。つまり、閉鎖配電盤1は、複数組の水平母線を有している。上部水平母線11および下部水平母線12は、本体2の幅方向すなわち地面に対してほぼ水平方向に設けられている。また、上部水平母線11は、三本(三相分)の水平母線材11a、11bおよび11cから構成されている。これら三本の水平母線材11a、11bおよび11cは、本体2の高さ方向に等間隔でそれぞれ配設されている。また、下部水平母線12も、三本(三相分)の水平母線材12a、12bおよび12cから構成されており、それぞれ本体2の高さ方向に等間隔で配設されている。水平母線材11a、11b、11c、12a、12bおよび12cは、例えば銅などの導体で平板状に形成され、その表面が錫メッキなどで防錆処理されている。
【0013】
水平母線材11a、11b、11c、12a、12bおよび12cは、長手方向の両端部に複数の取付孔13を有している。上部水平母線11および下部水平母線12は、この取付孔13により、例えば碍子などの絶縁部材(図示せず)を介して本体2に固定されている。また、水平母線材11a、11b、11c、12a、12bおよび12cには、長手方向に沿って複数の母線孔14が設けられている。この母線孔14は、垂直母線を取り付けるために用いられる。上部水平母線11および下部水平母線12は、図示しない異なる外部電源に接続されている。
【0014】
垂直母線は、本体2の高さ方向つまり水平母線に対してほぼ垂直方向に水平母線と接続されている。本実施形態では、垂直母線は、図1(A)に示すように本体2の正面側から上部水平母線11に接続されている正面側垂直母線15と、同図(B)に示すように本体2の背面側から下部水平母線12に接続されている背面側垂直母線16とを有している。
【0015】
正面側垂直母線15は、図1(A)に示すように、三本の垂直母線材15a、15bおよび15cから構成されている。この場合、垂直母線材15aは水平母線材11aに接続され、垂直母線材15bは水平母線材11bに接続され、垂直母線材15cは水平母線材11cに接続されている。これら各垂直母線材15a、15bおよび15cは、上部水平母線11から本体2の最下段に位置する装置収容室4まで延びている。
【0016】
背面側垂直母線16は、図1(B)に示すように、三本の垂直母線材16a、16bおよび16cから構成されている。この場合、垂直母線材16aは水平母線材12aに接続され、垂直母線材16bは水平母線材12bに接続され、垂直母線材16cは水平母線材12cに接続されている。これら、垂直母線材16a、16bおよび16cは、下部水平母線12から本体2の最上段に位置する装置収容室4まで延びている。
【0017】
これら垂直母線材15a〜15c、16a〜16cは、例えば銅などの導体で、断面がL字形状に形成されている。そのため、各各垂直母線材15a〜15c、16a〜16cは、図3において一方の辺が水平母線に取り付けられると、他方の辺が装置収容室4側に突出する。この突出した辺には、単位装置3の電源端子(断路部)3aが嵌合する。これにより、単位装置3には電源が供給される。なお、単位装置3の電源端子3aと勘合する垂直母線は、嵌合時の摩擦抵抗を低減するため、その表面に例えば銀メッキなどの処理が施されている。
【0018】
図4は、閉鎖配電盤1の縦断側面図である。母線収納室6の内部には、上部水平母線11、下部水平母線12、正面側垂直母線15および背面側垂直母線16が収容されている。そのため、本体2の正面側および背面側の各装置収容室4に単位装置3(図3参照)が収容されると、各水平母線に供給される電源が、各垂直母線を介して単位装置3に分電される。
【0019】
正面側垂直母線15と背面側垂直母線16との間には、絶縁仕切板17が設けられている。絶縁仕切板17は、上部水平母線11の下端から下部水平母線12の上端までの高さと、水平母線の長手方向の長さにほぼ等しい幅を有している。これにより、例えば単位装置3を設置するときに垂直母線が後方へ押し込まれた場合などでも、正面側垂直母線15と背面側垂直母線16とが電気的に接触することはない。
【0020】
上記した構成の閉鎖配電盤1において、本実施形態では、上部水平母線11には、例えば200Vの三相交流電源が接続されている。具体的には、水平母線材11aには200Vの三相交流電源のR相、水平母線材11bにはS相、そして水平母線材11cにはT相がそれぞれ接続されている。一方、下部水平母線12には、例えば400Vの三相交流電源が接続されている。具体的には、水平母線材12aには400Vの三相交流電源のR相、水平母線材12bにはS相、そして水平母線材12cにはT相がそれぞれ接続されている。このように接続することにより、三相交流電源の各相の並び順が正面側と背面側で同一となるため、複数系統の電源が供給された場合でも、誤配線の防止や保守作業の簡略化などに役立つ。
【0021】
また、外部電源から水平母線に供給された電源は、垂直母線を介して各装置収容室4に分電される。すなわち、正面側垂直母線15および背面側垂直母線16は、上部水平母線11および下部水平母線12に接続された電源を、本体2の正面側および背面側に設けられている各装置収容室4にそれぞれ分電している。すなわち、上部水平母線11および下部水平母線12がそれぞれ異なる電源に接続されているため、本体2の正面側の装置収容室4と背面側の装置収容室4とは、それぞれ異なる電源が供給されている。
【0022】
以上説明したように、本実施形態による閉鎖配電盤1は、二組の水平母線、つまり上部水平母線11および下部水平母線12を備えている。これらの上部水平母線11と下部水平母線12とは、それぞれ別系統の外部電源に接続されている。これにより、1台の閉鎖配電盤1において二系統の電源の利用が可能となる。したがって、複数系統の電源を供給する場合でも設置面積を増加させる必要がない。
【0023】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による閉鎖配電盤を図5および図6に基づいて説明する。第2実施形態の閉鎖配電盤21は、本体2の内部に三組の水平母線を備えている点において、第1実施形態の閉鎖配電盤1と異なっている。
【0024】
閉鎖配電盤21は、図5(A)に示すように、本体2の上部に上部水平母線11、下部に下部水平母線12を有している。上部水平母線11には、第1実施形態と同様に、例えば200Vの三相交流電源が接続され、下部水平母線12には例えば400Vの三相交流電源が接続されている。これら上部水平母線11および下部水平母線12には、本体2の正面側からそれぞれ垂直母線が接続されている。
【0025】
上部水平母線11に接続されている正面側上部垂直母線22、および下部水平母線12に接続されている正面側下部垂直母線23は、本体2の上下方向の長さに対して概ね半分程度の長さを有している。そのため、本体2の正面側において、上半分に設けられている装置収容室4と下半分に設けられている装置収容室4とは、供給される電源の系統が異なっている。なお、垂直母線の長さは、例えば正面側上部垂直母線22を正面側下部垂直母線23より長くするなど、任意に設定してもよい。
【0026】
閉鎖配電盤21は、図5(B)に示すように、本体2の背面側において、中央部に中央部水平母線24を有している。この中央部水平母線24は、上部水平母線11および下部水平母線12と同様に、例えば銅などの導体で平板状に形成され、その表面が錫メッキなどで防錆処理されている。中央部水平母線24は、三本(三相分)の水平母線材24a、24bおよび24cから構成されている。この中央部水平母線24には、本体2の背面側から背面側垂直母線25が接続されている。
【0027】
背面側垂直母線25は、三本の垂直母線材25a、25bおよび25cから構成され、中央部水平母線24に接続されている。具体的には、垂直母線材25aは水平母線材24aに接続され、垂直母線材25bは水平母線材24bに接続され、垂直母線材25cは水平母線材24cに接続されている。また、各垂直母線材25a、25bおよび25cは、本体2の背面側において最上段に位置する装置収容室4から最下段に位置する装置収容室4までの長さを有している。つまり、各垂直母線材25a、25bおよび25cは、外部電源から中央部水平母線24に供給される電源を、本体2の背面側の全ての装置収容室4に分電することが可能となっている。
【0028】
図6は、閉鎖配電盤21の縦断側面図である。母線収納室6の内部には、上部水平母線11、下部水平母線12、正面側上部垂直母線22、正面側下部垂直母線23、中央部水平母線24および背面側垂直母線25が収納されている。そして、正面側上部垂直母線22および正面側下部垂直母線23と、背面側垂直母線25との間には、絶縁仕切板26が設けられている。これにより、例えば単位装置3を収容するときに垂直母線が押し込まれた場合などでも、正面側上部垂直母線22及び正面側下部垂直母線23と、背面側垂直母線25とが接触することがない。また、絶縁仕切板26は、正面側上部垂直母線22及び正面側下部垂直母線23と、中央部水平母線24との接触も防いでいる。
【0029】
上記した構成の閉鎖配電盤21において、中央部水平母線24は、例えば220Vの三相交流電源に接続されている。具体的には、水平母線材24aには三相交流電源のR相、水平母線材24bにはS相、水平母線材24cにはT相がそれぞれ接続されている。つまり、中央部水平母線24は上部水平母線11と下部水平母線12とは異なる外部電源に接続されており、閉鎖配電盤21には、三系統の電源が供給されている。
【0030】
外部電源から水平母線に供給された電力は、垂直母線を介して、各装置収容室4へ分電されている。これにより、本体2の正面側に複数設けられている装置収容室4のうち、上半分の装置収容室4と、下半分の装置収容室4とでは、供給される電源の系統が異なっている。また、本体2の背面側に設けられている装置収容室4には、正面側とはさらに異なる電源が供給されている。つまり、閉鎖配電盤21では、単位装置3は、収容される装置収容室4の位置によって三種類の異なる電源を利用することが可能となっている。
【0031】
以上説明したように、第2実施形態の閉鎖配電盤21は、本体2の内部において上部、下部および中央部にそれぞれ水平母線を有し、それぞれの水平母線には別系統の電源が接続されている。これにより、1台の閉鎖配電盤21において三系統の電源の利用が可能となる。したがって、設置面積を大きく削減することができる。
【0032】
(その他の実施形態)
上記した各実施形態では、各水平母線がそれぞれ異なる電源に接続されているが、必ずしも異なる電圧の電源に接続される必要はない。また、電圧が同一で、例えばトランスやノイズフィルタの特性などが異なる電源に接続してもよい。
【0033】
水平母線および垂直母線をそれぞれ三相としたが、これに限定されるものではなく、単相や二相、あるいは三相より多い構成であってもよい。
第2実施形態において、背面側垂直母線を設けず、正面側に二系統の電源を供給する構成としてもよい。なお、その場合には、両面型閉鎖配電盤ではなく、片面型閉鎖配電盤に適用してもよい。
【0034】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば電動機以外の機器を制御する閉鎖配電盤に適用しうるなど、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態による閉鎖配電盤の水平母線および垂直母線の概略を示す図で、(A)は正面図、(B)は背面図
【図2】閉鎖配電盤の外観を示す斜視図
【図3】閉鎖配電盤の横断平面図
【図4】閉鎖配電盤の概略を示す縦断側面図で、図1のIV−IV線に沿う断面図
【図5】本発明の第2実施形態を示す図1相当図
【図6】図4相当図で、図5のVI−VI線に沿う断面図
【符号の説明】
【0036】
図面中、1、21は閉鎖配電盤、2は本体、3は単位装置、4は装置収容室、6は母線収納室、11は上部水平母線(母線)、12は下部水平母線(母線)、15は正面側垂直母線(母線)、16は背面側垂直母線(母線)、22は正面側上部垂直母線(母線)、23は正面側下部垂直母線(母線)、24は中央部水平母線(母線)、25は背面側垂直母線(母線)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母線を収納する母線収納室および単位装置を収容する複数の装置収容室を有する本体と、
前記母線収納室に収容された複数組の水平母線と、
前記母線収納室に収納され、前記複数組の水平母線に接続された垂直母線と、
を備えることを特徴とする閉鎖配電盤。
【請求項2】
前記装置収容室は、前記母線収納室を挟んだ前記本体の正面側および背面側にそれぞれ設けられ、前記水平母線は、前記母線収納室内の上部に配置された上部水平母線と、下部に配置された下部水平母線とを有し、一方の水平母線は、前記本体の正面側に配置された装置収容室に対応し、他方の水平母線は、前記本体の背面側に配置された装置収容室に対応していることを特徴とする請求項1記載の閉鎖配電盤。
【請求項3】
前記装置収容室は、前記母線収納室を挟んだ前記本体の正面側および背面側にそれぞれ設けられ、前記水平母線は、前記母線収納室内の上部に配置された上部水平母線、下部に配置された下部水平母線、および中央部に配置された中央部水平母線を有し、前記上部水平母線および前記下部水平母線は、前記本体の一方の面に設けられている装置収容室に対応し、前記中央部水平母線は、前記本体の他方の面に設けられている装置収容室に対応していることを特徴とする請求項1記載の閉鎖配電盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−29018(P2010−29018A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189742(P2008−189742)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【Fターム(参考)】