説明

開き戸用錠装置

【課題】鍵穴から見える、掛金の状態を示す部品(表示板)のみを追加取り付けすることで、掛金がロック状態であるか開放状態であるかの判別を容易にする。
【解決手段】忍錠36は、鍵係止部45に鍵60を係合させて回転することで、係合部69が止金21の係合凹部27A,27Bと係合して掛金4を固定する掛金ロック状態と、止金21の係合凹部27A,27Bとの係合を解除して掛金4が回転可能となる掛金開放状態とを切り替える。鍵穴9には、鍵60を差し込む一対の差込穴部11,12が、掛金ロック状態または掛金開放状態における忍錠36の鍵係止部45に対応する位置にそれぞれ形成されている。忍錠36の表面には、インジケータ46が、その中心を忍錠36の回転中心と一致し、かつ切れ目部48が、掛金ロック状態または掛金開放状態において、それぞれ差込穴部11,12に対向する位置になるように取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両における前面貫通開き戸などの開き戸用錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、開き戸を、不使用時において、不用意に開放されるのを防止するための錠装置は知られている。
【0003】
例えば図8に示すように、鉄道車両の車体(図示せず)にヒンジ101を介して開閉可能に設けられる前面貫通開き戸102の錠装置103として、その開き戸102側にプレート状の錠座103Aを設け、その錠座103Aに対し、掛金103Bを錠座103Aと平行な面内を回転可能となるように取り付け、開き戸102を閉じた状態で掛金103Bを回転して、車体(ドア枠)側に設けた受金(図示せず)に係合させて開き戸102の開放を規制する状態にしたりその係合を解除させて開き戸102を開放できる状態にしたりできるようにしたものがある。
【0004】
そして、その錠装置103では、掛金103Bを受金に係合させて開き戸102の開放を規制する状態でも、係合を解除させて開き戸102を開放できる状態でも、掛金103Bを自由に回転できないようにロックできるようになっている(掛金ロック状態)。
【0005】
よって、掛金103Bが、前記受金に係合してるかどうかを見るだけでは、掛金103Bがロックされて回転不能である掛金ロック状態であるか、そのロックが解除され回転可能な掛金開放状態であるかを判断することができない。
【0006】
よって、このような錠装置は、掛金ロック状態であるかどうかを確認するには、実際に掛金に触れ、回転するか否かを調べる必要があり、その確認に手間を要するという課題がある。
【0007】
ところで、錠装置が施錠状態にあるか解錠状態にあるかを容易に判別できる施錠表示装置はすでに知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この特許文献1に記載の技術は、略小判型のベース部材正面に化粧プレートが設けられ、当該化粧プレートに、上から表示窓、鍵穴、ドアハンドルが配設され、鍵穴に鍵を差し込み左に回すことにより施錠が行なわれるとともに、円形の表示窓から一部を覗かせている表示板が回転し、施錠状態を示す赤色に着色された部分が、表示窓に表示される仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−16426号公報(3頁〜4頁、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したような開き戸用錠装置は、掛金103Bを受金に係合させた状態でも、受金との係合を解除した状態でも、掛金ロック状態あるいは掛金開放状態とすることができるものであるため、そのような掛金を用いていない特許文献1記載の技術をそのまま適用することができない。また、上記特許文献1記載の構造を、前述したような開き戸用錠装置に適用しようとすれば、鍵穴とは別に専用の表示窓を設ける必要がある。
【0011】
本発明は、現在前面開き戸用の錠装置として多数使用されているものに対し、それの鍵穴から見える、掛金の状態を示す部品(表示板)のみを追加取り付けすることで、前記鍵穴とは別の表示窓を設けることなく、掛金がロック状態であるか開放状態であるかの判別を容易にできる開き戸用錠装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1の開き戸用錠装置は、開き戸の表裏いずれかの面に固定され鍵穴を有する錠座と、この錠座の表面側に前記開き戸の表裏面と平行な面内を回転可能に取り付けられている掛金と、前記錠座の裏面側に設けられ前記掛金と一体的に回転するように前記掛金に設けられる止金と、前記錠座の裏面側において前記鍵穴に対応する位置に回転可能に設けられ前記鍵穴から差し込まれる鍵に係脱可能に係合する忍錠とを備え、前記掛金は、ドア枠側に設けた受金に係脱可能に係合することで、前記開き戸の開放を規制するものであり、前記鍵を前記忍錠に係合させた状態で前記鍵にて前記忍錠を回転させることにより、前記忍錠が、前記止金に係合して掛金の回転を規制する掛金ロック状態と、前記止金との係合が解除されて前記掛金の回転を許容する掛金開放状態とを選択的に取り得る開き戸用錠装置であって、前記鍵穴は、中心に位置する丸穴部と、この丸穴部から半径方向に延びる一対の差込穴部をそれぞれ備えるものであり、前記忍錠の、前記鍵穴側の面に、半径方向に延びる1つの切れ目部を有する環状の表示板が、その中心が前記忍錠の回転中心と一致するように固定され、前記忍錠が掛金ロック状態または掛金開放状態にあるときに、前記切れ目部が前記一対の差込穴部のいずれか一方に対向する位置になることを特徴とする。
【0013】
上記の構成を有する請求項1に係る開き戸用錠装置によれば、鍵穴を通じて表示板を見ることで、掛金の状態にかかわりなく、掛金ロック状態にあるか掛金開放状態にあるかを容易に判別することができる。つまり、掛金開放状態であるか掛金ロック状態であるかを確認するために、実際に掛金に触れる必要がない。
【0014】
また、前記掛金ロック状態にあるときには、前記表示板の切れ目部が、前記鍵穴の一方の差込穴部に対向して位置し、かつ、他方の差込穴部を表示板が塞いだ状態になる一方、前記掛け金開放状態にあるときには、前記表示板の切れ目部が、前記鍵穴の他方の差込穴部に対向して位置し、かつ、前記一方の差込穴部を表示板が塞いだ状態になるため、前記掛金に触れることなく、鍵穴を通じて表示板を目視することによりいずれの状態にあるかを確認することができる。また、差込穴部を表示板が塞いだ状態とすることにより、表示板は、鍵が間違った差し込み部に差し込まれないようにする邪魔板としての役割を持っていることになり、鍵の誤挿入を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載のように、前記表示板は、視覚的に明確に区別できるように彩色され、あるいは仕上げられ、またはその両方の処理が施されて明確に差別化することにより、前記忍錠が掛金ロック状態または掛金開放状態にあるときに、前記一対の差込穴部を通じて視認される色が異なる構成とされていることが望ましい。
【0016】
このようにすれば、前記掛金ロック状態であるか前記掛金開放状態であるかが、より一層判別しやすくなる。
【0017】
請求項3に記載のように、前記掛金は、前記忍錠の係合部が係脱可能に係合することで前記掛金が前記受金に係合された状態を維持する第1の係合凹部と、前記忍錠の係合部が係脱可能に係合することで前記掛金が前記受金との係合が解除された状態を維持する第2の係合凹部とを有する構造とされる。
【0018】
このようにすれば、前記掛金が前記受金に係合された状態であっても、前記掛金が前記受金との係合が解除された状態であっても、簡単に掛金ロック状態とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、掛金ロック状態であるか掛金開放状態であるかを、掛金に触れることなく、鍵穴を通じて表示板を見ることで、目視により簡単に判別することができ、掛金ロック状態であるか掛金開放状態であるかを容易に判別することができ、鍵の誤挿入を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る開き戸用錠装置の一実施の形態を示し、(a)は掛金ロック状態の正面図、(b)は同平面図(c)は掛金開放状態の正面図である。
【図2】(a)は忍錠用取付カバーを取り外した状態を示す開き戸用錠装置の背面図、(b)は忍錠用取付カバーを取り付けた状態を示す開き戸用錠装置の背面図である。
【図3】前記開き戸用錠装置の掛金開放状態を示す背面図である。
【図4】前記開き戸用錠装置の掛金ロック状態を示す背面図である。
【図5】(a)は前記開き戸用錠装置の忍錠にインジケータを取り付けた状態の斜視図である。(b)は前記インジケータの正面図、(c)はインジケータについての別の実施形態を示す図5(b)と同様の図である。
【図6】前記開き戸用錠装置の鍵を示す側面図である。
【図7】別の実施形態に係る開き戸用錠装置を示し、(a)は掛金ロック状態の開き戸用錠装置を示す正面図、(b)は掛金開放状態の開き戸用錠装置を示す正面図である。
【図8】鉄道車両における前面貫通開き戸の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る開き戸用錠装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1(a)(b)(c)及び図2(a)(b)に示すように、開き戸用錠装置1は、開き戸の表裏いずれかの面に固定され鍵穴9(貫通穴)が形成されている矩形板状の錠座2と、錠座2の表面側に前記開き戸の表裏面と平行な面内を回転可能に取り付けられている棒状の掛金4と、錠座2の裏面側に設けられ掛金4と一体に連結されている止金21と、錠座2の裏面側において鍵穴9に対応する位置に回転可能に設けられ鍵穴9から差し込まれる鍵60(図6参照)に係脱可能に係合する忍錠36とを備え、周知のように、掛金4に連結される止金21と鍵60にて回転される忍錠36との係合状態に応じて、掛金ロック状態や掛金開放状態を選択的に取り得るものである。掛金ロック状態では、掛金4(止金21)の回転を規制する状態になり、掛金開放状態では、掛金4(止金21)の回転を許容する状態になる。なお、掛金4は、前記開き戸が開閉可能に設けられるドア枠側の受金3に係合させて開き戸の不用意な開放を規制するようになっている。
【0023】
錠座2は、矩形状に形成された鋳造品であり、四隅にはそれぞれ固定用のねじ穴5が形成され、中央部に掛金4が回転可能に取り付けられている。この錠座2の表面には、環状の掛金用台座8が形成され、その下方に鍵穴9が形成されている。この鍵穴9は、中心に位置する丸穴部10と、この丸穴部10に連続して半径方向に延び切り欠き状に形成されている一対の差込穴部11,12とを備える。これらの差込穴部11,12は、表面側から見て(図1(a)(c)参照)、丸穴部10の左側と下側とに設けられている。そして、一方の差込穴部11が前記掛金開放状態での鍵60の差し込み部位に、他方の差込穴部12が前記掛金ロック状態での鍵60の差し込み部位にそれぞれ対応している。
【0024】
一方、掛金4は、主要部が略断面矩形状である棒状の部品であり、回転中心となる基端部は表面側から見て円形状に形成され、その基端部の表面側には、四角柱状の工具係合部14が突出して設けられ、裏面側には取付軸(図示せず)が設けられている。この取付軸は、錠座2を表面側から貫通して裏面側に突出し、その突出部分に止金21がねじ24にて一体的に固定されている(図1(b)参照)。
【0025】
錠座2の裏面側において、図2(a)に示すように、鍵穴9に対応する部位には忍錠36が回転可能に、その上側には止金21が掛金4と一体的に回転可能にそれぞれ設けられている。
【0026】
止金21は、略円形の外形形状を有し、直径方向においてねじ24を挟んで対向する箇所にそれぞれ、忍錠36との係合により回転が規制される回転規制部となる第1及び第2の係合凹部27A,27Bが形成されている。
【0027】
また、図1(b)に示すように、止金21の表面側の係合部28は、錠座2の裏面側のストッパ29に対し、掛金4を解錠する方向に回転させて真横を向いた状態のとき、及び、掛金4を施錠する方向に回転させて真下を向いた状態のときに係合し、掛金4の回転を規制するようになっている。
【0028】
忍錠36は、図2(a)及び図5(a)に示すように、半径方向外方に突出した山形突部38の反対に位置する箇所に、円弧の両端を結ぶ直線に沿ってカットした切取部39が設けられている。山形突部38は、その厚みの裏面側の約半分をカットして厚みを抑えた形状になっている。また、忍錠36における山形突部38と切取部39との間に位置する係合部69と、掛金4の止金21の係合凹部27Aまたは27Bとが係合し、掛金4を回転させないようになっている。
【0029】
第1の係合凹部27Aは、忍錠36の係合部69が係脱可能に係合されることで掛金4の回転が規制されて掛金4がドア枠の受金3に係合された状態を維持する一方、第2の係合凹部27Bは、忍錠36の係合部69が係脱可能に係合することで掛金4の回転が規制されて掛金4が受金3との係合が解除された状態を維持するように構成されている。これにより、掛金4が受金3に係合された状態であっても、掛金4が受金3との係合が解除された状態であっても、忍錠36の係合部69を係合凹部27A,27Bに係合させることで掛金4を回転することができない掛金ロック状態とすることができる。
【0030】
図2(a)に示すように、裏面側から見て忍錠36の左側には、厚みを有する板状のカバー取付部31が、縦向きに設けられている。一方、忍錠36の右側には、円柱状のカバー取付部33が設けられている。このカバー取付部33の下側近傍には、四角柱状のバネ係止部35が突設されている。
【0031】
また、忍錠36の表裏面37,40にはそれぞれ、図2(a)及び図5(a)に示すように、丸型突出部41,42が形成されており、これらの丸型突出部41,42は、突出する方向と直交する断面の形状が略円形状に形成されていて、表面37側の丸型突出部41の内側を、周縁部と中心部とを残しながら裏面方向に切削し、裏面40側に所定の厚みを残すことにより、凹状の鍵係止部43を形成する一方、中心部は円柱状に形成されて、鍵60の先端部を係合させるための嵌合部44となっている。そして、表面37側から見て、山形突部38を時計回り方向で9時の位置に向けて配置したときに、嵌合部44を中心として6時の位置〜9時の位置となる範囲を、両側の前記丸型突出部も含めて削除して扇型の貫通穴を形成することにより、鍵係止部45を設けている。
【0032】
忍錠36は、錠座2の忍錠用台座(図示せず)の内側に嵌め込んだ状態で配置し、図2(b)に示すように、上から忍錠用取付カバー49を被せて、この忍錠用取付カバー49を各カバー取付部31,33にねじ止めすることによって錠座2に取り付けている。忍錠用取付カバー49は、略長方形の板状に形成され、忍錠36の裏面40の丸型突出部42に対応する大きさの円形状の開孔50が設けられており、この開孔50に丸型突出部42が嵌り込んだ状態になっている。また、忍錠用取付カバー49には、忍錠36の山形突出部38と当接することにより、回転を所定の範囲に拘束するための一対のストッパ51,52が、表面側において、開孔50を挟んで対向する位置に突設されている(図2(a)(b)参照)。これにより、忍錠36の可動範囲は、表面側から見て、その山形突部38が時計回り方向で6時の位置〜9時の位置の範囲となる。
【0033】
忍錠36は、帯状の板バネ54によって付勢され、不用意に回転しないようになっている。板バネ54は、忍錠36とバネ係止部35との間に位置するようにカバー取付部33に巻き付けて取り付けられている。そして、板バネ54の一方の片(短片)がバネ係止部35に、他方の片(長片)が忍錠36にそれぞれ当接し、忍錠36が板バネ54の付勢力を常時受け、不用意に回転しないようにしている。
【0034】
このように形成されている忍錠36の表面側には、図5(a)(b)に示すように、丸型突出部41の先端面に薄い板厚のインジケータ(表示板)46が貼付されている。このインジケータ46は、丸型突出部41とほぼ同一の直径を有する環状の平板部材からなり、その中心部に丸穴47を形成するとともに、一部に切れ目部48を形成することにより、略C型形状としたものである。このインジケータ46は、忍錠36の回転中心(嵌合部44)と中心を一致させた状態で、切れ目部48が山形突部38に一致するように配置されている。
【0035】
錠装置1に用いる鍵60は、図6に示すように、断面円形状の軸部61の先端部の外周面には、半径方向外方に突出させた後に前方に屈曲させたL字型の突起部62が設けられ、基端部には環状のつまみ部63が設けられている。
【0036】
以上に説明した開き戸用錠装置1の作用について説明する。
【0037】
図1(a)(b)及び図2(a)(b)は、掛金4が受金3に係合された状態での掛金ロック状態を示している。この状態では、掛金4はドア枠側の受金3に係合し、鍵穴9の上側の差込穴部11に、インジケータ46の切れ目部48が対向して位置し、下側の差込穴部12はインジケータ46によって塞がれている。このように、下側の差込穴部12がインジケータ46によって塞がれていることを目視することにより、忍錠36と止金21との係合関係で止金21の回転が規制され、掛金4が回転しない掛金ロック状態にあることがわかり、鍵60の誤挿入を防止する上でも有利となる。
【0038】
そして、上側の差込穴部11に対して、鍵60を、突起部62を横向きにした状態で差し込むと、その先端部が忍錠36の鍵係止部43に挿入され、嵌合部44に嵌め込まれるとともに、突起部62の先端部が鍵係止部43に挿入される。そして、鍵60を反時計回り方向に90°回転させて、突起部62の先端部を鍵係止部43の内側に引っ掛け、さらに、鍵60を反時計回り方向に90°回転させることにより、忍錠36自体を90°回転させて掛金開放状態にする。掛金開放状態になれば、図3に示すように、忍錠36の切取部39が止金21に対向して、忍錠36と止金21との係合状態が解除される。このとき、上側の差込穴部11がインジケータ46で塞がれた状態になる一方、下側の差込穴部12にインジケータ46の切り目48が対向して位置することになる。
【0039】
これにより、掛金4が回転可能な状態となるため、掛金4の工具係合部14に工具を係合させて、反時計回り方向に回転させることにより掛金4と受金3との係合を解除することができる(図1(c)及び図3の実線参照)。
【0040】
このように、掛金ロック状態にあるか掛金開放状態にあるかを、いずれの差込穴部11,12がインジケータ46によって塞がれているかを目視することによって知ることができる。
【0041】
また、掛金4が受金3との係合が解除された状態で、図4に示すように、係合凹部27Bに忍錠36の係合部69を係合させれば、掛金4の回転をロックする掛金ロック状態となる。
【0042】
よって、掛金ロック状態であるか掛金開放状態であるかを、掛金4に触れることなく、鍵穴9を通じてインジケータ46を目視することにより確認することができる。
【0043】
なお、インジケータ46を色分けすることにより、忍錠36が掛金ロック状態または掛金開放状態にあるときに、一対の差込穴部11,12を通じて視認される色が異なるようにして、掛金ロック状態と掛金開放状態とを見分け易くすることもできる。例えば、図5(c)に示すように、切れ目部48を真横に向けた状態において、インジケータ46Aの上半分を例えば青色に着色し、下半分を例えば赤色に着色すれば、掛金ロック状態においては、図7(a)に示すように、下側の差込穴部12を通じて赤色部分67が目視され、掛金開放状態においては、図7(b)に示すように、上側の差込穴部11を通じて青色部分68が目視される。
【0044】
前記本発明に係る錠は、鉄道車両における前面貫通開き戸に限らず,他の開き戸にも適用することができるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
1 開き戸用錠装置
2 錠座
3 受金
4 掛金
9 鍵穴
11,12 差込穴部
21 止金
27A,27B 係合凹部
28 係合部
36 忍錠
43 鍵係止部
46 インジケータ(表示板)
48 切れ目部
60 鍵
67 赤色部分
68 青色部分
69 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸の表裏いずれかの面に固定され鍵穴を有する錠座と、この錠座の表面側に前記開き戸の表裏面と平行な面内を回転可能に取り付けられている掛金と、前記錠座の裏面側に設けられ前記掛金と一体的に回転するように前記掛金に設けられる止金と、前記錠座の裏面側において前記鍵穴に対応する位置に回転可能に設けられ前記鍵穴から差し込まれる鍵に係脱可能に係合する忍錠とを備え、前記掛金は、ドア枠側に設けた受金に係脱可能に係合することで、前記開き戸の開放を規制するものであり、前記鍵を前記忍錠に係合させた状態で前記鍵にて前記忍錠を回転させることにより、前記忍錠が、前記止金に係合して掛金の回転を規制する掛金ロック状態と、前記止金との係合が解除されて前記掛金の回転を許容する掛金開放状態とを選択的に取り得る開き戸用錠装置であって、
前記鍵穴は、中心に位置する丸穴部と、この丸穴部から半径方向に延びる一対の差込穴部をそれぞれ備えるものであり、
前記忍錠の、前記鍵穴側の面に、半径方向に延びる1つの切れ目部を有する環状の表示板が、その中心が前記忍錠の回転中心と一致するように固定され、前記忍錠が掛金ロック状態または掛金開放状態にあるときに、前記切れ目部が前記一対の差込穴部のいずれか一方に対向する位置になることを特徴とする開き戸用錠装置。
【請求項2】
前記表示板は、視覚的に明確に区別できるように彩色され、あるいは仕上げられ、またはその両方の処理が施されて明確に差別化することにより、前記忍錠が掛金ロック状態または掛金開放状態にあるときに、前記一対の差込穴部を通じて視認される色が異なる構成とされていることを特徴とする請求項1記載の開き戸用錠装置。
【請求項3】
前記掛金は、前記忍錠の係合部が係脱可能に係合することで前記掛金が前記受金に係合された状態を維持する第1の係合凹部と、前記忍錠の係合部が係脱可能に係合することで前記掛金が前記受金との係合が解除された状態を維持する第2の係合凹部とを有することを特徴とする請求項1または2記載の開き戸用錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−106169(P2011−106169A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262434(P2009−262434)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)