説明

開口部フレーム及び開口部構造

【課題】突条をALC板の小口の長さ方向の一部だけに設けた場合に、外観上すっきりとした印象を与え、開口部周辺の所定の品質を容易に確保できるようにすること。
【解決手段】突条を有する開口部隣接部21aと非開口部に隣接して突条を有さない非開口部隣接部21bとが連なって構成される小口を有する外壁材21の小口に隣接し、少なくともサッシを取り付けるための開口部フレーム10において、開口部隣接部21aに沿う開口部補強材11と、非開口部隣接部21bに沿う非開口部補強材12と、外壁材21の小口に沿うように開口部補強材11及び非開口部補強材12をずらして連結する連結部材13と、を有することを特徴とする開口部フレーム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部構造及び開口部の外壁材を補強する開口部フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
サッシが壁面に対して奥行き感があるように構成された開口部に隣接するALC板(軽量気泡コンクリート板)等の外壁材において、突条を有する外壁材に関する技術がある(例えば特許文献1)。一方、開口部周辺の補強材において、縦補強材の上下の固定部分以外は、一般には一本の真っ直ぐな要素で構成されている(例えば特許文献2、特許文献3)。
【0003】
図5を用いて従来の技術を用いた場合の説明を行う。図5は従来の開口部フレーム及び開口部構造を説明する図であり、(a)は開口部の正面図、(b)は開口部フレームの斜視図、(c)は(a)の各部断面図である。
【0004】
ここで、天井から床までの全ての高さに開口部が形成される場合ではなく、図5(a)に示すように、天井から床に至る途中の高さまで開口部を形成する場合に、開口部フレームを用いた開口部構造を考える。開口部Xの周りには、図5(c)に示すように、開口部Xの側方に配設され突条を有する外壁材91と、開口部Xの下方に配設され突条を有しない外壁材92がある。
【0005】
この場合、特許文献1の技術を用いて開口部フレームを取り付けるとすると、図5(b)に示すような、真っ直ぐに延設された2本の山形鋼の間に対して横方向の山形鋼を溶接することで得られるH形状をした開口部フレーム90が用いられることになる。
【0006】
図5(c)に示すように、外壁材91の開口部側の端部には、突条91aが形成され、これは開口部Xの位置にかかわらず同じ形状である。即ち、開口部フレーム90の縦補強材の形状に合うように、開口部の側方の外壁材91は、開口部に隣接する断面(A−A断面)も開口部より下方で外壁材92と隣接する断面(B−B断面)も同じ形状に構成されていた。
【0007】
このような場合、突条91aを有する外壁材91と、突条を有しない外壁材92を付き合わせると、図5(c)のB−B断面に見られるように、外壁材の存在しない凹部が形成される。そして、この凹部に無機充填材94を充填することで、防音性能や耐火性能を確保していた。
【0008】
【特許文献1】特願2002−349609
【特許文献2】特願平8−250212
【特許文献3】特願平8−161401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、隣接する外壁材の間に形成された凹部に対し、無機充填材を充填すると、凹部は内部に隠蔽されてしまう部分ではあるが、外観上煩雑な印象を与えたり、工程が複数になることによって開口部周辺の防音性能や耐火性能等の所定の品質を確保するために手間がかる原因となった。一方、突条を外壁材の小口の長さ方向の一部だけに設けただけでは、縦補強材が真っ直ぐに延設されている以上、前述の問題を根本的に解決することは困難であった。
【0010】
本発明の目的は、突条を外壁材の小口の長さ方向の一部だけに設けた場合に、外観上すっきりとした印象を与え、開口部周辺の所定の品質を容易に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、次の通りである。
【0012】
(1)
突条を有する開口部隣接部と非開口部に隣接して突条を有さない非開口部隣接部とが連なって構成される小口を有する外壁材の小口に隣接し、少なくともサッシを取り付けるための開口部フレームにおいて、前記開口部隣接部に沿う開口部補強材と、前記非開口部隣接部に沿う非開口部補強材と、前記外壁材の小口に沿うように前記開口部補強材及び前記非開口部補強材をずらして連結する連結部材と、を有することを特徴とする開口部フレーム。
【0013】
(2)
外壁材と、前記外壁材を補強する開口部フレームと、を有する開口部構造において、前記外壁材は、開口部に隣接して突条を有する開口部隣接部と非開口部に隣接して突条を有さない非開口部隣接部とが連なって構成される小口を有し、前記開口部フレームは、前記開口部隣接部に沿う開口部補強材と、前記非開口部隣接部に沿う非開口部補強材と、前記外壁材の小口に沿うように前記開口部補強材及び前記非開口部補強材をずらして連結する連結部材と、を有することを特徴とする開口部構造。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、開口部フレームの開口部補強材と非開口部補強材とを連結する際、外壁材の小口の表面に沿うように構成することによって、突条を外壁材の小口の長さ方向の一部だけに設けた場合に、外観上すっきりとした印象を与え、開口部周辺の所定の品質を容易に確保できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
図1及び図2を用いて第1実施形態を説明する。図1は本実施形態の開口部フレーム及び開口部構造を説明する図であり、(a)が開口部構造の外壁材の状態を示す正面図、(b)が開口部フレームの斜視図、(c)が(a)の各部断面図である。図2は本実施形態の開口部フレームの連結部の詳細構造を説明する斜視図であり、(a)が連結した状態における正面図、(b)が連結した状態における斜視図、(c)が連結する過程における斜視図である。
【0016】
まず、図1を用いて、開口部フレーム10の構造及び開口部フレーム10が配設される建物の開口部構造を説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、開口部周りには、ALC板(軽量気泡コンクリート板)等の外壁材21、22が配設される。図1において、開口部Xの両側方には外壁材21が配設され、開口部Xの下方には外壁材22が配設される。ここで、外壁材21の上方は開口部Xと隣接する開口部隣接部21aとなり、外壁材21の下方は開口部Xとは隣接せずに外壁材22と隣接する非開口部隣接部21bとなる。
【0018】
図1(c)に示すように、開口部隣接部21aの小口と非開口部隣接部21bの小口とは形状が異なる。即ち、開口部隣接部21aは、サッシ23を取り付ける空間が必要であるために、小口の一部を切り欠くようにして突条が形成される(C−C断面参照)。これに対し、非開口部隣接部21bは、外壁材22との間で耐火性及び断熱性を保つために外壁材22の端部の形状に合わせる必要があり、小口の一部を切り欠かないため突条が形成されない(D−D断面参照)。このように、外壁材21は開口部Xに隣接するか否かで、それぞれの機能を発揮するために断面形状が異なっている。
【0019】
サッシと必要に応じてサッシの上および/または下のALCパネルを取り付けるための補強材として、図1(b)に示すような開口部フレーム10が配設される。開口部フレーム10は、外壁材21の小口に隣接する縦補強材と、縦補強材同士を連結し外壁材22の小口及び開口部Xに隣接する横補強材とを有する。
【0020】
縦補強材としては、開口部隣接部21aに沿う開口部補強材11と、非開口部隣接部21bに沿う非開口部補強材12と、外壁材21の小口の表面に沿うように開口部補強材11及び非開口部補強材12をずらして連結する連結部材13とを有する。尚、開口部補強材11及び非開口部補強材12は同一形状の山形鋼であり、連結部材13はL字状に直角に曲がっている。また、横補強材としては、補強材14を有し、補強材14の下部には開口部Xの下方にある外壁材22が取り付けられる。
【0021】
次に、図2を用いて各補強材11、12の連結構造について、詳細に説明する。
【0022】
図2(a)に示すように、開口部補強材11と非開口部補強材12とは、それぞれの端部が組み付けられる。本実施形態では、開口部補強材11の下端の一部11aを切り欠き、非開口部補強材12の上端の一部12aの上に重ねている。このように、切り欠くことによって所望の寸法に対応することができる。
【0023】
図2(a)乃至(c)に示すように、L字形に形成された連結部材13は、開口部補強材11の側面と非開口部補強材12の上端に当接している。そして、これらが当接した箇所において溶接がなされ、開口部補強材11、非開口部補強材12及び連結部材13は一体となり、開口部フレーム10の縦補強材が形成される。
【0024】
加えて、本実施形態においては、非開口部補強材12の側面と連結部材13の非開口部補強材12の側方に突出した突出部13aの下面との間に補強材14を溶接固定し、図1(b)に示すような開口部フレーム10としている。
【0025】
このように、開口部補強材11と非開口部補強材12とをL字状に直角に曲がった連結部材13によって連結することにより、開口部隣接部21aと非開口部隣接部21bとが連なって構成される外壁材21の小口の表面に沿うように、開口部フレーム10の開口部補強材11と非開口部補強材12をずらして連結することができる。すると、開口部フレーム10は、外壁材21に沿うことができる。したがって、建物の開口部構造において、突条を外壁材21の小口の長さ方向の一部(本実施形態においては開口部隣接部21aの部分)だけに設けた場合に、外観上すっきりとした印象を与え、開口部周辺の所定の品質を確保することができる。また、外壁材に凹部が形成されないため、無機充填材を充填する手間もないため、容易に、開口部周辺の所定の品質を確保することができる。
【0026】
尚、本実施形態の開口部フレーム10は、少なくとも縦補強材である、開口部補強材11、非開口部補強材12及び連結部材13を有するものであればよいが、補強材14を有する構成としてもよく、その他、図3に示すような継手材15を付帯してもよい。図3は本実施形態の変形例における開口部フレームの連結部の詳細構造を説明する斜視図であり、(a)が連結した状態における正面図、(b)が連結した状態における斜視図、(c)が連結する過程における斜視図である。
【0027】
図3に示すように、板状体の継手材15を開口部補強材11の室内側の側面と非開口部補強材12の室内側の側面とにまたがるように配設し、溶接固定する。このようにすることで、開口部補強材11と非開口部補強材12との連結部の強度をより高くすることができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
図4を用いて第2実施形態を説明する。図4は本実施形態の開口部フレームの連結部の詳細構造を説明する斜視図であり、(a)が連結した状態における正面図、(b)が連結した状態における斜視図、(c)が連結する過程における斜視図である。前述の実施形態と同様の構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、本実施形態においては開口部補強材11の端部と非開口部補強材12の端部とが重ならず、間隔Dを隔てて配設されている。このため、連結部材13の非開口部補強材12と当接する面の長さLが前述の実施形態よりも長くなっている。この他、連結部材13は、外壁材21の小口の表面に沿うように開口部補強材11及び非開口部補強材12をずらして連結することは前述と同様である。
【0030】
尚、本実施形態の開口部フレーム10においても、少なくとも縦補強材である、開口部補強材11、非開口部補強材12及び連結部材13を有するものであればよいが、前述の実施形態の変形例と同様、補強材14を有する構成としてもよく、更に継手材15を付帯してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、建物の開口部全般に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の開口部フレーム及び開口部構造を説明する図。
【図2】第1実施形態の開口部フレームの連結部の詳細構造を説明する斜視図。
【図3】第1実施形態の変形例における開口部フレームの連結部の詳細構造を説明する斜視図。
【図4】第2実施形態の開口部フレームの連結部の詳細構造を説明する斜視図。
【図5】従来の開口部フレーム及び開口部構造を説明する図。
【符号の説明】
【0033】
X…開口部、10…開口部フレーム、11…開口部補強材、11a…一部、12…非開口部補強材、12a…一部、13…連結部材、13a…突出部、14…補強材、15…継手材、21…外壁材、21a…開口部隣接部、21b…非開口部隣接部、22…外壁材、23…サッシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突条を有する開口部隣接部と非開口部に隣接して突条を有さない非開口部隣接部とが連なって構成される小口を有する外壁材の小口に隣接し、少なくともサッシを取り付けるための開口部フレームにおいて、
前記開口部隣接部に沿う開口部補強材と、
前記非開口部隣接部に沿う非開口部補強材と、
前記外壁材の小口に沿うように前記開口部補強材及び前記非開口部補強材をずらして連結する連結部材と、
を有することを特徴とする開口部フレーム。
【請求項2】
外壁材と、前記外壁材を補強する開口部フレームと、を有する開口部構造において、
前記外壁材は、開口部に隣接して突条を有する開口部隣接部と非開口部に隣接して突条を有さない非開口部隣接部とが連なって構成される小口を有し、
前記開口部フレームは、前記開口部隣接部に沿う開口部補強材と、前記非開口部隣接部に沿う非開口部補強材と、前記外壁材の小口に沿うように前記開口部補強材及び前記非開口部補強材をずらして連結する連結部材と、を有することを特徴とする開口部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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