説明

開口部構造

【課題】 建具が配設された建物の開口部において、建具とその建具台との間に水が浸透した場合でも、建物の内部への水の浸透を抑止する、開口部構造を提案すること。
【解決手段】 開口部が形成された建物の壁10と、この開口部の内面に該開口部を遮蔽可能に配設されるサッシ20と、サッシ20の屋内側に隣接して配設される窓枠30と、開口部の下端に配設されて、その上面に建物の屋内から屋外に向って低くなるように形成された傾斜部11aを有しており、サッシ20と窓枠30を支持する窓台11とから構成される開口部構造1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の出入口や窓などの開口部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物からの出入り、採光、換気、通気等を目的として、建物の壁には、開口部が形成されている。そして、この開口部には、必要に応じて、気密性、水密性、遮音性、断熱性、耐風圧性等を確保するために、当該開口部を開閉可能にする建具が設けられる場合がある。
【0003】
このような性能を有する建具(以下「サッシ」という場合がある)120は、図4に示すように、従来、建物の壁110の一部に形成された開口部において、当該開口部の下部の壁110内に水平に設けられた建具台(以下「窓台」という場合がある)111の上に防水紙150を介して配設されており、両端部に立設された2本のたて枠と、これらのたて枠の上下に横設された上部枠及び下部枠121と、これらの各枠部材により形成された枠内に開閉可能に設けられた引き戸(又は開き戸)122とにより開口部と同形状に形成されている。
【0004】
なお、サッシ120の引き戸122は、上部枠及び下部枠121にそれぞれ少なくとも2本設けられたレール125によりその開閉運動が誘導されている。
また、防水紙150は、窓台111の上面と外壁面材113の上端に沿って貼着された後、外壁面材113と外壁114との間の外壁面材の屋外側側面に貼着されて、サッシ120と壁110との間に浸透した水を壁110内部への浸透を防止している。
【0005】
そして、サッシ120は、その水密性、気密性の性能を向上させるために、さまざまな工夫がなされている。例えば特許文献1の建具には、上部枠及び下部枠121のレール125の屋外側側面に接する弾性材により形成された防水部材124が引き戸122の下端に取り付けられており、屋外からの水や空気の浸入を防止している。また、レール125には、レール125の屋外側側面で防水部材124との設置面よりも上方から突出するように、水返し片123が形成されている。そのため、当該サッシ120は、水の屋外から屋内への浸入を防水部材124と水返し片123により二重に防止する構造となっている。なお、図中の符号130は窓枠を示し、符号112は壁110の内壁を示している。
【特許文献1】特開平06−93771号公報([0010]−[0022]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の開口部構造1は、サッシ120そのものの水密性、気密性等は確保されているが、何らかの原因によりサッシ120と窓台111との間や、たて枠と下部枠121との間に水W(図5参照)が浸透した場合(以下、サッシ120と窓台111との間に浸透してきた水Wを「浸透水W」という場合うがある)、屋内にこの浸透水Wが浸透する場合があるという問題点を有していた。
【0007】
つまり、従来、サッシ120の下部に配置された窓台111は水平に形成されているため、サッシ120と窓台111との間に浸透水Wが浸透した場合に、浸透水Wを屋外へ排出するように誘導する構成になっていない。特に、外壁面材113の上端が窓台111より上方に突出している場合(図5(a)参照)や、施工精度などにより防水紙150にたわみが生じていた場合(図5(b)参照)等には、浸透水Wが、屋外に排水されることなく、滞留した後、屋内や壁110内に浸透する場合があった。
【0008】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、建具が配設された建物の開口部において、建具とその建具台との間に水が浸透した場合でも、建物の内部への水の浸透を抑止する、開口部構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、開口部が形成された建物の壁と、前記開口部の内面に該開口部を遮蔽可能に配設される建具と、前記開口部の下端に配設されて前記建具を支持する建具台と、から構成される開口部構造であって、前記建具台が、その上面に前記建物の屋内から屋外に向かって低くなるように形成された傾斜部を有していることを特徴としている。
【0010】
かかる開口部構造は、建具台の上面に、建物の屋内から屋外に向かって低くなるように形成された傾斜部を有しているため、何らかの原因により建具と建具台との間に水が浸透した場合でも、この傾斜部によりこの浸透水を屋外へ誘導することを可能としている。そのため、浸透水が、建具台と建具との間に滞留することや、壁の内部又は屋内に浸透することがない開口部構造が構築される。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の開口部構造であって、前記開口部の内面であって前記建具の屋内側に窓枠が配設されており、前記建具台の上面に、前記窓枠の設置が可能な水平部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
かかる開口部構造は、建具台の上面に、傾斜部と水平部とが形成されているため、開口部内面の屋外側に配設される建具は、傾斜部の上方に配設されているため、屋外から何らかの原因により建具と建具台との間に浸透した水を、屋外へと誘導する。また、建具台の上面の屋内側には、水平部が形成されているため、建具の屋内側に配設される窓枠の設置が可能となっている。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の開口部構造であって、前記建具は、上面が水平で下面が前記傾斜部と同じ勾配の傾斜に形成された断面形状が三角形又は台形の受け材を介して前記傾斜部の上面に配設されることを特徴としている。
【0014】
かかる開口部構造は、建具台の傾斜部と建具との間に、上面が水平で下面が前記傾斜部と同じ勾配の傾斜に形成された受け台を設置することにより、傾斜部の上方に水平面を形成して建具を建具台の傾斜部の上方に配設することによる建具のがたつきを防止するため、好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の開口部構造は、建具が配設された建物の開口部において、建具と建具台との間に水が浸透した場合でも、建物の内部への水の浸透を抑止することが可能となり、水密性に優れた建物の構築を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態では、壁に形成された開口部の内面に形成される窓であって、その屋外側に建具であるサッシが配設されて、屋内側に化粧材としての窓枠が配設された開口部構造について説明を行う。
ここで、図1は、本発明の開口部構造を示す部分断面図であり、図2は、本発明の開口部構造における窓台の構成を示す斜視図である。また、図3(a)は、本発明の開口部構造における浸透水の排水状況を示す概略図であり、図3(b)は、本発明の開口部構造において外壁面材の上端が窓台より高い場合の浸透水の排水状況を示す概略図である。
【0018】
本実施形態に係る開口部構造1は、図1に示すように、開口部が形成された建物の壁10と、この開口部の内面に該開口部を遮蔽可能に配設されるサッシ20と、開口部の内面であってサッシ20の屋内側に配設される窓枠30と、開口部の下端に配設されてサッシ20と窓枠30とを支持する建具台である窓台11とから構成されている。
【0019】
窓台11は、外壁面材13、内壁12、断熱材(図示せず)等から構成された壁10の開口部下端に配設されており、その上面に建物の屋内から屋外に向かって低くなるように形成された傾斜部11aと窓枠30の設置が可能な水平部11bとを有している。なお、壁10の屋外側には、外壁面材13に沿って、外壁14が配設されている。
【0020】
図2に示すように、窓台11の傾斜部11aの上面には、所定の間隔を有して、その上面が水平で、その下面は傾斜部11aと同じ勾配の傾斜面と外壁面材13上端の形状にあわせた水平面とを有した、断面台形状の受け材40が配設されている。なお、本実施形態では、受け材40を釘41により、窓台11に固定する構成としている。ここで、受け材40の固定方法は限定されるものではなく、例えば、ビスや接着剤により窓台11に固定してもよい。
【0021】
図1に示すように、サッシ20は、開口部の両端に配設されるたて枠(図示せず)とこのたて枠の上下端に配設される上部枠(図示せず)及び下部枠21から矩形状に形成された枠材と、この枠材の内面に開閉可能に設けられた2枚の引き戸22,22から構成されている。そして、サッシ20は、その下面が水平の下部枠21が受け材40を介して、窓台11の傾斜部11aの上部に配設されている。
なお、サッシ20の引き戸22は、上部枠及び下部枠21にそれぞれ少なくとも2本設けられたレール23,23によりその開閉運動が誘導されている。
【0022】
窓枠30は、サッシ20の屋内側に隣接して配設されており、図1に示すように、窓台11の水平部11bの上部と内壁12の上端にまたがって設置されている。
【0023】
また、本実施形態に係る開口部構造1は、窓台11の傾斜部11aと外壁面材13の表面に防水紙50が貼着されてあり、サッシ20と外壁14やサッシ20と窓枠30との間から浸透した浸透水W(図3参照)が、壁10の内部に浸透することを防止している。
ここで、本実施形態では、防水紙50として、釘穴シール性の高いものを使用するものとし、受け材40の設置の際に釘41が貫通しても、浸透水Wが壁10の内部に浸透しない構成とする。
【0024】
以上のように構成された本実施形態の開口部構造1により、外部からの水の浸透を防ぐ、水密性に優れた建物を提供することが可能となる。
つまり、例えば、サッシ20と窓枠30との間から水が浸透した場合でも、図3(a)に示すように、浸透水Wは窓台11の傾斜部11aに沿って屋外へと流下するため、屋内や、壁10の内部に浸透することがない。
【0025】
また、施工誤差等により、図3(b)に示すように、外壁面材13の上端が窓台11の上面よりも高い場合でも、浸透水Wは、外壁面材13と窓台11との段差部分に滞留することがあっても、屋内や壁10の内部に浸透することはない。同様に、施工時に防水紙50にたるみが形成された場合も、その段差部分に浸透水Wが滞留することがあっても、屋内や壁10の内部に浸透することはない。
【0026】
このため、屋外からの浸透水Wの浸透が原因による、屋内の湿気やカビを防ぎ、利用者の健康に配慮した建物を提供することが可能となる。
【0027】
また、窓台11の傾斜部11aの上面には、受け材40が配設されているため、傾斜部11aの上面に水平面が形成されて、その下端が水平の下部枠21を有したサッシ20の配設が可能となっている。また、窓台11の屋内側上面には、水平部11bが形成されているため、特殊な部材を介することなく、窓枠30の開口部内面への設置が可能となっている。したがって、従来の開口部構造と比較して、釘で打ちつけるのみの受け材40の固定作業が加わるのみで、水密性に優れた開口部構造1の構築が可能となる。
【0028】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、壁に形成された窓に本発明の開口部構造を適用するものとしたが、当該開口部構造は窓に限定されるものではなく、例えば、ベランダの出入口や玄関など、建具を利用したあらゆる開口部に適用可能である。
【0029】
また、建具として、引き戸により開口部を遮蔽するサッシを使用するものとしたが、建具の構成は限定されるものではなく、例えば開き戸を利用した建具を使用してもよい。
また、建具の屋内側に隣接して窓枠を配設する構成としたが、窓枠が配設されていない建具のみの構成や、建具と床面との高さを調節する部材を配設した構成としてもよい。
【0030】
また、建具としては、鋼製建具、アルミ製建具、木製建具、ビニル製建具等、公知のあらゆる建具が適用可能であることはいうまでもない。
また、建具台として、傾斜部と水平部とを有した形状のものを使用したが、建具と建具台との間に浸透した水を屋外に排水することが可能な傾斜部をその上面に有していれば、建具台の形状は限定されるものではない。
【0031】
また、建具の設置に関して、受け材を介して建具台の傾斜部の上面に設置するものとしたが、例えば、建具の下枠の下面を傾斜部に合せて形成することで、受け材を省略する構成としてもよい。
また、建具台と、受け材とを予め一体に構成した部材を使用することにより、受け材の設置作業を省き、施工時間を短縮する構成としてもよい。
また、建具台の材質は限定されるものではなく、例えば、木製、アルミ製、鋼製等のものを使用してもよい。同様に受け材の材質も限定されるものではないことはいうまでものない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の開口部構造を示す部分断面図である。
【図2】本発明の開口部構造における窓台の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の開口部構造における浸透水の排水状況を示す概略図であり、(b)は、本発明の開口部構造において外壁面材の上端が窓台より高い場合の浸透水の排水状況を示す概略図である。
【図4】従来の開口部構造を示す部分断面図である。
【図5】従来の開口部構造における浸透水の排水状況を示す概略図であり、(a)は外壁面材の上端が窓台より高い場合、(b)は防水紙にたるみが生じていた場合を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 開口部構造
10 壁
11 窓台(建具台)
11a 傾斜部
11b 水平部
20 サッシ(建具)
30 窓枠
40 受け材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された建物の壁と、前記開口部の内面に該開口部を遮蔽可能に配設される建具と、前記開口部の下端に配設されて前記建具を支持する建具台と、から構成される開口部構造であって、
前記建具台が、その上面に前記建物の屋内から屋外に向って低くなるように形成された傾斜部を有していることを特徴とする開口部構造。
【請求項2】
前記開口部の内面であって前記建具の屋内側に窓枠が配設されており、
前記建具台の上面に、前記窓枠の設置が可能な水平部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の開口部構造。
【請求項3】
前記建具は、上面が水平で下面が前記傾斜部と同じ勾配の傾斜に形成された断面形状が三角形又は台形の受け材を介して前記傾斜部の上面に配設されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の開口部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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