説明

開始剤としてビスアシルホスフィンオキシドを含む光重合可能な歯科材料

【課題】可視領域において重合を誘発し、水溶液系において十分に可溶性であり、そして水および酸の存在下で安定である、歯科材料のための光開始剤を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含む重合可能な歯科材料を提供する。この歯科材料は、式(I)の少なくとも1種のビスアシルホスフィンオキシドを含むことによって特徴付けられ、ここで変数は本明細書中に定義される通りであり、そのビスアシルホスフィンオキシドは、少なくとも1つのPG−Y−R−X−基を有し、かつRが存在しない場合は、Xおよび/またはYは存在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光開始剤(photoinitiator)としてビスアシルホスフィンオキシドを含有する重合可能な歯科材料(例えば、接着剤、コーティング、接合剤および合成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のラジカル重合可能な歯科材料(例えば、封止剤、象牙質接着剤およびエナメル接着剤、固定材料および充填合成物)は、光の照射により主に硬化される。これについての理由は、光硬化材料の管理の容易さである。これらは、ほとんどが1つの成分を有する。すなわち、これらは、使用前に混合される必要がない。さらに、これらは、長い作用時間を示し、次いで所望される場合に照射に際して急速に硬化する。これらは、室温での良好な保存安定性によってもまた、特徴付けられる。
【0003】
着色された系の場合における組織適合性および適正な硬化の理由のために、光での照射は、一般に、400nm〜500nmの波長範囲である。ラジカル重合可能な歯科材料において使用された第一の光開始剤系の1つは、特許文献1に記載されるような、α−ジケトンとアミンとの組み合わせであった。この光開始剤系を含む、対応する歯科合成物は、例えば、特許文献2および特許文献3に開示されており、好ましくはカンファーキノンがα−ジケトンとして使用される。しかし、他のジケトンもまた使用されており、それは例えば、1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオンと環状ジケトンとの組み合わせである(特許文献4)。
【0004】
単一成分光開始剤である、いわゆるα−スプリッタ(例えば、チタノセン、アシルホスホネート、アシルホスフィンオキシドまたはビスアクリルホスフィンオキシド)もまた、光硬化歯科材料として使用される。しかし、チタノセンは特に反応性ではなく、好ましくはアミンおよび/または過酸化物と組み合わせて使用される(特許文献5)。例えばベンゾイル−ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートのようなアシルホスホネートもまた、その小さな硬化深度に起因して、好ましくは、第二の開始剤系(例えば、カンファーキノン/アミン系)と組み合わせて使用される(特許文献6)。
【0005】
特許文献7は、ラジカル重合のための開始剤としてアシルホスフィンオキシド(例えば、特許文献8に記載される2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド)を含む歯科組成物を開示する。
【0006】
特許文献9は、光開始剤としてアシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシドを含む歯科組成物を記載する。この材料は、硬化後に向上した表面輝度をその材料に与えるといわれている充填粒子の特別な混合物を含む。
【0007】
開始剤として、アシルホスフィンオキシド、有機過酸化物、第三級アミンおよび芳香族スルフィン酸の組み合わせを含む歯科組成物は、特許文献10に開示される。とりわけ酸性モノマーが、モノマーとして使用され得る。
【0008】
特許文献11は、抗菌性接着剤組成物を記載する。この組成物において、好ましくは、アシルホスフィンオキシドとα−ジケトンとの混合物が、開始剤系として使用される。
【0009】
特許文献12は、C=C結合を有する化合物の光重合のための開始剤として適しているといわれているビスアシルホスフィンオキシドを開示する。
【0010】
2工程で硬化され得る光重合可能な歯科組成物は、特許文献13により公知である。これらの大部分は、450nm未満の吸収極大を有する第一の光開始剤成分と、450nmを超える吸収極大を有する第二の光開始剤成分とを含む。ビスアシルホスフィンオキシドは、第一の光開始剤成分として使用され、α−ジケトンは、第二の光開始剤成分として使用される。
【0011】
特許文献14は、チオール−エン重合のための光開始剤としてのビスアシルホスフィンオキシドを含む光重合可能な歯科組成物に関する。
【0012】
特許文献15は、エチレン性不飽和化合物に基づいた歯科材料のための光開始剤としての、アルキルビスアシルホスフィンオキシドの使用を開示する。これらの光開始剤は、調製が容易だといわれている。
【0013】
特許文献16は、光重合のための光開始剤として約200nm〜約600nmの範囲で活性な、アルコキシフェニル置換ビスアシルホスフィンオキシドの使用を開示する。
【0014】
特許文献17は、オレフィン性不飽和モノマーのための光開始剤として適した、深色性モノアシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドを開示する。
【0015】
α−ジケトンおよびアミンを含む光開始剤系は、限定された程度でのみ、セルフエッチング、セルフコンディショニングの歯科材料における使用に適している。このような歯科材料は、通常は、硬質な歯の物質をエッチングすることができる酸性モノマーを含み、その結果、その硬質な歯の物質の酸を用いたプレコンディショニングが必要とされない。しかし、α−ジケトン/アミン光開始剤系は、その酸性モノマーによりプロトン化され、それゆえ効率の損失を被る。
【0016】
単分子結合の切断(いわゆる、Norrish I型切断)により重合誘発ラジカルを形成する光開始剤(例えば、アシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシド)は、酸性条件下ではより適するが、それらは、水溶液系にわずかしか可溶でないという不利を有する。さらに、ほとんどの場合、α−ジケトン/アミン光開始剤系と比較してより高い開始剤濃度が必要とされ、その結果、上記材料の硬化後に、未反応で、かつそれゆえ溶出可能な光開始剤部分が存在するという危険がある。これは、毒性学的な観点から不利である。さらに、アシルホスフィンオキシドは、炭素/リン結合が求核性化合物(例えば、水またはアルコール)により容易に開裂することが知られている。その光開始剤はそれにより徐々に分解され、これは結果として、その開始剤の活性の損失、そしてそれゆえ修復材料の不完全な硬化を有する。これは、その歯科材料が、保存の間の時間にわたって、その臨床的適性を失うことを意味する。
【特許文献1】英国特許出願公開第1 408 265号明細書
【特許文献2】米国特許第4,457,818号明細書
【特許文献3】米国特許第4,525,256号明細書
【特許文献4】米国特許第6,204,302号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 334 338号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0 336 417号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0 173 567号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第29 09 992号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1 236 459号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 948 955号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2002/0035169号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第34 43 221号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第38 01 511号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第38 37 569号明細書
【特許文献15】米国特許第5,399,770号明細書
【特許文献16】独国特許出願公開第195 32 358号明細書
【特許文献17】国際公開第03/019295号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、可視領域において重合を誘発し、水溶液系において十分に可溶性であり、そして水および酸の存在下で安定である、歯科材料のための光開始剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1) 少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含む、重合可能な歯科材料であって、その歯科材料は、式(I)
【0019】
【化1A】

の少なくとも1種のビスアシルホスフィンオキシドを含むことによって特徴付けられ、
ここで、変数は、互いに独立して、以下:
は、1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖または分岐C〜C14アルキル残基、PG−Y−R−X−、置換または非置換の芳香族C〜C14ラジカルである;
は、存在しないか、または1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖もしくは分岐C〜C20アルキレンラジカルである;
は、H、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基またはPG−Y−R−X−である;
は、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基または−O−C−Cアルキル残基である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
PGは、重合可能な基である;
Xは、存在しないか、OまたはSである;
Yは、存在しないか、O、S、エステル基、アミド基またはウレタン基である;
の意味を有し、
そのビスアシルホスフィンオキシドは、少なくとも1つのPG−Y−R−X−基を有し、かつRが存在しない場合は、Xおよび/またはYは存在しない、歯科材料。
(項目2) 項目1に記載の歯科材料であって、上記芳香族ラジカルは、1つ以上のO原子で遮断され得る1種以上のC〜C15アルコキシラジカルおよび/またはPG−Y−R−X−によって置換されている、歯科材料。
(項目3) 項目1〜2のいずれか1項に記載の歯科材料であって、上記1種以上の重合可能な基は、互いに独立して、ビニル、アリル、(メタ)アクリロイルおよび/またはビニルシクロプロピルから選択される、歯科材料。
(項目4) 項目1〜3のいずれか1項に記載の歯科材料であって、Xは何もなく、かつRは、1つ以上のO原子により遮断され得る直鎖または分岐C〜C20アルキレンラジカルである、歯科材料。
(項目5) 項目1〜4のいずれか1項に記載の歯科材料であって、少なくとも1つの上記変数が、以下:
は、非置換であるかまたはPG−Y−R−X−により置換されている、フェニルである;
は、−[CH−[−O−CH−CH−であり、n=1、2、3または4であり、かつm=0、1、2または3である;
は、H、C〜CアルキルまたはPG−Y−R−X−である;
は、C〜Cアルキルまたは−O−C−Cアルキルである;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
PGは、−CH−CH=CHまたは−CH=CHである;
Xは、存在しない;
Yは、存在しないかまたはOである;
の意味のうちの1つを有する、歯科材料。
(項目6) 項目1〜5のいずれか1項に記載の歯科材料であって、上記ビスアシルホスフィンオキシドは、1〜5つのPG−Y−R−X−基を含有する、歯科材料。
(項目7) 項目1〜6のいずれか1項に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、一官能性(メタ)アクリレート、メシチルメタクリレート、2−(アルコキシメチル)アクリル酸、N−一置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミド、N−一置換メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アリルエーテル、架橋する(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸とジイソシアネートとに由来するウレタン、架橋するピロリドン、ビスアクリルアミド、ビスメタクリルアミドから選択される、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含み、
その一官能性(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびプロピル(メタ)アクリレートであり、
その2−(アルコキシメチル)アクリル酸は、例えば、2−(エトキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸であり、
そのN−一置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミドは、例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドであり、
そのN−一置換メタクリルアミドは、例えば、N−エチルメタクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドであり、
その架橋する(メタ)アクリレートは、例えば、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルとの付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートであり、
そのジイソシアネートは、例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートであり、
その架橋するピロリドンは、例えば、1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサンであり、
そのビスアクリルアミドは、例えば、メチレンビスアクリルアミドまたはエチレンビスアクリルアミドであり、
そのビスメタクリルアミドは、例えば、N,N’−ジエチル−1,3−ビス−(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス−(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス−(アクリルアミド)−ブタン、1,4−ビス−(アクリロイル)−ピペラジンである、歯科材料。
(項目8) 項目1〜7のいずれか1項に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、ラジカル重合可能なカルボン酸、ラジカル重合可能なホスホン酸モノマー、ラジカル重合可能なリン酸エステル、ラジカル重合可能なスルホン酸から選択される、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含み、
そのラジカル重合可能なカルボン酸は、例えば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸であり、
そのラジカル重合可能なホスホン酸モノマーは、例えば、アルケンホスホン酸、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル]−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルであり、
そのラジカル重合可能なリン酸エステルは、例えば、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸または2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸または2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシリン酸、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシリン酸、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素リン酸および1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素リン酸であり、
そのラジカル重合可能なスルホン酸は、例えば、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸である、歯科材料。
(項目9) 項目1〜8のいずれか1項に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、1個以上のホスホン酸基または1個以上のリン酸基を有する、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含み、これらの基は、酸形態または部分的エステル化形態で存在し得る、歯科材料。
(項目10) 項目1〜9のいずれか1項に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、少なくとも1種の充填剤を含む、歯科材料。
(項目11) 項目10に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、
ZrOおよびTiOのような酸化物ベースの非結晶球状材料、
発熱性ケイ酸、ナノ粒子性のAl、Ta、Yb、ZrO、AgまたはTiOのような、ナノ粒子性充填剤またはミクロ微細充填剤、
SiO、ZrOおよび/またはTiOの混合酸化物、
沈降ケイ酸、
0.01μm〜1μmの平均粒子サイズを有する、石英、ガラスセラミックまたはガラス粉末のような、ミニ充填剤、ならびに
三フッ化イッテルビウムまたはナノ粒子性硫酸バリウムのような、X線不透過性充填剤、
から選択される、少なくとも1種の充填剤を含む、歯科材料。
(項目12) 項目1〜11に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、安定剤、芳香剤、殺菌活性成分、フッ素イオン放出添加物、蛍光増白剤、可塑剤およびUV吸収剤から選択される、少なくとも1種の添加剤を含む、歯科材料。
(項目13) 項目1〜12のいずれか1項に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、
a)0.001重量%〜5重量%の上記式(I)のビスアシルホスフィンオキシド、
b)5重量%〜80重量%のラジカル重合可能なモノマー、
c)1重量%〜60重量%の酸性のラジカル重合可能なモノマー、
d)0重量%〜80重量%の溶媒、および
e)0重量%〜85重量%の充填剤、
を含む、歯科材料。
(項目14) 接着剤としての使用のための、項目13に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、0重量%〜30重量%の充填剤を含む、歯科材料。
(項目15) 接合剤または充填材料としての使用のための、項目13に記載の歯科材料であって、その歯科材料は、20重量%〜85重量%の充填剤を含む、歯科材料。
(項目16) 接着剤、コーティング材料、接合剤または充填材料の調製のための、項目1〜15のいずれか1項に記載の歯科材料の、使用。
(項目17) 接着剤、コーティング材料、接合剤または充填材料としての、項目1〜15に記載の歯科材料の、使用。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、可視領域において重合を誘発し、水溶液系において十分に可溶性であり、そして水および酸の存在下で安定である、歯科材料のための光開始剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記目的は、本発明にしたがって、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーと少なくとも1種の式(I)
【0022】
【化2】

のビスアシルホスフィンオキシドとを含む、重合可能な歯科材料により達成され、
ここで、変数は、互いに独立して、以下:
は、1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖または分岐C〜C14アルキル残基、PG−Y−R−X−、置換または非置換の芳香族C〜C14残基である;
は、存在しないか、または1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖もしくは分岐C〜C20アルキレンラジカルである;
は、H、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基またはPG−Y−R−X−である;
は、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基または−O−C−Cアルキル残基である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
PGは、重合可能な基である;
Xは、存在しないか、OまたはSである;
Yは、存在しないか、O、S、エステル基、アミド基またはウレタン基である;
の意味を有し、
そのビスアシルホスフィンオキシドは、少なくとも1つのPG−Y−R−X−基を有し、かつRが存在しない場合は、Xおよび/またはYは存在しない。
【0023】
基が酸素原子によって遮断され得る、ということの詳細は、酸素原子がその基の炭素鎖に挿入されている、すなわちその酸素原子は両側が炭素原子により結合されている、ということを意味することが理解されるべきである。この酸素原子は、それゆえ、末端の位置をとり得ない。複数の酸素原子が炭素鎖に組み込まれる場合、それらは互いに、各場合において、少なくとも1個の炭素原子により分離されなければならない。「炭素鎖」は、環状分子基を意味しない。その炭素鎖に組み込まれた酸素原子の総数は、その鎖における炭素原子の数よりも、少なくとも1小さい。
【0024】
の場合において必要に応じて存在する置換基は、好ましくは、1つ以上のO原子によって遮断され得るC〜C15アルコキシラジカル、PG−Y−R−X、チオメチル基、ジメチルアミノ基および/またはジエチルアミノ基から選択され、特に好ましくは、1つ以上のO原子によって遮断され得るC〜CアルコキシラジカルおよびPG−Y−R−Xから選択される。芳香族ラジカルは、1回以上、好ましくは1〜2回、置換され得る。
【0025】
好ましい重合可能な基は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基および/またはビニルシクロプロピル基である。
【0026】
Xが存在せず、Rが1つ以上のO原子により遮断され得る直鎖または分岐C〜C20アルキレンラジカルである式(I)の化合物が、好ましい。
【0027】
互いに独立して選択され得る、好ましい変数の意味は、以下:
は、非置換であるかまたはPG−Y−R−X−により置換されている、フェニルである;
は、−[CH−[−O−CH−CH−であり、n=1、2、3または4であり、かつm=0、1、2または3である;
は、H、C〜CアルキルまたはPG−Y−R−X−である;
は、C〜Cアルキルまたは−O−C〜Cアルキルである;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
PGは、−CH−CH=CHまたは−CH=CHである;
Xは、存在しない;
Yは、存在しないかまたはOである;
である。m=0の場合は、Yは好ましくはOである。
【0028】
式(I)のビスアシルホスフィンオキシドは、好ましくは1〜5個の、特に好ましくは1〜3個の、PG−Y−R−X基を有する。
【0029】
一般式(I)の官能化されたビスアシルホスフィンオキシドは、ビスアシルホスフィンオキシドについて知られている多段階の合成プロセスにより、生成され得る。例えば、第一の合成工程において、適切に置換された塩化ベンゾイルが、例えば、対応して置換されるブロモ安息香酸のエーテル化、および引き続いて塩化チオニルを用いる酸塩化物への変換により生成される。これは次いで、第二工程において、適切に置換されたアルキルホスフィン二リチウムまたはアリールホスフィン二リチウムと反応される。形成された生成物は次いで、式(I)のビスアシルホスフィンオキシドまで過酸化水素でさらに酸化される:
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

本発明に従う上記ビスアシルホスフィンオキシドの好ましい例は、以下に与えられる:
ビス−(3−アシルオキシメチル−2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド:
【0033】
【化6】

ビス−[3−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−2,4,6−トリメチルベンゾイル]−フェニルホスフィンオキシド:
【0034】
【化7】

ビス−{3−[2−(2−アリルオキシ−エトキシ)−エトキシメチル]−2,4,6−トリメチル−ベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド:
【0035】
【化8】

ビス−(3−アリルオキシメチル−2,6−ジメトキシ−4−メチル−ベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド:
【0036】
【化9】

ビス−{[3−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−2,6−ジメトキシ−4−メチル−ベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド:
【0037】
【化10】

ビス−{3−[2−(2−アリルオキシ−エトキシ)−エトキシメチル]−2,6−ジメトキシ−4−メチル−ベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド:
【0038】
【化11】

ビス−{3,5−[ビス−(アリルオキシメチル)−2,4,6−トリメチル−ベンゾイル]}−フェニルホスフィン:
【0039】
【化12】

ビス−{3,5−[ビス−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−2,4,6−トリメチル−ベンゾイル]}−フェニルホスフィンオキシド:
【0040】
【化13】

ビス−{3,5−ビス−[2−(2−アリルオキシ−エトキシ)−エトキシメチル]−2,4,6−トリメチル−ベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド:
【0041】
【化14】

ビス−{3,5−[ビス−(アリルオキシメチル)−2,6−ジメトキシ−4−メチル−ベンゾイル]}−フェニルホスフィン:
【0042】
【化15】

ビス−{3,5−[ビス−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−2,6−ジメトキシ−4−メチル−ベンゾイル]}−フェニルホスフィンオキシド:
【0043】
【化16】

ビス−{3,5−ビス−[2−(2−アリルオキシ−エトキシ)−エトキシメチル]−2,6−ジメトキシ−4−メチル−ベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド:
【0044】
【化17】

ビス−[2,4,6−トリメチル−ベンゾイル]−{4−[2−(2−アリルオキシ−エトキシ)−エトキシメチル]−フェニル}−ホスフィンオキシド:
【0045】
【化18】

ビス−[2,4,6−トリメチル−ベンゾイル]−[4−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−フェニル]−ホスフィンオキシド:
【0046】
【化19】

ビス−[2,4,6−トリメチル−ベンゾイル]−[4−アリルオキシメチル−フェニル]−ホスフィンオキシド:
【0047】
【化20】

ビス−[2,6−ジメトキシ−ベンゾイル]−[4−アリルオキシメチル−フェニル]−ホスフィンオキシド:
【0048】
【化21】

ビス−[2,6−ジメトキシ−ベンゾイル]−[4−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−フェニル]−ホスフィンオキシド:
【0049】
【化22】

ビス−[2,6−ジメトキシ−ベンゾイル]−{4−[2−(2−アリルオキシ−エトキシ)−エトキシメチル]−フェニル}−ホスフィンオキシド:
【0050】
【化23】

式(I)のビスアシルホスフィンオキシドは、紫外領域において吸収し、そしてまた、400nmよりも大きな吸収を示す。そのため、その光分解およびラジカル形成は、歯科分野において慣習的なハロゲンランプでの照射でか、またはLEDランプでの照射によっても、誘導され得る。式(I)のビスアシルホスフィンオキシドは、重合可能な基を含み、そして例えば共重合により、ポリマー中に組み込まれ得る。さらに、本発明に従うビスアシルホスフィンオキシドは、極性有機溶媒(例えば、アセトン、エタノール、アセトニトリルまたはテトラヒドロフラン(THF))あるいはそれらの水との混合物において、非常によく可溶性である(すなわち、溶解度が少なくとも0.01mmol/g)。本発明に従うビスアシルホスフィンオキシドが、既知のビスアシルホスフィンオキシドと比較して、より良い保存安定性を示すことが、特に有利である。この化合物は、高い加水分解安定性によって特徴付けられる、すなわち、それらは、42℃で60日間、CHCN:HO(60:40)の混合物中で、15%を超えて加水分解されることはない。
【0051】
本発明に従う歯科材料は、ラジカル重合可能なモノマーとして、一官能性(メタ)アクリレートまたは多官能性(メタ)アクリレートを含み得る。一官能性(メタ)アクリル化合物とは、1個の(メタ)アクリル基を有する化合物を意味し、多官能性(メタ)アクリル化合物とは、2個以上、好ましくは2〜3個の(メタ)アクリル基を有する化合物を意味する。多官能性モノマーは、架橋特性を有する。
【0052】
好ましい一官能性(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート、ならびに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはプロピル(メタ)アクリレートのような、市販されている一官能性モノマーである。
【0053】
特に好ましいものは、加水分解安定性のモノ(メタ)アクリレート(例えば、メシチルメタクリレート)または2−(アルコキシメチル)アクリル酸(例えば、2−(エトキシメチル)アクリル酸)、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、N−一置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミド(例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドまたはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド)、およびN−一置換メタクリルアミド(例えば、N−エチルメタクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド)ならびにまたN−ビニルピロリドンおよびアリルエーテルのような、加水分解安定性のモノマーである。これらのモノマーは、室温で液体であり、それゆえ希釈剤としてもまた適している。
【0054】
好ましい多官能性モノマーは、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルとの付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートまたは1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0055】
特に好ましいものは、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸およびジイソシアネート(例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネート)由来のウレタン、架橋するピロリドン(例えば、1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサン)または市販されているビスアクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミドもしくはエチレンビスアクリルアミド)、ビス−(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N’−ジエチル−1,3−ビス−(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス−(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス−(アクリルアミド)−ブタンもしくは1,4−ビス−(アクリロイル)−ピペラジン)(これらは、対応するジアミンからの、(メタ)アクリル酸塩化物との反応により合成され得る)のような、加水分解安定性の架橋モノマーである。
【0056】
本発明に従う歯科材料は、好ましくは、少なくとも1種の、ラジカル重合可能な酸性基含有モノマーも含む。好ましい酸性基は、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基および/またはスルホン酸基であり、1つより多い酸性水素原子を有する基は、部分的にエステル化される。特に好ましいものは、ホスホン酸基またはリン酸基を有するモノマーである。そのモノマーは、1個以上の酸性基を有し得、1〜2個の酸性基を有する化合物が好ましい。
【0057】
好ましい重合可能なカルボン酸は、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸である。
【0058】
好ましいホスホン酸モノマーは、アルケンホスホン酸、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル]−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルである。
【0059】
好ましい酸性の重合可能なリン酸エステル(ホスフェート)は、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシリン酸、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシリン酸、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素リン酸および1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素リン酸である。
【0060】
好ましい重合可能なスルホン酸は、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸である。
【0061】
さらに、上記歯科材料は、機械的特性を向上させるかまたは粘着性を与えるために、粒子性の有機充填剤または無機充填剤を含み得る。好ましい無機粒子性充填剤は、酸化物ベースの非結晶球状材料(例えば、ZrOおよびTiO)、ナノ粒子またはミクロ微細充填剤(例えば、発熱性シリカ、ナノ粒子性Al、Ta、Yb、ZrO、AgもしくはTiO)またはSiO、ZrOおよび/もしくはTiOの混合酸化物、または沈殿シリカおよびミニ充填剤(例えば、平均粒子サイズが約0.01μm〜1μmの、石英、ガラスセラミックもしくはガラス粉末)ならびにX線不透過性充填剤(例えば、三フッ化イッテルビウムまたはナノ粒子性硫酸バリウム)である。特に適したものは、重合可能な基によって表面が改変されている充填剤である。
【0062】
さらに、本発明に従う歯科材料は、安定剤、芳香剤、抗菌活性成分、フッ化物イオン放出剤、蛍光増白剤、可塑剤および/または紫外線吸収剤から選択される、1種以上のさらなる添加物を含み得る。
【0063】
その歯科材料は、例えば充填材料として、そして特にコーティング物質、接着剤、自己接着剤(self−adhesive)および/またはセルフコンディショニング固定接合剤として、適している。
【0064】
本発明に従う歯科材料は、好ましくは、以下:
a)0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜3.0重量%、そして特に好ましくは0.1重量%〜2.0重量%の式(I)のビスアシルホスフィンオキシド、
b)5重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜60重量%、そして特に好ましくは5〜50重量%の一官能性モノマーまたは多官能性モノマー、
c)1重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に好ましくは5〜45重量%の酸性のラジカル重合可能なモノマー、
d)0重量%〜80重量%、好ましくは0重量%〜60重量%、そして特に好ましくは0重量%〜40重量%の溶媒、および
e)0重量%〜85重量%の充填剤
を含む。
【0065】
接着剤としての使用のための歯科材料は、好ましくは、0重量%〜30重量%の充填剤を含み、接合剤または充填材料としての使用のための歯科材料は、20重量%〜85重量%の充填剤を含む。
【0066】
本発明は、実施例の助けを借りて、以下により詳細に説明される。
【実施例】
【0067】
(実施例1:ビス−{3−[2−(2−アリルオキシ−エトキシメチル]−2,4,6−トリメチルベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド(BAPOmAOEM)の合成)
【0068】
【化24】

(第一段階:3−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−2,4,6−トリメチル−安息香酸(AOEMB))
【0069】
【化25】

6.70g(32mmol)の3−クロロメタン−2,4,6−トリメチル安息香酸および5.65g(101mmol)のKOHを、窒素雰囲気下で、最初に導入した。50ml(468mmol)の2−アリルオキシエタノールをシリンジにより加え、70℃まで加熱して攪拌しながら反応を開始した。この反応を、薄層クロマトグラフィーによりモニターし、完全な変換を30分後に検出した。次いでその反応混合物を、分液漏斗に移し、2Nの塩酸でpH1に設定した。その生成物を、酢酸エチル(EE)で抽出(3×75ml)し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーター内で溶媒を除去した後、油状の液体が残った。残りの2−アリルオキシエタノールを、蒸留(1mbar、75℃)により除去し、残った油状物をヘキサンで繰り返し温浸して浄化した。濃縮後、合わせた抽出物は、無色のろう様固体の7.73g(収率87%)のAOEMBを生成した。
【0070】
【化26】

(第二段階:3−(2−アリルオキシ−エトキシメチル)−2,4,6−トリメチル−ベンゾイルクロリド(AOEMBCl))
【0071】
【化27】

7.73g(0.0278mol)のAOEMBを、フラスコに入れ、アルゴンでリンスし、これにセプタムで封をした。次いで77mlのトルエンおよび5滴のDMFを、シリンジで加えた。11.8mlのシュウ酸ジクロリド(発泡体)をゆっくりと滴下して、反応を開始した。この反応は、30分後に完了した。沈殿した副生成物を、リバースフリット(reverse frit)によりアルゴン下で分離し、最終的に溶媒および余剰のシュウ酸ジクロリドを、ロータリーエバポレーター内で取り除いた。高減圧下で乾燥後、7.15g(収率87%)のAOEMBを、黄色の油状残渣として得た。
【0072】
【化28】

(第三段階:ビス−{3−[2−(2−アリルオキシ−エトキシメチル]−2,4,6−トリメチルベンゾイル}−フェニルホスフィンオキシド(BAPOmAOEM))
【0073】
【化29】

0.67g(96.0mmol)のリチウム元素を、アルゴンおよび小さな攪拌棒と一緒に、フラスコに直接的に秤量した。そのフラスコを、セプタムにより封をし、32mlの乾燥THFをシリンジによりそこに加えた。スパチュラの先端分の量のナフタレンを、いくらかのTHFに溶解し、これもまた滴下した。次いでその混合物を10分間激しく攪拌し、最終的に6mlのTHFに溶解された2.88g(16.0mmol)のP,P−ジクロロフェニルホスフィンを、激しく攪拌しながらゆっくりと滴下した。その反応は大きく発熱するため、水浴による冷却を実施した。未反応のリチウムを除去するために、黒色の溶液を、乾燥アルゴンでリンスされたフラスコに移し、15mlの乾燥THF中に溶解された7.15g(24.0mmol)の酸塩化物AOEMBClを、激しく攪拌しながらこれにゆるやかに滴下した。添加の終了後、攪拌をさらに1時間続け、次いで溶媒を、ロータリーエバポレーター内で除去した。その残渣を20mlトルエン中に溶解し、激しく攪拌しながら1.56g(16.0mmol)の過酸化水素溶液(35%)をゆっくりと滴下して酸化した。その反応混合物は、激しく発熱した(水浴で冷却した)。20分後、その反応混合物を300mlのEE中に溶解した。有機相を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2×50ml)で洗浄した。水相を、EE(2×50ml)で再抽出し、合わせた有機相を、飽和食塩水溶液(ブライン)で洗浄し、その分離後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。粗成物の精製を、カラムクロマトグラフィーにより、溶媒系として石油エーテル(PE):酢酸エチル(EE)=1:1を使用して実施した。1.9g(収率24%)のBAPOmBAEOが、粘性の黄色油状物として生じた。
【0074】
【化30】

(実施例2:実施例1から得られたビスフェニルホスフィンオキシドに基づいた歯科材料の調製および試験)
処方物における光開始剤の光開始剤活性およびその保存安定性を試験するために、以下の成分を有する組成物を調製した。これは、エナメルおよび象牙質のための歯科プライマーとして使用される組成物である。
(i)22重量%の、加水分解安定性の架橋剤である、N,N’−ジエチル−1,3−ビス(アクリルアミド)−プロパン(DEBAMP);
(ii)45重量%の酸性モノマーである、2−[4−(ジヒドロキシホスフォリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸エチルエステル(DHPAE)、および
(iii)33重量%の水。
【0075】
【化31】

モデル処方物を調製するために、0.022mmolの実施例1に記載された光開始剤を、分析チューブ内に秤量し、上記組成物と一緒に1.00gにし、わずかに加熱しながら溶解した。光開始剤の使用されたモル濃度の活性は、歯科業界で広範に使用されている光開始剤系である、カンファーキノン/p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(CC/DMAB)の0.8重量%溶液の活性に、ほぼ対応した。
【0076】
最後に、DSC計測について、約10mgの開始剤含有組成物を、アルミニウム製の小さなDSC皿に秤量し、この小皿を、DSC装置(DSC50,Shimadzu)の計測区画の右側のセンサー上に置いた。左側のセンサー上にある空の小皿は、参照として機能した。DSC装置からの記録を、小皿を置いてから2.0分後に開始し、1.0分経過後に照射を開始した。歯科のための使用を意図される、λ=400nm〜500nmの波長を有する歯科ランプ(Astralis 3,Ivoclar Vivadent)が、照射源として機能した。光源からサンプルへの距離は、全ての計測に対して32mmであった。DSCラインが一定になったら、計測を中止した。全ての計測を、空気下で実施した。第一の計測は、上記組成物の調製後すぐに実施し、第二の計測は、その組成物を42℃で暗所にて60日間保存した後に実施した。カンファーキノンとp−ジメチルアミノ安息香酸との混合物および開始剤の[ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド](Irgacure 819,Ciba−Speciality Chemicals)(当該分野で慣用的に使用されている)もまた、比較の開始剤として試験した。
【0077】
極大熱流時間tmax(最高の重合速度に到達するのに要した時間[秒(s)]に相当する)、ピーク面積ΔH(重合の放出された熱量[J/g]に相当する)およびピーク高さh[mW/mg]を、上記DSC計測の結果において特定した。二重結合変換(DBC)は、ピーク面積ΔH、上記モノマーの分子量MW、および文献から知られている上記組成物の個々の成分についての重合の理論的な熱ΔH(これは、以下の表1に列挙される)から、計算され得る。
【0078】
組成物1g当たり207Jの組成物のΔHprimerの理論的重合熱量は、完全な二重結合変換(DBC=100%)をもたらす。従って、個々の計測の二重結合変換を、以下の方程式(A)
【0079】
【数1】

に従って計算し得た。
【0080】
【表1】

分子量
理論的重合熱
2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸エチルエステル
N,N’−ジエチル−1,3−ビス(アクリルアミド)−プロパン
以下の一般式(B)は、任意の他の処方物に対して生成され得る。
【0081】
【数2】

ΔH 重合の熱[J/g](ピーク面積)
ΔH 個々の成分の理論的重合熱[J/mol]
w 重量での割合
重合速度Rは、ピーク高さ、理論的重合熱および樹脂の密度ρから、以下のように計算され得る(式C)。
【0082】
【数3】

重合速度[mol l−1−1
h ピーク高さ[mW/mg]
ρ 樹脂の密度[ρprimer=1124g/l]
これらの計算の結果を、表2に示す。これらは、本発明に従うビスアシルホスフィンオキシドBAPOmAOEMが、42℃での60日間の保存後に、化合物Irgacure819に対して、より良い反応性を示すことを証明する。従って、本発明に従う開始剤のより良い溶解度に加えて、本発明に従う開始剤はまた、より高い反応性およびより高い安定性により特徴付けられる。主要な利点は、保存の間に二重結合変換が変わらないままであることである。より高い二重結合変換は、ポリマー網目構造の中への、その開始剤の広範な結合を示す。これはすなわち、結合されておらず、それゆえ溶出され得る開始剤が少量であることを意味し、このことは、生体適合性の観点から有利である。
【0083】
【表2】

比較例
1 熱流量極大の時間
2 式(C)に従う重合速度
3 式(A)に従う二重結合変換
4 カンファーキノン/p−ジメチルアミノ安息香酸
5 Irgacure819を、その低い溶解度に起因して、0.005mmol/g(=最大溶解度)の濃度で使用した。
【0084】
本発明の課題は、可視領域において重合を誘発し、水溶液系において十分に可溶性であり、そして水および酸の存在下で安定である、歯科材料のための光開始剤を提供することである。
【0085】
その課題を解決するために、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーと、式(I)
【0086】
【化32】

の少なくとも1種のビスアシルホスフィンオキシドを含む重合可能な歯科材料であって、ここで、Rは、1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖または分岐C〜C14アルキル残基、PG−Y−R−X−、または置換もしくは非置換の芳香族C〜C14ラジカルであり;Rは、存在しないか、または1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖もしくは分岐C〜C20アルキレンラジカルである;Rは、H、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基またはPG−Y−R−X−であり;Rは、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基または−O−C−Cアルキル残基であり;Rは、HまたはPG−Y−R−X−であり;Rは、HまたはPG−Y−R−X−であり;PGは、重合可能な基であり;Xは、存在しないか、OまたはSであり;Yは、存在しないか、O、S、エステル基、アミド基またはウレタン基であり;そのビスアシルホスフィンオキシドは、少なくとも1つのPG−Y−R−X−基を有し、かつRが存在しない場合は、Xおよび/またはYは存在しない、歯科材料を提供する。
【0087】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含む、重合可能な歯科材料であって、該歯科材料は、式(I)
【化1】

の少なくとも1種のビスアシルホスフィンオキシドを含むことによって特徴付けられ、
ここで、変数は、互いに独立して、以下:
は、1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖または分岐C〜C14アルキル残基、PG−Y−R−X−、置換または非置換の芳香族C〜C14ラジカルである;
は、存在しないか、または1つ以上のO原子によって遮断され得る直鎖もしくは分岐C〜C20アルキレンラジカルである;
は、H、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基またはPG−Y−R−X−である;
は、直鎖もしくは分岐C〜Cアルキル残基または−O−C−Cアルキル残基である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
PGは、重合可能な基である;
Xは、存在しないか、OまたはSである;
Yは、存在しないか、O、S、エステル基、アミド基またはウレタン基である;
の意味を有し、
該ビスアシルホスフィンオキシドは、少なくとも1つのPG−Y−R−X−基を有し、かつRが存在しない場合は、Xおよび/またはYは存在しない、歯科材料。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科材料であって、前記芳香族ラジカルは、1つ以上のO原子で遮断され得る1種以上のC〜C15アルコキシラジカルおよび/またはPG−Y−R−X−によって置換されている、歯科材料。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記1種以上の重合可能な基は、互いに独立して、ビニル、アリル、(メタ)アクリロイルおよび/またはビニルシクロプロピルから選択される、歯科材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科材料であって、Xは何もなく、かつRは、1つ以上のO原子により遮断され得る直鎖または分岐C〜C20アルキレンラジカルである、歯科材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科材料であって、少なくとも1つの前記変数が、以下:
は、非置換であるかまたはPG−Y−R−X−により置換されている、フェニルである;
は、−[CH−[−O−CH−CH−であり、n=1、2、3または4であり、かつm=0、1、2または3である;
は、H、C〜CアルキルまたはPG−Y−R−X−である;
は、C〜Cアルキルまたは−O−C−Cアルキルである;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
は、HまたはPG−Y−R−X−である;
PGは、−CH−CH=CHまたは−CH=CHである;
Xは、存在しない;
Yは、存在しないかまたはOである;
の意味のうちの1つを有する、歯科材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記ビスアシルホスフィンオキシドは、1〜5つのPG−Y−R−X−基を含有する、歯科材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、一官能性(メタ)アクリレート、メシチルメタクリレート、2−(アルコキシメチル)アクリル酸、N−一置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミド、N−一置換メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アリルエーテル、架橋する(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸とジイソシアネートとに由来するウレタン、架橋するピロリドン、ビスアクリルアミド、ビスメタクリルアミドから選択される、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含み、
該一官能性(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびプロピル(メタ)アクリレートであり、
該2−(アルコキシメチル)アクリル酸は、例えば、2−(エトキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸であり、
該N−一置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミドは、例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドであり、
該N−一置換メタクリルアミドは、例えば、N−エチルメタクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドであり、
該架橋する(メタ)アクリレートは、例えば、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルとの付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートであり、
該ジイソシアネートは、例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートであり、
該架橋するピロリドンは、例えば、1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサンであり、
該ビスアクリルアミドは、例えば、メチレンビスアクリルアミドまたはエチレンビスアクリルアミドであり、
該ビスメタクリルアミドは、例えば、N,N’−ジエチル−1,3−ビス−(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス−(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス−(アクリルアミド)−ブタン、1,4−ビス−(アクリロイル)−ピペラジンである、歯科材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、ラジカル重合可能なカルボン酸、ラジカル重合可能なホスホン酸モノマー、ラジカル重合可能なリン酸エステル、ラジカル重合可能なスルホン酸から選択される、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含み、
該ラジカル重合可能なカルボン酸は、例えば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸であり、
該ラジカル重合可能なホスホン酸モノマーは、例えば、アルケンホスホン酸、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル]−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルであり、
該ラジカル重合可能なリン酸エステルは、例えば、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸または2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸または2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシリン酸、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシリン酸、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素リン酸および1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素リン酸であり、
該ラジカル重合可能なスルホン酸は、例えば、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸である、歯科材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、1個以上のホスホン酸基または1個以上のリン酸基を有する、少なくとも1種のラジカル重合可能なモノマーを含み、これらの基は、酸形態または部分的エステル化形態で存在し得る、歯科材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、少なくとも1種の充填剤を含む、歯科材料。
【請求項11】
請求項10に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、
ZrOおよびTiOのような酸化物ベースの非結晶球状材料、
発熱性ケイ酸、ナノ粒子性のAl、Ta、Yb、ZrO、AgまたはTiOのような、ナノ粒子性充填剤またはミクロ微細充填剤、
SiO、ZrOおよび/またはTiOの混合酸化物、
沈降ケイ酸、
0.01μm〜1μmの平均粒子サイズを有する、石英、ガラスセラミックまたはガラス粉末のような、ミニ充填剤、ならびに
三フッ化イッテルビウムまたはナノ粒子性硫酸バリウムのような、X線不透過性充填剤、
から選択される、少なくとも1種の充填剤を含む、歯科材料。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、安定剤、芳香剤、殺菌活性成分、フッ素イオン放出添加物、蛍光増白剤、可塑剤およびUV吸収剤から選択される、少なくとも1種の添加剤を含む、歯科材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、
a)0.001重量%〜5重量%の前記式(I)のビスアシルホスフィンオキシド、
b)5重量%〜80重量%のラジカル重合可能なモノマー、
c)1重量%〜60重量%の酸性のラジカル重合可能なモノマー、
d)0重量%〜80重量%の溶媒、および
e)0重量%〜85重量%の充填剤、
を含む、歯科材料。
【請求項14】
接着剤としての使用のための、請求項13に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、0重量%〜30重量%の充填剤を含む、歯科材料。
【請求項15】
接合剤または充填材料としての使用のための、請求項13に記載の歯科材料であって、該歯科材料は、20重量%〜85重量%の充填剤を含む、歯科材料。
【請求項16】
接着剤、コーティング材料、接合剤または充填材料の調製のための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の歯科材料の、使用。

【公開番号】特開2007−39453(P2007−39453A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204002(P2006−204002)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【Fターム(参考)】