説明

開封履歴明示バンドを備えた螺子キャップ

【課題】開栓に際して、TEバンドの開封履歴明示機能が十分に発揮されるラチェット式螺子キャップを提供する。
【解決手段】バンド2は、上下方向スリット30によって、開栓に際して開栓方向側に移動する開栓旋回部と開栓方向側への移動が抑制される開栓抑止部とに区画されており、開栓旋回部と開栓抑止部とは、開栓に際して破断可能な連結部31により接続されており、バンド2の上端とスカート部6の下端とは、キャップの開栓に際して破断しないワイドブリッジ21によって互いに連結されており、ワイドブリッジ21とバンド2との接合部Lと、ワイドブリッジ21とスカート部6との接合部Lとは、周方向にずれた位置に形成されており、接合部Lは、上下方向スリット30に対して開栓方向側に位置していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封履歴明示バンドを備えた螺子キャップに関するものであり、より詳細には、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部下端に設けられた開封履歴明示バンドとからなり、該バンドの内面に容器口部の外面に形成されている突起部と係合するラチェットが設けられている螺子キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内容物の品質保証やいたずら防止などのために、開封履歴を明示する開封履歴明示バンド(以下、タンパーエビデントバンド或いはTEバンドと呼ぶことがある)を備えたキャップが広く使用されている。即ち、この種のキャップでは、キャップを開栓したときには、キャップ本体とTEバンドを連結しているブリッジが破断し、これにより、キャップが開封された事実を明示するようになっている。
【0003】
このようなキャップにおいて、所謂ラチェット方式を採用したラチェット式螺子キャップが知られている。このタイプの螺子キャップでは、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体のスカート部下端に、破断可能なブリッジ(弱化部)を介してTEバンドが接続されており、該TEバンドの内面に、容器口部の外面に形成されている突起と係合して開栓方向への回転を阻止するラチェットが設けられている。即ち、キャップ本体を開栓方向に旋回すると、TEバンドとキャップ本体とを繋いでいるブリッジが破断してTEバンドが切り離され、キャップ本体のみが容器口部から取り外されるようになっており、TEバンドが切り離されている事実により、キャップが開封されたという事実を一般需要者が認識できるのである。
【0004】
このようなラチェット式螺子キャップは、TEバンドがキャップ本体と完全に切り離されて容器側に残るという問題がある。即ち、容器口部にTEバンドが残っていると、容器内容液の注ぎ出しと同時にTEバンドが落下してしまい、容器内容液が飲料であるときには誤飲などのおそれがあり、TEバンドとキャップ本体が分離されていると、廃棄に際してのゴミの数が増えるという問題もある。このような問題を回避するため、開栓に際して、TEバンドがキャップ本体から分離しないようなラチェット式螺子キャップも種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1及び2には、閉栓方向への回転は許容するが、容器口部の外面に形成されている突起部との当接によって開栓方向への回転を制限するラチェットが内面に設けられているTEバンドを備え、TEバンドは、屈折スリット(或いは破断部)により開栓旋回部と開栓抑止部とに分断され、この開栓旋回部と開栓抑止部とがキャップの開栓時に破断するブリッジにより接続されており、且つ該TEバンドの上面が、開栓旋回部の近傍に位置するワイドブリッジによってキャップ本体のスカート部下端に連結されているラチェット式螺子キャップが本出願人により提案されている。
【0006】
上記のような構造のラチェット式螺子キャップは、ワイドブリッジが開栓によっては破断しないため、TEバンドがキャップ本体に連なって容器口部から取り除かれるものであるが、開栓によって、TEバンドが屈折スリット(或いは破断部)により開栓旋回部と開栓抑止部とに分断され、これにより、キャップが開栓されたという事実を認識することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−149156
【特許文献2】特開2006−282181
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記先行技術で提案されている螺子キャップでは、容器口部から取り除いたキャップを、これに連なるTEバンド毎、再び容器口部に装着したとき、このTEバンドが開栓旋回部と開栓抑止部とに分断されていることを目視で認識し難いという欠点がある。特に、容器口部が袋状容器に設けられているスパウトのような小径の筒状体となっている場合には、TEバンドの分断を目視で認識することが極めて困難であり、TEバンドの開封履歴明示機能が十分に発揮されず、その改善が望まれている。
【0009】
従って本発明の目的は、開栓に際してはTEバンドがキャップ本体に連なって容器口部から取り除かれるとともに、開栓時におけるTEバンドの分断が確実に行われると同時に、分断されたTEバンドを備えたキャップを再び容器口部に装着したとき、TEバンドが分断されているという事実を容易且つ明確に視認することができ、TEバンドの開封履歴明示機能が十分に発揮されるラチェット式螺子キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部下端に設けられ且つ筒状形状を有する開封履歴明示バンドとからなり、該バンドの内面には、閉栓方向への回転は許容するが、容器口部の外面に形成されている突起部との当接によって開栓方向への回転を制限するラチェットが少なくとも1個設けられている螺子キャップにおいて、
筒状形状を有する前記開封履歴明示バンドは、上下方向に延びている上下方向スリットによって、キャップの開栓に際して開栓方向側に移動する開栓旋回部と開栓方向側への移動が抑制される開栓抑止部とに区画されており、該開栓旋回部と開栓抑止部とは、開栓に際して破断可能な連結部により接続されており、
前記ラチェットは、前記開栓抑止部に設けられており、
前記開封履歴明示バンドの上端と前記スカート部の下端とは、キャップの開栓に際して破断しないワイドブリッジによって互いに連結されており、
前記ワイドブリッジと前記開封履歴明示バンドとの接合部Lと、前記ワイドブリッジと前記スカート部との接合部Lとは、周方向にずれた位置に形成されており、且つ、該接合部Lは、前記上下方向スリットに対して開栓方向側に位置していることを特徴とする螺子キャップが提供される。
【0011】
本発明においては、
(1)前記上下方向スリットが複数箇所に設けられており、且つ、前記ワイドブリッジが該上下方向スリットに対応する数だけ設けられていること、
(2)前記ワイドブリッジの周方向長さdが、キャップ中心Oに対する角度θで表わして、10乃至60度の大きさであり、前記上下方向スリットが、二か所に設けられていること、
(3)前記上下方向スリットが直線状に形成されていること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の螺子キャップは、ラチェット式構造を有するものであるが、このキャップに設けられている開封履歴明示バンド(TEバンド)は、キャップ本体の開栓方向への回転に際して破断しないワイドブリッジによってキャップ本体のスカート部下端に接続されており、従って、開栓に際しては、TEバンドは、キャップ本体と分離せずに、キャップ本体とともに容器口部から取り除かれる。即ち、キャップ本体を容器口部から取り外した状態では、TEバンドは容器口部に残っておらず、従って、容器内容液の注ぎ出しと同時にTEバンドが落下してしまうなどの不都合を生じることはない。
【0013】
また、本発明の螺子キャップでは、TEバンドは、上下方向スリットによって開栓旋回部と開栓抑止部とに区画されており、開栓に際して、TEバンドの開栓旋回部と開栓抑止部とを繋ぐ連結部が破断し、開栓旋回部と開栓抑止部とが完全に分断され、これにより開封履歴が明示されるのであるが、一旦、容器口部から除去され且つ開栓旋回部と開栓抑止部とに分断されたTEバンドが連結されているキャップ本体を、再び容器口部に装着した場合においても、TEバンドの開栓旋回部と開栓抑止部との分断を目視で容易に認識することができ、優れた開封履歴明示機能を発揮する。
【0014】
即ち、この螺子キャップでは、TEバンドとキャップ本体スカート部下端とを連結しているワイドブリッジにおいて、ワイドブリッジとTEバンドとの接合部Lと、ワイドブリッジとスカート部との接合部Lとは、周方向にずれた位置に形成されており、さらに、該接合部Lは、前記上下方向スリットに対して開栓方向側に位置している。このような構造においては、キャップ本体の開栓によってTEバンドが開栓旋回部と開栓抑止部とに分断されたとき、TEバンドの開栓旋回部側を繋いでいるワイドブリッジは、上記の接合部LとLとが周方向にずれている分だけ、常態よりも垂れ下がった状態となり、さらに、開栓抑止部側にはワイドブリッジが連結されていないため、開栓旋回部側に比して大きく垂れ下がった状態となる。この結果、開栓旋回部と開栓抑止部とが分断されているTEバンドが連なっているキャップ本体(即ち、一旦容器口部から取り外されたもの)を、再び容器口部に装着したとしても、該バンドの開栓開始部側は垂れ落ち、開栓抑止部側は大きく垂れ落ちた状態となる。しかも、ワイドブリッジが長く、開栓旋回部と開栓抑止部とに分断されているTEバンドは、開栓旋回部側及び開栓抑止部側の何れも傾斜して垂れ下がった状態となっているため、意図的に、開栓旋回部と開栓抑止部とに分断される前の水平の状態に保持することも困難となっている。従って、TEバンドの開栓旋回部と開栓抑止部との分断を目視で容易に且つ確実に認識することができ、優れた開封履歴明示機能が発揮されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】容器口部に装着されている本発明の螺子キャップの側面を、容器口部と共に示す図。
【図2】図1の一部を半側断面で示す図。
【図3】図1の螺子キャップの側断面図。
【図4】図1の螺子キャップの底面図。
【図5】図1の螺子キャップのA−A断面を容器口部の断面と共に示す図。
【図6】図1の螺子キャップを開栓後、再び容器口部に装着した状態を示す図。
【図7】本発明の螺子キャップの他の態様の側面を、容器口部と共に示す図。
【図8】図7の螺子キャップを開栓後、再び容器口部に装着した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図5を参照して、本発明の螺子キャップは、大まかに言って、キャップ本体1と、筒状形状の開封履歴明示バンド(TEバンド)2とから成っており、キャップ本体1は、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下しているスカート部6とから形成されている。
【0017】
頂板部5の内面には、スカート部6とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング7が形成されており、且つインナーリング7とスカート部6との間の部分に小突起9、9が形成されている。また、スカート部6の内面には、雌螺条10が形成されている。
【0018】
また、図示した例では、上記の螺子キャップが装着される容器口部は、全体として50で示されており、この容器口部50は、袋状容器において、容器内容物を注ぎ出すためのスパウトの形態を有している、即ち、この容器口部50は、全体として、細長い中空の筒状体であって、その外面には、雄螺条51が形成されており、この雄螺条51の下方には、TEバンド2の回転を制御するための突起部53が形成されており、この突起部53の下方には、首部55を介して、袋状の容器を接着固定するための接合部57が形成されている。
この接合部57は、水平方向に張り出している多段の水平張り出し片58と、垂直方向に張り出している一対の垂直張り出し片59とを備えており、これら張り出し片58,59に袋状のプラスチックフィルムをヒートシールにより接合するようになっている。
【0019】
即ち、スカート部6の内面に形成されている雌螺条10は、容器口部50の外面に形成されている雄螺条51と係合するものであり、これにより、キャップ本体1は容器口部50に装着される。この状態において、容器口部50の上端は、インナーリング7とスカート部6との間の空間内に侵入し、且つその上端面が頂板部5の内面に形成されている小突起9、9に圧接されることにより、良好なシールが確保されるようになっている。
【0020】
また、スカート部6の内面の上方部分には、適当な間隔で軸方向に延びている縦リブ12が設けられている。この縦リブ12は、容器口部50にキャップ本体1を装着する際のセンタリングとして作用し、キャップ本体1の斜め被りを防止するためのものである。
さらに、スカート部6の外面には、滑り止め用のローレット15が形成されており、キャップ本体1の閉栓方向及び開栓方向への旋回をスムーズに行い得るようになっている。
【0021】
TEバンド2の内面には、ラチェット17が複数形成されている。図5に示されているように、これらのラチェット17は、閉栓方向Yへの回転は許容するが、容器口部50の外面に形成されている突起部53との当接によって開栓方向への回転を制限するような形状を有している。即ち、ラチェット17は、TEバンド2の上部内面に形成された段部に連結し、段部の下面から下方に延び、さらにTEバンド2の内周面にも連結され、TEバンド2の内周面から径方向内方で且つ開栓方向側に延びている。このような回転制御により、TEバンド2が開封履歴明示機能を発揮することとなる。この開封履歴明示機能については、後述する。
【0022】
上記のTEバンド2の上端は、ワイドブリッジ21によって、スカート部6の下端に連結されている。このワイドブリッジ21は、キャップの開栓に際しては破断せず、このキャップ本体1を容器口部50から取り外したとき、TEバンド2が容器口部50側に残らずにキャップ本体1と共に容器口部50から取り外されるようにするための部材である。また、必要により、TEバンド2の上端とスカート部6の下端とを小幅のブリッジ23により連結しておいてもよい。この小幅のブリッジ23は、キャップの開栓に際して破断するものであり、キャップの供給時、或いはキャップ本体1を容器口部50装着した際(キャッピング)、TEバンド2が変形せずに、安定にキャップ本体1と共に容器口部50に装着されるようにするために設けられるものである。
【0023】
さらに、スカート部6の下端面には、上記のワイドブリッジ21が位置している部分を除き、TEバンド2との間隔調整用のリブ25が弧状に形成されている。即ち、このようなリブ25が形成されていることにより、TEバンド2とスカート部6との間の隙間を狭くし、このキャップに軸方向荷重が加わったときの応力を緩和し、前述した小幅のブリッジ23やワイドブリッジ21の変形や破損を回避することができる。
【0024】
ところで、TEバンド2は、上下方向に延びている上下方向スリット30によって、開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに区画されている。即ち、図1、4及び5を参照して、このキャップは、開栓に際しては、Xで示される方向に旋回され、閉栓に際しては、Yで示される方向に旋回されるが、前述したラチェット17は、このスリット30に対して閉栓方向側Y側に形成されている。従って、スリット30に対して開栓方向X側に位置する部分が開栓旋回部2aとなり、スリット30に対して閉栓方向Y側に位置する部分が開栓抑止部2bとなっている。
また、図1に示されているように、前述したワイドブリッジ21とTEバンド2の上端との接合部Lは、この上下方向スリット30の近傍であって、開栓旋回部2a側に位置している。
【0025】
尚、図4の底面図で示したように、この例では、スリット30は、対称位置に2箇所形成されており、各スリット30により開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに区画された構造となっている。
【0026】
さらに、TEバンド2の開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとは、上記の上下方向スリット30を跨ぐようにして設けられている薄肉の連結部31,31によって互いに連結されている。実施例では、この連結部31,31は、スリット30の上端と下端に設けられていて、開栓時に破断するものである。
【0027】
即ち、上記のような構造を有するキャップにおいては、このキャップ本体1を容器口部50に装着された状態で開栓方向に回転せしめると、TEバンド2の開栓旋回部2aは、ワイドブリッジ21によって引張られるため、キャップ本体1と共に開栓方向X側に旋回するが、TEバンド2の開栓抑止部2bの開栓方向X側への旋回は、ラチェット17と容器口部50の外面に形成されている突起部53との係合により制限される。この結果、上下方向スリット30を跨ぐように形成されている薄肉の連結部31及びTEバンド2とスカート部6とを連結している小幅のブリッジ23が破断し、ワイドブリッジ21のみが破断せずに残る。従って、キャップ本体1を容器口部50から取り外した状態においては、TEバンド2は、容器口部50には残らず、キャップ本体1に連なった状態で容器口部50から取り外され、且つ、このTEバンド2は、上方向スリット30の部分で開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに分断された状態となっている。
従って、図6に示すように、このようなキャップ本体1を、再び容器口部50に装着した場合においても、一般の消費者は、TEバンド2が開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに分断され、分断されたTEバンド2が、垂れ下がったワイドブリッジ21により連結された状態となり、消費者が明確に一度開栓されたことを認識することができるのである。
【0028】
上記のような開封履歴証明機能は、上述したキャップの基本的機能であるが、容器口部50から一旦取り外されたキャップ本体1を、再び容器口部50に装着した場合において、TEバンド2の分断を視認し難いことがある。例えば、開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとが分断前の状態に近い形態となるようにキャップ本体1が容器口部50に装着されることがあり、このような場合には、一般の消費者は、TEバンド2が分断されていることに気が付かないことがある。特に、容器口部50が、図示されているような袋状容器のスパウトのようなものであるときには、TEバンド2の径がかなり小さくなるため、TEバンド2の分断を看過してしまう傾向が極めて大きくなる。
【0029】
しかるに本発明においては、上記のワイドブリッジ21とTEバンド2の上端との接合部Lが上下方向スリット30の開栓方向X側の近傍に形成されていると同時に、該接合部Lと、ワイドブリッジ21とスカート部6の下端との接合部Lとが、周方向にずれた位置に形成されており、このような手段により、上記の問題が有効に解決されている。
【0030】
即ち、キャップ本体1を開栓し、再び容器口部50に装着した状態を示す図6に示すように、このような構造においては、TEバンド2が開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに分断されたとき、TEバンド2の開栓旋回部2a側を繋いでいるワイドブリッジ21は、これが直立に形成されている場合(即ち、接合部LとLとが周方向にずれていない場合)に比して長く、大きく垂れ下がった状態となっている。また、開栓抑止部2b側にはワイドブリッジ2bが連結されていないため、開栓抑止部2bは、開栓旋回部2aに比してさらに大きく垂れ下がった状態となっている。この結果、開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに分断されているTEバンド2が連なっているキャップ本体1を、再び容器口部50に装着(即ち、リシール)したとしても、このように分断されているTEバンド2を分断前の状態(開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとがほぼ水平状態で対面している状態)に意図的に保持することが困難となっている。従って、上述した構造の本発明の螺子キャップでは、TEバンド2の開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとの分断を目視で容易に且つ確実に認識することができ、優れた開封履歴明示機能が発揮されるのである。
【0031】
上述した本発明において、接合部Lと接合部Lとのずれの程度は、これが大きいほど、分断されたTEバンド2の垂れ下がりの程度が大きくなり、リシール時の開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとの分断状態をより明確に認識することができるが、あまり大きすぎると、ワイドブリッジ21が必要以上に長くなってしまうため、開栓性が損なわれてしまいう。即ち、小幅のブリッジ23や薄肉の連結部31を破断させるには、大きな力でキャップ本体1を開栓方向へ旋回させることが必要となってしまう。また、ずれの程度が小さ過ぎる場合には、ワイドブリッジ21が短いため、キャップ本体1の開栓方向への旋回開始後、直ちに、小幅のブリッジ23や薄肉の連結部31を破断させなければならず、従って、この場合にも、開栓のために大きな力が必要となり、開栓性が低下する。さらに、ずれの程度が小さ過ぎる場合には、リシール時の開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとの分断を目視で容易に且つ確実に認識するという本発明の効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。従って、接合部Lと接合部Lとのずれの程度は、適度な範囲にあることが必要であり、例えば、キャップ本体1の大きさ(スカート部6の下端の径やスカート部6とTEバンド2との間隔の大きさ)によっても異なるが、一般に、ワイドブリッジの周方向長さdが、キャップ中心Oに対する角度θで表わして(図5参照)、10乃至60度、特に15乃至40度の大きさであることが好ましい。
尚、上記の周方向長さd或いは角度θは、接合部Lの中心位置と接合部Lの中心位置との距離(角度)を示すものである。
【0032】
また、ワイドブリッジ21とTEバンド2の上端との接合部Lに対して、ワイドブリッジ21とスカート部6の下端との接合部Lは、開栓方向X側及び閉栓方向Y側の何れに位置していてもよいが、開栓性の観点から、図1に示されているように、閉栓方向Y側(即ち、スリット30を跨いだ閉栓方向側)に位置していることが好ましい。即ち、このような位置関係では、キャップ本体1をワイドブリッジ21の周方向長さの分だけ開栓した後に、小幅のブリッジ23や薄肉の連結部31が破断することとなり、より小さな力で開栓することができるからである。
【0033】
さらに、TEバンド2を開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに区画する上下方向スリット30の数は、1本とすることもできるが、図示されているように複数本(図4の例では2本)とし、各スリット30に対応してワイドブリッジを設けることが、リシール時の開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとの分断を、どの位置からも明確に視認できるという点で好ましい。特に、本発明においては、ワイドブリッジの周方向長さdを上記範囲内とし、且つ上下方向スリット30を、対称となるように2か所に設けることが最適である。
【0034】
本発明において、上述した上下方向スリット30は、TEバンド2の上端から下端まで延びている限り、屈曲した形状であってもよいが、屈曲せずに、直線状に延びていることが好ましく、特に、図1に示されているように、鉛直線状に延びていることが最適である。即ち、この上下方向スリット30が屈曲していると、リシール時に、分断されている開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとが、その分断面(スリット30が形成されていた部分)で互いに噛み合ってしまい、この結果、TEバンド2があまり垂れ下がらず、TEバンド2の分断状態の視認性が低下してしまうことがあるが、上下方向スリット30を直線状、特に鉛直線状に延びているときには、このような噛み合いは生じることが無く、TEバンド2の分断状態の視認性が損なわれることは無いからである。
【0035】
さらに、ワイドブリッジを斜めに傾斜することによって、ワイドブリッジと開封履歴明示バンドとの接合部Lと、ワイドブリッジとスカート部との接合部Lとを周方向にずらしたれた螺子キャップの例を図7及び図8に示した。
【0036】
この実施例においては、図7に示されている螺子キャップは、TEバンド2の開栓抑止部2bの上面に、ガイド片35が設けられており、このようなガイド片35により、開栓性が高められている。
【0037】
即ち、このガイド片35は、上下方向スリット30の近傍に形成されており、閉栓方向Y側の側面が閉栓方向に向かって上方から下方に傾斜した傾斜面35aとなっており、開栓方向X側の側面が実質上直立した面35bとなっている。
また、上記のガイド片35の傾斜面35aに対応するように、スカート部6の下端に形成されている間隔調整用リブ25の端面25aが傾斜して形成されている。即ち、この端面25aは、図7から理解されるように、傾斜面35aに沿った傾斜面となっている。従って、このキャップ本体1を開栓方向Xに旋回させると、間隔調整用リブ25の端面25aが、開栓抑止部2bに形成されているガイド片35の傾斜面35aに当接し、この結果、開栓抑止部2bを押し下げるが、開栓旋回部2aでは、キャップ本体1の開栓方向Xへの旋回によってワイドブリッジ21を介して上方に引っ張り上げられる。この結果、上下方向スリット30を跨ぐようにして形成されている薄肉連結部31が容易且つ速やかに破断され、図8に示されているように、TEバンド2は開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに分断され、何れも垂れ下がった状態となり、図8に示すように、この場合においても、容器口部50に再び装着した螺子キャップから、一般の消費者は、TEバンド2が開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに分断され、分断されたTEバンド2が、垂れ下がったワイドブリッジ21により連結された状態となり、消費者が明確に一度開栓されたことを認識することができるのである。
【0038】
また、上記のキャップにおいて、スカート部6の下端面には、ガイド片35の開栓方向X側に隣接するように、ストッパー37を形成することが好ましい。即ち、このストッパー37は、図7に示されているように、閉栓方向Y側の面が直立した面37aとなっている。即ち、このキャップ本体1を容器口部50に被せ、閉栓方向に旋回してキャッピングを行う場合、ラチェット17が容器口部50の外面に形成されている突部53を乗り越える際に、ワイドブリッジ21や小幅のブリッジ23或いは薄肉連結部31に大きな負荷が加わるが、上記の態様では、ストッパー37の直立面37aがガイド片35の直立面35bに当接し、ストッパー37がガイド片35を押圧する結果、TEバンド2がキャップ本体1と共に閉栓方向に旋回することとなる。従って、ワイドブリッジ21、小幅のブリッジ23或いは薄肉連結部31に加わる応力が効果的に軽減され、キャッピングに際してのこれら部材の破断や変形を有効に回避することができるのである。
【0039】
尚、図7及び8の例においては、上方向スリット30は2個設けられているが、このようなスリット30は3個或いは4個設け、それぞれにおいて、開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとに区画することも可能である。
【0040】
上述した本発明のラチェット式螺子キャップは、TEバンド2の開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとの分断の視認性が高められているため、開封履歴明示機能が著しく向上している。
このような本発明による開栓旋回部2aと開栓抑止部2bとの分断の視認性の向上は、袋状容器(パウチ)に口部として設けられているスパウトのような小径の容器口部にラチェット式の螺子キャップを装着する場合に最適であるが、本発明のキャップは、このようなスパウト用のキャップに限定されるものではなく、ボトル等の容器の口部に用いるキャップとしても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:キャップ本体
2:TEバンド
2a:開栓旋回部
2b:開栓抑止部
17:ラチェット
21:ワイドブリッジ
30:上下方向スリット
31:薄肉連結部
50:容器口部
53:突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部下端に設けられ且つ筒状形状を有する開封履歴明示バンドとからなり、該バンドの内面には、閉栓方向への回転は許容するが、容器口部の外面に形成されている突起部との当接によって開栓方向への回転を制限するラチェットが少なくとも1個設けられている螺子キャップにおいて、
筒状形状を有する前記開封履歴明示バンドは、上下方向に延びている上下方向スリットによって、キャップの開栓に際して開栓方向側に移動する開栓旋回部と開栓方向側への移動が抑制される開栓抑止部とに区画されており、該開栓旋回部と開栓抑止部とは、開栓に際して破断可能な連結部により接続されており、
前記ラチェットは、前記開栓抑止部に設けられており、
前記開封履歴明示バンドの上端と前記スカート部の下端とは、キャップの開栓に際して破断しないワイドブリッジによって互いに連結されており、
前記ワイドブリッジと前記開封履歴明示バンドとの接合部Lと、前記ワイドブリッジと前記スカート部との接合部Lとは、周方向にずれた位置に形成されており、且つ、該接合部Lは、前記上下方向スリットに対して開栓方向側に位置していることを特徴とする螺子キャップ。
【請求項2】
前記上下方向スリットが複数箇所に設けられており、且つ、前記ワイドブリッジが該上下方向スリットに対応する数だけ設けられている請求項1に記載の螺子キャップ。
【請求項3】
前記ワイドブリッジの周方向長さdが、キャップ中心Oに対する角度θで表わして、10乃至60度の大きさであり、前記上下方向スリットが、二か所に設けられている請求項2に記載の螺子キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214230(P2012−214230A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79184(P2011−79184)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】