説明

開封履歴明示バンドを備えた螺子キャップ

【課題】TEバンドの開封履歴明示機能が十分に発揮され、さらにはTEバンドをキャップ本体に連結している部材の開栓時での切断が有効に防止されたラチェット式螺子キャップを提供する。
【解決手段】キャップ本体1のスカート部6の下端に設けられた筒状形状の開封履歴明示バンド2は、上下方向スリット30によって、キャップの開栓側に位置する開栓側部2bとキャップの閉栓側に位置する閉栓側部2cとに区画されており、開栓側部2bと閉栓側部2cとは、開栓に際して破断可能な連結部31により接続されており、開封履歴明示バンド2の上端とスカート部6の下端とは、キャップの開栓に際して破断せず且つ折り返し部21aを有するストリップ21によって互いに連結されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封履歴明示バンドを備えた螺子キャップに関するものであり、より詳細には、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部下端に設けられた開封履歴明示バンドとからなり、該バンドの内面に容器口部の外面に形成されている突起部と係合するラチェットが設けられている螺子キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内容物の品質保証やいたずら防止などのために、開封履歴を明示する開封履歴明示バンド(以下、タンパーエビデントバンド或いはTEバンドと呼ぶことがある)を備えたキャップが広く使用されている。即ち、この種のキャップでは、キャップを開栓したときには、キャップ本体とTEバンドを連結しているブリッジが破断し、これにより、キャップが開封された事実を明示するようになっている。
【0003】
このようなキャップにおいて、所謂ラチェット方式を採用したラチェット式螺子キャップが知られている。このタイプの螺子キャップでは、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体のスカート部下端に、破断可能なブリッジ(弱化部)を介してTEバンドが接続されており、該TEバンドの内面に、容器口部の外面に形成されている突起と係合して開栓方向への回転を阻止するラチェットが設けられている。即ち、キャップ本体を開栓方向に旋回すると、TEバンドとキャップ本体とを繋いでいるブリッジが破断してTEバンドが切り離され、キャップ本体のみが容器口部から取り外されるようになっており、TEバンドが切り離されている事実により、キャップが開封されたという事実を一般需要者が認識できるのである。
【0004】
このようなラチェット式螺子キャップは、TEバンドがキャップ本体と完全に切り離されて容器側に残るという問題がある。即ち、容器口部にTEバンドが残っていると、容器内容液の注ぎ出しと同時にTEバンドが落下してしまい、容器内容液が飲料であるときには誤飲などのおそれがあり、TEバンドとキャップ本体が分離されていると、廃棄に際してのゴミの数が増えるという問題もある。このような問題を回避するため、開栓に際して、TEバンドがキャップ本体から分離しないようなラチェット式螺子キャップも種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1及び2には、閉栓方向への回転は許容するが、容器口部の外面に形成されている突起部との当接によって開栓方向への回転を制限するラチェットが内面に設けられているTEバンドを備え、TEバンドは、屈折スリット(或いは破断部)により開栓旋回部と開栓抑止部とに分断され、この開栓旋回部と開栓抑止部とがキャップの開栓時に破断するブリッジにより接続されており、且つ該TEバンドの上面が、開栓旋回部の近傍に位置するワイドブリッジによってキャップ本体のスカート部下端に連結されているラチェット式螺子キャップが提案されている。
【0006】
上記のような構造のラチェット式螺子キャップは、ワイドブリッジが開栓によっては破断しないため、TEバンドがキャップ本体に連なって容器口部から取り除かれるものであるが、開栓によって、TEバンドが屈折スリット(或いは破断部)により開栓旋回部と開栓抑止部とに分断され、これにより、キャップが開栓されたという事実を認識することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−149156
【特許文献2】特開2006−282181
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記先行技術で提案されている螺子キャップでは、容器口部から取り除いたキャップを、これに連なるTEバンド毎、再び容器口部に装着したとき、このTEバンドが開栓旋回部と開栓抑止部とに分断されていることを目視で認識し難いという欠点がある。特に、容器口部が袋状容器に設けられているスパウトのような小径の筒状体となっている場合には、TEバンドの分断を目視で認識することが極めて困難であり、TEバンドの開封履歴明示機能が十分に発揮されず、その改善が望まれている。
【0009】
また、本出願人は、特願2011−79184号により、TEバンドの上端とスカート部の下端とがキャップの開栓に際して破断しないワイドブリッジによって互いに連結されており、該ワイドブリッジとTEバンドとの接合部Lと、ワイドブリッジとスカート部との接合部Lとは、周方向にずれた位置に形成されているラチェット式の螺子キャップを提案した。このキャップによれば、TEバンドを繋いでいるワイドブリッジが長いものであるため、キャップの開栓後、開栓旋回部と開栓抑止部とに分断されているTEバンドを保持しているワイドブリッジは、スカート部から伸びきって垂れ下がった状態となり、この伸びきった状態が元の状態に復帰し難くなっている。この結果、リシール時において、TEバンドを元の形状に近い形態に復帰させることが困難となり、優れたTE性が発揮されるというものである。
【0010】
しかしながら、このようなワイドブリッジを用いた場合にも課題は残されており、キャップの開栓時にワイドブリッジが伸びきった状態となる前に切れてしまうというトラブルをしばしば生じていた。即ち、ワイドブリッジは、キャップを開栓して伸び切ったときの状態が安定に保持され、元の形状に復帰し難くしているため、どうしてもある程度細くせざるを得ず、この結果、開栓時での破断を生じ易くなってしまうのである。
【0011】
従って本発明の目的は、開栓に際してはTEバンドがキャップ本体に連なって容器口部から取り除かれるとともに、開栓時におけるTEバンドの分断が確実に行われると同時に、分断されたTEバンドを備えたキャップを再び容器口部に装着したとき、TEバンドが分断されているという事実を容易且つ明確に視認することができ、TEバンドの開封履歴明示機能が十分に発揮され、さらにはTEバンドをキャップ本体に連結しているワイドブリッジの開栓時での切断が有効に防止されたラチェット式螺子キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部下端に設けられ且つ筒状形状を有する開封履歴明示バンドとからなり、該バンドの内面には、閉栓方向への回転は許容するが、容器口部の外面に形成されている突起部との当接によって開栓方向への回転を制限するラチェットが少なくとも1個設けられている螺子キャップにおいて、
筒状形状を有する前記開封履歴明示バンドは、上下方向に延びている上下方向スリットによって、キャップの開栓側に位置する開栓側部とキャップの閉栓側に位置する閉栓側部とに区画されており、該開栓側部と閉栓側部とは、開栓に際して破断可能な連結部により接続されており、
前記開封履歴明示バンドの上端と前記スカート部の下端とは、キャップの開栓に際して破断せず且つ折り返し部を有するストリップによって互いに連結されており、
キャップの開栓に際して、前記開封履歴明示バンドの開栓側部は前記ストリップによってキャップ本体と共に開栓方向側に強制的に移動し、前記開封履歴明示バンドの閉栓側部は前記ラチェットによって開栓方向側への移動が制限され、これにより、該開栓側部と閉栓側部とを接続している連結部が破断し、該開封履歴明示バンドが分断されることを特徴とする螺子キャップが提供される。
【0013】
本発明においては、
(1)前記ストリップと前記スカート部との接合部Lは、前記上下方向スリットに対して閉栓側に位置していること、
(2)前記上下方向スリットが複数箇所に設けられており、且つ、前記ストリップが該上下方向スリットに対応する数だけ設けられていること、
(3)前記上下方向スリットによって形成された開栓側部の端面の上部に、前記接合部Lが形成され、前記上下方向スリットによって区画された閉栓側部の端面には、該接合部Lから延びている前記ストリップを許容する切り欠きが形成されていること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の螺子キャップは、ラチェット式構造を有するものであるが、このキャップに設けられている開封履歴明示バンド(TEバンド)は、キャップ本体の開栓方向への回転に際して破断しない紐状のストリップによってキャップ本体のスカート部下端に接続されており、従って、開栓に際しては、TEバンドは、キャップ本体と分離せずに、キャップ本体とともに容器口部から取り除かれる。即ち、キャップ本体を容器口部から取り外した状態では、TEバンドは容器口部に残っておらず、従って、容器内容液の注ぎ出しと同時にTEバンドが落下してしまうなどの不都合を生じることはない。
【0015】
また、本発明の螺子キャップでは、TEバンドは、上下方向スリットによって開栓側部と開栓側部とに区画されており、開栓に際して、TEバンドの開栓側部と開栓側部とを繋ぐ連結部が破断し、開栓側部と閉栓側部とが完全に分断され、これにより開封履歴が明示されるのであるが、一旦、容器口部から除去され且つ開栓側部と閉栓側部とに分断されたTEバンドが連結されているキャップ本体を、再び容器口部に装着した場合においても、TEバンドの開栓側部と開栓側部との分断を目視で容易に認識することができ、優れた開封履歴明示機能を発揮する。
【0016】
即ち、この螺子キャップでは、TEバンドとキャップ本体スカート部下端とを連結しているストリップは、折り返し部を有していることから理解されるように、TEバンドとキャップ本体スカート部下端との間隔に比して、非常に長い長さを有している。このため、キャップ本体の開栓によってTEバンドが開栓側部と閉栓側部とに分断されたとき、TEバンドを繋いでいるストリップは、大きく伸びてスカート部から垂れ下がった状態となる。この結果、開栓側部と閉栓側部とが分断されているTEバンドが連なっているキャップ本体(即ち、一旦容器口部から取り外されたもの)を、再び容器口部に装着したとしても、該バンドは、開栓側部と閉栓側部とに分断された状態で大きく垂れ落ちた状態となり、しかも、ストリップが非常に長いため、意図的に、開栓側部と閉栓側部とが対面するような水平の状態にTEバンドを復帰させることも困難となっている。従って、リシール時においてもTEバンドの開栓側部と閉栓側部との分断を目視で容易に且つ確実に認識することができ、優れた開封履歴明示機能が発揮される。
【0017】
さらに、本発明においては、キャップ本体スカート部とTEバンドとを繋いでいるストリップが、折り返し部を有している。このことから理解されるように、キャップの開栓時においては、キャップ本体の開栓方向への移動に伴い、折り返し部が徐々に直線状に延びて行くこととなり、このストリップに一気に大きなテンションが加わることはない。この結果、開栓時におけるストリップの破断は有効に防止されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】容器口部に装着されている本発明の螺子キャップの側面を、容器口部と共に示す図。
【図2】図1の螺子キャップの側断面図。
【図3】図1の螺子キャップの底面図。
【図4】図1の螺子キャップにおけるラチェットと容器口部の突起部との関係を示す図。
【図5】図1の螺子キャップと容器口部との嵌合断面を示す図。
【図6】図1の螺子キャップを開栓していくプロセスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図4を参照して、本発明の螺子キャップは、大まかに言って、キャップ本体1と、筒状形状の開封履歴明示バンド(TEバンド)2とから成っており、キャップ本体1は、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下しているスカート部6とから形成されている。
【0020】
頂板部5の内面には、スカート部6とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング7が形成されており、且つインナーリング7とスカート部6との間の部分に小突起9、9が形成されている。また、スカート部6の内面には、雌螺条10が形成されている。
【0021】
また、図示した例では、上記の螺子キャップが装着される容器口部は、全体として50で示されており、この容器口部50は、袋状容器等に溶着されるものであり、容器内容物を注ぎ出すためのスパウトの形態を有している、
【0022】
特に図1及び図5を参照して、この容器口部50は、全体として、細長い中空の筒状体であって、その外面には、雄螺条51が形成されており、この雄螺条51の下方には、TEバンド2の回転を制御するための突起部53が形成されており、この突起部53の下方には、首部55を介して、袋状の容器を接着固定するための接合部57が形成されている。
この接合部57は、水平方向に張り出している多段の水平張り出し片58と、垂直方向に張り出している一対の垂直張り出し片59とを備えており、これら張り出し片58,59に袋状のプラスチックフィルムをヒートシールにより接合するようになっている。
【0023】
即ち、スカート部6の内面に形成されている雌螺条10は、容器口部50の外面に形成されている雄螺条51と係合するものであり、これにより、キャップ本体1は容器口部50に装着される。この状態において、容器口部50の上端は、インナーリング7とスカート部6との間の空間内に侵入し、且つその上端面が頂板部5の内面に形成されている小突起9、9に圧接されることにより、良好なシールが確保されるようになっている。
【0024】
また、スカート部6の内面の上方部分には、適当な間隔で軸方向に延びている縦リブ12が設けられている(図2参照)。この縦リブ12は、容器口部50にキャップ本体1を装着する際のセンタリングとして作用し、キャップ本体1の斜め被りを防止するためのものである。
さらに、スカート部6の外面には、滑り止め用のローレット15が形成されており、キャップ本体1の閉栓方向及び開栓方向への旋回をスムーズに行い得るようになっている。
【0025】
また、TEバンド2の内面には、ラチェット17が複数形成されている。これらのラチェット17は、図3及び図4に示されているように、閉栓方向Yへの回転は許容するが、容器口部50の外面に形成されている突起部53との当接によってTEバンド2の開栓方向Xへの回転を制限するような形状を有している。
【0026】
尚、図2、図3及び図4から理解されるように、TEバンドの上端には、水平方向内方に突出した内方フランジ2aが形成されている。即ち、この内方フランジ2aの上面がスカート部6の下端に対面しており、さらに、TEバンド2の内周面から内方フランジ2aの下面と一体に連なるようにラチェット17が形成されており、このラチェット17は、径方向内方且つ開栓方向側に指向している。このようなラチェット17の回転制御により、TEバンド2が開封履歴明示機能を発揮することとなる。この開封履歴明示機能については、後述する。
【0027】
本発明において、上記のTEバンド2の上端は、ストリップ21によって、スカート部6の下端に連結されている。このストリップ21とTEバンド2との接合部はLで示され、ストリップ21とスカート部6の下端との接合部はLで示されている。
このストリップ21は、キャップの開栓に際しては破断せず、このキャップ本体1を容器口部50から取り外したとき、TEバンド2が容器口部50側に残らずにキャップ本体1と共に容器口部50から取り外されるようにするための部材である。
また、必要に応じて、TEバンド2の上端とスカート部6の下端とは小幅のブリッジ23により連結される。この小幅のブリッジ23は、キャップの開栓に際して破断するものであり、キャップの供給時、或いはキャップ本体1を容器口部50に装着した際(キャッピング)、TEバンド2が変形せずに、安定にキャップ本体1と共に容器口部50に装着されるようにするために設けられるものである。
【0028】
さらに、スカート部6の下端面には、上記のストリップ21が位置している部分を除き、TEバンド2との間隔調整用のリブ25が弧状に形成されている。即ち、このようなリブ25が形成されていることにより、TEバンド2とスカート部6との間の隙間を狭くし、このキャップに軸方向荷重が加わったときの応力を緩和し、前述した小幅のブリッジ23やストリップ21の破損等を回避することができる。
【0029】
ところで、TEバンド2は、上下方向に延びている上下方向スリット30によって、開栓側部2bと閉栓側2cとに区画されている。即ち、図3及び4を参照して、このキャップは、開栓に際してはXで示される方向に旋回され、閉栓に際してはYで示される方向に旋回されるが、このTEバンド2の上下方向スリット30の開栓方向X側に位置する部分が開栓側部2bとなり、閉栓方向Y側に位置する部分が閉栓側部2cとなる。
【0030】
尚、図3の底面図で示したように、この例では、スリット30は、対称位置に2箇所形成されており、TEバンド2は、各スリット30により開栓側部2bと閉栓側部2cとに区画された構造となっており、該スリット30によって分割されたTEバンドのそれぞれにラチェット17が形成されている。
【0031】
さらに、上記の開栓側部2bと閉栓側部2cとは、上記の上下方向スリット30を跨ぐようにして設けられている薄肉の連結部31,31によって互いに連結されている。図示した例では、この連結部31,31は、TEバンド2の開栓側部2bと閉栓側部2cの上端と下端に設けられており、このような薄肉の連結部31は、開栓時に破断するものである。
【0032】
即ち、キャップ本体1(スカート部6)を開栓方向Xに回転させてキャップを開栓すると、TEバンド2は、ストリップ21により引っ張られ、開栓方向X側に移動するが、上記スリット30で区画された閉栓部側2cでは前述したラチェット17による回転制御によって開栓方向X側への移動が制限され、この結果、上記連結部31が破断し、TEバンド2が開栓側部2bと閉栓側部2cとに分断され、これによりTE性を発現せしめる。
【0033】
上記のようにしてTE性を発現させるため、ストリップ21とTEバンド2との接合部Lは、この上下方向スリット30の近傍であって、開栓側部2bに位置せしめる。即ち、ストリップ21により、開栓側部2bを開栓方向Xに強制的に移動させるためである。
図に示した例では、開栓側部2bの端面の上部に接合部Lが形成されている。
【0034】
ところで、本発明においては、上記のストリップ21は、折り返し部21aが形成されるように設けられている。即ち、ストリップ21とスカート部6との接合部Lもスリット30の近傍位置に設定されるが、このストリップ21の全長は、スカート部6の下端とTEバンド2の上面との間隔tに比して非常に長く設定され、このストリップ21には折り返し部21aが形成されるようになっている。例えば、ストリップ21は、スカート部6との接合部Lから若干下方に延びており、そこからスカート部6の下端に沿って周方向閉栓方向Y側に水平に延びており、次いで折り返し部21aが形成され、この折り返し部21aから周方向開栓方向X側に向かって、スリット30により形成されている開栓側部2bの端面の上部の接合部Lまで水平に延びており、該接合部Lで終結している。
【0035】
本発明においては、ストリップ21がこのような折り返し部21aを有しているため、キャップ開栓時でのストリップ21の破断が有効に防止され、開栓によるTEバンド2の脱落が確実に防止され、さらにリシール時においても優れたTE性を発揮することが可能となる。
【0036】
即ち、この螺子キャップを開栓していくプロセスを示す図6を参照して、キャップ本体1を容器口部50に装着された状態のキャップ(図6(a))を、開栓方向に回転せしめると、キャップ本体1は上昇するが、図4に示されているように、ラチェット17と容器口部50の突起部53とが係合し、TEバンド2の回転は抑制され。従って、スカート部6とTEバンド2との間隔は次第に上昇し、これに伴って、ストリップ21の折り返し部21aが徐々に伸びていき、前述した小幅のブリッジ23は破断する(図6(b))。
【0037】
引き続き開栓を続けると、ストリップ21の折り返し部21aがさらに伸びていき、次第にストリップ21により、TEバンド2の開栓側部2bが開栓方向X側に強制的に引っ張られて移動していき、TEバンド2の開栓側部2bと閉栓側部2cとを繋いでいる連結部31が破断し、TEバンド2が開栓側部2bと閉栓側部2cとに完全に分断されることとなる(図6(c))。即ち、分断されたTEバンド2が、垂れ下がったストリップ21により連結された状態となり、消費者が明確に一度開栓されたことを認識することができる。
【0038】
上記の開栓プロセスから理解されるように、本発明の螺子キャップにおいては、キャップの開栓に際しては、折り返し部21aを有しているため、ストリップ21にテンションが一気に加わることはなく、ストリップ21は、その折り返し部21aが徐々に伸ばされていき、徐々にテンションが加わっていく。即ち、折り返し部21aが遊びとなってテンションを緩和しているわけである。従って、本発明においては、キャップの開栓に際して、ストリップ21が破断するという不都合、即ちTEバンド2が脱落してしまうという不都合は有効に防止されている。
【0039】
さらに、本発明においては、上記のストリップ21の長さが非常に長く、開栓後では、非常に長く垂れ下がったストリップ21に、分断されたTEバンド2が垂れ下がった状態にある。従って、これを元の形状に復帰させることが非常に困難であり、リシールに使用したときには、ストリップ21がかなり歪んだ形態となってしまい、従って、一般の需要者には、一旦開封されたキャップであるという事実を認識させることができる。
特に、キャップが小さいときには、TEバンド2の径がかなり小さくなるため、TEバンド2の分断を看過してしまう傾向が極めて大きいが、本発明では、ストリップ21が非常に長いものであるため、リシールに際しては、その歪みが非常に大きく、一般需要者にも容易に認識でき、優れたTE性を確保することができる。
【0040】
本発明においては、上記ストリップ21の接合部L及びLの何れもがスリット30の近傍位置に形成されていることが好ましく、例えばTEバンド2との接合部Lが開栓側部2bに位置していることを条件として、スリット30に対して周方向に±3mm以内の位置に接合部L及びLが形成されていることが好ましい。スリット30から離れた位置に接合部L或いはLが形成されていると、TEバンド2を開栓側2bと閉栓側2cとに分断するまでのキャップ回転角が大きくなりすぎてしまうからである。
【0041】
さらに、本発明において、ストリップ21が有する折り返し部21aの程度は特に制限されるものではないが、一般に、ストリップ21の長さが、スカート部6とTEバンド2との間隔tに対して400乃至700%程度の長さとなるようにして折り返し部21aを形成するのが良い。この長さが短いと、折り返し部21aは小さなものとなってしまい、キャップ開栓に際してストリップ21に加わるテンションを緩和することが困難となり、ストリップ21の破断を生じ易くなるおそれがある。また、必要以上にストリップ21を長くすると、TEバンド2を開栓側部2bと閉栓側部2cとに分断するまでのキャップ回転角が大きくなりすぎてしまう。
【0042】
尚、本発明においては、図1等に示されているように、スリット30で分断された閉栓側部2cの上面には、ストリップ21の折り返し部21aを許容し得るような切り欠き40を設けることが好ましい。これにより、長いストリップ21の形成により、スカート部6とTEバンド2との間隔tを大きくしなければならないという不都合は有効に回避することができる。
また、ストリップ21とスカート部6の下端との接合部Lは太幅に形成されていることが、TEバンド21を繋いだ状態で垂れ下がったストリップ21を安定に保持する上で好ましい。さらに、折り返し部21aは閉栓方向Y側に膨らんでおり、全体として湾曲した弧状形状を有しており、その閉栓方向Y側の面及び開栓方向X側の面の何れにもストレートな面が形成されていないことが、折り返し部21aでの応力集中を防止し、折り返し部21aの破断を防止する上で好ましい。
尚、ストリップ21は、スリット30に対して閉栓方向Y側に延びているが、これとは逆に開栓方向X側に延びるようにすることもできる。
【0043】
また、図の例では、上方向スリット30は2個設けられているが、このようなスリット30は3個或いは4個設け、それぞれにおいて、開栓側部2bと閉栓側部2cとに区画することも可能であるが、スリット30の数は、2個に限定されるものではなく、1個或いは2個よりも多くすることもでき、これら複数のスリット30によって分割されたTEバンド2のそれぞれにラチェット17が設けられ、さらに、各スリット30に対応してストリップ21が設けられることとなる。
【0044】
上述した本発明のラチェット式螺子キャップは、TEバンド2の分断の視認性が高められているため、開封履歴明示機能が著しく向上している。
このような本発明のキャップは、袋状容器(パウチ)に口部として設けられているスパウトのような小径の容器口部にラチェット式の螺子キャップを装着する場合に最適であるが、このようなスパウト用のキャップに限定されるものではなく、ボトル等の容器の口部に用いるキャップとしても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:キャップ本体
2:TEバンド
2b:開栓側部
2c:開栓側部
17:ラチェット
21:ストリップ
30:上下方向スリット
31:薄肉連結部
50:容器口部
53:突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子係合により容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部下端に設けられ且つ筒状形状を有する開封履歴明示バンドとからなり、該バンドの内面には、閉栓方向への回転は許容するが、容器口部の外面に形成されている突起部との当接によって開栓方向への回転を制限するラチェットが少なくとも1個設けられている螺子キャップにおいて、
筒状形状を有する前記開封履歴明示バンドは、上下方向に延びている上下方向スリットによって、キャップの開栓側に位置する開栓側部とキャップの閉栓側に位置する閉栓側部とに区画されており、該開栓側部と閉栓側部とは、開栓に際して破断可能な連結部により接続されており、
前記開封履歴明示バンドの上端と前記スカート部の下端とは、キャップの開栓に際して破断せず且つ折り返し部を有するストリップによって互いに連結されており、
キャップの開栓に際して、前記開封履歴明示バンドの開栓側部は前記ストリップによってキャップ本体と共に開栓方向側に強制的に移動し、前記開封履歴明示バンドの閉栓側部は前記ラチェットによって開栓方向側への移動が制限され、これにより、該開栓側部と閉栓側部とを接続している連結部が破断し、該開封履歴明示バンドが分断されることを特徴とする螺子キャップ。
【請求項2】
前記ストリップと前記スカート部との接合部Lは、前記上下方向スリットに対して閉栓側に位置している請求項1に記載の螺子キャップ。
【請求項3】
前記上下方向スリットが複数箇所に設けられており、且つ、前記ストリップが該上下方向スリットに対応する数だけ設けられている請求項1に記載の螺子キャップ。
【請求項4】
前記上下方向スリットによって形成された開栓側部の端面の上部に、前記接合部Lが形成され、前記上下方向スリットによって区画された閉栓側部の端面には、該接合部Lから延びている前記ストリップを許容する切り欠きが形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の螺子キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103721(P2013−103721A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246535(P2011−246535)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】