説明

開封防止ラベル

【課題】不正な剥離行為によるシールの貼り替えを確実に発見することが可能で、しかも、ホログラムの存在や、部分的に脆性破壊する層の存在を発見しにくい、いわば、隠しホログラム脆性シールを提供する。
【解決手段】開封防止ラベルを構成する透明基材1の一方の面にパターン状に表面活性化処理2を施すことにより、開封防止ラベルを剥そうとすると、透明基材のみが容易に剥離して、その後にその「パターン」が浮き上がるという効果を持ち、さらに、所定の照明光の照射により、その「パターン」状の欠けを含むホログラム再生像が出現して、その真正性を容易に判定可能な開封防止ラベルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封防止ラベルに係り、詳しくは、通常照明光の照明においては、ホログラム再生像が出現せず、単なる透明な脆性ラベルとしか認識できないラベル(「封緘」の文字等の通常の印刷層がそのラベル構成層の一部に施されている場合が多い。)であって、不正にラベルを張り替えたり、偽造若しくは改竄をしようとする者(以下、不正者ともいう。)にとっては、それらの不正行為が容易に実施可能と思わせる外観を呈するものでありながら、高い不正防止機能を有する、開封防止ラベルに関するものである。
通常の脆性ラベルは、封筒などに貼着後、剥がそうとすると、ラベルそのものが破壊されたり、ラベルの一部構成材料である透明基材のみが優先的に剥がれ、その透明基材側や、ラベルの残った部分に、「開封」等の文字が浮かび上がって、不正な開封が行われたことを知らしめるものである。
このような脆性ラベルに対して、不正者は、封筒の封緘部分から、そのラベルや透明基材を剥がした後、不正に封筒を開封して同封物を不正に閲覧したり、不正に差し替えたりした後、再び、その封筒の封緘部分に残ったラベル残部の「開封」等の文字を埋めるように、その残部の上に新たなラベルを貼着したり、さらには、その剥がした透明基材を悪用して、透明基材上に付着している「開封」の文字等を覆うように新たな粘着剤塗布を行い、あたかも、均一な粘着層と見せかけ、別の封筒に貼着するなどの、不正行為を行うことが想定される。
【0002】
しかしながら、本発明の開封防止ラベルは、所定の照明光による照明により、ホログラム再生像が浮かび上がるため、本発明の開封防止ラベルに対して、上記のような不正が行われた場合には、不正に貼着した新たなラベルの上から、その所定の照明光による照明を行うことで、ホログラム再生像が全く現れないか、もしくは、「欠け」が発生しているホログラム再生像が出現することとなる。
もちろん、剥がした透明基材を悪用した場合には、透明基材に付着していた「開封」等の文字状部分からホログラム再生像を出現させる(「開封」の文字の「画線」状に開口を持つ窓から、その奥にある立体像を覗き見るような状態となる。)ことが、理論的にはできることとなるが、ラベルを剥がす際の透明樹脂層や、粘着層の破断により、その中に含めた蛍光層が大きな変形を受け、もはや、正規なホログラム再生像を得ることはできないものとなっている。
また、蛍光層が、透明基材に付着している「開封」等の文字状部分だけでなく、この文字状部分を含むように設けられている場合には、この剥がし行為によって、蛍光層が分断されることとなり、透明基材側に付着した部分から、そして、被貼着体に残った部分からも、それぞれ「欠け」及び、「変形」が発生したホログラム再生像が出現し、不正行為が行われたことを容易に判定することを可能とする。さらに、一度剥がしたものを、再び、元に戻す行為をしたとしても、上記したようにそれぞれの蛍光層に大きな変形が残っており、また、蛍光層の位置(天地左右、及び、深さ方向)を精密に復元することが非常に困難であるため、やはり、容易に不正行為が行われたことを発見できるものである。
すなわち、本発明は、開封防止ラベルの不正開封や、貼り換えなどの不正行為、さらには、偽造若しくは改竄を困難とする、開封防止ラベルに関するものである。
また、本発明において、「パターン状」の「パターン」とは、文字、図形、記号等、視認可能な「表示パターン」であればいずれも使用でき、代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」や「不正」等の「文字表示パターン」を採用する。
そして、「パターン状の表面活性化処理を施す」とは、これらの「表示パターン」の画線部内を表面活性化処理することを意味し、例えば、その「表示パターン」が「開」という一文字であれば、その文字を構成する一本一本の線(これが画線であって、所定の層の表面に設定された線状の領域である。)の中(線の内側、すなわち、画線部内。)を一様に表面活性化処理することを意味する。
また、透明基材が既に十分活性化されている表面を有する場合には、その表示パターンの画線部の外を表面不活性化処理することも含み、結果として、透明基材表面に、「活性化」の度合いの異なる部分(これが、透明基材上に形成される「別の層」との間の剥離強度が、部分的に異なる状態、すなわち、その領域間で異なる状態として現れる。)が設けられていることを意味する。
本明細書において、配合を示す「部」は特に断わらない限り質量基準である。また、 「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の開封防止ラベルの主なる用途としては、偽造防止分野に使用される開封防止ラベルであって、具体的には、
(1)製造メーカー純正品等、純正品の認証が意義を持つ種々の商品分野、例えば、電子機器、電気機器、コンピュータ関連製品、及び、それらの構成部品、コンピュータ関連ソフト、純正備品類(用紙やトナーなどのプリンタ消耗品等。)医薬品、医薬部外品もしくは化成品等、
(2)商品そのものが真正品であることを消費者に強く求められる分野、もしくは、ラベルを貼付することで意匠性を高めたり、商品が高価であることを示し、その商品の付加価値を高める分野など、例えば、書籍、文書、講演、演劇、映画、写真、絵画、彫刻、版画、図面、模型等もしくは、それらの編集物、又は記録媒体に記録したもの(ビデオカセット、コンパクトディスク、デジタルビデオディスクなど)等の著作物、所定の設定をされ、変更を防止しているROMボード(コンピューター機器、ゲーム機、遊技機等に用いられるもの。ROMとボードに渡る貼付も含む。)、時計、衣類、バッグ、宝石等宝飾品、スポーツ用品、化粧品、及びそれらの高級ブランド品等、
(3)本人確認の手段(ID証)分野、例えば、パスポート、運転免許証、保険証、会員証、身分証、住民登録証、病院カード、もしくは図書館カード等、
(4)経済秩序を保つ上で真正品であることが求められる分野、例えば、商品券、ギフト券等の金券類、もしくはプリペイドカード、クレジットカード、キャッシュカード等のカード類、
(5)さらには、これらのものを包装し、その包装を封印する分野、例えば、単に保管のため、もしくは郵便物や小荷物として封筒に入れたり、パッケージに入れて配達や配送をする分野、商品をパッケージに入れて販売する分野、単純に包装する分野、それらの封緘シールとして使用する分野、また、それらの説明書や効能書等にその真正性を証明するために貼付する分野等、
などに関し、特に、その開封防止ラベルを巧妙に剥がして、そのものの価値を下げられたり、その開封防止ラベルを再利用されることをに配慮すべき、もしくは配慮している分野に好適である。
【0004】
(先行技術)近年、光の干渉を用いて立体画像を再生し得るホログラムの開発が進められ、このホログラムは高度な製造技術を要するとともに様々な形態、例えばラベル、シール、箔状に形成可能なことから、これを応用し偽造防止手段として、上記分野を含め、様々なものの一部に貼着して使用されている。このホログラムは、一見して本物か否かが判り、しかも上述したように製造が困難であることから、広く利用されるようになってきた。
そしてこれらは物品に貼付された後に剥がされ、悪用されることがないように支持体とホログラム層、或いはこれらの間に設けられた剥離層と支持体またはホログラム層で剥離するようにし、被着物から故意に剥離させた場合にホログラム全体が破壊されるものがある。特に、実公平5−48210号公報に開示されるホログラム脆性シールのように、支持体とホログラム形成層がパターン状剥離層を介して積層され、ホログラム形成上に反射性金属薄膜層、及び接着剤層を順次積層し、使用に際しては所要の大きさ、形状に切断し、証書や身分証明書のような偽造、変造されたくない被着体、または封書等の封印部に加圧により、必要に応じて加熱をしながら貼りつけるものがある。
このようにして一度被着体に貼りつけられたホログラムラベルは、剥がそうとすると、剥離層部と非剥離層部との境界断面でホログラムが破壊し、支持体上と被着体上にホログラムが分離して残存してしまうのでラベル全体をそつくりそのまま剥がすことができないため、他の物品にホログラムラベルを貼りかえることができず、ホログラム自体の偽造・変造の困難性により、ホログラムラベルが被着体の真正さを保証できる。
【0005】
従つて、ラベルが貼つてあつた箇所の記載事項や印影写真等を書替えるのには、ラベルの残存部分を除去する必要があり、偽造、変造が困難である。また、支持体上にはパターン状にしかホログラムが残存しない為、ラベルの貼替えは不可能であり、かつ封印部の開封は被着体にパターン状に残存したホログラムにより容易に認識できうる。
従つて、本考案のホログラムラベルは偽造されたくない被着体へ適用は勿論のこと、包装物の封印として適用でき、さらにはホログラムラベルは美麗により装飾物としても使用できる。
しかしながら、前者の全面破壊型のホログラム脆性シールは、剥がし方によってはホログラム層及び反射性薄膜層が破壊されることなく、ホログラムシール全体を完全に剥離させて、その結果、再使用できることで悪用されてしまう可能性がある。そのため、ホログラム層や反射性薄膜層自体を破壊する方法として上記、実公平5−48210号公報の方法があるが、この方法ではホログラム脆性シールを貼着された状態で見るとホログラム層の上にパターン状の剥離層が設けられているため、そのパターンの存在を容易に目視により判別でき、ホログラムの再生画像の見え方に影響を与えるだけでなく、偽造防止策の存在が明らかになってしまう問題を有する。
この問題を解決するため、特開平8−152842号公報には、脆性剥離層を、反射性薄膜層と接着剤層との間に設ける等の方法も提案されているが、いずれも、ホログラム形成層の強度が大きく、基材との接着強度差や、脆性剥離性の存在程度では、ホログラム形成層そのものを破断するに至らないか、部分的に破断され、その目的を十分に達成し難いという課題に加え、そもそも、不正に剥がしたときに、ホログラム形成層が破断するラベルであることを不正者に知らしめてしまい、何らかの不正隠しをする機会を与えてしまうという欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平5−48210号公報
【特許文献2】特開平8−152842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ホログラムを有するラベルであるものの、そのホログラム再生像を通常照明下においては視認できず、外観上、「通常のラベル」として視認される開封防止ラベルであって、ラベルを被貼着体に貼着する際には、問題なく貼着可能であって、その被貼着体からラベルを不正に剥そうとすると、ラベル基材のみが剥がれ、その剥した痕跡として、被貼着体側に残ったものに、例えば「開」と「封」の文字が、「窪み状の文字」として出現し、この段階で、このラベルがいわゆる「脆性ラベル」であることが判明する。
さらに、この「残ったもの」を、所定の照明光によって照明すると、「開封等の文字状の欠け」を含んだホログラム再生像が浮き上がる開封防止ラベルを提供する。
すなわち、本発明は、上記従来の問題点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは、不正な剥離行為によるシールの貼り替えを確実に発見することが可能で、しかも、ホログラムの存在や、部分的に脆性破壊する層の存在を発見しにくい、いわば、隠しホログラム脆性シールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
本発明の開封防止ラベルの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
前記透明樹脂層の中の、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域にホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とするものである。
上記第1の態様の開封防止ラベルによれば、
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
前記透明樹脂層の中の、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域にホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とする開封防止ラベルを提供することができ、外観上は、ホログラムの無い通常の脆性ラベルのように見えながら、不正行為が行われたことを容易に判定可能な、開封防止ラベルを提供できる。
本発明の開封防止ラベルの第2の態様は、
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
前記粘着層の中の、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域に、ホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とするものである。
上記第2の態様の開封防止ラベルによれば、
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
前記粘着層の中の、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域に、ホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とする開封防止ラベルを提供することができ、外観上は、ホログラムの無い通常の脆性ラベルのように見えながら、不正行為が行われたことを容易に判定可能な、開封防止ラベルを提供できる。
本発明の開封防止ラベルの第3の態様は、
前記蛍光層の厚さが、0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とするものである。
上記第3の態様の開封防止ラベルによれば、
前記蛍光層の厚さが、0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とする第1または第2の態様に記載の開封防止ラベルを提供することができ、第1または第2の態様の特徴に加えて、より鮮明なホログラム再生像を出現させることが可能な、開封防止ラベルを提供できる。
【0009】
本発明の開封防止ラベルの第4の態様は、
前記表面活性化処理が、光処理、又は物理的処理であることを特徴とするものである。
上記第4の態様の開封防止ラベルによれば、
前記表面活性化処理が、光処理、又は物理的処理であることを特徴とする第1から第3の態様のいずれか一つの態様に記載の開封防止ラベルを提供することができ、その態様の特徴に加えて、より脆性破壊し易く、且つ、脆性破壊する層の存在をより発見し難い、開封防止ラベルを提供できる。
本発明の開封防止ラベルの第5の態様は、
前記パターンが、微細なパターンの集合により構成されているものであることを特徴とするものである。
上記第5の態様の開封防止ラベルによれば、
前記パターンが、微細なパターンの集合により構成されているものであることを特徴とする第1から第4の態様のいずれか一つの態様に記載の開封防止ラベルを提供することができ、その態様の特徴に加えて、さらに脆性破壊し易く、且つ、脆性破壊する層の存在をさらに発見し難い、開封防止ラベルを提供できる。
すなわち、本発明の開封防止ラベルは、透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理を施して、パターン状の表面活性化処理領域を形成し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、透明樹脂層の中の、パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域や、粘着層の中の、パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域に渡って、ホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられ、上記した開封防止ラベルの用途において、所望の被貼着体の一部や、封筒等の封緘部分等に貼着される。
この開封防止ラベルを、その被貼着体、もしくは、封緘部分から、貼付した痕跡を残さず、開封防止ラベルも完全な元の状態で剥して、不正に準備した別の被貼着体に貼り替えたり、封筒や箱を開封して内容物を取り替えた後、あたかも、その被貼着体や封筒や箱の内容物が本物であると主張したり、逆に、真正な開封防止ラベルを剥したものは、本物でないとして、その価値を低下させるなどの不正を防止するためには、
開封防止ラベルの基材及び透明樹脂層そのものが破断することが望ましいが、開封防止ラベルの基材及び、透明樹脂層の破断強度は、非常に大きく、ラベルとしての粘着力等(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて、0.1〜1.0kg/25mm幅。)では、それらの層を100%破断させることは困難である。
【0010】
そのため、透明基材と透明樹脂層との間の剥離強度を小さく抑え、且つ、透明基材の一方の面を所望のパターン状に表面活性化処理して、パターン状の表面活性化処理領域を形成し、透明基材と透明樹脂層との接着性を部分的(その表面活性化処理した領域のみという意味。)に向上させ、0.5kg/25mm幅以上、3.0kg/25mm幅以下の剥離強度(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて。)とし、その他の領域については、透明樹脂層との接着性をその強度より小さいままに抑えるか、さらには、その小さい強度をさらに小さくするため表面不活性化処理を行う。
その「パターン」としては、視認可能な大きさや形状を有する、文字、図形、記号等、その「パターン」が「可視化」されたときに、「容易に視認可能な表示」となるものであればいずれも使用でき、代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」の文字表示を出現させるため、「開」と「封」の文字の画線部領域のみを表面活性化処理するか、さらには、その表面活性化処理に加えて、その画線部以外の領域を表面不活性化処理する。
この表面活性化処理、すなわち、濡れ性を非常に高める処理や、表面に官能基を創り出す処理等には、炭酸ガスレーザー照射、遠赤外線炭酸ガスレーザー照射、172nm真空紫外線(VUV、エキシマ光)照射、酸素増感エキシマ光照射、(オープン)プラズマ処理、コロナ処理、電子線照射処理等の透明基材最表面の化学結合エネルギーよりも大きいエネルギー(例えば、7.2eV以上。)により、透明基材最表面の化学結合を切断し、または、172nmの真空紫外線等のように、大気中の酸素に吸収されてオゾンまたは直接励起酸素を発生し、この接触により官能基を生成する等の物理的処理等を用いて、透明基材の最表面のみを「表面活性化処理(表面張力が大きくなることを意味する。)」し、もしくは、酸化剤等薬品による表面処理、プライマー処理、シランカップリング処理等の化学的処理、アルゴンビームエッチング、エッチング液、さらにはサンドブラスト加工等の物理的な租面形成処理等を用いることができる。
【0011】
そして、表面不活性化処理としては、透明基材上、もしくは、上記の表面活性化処理面の所定の部分のみを精度よく表面不活性化処理する必要があり、透明基材上に直接「表面不活性化処理」を行う方法、例えば、熱硬化性樹脂や、硬化剤を添加した樹脂からなる透明基材を用いて、その最表面の一部を赤外線加熱等により完全硬化させて、未反応成分を解消したり、離型成分を含む樹脂の部分加熱や部分硬化により、その離形成分を最表面にブリードする方法等、または、まず、透明基材の最表面全体に上記した「表面活性化処理」を施し、その後、活性化した透明基材の最表面の一部(領域)に、その最表面のみを部分的に溶解する、もしくは、その最表面の活性化した官能基と反応して官能基の活性を解消する、溶剤類、例えば、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等。)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等、さらにはその水溶液。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン等。)、エステル類、エーテル類(テトラヒドロフラン等。)等、または、これらの透明基材とはそもそも接着し難い、界面張力の小さい樹脂、例えば、シリコーン樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂や、これらのフッ化炭化水素基、有機珪素基を含む樹脂等を、活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、表面活性化処理面への接触を避けて、上記した所望のパターン状に部分形成する方法等により、高い精度でパターン状に表面不活性化処理する。
この際、透明基材表面の光学的な特性(透明基材に付着したものを含んだ特性とし、光学的透明性、屈折率分布や、光を反射する界面形状等。)に変化を与えないことが望ましく、溶剤等は揮発することで、また、樹脂等はあくまで表面改質の目的であって乾燥後の形成厚さが光の波長の1/2〜1/10程度となることが望ましい。もちろん、これらを併用することも好適である。
そして、この開封防止ラベルを剥そうとして透明基材を被貼着体から持ち上げた際、表面活性化処理を施していない部分、または、表面不活性化処理した部分(いずれも、表面活性化処理領域ではない領域を意味する。)において、その透明基材と透明樹脂層との間で容易に剥離が起こり、表面活性化処理した部分(表面活性化処理領域を意味する。)においては、透明基材側に透明樹脂層が付着したままとなって、表面不活性化処理した部分と表面活性化処理を施していない部分との境界、または、表面不活性化処理した部分と表面不活性化処理した部分との境界において、透明樹脂層に強いせん断力(透明樹脂層を破断しようとする力。透明樹脂層が破断する際に加えていた力が破断強度となる。)が働くこととなる。
【0012】
そして、その「透明樹脂層」、または、「粘着層」の中に、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域にホログラムレリーフ形状を有する蛍光層を設ける。
すなわち、その「透明樹脂層」、または、「粘着層」を構成する「透明な樹脂」を、例えば1/2の厚さで形成し、その表面にホログラムレリーフを形成後、そのホログラムレリーフの「所定の一部分」に接するように、さらには、ホログラムレリーフの「所定の一部分」を形成する凹凸に追従して均一な厚さで、蛍光層を設け、その蛍光層を覆いながら、そのホログラムレリーフ全体を、その「透明な樹脂」で、残りの1/2の厚さを形成し、ホログラムレリーフ形状を有する蛍光層を含む「透明樹脂層」、または、「粘着層」を設ける。
この際、「所定の一部分」とは、「少なくともパターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域」にあるホログラムレリーフの領域であって、透明基材上のパターン状の表面活性化処理領域が、例えば、「開」や「封」の文字領域である場合には、その文字領域の直下にある、「透明樹脂層」、または、「粘着層」の中に設けられている『ホログラムレリーフ面の「開」や「封」の文字領域』を少なくとも含む「領域」を意味し、この『ホログラムレリーフ面の「開」や「封」の文字領域』を含んでいれば、「任意の大きさ、及び、任意の形状」とすることができる。
但し、この蛍光層の存在は、不正者には全く認識できないことが望ましく、『ホログラムレリーフ面の「開」や「封」の文字領域』と「ほぼ同じ大きさ、及び、同じ形状(一回り大きいものを意味する。)」か、もしくは、それらの個々の文字を一回り大きい大きさで内包する長方形状か楕円形状とすることが好ましい。ここで、「一回り大きい」とは、文字の一本一本の線幅の1.1倍〜2.0倍程度、もしくは、文字ひとつの大きさのタテヨコの1.1倍〜2.0倍程度を意味する。
このことにより、不正者が本発明の開封防止ラベルを剥がした際、透明基材側には、『「開」や「封」の文字領域』の形で「破断した透明樹脂層及び粘着層」が付着し、被貼着体上には、その文字領域状の「凹み」もしくは「穴」の開いたラベル残部(「残った透明樹脂層及び粘着層」)が残ることとなるが、結果として、その透明基材側や、被貼着体上にそれぞれ蛍光層が分断されて存在することとなり、不正者の知り得ない「紫外線等の所定の波長の光」による照明により、その分断状態を容易に確認できるようになる。
【0013】
また、このように、「透明樹脂層」、または、「粘着層」を構成する「透明な樹脂」の表面に設けられたホログラムレリーフの一部にのみに蛍光層が設けられていて、その蛍光層を覆い、且つ、ホログラムレリーフ全体に、その「透明な樹脂」を重ねることで、ホログラムレリーフの蛍光層を設けた領域以外の領域においては、そのホログラムレリーフの凹凸が「同一屈折率の材料」で埋められることとなるため、この埋められた部分は、もともとそのような凹凸が存在しなかったような光学的挙動をする。すなわち、光学的連続性を持ち、「完全に透明」であって、何らの回折や屈折も生じず、均一な一つの層として振る舞うこととなる。
そして、このようにして設けた蛍光層は非常に薄い層であり、且つ、蛍光体を多く含んでいるため、蛍光層の破断強度は非常に小さく、透明樹脂層や、粘着層の破断とともに容易に破断する。
すなわち、「開封」の文字状に表面活性化処理等を施した場合、「開封」の文字の領域に対応する部分の透明樹脂層、及び粘着層が分断された蛍光層を含んで、透明基材に付着し(以下、透明基材側残部ともいう。)、「開封」の文字以外の領域に対応する部分ではそれらの層は透明基材に付着しないで、透明基材が剥離され、被貼着体側には、透明樹脂層、及び粘着層が、分断された残りの蛍光層を含んで、「開封」の文字状に欠けた状態(文字状の窪みが発生した状態、もしくは、文字状の穴が開いた状態。以下、被貼着体側残部ともいう。)で残されることとなる。
また、表面活性化処理部分の領域の大きさ(面積)と、それ以外の領域(表面不活性化処理部分の領域を含む。)の大きさ(面積)とを比較すると、この例もそうであるが、表面活性化処理部分の領域の大きさより、それ以外の領域の大きさの方が相対的に大きくなる場合が多いことから、この透明基材と透明樹脂層の界面での剥離を助長する効果も有する。
【0014】
そして、この被貼着体上の被貼着体側残部に、所定の波長の紫外線等を当てると、蛍光層内に存在する「蛍光体」が蛍光を発光し、その発光波長によるホログラム再生像が出現する。この場合、ホログラム再生像は、「開封」の文字により遮られた状態として観察される。
そもそも、ホログラム再生像はその再生の原理から非常に冗長性が高いため、この「遮断」(表面活性化処理領域の幅、すなわち、「開封」の文字の線幅だけ、ホログラムレリーフ及び蛍光層が取り除かれているため、この領域からホログラム再生に寄与する光が放射されないことを意味し、あたかも、ホログラム再生像の上から、「開封」の文字状の「遮蔽物」をかぶせて、ホログラム再生像を結像する光の進路を「遮断」したように見えることを意味する。)を明確に視認できるようにするため、その「遮断」の大きさは、そのホログラムレリーフの干渉縞の周期0.5μm〜2μmの200倍〜5000倍、より好適には、500倍〜2000倍とする。
この「遮断」が、200倍未満であると、ホログラムの冗長性からホログラム再生像が強く再現されて「遮断」が弱まってその存在を視認し難くなり、この「遮断」が5000倍を超えると、表面活性化処理した部分の領域の面積が大きくなって(個々の線幅が大きくなり、結果として全体の面積も大きくなることを意味する。)、透明基材そのものが剥離しにくくなったり、開封防止ラベル全体が何らの破断も生じずそのまま剥離できてしまう等の不具合が発生する。
透明基材を剥離した際の「遮断」(文字等。)の鮮明さは、500倍〜2000倍が最も良好となる。
これに対し、表面活性化処理していない面、乃至は表面不活性化処理面は、その剥離強度を、0.01kg/25mm幅以上0.1kg/25mm幅以下として、開封防止ラベルを剥そうとすると、どのように工夫しても、必ず、透明基材が透明樹脂層からスムースに剥がれるものとし、透明基材を剥離した際、透明樹脂面の最表面がほぼ鏡面となって(剥離痕等が残らないことを意味する。)、その部分からは、その下にあるホログラム再生像を鮮明に視認することができるものとする。
【0015】
上記した印刷手法を用いる表面不活性化処理は、非常に鮮明なパターンを形成可能であり、且つ、表面不活性化処理面と表面活性化処理面との接着強度差を非常に大きくすることができるため、破断する境界線をより明確なものとすることができる。
もちろん、これらの表面活性化処理及び表面不活性化処理を用いたパターン状処理は、光学的に透明であって、開封防止ラベルを観察した際、そのパターン境界を視認することができず、レーザー等で照明してもその透明性(その連続性。)を維持している。
この表面活性化処理の中でも、レーザー照射等の光処理、又はプラズマ処理等の物理的処理は、透明基材の処理面に凹凸が発生せず、鏡面を維持していること、表面活性化処理の位置精度を高くすることが可能であること、及び、表面不活性化処理による表面不活性化処理効果が大きいことから、特に望ましく、また光学的透明性にも優れる。
さらに、上記した「パターン」内を均一に表面活性化処理することに替えて、その「パターン」を「微細なパターンの集合により構成」する、すなわち、その「パターン」内を、
より「微細なパターン」、例えば、網点状、市松模様状、ランダムパターン状等の「微細なパターン」の集合体とし、その「微細なパターン」の部分のみを表面活性化処理することで、「破断」する境界線(すなわち、破断する機会)を増やし、「破断」をより効率的に発生させることができるようになり、透明基材を剥離した際の透明樹脂層等の破断性、そして、併せて、蛍光層の破断性を向上することができる。
例えば、網点形状の場合には、その網点の中を表面活性化処理し、網点と網点の間の領域は、表面活性化処理せず、または、表面不活性化処理し、
市松模様状の場合には、升目で一様に区切り、その一つ飛ばしの升目の部分のみ、表面活性化処理し、それ以外の升目は、表面活性化処理しないか、もしくは、表面不活性化処理して、透明基材と透明樹脂層との界面の剥離強度に微細な網点状や微細な市松模様状の強弱を付与することで、「破断」性を向上させる。
【0016】
このため、「微細なパターン」の個々の大きさ(市松模様であれば、その一つのマスの大きさを意味する。)は、50μm〜1mmとする。
「微細なパターン」の個々の大きさが、1mmより大きいと、「破断」性を向上させる効果が低下し、50μm未満とすると、表面活性化処理の個々の領域が小さくなりすぎて、上記した方法による、十分な表面活性化処理ができなくなる。
この表面活性化処理を施す範囲は、透明樹脂層全体に渡って施すこともできるが、この表面活性化処理の目的が「不正行為の判定」であるため、開封防止ラベルの所定の一部範囲(1/10〜1/25の範囲。)に限定して施すことも、開封防止ラベルを被貼着体に貼着した状態で、そのような処理が存在することをさらに秘匿する意味で好適である。
さらに、ホログラムの冗長性を遮断する目的を考慮すると、「パターン」は均一に設けることが望ましいが、ホログラム画像再生時のもう一つの特徴である、「50μm〜300μm幅の微細な光回折性の帯でホログラムを寸断すると、光回折性の帯とホログラムの帯が一対となって縞を構成し、それぞれの帯から回折する光の干渉効果により、ホログラム画像の再生を阻害する効果が発生する」現象を用いて、ホログラム再生を「遮断」するためには、「微細なパターン」の大きさを、50μm〜300μm幅であって、長さも同様とすることが望ましい。本発明の場合は、この微細な光回折性の帯に相当する部分は、光散乱性の帯となる。
例えば、網点の直径、市松模様の一つの正方形の一辺の長さ、さらには、ランダムパターンの個々の領域の幅等を、この大きさとする。
透明基材剥離時、ホログラム再生に寄与する領域とホログラム再生に寄与しない領域とが、交互に上記した大きさで形成されることで、1つのホログラム再生領域とそれに隣接する1つのホログラム再生しない領域が、上記した微細な「縞」を形成し、この縞が繰り返し存在することで、ホログラム画像の再生を阻害し、単なる虹色の領域として視認されることになる。従って、この場合は、例えば、虹色の「開封」文字が観察される。
【0017】
本発明で使用される透明基材には、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、開封防止ラベルを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、5〜250μmの厚さのフィルム状もしくはシート状のプラスチックを用いる。
透明基材の上に形成される、透明樹脂層を構成する、透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができ、グラビアコーティング方式等の各種コーティング方式や、オフセット印刷方式、スクリーン印刷方式等の各種印刷方式を用いて、5μm〜50μmの厚さの透明樹脂層を形成する。
上記の透明な樹脂材料を用いて、その透明樹脂層の中にホログラムレリーフを設けるためには、透明樹脂層の形成を2回に分け、まずその1/10〜9/10の厚さの透明な樹脂による層を設け、この段階で、その最表面にホログラムレリーフを形成し、蛍光層を設けた後に、その蛍光層上を含んで、透明な樹脂による層の全体を覆うように、残りの厚さの透明な樹脂による層を重ねて、上記した厚さの透明樹脂層とする。
もちろん、この方法を用いて、透明樹脂層の中で、一つの界面の中に複数のホログラムレリーフを設けたり、複数の蛍光層をその蛍光体を変えたり、その厚さを変えて設けてもよく、さらには、透明樹脂層の厚さ方向に異なる場所に、同様に複数の蛍光層を設けても良い。蛍光層の形成位置や種類が多数あればあるほど、不正者にとって、すべての構成を見出すことが困難となり、不正防止効果を高めることができる。
【0018】
そのホログラムレリーフを形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
レリーフホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
【0019】
ホログラムレリーフは、位相ホログラムとしての位相差を「レリーフ形状(凹凸形状を意味する。)」に現しているが、この位相差を有する「レリーフ形状」に接するように設けられ(蛍光層の一方の面がその「レリーフ形状」に沿って設けられ)、または、「レリーフ形状」に追従して均一な厚さで、蛍光層が設けられることにより、蛍光層が発する蛍光が、上記位相差を含んで、または、有して発することになる。
すなわち、蛍光層そのものが、ホログラムレリーフ形状をしている。
蛍光層は、透明性を有しているか、もしくは、「白色」(蛍光体表面の光散乱性により、「白色」と視認されることを意味する。)であるため、蛍光層を発光させる照明光以外の照明光の下では、単なる透明なラベル、もしくは、白色ラベルとして視認される。
そのため、上記した種々の開封防止ラベルの用途においては、その用途に適合する文字や絵柄等の印刷層を、開封防止ラベルを構成する各層の上下、特には、透明基材と透明樹脂層との間に設けることが好適である。
ここで、蛍光層により、ホログラム再生像が出現する原理について以下に説明する。
蛍光層が発する蛍光は、レリーフホログラムを再生する場合に生じるホイヘンスの2次波に対し、本発明の開封防止ラベルの場合において、この2次波に相当するものが、ホログラムレリーフ面に配された蛍光体(もしくは、蛍光物質とも呼ぶ。蛍光層の中に含まれている。)の蛍光発光であり、この発光がその役目を担い、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフが有する位相差を含んで発光する光を観察者側に発するものである。
この発光する光が、ホログラムレリーフ面上の空間において干渉現象を起こし、その結果、所定の方向に所定のホログラム再生像を発現する。
【0020】
蛍光体は、紫外線、電子線、X線などのエネルギーを吸収して可視光線として放出する物質であり、例えば、母体となるセラミックス結晶にEu やCe などの発光を担う金属イオンが微量添加した材料等がある。この場合、発光に寄与するは金属イオンであり、外から加えられたエネルギー(紫外線、電子線、X線などや、もちろん可視光線、赤外線等のエネルギー。)を吸収して励起され、その後基底状態に戻る時に発光する。ホスト結晶の格子は金属イオンを取り囲むことによりイオンを化学的に安定化させたり、結晶場や配位環境を整えることにより発光色や発光強度を制御する働きをする。
本発明は、これらの蛍光発光の内、ストークスシフト(Stokes shift)によって可視光領域の発光を起こす蛍光体材料を用いる。もちろん、赤外線の励起による可視光領域の発光を起こすものも用いることができる。
本発明は、ホログラムの照明光源の波長とは異なる波長でホログラムを再生するものであり、例えば、紫外線で照明し、緑色のホログラムを視認することもできるため、観察者の目には、あたかも、通常用いられる緑色の照明光源の無いところに、ホログラムだけが光輝き、空中に浮いているように見え、意匠性にも優れるものとなる。
もちろん、ホログラムを再生可能な光源の波長域が非常に狭いことに起因して、その特定の波長域を知りうる者のみがホログラム再生を果たすことができ、真正性判定用に有用なものとなる。また、上記したストークスシフトの値を知りうる者のみがホログラム再生像の色調を予測でき、その再生波長に調整したバンドパスフィルターを通して覗いて、そのバンドパスフィルターを通過できるホログラムのみが、真正であると判定することもできる。
また、このバンドパスフィルターを通過する角度(回折角度)も、そのストークスシフト量に依存し、やはり、その値を知りうる者のみがその所定の角度で判定を行うことができる。
さらに、蛍光体を複数含めることにより、この再生像は複数の角度に異なる色調で現れることになり、意匠性の面でも、真正性判定の面でもより優れたものとなる。
【0021】
蛍光発光の原理は、図1に示すジャブロンスキー図にあるように、蛍光体(蛍光色素、蛍光顔料、蛍光染料等を含む。)の基底状態(S0:一重項状態)から光吸収によって第一(S1)、第二(S2)、第三励起状態(S3)・・・のどれかの振動状態に励起された発光体が、無放射過程で非常に速やかに緩和してS1の電子励起状態に移るか、あるいは項間交差によって三重項状態(T1、T2)へ移る。S1の最低振動状態になった蛍光体は、無放射過程によるか蛍光を発して基底状態に戻る。三重項状態になった分子は、無放射過程によるか、リン光を発して基底状態に戻る。
一重項同士の遷移は瞬間的に起こるため、蛍光の半減期は10-4sec以下と短いものである。遷移に要する時間は、10-15secで励起が起こり、その後10-9〜10-7secで蛍光発光が起こるとされている。
一方、三重項から一重項への遷移はスピン変化禁止により禁制遷移となり自発的放出が起こりにくいので、リン光の半減期は大きく、秒単位のものもある。
基底状態に戻る際に光を発するか否か、光の強度が強いか弱いか、蛍光寿命が長いか短いかは、その蛍光体物質の分子構造や分子の置かれた環境に大きく依存する。
蛍光体材料の放出光の波長分布を蛍光スペクトルといい、蛍光スペクトルは蛍光の波長に対し相対的な蛍光強度をプロットして作成される。(実際の蛍光スペクトル測定では、波長と 強度が一定に維持された励起光を光源として用い、 蛍光体を取り扱う場合は、放出スペクトルのことを蛍光スペクトルと呼ぶ。)蛍光スペクトルに示される波長(エネルギー)は一次励起状態の最低振動エネルギー準位から基底状態の優先的な振動エネルギー準位までのエネルギー差と等しくなる。
蛍光の振幅が励起状態と基底状態の振幅構造と類似しているなら、最も長波長側の励起の振幅と鏡像関係となり、理論上、蛍光色素が吸収した光エネルギーの波長と蛍光として放出する波長は同じになる。しかし実際にはほとんどの蛍光色素の蛍光スペクトルは長波長(低エネルギー)側にシフトする。励起スペクトルと蛍光スペクトルのピーク波長間の差はストークスシフトと呼ばれ、この波長差は、蛍光放出以前の励起状態の際に放出されたエネルギーが熱エネルギーに変換されたために生じる。
【0022】
ストークスシフトは蛍光の感度おいて非常に重要であり、蛍光を検出する際、励起光の影響を受けないためバックグラウンドを低くすることができる。
入射光の波長と強度を一定にした場合(例えば、光源として制御されたレーザー光を使用した場合)、放出される蛍光は蛍光物質の量と正比例する。従って、蛍光の強度を一定とするためには、ホログラムレリーフ面に形成する蛍光層の中の蛍光体の量を一定とする必要がある。もちろん、蛍光体の濃度が高い場合には、サチレーションをおこし直線性が失われて一定の強度となったり、蛍光体間の距離が極めて接近し、表面付近だけが励起され、放出蛍光が吸収されてしまうため、本発明の目的である蛍光光の干渉性を十分得るためには、蛍光層の厚さ方向に蛍光体が分散して多く存在するよりも、ホログラムレリーフ面近傍にのみ均一に存在する方が、より高い干渉現象を生じるため、蛍光体の粒径の1〜10倍、さらには1〜3倍とすることが望ましい。蛍光体が染料であり、蛍光層を形成する樹脂に溶解している場合には、その樹脂層を薄く抑える必要がある。また、蛍光染料によって、染着する場合には、ホログラムレリーフを形成している透明樹脂層そのもののレリーフ面のみを染着することにより、上記した目的を達成することもできる。
また、蛍光体によっては、放出される蛍光強度(輝度)が異なり、蛍光強度はそのまま感度に影響を与えるため蛍光体の蛍光強度は非常に重要な要素となる。蛍光強度は蛍光体の以下の2つの特性に依存し、
・光の吸収効率(吸光係数)
・励起光と蛍光の変換効率(量子収率)
蛍光強度は蛍光体の吸光係数(ε)と量子収率(φ)に比例するため、以下の式で表される。
・蛍光強度(輝度) ∝ 吸光係数(ε)×量子収率(φ)
【0023】
ここで、蛍光体の吸光係数とは蛍光体に吸収される特定波長の光量を意味し、モル吸光係数は光路1 cmあたりの1M(1モル)蛍光色素溶液の光学濃度として定義される。有用な蛍光体では、このモル吸光係数が10,000以上を示す。励起光と蛍光の変換効率(量子収率)は以下の式から得ることができる。
・φ = 放出された光子数 / 吸収された光子数
ここで、量子収率(φ)は “0” (非蛍光性物質)から “1” (効率100%)までの値をとる。蛍光体の量子収率を示す例として、フルオレセイン(φ=0.9)およびCy5(φ=0.3)がある。通常の量子収率(φ)の測定には、吸収スペクトルのピーク波長が用いられる。
フルオレセイン(ε=70,000、φ=0.9) とCy5(ε=200,000、φ=0.3)は極めて高い輝度を持っており、これらの蛍光体は量子収率と吸光係数は非常に異なっているが、蛍光強度は同等となる。
したがって、蛍光体を評価する場合は、吸光係数と量子収率をあわせて考慮する必要がある。蛍光強度は入射光の強さにも影響を受け、理論上、入射光量を上げていくと励起さ
れる蛍光体が増加し、同時に放出される光量(光子数、あるいは基底状態まで落ちていく 電子数)が増加し、蛍光強度の上昇として観察される。しかし 実際には、入射光量を上げすぎてしまうと全ての蛍光体が常時励起状態となり、蛍光破壊が起こり蛍光強度が減衰あるいは消失して蛍光強度との相関性が失われる等の現象が発生するため、入射光量を適切に定める必要がある。
さらに、蛍光体の量子収率や励起スペクトルおよび蛍光スペクトルは 環境条件、すなわち、環境温度、イオン濃度、PH、励起光の強度、樹脂等との共有結合、非共有結合性の相互作用(インターカレーション効果等。)などから影響を受けるため、これら環境条件を考慮して励起光波長や、蛍光光を認識しやすくするための光学フィルター(ロウパスフィルター、ハイパスフィルターや、バンドパスフィルター等。)を必要に応じ、設定する必要がある場合もある。
【0024】
また、もう1つの環境効果として光によるフォトブリーチングがある。励起状態にある蛍光体は基底状態に比べて化学的に活性化されているため、破壊されやすくなり、低頻度ではあるが、例えば、「励起蛍光色素分子」が化学反応を進行し、最終的に低蛍光性の構造になりことがある。この化学反応の進行は個々の蛍光体のフォトブリーチングに対する感受性や化学的な環境、励起光の強度、励起光の照射時間、観察や認証のための光学スキャンの繰り返し数等に依存するため、目的に応じた設定が必要となる。
光源として制御可能なレーザー光を使用するなど、入射光の波長と強度を一定にした場合、放出される蛍光(光子数)は蛍光体の量と正比例する。蛍光体が極めて高濃度である場合は、シグナル応答が非線形になる。
一定量の蛍光体から放出される光子数は、励起/放出サイク ルを繰り返せば増幅できる。励起光強度と蛍光体濃度が一定の場合は、放出光の総量は照射時間(蛍光色素等に励起光を照射している期間)に比例する。励起/放出サイクルの時間よりも照射時間が長ければ、蛍光体は励起/放出サイクルを何回も繰り返す。蛍光強度(放出光子数)の測定は、どのような受光素子でも測定可能である。
低強度光を測定する場合は、 増幅機構を持つ光電子増倍管(Photo multiplier tube:PMT) が有効である。PMTに十分なエネルギーを持つ光が入射すると、 陰極から電子が放出され、電子は電流として増幅される。これら受光素子の電流は、入射光の強度に比例し、蛍光強度は通常、任意単位で表示される(例rfu:rela−tive fluorescence unites:相対蛍光単位)。
【0025】
蛍光体は、一般的に、蛍光体原料を焼成する固相反応法により、製造される。この固相反応法では原料混合物を高い温度で焼成するため、得られる焼成ケーキは、蛍光体粒子が硬く凝集したものとなることが多い。そのため、通常は、蛍光体の製造の際には例えばボールミル、乳鉢等による粉砕工程を行うが、このときの蛍光体粒子の表面の損傷を抑制する方法として、流動式反応器装置を用いて、実質的に単分散の蛍光体−前駆体粒子を、流動する気体中に浮遊させて焼成することにより、凝集していない実質的に単分散の蛍光性粒子を製造する。この方法によれば、1μm未満の大きさの蛍光性粒子を製造することができる。
また、例えば、ZnGa24:Mn蛍光体を製造するに際し、焼成を行なう前の蛍光体原料を湿式沈殿法により調製することにより、低温での焼成が可能となり、蛍光体粒子の凝集を抑制することができる。
また、例えば、アルカリ土類アルミン酸塩系、またはアルカリ土類珪酸塩系の母体結晶を有する蛍光体の製造方法に関し、Srを含む蛍光体原料として硝酸ストロンチウムを用い、原料混合液又は懸濁液を所望の粒径となるよう液滴化し、これを焼成する方法がある。これにより、極めて脆い性質を有する蛍光体が得られ、容易に微小なサイズへ粉砕することができる。
【0026】
蛍光体原料としては、製造しようとする蛍光体を構成する元素(以下、「蛍光体構
成元素」ともいう。)を含有する化合物を用いることができる。その例を挙げると、蛍光体構成元素を含有する、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。蛍光体原料の選択に際しては、得られる蛍光体への反応性等を考慮して選択することが好ましい。さらに、蛍光体を構成する各蛍光体構成元素に対応し、蛍光体原料は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、蛍光体の各蛍光体原料中に含まれる不純物としては、蛍光体の特性に悪影響を与えない限りにおいて、特に限定されない。
各蛍光体原料の重量メジアン径としては、通常0.01μm以上、0.5μm以下である。このために、蛍光体原料の種類によっては予めジェットミル等の乾式粉砕機で粉砕を行っても良い。これにより、各蛍光体原料の原料混合物中での均一分散化を図り、かつ、蛍光体原料の表面積増大による原料混合物の固相反応性を高めることができ、不純物相の生成を抑えることが可能となる。
【0027】
例えば、Baを含む蛍光体原料の具体例としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、BaCO3、Ba(NO32、BaSO4、Ba(C24)・22O、Ba(OCOCH32、BaCl2等が挙げられる。
Caを含む蛍光体原料の具体例としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO32・4H2O、CaSO4・2H2O、Ca(C24)・H2O、Ca(OCOCH32・H2O、無水CaCl2(但し、水和物であってもよい。)等が挙げられる。
Srを含む蛍光体原料の具体例としては、SrO、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO32、SrSO4、Sr(C24)・H2O、Sr(OCOCH32・0.5H2O、SrCl2等が挙げられる。
Znを含む蛍光体原料の具体例としては、ZnO、Zn(C24)・2H2O、ZnSO4・7H2O等が挙げられる。
Mgを含む蛍光体原料の具体例としては、MgCO3、MgO、MgSO4、Mg(C24)・2H2O等が挙げられる。
Siを含む蛍光体原料の具体例としては、SiO2、H4SiO4、Si(OCOCH34等が挙げられる。
Euを含む蛍光体原料の具体例としては、Eu23、Eu2(SO43、Eu2(C243、EuCl2、EuCl3、Eu(NO33・6H2O等が挙げられる。
Sm、Tm及びYbを含む各蛍光体原料の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Tm及びYbに置き換えた化合物が挙げられる。
【0028】
Mnを含む蛍光体原料の具体例としては、MnO、MnO2、Mn23、MnF2、MnCl2、MnBr2、Mn(NO32・6H2O、MnCO3、MnCr24等が挙げられる。
Crを含む蛍光体原料の具体例としては、Cr23、CrF3(水和物であってもよい)、CrCl3、CrBr3・6H2O、Cr(NO32・9H2O、(NH42CrO4等が挙げられる。
Tbを含む蛍光体原料の具体例としては、Tb47、TbCl3(水和物を含む。)、TbF3、Tb(NO33・nH2O、Tb2(SiO43、Tb2(C243・10H2O等が挙げられる。また、他の蛍光体原料(例えば、Eu源)とTb源とを共沈させてから用いることもできる。
Prを含む蛍光体原料の具体例としては、Pr23、PrCl3、PrF3、Pr(NO3362O、Pr2(SiO43、Pr2(C243・10H2O等が挙げられる。
Ceを含む蛍光体原料の具体例としては、CeO2、CeCl3、Ce2(CO33・5H2O、CeF3、Ce(NO33・6H2O等が挙げられる。
Luを含む蛍光体原料の具体例としては、Lu23、LuCl3、LuF3(水和物であってもよい)、Lu(NO33(水和物であってもよい)等が挙げられる。
Laを含む蛍光体原料の具体例としては、La23、LaCl372O、La2(CO33・H2O、LaF3、La(NO33・6H2O、La2(SO43等が挙げられる。
Gdを含む蛍光体原料の具体例としては、Gd23、GdCl3・6H2O、Gd(NO33・5H2O、Gd2(SO43・8H2O、GdF3等が挙げられる。
【0029】
Geを含む蛍光体原料の具体例としては、GeO2、Ge(OH)4、Ge(OCOCH34、GeCl4等が挙げられる。
Gaを含む蛍光体原料の具体例としては、Ga23、Ga(OH)3、Ga(NO33・nH2O、Ga2(SO43、GaCl3等が挙げられる。
Alを含む蛍光体原料の具体例としてはα−Al23、γ−Al23等のAl23、Al(OH)3、AlOOH、Al(NO33・9H2O、Al2(SO43、AlCl3等が挙げられる。
Pを含む蛍光体原料の具体例としては、P25、Ba3(PO42、Sr3(PO42、(NH43PO4等が挙げられる。
Bを含む蛍光体原料の具体例としては、B23、H3BO3等が挙げられる。
なお、上記に例示した原料は、必要に応じて共沈させてから用いてもよい。
さらに、N元素、O元素及びハロゲン元素等に対応する蛍光体原料は、通常、上記各蛍光体構成元素の蛍光体原料のアニオン成分として、又は焼成雰囲気中に含有される成分として、蛍光体製造時に供給される。
【0030】
蛍光体原料を混合して原料混合物を調製してから、原料混合物を所定温度、雰囲気下で焼成する。この際、混合は十分に行うことが好ましい。
上記混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(A)及び(B)として挙げた手法を用いることができる。また、これらの各種条件については、例えば、ボールミルにおいて2種の粒径の異なるボールを混合して用いる等の条件を選択可能である

(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒又は水などの溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
蛍光体原料の混合は、蛍光体原料の物性に応じて、湿式又は乾式のいずれかを選択することができる。
また、ハロゲン化物、窒化物等の酸化・吸湿し易い原料を用いる場合には、例えばアルゴンガス、窒素ガス等の不活性気体を充填し、水分管理されたグローブボックス内でミキサー混合する。
また、混合・粉砕時に、粒径を揃える等の目的で、蛍光体原料を篩いにかけても良い。この場合、各種市販の篩いを用いることが可能であるが、金属メッシュのものよりもナイロンメッシュ等の樹脂製のものを用いる方が、不純物混入防止の点で好ましい。
焼成工程では、得られた原料混合物を焼成することにより焼成物を得る。得られた焼成物は、通常、その組成は目的とする蛍光体のものとなっているが、その粒子は焼結して焼成ケーキとなっている。
【0031】
さらに、焼成において、焼成炉中の耐熱容器の数が多い場合には、例えば、上記の昇温速度を遅めにする等、各耐熱容器への熱の伝わり具合を均等にすることが、ムラなく焼成するためには好ましい。
焼成工程における焼成温度、圧力、雰囲気等の焼成条件は、製造しようとする蛍光体そ
れぞれに応じて適切な条件を設定することが好ましい。
さらに、耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は、発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために、必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等の表面処理を行なってもよい。
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下「表面処理物質」とも称する。)の例としては、例えば、有機化合物、無機化合物、ガラス材料等を挙げることができる。 有機化合物の例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
無機化合物の例としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。なお、燐酸リチウム、燐酸ナトリウム、及び燐酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、塩酸バリウム、塩酸カルシウム、及び塩酸ストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて用いることもできる。中でも、燐酸ナトリウムと硝酸カルシウムとを組み合わせて用いることが好ましい。また、蛍光体表面にバリウム、カルシウム、ストロンチウムが存在する場合には燐酸ナトリウム等の燐酸塩のみを用いても表面処理を行なうことができる。
【0032】
ガラス材料の例としてはホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。 これらの表面処理物質は、何れか1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
表面処理を施した蛍光体は、これらの表面処理物質を有することになるが、その表面処理物質の存在態様としては、例えば下記のものが挙げられる。
(i)表面処理物質が連続膜を構成して、蛍光体の表面を被覆する態様。
(ii)表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより、蛍光体の表面を被覆する態様。
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量、若しくは被覆量は、蛍光体の重量に対して、0.1重量%以上、また、30重量%以下、好ましくは15重量%以下であることが望ましい。蛍光体に対する表面処理物質量の量が多過ぎると、蛍光体の発光特性が損なわれる場合があり、少な過ぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られない場合がある。
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば、以下に説明するような、金属酸化物(
酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
蛍光体をエタノール等のアルコール中に混合して、攪拌し、更にアンモニア水等のアルカリ水溶液を混合して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を混合して、攪拌する。得られた溶液を30分間静置した後、蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール混合、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、150℃で2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着さ
せる方法、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法、金属化合物の粒子を付着させる方法等を用いることができる。
蛍光体の結晶構造の例を挙げると、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu等のオルソシリケート系結晶構造、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のガーネット系結晶構造、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu等のアパタイト系結晶構造、M3Si6122:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等の窒化物系結晶構造などが挙げられる。中でも、オルソシリケート系結晶構造又はガーネット系結晶構造が好ましい。
【0033】
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、さらには515nm以上であることが好ましく、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、さらには535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する可能性がある。
また、緑色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常10nm以上、通常130nm以下であり、用途に応じて適宜調整することが好ましい。この半値幅FWHMが狭過ぎると発光強度が低下する場合があり、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
また、緑色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、メジアン径D50は、通常1μm程度である。
緑色蛍光体の具体例を挙げると、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
【0034】
また、その他の緑色蛍光体としては、Sr4Al1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)624:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr227−Sr225:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、Y3Al512:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga24:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)512:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)22S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd227:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B26:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、M3Si694:Eu、M3Si6122:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0035】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種のみを使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(橙色ないし赤色蛍光体)
該橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58:Euで表わされるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Y,La,Gd,Lu)22S:Euで表わされるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
また、赤色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常1nm〜50nmの範囲である

また、赤色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のもの
であり、メジアン径D50は通常1μm程度である。
【0036】
更に、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y23:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW28:Eu、LiW28:Eu,Sm、Eu229、Eu229:Nb、Eu229:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Eu、LiY9(SiO462:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Tb,Gd)3Al512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Ba3MgSi28:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si28:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)23:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)22S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY24:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa24:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO46(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-x-yScxCey)2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0037】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)22S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)22S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)3・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu又は(La,Y)22S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。
なお、橙色ないし赤色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0038】
(青色蛍光体)
青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
また、青色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常20nm〜80nmの範囲である。
また、青色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、メジアン径D50は通常1μm程度である。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Euで表わされるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO43(Cl,F):Euで表わされるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)259Cl:Euで表わされるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行う(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Euで表わされるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0039】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr227:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl813:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa24:Ce、CaGa24:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO43(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si28:Eu、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr227:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO46・nB23:Eu、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si382SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSi9Al19ON31:Eu、EuSi9Al19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体、La1-xCexAl(Si6-zAlz)(N10-zOz)(ここで、x、及びyは、それぞれ0≦x≦1、0≦z≦6を満たす数である。)、La1-x-yCexCayAl(Si6-zAlz)(N10-zOz)(ここで、x、y、及びzは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦6を満たす数である。)等のCe付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0040】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)2SiO \f14:Euを含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Sr)3MgSi28:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO46(Cl,F)2:Eu又はBa3MgSi28:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu又は(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Euが特に好ましい。
なお、青色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
また、黄色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常60nm〜200nmの範囲である。
また、黄色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、メジアン径D50は通常1μm程度である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
【0041】
特に、RE3M512:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やMa3Mb2Mc312:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE2MdO4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mdは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSi(N,O)3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa24:Eu、(Ca,Sr)Ga24:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)24:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のsialon構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体、(M1-a-bEuaMnb)2(BO31-p(PO4)pX(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、F、Cl、及びBrからなる群より選ばれる1種以上の元素を表わす。a、b、及びpは、各々、0.001≦a≦0.3、0≦b≦0.3、0≦p≦0.2を満たす数を表わす。)等のEu付活又はEu,Mn共付活ハロゲン化ホウ酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0042】
さらには、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体やビススチリルビフェニル誘導体(紫外線励起400〜450nm蛍光発光)等を用いることもできる。
特に、ナノ蛍光体:Siナノ蛍光体、ZnSナノ蛍光体、YAG:Ceナノ蛍光体、LaPO4:Lnナノ蛍光体、色素ドープシリカナノ蛍光体、半導体ナノ粒子、CdSe−ZnS量子ドット等は、その粒径がホログラムレリーフのレリーフ周期よりはるかに小さいため、そのレリーフ面上へ均一に形成でき、かつ、形成厚さも制御しやすいため特に好適である。半導体薄膜の極微細加工により形成する場合は、高精度且つ、極薄膜で形成可能であり、発光光の波形や、強度を制御して、その干渉性を向上させることができる。
蛍光性半導体量子ドットにおいては、中心核(コア)は、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)でできており、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆っている構造をしている。この金属化合物の直径を変えることで、発する蛍光波長が変わる特徴を持つ。この量子ドットの周囲に生体高分子を配置したものは、生体高分子特有の反応基を有するため、この反応基を利用して蛍光体を特異的に配置させることが可能である。
紫外線発光蛍光体としては、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻る時に発する蛍光スペクトルのピークが、青、緑、赤等の波長域にあるものである。そして、このような紫外線発光蛍光体としては、例えばCa259 Cl:Eu2+,CaWO4 ,ZnO:Zn,Zn2 SiO4 :Mn、Y22 S:Eu,ZnS:Ag,YVO4 :Eu、Y23 :Eu,Gd22 S:Tb,La22S:Tb,Y3 Al512:Ce等があり、これらを単体として使用するか、またはこれらを数種、適当な割合で混合して使用する。
これらは、蛍光スペクトルのピークを、青、赤、緑の波長領域以外に有するものである。また、インキ中の紫外線蛍光発光体の重量率は、読み取りヘッドの受光素子による蛍光の検知が可能であればよい。
一方、赤外線発光蛍光体としては、波長λ1の励起光を受けて、波長λ2の可視光を発光する特性を有し、λ1=λ2かつλ1>λ2なる性質を有するものがある。そして、このような赤外線発光蛍光体としては、例えば組成が YF3 :Yb,Er,ZnS:CuCO等がある。
【0043】
具体的例として、BASF社製ルモゲンFVヴァイオレット570(ナフタルイミド:374nm→413nm)、ルモゲンFイエロー083(ペリレン:励起波長476nm→発光波長490nm:以下同じ。)、ルモゲンFオレンジ(ペリレン:525nm→539nm)、ルモゲンFレッド305(ペリレン:578nm→613nm)等、
デイグロ社製蛍光顔料:グロプリルT/GTシリーズ、ACTシリーズ、Z/ZQシリーズ、GPLシリーズ、LHYシリーズ、蛍光染料:ダイブライトD−818ロアノークイエロー、D−784アルパータイエロー、D−208アパツチイエロー、D−288チェロキーレツド、D−688コロラドレツド、D−298コロンビアブルー等、
シンロイヒ社製蛍光顔料:シンロイヒカラーFZ−2000シリーズ(FZ−2001RED等)、FZ-2800シリーズ(FZ−2808Blue等)、SX−100シリーズ(SX−104Orange等)、SX−1000シリーズ(SX−1004Orange、SX−1005Lemon Yellow、SX−1007Pink、SX−1037Magenta:平均粒径1.0μm以下)、SW−10シリーズ(SW−11Red Orange、SW−12NGreen、SW−13Red、SW−14NOrange、SW−15N Lemon Yellow、SW−16N Orange Yellow、SW−07Cerise、SW−17Pink、SW−27Rose、SW−37Rubine、SW−47Violet、SW−28Blue:平均粒径1.0μm以下)、SPシリーズ、SF−3000シリーズ(超微粒子タイプ)、SF−5000シリーズ(超微粒子タイプ)、SF−8000シリーズ(超微粒子タイプ)、ルミライトナノRY202(粒径30nm、365〜370nm→619nm)等、
【0044】
モリテッククス社製:蛍光粒子(グリーン:468nm→508nm)G25(粒径0.03μm)、G40(粒径0.04μm)、G50(粒径0.05μm)、G75(粒径0.07μm)、G85(粒径0.09μm)、G100(粒径0.10μm)、G140(粒径0.14μm)、G200(粒径0.20μm)、G250(粒径0.25μm)、G300(粒径0.30μm)、G400(粒径0.40μm)、G450(粒径0.45μm)、G500(粒径0.50μm)、
蛍光粒子(グリーン:360nm→530nm)34−1(平均粒径3.0μm)、
蛍光粒子(ブルー:365nm→447nm)B50(粒径0.05μm)、B100(粒径0.10μm)、B150(粒径0.14μm)、B200(粒径0.20μm)、B300(粒径0.30μm)、B400(粒径0.40μm)、B500(粒径0.50μm)、
蛍光粒子(レッド:542nm→612nm)B50(粒径0.05μm)、B60(粒径0.05μm)、B100(粒径0.10μm)、B160(粒径0.16μm)、B200(粒径0.20μm)、B300(粒径0.30μm)、B400(粒径0.40μm)、B500(粒径0.50μm)等、
【0045】
テールナビ社製 紫外線励起蛍光顔料UVP−1(発光波長421nm)、UVB−1(発光波長453nm)、UVG−2(発光波長517nm)、UVR−2(発光波長626nm)、可視光励起蛍光顔料LMS−570(450〜520nm→570nm)、LMS−560(450〜467nm→560nm)、LMS−550(450〜465nm→550nm)、LMS−540(450〜465nm→540nm)等、
イントロジェン社製Qdot525ナノクリスタル(350〜488nm→525nm)、Qdot565ナノクリスタル(350〜488nm→565nm)、Qdot585ナノクリスタル(350〜488nm→585nm)、Qdot605ナノクリスタル(350〜488nm→605nm)、Qdot625ナノクリスタル(350〜488nm→625nm)、Qdot655ナノクリスタル(350〜488nm→655nm)、Qdot705ナノクリスタル(350〜488nm→705nm)、Qdot800ナノクリスタル(350〜488nm→800nm)等、
エヴィデントテクノロジーズ社製エヴィドット:CdSe/ZnSコアシェルエヴィドット(平均粒径7.2〜9.6nmで発光波長490nm〜620nm)等、
日本カンタムデザイン社製量子ドット:カルボキシル基タイプ、アミノ基タイプ:直径3.0nm〜直径8.3nmで発光波長530nm〜620nm等を好適に用いることができる。
【0046】
次に、ホログラフィの原理について説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトレジスト等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
【0047】
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
【0048】
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
【0049】
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明の場合は、ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布に比例し、(8)の式で表されてはいるものの、このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてるのではなく、(8)の振幅透過率もしくは振幅反射率と同様の空間的な分布を持つ発光波がこのホログラムから発せられることになる。
従って、参照光にホログラムに記録された位相項を付与するという従来のホログラム再生の原理によらず、既にホログラムに記録されている位相項を保持して発光波を放射するものである。従って、理論上は、物体の位相差を含む空間関数を持つ3次元の連続曲面状の発光面を有し、その1曲面から光が放射されることになる。
従来のホログラム再生原理を透過タイプについて、単純化して説明すると、参照光としての平行光をホログラムにあてた際、遮蔽部分では、平行光が遮蔽され、透過部分からのみその平行光を透過し、透過部分と遮蔽部分との境界において回折が起こり、物体の持つ位相項を受け取り、ホログラムを透過した成分全体が重ね合わさり、それがホログラム再生光となって観察者の目に届くものである。
本発明の場合は、上記した参照光としての平行光が存在せず、ホログラムレリーフに接するように設けられた発光面での発光時、その放射光が物体の位相項を保持しており、その放射光同士の干渉現象により、ホログラム再生がなされるものである。
【0050】
時間的且つ空間的コヒーレンス性を持たない放射光同士の干渉効果は、レーザー光のような十分な干渉を生じないが、低コヒーレント光で ホログラムを照明した際と同様のレベルでホログラム再生が行われる。以上のような原理による再生であるため、ホログラム撮影時の参照光は平行光であることが好ましく(複雑な参照光を再現できないため。)、もしくは、「回折格子により表現されたホログラム」(回折格子は、物体光、参照光とも平行光である。)であることが好ましく、回折格子は計算機ホログラム等、電子線描画により形成したものが精密であり、好適である。
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが必要であり、例えば、発光体の発光面の厚さを薄いものとしたり、発光波長の幅を狭くすることが望ましい。さらに、励起光源も小さい形状であることが好ましく、スポット形状等が特に好適である。
また、発光体を励起する励起光と、発光波長との波長差は大きい方が望ましく、さらに、観察時、その励起光をフィルタリングして発光光のみを増幅することも有効である。
励起光源として、紫外線、可視光線、電子線、X線等のエネルギー及び場合に応じて、赤外線エネルギーを放射可能な光源を用いて、蛍光発光等をさせることができるが、ホログラム観察用さらには、ホログラム認証用に用いるためには、蛍光体に応じた光源を用いる必要があり、所定の強度、波長、さらには照明スポットのサイズを有する紫外線光源、可視光光源、場合により赤外光光源を用いる。
これらの光源による照明により、ホログラムレリーフ面に接するように設けられた蛍光層から、さらに言及すれば、その蛍光層に含まれる蛍光体から個々に、照明光源の波長とは異なる波長の蛍光等が発現する。その蛍光発光等が、ホログラムレリーフと同一の空間的位相を含み、且つ、照明光源とは異なる波長(蛍光波長。)を有することから、ホログラムレリーフによる正反射光(0次回折光)方向や、照明光波長(励起光波長)による回折方向とは異なる方向、すなわち、蛍光波長による回折方向へホログラム像の再生が行われる。
【0051】
但し、この蛍光層の厚さが、ホログラムレリーフとは無関係にそのホログラム面上に分布している場合には、その厚さ分布に起因する蛍光発光強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
この要因を排除するため、蛍光層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成して、ホログラムレリーフ面のどの位置からも、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図ることができる。
本発明の開封防止ラベルの照明光(励起光)として、可視光以外の紫外光や赤外光を使用した場合は、その光は観察者には見えず、あたかも照明光のないところからホログラム再生像が浮き上がっているように観察されるが、このホログラム再生像は、例え、照明光が、時間的・空間的なコヒーレント性を有していても、結果として、励起・蛍光というプロセスを経て発光するものであるため、その発光時の空間的なホログラムの位相を含んではいるとはいえ、その発光光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、ホログラム再生像は通常のレーザー再生レリーフホログラムの再生像より微弱であって且つ不鮮明となっている。
もちろん、ビーム形状の回折光を観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないが、このため、この微弱且つ不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、蛍光体の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、照明光回折角度と蛍光光回折角度の差を大きくし、さらには、蛍光層を薄くして、蛍光層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることが必要となる。(発光面が位相情報を含んでいるため、その空間的な形状を正確に再現するものとする。)
【0052】
さらには、時間的なコヒーレント性を発現するため、光源として10-15sec以下のパルスレーザーで励起して、パルスとパルスの時間的間隔を蛍光発光時間である10-7sec以上あけて照明することも好適である。これにより、一つの励起パルスによって生じた一つの蛍光発光の発光面が、次の励起パルスによって生じた蛍光発光面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの蛍光発光面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFするストロボ状の光源を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
蛍光層は、蛍光体を樹脂に混入させたり、溶剤(若しくは水)に分散させたりした蛍光体インキを、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、ノズルコート方式さらにはインクジェット方式等でホログラムレリーフ上に形成することができる。
このとき、蛍光インキ中の蛍光体の含有割合を調整する等により、形成した蛍光層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成することができる。
ホログラムレリーフの凹凸は例えれば、1μmレベルの周期で、深さ0.01μmレベルの凹凸を持つ、ゆるやかな曲線であって略平面と見做せるため、この略平面上に適宜な粘度(0.1〜10パスカル・秒)に調整し、インキの自重によるレベリング効果を発揮させることと、インキ中の固形分を20%以下、さらには10%以下とすることで、例えば、厚さ1μmに対して、そのばらつきを1/10以下に、さらには1/20以下に抑えることができる。
【0053】
ここで、蛍光層を1μmオーダーとしたが、ホログラム再生像の鮮明度を向上させるためには、蛍光層を薄くすることが好ましく、このためには、蛍光体のサイズを1.0μm程度もしくはそれ以下、例えば0.1μm〜0.5μm、さらには、0.5μm〜0.1μm、より好適には、3〜10nmとし、ホログラムレリーフ面内に均一に存在させ、且つ、蛍光層厚さ方向には、蛍光体1粒子を単位として1〜10粒子、もしくは1〜3粒子以内で並んでいる状態とすることが好ましい。
中でも、ノズルコート方式やインクジェット方式は樹脂を使用せず溶剤等と蛍光体のみで形成可能であり、蛍光層として非常に薄く形成(蛍光体1個分〜3個分等。)することができるため好適である。その上にそれらの蛍光体を固定するために樹脂を形成してもよい。
ホログラムレリーフは、周期1μm程度で、深さは、0.01μm、最大でも0.5μmの凹凸形状をしており、この凹部にのみ蛍光層を設けることで、ホログラムレリーフの周期に同調するかたちで、蛍光層の有無、すなわち、蛍光発光の有無を設けることもできる。
ホログラムレリーフの凹部とは、ホログラムレリーフ上に蛍光層を形成する際の凹部であって、通常の観察の仕方、すなわち、透明樹脂層側から観察する場合には、凸部側となる。蛍光層の有無を利用して発光強度分布を形成するためには、凹凸どちらかに部分的に形成すればよく、さらには、凹部全体を蛍光層で埋めてもよく、もしくは、凹部の最低部のほんの一部のみに形成してもよい。但し、その位相分布と形成する分布が同調する必要があるため、一部に形成する場合は、常に同一の位置に同一の蛍光体量を持って形成しなければならない。
凹部に選択的に蛍光層を形成する方法としては、溶剤等に分散した粒径の非常に小さい蛍光体(粒径が10nm等。樹脂を含まない。)インキを使用して、ホログラムレリーフの上に蛍光インキ層を形成し、溶剤が揮発する間に、蛍光体粒子が自重で凸部から凹部へと移動するようにしても良い。
【0054】
また、規則的な回折格子を設け、その上に均一に設けた蛍光層をフォトリソグラフィーを用いて、その規則的な回折格子に同調させて露光現像、エッチングすることにより、凹凸と蛍光層を同調して設けることもできる。この方法によると、各凹部に点在する蛍光層の厚さや大きさを制御可能であり、レリーフ面全体に、いわば”均一に”形成することができる。
以上の手法により形成したものは、上記のホログラムの原理において説明した、蛍光発光(放射光)にホログラムレリーフの位相情報を含ませること、に加え、その位相情報に同調した振幅情報をさらに含ませるものである。
従って、発光放射光に位相ホログラムと振幅ホログラムの両方のホログラム情報を含ませることができ、より鮮明なホログラムを得ることが可能となる。また、蛍光層が不連続的に形成されていることから、蛍光層の個々の部分は、開封防止ラベルを不正に剥がした際に非常に動きやすく、蛍光層は、非常に破断し易くなることから、その真正性の判定性を向上することができる。
上記したホログラムの原理より、ホログラム再生像の鮮明度を高めるためには、蛍光層の厚さは薄いことが望ましいが、薄くすればするほど、ホログラム再生時の蛍光発光強度が弱くなるため、蛍光層厚さは、0.003μm以上1.0μm以下である必要があり、さらには、0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
0.003μm未満(最小粒径の蛍光体1個分)では、蛍光発光強度が弱すぎて、光電子倍増管を用いて増幅したとしても、迷光等のノイズとの区別がつきにくく、1.0μmを超えると、発光強度は本発明の目的には十分な強度を得ることが可能であるが、厚さ方向に複数存在する蛍光体の発光により、ホログラムレリーフの位相情報を担う曲面の位置がその厚み方向に複数存在することになり、結果としてホログラム再生像が不鮮明となる。
これに対して、0.01μm以上(最小粒径の蛍光体3個分)として蛍光発光強度を確保し、0.5μm以下として、位相情報を担う曲面の位置を明確にして、ホログラム再生像を鮮明なものとする。
このような蛍光層は、開封防止ラベルを不正に剥がした際に非常に破断し易いことから、真正性の判定性をさらに向上することができる。
【0055】
この透明樹脂層上に、粘着層を設け、本発明の開封防止ラベルを形成することができる。
粘着層に用い得る透明な樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリビニリデン、メチルセルロース、フッ素樹脂、メラミン樹脂、もしくは、この混合体等を適宜用いることができ、更に必要に応じて可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる(粘着剤を意味する。)。
これらの粘着剤は、適宜、溶剤や、水に溶解させ、グラビア印刷等のコーティング方式や、シルク印刷、さらには、無溶剤のホットメルト方式等を用いて、上記のレリーフホログラムのホログラムレリーフ上に、乾燥後の形成厚さ、5μm〜50μmで、設けることができる。
5μm未満では、開封防止ラベルを貼着する被貼着体との接着力(接着強度、もしくは、剥離強度を意味する。)が不十分であり、また、50μmを超えると、開封防止ラベルの取扱い適性に欠けるものとなる。
上記した粘着層に用いる透明な樹脂は、透明樹脂層との接着性の強いものを適宜選択する。
そして、粘着層も、透明樹脂層と同様にして、すなわち、その形成を少なくとも2段階に分け、その1層目の最表面にホログラムレリーフの凹凸を形成し、その一部分に蛍光層を設けることで、その粘着層の中の、少なくともパターン状の表面活性化処理に対応する位置に、ホログラムレリーフ形状を有する蛍光層を設けることができる。
この場合には、本発明の開封防止ラベルを不正に剥離した場合には、粘着層の破断により上記した様な蛍光層の分断が生じ、透明樹脂層について説明したと同様の効果が粘着層に出現する。
【0056】
さらに、透明樹脂層と粘着層の両方に、このような蛍光層を設けることも、その偽造防止効果を高めるためには好適である。
粘着層は、透明樹脂層よりも圧力による変形を生じ易いため、粘着層に用いる透明な樹脂の最表面にホログラムレリーフの凹凸形状を設けることは、比較的容易である。

しかし、その性質に起因して、蛍光層を設けた後に、さらに透明な樹脂層を重ねる際に、既に形成した蛍光層のホログラムレリーフ形状を劣化させる現象が発生しやすいため、透明な樹脂層を重ねる方式を、形成圧力の小さい(印刷方式の「印圧」を意味する。)、スクリーン印刷方式や、カーテンコート方式、もしくは、インクジェット方式を用いることが好適である。
また、粘着層には、光散乱性を有するもの、例えば、高屈折率である透明無機顔料微粒子(二酸化チタン顔料:屈折率2.70、酸化鉄パール顔料:屈折率3.0など。)を比較的多く混入させることが可能であって(粘着層を通過する光は、「観察する側のホログラム再生像の結像」には寄与しないため。)、これにより、蛍光層を発光させた際の、観察側とは反対の方向に進む光を乱反射させて減衰させることができるとともに、粘着層の粘性を抑制して開封防止ラベルのブロッキングを防止でき、好適である。
もちろん、粘着層の中に蛍光層を設ける場合には、その蛍光層形成後に設ける透明な樹脂のみを光散乱性とする。
粘着層と、透明樹脂層との180度剥離強度(剥離強度測定は、JIS Z−0237に準じ、剥離速度500mm/分とする。)は、100g/25mm〜3kg/25mm、特に、300g/25mm以上とすることが望ましい。100mm/25mm未満では、開封防止ラベルを被貼着体に貼着した後、開封防止ラベルを不正に剥がそうとした際に、透明樹脂層と粘着層との界面においての剥離が起こり易くなり、透明樹脂層が破断し難くなる。
【0057】
また、不正防止という意味では、粘着層と、透明樹脂層との剥離強度は、大きいことが望ましいが、3kg/25mmを超える粘着剤は、そのラベル加工適性や、ラベル貼付適性に劣るものとなる。
この外観上は単なる「ラベル」としか視認できない開封防止ラベルを所望の被貼着体上の適宜な位置に貼付した後に、この「ラベル」を不正者が不正に剥そうとすると、透明基材が容易に剥がれ、透明基材側に、透明基材側残部が残り、被貼着体側に被貼着体側残部が残って、「開封」等の文字が現れ、この「ラベル」が「脆性ラベル」であったことが判明する。
この段階で、不正者は、被貼着体側残部を溶剤等で除去するとその溶剤等で被貼着体表面を劣化させると考え、その被貼着体側残部を残したまま、元の「ラベル」貼着状態を復元することを試みることとなる。
すなわち、偽の「ラベル」として、ホログラムレリーフや、蛍光層を有しない、通常の脆性ラベルを別途用意し、その偽の「ラベル」の粘着層で、その被貼着体側残部の窪みもしくは穴を埋めるように、その偽の「ラベル」をその被貼着体側残部上に貼着する。
【0058】
不正者は、この行為により、元の「ラベル」貼着状態を復元できたとして、被貼着体を元にあった場所に戻して、不正行為を隠ぺいし得たと確信するが、被貼着体の「真の所有者」が、この偽の「ラベル」上から、所定の波長の紫外線等の所定の照明光をあてると、被貼着体側残部に残っている蛍光層が発光し、その発光波長によるホログラム再生像を発現し、しかも、そのホログラム再生像が、「開封」等の文字状に「遮蔽」された状態で現れることから、何らかの「不正」が行われたことを、容易、且つ、確実に判定することができる。
もちろん、不正者が剥がした透明基材を使用して、新たな偽の「ラベル」を作り出したとしても、その「ラベル」を同様の照明光の下に置くと、今度は、「開封」等の文字部分にのみホログラム再生像が出現し、「不正」行為の存在を示すこととなる。
さらに、不正者がその剥がした透明基材を使用した偽の「ラベル」を用いて元の状態を復元しようとして、偶然にも、被貼着体側残部の窪みの位置と、透明基材側残部の位置が合致したとしても、そのホログラムレリーフの位置、すなわち、蛍光層の位置は空間的にずれており、従って、ホログラム再生像の結像位置もずれを生じて、やはり、「不正」の存在を示すこととなる。
また、不正者が、その剥がした透明基材を使用し、直接、被貼着体側残部の窪みの位置と、透明基材側残部の位置を合致するように貼り合わせることを試みたとしても、透明樹脂層や蛍光層の破断によるホログラムレリーフの劣化や、貼り合わせる際の空気の混入などにより、元の鮮明なホログラム再生像を得ることは、非常に困難であり、当然のごとく、ホログラムレリーフそのものの存在さえ知り得ないのであるから、その「埋め合わせ」がうまくできたか否かさえ、確認することは不可能である。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
その透明樹脂層の中、または、その粘着層の中の、少なくともそのパターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域にホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とする開封防止ラベルを提供することができ、この開封防止ラベルを、所望の被貼着体に貼着後、本来剥すことのないその開封防止ラベルを不正な目的のために剥そうとすると、その透明基材と透明樹脂層との界面で優先して剥離が発生し、その剥離した後には、不正行為であるというメッセージを表出し、さらに、所定の照明光によって照明すると、「開封等の文字状の欠け」を含んだホログラム再生像が浮き上がって、不正が行われたか否かの判定を容易とすることができる開封防止ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ジャブロンスキー図である。
【図2】本発明の一実施例を示す開封防止ラベルAの断面図である。
【図3】本発明の別の実施例を示す開封防止ラベルA´の断面図である。
【図4】本発明の一実施例を剥離するプロセスである。
【図5】本発明の一実施例を剥離後、判定するプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明の開封防止ラベルで使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、開封防止ラベルAを製造する際の処理や加工に適した耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図2及び図3参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
透明基材1の一方の面に、パターン状に表面活性化処理を施して、表面活性化処理した部分2を設け、さらには、表面活性化処理した部分2以外の部分を表面不活性化処理して、
表面活性化処理した部分2とそれ以外の部分における、透明基材1と透明樹脂層3との密着性の差、すなわち、剥離強度の差を大きくする。(図2及び図3参照。)
透明基材1の厚さは、通常5〜250μmであるが、「ラベル」としての取り扱い適正から25〜100μmとすることが望ましい。
また、透明基材1の一方の面に、透明な樹脂をコーティングして、この透明な樹脂に上記処理を行い、上記した効果を持たせても良い。(図示せず。)
この透明な樹脂には、上記した樹脂群に加え、下記する透明樹脂層3に用いられる樹脂を使用することができる。
【0062】
さらに、表面活性化処理した部分2とそれ以外、乃至は、表面不活性化処理した部分との剥離強度の差を拡大する目的で、透明基材1と透明樹脂層3との間、すなわち、透明樹脂層3上に保護層として形成され、透明基材1との剥離性を有する透明な樹脂を設けてもよい。(図示せず。)
この場合も、透明な樹脂としては、上記した樹脂群に加え、下記する透明樹脂層3に用いられる樹脂を、適宜、使用することができる。
もちろん、環境影響を配慮して、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートを使用することもでき、化学合成系として、ラクトン系樹脂:εーカプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5―トリメチルカプロラクトン、βープロピオラクトン、γーブチロラクトン、δーバレロラクトン、エナントラクトンの単独重合体またはこれら2種以上のモノマーの共重合体、これらの混合物、ポリカプロラクトン、もしくは、ポリブチレンサクシネート系樹脂:ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネートとポリカプロラクトンとの混合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンサクシネート・アジペートとの混合物、ポリブチレンサクシネート・アジペートとポリ乳酸との混合物、もしくは、ポリ乳酸、ポリ乳酸とD−乳酸との混合物など、もしくは、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールより合成したポリエステル樹脂、例えばコハク酸とブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせや、シュウ酸とネオペンチルグリコール、ブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせなど、変性ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステル樹脂と澱粉の混合物、低分子量脂肪族ポリエステルに脂肪族イソシアネートを添加して重合させたものが好適である。
また、天然物系として、ゼラチンなどの動物性天然物質、セルロースなどの植物性天然物質など:澱粉脂肪酸エステル、澱粉キトナン・セルロースなど、微生物生産系として、ポリヒドロキシブチレートや、ポリエステル系:炭素源として3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、γ―ブチロラクトンをベースとするP(3HB−CO―4HB)、炭素源としてプロピオン酸、吉草酸をベースとしたP(3HB−CO―3HV)などが好適である。
【0063】
(表面活性化処理)
透明基材1の一方の面に対する表面活性化処理には、炭酸ガスレーザー照射、遠赤外線炭酸ガスレーザー照射、172nm真空紫外線(VUV、エキシマ光)照射、酸素増感エキシマ光照射、プラズマ処理、オープンプラズマ処理、コロナ処理、電子線照射処理等の透明基材1最表面の化学結合エネルギーよりも大きいフォトンエネルギー(7.2eV)、放電エネルギー、電子線エネルギー等により、透明基材1最表面の化学結合を切断し、又は、172nmの真空紫外線等のように、大気中の酸素に吸収されてオゾンまたは直接励起酸素を発生し、この接触により官能基を生成する等の物理的処理や、
過マンガン酸塩、過酸化物等の酸化剤を塗布することによる透明基材1表面の酸化処理、プライマーコーティング処理、ビニル・エポキシ・メタクリキシ・アミノ・メルカプト・アクリロキシ・イソシアネート・スチリル・アルコキシオリゴマータイプシランカップリング剤を用いた処理等の化学的処理、真空処理であるアルゴンビームエッチング処理、透明基材1を部分的に溶解するエッチング液処理、さらには機械的に透明基材1表面を削り取るサンドブラスト加工等の物理的な租面形成処理等を用いることができる。(処理プロセスは図示せず。)(図2参照。)
この透明基材1の表面化活性化処理によって、透明基材1との接着性の弱い、すなわち、剥離強度の小さい樹脂に対しても、大きな剥離強度を得ることができる。
以上の表面活性化処理を用いて、透明基材1の界面張力もしくは表面エネルギーを増大させる。透明樹脂層3に用いる樹脂や、その形成方法によってその剥離強度は決まるため、界面張力値を一義的には指定できないが、その目安としては、60〜80mN/mが好適である。(ポリエチレンテレフタレート樹脂では、36mN/mが、60mN/mに増大し、透明樹脂層としてのメラミン樹脂との剥離強度が0.4kg/25mm幅から2.1kg/25mm幅へと大きくなる。)
【0064】
そのため、透明基材1の一方の面を表面活性化して、表面活性化処理した部分2における、透明基材1とその上に形成する透明樹脂層3との接着性を向上させ、0.5kg/25mm幅以上、3.0kg/25mm幅以下の強度(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて。)とし、その表面活性化処理した部分2を視認可能な所望のパターン状として残し、その他の領域については表面不活性化処理を行う。
この「パターン」は、文字、図形、記号等、視認可能な表示であればいずれも使用できるが、代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」等の文字表示をするため、「開」と「封」の2文字を縦、横に繰り返し展開したようなデザインを想定して、それらの文字の画線内に対応する透明基材1上の最表面部分を表面活性化処理して、表面活性化処理した部分2とする。
表面活性化処理の中でも、レーザー照射等の光処理、又はプラズマ処理等の物理的処理は、透明基材1の処理面に凹凸が発生せず、鏡面性を維持していること、及び、表面活性化処理による表面活性化効果が大きいことから、特に望ましく、また光学的透明性にも優れる。
さらに、上記した「パターン」内を均一に表面活性化処理することに替えて、その「パターン」内をより「微細なパターン」、例えば、網点状、市松模様状、ランダムパターン状等の微細な領域のみ表面活性化処理する(例えば、網点状に表面活性化処理することにより、「パターン」内の網点以外の部分は、表面活性化処理していない部分として残る。)ことで、透明基材1を剥離した際の透明樹脂層3や、蛍光層4を破断しようとする力の働き(力の作用方向、その大きさ等。)をより複雑化し、その「破断」性を向上させることができる。
【0065】
透明基材1の一方の面を全面表面活性化処理後に、上記した「パターン」を明暗反転した形状(「パターン」を「ポジパターン」として、それを反転した「ネガパターン」を意味する。)に「表面不活性化処理された部分」を形成するためには、もしくは、透明基材1上に、直接、所望の形状を有する「表面不活性化処理された部分」を形成するためには、
透明基材1の最表面のみを部分的に溶解する、もしくは、活性化した官能基と反応して官能基の活性を解消する、溶剤類、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、ジイソブチルケトン、等。)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール等、さらにはその水溶液。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソNo.100、ソルベッソNo.150、カクタスP−180等。)、環状炭化水素類(シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セルソルブ、エチルー3−エトキシプロピオネート等。)、エーテル類(テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ等。)等をパターン状に活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、表面活性化面への接触を避けてパターン形成し、透明基材1の活性化された最表面のみ(透明基材1を厚さ方向に捉えたもの。)と反応して、その部分のみを表面不活性化させる。(図示せず。)
このとき、溶剤が瞬時に揮発せず、所定時間、透明基材表面に留まる必要があるため、その沸点は、60度以上200度以下、好適には、100度以上160度に調整する。
この方法は、透明基材1の表面粗さに悪影響をほとんど与えず、その性質のみを変化させるという意味で特に好適である。
【0066】
または、透明基材1とはそもそも接着し難い、界面張力の小さい樹脂、例えば、シリコーン樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂や、これらのフッ化炭化水素基、有機珪素基を含む樹脂や、不揮発油(リンシードオイル、ポピーオイル、ウォルナッツオイル等の乾性油、オリーブオイルや落花生油等の不乾性油、ゴマ油、ナタネ油等の半乾性油)等を、活版印刷や、インクジェット印刷等により、上記した所望のパターン状に部分形成することで、高い精度でパターン状に表面不活性化処理する。(図示せず。)
この際、その部分形成後に透明基材1上に光学的な変化を与えないことが望ましく、溶剤等は揮発することで、また、樹脂等はあくまで表面改質の目的であって乾燥後の形成厚さが光の波長の1/50〜1/10程度となることが望ましい。もちろん、これらを併用することも好適である。
この表面不活性化処理により、その表面不活性化処理した部分は、透明基材1と透明樹脂層3との剥離強度を、0.01kg/25mm幅以上0.1kg/25mm幅以下とでき、開封防止ラベルを剥そうとすると、どのように工夫しても、必ず、透明基材1と透明樹脂層3間に空隙が発生し、その部分においては、透明基材1のみ剥がれる。
そして、透明基材1を完全に剥離すると、その表面不活性化処理した部分にあたる透明樹脂層3の最表面がほぼ鏡面となって、その部分からは、その下にあるホログラム再生像を鮮明に視認することができる。
さらに、上記した「パターン」内をより「微細なパターン」、すなわち、網点状、市松模様状、ランダムパターン状等の微細な領域のみ表面活性化処理することで、透明基材1を剥離した際の力の働き具合をより複雑化し、各層の「破断」性を向上することができる。
「微細なパターン」の個々の大きさは、最小の大きさとしては、高精度な印刷方式を用いて50μmの大きさで、且つ、10μm程度の間隔を開けて設けることもでき、最大では、その「パターン」を構成する線幅まで広げることもできる。このような「微細なパターン」の大きさの集合で、「パターン」を構成するには、もはや従来方式であるマスクを用いた直接表面活性化処理方式を用いることが難しくなることは明らかである。
好適には、50μm〜300μmの大きさの網点(網点率は、30%〜70%が好適。)や、市松模様状(正方形や、長方形、その他形状。)に一つ飛ばしに不活性化処理したもの、さらには、規則的な処理が不要な回折現象を発生させることを回避するため、網点やその正方形や長方形の大きさを50μm〜300μmの間で、ランダムに変化させたものを用いる。(図示せず。)
【0067】
(透明樹脂層)
本発明の透明樹脂層3を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。(図2及び図3参照。)
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
上記の樹脂材料を用いて透明樹脂層3を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、透明基材1上に、上記の透明な樹脂材料を、直接、射出成型方式や、押し出し成型方式を用いて所定の厚さで形成したり、または、適宜な溶剤に希釈して、グラビアコーティング方式や、スクリーン印刷方式や、カーテンコート方式等を用いて、均一な厚さに形成することができる。
そして、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層(透明樹脂層3の厚さの1/10〜9/10の厚さの層。)に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
【0068】
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
【0069】
レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記の樹脂材料の層上に、もしくは、下記する蛍光層4上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターン(一つのホログラム再生像を発現するホログラムレリーフを、一つのホログラムパターンという。)は、単独でも、複数でもよい。また、ホログラムレリーフを形成する領域の形も、単独領域としても、複数領域としてもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
高圧回転式の複製に用いるためには、このNi層の厚み精度を高くする必要があり、通常±10μm、好ましくは、±1μmとする。このため、裏面の研磨や、平坦化方法を用いてもよい。
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、好ましくは、5トン/m以上とする。複製用シリンダーは、その直径が小さいとレリーフの再現性が低下するため、複製シリンダー直径は大きい方が好ましく、通常、直径0.1m〜2.0m、好ましくは、1.0m以上の弧を使用する。
透明基材1上の樹脂材料の層をこの複製用シリンダーに沿って押し当て、裏面より金属製シリンダーにより上記圧力にて複製を実施する。複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小限とするためには、透明な基材1全体を加熱するのではなく、樹脂材料の層の最表面側の一部のみを加熱する方法が望ましい。通常60℃〜110℃に加熱する。さらには、裏面の金属製シリンダーを常温に保つ、もしくは冷却することで、さらにその精度を向上させることができる。
このようにして設けたホログラムレリーフ上の所定の領域に、蛍光層4を設けた後、その蛍光層4の上、及び、蛍光層4以外の領域においては、ホログラムレリーフに、直接、接するように、同一の組成からなる透明な樹脂材料を用いて、透明樹脂層3の残りの厚さ分の透明な樹脂材料の層を設け、併せて、透明樹脂層3とする(従って、当然に、重ねた2層の透明な樹脂材料の層の屈折率も精密に同一となる。)。
【0070】
(蛍光層)
本発明では、上記した透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層の上に形成したホログラムレリーフ面の、所定の位置、すなわち、少なくとも上記したパターン状の表面活性化処理に対応する位置を含む領域に、蛍光層4を形成する。(図2参照。)
この蛍光層4は、蛍光体を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型の蛍光インキや、水または溶剤に蛍光体を分散した溶媒分散型の蛍光インキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、透明樹脂層3に用いられる透明な樹脂材料の層上に、そのホログラムレリーフに接するように、また、追従するよう均一な厚さで、さらには、凹部に部分的に形成することができる。
また、透明樹脂層3に用いられる透明な樹脂材料の層上に蛍光層4を形成した後、フォトレジストを用いたフォトリソ法により、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去によりフォトレジストのパターンを回折格子パターンの凹部に同調させ、エッチングにより蛍光層4を除去して、凹部のみに蛍光層4を残すことができる。
逆に、透明樹脂層3に用いられる透明な樹脂材料の層上にフォトレジスト層を形成し、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去により、凸部にフォトレジストを残し、凹部を露出させて、この上に蛍光層4を形成後、凸部上のフォトレジストを除去すると同時に、その真上にある蛍光層4を部分的に除去することにより、凹部のみに蛍光層4を残すことができる。
樹脂分散型の蛍光インキは、上記した蛍光体を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。
【0071】
蛍光層4の厚さを、0.003μm以上1.0μm以下、さらには、0.01μm以上0.5μm以下とするためには、樹脂分散型インキの固形分を1〜10%とし、溶剤若しくは水を溶媒とした塗布膜が、例えば、10μmであったときに、溶媒を蒸発させた後の厚さ(蛍光層の厚さ)がその1/10乃至は1/100となるようにし、1μm〜0.1μmとする。
溶媒分散型の蛍光インキは、樹脂成分を含まず、蛍光体と溶媒のみであるため、樹脂分散型より蛍光層4の厚さを薄くすることができる。
溶媒としては、水やアルコール系溶剤、もしくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を用いて、粒子系の小さい蛍光体を分散保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコート等により透明樹脂層3に用いられる透明な樹脂材料の層上に設けることができる。
この場合には、溶媒の蒸発速度を調整することで、溶媒の揮発する間に、蛍光体が自重で凹部へと移動させることも可能となる。
さらには、ホログラムレリーフ面を形成している樹脂に対して、溶解性を有する遅い揮発性の溶剤を数μm塗布し(アクリル・塩ビ・酢ビ樹脂や、ポリエステル樹脂等に対するケトン系溶剤、例えばシクロヘキサノン等。この溶剤を非溶解性の溶剤で希釈して使用し、残留する成分を0.1μm以下にすることも可能である。)、そのホログラムレリーフ面の最表面のみを溶解して、その最表面に粘着性を付与し、その上に、蛍光体を粉体のまま吹きかけて、その粘着性の面に接する蛍光体粒子のみがホログラムレリーフ面上に残るようにする蛍光層4の形成方法も好適である。
この方法によると、蛍光層4がほぼ1粒子膜となり、ホログラムレリーフ面上に均一に形成され、透明樹脂層3に用いられる透明な樹脂材料の層側から励起光を当てた場合の蛍光発光面が、ホログラムレリーフ面と同一となる。
いずれにしても、ホログラムレリーフの凹凸が非常に小さい為、蛍光層4を均一厚さで、且つその中の蛍光体が均一な密度となるように、もしくは、ホログラムレリーフ面上に均一に(部分形成の場合には形成してある部分同士が均一に)形成するためには、蛍光体の粒径は小さい方が好ましく、ナノ蛍光体は特に好適である。
蛍光層4は、また、上記と同様の方法により、粘着層5の中に、設けることができる。(図3参照。)
この場合には、透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料に変えて、下記する粘着層5に用いられる透明な樹脂材料、すなわち、粘着剤を用いる。
【0072】
(粘着層)
上記した透明樹脂層3の上に、粘着層5を設ける。
その粘着層5としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれかの透明な樹脂材料、すなわち、粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良い。
粘着層5の塗工量は、10μm〜50μmが一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して粘着層5を形成する。(図2及び図3参照。)
また、粘着層5の粘着力は、透明樹脂層4と粘着層5との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、0.1〜1kg程度の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。
以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、「透明樹脂層3」上、または、「粘着層5に用いる透明な樹脂材料の層の上に形成された蛍光層4」上に粘着層5を形成する際に、その剥離強度が上記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
(実施例1)透明基材1として、38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その一方の面を、エキシマ社製エキシマUV03改質装置を用いて、波長172nmのエキシマ光を、タテ・ヨコ10mm×10mmサイズで「開」と「封」の文字を縦横連続して配置したデザインのそれらの文字の画線部内を(画線部の線幅は、1000μm。)、一文字毎にマスキングして、一様に照射して表面活性化処理し、「パターン」状に「表面活性化処理された部分2(パターン状の表面活性化処理領域)」を形成した。(図2参照。)
その上に、透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料としてメラミン樹脂を用い、透明樹脂層3の1/5の厚さである2.0μmの厚さの「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」を形成した後(透明基材1と、「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」との剥離強度:活性化処理面1.2kg/25mm幅、それ以外の部分300g/25mm幅に相当。)、レーザ光学系を用いて撮影した意匠性の高いレリーフホログラムを備えたNi原版を用意し、上記した「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」上に、そのNi原版のホログラムレリーフ面を合わせて、回転式レリーフホログラム形成装置(原版シリンダー径1.0m・原版面温度100℃、加圧シリンダー径0.3m水冷式、圧力2トン/m、複製速度10m/分)にてホログラムレリーフを「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」上に形成した。(図示せず。)
【0074】
この「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」上に、下記組成の樹脂分散型蛍光インキをステンレススクリーン方式により、上記した透明基材1上の「パターン」状に「表面活性化処理された部分2」に対応する位置を含む領域として、その『透明基材1上の「パターン」状に「表面活性化処理された部分2」』を含んで、その一回り大きい領域、すなわち、タテ・ヨコ12mm×12mmの領域の形状で、印刷し、乾燥して、蛍光層4を、2.0μmの厚さで、ホログラムレリーフに接するように形成した。(図2において、蛍光層4の上下二つの面は、図2に示すように、そのホログラムレリーフと同一の形状を成しているように描いているが、蛍光層4の粘着層5側の面は、図2に示すようなホログラムレリーフ形状とは、若干、異なる曲面を形成するものとなっている。この違いは、蛍光層4の形成厚さ、及び、形成方法に大きく依存する。)
・<蛍光インキ組成物>
テールナビ社製 紫外線励起蛍光顔料UVR−2 5質量部
アクリル樹脂 10質量部
メチルエチルケトン 40質量部
酢酸エチル 45質量部
この蛍光層4の上、及び、蛍光層4を設けていないホログラムレリーフ上に、上記したメラミン樹脂を用いて、透明樹脂層3の4/5の厚さである8.0μmの厚さの「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層2」を形成し、「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」と「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層2」を併せて、10.0μmの厚さの透明樹脂層3とした。(図2参照。)
この透明樹脂層3上に、下記組成の粘着層5用粘着剤組成物をグラビアコーティング方式により、コーティングし乾燥して、粘着層5を20μmの厚さで形成し、実施例1の開封防止ラベルAを作製した。(図2参照。)
【0075】
・<粘着層5用粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
イソホロンジイソシアネート 1質量部
トルエン 20質量部
酢酸エチル 30質量部
メチルイソブチルケトン 19質量部
この開封防止ラベルAを、封筒の封緘用に使用し、その封緘部分に貼着して、(2kg荷重のローラーにて圧着。)室内照明光の下で観察したところ、ホログラム再生像は観察されず(図示せず。)、さらに、この開封防止ラベルAを、その封筒から剥がそうとしたところ、透明基材1が容易に剥がれ、その透明基材1側に、透明基材側残部が「開」と「封」の文字状にタテ・ヨコに連続して付着していた。(剥がれた透明基材6。図4参照。図4では、模式的に、「開」と「封」の文字を一つずつ描いてある。)
また、その封筒側には、「開」と「封」の文字状にタテ・ヨコに連続した凹部が形成された被貼着体側残部が残っていた。(被貼着体上に残った被貼着体側残部7。図4参照。図4では、同様に、「開」と「封」の文字を一つずつ描いてある。)
この剥がれた透明基材9を、365nm波長の光源8(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて、照明したところ、この紫外線は目視では見えず、「開」と「封」の文字の画線部内(透明基材側残部の位置。)に、赤色のホログラム再生像を視認することができた。(図5参照。)
また、この封筒の上の被貼着体側残部11を、同様に、365nm波長の光源10(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて照明10したところ、被貼着体側残部11上においても、赤色のホログラム再生像を視認することができた。(図5参照。)
その後、この「ラベル」と同一サイズの別の一般的な透明粘着ラベルを用意し、この被貼着体側残部を覆うように貼着し、あたかも、元の状態と同様の外観を呈するように同様のローラーを用いてその「ラベル」を圧着した。
その圧着した「ラベル」の上から、上記の光源を用いて365nm波長の照明光で照明したところ、「開」と「封」の文字状の欠けを含む赤色のホログラム再生像が出現し(図示せず。)、不正が行われたことを明確に判定することができた。
このことから、開封防止ラベルAは、高い開封防止効果を有するものと思われた。
【0076】
(実施例2)透明基材1として、38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その一方の面を、ナビタス社製ポリダイン低周波コロナ処理システムによってコロナ処理方式にて全面表面活性化処理し、下記組成の表面不活性化処理用溶剤組成物をインクジェト方式にて、タテ・ヨコ10mm×10mmサイズで「開」「封」の文字を縦横連続して配置したデザインのネガポジ反転パターン状に、厚さ1μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の開封防止ラベルAを得た。(図2参照。表面不活性化処理していない部分が、結果として、表面活性化処理した部分2となる。)
〈表面不活性化処理用溶剤組成物〉
メチルエチルケトン(沸点80度) 40部
トルエン(沸点100度) 30部
メチルイソブチルケトン(沸点115度) 29部
リンシードオイル 1部
この開封防止ラベルAを、実施例1と同様に評価したところ、透明基材1が透明樹脂層3から、非常に容易に剥がれたこと以外は、実施例1と同様の効果が得られた。
(実施例3)実施例1と同様に形成した「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」上に、下記組成の樹脂分散型蛍光インキをグラビアコーティング方式により、塗布厚さ10μmでコーティングし、塗布後素早く乾燥して、蛍光層4を0.3μmの厚さで形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の開封防止ラベルAを作製した。(図2参照。)
この時の蛍光層4は、「透明樹脂層3に用いる透明な樹脂材料の層1」のホログラムレリーフに追従しており、且つ、均一な厚さを有していた。
・<蛍光インキ組成物>
ルミライトナノRY202(粒径30nm) 1質量部
ポリビニルアルコール樹脂 2質量部
エチルアルコール 27質量部
イソプロピルアルコール 20質量部
酢酸エチル 50質量部
この開封防止ラベルAを、実施例1と同様に観察したところ、より鮮明な赤色のホログラム再生像を確認することができ、赤色の再生像のみが空間に浮いているように見え、不正判定がより正確に実施できるものであったこと以外は、実施例1と同様の効果が得られた。
【0077】
(実施例4)実施例1において、蛍光層4を、透明樹脂層3の中には設けず、表面活性化処理した透明基材1上に、直接、10.0μmの厚さの透明樹脂層3を設け、その上に、粘着層5を設けた。
但し、この粘着層5を設ける際に、この透明樹脂層3上に、下記組成の粘着層5用粘着剤組成物をグラビアコーティング方式により、コーティングし、乾燥して、「粘着層5用透明な樹脂材料からなる層1」を、粘着層5の1/5の厚さである、4.0μmの厚さで形成し、その最表面に、実施例1と同様にしてホログラムレリーフを形成し(回転式レリーフホログラム形成装置の設定条件を、原版面温度60℃、圧力0.5トン/m、複製速度5m/分とした。)、このホログラムレリーフ上に、実施例1と同様にして、蛍光層4を形成し、さらにその上に、同一組成の粘着層5用粘着剤組成物を用いて、粘着層5の4/5の厚さである16.0μmの厚さの「粘着層5用透明な樹脂材料からなる層2」を形成し、「粘着層5用透明な樹脂材料からなる層1」と「粘着層5用透明な樹脂材料からなる層2」を併せて、20.0μmの厚さの粘着層5としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の開封防止ラベルA´を得た。(図3参照。)
・<粘着層5用粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
イソホロンジイソシアネート 1質量部
トルエン 20質量部
酢酸エチル 30質量部
メチルイソブチルケトン 19質量部
この開封防止ラベルA´を、実施例1と同様に観察したところ、実施例1と同様の良好な効果が得られた。
(実施例5)「微細なパターン」としての、基本形を、「50μm×100μmの長方形」とし、この基本形を「市松模様」状に、「開」と「封」の画線部内に展開し、一つ飛ばしに表面活性化処理を施して、上記した「開」と「封」の「パターン」を形成したこと、及び、この「微細なパターン」である「市松模様」のメッシュの上に、一回り大きい領域として、「60μm×120μmの長方形」の領域からなる蛍光層4を設けたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の開封防止ラベルAを得た。
実施例1と同様に評価したところ、実施例1と同様の効果が得られ、且つ、透明基材1の剥離後の、「開」と「封」の文字がより鮮明に視認できたこと以外は、実施例1と同様の効果が得られた。
【0078】
(比較例)
(比較例1)表面活性化処理、または、表面不活性化処理を行なわず、一様な透明樹脂層を透明基材上に設け、その透明樹脂層上に一様な蛍光層を設けたこと以外は、実施例1と同様にし、比較例1の透明な「ラベル」を得た。
この「ラベル」を実施例1と同様に評価したところ、透明基材1が容易には剥がれず、粘着層5から剥離し、また、紫外線を照射したところ、ラベル全体が一様に蛍光を発したのみに留まった。
従って、この「ラベル」を丁寧に剥がせば、不正に剥すことが可能であって、貼り替え等の悪用も容易であると思われた。
【符号の説明】
【0079】
A、A´ 開封防止ラベル
1 透明基材
2 透明基材の一方の面をパターン状に表面活性化処理した部分
(パターン状の表面活性化処理領域。透明基材と透明樹脂層の界 面において、この部分以外の部分は、パターン状の表面活性化処 理領域以外の領域であり、表面活性化処理を施されていない部分 、もしくは、表面不活性化処理された部分という。)
3 透明樹脂層
4 蛍光層
5 粘着層
6 開封防止ラベルAを剥がした際に、剥がれた透明基材(透明基材 側残部が付着している。)
7 開封防止ラベルAを剥がした際に、被貼着体上に残った被貼着体 側残部(透明基材側残部が取り除かれた状態。)
8 所定の照明光(紫外線を例示。)
9 所定の照明光を照射した際の、剥がれた透明基材(透明基材側残 部が付着している。)
10 所定の照明光(紫外線を例示。)
11 所定の照明光を照射した際の、被貼着体側残部(透明基材側残部 が取り除かれた状態。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
前記透明樹脂層の中の、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域にホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とする開封防止ラベル。
【請求項2】
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理領域を有し、その上に、透明樹脂層、及び、粘着層を設けた開封防止ラベルであって、
前記粘着層の中の、少なくとも前記パターン状の表面活性化処理領域に対応する位置を含む領域に、ホログラムレリーフ形状を有する蛍光層が設けられていることを特徴とする開封防止ラベル。
【請求項3】
前記蛍光層の厚さが、0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の開封防止ラベル。
【請求項4】
前記表面活性化処理は、光処理、又は物理的処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の開封防止ラベル。
【請求項5】
前記パターンが、微細なパターンの集合により構成されているものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の開封防止ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−242406(P2012−242406A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108920(P2011−108920)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】