説明

開閉体の制動装置

【課題】開閉体の開閉動作において開閉体が過大な力で操作されても、開閉体の脱落や、損傷を防止し、開閉体の動作を安定して行うことが可能な開閉体の制動装置を提供する。
【解決手段】開口部を開閉する開閉体の開閉動作により回転する回転軸の回転力が伝達される伝達機構と、伝達機構から伝達される回転力により回転するネジ軸と、ネジ軸と螺合する移動板と、ネジ軸の延長方向に沿って延長し、移動板と係合して当該移動板の回転を制止する係合片と、ネジ軸の回転に伴って当該ネジ軸の延長方向に沿って一方向に移動する移動板の移動を抑制する抑制手段とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置に関し、特に、開閉体を開閉するときに開閉体の移動に制動を作用させる制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部の開閉装置の一つにオーバーヘッドドアがある。オーバーヘッドドアは、開口部の左右の開口枠に沿って立設される一対の案内体に沿って開閉体を移動させて開口部を開閉する装置である。具体的には、案内体は開口部の高さ方向に延在する垂直案内部と、当該垂直案内部と連続し、開口部の奥行き方向に延在する水平案内部とからなり、開閉体が垂直案内部及び水平案内部間を移動することにより、開口部を閉鎖又は開放する構造である。また、当該開閉装置は、開閉体を所定の位置に停止させる手段として、水平案内部と並設されたレールと当該レール上を滑走する滑走体を備える。滑走体は、開閉体の開放動作と連動してレール上を一方向に滑走する部材であって、レール上に配設された複数の緩衝体によって受け止められることにより開閉体を減速させる構造である。
しかしながら、従来の開閉装置にあっては、開閉体を所定の位置に停止させる構成が、開閉体と連動して滑走する滑走体の勢いを緩衝体により直接的に弱めるものであるため、開閉体を操作する操作者が過大な力により開閉体を開放動作させると、滑走体の勢いが付き過ぎてその衝撃を緩衝体により吸収しきれず、開閉体を所定の停止位置で停止できないことや、滑走体がレール上から脱落し、開閉体が開閉不能になるといったおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、開閉体の開閉動作において開閉体が過大な力で操作されても、開閉体の脱落や損傷を防止し、開閉体の動作を安定して行うことが可能な開閉体の制動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための制動装置の構成として、開口部を開閉する開閉体の開閉動作により回転する回転軸の回転力が伝達される伝達機構と、伝達機構から伝達される回転力により回転するネジ軸と、ネジ軸と螺合する移動板と、ネジ軸の延長方向に沿って延長し、移動板と係合して当該移動板の回転を制止する係合片と、ネジ軸の回転に伴って当該ネジ軸の延長方向に沿って一方向に移動する移動板の移動を抑制する抑制手段とを備えた構成とした。
また、他の構成として、抑制手段をコイルばねとして、当該コイルばねを移動板よりも移動板における開閉体の開放動作に伴って移動する側に位置するものとした。
また、他の構成として、移動板を円板状とし、移動板の外周部に係合片と係合する複数の切欠き部を備えるものとした。
【発明の効果】
【0006】
前記第一の構成によれば、ネジ軸と螺合する移動板の回転が係合片によって制止されているため、移動板は、ネジ軸の回転に伴ってネジ軸の延長方向に沿って一方向に移動することとなるが、当該移動板の移動は、抑制手段によって抑制され、当該抑制力が移動板と螺合するネジ軸及び伝達機構を介して開閉体の開閉動作により回転する回転軸に伝達されるため、開閉体が過大な力によって開閉動作されても開口部の開閉を常に安定して行うことが可能となる。
前記第二の構成によれば、抑制手段をコイルばねとして、当該コイルばねの位置を開閉体の開放動作に伴って移動体が移動する側としたことによりコイルばねから生じる反発力によって開閉体を安定的に開閉動作させることが可能となる。また、ばね定数を可変することにより移動体に作用する反発力を容易に調整することが可能となる。
前記第三の構成によれば、移動板を円板状として移動板の外周部に係合片と係合する複数の切欠き部を設けたことにより、移動体と抑制手段との離間距離を調整する際に係合片と係合する切欠き部を複数の切欠き部の中から任意に選択することができ、開閉体の開閉動作により回転する回転軸への制動力の調整を容易に行うことができる。
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】開閉装置を示す概略斜視図である。
【図2】制動装置の内部を示す斜視図である。
【図3】制動装置の動作を示す模式図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、構造物の開口部2に開閉装置1及び制動装置14を適用した形態の一例を示す。
本実施形態に係る開閉装置1は、オーバーヘッドドアと呼ばれるタイプの装置であって、構造物の躯体3に矩形状に開設された開口部2に設置される。躯体3は例えば住宅やビル、倉庫、工場等の構造物の内外を仕切る外壁や、構造物の内部において内部空間を仕切る内壁等であり、開口部2は躯体3に開設され、内外を連通する空間として形成される。開閉装置1は、開口部2の収容空間側の左右壁面に沿って立設されるL字状の左右一対の案内体11と、案内体11に沿って移動する開閉体12と、開閉体12を上方に付勢して開閉体12の開放方向への移動を補助する補助手段13とを備える。制動装置14は、開閉装置1とは個別に躯体3上に設置され、案内体11に沿って移動する開閉体12の移動速度に制動を加える。
【0010】
案内体11は、断面コの字状に形成されるレールであって、開口部2の両側部に位置する垂直案内部11Aと、円弧状の案内部を介して連設され、収容空間の天井付近を奥行き方向に略水平に延長する水平案内部11Bとを有する。一対の案内体11間には、開閉体12が開放方向又は閉鎖方向に移動自在に設けられ、垂直案内部11Aと水平案内部11Bとの間を移動することにより開口部2を開放又は閉鎖する。
【0011】
開閉体12は、複数枚のパネル16により構成される。パネル16は、開口部2の幅方向に沿って長尺な板材であって、上下方向に取着された連結部材17により互いに回動可能に連結される。また、各パネル16は、長手方向両端部にガイドローラ18を備える。ガイドローラ18は、パネル16体の延長方向を軸として回転する回転体であって、案内体11の凹部内において回転自在に取り付けられる。複数のパネル16により一つの構造体として形成された開閉体12は、各パネル16に設けられたガイドローラ18により案内体11によって支持され、ガイドローラ18の回転により案内体11の延長方向に対応して移動可能である。
【0012】
上記構成からなる開閉体12を持ち上げて開口部2を開放する方向へ開放動作させると、開閉体12の最上部に位置するパネル16から一枚ずつ折れ曲がるように水平案内部11Bに順次移動する。そして、開放動作が継続することにより、全てのパネル16が水平案内部11Bの奥行き方向に移動し、開口部2が全開される。一方、開閉体12によって開口部2を閉鎖する際には、開閉体12を垂直案内部11Aに沿って引き下げる閉鎖動作を行う。開閉体12を閉鎖動作させると水平案内部11B上の複数のパネル16のうち、開口部2側に位置するパネル16から垂直案内部11Aに順次移動する。そして、閉鎖動作が継続することにより、全てのパネル16が垂直案内部11Aに移動し、最下部に位置するパネル16が開口部2の床面と当接することにより開口部2が全閉される。なお、本実施形態では、6枚のパネル16により開閉体12を構成するものとしたが、これに限定されるものではなく、開口部2の大きさに合わせて適宜変更可能である。
【0013】
開閉体12の開閉動作を補助する補助手段13は、開口部2の幅方向に亘って配設される回転軸31と、回転軸31の両端部に固着される巻取ドラム32と、巻取ドラム32によって巻き取られ、開閉体12を開放方向に牽引する牽引部材33と、牽引部材33を開閉体12の開放方向に付勢する一対の付勢部材34とを備える。回転軸31は、中空又は中実の軸体であって、一対の案内体11が離間する距離と略等しい長さを有し、開口部2の上縁よりも上方において開口部2の幅方向に延長して配設される。回転軸31は、躯体3に対して設けられた軸受けブラケット36により回転可能に支持される。
【0014】
巻取ドラム32は、牽引部材33の巻き取りや繰り出しを可能とするボビン状(筒状)の部材であって、当該巻取ドラム32の中心軸と回転軸31の中心軸とが同心となるように回転軸31の両端部に固定される。巻取ドラム32は、回転軸31とともに回転することにより、後述の牽引部材33を外周面上に巻き取ったり、外周面上から繰り出す部材である。より詳細には、巻取ドラム32は、開閉体12が開放動作する際に牽引部材33を巻取り、開閉体12が閉鎖動作する際に牽引部材33を繰出す。
【0015】
牽引部材33には、例えば金属製のワイヤーが適用される。牽引部材33は、一端が巻取ドラム32の外周面に止着され、他端が開閉体12の下端部に止着される。なお、牽引部材33は、巻取ドラム32に巻き取り可能な部材であればよく、例えば、金属製の鎖やチェーン、金属以外の材質の略紐状あるいは略帯状の部材等であっても良い。
【0016】
付勢部材34は、例えば、コイルばねが適用され、コイルばねの内径部を回転軸31が貫通するように外挿して配設される。コイルばねの一端部が回転軸31の外周面に止着され、他端部が躯体3に止着されることにより、コイルばねのねじれ力が回転軸31に作用し、回転軸31を牽引部材33の巻き取り方向に付勢する。つまり、補助手段13は、操作者による開閉体12の開放動作をアシストする機能を有するとともに、開閉体12を全開した状態において、水平案内部11B上に位置する開閉体12を水平案内部11B上で留置く機能を有する。なお、付勢部材34をゴム等の弾性体により構成することや、回転軸31を錘部材の重量により巻き取り方向へ付勢する機構、或いは回転軸31をモーター等の駆動源により巻き取り方向へ回転させる機構を採用してもよい。
【0017】
図2は、制動装置14の内部を示す斜視図である。
制動装置14は、例えば金属製の収容箱40内に収容され、開閉装置1の回転軸31の回転力が伝達されて回転するネジ軸41と、当該ネジ軸41と螺合し、ネジ軸41の回転により延長方向に沿って進退自在に移動する移動板42と、移動板42と係合し、移動板42がネジ軸41の回転に伴って回転することを制止する係合部材43と、移動板42の一方側に設けられ、移動板42の移動を抑制する抑制手段44とにより構成される。
【0018】
ネジ軸41は、収容箱40内に収容された状態において、両端部が収容箱40から突出する長さを有する棒状態であって、収容箱40の両側壁に支持される支持部46と、両支持部46の間に形成されたネジ部47とを有する。支持部46は、ネジ軸41の両端側の領域であり、収容箱40の側壁に配設される軸受けに嵌入されて回転可能に支持される。ネジ部47は、両支持部46の間の領域の外周面に形成され、谷の径が支持部46の外径となるように形成される。また、収容箱40から突出する支持部46の一端側には、ネジ軸41が収容箱40に対して軸方向に移動しないように位置決めする位置決め手段48が設けられる。位置決め手段48は、例えば、収容箱40の壁部から突出する支持部46の外周面に、円周方向に沿った円周溝を形成し、当該円周溝に止め輪を嵌着することにより構成される。
【0019】
支持部46の他端側には、スプロケット45が取り付けられる。スプロケット45は、支持部46の他端側に嵌挿され、ネジ軸41と同期して回転する回転体であって、開閉装置1の回転軸31に設けられたスプロケット35との間にチェーン49が掛け渡されることで、回転軸31の回転力をネジ軸41に伝達する伝達機構を構成する。なお、伝達機構をスプロケット35;45とチェーン49とにより構成したが、歯車によって回転力が伝達される歯車伝達機構によって構成しても良い。歯車を用いて回転軸31の回転力を伝達することにより、制動装置14を取り付ける位置の自由度を増すことができる。また、制動装置14の位置は、図示の位置に限定されるものではなく、開閉装置1の回転軸31の回転力が伝達可能な位置であれば、いかなる位置に設置してもよい。また、本実施形態に係る制動装置14は、既設の開閉装置に対しても適用可能である。つまり既設の開閉装置が有する回転軸の回転力を、上記伝達機構を介してネジ軸41に伝達することにより、既設の開閉装置が備える開閉体の開閉動作についても適切に制動を掛けることができる。
【0020】
図2に戻り、移動板42は平板の円板状に形成される板材であって、中央部にネジ軸41のネジ部47(おねじ)と螺合するネジ部47(めねじ)が開設される。また、移動板42の外周面には、当該移動板42の中心方向に窪む切欠き部51が形成される。切欠き部51は、後述の係合部材43と係合可能な矩形状に形成される。また、切欠き部51は、円周方向に均等に複数設けられる。切欠き部51を円周方向に沿って複数設けることにより、移動板42と後述の抑制手段44との初期位置を調整する際に、後述の係合片43Aと係合する任意の切欠き部51を選択でき制動力の調整を容易に行うことができる。
【0021】
係合部材43は、L字状に形成される板体であって、ネジ軸41の軸心の延長方向に沿って平行に延長する。係合部材43は、互いに直交して交わる係合片43Aと固定片43Bとからなり、固定片43Bが収容箱40の上壁に図外のネジ等により着脱自在に固定される。また、固定片43Bが収容箱40に取着された状態において、係合片43Aの下端部の一部は係合部材43の下方に位置する移動板42の切欠き部51と係合する。このように、移動板42の切欠き部51に対して固定的に設けられた係合部材43の係合片43Aが係合することにより、ネジ軸41の回転に伴って回転しようとする移動板42の回転が制止される。そして、回転が制止された移動板42は、ネジ軸41の回転に伴って係合片43Aと摺接しつつ、ネジ軸41の延長方向に沿って移動する。なお、係合部材43の形状はL字状に限定されるものではなく、I字状、円形状等、任意の形状とすることができる。
【0022】
抑制手段44は、前述の移動板42の移動方向における一方の側に配置される。本実施形態においては、開閉体12を開放動作させた際に移動板42が移動する側に抑制部材44を設け、抑制部材44を開閉体12の開放動作に伴って移動してくる移動板42と当接させることにより、移動方向と逆向きの力を付与して移動板42の移動を抑制する構成である。本実施形態における抑制手段44は、一対のコイルばね44A;44Bにより構成される。コイルばね44A;44Bは、例えば圧縮ばねであって、ネジ軸41を挟んで対称となるように配置され、伸縮する軸線の延長方向がネジ軸41の延長方向と平行となるように図外の固定手段により固定される。このように、コイルばね44A;44Bを、開閉体12を開放動作させた時に移動板43が移動する方向に設けたことにより、開閉体12の開放動作に伴ってネジ軸41が回転し、ネジ軸41の回転により移動板42がコイルばね44A;44Bに徐々に近接する。そして、ネジ軸41の回転が継続することにより移動板42は、やがてコイルばね44A;44Bの先端部と接触するとともに、コイルばね44A;44Bを圧縮する。コイルばね44A;44Bが圧縮されると、その反力が移動板42に作用し、当該反力が移動板42と螺合するネジ軸41及び伝達機構を介して回転軸31に伝達され、回転軸31の回転に制動力を作用させることが可能となる。なお、コイルばね44A;44Bは2つではなく、制動力を増すため等の目的で、例えば十字方向に4つのコイルばねを用いる等、その個数や位置は任意に設定できる。
また、本発明では、ネジ軸41を回転させて移動板42の移動を行うことによりコイルばね44A;44Bを圧縮させている。このため、ネジ軸41や移動板42を用いずに、単に圧縮ばねにより、スプロケット35;45の回転を制動する構成や、開閉体12を直接制動する構成と比較すると、緩衝体の圧縮戻りによって開閉体の全開時等における停止位置が実際に停止させたい位置よりも下がってしまうおそれが減少する。
【0023】
上述の実施形態においては、コイルばね44A;44Bを圧縮ばねとしたが、引張りばねを採用することにより回転軸31の回転に制動力を作用させることも可能である。コイルばね44A;44Bを引張りばねとする場合には、上述の実施形態におけるコイルばね44A;44Bとは反対側にコイルばね44A;44Bを配置する。即ち、開閉体12を閉鎖動作させた際に移動板42が移動する側にコイルばね44A;44Bを配置し、一端部を収容箱40の壁面に固定し、他端部を移動板42に固定する。
このように、コイルばね44A;44Bを引張りばねとした場合、開閉体12の開放動作に伴って移動板42がコイルばね44A;44Bから離れる方向に移動するとコイルばね44A;44Bには徐々に引張り力が生じ、当該引張り力が移動板42と螺合するネジ軸41及び伝達機構を介して回転軸31に伝達され、回転軸31の回転に制動力を作用させることが可能となる。
以上から明らかなとおり、抑制手段44の収容箱40内における位置や部材の種別は何ら限定されるものではなく、少なくとも開閉体12が開放動作されることに伴って移動する移動板42の移動を抑制し得るものであればよい。
【0024】
図3は、移動板42と抑制手段44との関係を示す模式図であり、(a)は、制動装置14が制動力を付与する前の状態を示し、(b)は、制動装置14が制動力を付与した後の状態を示す。
以下、同図を用いて上記制動装置14について詳述する。図3(a)に示すように、制動装置14の移動板42は、例えば初期状態においてコイルばねの44A;44B端面から距離L1離間して配置される。ここで、初期状態とは開閉体12が開口部2を全閉している時の位置である。また、距離L1は、例えば操作者が開口部2を開放するときに、開閉体12の上側4枚のパネル16が垂直案内部11Aから水平案内部11Bに移動したときの距離として設定される。つまり、距離L1に相当する区間は、回転軸31に制動力が付与されない回送区間である。一方、当該回送区間においては、付勢部材34によって回転軸31に対して巻取り方向への付勢力が作用しているため、操作者は開閉体12を容易に持ち上げることができる。なお、開閉体12が全閉した状態において付勢手段34の付勢力と、開閉体12の重量とは均衡しており、操作者による持ち上げ動作(操作力)がない限り開閉体12が開放動作することはない。4枚のパネル16が水平案内部11Bに移動すると、回送区間を経た移動板42は抑制手段44の先端部と接触し、さらに、残りのパネル16が垂直案内部11Aから水平案内部11Bに移動するとコイルばね44A;44Bを徐々に圧縮する。
【0025】
図3(b)に示すように、移動板42によるコイルばね44A;44Bの圧縮が進行すると、移動板42はコイルばね44A;44Bの反力により押圧された状態となり移動が抑制される。また、移動板42に作用する反力は、移動板42と螺合するネジ軸41に伝達され、ネジ軸41の回転に制動力を付与する。そして、ネジ軸41に付与された制動力は、伝達機構を介して回転軸31に伝達され、結果として回転軸31を制動することになる。つまり、図3(b)において、移動板42がコイルばね44A;44Bと接触してから、開閉体12のすべてが水平案内部11Bに位置するまでの距離L2が、開閉体12に対する制動区間となる。
【0026】
以上、図3の模式図からも明らかなとおり、本願発明によれば開閉体12が開放動作された場合において、ネジ軸41上の回送区間を経た移動板42には、抑制手段44による反力が徐々に付与される。そして、制動区間内を移動する移動板42は、抑制手段44から受ける反力と操作者により付与される操作力及び付勢部材34から付与される付勢力とが釣り合ったときに移動速度がゼロになる。つまり、開閉体12の開放動作が進行し、移動板42が抑制手段44を構成するコイルばね44A;44Bを圧縮すればする程、その反力は次第に高まるため、開閉体12の移動速度を徐々に低下させながら最終的に開口部2を全開状態とすることが可能である。よって、開閉体12を開放動作させる際に、操作者により過大な操作力が付与された場合であっても、開閉体12が全開状態となる以前に移動速度が適切に減速されるため、開閉体12を常に安定した状態で開放することが可能となる。より詳細には、開閉体12が水平案内部11Bの終端部と接触することにより水平案内部11Bから脱落することや、接触の衝撃により牽引部材33が巻取ドラム32から外れるような事態を防止できる。
【0027】
また、本願発明によれば開閉体12が閉鎖動作された場合において、ネジ軸47上の制動区間内に位置する移動板42は、抑制手段44から受ける反力から徐々に開放されながら回送区間方向に移動する。つまり、開閉体12の閉鎖動作の初期段階においては制動装置14による制動力が適切に付与されることとなる。そして、回送区間内に到達した移動板42は、抑制手段44から受ける反力から完全に開放され、開閉体12に加わる力は操作者による閉鎖方向の操作力と、当該操作力に抗する付勢部材34の付勢力のみとなり、操作者が付勢力に抗して閉鎖方向への操作力を継続して付与することにより、開口部2を開閉体12により全閉することが可能となる。
このように、本願発明にあっては、開閉体12の閉鎖動作の初期段階においても制動装置14による制動力が付与されることから、操作者による過大な操作力が加わり易い閉鎖動作直後の開閉体12の挙動を常に安定させることができる。より詳細には、例えば過大な操作力により水平案内部11Bに位置する開閉体12に勢いが付き過ぎ、垂直案内部11Aと連続する湾曲部内でガイドローラ18が脱落することや、過大な速度により垂直案内部11A内を移動し、最下方のパネル16が床面と接触することにより破損するような事態を防止できる。
【0028】
制動装置14の他の形態として、制動板42と抑制手段44との間に回送区間を設けずに、初期状態から制動板42に抑制手段44が接触するようにしても良い。具体的には、開閉体12が開口部2を全閉にしている状態において、移動板42を抑制手段44に予め接触させておくことで、開閉体12が全閉状態から全開状態になるまで抑制手段44により開閉体12の動作に制動力を作用させてもよい。また、前述のとおり制動装置14を構成する移動板42には円周方向に沿って複数の切欠き部51が形成されていることから初期状態における移動板42と抑制手段44との距離、即ち、制動が掛かるタイミングを微細に調整することが可能である。
【0029】
さらに、開閉装置1は、上記実施形態に係るオーバーヘッドドアには限定されず、巻取りシャフト及び巻取りシャフトに嵌挿されたホイールにより、複数のスラットやパイプにより構成された開閉体を巻き取るシャッター装置であってもよい。また、これらの装置の設置場所は住宅やビル等の構造物に限られるものではなく、トラックや飛行機等の動産の収容部等にも適用することができる。また、これらの装置は手動で駆動するものに限られず、モーター等の駆動源を用いて自動で駆動する装置であってもよい。
【0030】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0031】
1 開閉装置、2 開口部、11 案内体、12 開閉体、13 補助手段、
14 制動装置、16 パネル、17 連結部材、18 ガイドローラ、
31 回転軸、33 牽引部材、34 付勢部材、35 スプロケット、
41 ネジ軸、42 移動板、43 係合部材、44 抑制手段、46 支持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉する開閉体の開閉動作により回転する回転軸の回転力が伝達される伝達機構と、
前記伝達機構から伝達される回転力により回転するネジ軸と、
前記ネジ軸と螺合する移動板と、
前記ネジ軸の延長方向に沿って延長し、前記移動板と係合して当該移動板の回転を制止する係合片と、
前記ネジ軸の回転に伴って当該ネジ軸の延長方向に沿って一方向に移動する移動板の移動を抑制する抑制手段とを備えた開閉体の制動装置。
【請求項2】
前記抑制手段がコイルばねであって、
当該コイルばねが、前記移動板よりも前記移動板における前記開閉体の開放動作に伴って移動する側に位置する請求項1記載の開閉体の制動装置。
【請求項3】
前記移動板が円板状であって、
当該移動板の外周部に前記係合片と係合する複数の切欠き部を備える請求項1又は請求項2記載の開閉体の制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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