説明

開閉器

【課題】 開極動作時に、電流の大小に関わらず、アークを引き伸ばす安定した電磁力を得ることで、遮断性能が向上した開閉器を提供する。
【解決手段】 可動通電接点部11と可動アーク接点部12とを有する可動接触子7と、固定接点部9を有する固定接触子6と、可動接触子7を時計方向または反時計方向に回転させて、可動通電接点部11を固定接点部9と接離させる駆動装置8とを備えた開閉器1であって、可動通電接点部11と可動アーク接点部12との間には、第1の絶縁物13が配置され、可動通電接点部11と可動アーク接点部12とは、アークから第2の絶縁物17によって保護されたコイル16によって、電気的に接続され、コイル16が発生する磁場により、上記アークが可動通電接点部11に対して可動アーク接点部12の側へ電磁力を受けるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統の電路を開閉する、例えば、断路器および遮断器などの開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SFガスや乾燥空気といった、絶縁性ガス中において電流を遮断する断路器もしくは遮断器では、可動接点を直線運動して開閉する直線駆動構造のものと、可動接点が回転運動して開閉する回転駆動構造のものとがある。
【0003】
従来の直線駆動構造のガス遮断器では、投入状態から可動接触子が固定接触子から開離すると、上記可動接触子の接点部と上記固定接触の接点部との間にアークが発生し、上記可動接触子の移動に伴い、アークの1次電流と、上記可動接触子に設けた短絡環に上記1次電流によって誘起される2次電流との間で発生する反発力により、アークの足が上記固定接触子の接点部からアークランナに移行する(アークが転流する)。このアークの足の移行により、アーク電流が駆動コイルに導かれ、この駆動コイルが発生する磁界によってアークに電磁力が作用し、アークが上記アークランナの中空部の周縁を高速回転することで冷却され、遮断される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような直線駆動構造では、上述のような遮断性能を向上させるための駆動コイルまたは磁石等の部品を配置し易く、またパッファ方式の開閉器にも適用が容易である。
【0005】
従来の回転駆動構造の開閉器では、可動接触子の可動接点の近傍から延在するアークホーンを有し、このアークホーンの上記可動接点と反対側の部分に溝を設けている。このように構成することで、上記可動接点と固定接点との間で発生して上記アークホーンへと移動したアークを、上記アークホーンを流れる電流に起因してアークに働く電磁力により、上記アークホーンの先端部まで素早く駆動することができる。(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このような回転駆動構造では、直線駆動構造と比較して、例えば、高電圧領域ではシールド等が不要で部品点数が少なくできる。然しながら、可動接触子が回転運動して上記可動接触子の先端側に設けた可動接点と固定接点との接点間距離を広げる構造であるので、上記可動接触子の回転角度を大きくしても、上記可動接触子の回転中心側と固定接点およびこれを固着した固定接触子との距離は広がり難い。そのため、アークに伴う高温の導電性ガスが上記回転中心側へと流入すると、遮断性能および遮断直後の耐電圧性能が低下する。十分な遮断性能および遮断直後の耐電圧性能を得るためには、上述の従来の回転駆動構造の開閉器のように、遮断時にアークを可動接触子の先端側へと駆動して引き伸ばすことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−50211号公報
【特許文献2】特開平7−282710号公報(実施例29、第44図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の直線駆動構造のガス遮断器では、アークが転流した後は、駆動コイルが発生する十分な磁場によりアークを高速回転させて冷却できる。然しながら、アークの転流を、アークの1次電流とこの1次電流によって短絡環に誘起する2次電流との間で発生する反発力を利用しておこなうため、特に、遮断時の電流、つまり上記1次電流が小さい場合、転流に十分な反発力を得ることができないという問題があった。
【0009】
また、従来の回転駆動構造の開閉器では、可動接触子から延在するアークホーンの先端部に溝を設けた1ターン以下のコイルに相当する構造なので、遮断時の電流が小さい場合、アークを可動接触子の先端側へと駆動して引き伸ばすために必要な電磁力が十分得られず、遮断性能が制限されるという問題があった。
【0010】
この発明は、このような問題を解決するもので、遮断時の電流の大小に関わらず、アークを適切な方向へ引き伸ばすために必要な磁界を得ることで、遮断性能が向上した開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る開閉器においては、可動通電接点部と可動アーク接点部とを有する可動接触子と、固定接点部を有する固定接触子と、上記可動接触子を時計方向または反時計方向に回転させて、上記可動通電接点部を上記固定接点部と接離させる駆動装置とを備えた開閉器であって、上記可動通電接点部と上記可動アーク接点部との間には、第1の絶縁物が配置され、上記可動通電接点部と上記可動アーク接点部とは、上記可動接触子と上記固定接触子との間で発生するアークから第2の絶縁物によって保護されたコイルによって、電気的に接続され、上記コイルが発生する磁場により、上記アークが上記可動通電接点部に対して上記可動アーク接点部の側へ電磁力を受けるように構成したものである。
【0012】
この発明に係る別の開閉器においては、可動接点部を有する可動接触子と、固定通電接点部と固定アーク接点部とを有する固定接触子と、上記可動接触子を時計方向または反時計方向に回転させて、上記可動接点部を上記固定通電接点部と接離させる駆動装置とを備えた開閉器であって、上記固定通電接点部と上記固定アーク接点部との間には、第1の絶縁物が配置され、上記固定通電接点部と上記固定アーク接点部とは、上記可動接触子と上記固定接触子との間で発生するアークから第2の絶縁物によって保護されたコイルによって、電気的に接続され、上記コイルが発生する磁場により、上記アークが上記固定通電接点部に対して上記固定アーク接点部の側へ電磁力を受けるように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、遮断時の電流の大小に関わらず、アークを適切な方向へ引き伸ばすために必要な磁界を得ることで、遮断性能が向上した開閉器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る開閉器を示す部分断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る開閉器の要部を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る開閉器の開閉装置部の遮断動作を説明するための説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る開閉器の要部を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る開閉器の開閉装置部の遮断動作を説明するための説明図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る開閉器の要部の構成および遮断動作を説明するための説明図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係る開閉器の要部の構成および遮断動作を説明するための説明図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係る開閉器の要部の構成および遮断動作を説明するための説明図である。
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による開閉器を図1〜3に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態1による開閉器1を示す図であり、内部構造が分かるように、金属タンクなどで構成される容器2の断面をとっている。容器2の内部には、絶縁媒体となる絶縁性ガス、例えば、SF、窒素、空気などが封入されており、開閉装置部3を挟んで、図1中上方の固定接触子側母線4および同下方の可動接触子側母線5が設けられている。開閉装置部3は、固定接触子側母線4に接続された固定接触子6と、可動接触子側母線5に接続された可動接触子7と、この可動接触子7を回転駆動させる駆動装置8にて構成される。
【0016】
図2は、開閉装置部3の要部の構成を示す図であり、図2(a)が閉極状態の正面図、図2(b)が閉極状態の右側面図である。また、図2(a)は、図2(b)のB1―B1での断面を示している。固定接触子6は、駆動装置8の操作力で時計方向または反時計方向に回転運動する可動接触子7と接離する固定接点部9を有している。可動接触子7の全体形状は、2枚の棒状板がその両端でそれぞれ接続された形状となっている。上記2枚の棒状板に挟まれた隙間の一部に固定接点部位9が挿入されることで、固定接触子6と可動接触子7との電気的な接触がなされる。可動接触子7は、回転軸10と、可動通電接点部11と、可動アーク接点部12と、これら可動通電接点部11と可動アーク接点部12との間に配置された第1の絶縁物13と、可動通電接点部11から上記隙間の一方の内壁を可動アーク接点部12の側へ延びる第1の導体14と、可動アーク接点部12から上記隙間の他方の内壁を可動通電接点部11の側へ延びる第2の導体15と、これら第1の導体14と第2の導体15とによって可動通電接点部11と可動アーク接点部12との間に電気的に接続される1ターン以上のコイル16と、このコイル16を可動接触子7と固定接触子6との間で発生するアークから保護する円筒状の第2の絶縁物17とによって構成される。
【0017】
図2に示す閉極状態では、固定接点部9と、可動通電接点部11および可動アーク接点部12とがそれぞれ電気的に接触した状態となっている。この状態では、固定接触子側母線4から可動接触子側母線5へと流れる通電電流は、固定接点部9から可動通電接点部11へ直接流れ込む主電流と、固定接点部9から可動アーク接点部12、第2の導体15、コイル16および第1の導体14を経て可動通電接点部11へ流れ込む分岐電流に分流して流れるが、コイル16などのインピーダンスにより分岐電流は非常に小さな値となる。
【0018】
コイル16は、遮断時に発生するアークが、可動接触子7の先端側(固定通電接点部11に対して固定アーク接点部12の側)へと電磁力を受けるように磁場を発生するもので、図2に示す構成では、コイル16の巻線は反時計方向に巻かれている。また、コイル16の巻線のターン数は、遮断電流が小さい場合に対しても、アークが可動接触子7の先端側(固定通電接点部11に対して固定アーク接点部12の側)へと引き伸ばすことができる電磁力を発生させるターン数を有している。
【0019】
また、図2(a)に示すように、固定接触子6の固定接点部9は、可動通電接点部11と接触する部分より、可動アーク接点部12と接触する別の部分が、より可動接触子7の側(同図中右側)へ突き出した形状となっており、開極および遮断動作において、固定接点部9と可動通電接点部11との開極に遅れて、固定接点部9と可動アーク接点部12とが開極する構成となっている。
【0020】
なお、第1の絶縁物13および第2の絶縁物17は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、アクリル酸エステル共重合体、脂肪族炭化水素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、イソプレン樹脂、エチレンプロピレンゴム、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリアミド樹脂などの消弧性のガスを発生する材料で形成することが好ましい。
【0021】
続いて、遮断動作について説明する。閉極状態の開閉器1に開極指令が与えられると、駆動装置8により可動接触子7が回動を開始する。このとき、固定接点部9と可動通電接点部11との開極に遅れて開極する固定接点部9と可動アーク接点部12との間にアークが発生する。図3は、このアーク発生後の遮断動作において、アークAが電磁力Fで引き伸ばされている状態を示している。アークAは、アークAを流れる電流Iと差交する磁場Bとにより発生する電磁力Fを受けて可動接触子7が延伸する側(先端側)へと引き伸ばされる。磁場Bは、コイル16の巻き方向とターン数とを所定に設計することで、遮断時の電流が大きい場合は勿論、小さい場合においても、アークAを引き伸ばすのに十分な値とすることが可能となる。
【0022】
引き伸ばされたアークAは、電流零点を迎えて消弧される。このような遮断動作において、アークAに暴露される第1の絶縁物14および第2の絶縁物17から消弧性ガスが発生する。この消弧性ガスにより、アークAを冷却することができるので、素早くアークAを消弧できるのみならず、固定接触子6と可動接触子7との間の空間の絶縁回復を促進し、遮断性能を一層高めることができる。
【0023】
このような遮断動作において、固定接点部9と可動アーク接点部12との間でアークが発生している期間は、遮断電流が、第1の導体14、コイル16および第2の導体15を介して流れるので、可動通電接点部11と可動アーク接点部12との間で電位差が発生する。そこで、第1の絶縁物13は、この電位差で閃絡しない絶縁距離を確保した寸法としている。
【0024】
以上より、可動通電接点部11と可動アーク接点部12とを有する可動接触子7と、固定接点部9を有する固定接触子6と、可動接触子7を時計方向または反時計方向に回転させて、可動通電接点部11を固定接点部9と接離させる駆動装置8とを備えた開閉器において、可動通電接点部11と可動アーク接点部12との間に、第1の絶縁物13を配置し、可動通電接点部11と可動アーク接点部12とを、可動接触子7と固定接触子6との間で発生するアークから第2の絶縁物17によって保護されたコイル16によって、電気的に接続し、コイル16が発生する磁場により、アークが可動通電接点部11に対して上記可動アーク接点部12の側へ電磁力を受けるように構成したので、遮断時に、コイル16に遮断電流が流れ、上記アークを引き伸ばす十分な磁場を発生させることができる。これにより、遮断電流の小さい領域においても安定してアークを引き伸ばすことができ、より高い遮断性能を得ることができる。
【0025】
また、遮断時にアークが発弧する部分(可動アーク接点部12、およびこれと接離する固定接点部9の一部)と、閉極状態で電流を通電する部分(可動通電接点部11、およびこれと接離する固定接点部9の別の一部)とを分離することができるので、遮断時にアークを転流させる必要がなく、確実にアークを引き伸ばすのに十分な磁場が得られる空間にアークを発生させることができる。これにより、遮断時の電流の小さい場合においても安定した遮断性能を確保できる。
【0026】
つまり、この実施形態では、遮断時の電流の大小に関わらず、アークを適切な方向へ引き伸ばすために必要な磁界を得ることで、遮断性能が向上した開閉器を提供することができる。
【0027】
なお、この実施の形態では、閉極状態において、固定接点部9と可動通電接点部11および可動アーク接点部12とがそれぞれ電気的に接触する例を示したが、閉極状態では、固定接点部9と可動通電接点部11とが電気的に接触していれば、固定接点部9と可動アーク接点部12とが接触していなくてもよい。要は、遮断動作において、固定接点部9と可動通電接点部11とが開極した後に、固定接点部9と可動アーク接点部12との間でアークが発生するように構成すればよい。
【0028】
また、この実施の形態では、コイル16と可動通電接点部11および可動アーク接点部12との電気的接続に、別途設けた第1の導体14および第2の導体15を用いたが、第1の導体14と可動通電接点部11とを、または第2の導体15と可動アーク接点部12とを一体化して構成してもよい。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1では、可動接触子7にコイル16を設けたが、この実施の形態2では、固定接触子6にコイル16を設けている。
【0030】
図4は、この発明の実施の形態2による開閉器1の開閉装置部3の要部の構成を示す図であり、図4(a)が閉極状態の左側面図、図4(b)が閉極状態の正面図である。また、図4(b)は、図4(a)のB2―B2での断面を示している。固定接触子6は、駆動装置8(図示せず)の操作力で時計方向または反時計方向に回転運動する可動接触子7の可動接点部20とそれぞれ接離する固定通電接点部18および固定アーク接点部19を有している。可動接触子7は、主に1枚の棒状板により構成され、一端に回転軸10が設けられている。固定接触子6は、先端部で可動接点部20の一部を挟み込むようにして可動接触子7と電気的に接触する略U字状の固定通電接点部18と、上記可動接点部20の一部より可動接触子7の先端側の可動接点部20の別の一部を挟み込むようにして可動接触子7と電気的に接触する略U字状の固定アーク接点部11と、これら固定通電接点部18と固定アーク接点部19との間にそれぞれ配置された一対の第1の絶縁物13と、固定通電接点部18から一方の第1の絶縁物13の面に沿って固定アーク接点部19の側へと延びる第1の導体14と、固定アーク接点部19から他方の第1の絶縁物13の面に沿って固定通電接点部18の側へと延びる第2の導体15と、これら第1の導体14と第2の導体15とによって固定通電接点部18と固定アーク接点部19との間に電気的に接続される1ターン以上のコイル16と、このコイル16を可動接触子7と固定接触子6との間で発生するアークから保護する円筒状の第2の絶縁物17とによって構成される。
【0031】
固定接触子6と固定接触子側母線4(図示せず)との電気的な接続は、固定通電接点部19において行われており、固定アーク接点部20は、固定接触子側母線4とは直接的に接続されず、第2の導体15、コイル16、第1の導体14および固定通電接点部19を介して電気的に接続される。従って、図4に示す閉極状態では、固定接触子側母線4から可動接触子側母線5へと流れる通電電流は、固定通電接点部18から可動接点部20へ直接流れ込む主電流と、固定通電接点部19、第1の導体14、コイル16、第2の導体15および固定アーク接点部19を経て可動接点部20へ流れ込む分岐電流に分流して流れるが、コイル16などのインピーダンスにより分岐電流は非常に小さな値となる。
【0032】
コイル16は、遮断時に発生するアークが、固定通電接点部11に対して固定アーク接点部12の側へと電磁力を受けるように磁場を発生するもので、図4に示す構成では、コイル16の巻線は反時計方向に巻かれている。また、コイル16の巻線のターン数は、遮断電流が小さい場合に対しても、アークが固定アーク接点12の先端側へと引き伸ばすことができる電磁力を発生させるターン数を有している。
【0033】
また、図4(b)に示すように、固定アーク接点部19は、固定通電接点部18より、より可動接触子7の側(同図中右側)へ突き出した形状となっており、開極および遮断動作において、固定通電接点部18と可動接点部20との開極に遅れて、固定アーク接点部19と可動接点部20とが開極する構成となっている。これら以外の構成は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
続いて、遮断動作について説明する。閉極状態の開閉器1に開極指令が与えられると、駆動装置8により可動接触子7が回動を開始する。このとき、固定通電接点部18と可動接点部20との開極に遅れて開極する固定アーク接点部19と可動接点部20との間にアークが発生する。図5は、このアーク発生後の遮断動作において、アークAが電磁力Fで引き伸ばされている状態を示している。アークAは、アークAを流れる電流Iと差交する磁場Bとにより発生する電磁力Fを受けて、固定通電接点部18に対して固定アーク接点部19の側へと引き伸ばされる。磁場Bは、コイル16の巻き方向とターン数とを所定に設計することで、遮断時の電流が大きい場合は勿論、小さい場合においても、アークAを引き伸ばすのに十分な値とすることが可能となる。
【0035】
引き伸ばされたアークAは、電流零点を迎えて消弧される。このような遮断動作において、アークAに暴露される第1の絶縁物14および第2の絶縁物17から消弧性ガスが発生する。この消弧性ガスにより、アークAを冷却することができるので、素早くアークAを消弧できるのみならず、固定接触子6と可動接触子7との間の空間の絶縁回復を促進し、遮断性能を一層高めることができる。
【0036】
このような遮断動作において、固定接点部9と可動アーク接点部12との間でアークが発生している期間は、遮断電流が、第1の導体14、コイル16および第2の導体15を介して流れるので、固定通電接点部18と固定アーク接点部19との間で電位差が発生する。そこで、第1の絶縁物13は、この電位差で閃絡しない絶縁距離を確保した寸法としている。
【0037】
以上より、可動接点部20を有する可動接触子7と、固定通電接点部18と固定アーク接点部19とを有する固定接触子6と、可動接触子7を時計方向または反時計方向に回転させて、可動接点部20を固定通電接点部18と接離させる駆動装置8とを備えた開閉器において、固定通電接点部18と固定アーク接点部19との間に、第1の絶縁物13を配置し、固定通電接点部18と固定アーク接点部19とを、可動接触子7と固定接触子6との間で発生するアークから第2の絶縁物17によって保護されたコイル16によって、電気的に接続し、コイル16が発生する磁場により、上記アークが固定通電接点部18に対して固定アーク接点部19の側へ電磁力を受けるように構成したので、遮断時に、コイル16に遮断電流が流れ、アークを引き伸ばす十分な磁場を発生させることができる。これにより、遮断電流の小さい領域においても安定してアークを引き伸ばすことができ、より高い遮断性能を得ることができる。
【0038】
また、遮断時にアークが発弧する部分(固定アーク接点部19、およびこれと接離する可動接点部20の一部)と、閉極状態で電流を通電する部分(固定通電接点部18、およびこれと接離する可動接点部20の別の一部)とを分離することができるので、遮断時にアークを転流させる必要がなく、確実にアークを引き伸ばすのに十分な磁場が得られる空間にアークを発生させることができる。これにより、遮断時の電流の小さい場合においても安定した遮断性能を確保できる。
【0039】
つまり、この実施の形態では、遮断時の電流の大小に関わらず、アークを適切な方向へ引き伸ばすために必要な磁界を得ることで、遮断性能が向上した開閉器を提供することができる。
【0040】
なお、この実施の形態では、閉極状態において、可動接点部20と固定通電接点部18および固定アーク接点部19とがそれぞれ電気的に接触する例を示したが、閉極状態では、可動接点部20と固定通電接点部18とが電気的に接触していれば、可動接点部20と固定アーク接点部19とが接触していなくてもよい。要は、遮断動作において、可動接点部20と固定通電接点部18とが開極した後に、可動接点部20と固定アーク接点部19との間でアークが発生するように構成すればよい。
【0041】
また、この実施の形態では、コイル16と固定通電接点部18および固定アーク接点部19との電気的接続に、別途設けた第1の導体14および第2の導体15を用いたが、第1の導体14と固定通電接点部18とを、または第2の導体15と固定アーク接点部19とを一体化して構成してもよい。
【0042】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3による開閉器1の要部の構成および遮断動作を説明するための説明図であり、実施の形態1の図3に相当する断面を示している。この実施の形態では、第1の絶縁物13に、可動アーク接点部12の固定接点部9の側の端部よりも固定接点部9の側へ突出する突出部13aを設けている。また、第1の絶縁物13と固定接触子6との間には、開極状態で、固定接触子6と可動接触子7とが、第1の絶縁物13を介して閃絡しない絶縁距離が設けられている。これ以外の構成は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
このように構成することで、遮断時に、電磁力FよるアークAを引き伸ばす効果に加えて、引き伸ばされたアークAが第1の絶縁物13に接触することで一層大量に発生する消弧性ガスによってアークAを冷却する効果が増大し、遮断性能が一層向上する。
【0044】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4による開閉器1の要部の構成および遮断動作を説明するための説明図であり、実施の形態2の図5に相当する断面を示している。この実施の形態では、第1の絶縁物13に、固定アーク接点部19の可動接点部20の側の端部よりも可動接点部20の側へ突出する突出部13aを設けている。また、第1の絶縁物13と可動接触子7との間には、開極状態で、固定接触子6と可動接触子7とが、第1の絶縁物13を介して閃絡しない絶縁距離が設けられている。これ以外の構成は、実施の形態2と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
このように構成することで、遮断動作時に、電磁力FよるアークAを引き伸ばす効果に加えて、引き伸ばされたアークAが第1の絶縁物13に接触することで一層大量に発生する消弧性ガスによってアークAを冷却する効果が増大し、遮断性能が一層向上する。
【0046】
実施の形態5.
図8は、この発明の実施の形態5による開閉器の要部の構成および遮断動作を説明するための説明図であり、実施の形態1の図3に相当する断面を示している。この実施の形態では、可動接触子7の先端部の開極軌道と対向する位置に、複数枚の磁性体、例えば複数の鉄板からなる消弧板22を消弧側板23にて間隙をもって保持した消弧装置21を配置している。また、消弧装置21と可動接触子7との間、および消弧装置21と固定接触子6との間には、開極状態で、固定接触子6と可動接触子7とが、消弧装置21を介して閃絡しない絶縁距離が設けられている。これ以外の構成は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
このように構成することで、遮断動作時に、電磁力Fが磁性体の消弧板22によって増強されてアークAを引き伸ばす効果が向上するのに加えて、引き伸ばされたアークAが消弧板22に接触することによるアークAを冷却する効果が得られるので、遮断性能が一層向上する。特に、遮断時の電流が小さい場合に、消弧装置21の効果が顕著となる。
【0048】
なお、この実施の形態では、実施の形態1の構成に加えて、可動接触子7の先端部の開極軌道と対向する位置に消弧装置21を配置したが、実施の形態2〜4のいずれかの実施の形態の構成に加えて、可動接触子7の先端部の開極軌道と対向する位置に消弧装置21を配置してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 開閉器、2 容器、3 開閉装置部、4 固定接触子側母線、5 可動接触子側母線、6 固定接触子、7 可動接触子、8 駆動装置、9 固定接点部、10 回転軸、11 可動通電接点部、12 可動アーク接点部、13 第1の絶縁物、14 第1の導体、15 第2の導体、16 コイル、17 第2の絶縁物、18 固定通電接点部、19 固定アーク接点部、20 可動接点部、21 消弧装置、22 消弧板、23 消弧側板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動通電接点部と可動アーク接点部とを有する可動接触子と、
固定接点部を有する固定接触子と、
上記可動接触子を時計方向または反時計方向に回転させて、上記可動通電接点部を上記固定接点部と接離させる駆動装置とを備えた開閉器であって、
上記可動通電接点部と上記可動アーク接点部との間には、第1の絶縁物が配置され、
上記可動通電接点部と上記可動アーク接点部とは、上記可動接触子と上記固定接触子との間で発生するアークから第2の絶縁物によって保護されたコイルによって、電気的に接続され、
上記コイルが発生する磁場により、上記アークが上記可動通電接点部に対して上記可動アーク接点部の側へ電磁力を受けるように構成したことを特徴とする開閉器。
【請求項2】
開極動作のときに、可動アーク接点部と固定接点部との接触は、可動通電接点部と上記固定接点部との接触より後で開放されるように構成したことを特徴とする請求項1記載の開閉器。
【請求項3】
第1の絶縁物は、開極状態において、可動アーク接点部よりも固定接点部の側に突出することを特徴とする請求項2に記載の開閉器。
【請求項4】
可動接点部を有する可動接触子と、
固定通電接点部と固定アーク接点部とを有する固定接触子と、
上記可動接触子を時計方向または反時計方向に回転させて、上記可動接点部を上記固定通電接点部と接離させる駆動装置とを備えた開閉器であって、
上記固定通電接点部と上記固定アーク接点部との間には、第1の絶縁物が配置され、
上記固定通電接点部と上記固定アーク接点部とは、上記可動接触子と上記固定接触子との間で発生するアークから第2の絶縁物によって保護されたコイルによって、電気的に接続され、
上記コイルが発生する磁場により、上記アークが上記固定通電接点部に対して上記固定アーク接点部の側へ電磁力を受けるように構成したことを特徴とする開閉器。
【請求項5】
開極動作のときに、固定アーク接点部と可動接点部との接触は、固定通電接点部と上記可動接点部との接触より後で開放されるように構成したことを特徴とした請求項4記載の開閉器。
【請求項6】
第1の絶縁物は、開極状態において、固定アーク接点部よりも可動接点部の側に突出することを特徴とする請求項5に記載の開閉器。
【請求項7】
可動接触子の先端部の開極軌道と対向する位置に、複数枚の磁性体からなる消弧板を消弧側板にて間隙をもって保持した消弧装置を配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の開閉器。
【請求項8】
可動接触子および固定接触子が、絶縁性ガスを封入した容器の内に配置されることを特徴とした請求項1〜7のいずれかに記載の開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243574(P2012−243574A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112617(P2011−112617)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】