説明

開閉器

【課題】この発明は、簡易な方法で製造でき、所定の遮断性能を有する開閉器を提供するものである。
【解決手段】貫通穴が形成された第1の固定端子と、前記第1の固定端子と相対向して配置され、前記貫通穴と同軸上に配置される収容穴が形成された第2の固定端子と、前記第1の固定端子と前記第2の固定端子とを一体的にモールドし、前記貫通穴と前記収容穴とを連通する挿通穴が形成された絶縁モールド体と、前記第1の固定端子の前記貫通穴に摺動可能に挿通され、端部が前記絶縁モールド体の前記挿通穴を挿通するとともに前記第2の固定端子の前記収容穴に摺動可能に収容される可動導体と、前記絶縁モールド体と前記可動導体および前記固定端子間に形成され、ガスが封入されたガス区画とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、気中あるいは加圧タンク内で使用される開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉器では、絶縁性能、遮断性能の高いSF6ガスを用いて、遮断および絶縁性能
を達成していた。しかしSF6ガスは温室効果ガスのひとつとして指定されているため、近
年SF6ガスを用いない開閉器の開発が進められている。SF6ガスのかわりに乾燥空気、窒素、二酸化炭素などのガスを用いる場合、それらのガスの遮断性能および絶縁性能はSF6ガスのそれに対してはるかに低いため、同等の性能を得るためにはSF6ガスを用いた機器より絶縁、遮断のために必要な寸法が大きくなるため、機器が大型化してしまう欠点がある。
【0003】
また、気体の圧力を高めると絶縁性能、遮断性能ともに向上することが一般に知られているが、圧力を上昇すると機器を搭載するタンクの板厚が増加するため、コスト増加の原因となる。
【0004】
特許文献1では窒素ガスを封入したタンク内にエポキシモールドで囲まれた開閉器の端子を設置し、エポキシモールド、端子で囲まれた空間に絶縁油を充填することで、絶縁油の性能により、開閉器の遮断性能、絶縁性能を達成している。
【0005】
一方、特許文献2では、圧力容器内に封入圧力の異なる圧力容器を設置することで二重圧力構造とし、内部の圧力容器の封入圧力を高めることでその圧力容器内の絶縁性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−45301号公報
【特許文献2】特開2006−67721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の特許文献1に記載の開閉器は、絶縁油により高い絶縁性能、遮断性能は
発揮可能であるが、絶縁油の液漏れが懸念される。一方、従来の特許文献2に記載の開閉器は、圧力の高い圧力容器内では高い絶縁性能と遮断性能を発揮可能であるが、二つの圧力容器にそれぞれ異なる圧力を充填する必要があり、組立性が困難となるという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡易な方法で製造でき、所定の遮断性能を有する開閉器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係わる開閉器は、貫通穴が形成された第1の固定端子と、前記第1の固定端子と相対向して配置され、前記貫通穴と同軸上に配置される収容穴が形成された第2の固定端子と、前記第1の固定端子と前記第2の固定端子とを一体的にモールドし、前記貫通穴と前記収容穴とを連通する挿通穴が形成された絶縁モールド体と、前記第1の固定端子の前記貫通穴に摺動可能に挿通され、端部が前記絶縁モールド体の前記挿通穴を挿通する
とともに前記第2の固定端子の前記収容穴に摺動可能に収容される可動導体と、前記絶縁モールド体と前記可動導体および前記固定端子間に形成され、ガスが封入されたガス区画とを備えたものである。
【0010】
また、この発明に係わる開閉器は、貫通穴が形成された第1の固定端子と、前記第1の固定端子と相対向して配置され、前記貫通穴と同軸上に配置される収容穴が形成された第2の固定端子と、前記第1の固定端子と前記第2の固定端子とを一体的にモールドし、前記貫通穴と前記収容穴とを連通する挿通穴が形成された絶縁モールド体と、前記第1の固定端子の前記貫通穴に摺動可能に挿通され、端部が前記絶縁モールド体の前記挿通穴を挿通するとともに前記第2の固定端子の前記収容穴に摺動可能に収容される可動導体と、前記絶縁モールド体と前記可動導体および前記固定端子間に形成され、ガスが封入されたガス区画と、前記絶縁モールド体を収容し、ガスが封入されたタンクとを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明における開閉器によれば、簡易な方法で製造でき、所定の遮断性能を有する開閉器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる開閉器における切状態を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わる開閉器における入状態を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係わる開閉器における切状態を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わる開閉器における入状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1および図2に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係わる開閉器における切状態を示す断面図である。図2はこの発明の実施の形態1に係わる開閉器における入状態を示す断面図である。
【0014】
これら各図において、1は貫通穴1aが形成された第1の固定端子、2は第1の固定端子1と相対向して配置され、貫通穴1aと同軸上に配置される収容穴2aが形成された第2の固定端子、3は第1の固定端子1と第2の固定端子2とを一体的にモールドし、貫通穴1aと収容穴2aとを連通する挿通穴3aが形成された例えばエポキシ樹脂からなる絶縁モールド体、4は第1の固定端子1の貫通穴1aに摺動可能に挿通され、端部4aが絶縁モールド体3の挿通穴3aを挿通するとともに第2の固定端子2の収容穴2aに摺動可能に収容される可動導体、5は絶縁モールド体3と可動導体4および第1の固定端子1、第2の固定端子2間に形成され、乾燥空気、窒素、二酸化炭素などのガスが封入されたガス区画である。
【0015】
そして、6は第1の固定端子1に設けられた摺動接触子、7は第2の固定端子2に設けられた摺動接触子である。8はガス区画5内のガスが外部に漏れないように例えば第1の固定端子1の内部に配置された例えばOリング、Tリングなどの気密シール体である。9はエポキシ樹脂からなる絶縁モールド体3と第2の固定端子2とガス区画5で形成されるトリプルジャンクションであり、第2の固定端子2の内側になるため、電界が集中せず、
絶縁上有利となる。
【0016】
次に動作について説明する。図1に示す開閉器の切状態から図2に示す開閉器の入状態への動作は、可動導体4を第2の固定端子2側へ絶縁モールド体3の挿通穴3aを通していき、可動導体4の端部4aがトリプルジャンクション9を経て第2の固定端子2の収容穴2aに収容させる。
【0017】
このように、可動導体4がトリプルジャンクション9を経て第2の固定端子2の収容穴2aに収容されるため、ガス区画5の空間スペースが小さくなるのでガス区画5内のガスは圧縮され圧力が高くなる。すなわち、ガス区画5内の圧力が開閉器を入状態にしたときに、絶縁モールド体3の外部の圧力より高まる。これにより開閉器の中で遮断、絶縁という機能が必要となる可動導体4と第1の固定端子1、第2固定端子2の間のみ高圧力とすることで、遮断および絶縁性能を高めることができる。
【0018】
なお、第1の固定端子1と第2の固定端子2間は、摺動接触子6,7と可動導体4を用いて通電される。また、開閉器の中で電流遮断を行う可動導体4と第1の固定端子1と第2の固定端子2間を絶縁モールド体3により外部空間と分離することが可能となる。
【0019】
さらに、ガス区画5内に圧縮されたガスの圧力を圧力エネルギーとして蓄勢し、その圧力エネルギーを開極エネルギーとして利用して開極速度を高めることが可能となり、遮断性能の向上を図ることができる。また、可動導体4を駆動させる運動エネルギーとしても利用可能となる。
【0020】
以上説明したように、SF6ガスを用いることなく、乾燥空気、窒素、二酸化炭素などの
ガスを用いて簡易な方法で製造でき、所定の遮断性能を有する開閉器を得ることができる。
【0021】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図3および図4に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図3はこの発明の実施の形態2に係わる開閉器における切状態を示す断面図である。図4はこの発明の実施の形態2に係わる開閉器における入状態を示す断面図である。
【0022】
これら各図において、1〜9は上述した実施の形態1と同様の構成である。10は絶縁モールド体3を収容し、ガス区画5内に封入される乾燥空気、窒素、二酸化炭素などのガスが封入されるタンクである。
【0023】
11は第2の固定端子2に収容穴21aと連通して設けられたガス封入用穴、12は絶縁モールド体3にガス封入用穴11とタンク10内とに連通して設けられたガス封入用穴である。
【0024】
13はタンク10内にガスを封入するガス配管、14はガス配管13から分岐され、ガス封入用穴12に連結されたガス配管である。15はガス配管14に設けられた弁である。16はガス配管13、ガス配管14にガスを供給するガス供給部であり、図示しない圧力計が設けられている。なお、絶縁モールド体3と可動導体4および第1の固定端子1、第2の固定端子2間に形成されたガス区画5内へのガスの供給は、ガス配管14を通じてガス封入用穴12、ガス封入用穴11を経て供給される。
【0025】
次に動作について説明する。組立時は図3に示すように開閉器を切状態としておき、ガス配管14に設けられた弁15を開いた状態にしておくことで、圧力計およびガス供給部
16を用いて乾燥空気、窒素、二酸化炭素などのガスをガス配管13を通じてタンク10内に充填すると、絶縁モールド体3内のガス区画5内にも同時にガス配管14を通じてガス封入用穴12、ガス封入用穴11を経てガスが充填され、タンク10内とガス区画5内の圧力は同じとなる。このように1回のガス封入の後に弁15を閉じることで2つの異なるガス区画となり、二重圧力構造を形成できるとともにガス封入の手間を簡略化できる。
【0026】
図3に示す開閉器の切状態から図4に示す開閉器の入状態への動作は、可動導体4を第2の固定端子2側へ絶縁モールド体3の挿通穴3aを通していき、可動導体4の端部4aがトリプルジャンクション9を経て第2の固定端子2の収容穴2aに収容させる。
【0027】
このように、可動導体4がトリプルジャンクション9を経て第2の固定端子2の収容穴2aに収容されるため、ガス区画5の空間スペースが小さくなるのでガス区画5内のガスは圧縮され圧力が高くなる。すなわち、ガス区画5内の圧力が開閉器を入状態にしたときに、絶縁モールド体3の外部の圧力より高まる。これにより開閉器の中で遮断、絶縁という機能が必要となる可動導体4と第1の固定端子1、第2固定端子2の間のみ高圧力とすることで、遮断および絶縁性能を高めることができる。
【0028】
なお、開閉器の中で電流遮断を行う可動導体4と第1の固定端子1と第2の固定端子2間を絶縁モールド体3により外部空間と分離することが可能となる。しかも、絶縁モールド体3はタンク10内に収納し、タンク10内圧力を大気圧より高めることで、絶縁モールド体3外部の絶縁もさらに向上する。また、タンク10内であるため、絶縁モールド体3外部の汚損による絶縁性能の低下を防ぐことが可能である。
【0029】
また、ガス区画5内に圧縮されたガスの圧力を圧力エネルギーとして蓄勢し、その圧力エネルギーを開極エネルギーとして利用して開極速度を高めることが可能となり、遮断性能の向上を図ることができる。また、可動導体4を駆動させる運動エネルギーとしても利用可能となる。
【0030】
以上説明したように、SF6ガスを用いることなく、乾燥空気、窒素、二酸化炭素などの
ガスを用いて簡易な方法で製造でき、所定の遮断性能を有する開閉器を得ることができる。
さらに、タンク10内へのガス封入は1回であるが二重圧力構造を形成可能であり、タンク10内の圧力は低圧力でよいため、タンク10の板厚を薄くし、低コスト化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、簡易な方法で製造でき、所定の遮断性能を有する開閉器の実現に好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の固定端子
1a 貫通穴
2 第2の固定端子
2a 収容穴
3 絶縁モールド体
3a 挿通穴
4 可動端子
4a 端部
5 ガス区画
10 タンク
15 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴が形成された第1の固定端子と、前記第1の固定端子と相対向して配置され、前記貫通穴と同軸上に配置される収容穴が形成された第2の固定端子と、前記第1の固定端子と前記第2の固定端子とを一体的にモールドし、前記貫通穴と前記収容穴とを連通する挿通穴が形成された絶縁モールド体と、前記第1の固定端子の前記貫通穴に摺動可能に挿通され、端部が前記絶縁モールド体の前記挿通穴を挿通するとともに前記第2の固定端子の前記収容穴に摺動可能に収容される可動導体と、前記絶縁モールド体と前記可動導体および前記固定端子間に形成され、ガスが封入されたガス区画とを備えたことを特徴とする開閉器。
【請求項2】
前記ガス区画内の圧力が前記可動導体を操作し、開閉器を入状態にしたときに、前記絶縁モールド体外部の圧力より高まることを特徴とする請求項1に記載の開閉器。
【請求項3】
前記ガス区画内の圧力が前記可動導体を操作し、開閉器を入状態にすることにより前記ガス区画内に圧力エネルギーを蓄勢し、前記圧力エネルギーを開極エネルギーとして利用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉器。
【請求項4】
貫通穴が形成された第1の固定端子と、前記第1の固定端子と相対向して配置され、前記貫通穴と同軸上に配置される収容穴が形成された第2の固定端子と、前記第1の固定端子と前記第2の固定端子とを一体的にモールドし、前記貫通穴と前記収容穴とを連通する挿通穴が形成された絶縁モールド体と、前記第1の固定端子の前記貫通穴に摺動可能に挿通され、端部が前記絶縁モールド体の前記挿通穴を挿通するとともに前記第2の固定端子の前記収容穴に摺動可能に収容される可動導体と、前記絶縁モールド体と前記可動導体および前記固定端子間に形成され、ガスが封入されたガス区画と、前記絶縁モールド体を収容し、ガスが封入されたタンクとを備えたことを特徴とする開閉器。
【請求項5】
前記絶縁モールド体内の前記ガス区画内の圧力が前記可動導体を操作し、開閉器を入状態にしたときに、前記タンク内の圧力より高まり、二重圧力構造を形成することを特徴とする請求項4に記載の開閉器。
【請求項6】
前記タンク内に前記絶縁モールド体を配置し、組立時には前記タンク内と前記絶縁モールド体内の前記ガス区画と同一とし、前記タンク内にガス封入後に前記タンク内と前記絶縁モールド体内をつなぐ弁を閉じることで、2つのガス区画を形成することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−41773(P2013−41773A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178865(P2011−178865)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】