説明

開閉式間仕切り構造

【課題】レール本体とシートとの間に隙間が生じても、風雨や塵芥の侵入を有効に防止できる開閉式間仕切り構造(又は装置)を提供する。
【解決手段】開閉式間仕切り構造は、レール部材1に沿って走行可能な複数のランナー11と、これらのランナーに取り付けられた複数の走行部材21と、各走行部材に揺動可能に係止された揺動部材(又はハンガー)31と、各揺動部材(又はハンガー)から垂下するシート35とを備えている。前記レール部材1には、開口部側が狭まったアリ溝状の装着溝4が形成され、この装着溝には、カバー51の上端部に形成された中空筒状部52に中空芯材53が挿入された状態で装着又は収容され、上記芯材53の中空部には中空プラグ54とネジ部材55が装着され、抜けが規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランナーを介してレールに沿って配設されたシートにより開閉可能に間仕切りするのに有用な間仕切り構造(又は間仕切り装置)、例えば、工場などの建屋の入り口、連絡通路などに複数のシートがノレン状に設けられ、開閉可能な間仕切り構造(又は間仕切り装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの建屋や作業場の入り口、連絡通路などには、風雨の侵入を防止するとともに、人、車や重機などの前進動及び後退動を容易にするため、複数のシートが隣接部を重複させて横方向にノレン状に配設された開閉可能な間仕切り構造が形成されている。このような間仕切り構造として、例えば、特開2002−330860号公報(特許文献1)には、所定部に固定するための固定部を有する懸吊保持部材と、この懸吊保持部材へ懸吊係合される係合手段を有する懸吊係合部材とを備えたストリップドアーシート懸吊装置において、懸吊保持部材が、弧状断面を有する湾曲部と、この湾曲部に形成され、懸吊係合部材を懸吊保持するための複数のT字状案内溝(横方向に延びる広幅受入開口と、この広幅受入開口から縦方向に直交して延びる狭幅案内開口とを有するT字状案内溝)とを備えており、懸吊係合部材が、前記T字状案内溝の広幅受入開口へ受入られかつ狭幅案内開口に沿って移動可能なT字形状の係合手段を備えた第1板部材と、この第1板部材との間でストリップドアシートの上端部を挟持固着する第2板部材とを備えたストリップドアーシート懸吊装置が開示されている。この文献には、案内溝から懸吊係合部材の係合手段が脱落するのを防止するための懸け止め手段を形成することが記載されている。
【0003】
このような懸吊装置は、通常、前記懸吊保持部材を、上部に架設されたレール本体に沿って走行可能な複数のランナーに取り付けることにより、出入り口を開閉可能としている。すなわち、ドアー全体を開放することなく、必要な部分のストリップドアーシートだけを押しのけて通過できる。
【0004】
しかし、レール本体とシートとの間に隙間が生じる。すなわち、レール本体とランナーとの間、ランナーと懸吊保持部材との間、懸吊係合部材とシートとの間には、それぞれ隙間が生じる。そのため、風雨や塵芥の侵入を有効に防止できず、保温性、保冷性を損なうとともに、遮音性(防音性)及び防火性も向上できない。また、レール本体とシートとの間に生じる隙間により美観も損なわれる。このような問題は、レールに沿って走行可能なランナーにシートを取り付け、カーテン方式で開閉可能な間仕切り構造を形成する場合にも、同様に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−330860号公報(特許請求の範囲、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、レール本体とシートとの間に隙間が生じても、風雨や塵芥の侵入を有効に防止できるとともに、保温性及び保冷性などを改善できる開閉式間仕切り構造(又は装置)を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、美観が損なわれることのない開閉式間仕切り構造(又は装置)を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、簡便かつ効率よく形成できる開閉式間仕切り構造(又は装置)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、上部に架設されたレール部材の両側部に、長手方向に沿ってアリ溝状の装着溝を形成し、この装着溝に、カバーの上端部を装着すると、前記レール部材の装着溝からシートの上端部の領域を覆うことができること、前記カバーの上端部に径大部を形成して装着溝に装着すると、装着部からのカバーの抜けを防止できるとともに簡便に間仕切り構造を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
本発明の間仕切り構造(間仕切り装置又は開閉構造)では、カーテン状の形態でシートを用いてもよく、ノレン状の形態でシートを用いてもよい。すなわち、前者の開閉式間仕切り構造(又は装置)は、架設されたレール部材と、このレール部材に沿って走行可能な複数のランナーと、これらのランナーに取り付けられたシートとを備えた開閉式間仕切り構造であって、前記レール部材に長手方向に延びて形成され、開口部側が狭まったアリ溝状の装着溝と、この装着溝に上端部が装着され、かつ少なくとも前記装着溝からシートの上端部を覆うためのカバーとを備えており、このカバーの上端部にアリ溝状装着溝の開口部の幅よりも大きな径大部が形成され、このシートの端部の径大部が、装着溝からの抜けが規制された状態で前記装着溝に装着又は収容されている。
【0011】
後者の形態の間仕切り構造(間仕切り装置又は開閉構造)は、架設されたレール部材と、このレール部材に沿って走行可能な複数のランナーと、これらのランナーに取り付けられ、かつ前記レール部材の長手方向に配設可能な複数の走行部材と、各走行部材にそれぞれ揺動可能に係止された揺動部材(又はハンガー)と、各揺動部材(又はハンガー)に垂下して取り付けられたシートとを備え、かつ隣接する揺動部材においてシートの端部が互いに重なり合った状態でシートが取り付けられている。そして、前記開閉式間仕切り構造では、前記レール部材に長手方向に延びて形成され、開口部側が狭まったアリ溝状の装着溝と、この装着溝に上端部が装着され、かつ少なくとも前記装着溝からシートの上端部を覆うためのカバーとを備えており、このカバーの上端部にアリ溝状装着溝の開口部の幅よりも大きな径大部が形成され、このシートの端部の径大部が、装着溝からの抜けが規制された状態で前記装着溝に装着又は収容されている。
【0012】
このような構造では、レール部材に形成されたアリ溝状の装着溝にカバーを装着できるため、前記装着溝からシートの上部に至る領域をカバーで覆うことができる。そのため、風雨や塵芥の侵入を有効に防止でき、保温性及び保冷性を改善できる。また、遮音性(防音性)、防火性、防虫性なども改善できる。さらに、カバーの上端部に形成した径大部を装着溝に装着することにより、装着溝からのカバーの抜けが規制又は防止でき、簡便かつ効率よく間仕切り構造を形成できる。なお、ノレンタイプの開閉構造では、揺動部材に取り付けられたシートの端部は、隣接する揺動部材の間で互いに重なり合っているため、風雨や塵芥の侵入を有効に防止できるだけでなく、保温性及び保冷性などを改善できる。
【0013】
なお、前記間仕切り構造において、レール部材の両側部に装着溝を形成し、それぞれの装着部にカバーの上端部を装着してもよい。このような構造では、前記装着溝からシートの上部に至る領域を両側からカバーできる。
【0014】
また、カバーは、可撓性を有していてもよい。前記カバーの上端部は中空筒状(袋縫い状の中空筒状など)に形成してもよく、この中空筒状部にアリ溝状装着溝の開口部よりも直径が大きな芯材が挿入された状態で、前記シートの中空筒状部がアリ溝状装着溝に装着してもよい。このような構造では、中空筒状部に芯材を挿入させることにより装着溝からのカバーの抜け又は脱落を防止でき、簡単な操作で間仕切り構造を形成できる。さらに、カバーの上端部を袋縫い状の中空筒状に形成し、この中空筒状部にアリ溝状装着溝の開口部よりも直径が大きな中空芯材を挿入し、この中空芯材の中空部に、侵入に伴って半径方向に中空部を拡大させるプラグを装着してもよい。さらに、上端部が袋縫い状の中空筒状に形成されたカバーと、このカバーの中空筒状部に挿入可能であり、かつアリ溝状装着溝の開口部よりも直径が大きな中空芯材と、この中空芯材の中空部に装着可能であり、かつ侵入に伴って半径方向に中空部を拡大可能な中空プラグと、この中空プラグの中空部に装着可能であり、かつ中空プラグを半径方向に拡大させるためのネジ部材とを備えていてもよい。このような構造では、中空芯材の挿入、プラグの装着(さらにはネジ部材の螺合)という簡単な操作で間仕切り構造を形成できる。さらに、中空プラグの軸方向には、回転を規制するための突片状又は凸条の回転止め部を形成してもよい。回転止め部を有する中空プラグの中空部にネジ部材を螺合すると、中空プラグの回転を防止しつつ、螺合に伴ってプラグを半径方向に有効に拡大できる。
【0015】
さらに、シートは、布帛などであってもよく、透明性及び可撓性を有するプラスチックシートで形成してもよい。ノレンタイプの開閉構造において、揺動部材に取り付けられたシートは、透明性及び可撓性を有する細幅状のプラスチックシートで形成してもよい。また、レール部材の長手方向に対して交差する方向(シートに対して前進及び後退動する方向など)には、隣接する複数のシートが揺動可能であるとともに、隣接するシートの重複部が開閉可能であってもよい。このような構造では、レール部材の長手方向に対して交差する方向に進退動に伴って、複数のシートが揺動しつつ開くため、複数のシートが開閉可能である。
【0016】
なお、本明細書中、「アリ溝」とは、開口部の幅が凹溝部の内部又は奥部に比べて狭い形状を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、レール部材の装着溝にカバーを装着することにより、前記レール部材の装着溝からシートの上端部の領域を覆うことができ、風雨及び塵芥の侵入を防止でき、保温性及び保冷性などを改善できる。また、レール本体とシートとの間に隙間が生じても、前記カバーで覆うことができるため、美観が損なわれることがない。さらに、レール部材の装着溝にカバーの上端部の径大部を装着することにより、装着溝からのカバーの抜け(縦方向の抜け)が規制された開閉式間仕切り構造(又は装置)を、簡便かつ効率よく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の間仕切り構造を示す概略部分斜視図である。
【図2】図2は図1の間仕切り構造を示す概略断面図である。
【図3】図3は図1の間仕切り構造のカバーの取付構造を説明するための概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図3に示す例では、ノレン状の形態でシートを配設した開閉構造が示されている。すなわち、工場の出入り口などの上部に架設されたレール部材1と、このレール部材に沿って走行可能な複数のランナー11と、これらのランナーに取り付けられた複数の走行部材21と、各走行部材に対してそれぞれ揺動可能(レール部材の長手方向に対して直交する方向に揺動可能)に取り付けられた揺動部材(又はプレート状ハンガー)31と、これらの揺動部材にそれぞれ取り付けられた細幅の透明シート(ストリップドアーシート)とを備えている。
【0020】
前記レール部材1は、下部中央部が開放して走行空間(走行路)2を有する概略断面中空四角形状(又は四角枠状)に形成され、レール部材の上部両側壁には、レール部材1を所定部に架設するため、ブラケットの鈎状爪部及び係止部(図示せず)がそれぞれ装着可能な凹溝3が形成され、下部両側壁には、開口部の幅が狭まった断面円形状のアリ溝状の装着溝(断面円弧状装着溝)4が形成されている。また、レール部材1の走行空間2の両側に位置する下部壁の上面は走行面を形成しており、レール部材1の下部中央部の内側の両側壁(互いに対峙する両側壁)には、連結棒体が挿入又は装着可能であり、かつレール部材を連設して接続するための断面円形状の凹部(連結凹部)5が形成されている。
【0021】
ランナー11は、前記レール部材1の走行面を走行可能なローラ12と、このローラを回転可能に軸支する軸部と、この軸部の両側部を回転可能に支持するフレーム部13と、このフレーム部の下部に軸心に沿って回転可能(回動可能)に取り付けられた取り付け脚部14とを備えている。この例では、フレーム部13は、軸部の両側部を回転可能に支持し、かつローラを周方向に囲う枠部13aと、この枠部の前後部で一体化して前後方向に湾曲し、かつ前記走行空間(走行路)2よりも狭い幅の支持湾曲部13bと、この支持湾曲部の底部に形成され、前記取り付け脚部14が抜け不能に遊嵌して回動可能に取り付け可能なリング部13cとを備えている。
【0022】
各走行部材21には、安定に走行させるため、複数のランナー11の取り付け脚部14が長手方向に間隔をおいて取り付けられ、複数の走行部材21がランナーとともに走行可能である。この例では、1つの走行部材21に2〜6個程度のランナー11の取り付け脚部14が取り付けられている。各走行部材21は、一方の側部が開放した断面コ字状又はC字状の形態を有しており、前記ランナー11の取り付け脚部14を取り付けるための上部取り付け壁22と、この取り付け壁から垂下する垂下壁23と、この垂下壁からして湾曲又は屈曲する湾曲又は屈曲壁24と、この屈曲壁の先端に櫛歯状の形態で所定間隔ごとに形成された複数の係止片25とを備えており、これらの係止片は、揺動部材31を有効に係止するため、取り付け壁22から延びる垂下壁23側(内側)に傾斜又は屈曲している。
【0023】
なお、レール部材1の両端部には、エンドストッパー41が取り付けられており、隣接する走行部材21の一方の側部には、マグネット43を備えた吸着部材(L字状部材)42が側部の開口部を閉じた形態で取り付けられ、他方の側部には、吸着部材のマグネットにより磁気的に吸着可能なマグネット受け(L字状部材)44が側部の開口部を閉じた形態で取り付けられている。そのため、レール部材1に沿って走行可能な複数の走行部材21は、互いに磁気的に吸着させて長手方向に隣接させることができる。
【0024】
一方、揺動部材(プレート状ハンガー)31は、前記走行部材21よりも長さが短い一対のプレート部材32と、このプレート部材から延出して形成され、かつ前記櫛歯状係止片25と係止可能なT字状の係合部33とを備えており、T字状係合部の脚部(軸部)33aを櫛歯状係止片25の間に挿入することにより、走行部材21に対して複数の揺動部材31がそれぞれ揺動可能に取り付けられ、各揺動部材31はレール部材1の長手方向(走行部材21の走行方向に対して)に対して直交する方向に揺動可能である。
【0025】
さらに、各揺動部材(プレート状ハンガー)31には、それぞれ揺動部材よりも幅が大きな透明シート(ストリップシート)35が、一対のプレート部材32で挟持した形態で取り付けられ、各揺動部材31の両側部から所定の幅で透明シートが側部方向に延びており、走行部材21に対して複数の揺動部材31をそれぞれ隣接させて揺動可能に取り付けた状態では、透明シート35の両側部がそれぞれ重なり合っている。すなわち、揺動部材31よりも幅が大きな幅狭の透明シート(ストリップシート)35の両側部が重なり合った形態で、揺動部材31を介して走行部材21から透明シート(ストリップシート)35がノレン状に垂下し、ストリップドアーシートを形成している。
【0026】
そして、前記レール部材1のアリ溝状の装着溝5には、プラスチック製シートで形成されたカバー部材51装着又は収容されている。すなわち、カバー部材51の上端部は、袋縫い状の中空筒状に形成され、この中空筒状部52には、前記装着溝の開口部よりも直径が大きな中空芯材(プラスチック製チューブなどの補強芯材)53が挿入されている。なお、符号51aは熱融着部を示す。また、カバー部材51の中空筒状部52に中空芯材(補強芯材)53が挿入又は装着された状態で、カバー部材51の中空筒状部52がアリ溝状の装着溝4に装着又は収容されている。そのため、アリ溝状の装着溝4からカバー部材51の中空筒状部52が縦方向に抜け落ちることがない。さらに、前記中空筒状部52の中空部52aの両端部(中空芯材53の両端部に隣接する両側部)には、半径方向に拡大可能であり、かつ中空筒状部52の中空部52aに装着可能な中空プラグ(プラスチック製プラグなど)54が装着されている。この中空プラグの周面には、回転を規制するため、軸方向に延びる凸条で構成された回転止め部54aが形成されている。さらには、前記中空プラグ54の中空部には、先端部が細く、頭部側のネジ径が大きなネジ部(又は軸部)を有するネジ部材55が螺合されている。そのため、ネジ部材55の螺合に伴って、中空プラグ54を半径方向に拡大させることができ、アリ溝状の装着溝4からカバー部材51の中空筒状部52が横方向に抜け落ちるのを防止できる。
【0027】
さらに、前記カバー部材51は、プラスチック製シートで形成されているとともに、縦横方向に補強繊維(補強糸)が埋設されている。そのため、レール部材1の装着溝からカバー部材51が直線的に垂下することなく、側方に湾曲してから垂下するため、走行部材21及び揺動部材31の走行を妨げることもない。また、走行部材21及び揺動部材31が万一カバー部材51と接触したとしても、カバー部材51が補強されているため、走行部材21及び揺動部材31の走行に支障を来すこともない。
【0028】
このような部材を利用すると、架設したレール部材1に、ランナー11を介して走行部材21を走行自在に配設する工程と、走行部材21に、シート35を備えた複数の揺動部材(ハンガー)31を懸垂又は懸吊する工程と、カバー51の中空筒状部52に中空芯材53を挿入又は装着した状態で、レール部材1の装着溝4にカバー51の中空筒状部52を装着又は収容する工程と、中空芯材52に中空プラグ54とネジ部材55とを順次装着する工程を経ることにより、間仕切り開閉構造を簡便かつ効率よく形成できる。
【0029】
上記間仕切り開閉構造では、レール部材1の装着溝4からシート35の上部に至る領域をカバー51で覆うことができる。そのため、レール本体1とシート35との間に隙間が生じても、カバー51により風雨や塵芥の侵入を防止できるとともに、遮音性(防音性)、防火性、防虫性を高めることができる。また、レール本体1とシート35との間の隙間をカバー51で覆うことができるため、外観(美観)を損なうこともない。
【0030】
なお、レール部材は出入り口などの通路の上部(天井壁など)に架設又は取り付け可能であればよく、種々のブラケットなどを利用して上部レール部材を取り付けることができる。レール部材を架設するため、レール部材は、両側部(両側部の上部)にブラケットとの係合又は嵌合可能な凹部や凸部を有する場合が多い。係合又は嵌合機構は特に制限されず、例えば、レール部材の上部両側壁に形成された凹溝のうち、一方の凹溝に係止する鈎状爪部と、他方の凹溝に係止可能であり、かつバネ手段などにより進退動可能な進退動片とで狭着可能なブラケットを利用してレール部材を架設してもよい。また、レール部材は、天井壁などの所定部に直接取り付けてもよく、非平坦な天井壁などの施工部位での施工性などを高めるため、レール部材が収容又は配設可能な取付枠体を介して所定部に取り付けてもよい。
【0031】
レール部材の断面形状は特に制限されず、対称形状に形成する必要はないが、施工性を向上させるためには、断面形状が対称形状であるのが有利である。レール部材の縦断面形状は、走行空間を中心として左右対称形状に形成でき、例えば、断面H字状などの他、断面中空状、例えば、断面中空多角形状(四角形、六角形など)、断面中空円形状、断面中空楕円形状などの形態を有していてもよい。レール部材の縦断面形状は、断面多角形状(断面中空四角形状など)などであってもよい。
【0032】
装着溝(アリ溝状装着溝)は、レール部材の適所(例えば、下部両側壁など)に形成でき、通常、少なくとも一方の側壁部(特に両側壁部)に形成する場合が多い。装着溝(アリ溝状装着溝)の形成部位は特に制限されず、例えば、レール部材の内壁部であってもよく外壁部であってもよい。装着溝の断面形状は、開口部側が狭まったアリ溝状の形態を有していればよく、断面円形状又は断面円弧状(断面半円形状など)、断面楕円形状、断面多角形状(断面三角形状、断面四角形状など)の形態で形成してもよい。なお、レール部材を連結棒体で連結するための連結凹溝は必ずしも必要ではなく、連結凹部の形成部位は特に制限されず、例えば、レール部材の内壁部であってもよく外壁部であってもよい。また、連結凹部の断面形状は、通常、装着溝と同様に、アリ溝状である場合が多い。
【0033】
レール部材は、通常、両側部(両側壁の内壁部又は外壁部)、特に両側部の下部に長手方向に延びて形成された装着溝を備えている場合が多い。なお、ランナーの走行面は、前記レール部材の形態及びランナーの形態に応じて適所に形成でき、例えば、レール部材の両側部から側方に延びる延出部の上面を走行面としてもよいが、通常、走行空間を介して対峙する下部壁(両側壁から走行空間に向かって内方へ延びる下部壁)の上面を走行面とする場合が多い。
【0034】
ランナーは、レール部材に沿って走行可能であり、かつシートを直接的又は間接的に取り付け可能であればよく、通常、レール部材の走行面と接触可能なローラと、このローラを回転可能に軸支する軸部と、この軸部を回転可能に支持するフレーム部(枠部)と、このフレーム部(枠部)の下部に回転可能に取り付けられた回転軸部とを少なくとも備えている。この回転軸部は、前記のように、シートをノレン状の形態で前後方向に開閉するノレン式開閉構造では、走行部材と一体化するための取り付け脚部(又は取り付け回転軸部)として利用できる。また、シートをカーテン状の形態で左右方向に開閉するカーテン式開閉構造では、回転軸部には、シートを取り付けるためのフック部材を揺動可能に取り付けてもよく、例えば、回転軸部に形成した貫通孔にフック部材を揺動可能に装着してもよい。なお、フレーム部(枠部)は、ローラを回転可能に軸支する軸部の適所(中央部、両側部)を回転可能に支持してもよい。
【0035】
走行部材には単一のランナーを取り付けてもよいが、円滑に走行させるため、複数のランナーを取り付ける場合が多い。前記レール部材の長手方向には、複数の走行部材が間隔をおいて配設可能である。
【0036】
各走行部材には、単一の揺動部材を取り付けてもよいが、シートをノレン状に配設するためには、通常、複数の揺動部材が揺動可能に取り付けられる。
【0037】
ランナーの種類及び形態に応じて、走行部材は必ずしも必要ではなく、走行部材は、揺動部材が、走行部材の走行方向に対して直交又は交差する方向に揺動可能に取り付け(例えば、着脱可能に取り付け)可能であればよく、揺動機構は特に制限されない。例えば、揺動機構は、走行部材に断面湾曲状の湾曲部を形成し、この湾曲部に長手方向に沿って所定間隔で形成された複数のT字状切り欠き部(前記特許文献1に記載のT字状切り欠き部)と、揺動部材に形成され、かつこのT字状切り欠き部に対して係合可能なT字状係合部とで構成してもよい。また、走行部材の下部に形成した鈎部(例えば、走行部材の下部を断面コ字状又はU字状に湾曲して形成し、この湾曲又は屈曲壁から延びる係合片(又は爪部))と、この鈎部に対して係合可能な係合部(例えば、T字状係合部、又は係止片(又は爪部)が挿入可能な孔部)が形成された揺動部材とで構成してもよい。なお、上記とは逆の態様、例えば、走行部材の下部に係合部(係止片、孔部など)を形成し、揺動部材にこの係合部に対して係合可能な鈎部を形成してもよい。
【0038】
前記ランナーのフック部材又は各揺動部材に垂下して取り付けられたシートは、布帛、プラスチックシートなどで形成でき、通常、着色又は無着色の透明性を有するプラスチックシートで形成できる。シートは、半透明又は不透明であってもよいが、透視性を高めるため、透明性を有するのが好ましく、可撓性を有するのが好ましい。また、ノレン式開閉構造では、シートは、揺動部材の幅よりも大きな幅を有している場合が多く、通常、細幅状(長細状)に形成されている。なお、シートには、長手方向にリブが形成されていてもよく、難燃性、防炎性、帯電防止性、防虫性、耐寒性などが付与されていてもよい。
【0039】
なお、揺動部材に対するシート上端部の取り付けは、接着、融着などの化学的方法で取り付けてもよく、機械的方法、例えば、一対のプレート(少なくとも一方が揺動部材)で挟持してネジ部材などで取り付けてもよい。走行部材に揺動部材を互いに隣接して取り付けた状態では、通常、各揺動部材に取り付けられたシートの両端部は、互いに重なり合った形態を有し、ストリップドアシートを形成している。
【0040】
前記カバーは、少なくとも上端部が可撓性を有し、前記装着溝に装着又は収容可能であればよく、少なくとも上端部が折り返し可能であってもよい。カバーは、布帛などであってもよいが、通常、プラスチックシートである場合が多く、繊維などで強化されたプラスチックシートであってもよい。また、カバーは補強されていてもよく、例えば、カバーには、補強性を付与するため、補強部又はリブ、例えば、少なくとも縦方向に延びる補強部又はリブ(横方向に所定間隔をおいて縦方向に形成された補強部又はリブ、縦横方向又は格子状に形成された補強部又はリブなど)を形成してもよい。カバーは、不透明であってもよいが、通常、透明又は半透明である場合が多い。また、カバーは、必要により着色していてもよい。
【0041】
なお、カバーは、レール部材の長さ方向(通常、レール部材の全長に亘って)に延びており、通行を妨げない限り、少なくとも前記装着溝からシートの上端部を覆うことができればよい。
【0042】
前記レール部材の装着溝に装着するため、カバーの上端部には径大部が形成されている。この径大部は、カバー端部の折り曲げ又は折り畳み加工、中空形状などへの加工などの径大化加工などにより形成してもよい。例えば、上記カバーの端部は、折り畳み部の縫合又は接合(例えば、折り畳み縫合、折り重ね部の縫合など)、厚肉成形などにより形成された補強径大部などにより装着溝の開口部の幅よりも大きな補強径大部を形成してもよく、折り返されて(又は折り畳んで)、ウェルダーなどの溶着手段、縫合手段などで端部が接合した袋縫い状の中空筒状部を形成してもよい。さらに、上記カバーの端部(上記中空筒状部など)は、樹脂含浸、補強材などにより補強されていてもよい。なお、カバーの端部は予め加工されていてもよく、施工現場で所定の加工を施してもよい。カバーの端部は、予めウェルド(溶着)加工により袋縫い状に加工され、中空筒状部が形成されている場合が多い。
【0043】
好ましい態様では、カバーの端部を補強するための補強部材(カバーの上端部に形成された中空筒状部を補強するための補強部材など)を備えており、例えば、カバーの端部が中空筒状(折り返し(又は折り曲げ)端部が接合した袋縫い状の形態、又は袋縫い状の中空筒状)に形成され、この中空筒状部の中空部に装着溝の開口部よりも直径が大きな芯材(中空又は中実な芯材、補強芯材又は棒状体)が挿入された状態で、前記中空筒状部をアリ溝状装着溝に収容してもよい。補強部材は、シートの端部に形成された中空筒状部(袋縫い状の中空部など)に挿入可能な芯材(中空又は中実な芯材)であってもよい。芯材は、プラスチック製棒状体(中空又は非中空チューブ)、金属製棒状体(アルミニウムやステンレス製棒状体(中空又は非中空丸棒)など)が使用できる。好ましい芯材は、ポリエチレンなどで形成された中空プラスチックチューブである。
【0044】
なお、必要であれば、カバーの端部(例えば、前記径大部)が装着溝に収容された状態で、前記装着溝の両端部に、前記装着溝からのカバーの端部(例えば、前記径大部)の脱落を規制するための規制部材(抜け止め部材)を装着してもよい。規制部材(抜け止め部材)は、前記径大部(カバーの端部に形成された中空筒状部(例えば、袋縫い状の中空筒状部)を補強するための補強部材)が装着溝に収容された状態で、前記装着溝の両端部に装着可能な前記規制部材(又はプラグ及びネジ部材)で構成できる。
【0045】
なお、ネジ部材を用いることなく単独でプラグを用いることもできる。この場合、プラグは中空である必要はなく中実プラグであってもよい。中空又は中実プラグの装着により、装着溝からのカバーの径大部の脱落を規制するため、プラグは、細い先端部から次第に直径が大きくなる軸部を備えていてもよく、この軸部の周面には螺旋状などのネジ部や環状のリング部などを形成してもよい。
【0046】
さらに、中空プラグは、通常、半径方向に変形可能なプラグ、例えば、プラスチック製プラグ(難燃性又は不燃性プラグ)などが使用できる。プラグには、装着性及び施工性を高めるため、軸方向に延びる突片状又は凸条の回転止め部(又は回転規制部)を形成するのが有利である。この回転止め部は、プラグの軸方向の適所、例えば、先端部、中間部などであってもよいが、最も強い螺合力が作用する基部(ネジ部材が挿入して螺合される開口端側)に形成するのが有利である。プラグには、プラグの周方向に間隔をおいて、軸方向に延びる複数の回転止め部(回転規制部)を形成してもよい。このようなプラグは、ネジ部材の螺合に伴って回転を規制できるため、ネジ部材の螺合に伴ってプラグを半径方向に有効に拡大させることができ、装着溝に対して径大部を緊密に装着できる。また、中空プラグは、軸方向にスリット(特に、基部を余した先端部側に軸方向に延びるスリット)を形成し(例えば、先割れ状プラグの形態とし)、半径方向への拡大性を大きくしてもよい。なお、ネジ部材は、通常、先端部が細く、この先端部から次第に直径が大きくなるネジ部を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の間仕切り構造(開閉構造)では、風雨や塵芥の侵入を防止できるだけでなく、冷暖房により暖気や冷気、冷凍などによる冷気を有効に保持でき、保温性及び保冷性を改善できる。また、防虫性、防音性及び防火性などを改善することができる。そのため、本発明は、種々の空間を仕切る間仕切り部に適用でき、カーテン式及びノレン式開閉構造では、工場や作業場などの建屋、連絡通路など出入り口通路(レール部材の長手方向に対して交差する方向)に適用でき、ノレン式開閉構造では、複数のシートを揺動可能(又はノレン状)に隣接させ、隣接するシートの重複部が開閉可能な間仕切り構造(間仕切り装置)を形成するのに有用である。
【符号の説明】
【0048】
1…レール部材
4…アリ溝状装着溝
11…ランナー
21…走行部材
31…揺動部材
35…シート
51…カバー
52…中空筒状部
53…芯材
54…中空プラグ
55…ネジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架設されたレール部材と、このレール部材に沿って走行可能な複数のランナーと、これらのランナーに取り付けられたシートとを備えた開閉式間仕切り構造であって、前記レール部材に長手方向に延びて形成され、開口部側が狭まったアリ溝状の装着溝と、この装着溝に上端部が装着され、かつ少なくとも前記装着溝からシートの上端部を覆うためのカバーとを備えており、このカバーの上端部にアリ溝状装着溝の開口部の幅よりも大きな径大部が形成され、このシートの端部の径大部が、装着溝からの抜けが規制された状態で前記装着溝に装着又は収容されている開閉式間仕切り構造。
【請求項2】
架設されたレール部材と、このレール部材に沿って走行可能な複数のランナーと、これらのランナーに取り付けられ、かつ前記レール部材の長手方向に間隔をおいて配設可能な複数の走行部材と、各走行部材にそれぞれ揺動可能に係止された揺動部材と、各揺動部材に垂下して取り付けられたシートとを備え、かつ隣接する揺動部材においてシートの端部が互いに重なり合った状態でシートが取り付けられている開閉式間仕切り構造であって、前記レール部材に長手方向に延びて形成され、開口部側が狭まったアリ溝状の装着溝と、この装着溝に上端部が装着され、かつ少なくとも前記装着溝からシートの上端部を覆うためのカバーとを備えており、このカバーの上端部にアリ溝状装着溝の開口部の幅よりも大きな径大部が形成され、このシートの端部の径大部が、装着溝からの抜けが規制された状態で前記装着溝に装着又は収容されている請求項1記載の開閉式間仕切り構造。
【請求項3】
レール部材の両側部に装着溝が形成され、それぞれの装着部にカバーの上端部が装着されている請求項1又は2記載の間仕切り構造。
【請求項4】
可撓性を有し、上端部が中空筒状に形成されたカバーと、このカバーの中空筒状部に挿入可能であり、かつアリ溝状装着溝の開口部よりも直径が大きな芯材とを備え、この芯材が中空筒状部に挿入された状態で、前記シートの中空筒状部がアリ溝状装着溝に装着されている請求項1〜3のいずれかに記載の間仕切り構造。
【請求項5】
上端部が袋縫い状の中空筒状に形成されたカバーと、このカバーの中空筒状部に挿入可能であり、かつアリ溝状装着溝の開口部よりも直径が大きな中空芯材と、この中空芯材の中空部に装着可能であり、かつ侵入に伴って半径方向に中空部を拡大可能なプラグとを備えている請求項1〜4のいずれかに記載の間仕切り構造。
【請求項6】
上端部が袋縫い状の中空筒状に形成されたカバーと、このカバーの中空筒状部に挿入可能であり、かつアリ溝状装着溝の開口部よりも直径が大きな中空芯材と、この中空芯材の中空部に装着可能であり、かつ侵入に伴って半径方向に中空部を拡大可能な中空プラグと、この中空プラグの中空部に装着可能であり、かつ中空プラグを半径方向に拡大させるためのネジ部材とを備えている請求項1〜5のいずれかに記載の間仕切り構造。
【請求項7】
プラグの軸方向に、回転を規制するための突片状又は凸条の回転止め部が形成されている請求項6記載の間仕切り構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−111376(P2013−111376A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262312(P2011−262312)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(500410846)岡田装飾金物株式会社 (12)
【Fターム(参考)】